説明

収納用什器

【課題】地震などが生じても適切な状態で被収納物を収納することができる収納用什器を提供すること。
【解決手段】被収納物を収納する引き出し12と、この引き出し12を支持する什器本体13と、を備え、前記引き出し12は、前記什器本体13の奥行方向Dの手前D側が上方に向けて傾斜して設けられていることを特徴とする。これにより、地震などの揺れによって、引き出し12が手前D側にスライドすることを防止することができることから、地震などが生じても適切な状態で被収納物を収納することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被収納物が収納される収納用什器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図書館における本や店舗における商品などの被収納物を収納するために種々の収納用什器が利用されている(例えば、特許文献1参照。)。これら収納用什器としては、引き出しが設けられているのが一般的である。そして、その引き出しに被収納物が入れられて、様々な被収納物が収納されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−245672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、そのような収納用什器では、地震などにより収納用什器が振動した場合に、引き出しが手前側にスライドしてしまい、緊急時における速やかな通行を阻害してしまうだけでなく、被収納物が引き出しごと落下するおそれがあるという問題がある。特に、図書館の書架などのように、引き出しに多数の本が収納されている場合、それら多数の本が引き出しごと落下すると、本が損傷してしまうだけでなく、落下対象に対して衝撃を与えてしまう。また、それら本には各種コードが記載されたラベルなどが貼付されており、落下した多数の本を引き出しに戻す場合に、それら多数の本をコードごとに順番に収納する必要があるため、復旧作業が煩雑になってしまう。
【0004】
そのため、免震構造の建物に収納用什器を設置することが考えられるが、免震構造によれば、水平方向に対する揺れにはある程度耐え得るようになるが、上下方向の揺れに対しては効果が薄いため、上下に強い揺れが建物に生じた場合には、依然として収納されたものが落下してしまうという問題は残る。
【0005】
本発明は、上記従来の事情に鑑みて案出されたものであり、地震などが生じても適切な状態で被収納物を収納することができる収納用什器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る収納用什器は、被収納物を収納する引き出しと、この引き出しを支持する什器本体と、を備え、前記引き出しが、前記什器本体の奥行方向の手前側が上方に向けて傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0007】
これにより、地震などの揺れによって、引き出しが手前側にスライドすることを防止することができる。
【0008】
また、本発明に係る収納用什器は、前記引き出しの前記奥行方向に対する傾斜角度が、2度以上5度以内に設定されていることを特徴とする。
【0009】
これにより、引き出しに収納された被収納物の取り易さを維持しつつ、引き出しのスライドや落下を防止することができる。
【0010】
また、本発明に係る収納用什器は、被収納物を収納する引き出しと、この引き出しを支持する什器本体と、を備え、前記什器本体に、前記什器本体の奥行方向に前記引き出しをスライドさせる支持レールが設けられるとともに、前記引き出しに、前記支持レールに係合する係合レールが設けられ、前記支持レールは、前記奥行方向の手前側が上方に向けて傾斜して設けられ、又は、前記係合レールは、前記奥行方向の手前側が下方に向けて傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0011】
これにより、引出しを確実に支持することができ、振動によって引き出しが手前側にスライドすることを確実に防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る収納用什器は、前記支持レール又は前記係合レールの少なくともいずれか一方の前記奥行方向に対する傾斜角度が、2度以上5度以内に設定されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、引き出しに収納された被収納物の取り易さを維持しつつ、引き出しのスライドや落下を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地震などの揺れによって、引き出しが手前側にスライドすることを防止することができることから、地震などが生じても引き出しが手前側にスライド(飛び出し)することや落下することを防止し、適切な状態で被収納物を収納することができる。
また、地震による災害が発生した場合に、避難通路を妨害することなく、飛び出した引き出しに避難時に接触したり引っかかったりすることも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、本発明の第1実施形態における収納用什器について、図面を参照して詳細に説明する。
図1において、符号1は収納用什器を示すものである。
本発明の収納用什器1は、免震構造の建物、例えばオフィスビルや図書館などに設置されるものであり、ファイル、書類や本などを収納するものである。
収納用什器1は、略矩形箱型の本体部(什器本体)13と、この本体部13に設けられた引き出し12とを備えている。
なお、符号Wは本体部13の幅方向を示し、符号Dは本体部13の奥行方向、符号Hは本体部13の高さ方向を示すものである。奥行方向Dのうち、本体部13の手前側(前側)を符号Dで示し、奥側(後側)を符号Dで示している。
【0016】
