説明

収納ボックスのロック装置

【課題】簡素な構造で廉価なロック装置を提供する。
【解決手段】ロック部材28を進出動作によりボックス格納部9側のロック部7aに係合させて収納ボックス11の引出しを阻止する一方、後退動作によりロック部7aから離脱させて収納ボックス11の引出しを許容する。ロック部材28とボックス本体13との間に設けられた板バネ29によりロック部材28をロック部7aに常時係合させる方向に付勢する。収納ボックス11をボックス格納部9から引き出す際には、ボックス本体13外側に回動可能に軸支された操作レバー31のレバー本体33を指で引っ張って被挟持部33bを回動させることにより、ロック部材28を板バネ29の付勢力に抗して反付勢方向に移動させてロック部7aから離脱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引出し式収納ボックスのロック装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の車体後部に設けられた荷室のフロア下方に車体後方から出入れ可能に格納された引出し式収納ボックスが開示されている。この収納ボックスには盗難防止や運転中の振動で開かないようにロック装置が設けられている。
【特許文献1】特開2001−322500号公報(段落0045欄、図3、図6及び図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の特許文献1のロック装置は、乗員が車室内からアクチュエータを遠隔操作して作動させることにより収納ボックスの引出しを阻止したり、許容したりしているので、アクチュエータや複雑な制御系が必要でコストアップを招来する。
【0004】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡素な構造で廉価なロック装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、この発明は、ロック装置を手動で作動させるようにしたことを特徴とする。
【0006】
具体的には、この発明は、ボックス格納部に出入れ可能に格納される引出し式収納ボックスのロック装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0007】
すなわち、この発明は、上記収納ボックスのボックス本体外側に進退可能に設けられ、進出動作により上記ボックス格納部側のロック部に係合して収納ボックスの引出しを阻止する一方、後退動作により上記ロック部から離脱して収納ボックスの引出しを許容するロック部材と、該ロック部材と上記ボックス本体との間に設けられ、ロック部材を上記ロック部に常時係合させる方向に付勢する付勢手段と、上記ボックス本体外側に回動可能に軸支され、回動動作により上記ロック部材をロック部から離脱させる操作レバーとを備え、上記操作レバーは、指を掛けるレバー本体と、該レバー本体に一体に設けられ上記付勢手段の付勢力により上記ロック部材とボックス本体とで挟持される被挟持部とを備え、上記収納ボックスをボックス格納部から引き出す際には、上記レバー本体を指で引っ張って上記被挟持部を回動させることにより、上記ロック部材を上記付勢手段の付勢力に抗して反付勢方向に移動させて上記ロック部から離脱させるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、操作レバーのレバー本体を指で引っ張るだけの簡単な手動操作でロック部材をボックス格納部側のロック部から容易に離脱させ、収納ボックスの引出しを許容することができる。また、操作レバーのレバー本体から指を離すだけの簡単な手動操作でロック部材をボックス格納部側のロック部に容易に係合させ、収納ボックスの引出しを阻止することができる。このようなロック装置は、ロック部材、操作レバー及び付勢手段の組み合わせにより構成され、アクチュエータや複雑な制御系が必要な特許文献1に比べて簡素な構造で廉価なものにすることができる。また、操作レバーの被挟持部をロック部材とボックス本体とで挟持し、ロック部材が付勢手段により被挟持部を挟持する方向に付勢されるので、操作レバーががたつかず、安定したロック状態を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0010】
図6は車両1の車体3後部に設けられた荷室5を示し、該荷室5のフロア(図示せず)下方には皿状の枠体7が設置されている。該枠体7には2個のボックス格納部9が車幅方向に並設され、該各ボックス格納部9には平面視略矩形の引出し式収納ボックス11が車体3後方から出入れ可能に格納されている。図6では左側のボックス格納部9に格納されている収納ボックス11及び各ボックス格納部9を上方から蓋するフロアパネルは省略している。
【0011】
上記収納ボックス11は、図1〜5に示すように、ボックス本体13と、該ボックス本体13の前壁部15を覆うカバー17と、該カバー17と上記ボックス本体13の前壁部15との間に組み込まれた実施形態に係るロック装置19とからなる。上記カバー17の上端縁部20内側には複数個の上側係合突起部20aが車幅方向(図1の左右方向)に間隔をあけて一体に突設されているとともに、下端縁部21内側にも複数個の下側係合突起部21aが車幅方向に間隔をあけて一体に突設されている。一方、上記ボックス本体13の前壁部15外周縁には張出部23が全周に亘って一体に張り出して形成され、該張出部23の上端縁部24外側には複数個の上側係合凹部24aが上記上側係合突起部20aと対応するように車幅方向に間隔をあけて一体に突設されているとともに、上記張出部23の下端縁部25には複数個の下側係合孔部25aが上記下側係合突起部21aと対応するように車幅方向に間隔をあけて一体に突設されている。そして、上記カバー17は、下側係合突起部21aをボックス本体13の下側係合孔部25aに下方から係合させるとともに、上側係合突起部20aをボックス本体13の上側係合凹部24aに上方から係合させることにより、ボックス本体13の前壁部15に取り付けられている。
【0012】
上記カバー17の車幅方向中程には、指を挿入する車両1の後方から見て略コの字形の挿入部17aが形成されている。一方、上記ボックス本体13の張出部23の下端縁部25の車幅方向中程には、2個の立ち上がり部26が上記カバー17の挿入部17a車幅方向外側方で立ち上がり、該両立ち上がり部26の上端寄りは水平な第1挟持部27により一体に橋絡され、両立ち上がり部26と第1挟持部27とで略門形をなしている。この両立ち上がり部26の上端寄りには軸孔部26aが1個ずつ横方向に貫通形成されている(図2参照)。また、該両立ち上がり部26の車幅方向外側の下端縁部25には矩形の貫通孔25bが1個ずつ上下方向に貫通形成され、一方、上記枠体7のボックス格納部9側には凹部からなるロック部7aが収納ボックス11の格納位置で上記貫通孔25bに対応するように凹設されている。さらに、上記張出部23の上端縁部24には2個の膨出部24bが上記両貫通孔25bに対応して一体に膨出形成されている。
【0013】
上記ロック装置19は、上記ボックス本体13の前壁部15外側、すなわち前壁部15の車両1後方に進退可能に設けられた略門形のロック部材28を備えている。このロック部材28は、2本の垂直部28aと、該両垂直部28aの上端を橋絡する水平な第2挟持部28bとで一体に形成され、図4に示すように進出動作により上記ボックス格納部9側のロック部7aに上記垂直部28a下端を係合して収納ボックス11の引出しを阻止する一方、図5に示すように後退動作により上記垂直部28a下端を上記ロック部7aから離脱して収納ボックス11の引出しを許容するようになっている。
【0014】
上記ロック部材28の第2挟持部28b両端には、付勢手段としての板バネ29がその下端の係合溝部29aを係合させて取り付けられ、上端を上記膨出部24b下面に当接させている。これにより、上記板バネ29が上記ロック部材28とボックス本体との間にロック部材28をロック部7aに常時係合させる方向に付勢している。
【0015】
上記ボックス本体13の前壁部15外側には、操作レバー31が回動可能に軸支され、該操作レバー31の回動動作により上記ロック部材28の垂直部28a下端をロック部7aから離脱させるようになっている。具体的には、上記操作レバー31は、上壁部33aと指を掛ける下壁部33bとからなる断面略くの字形の細長いレバー本体33を備え、該レバー本体33の両端には上記両立ち上がり部26の軸孔部26aに回動可能に嵌入される回動軸部33cが長手方向(車幅方向)に一体に突設されている。上記レバー本体33に上壁部33aを設けることにより、下壁部33bに指を掛ける際に指が回動軸部33cよりも上方に行かないようにして操作レバー31の操作性を阻害しないようにすることができる。また、上記レバー本体33には、上記板バネ29の付勢力により上記ロック部材28の第2挟持部28b下縁とボックス本体13の上記第1挟持部27上縁とで挟持され、ロック部材28のロック部7aとの係合状態において略車両1後方へ突出する被挟持部34が一体に突設されている。そして、上記収納ボックス11をボックス格納部9から引き出す際には、図5に示すように、指(図示せず)をカバー17の挿入部17aからボックス本体13の上記第1挟持部27下方に挿入して上記レバー本体33の下壁部33bを指で引っ張って上記被挟持部34を回動させることにより、上記ロック部材28の第2挟持部28bを上記板バネ29の付勢力に抗して反付勢方向(上方)に移動させて垂直部28a下端を上記ロック部7aから離脱させるように構成されている。なお、図3に示すように、上記カバー17の挿入部17a両側の裏面にはリブ17bが車両1前方に向けて一体に突設され、一方、上記ボックス本体13の前壁部15外面の両立ち上がり部26側方にもリブ15aが車両1後方に向けて一体に突設され、これらリブ17b,15aを上記ロック部材28の垂直部28aに前後から対向させてロック部7aを前後方向に倒れないようにしている。