本体部13は、矩形板状の基盤部2と、この基盤部2のうち奥行方向Dの奥D側の一辺から立ち上げられた矩形板状の背面板部4と、基盤部2の幅方向Wの両端辺から立ち上げられた矩形板状の側面板部3とを備えている。また、本体部13は、側面板部3及び背面板部4の上方先端を連結する天板部6とを備えている。そして、本体部13の手前D側は、開放端となっている。
【0017】
本体部13には、高さ方向Hに複数重ねられて引き出し12が設置されるようになっている。
引き出し12は、図2に示すように、被収納物が載置される矩形板状の底板16を備えている。底板16の手前D側の一辺には、その一辺から立ち上げられた矩形板状の前面部21が設けられている。前面部21の幅方向Wの中央部には、取手22が設けられている。底板16の奥D側の一辺には、その一辺から立ち上げられた矩形板状の後面部17が設けられている。
【0018】
また、底板16の幅方向Wの両端辺には、それら両端辺から立ち上げられた矩形板状の側面部18が設けられている。側面部18には、奥行方向Dの全長にわたって係合レール25が設けられている。係合レール25は、縦断面形状がコの字状にして形成されており、幅方向Wの外方側に凸になるように取り付けられている。また、係合レール25の長さ方向の両端部には、ローラ26が設けられている。このような係合レール25は、側面部18の上端辺及び下端辺と平行にして取り付けられている。
【0019】
さらに、本実施形態においては、本体部13の側面板部3の内面に、係合レール25が係合されて引き出し12を支持する支持レール30が傾斜して取り付けられている。支持レール30は、縦断面形状がコの字状にして形成されており、幅方向Wの外方側に凸になるように取り付けられている。さらに、支持レール30は、側面板部3の上端辺及び下端辺に対して、手前D側が上方を向くようにして傾斜して取り付けられている。この傾斜角度θは、例えば2度に設定されている。ここで、傾斜角度θとは、側面視して、支持レール30の長さ方向に延びる直線と、奥行方向Dに延びる直線とのなす角(鋭角)をいうものである。
【0020】
このような構成のもと、係合レール25を支持レール30に係合させると、引き出し12は、奥行方向Dにスライド可能に支持されるようになっている。このとき、支持レール30が傾斜していることから、引き出し12も、側面板部3の上端辺及び下端辺に対して、手前D側が上方を向くようにして傾斜角度θをもって傾斜するようになっている。
【0021】
図3は、図2に示す引き出し12の奥行寸法d、傾斜角度θ、及び引き出し12の最前端と最後端との高さ方向Hの差異である高さ寸法hの具体的数値を示す表である。
奥行寸法dが25cmの場合であって、傾斜角度θが2度の場合、高さ寸法hは0.87cmとなり、傾斜角度θが3度の場合、高さ寸法hは1.31cm、傾斜角度θが4度の場合、高さ寸法hは1.75cmとなる。
同様にして、奥行寸法dが30cmの場合であって、傾斜角度θが2度の場合、高さ寸法hは1.05cm、傾斜角度θが3度の場合、高さ寸法hは1.57cm、傾斜角度θが4度の場合、高さ寸法hは2.10cmとなる。
【0022】
また、奥行寸法dが35cmの場合であって、傾斜角度θが2度の場合、高さ寸法hは1.22cm、傾斜角度θが3度の場合、高さ寸法hは1.83cm、傾斜角度θが4度の場合、高さ寸法hは2.45cmとなる。
また、奥行寸法dが40cmの場合であって、傾斜角度θが2度の場合、高さ寸法hは1.40cm、傾斜角度θが3度の場合、高さ寸法hは2.10cm、傾斜角度θが4度の場合、高さ寸法hは2.80cmとなる。
また、奥行寸法dが45cmの場合であって、傾斜角度θが2度の場合、高さ寸法hは1.57cm、傾斜角度θが3度の場合、高さ寸法hは2.36cm、傾斜角度θが4度の場合、高さ寸法hは3.15cmとなる。
【0023】
また、奥行寸法dが50cmの場合であって、傾斜角度θが2度の場合、高さ寸法hは1.75cm、傾斜角度θが3度の場合、高さ寸法hは2.62cm、傾斜角度θが4度の場合、高さ寸法hは3.50cmとなる。
また、奥行寸法dが60cmの場合であって、傾斜角度θが2度の場合、高さ寸法hは2.10cm、傾斜角度θが3度の場合、高さ寸法hは3.14cm、傾斜角度θが4度の場合、高さ寸法hは4.20cmとなる。
なお、これらの数値は、あくまでも一例であって、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0024】
次に、本実施形態における収納用什器1の作用について説明する。
係合レール25を支持レール30に係合させて、奥D側にスライドさせることにより、複数の引き出し12が高さ方向Hに重ねられて本体部13内に支持される。このとき、引き出し12は、手前D側が上方を向くように傾斜角度θをもって支持される。そのため、引き出し12は、その重心が奥D側に設定されて支持された状態になる。
ファイルや本を収納するときには、引き出し12を手前D側にスライドさせてファイルや本を載置する。そして、引き出し12を奥D側に戻すことによってファイルや本などが収納される。
【0025】
この状態で、地震が発生すると、建物の免震構造により、水平方向の揺れは抑えられるが、上下方向の揺れはさほど抑えられない。そのため、上下方向に強い地震が発生すると、収納用什器1全体が上下方向に揺れ、これにより引き出し12が上下方向に揺れ動く。このとき、引き出し12の手前D側が上方に傾斜しており、その重心が奥D側に設定されることから、引き出し12は奥D側に移動しようとする。そのため、それら引き出し12が手前D側に動くことを防止することができる。
【0026】
以上より、本実施形態における収納用什器1によれば、上述のように、引き出し12が手前D側に動くことを防止することができることから、引き出し12が手前D側にスライドすることによって通行を阻害したり、被収納物が引き出し12ごと落下したりすることを防止することができる。したがって、地震などが生じても適切な状態で被収納物を収納することができる。
また、仮に引き出し12が手前D側にスライドしてしまったとしても、引き出し12を自重によって本体部13に戻すことができる。そのため、地震が終わった後の復旧の作業負担を軽減させることができる。