【0016】
したがって、このロック装置19によれば、操作レバー31のレバー本体33の下壁部33bを指で引っ張るだけの簡単な手動操作でロック部材28をボックス格納部9側のロック部7aから容易に離脱させ、収納ボックス11の引出しを許容することができる。また、操作レバー31のレバー本体33の下壁部33bから指を離すだけの簡単な手動操作でロック部材28をボックス格納部9側のロック部7aに容易に係合させ、収納ボックス11の引出しを阻止することができる。このようなロック装置19は、ロック部材28、操作レバー31及び板バネ29の組み合わせにより構成され、アクチュエータや複雑な制御系が必要な特許文献1に比べて簡素な構造で廉価なものにすることができる。また、操作レバー31の被挟持部34をロック部材28の第2挟持部28b下縁と、ボックス本体13側の第1挟持部27上縁とで挟持し、ロック部材28が板バネ29により被挟持部34を挟持する方向に付勢されるので、操作レバー31ががたつかず、安定したロック状態を確保することができる。
【0017】
なお、上記の実施形態では、ロック部材28を上下方向に移動させるようにしたが、左右方向の移動によりロック・アンロック作動させるようにしてもよい。
【0018】
また、上記の実施形態では、板バネ29をロック部材28の第2挟持部28b車幅方向両端側に1個ずつ設けたが、第2挟持部28bの車幅方向中央に1個だけ設けるようにしてもよく、さらには、付勢手段として板バネ29の代わりにコイルバネを用いてもよい。また、上記ボックス本体13側の張出部23の上端縁部24に形成された膨出部24bを省略し、板バネ29又はコイルバネの上端を上記張出部23の上端縁部24に直接当接させるようにしてもよい。
【0019】
さらに、上記の実施形態では、ボックス格納部9側のロック部7aを凹部で形成したが、ロック部7aは凹部以外に貫通孔であってもよい。
【0020】
さらにまた、上記の実施形態では、ロック装置19を車両1の車体3後部に配置された収納ボックス11に適用した場合を示したが、上記の実施形態以外にインストルメントパネル等に設けられた収納ボックスにも適用することができることは勿論、車両1以外の収納ボックスにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明は、引出し式収納ボックスのロック装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ボックス本体を車両後方から見た正面図である。
【図2】ロック装置をボックス本体に組み付ける前の分解斜視図である。
【図3】図1のIII −III 線に相当する断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に相当する断面図である。
【図5】ロック部材を離脱操作した状態の図4相当図である。
【図6】車両の車体後部に配置された収納ボックスの配置図である。
【符号の説明】
【0023】
7a ロック部
9 ボックス格納部
11 収納ボックス
13 ボックス本体
19 ロック装置
28 ロック部材
29 板バネ(付勢手段)
31 操作レバー
33 レバー本体
33b 被挟持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス格納部に出入れ可能に格納される引出し式収納ボックスのロック装置であって、
上記収納ボックスのボックス本体外側に進退可能に設けられ、進出動作により上記ボックス格納部側のロック部に係合して収納ボックスの引出しを阻止する一方、後退動作により上記ロック部から離脱して収納ボックスの引出しを許容するロック部材と、
該ロック部材と上記ボックス本体との間に設けられ、ロック部材を上記ロック部に常時係合させる方向に付勢する付勢手段と、
上記ボックス本体外側に回動可能に軸支され、回動動作により上記ロック部材をロック部から離脱させる操作レバーとを備え、
上記操作レバーは、指を掛けるレバー本体と、該レバー本体に一体に設けられ上記付勢手段の付勢力により上記ロック部材とボックス本体とで挟持される被挟持部とを備え、上記収納ボックスをボックス格納部から引き出す際には、上記レバー本体を指で引っ張って上記被挟持部を回動させることにより、上記ロック部材を上記付勢手段の付勢力に抗して反付勢方向に移動させて上記ロック部から離脱させるように構成されていることを特徴とする収納ボックスのロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−261390(P2007−261390A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88179(P2006−88179)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】