【0027】
さらに、引き出し12の傾斜角度θが、例えば2度に設定されていることから、ファイルや本の取り易さを維持しつつ、収納された引き出しの飛び出しや落下を確実に防止することができる。特に、オフィスビルに設置する場合には、引き出し12からファイルなどが頻繁に出し入れされる場合があるが、本実施形態においては、引き出し12へのファイルなどの収納のし易さや、引き出し12に収納されたファイルなどの取り易さを維持しつつ、引き出し12の飛び出しや落下を防止することができる。
【0028】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態を示したものである。
図4において、図1から図3に記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態と上記第1の実施形態とは基本的構成は同一であり、ここでは異なる点についてのみ説明する。
【0029】
本実施形態における収納用什器1は、係合レール25を傾斜させたものである。すなわち、係合レール25は、側面部18の上端辺及び下端辺に対して、手前D側が下方を向くようにして傾斜角度θをもって傾斜して取り付けられている。なお、支持レール30は、奥行方向Dに向けられて取り付けられており、上記第1実施形態のように傾斜していない。
このような構成のもと、係合レール25を支持レール30に係合させると、引き出し12は、奥行方向Dに対して、手前D側が上方を向くようにして傾斜角度θをもって傾斜する。
【0030】
以上より、本実施形態における収納用什器1によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0031】
なお、上記第1又は第2の実施形態においては、係合レール25及び支持レール30の縦断面形状がコの字状としたが、これに限ることはなく、それら形状は適宜変更可能である。例えば、図5に示すように、支持レール30aをL字状とし、係合レール25aを、支持レール30aに引っ掛かるような取手としてもよい。また、係合レール25aを逆L字状にしてもよい。
また、図6に示すように、支持レール30bを、幅方向Wの内方に突出する板状とし、係合レール25bを、支持レール30bに載せられる矩形状としてもよい。
【0032】
さらに、上記第1又は第2の実施形態においては、支持レール30又は係合レール25を傾斜させるとしたが、支持レール30及び係合レール25のいずれも傾斜させてもよい。この場合、引き出し12を傾斜させることなく、奥行方向Dに向けて配することができる。
また、傾斜角度θを2度としたが、これに限ることはなく、適宜変更可能である。ただし、被収納物の取り易さなどを考慮すると、2度以上5度以下に設定することが好ましい。
また、収納用什器1をオフィスビルや図書館に設置することとしたが、これに限ることはなく、設置場所は適宜変更可能である。そのため、被収納物としては、ファイルや本だけでなく適宜変更可能である。
また、収納用什器1を免震構造の建物に設置するとしたが、これに限ることはなく、免震構造を有さない建物に設置してもよい。ただし、免震構造の建物に設置するのが好ましいのは言うまでもない。
さらに、ローラ26を係合レール25に設けるとしたが、これに限ることはなく、ローラ26を支持レール30に設けてもよい。この場合、支持レール30の手前側にローラ26を設けることが好ましい。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る収納用什器の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の引き出しの係合レール及び側面板部の支持レールの様子を示す説明図である。
【図3】図1の引き出しの奥行寸法、傾斜角度、及び高さ寸法の具体的数値を示す表である。
【図4】本発明に係る収納用什器の第2の実施形態の要部を示す説明図である。
【図5】支持レール及び係合レールの変形例を示す正面図である。
【図6】支持レール及び係合レールの他の変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 収納用什器
12 引き出し
13 本体部(什器本体)
25 係合レール
30 支持レール
D 奥行方向
手前
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収納物を収納する引き出しと、
この引き出しを支持する什器本体と、を備え、
前記引き出しは、前記什器本体の奥行方向の手前側が上方に向けて傾斜して設けられていることを特徴とする収納用什器。
【請求項2】
前記引き出しの前記奥行方向に対する傾斜角度が、2度以上5度以内に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の収納用什器。
【請求項3】
被収納物を収納する引き出しと、
この引き出しを支持する什器本体と、を備え、
前記什器本体に、前記什器本体の奥行方向に前記引き出しをスライドさせる支持レールが設けられるとともに、
前記引き出しに、前記支持レールに係合する係合レールが設けられ、
前記支持レールは、前記奥行方向の手前側が上方に向けて傾斜して設けられ、
又は、前記係合レールは、前記奥行方向の手前側が下方に向けて傾斜して設けられていることを特徴とする収納用什器。
【請求項4】
前記支持レール又は前記係合レールの少なくともいずれか一方の前記奥行方向に対する傾斜角度が、2度以上5度以内に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の収納用什器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−195729(P2007−195729A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17738(P2006−17738)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】