説明

収縮包装体

【課題】食品のような内容物そのもの又は内容物を収納した容器の収縮包装において、熱収縮後の外観に優れ、ピンホールの発生も大幅に改善し、易開封性も付与した包装体を提供する。
【解決手段】両表面層が異なるヒートシール温度を有する熱収縮性フィルム1を用い、ヒートシール温度が高い表層を外側に配置した状態で被包装物に密着しており、包装体の両端の少なくとも一方がY字型ツマミ部8が形成されたガゼット形状の密封シール部3を有している収縮包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば食品そのものまたは食品等の内容物を入れたトレーを含む容器等の被包装物を熱収縮性フィルムを用いて包んだ後、熱収縮性フィルムを熱収縮させて被包装物に密着させた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等で販売されている生鮮食品、加工食品等の包装には、タイトな仕上がりで美粧性に優れる点を生かし、熱収縮性フィルムで包装した収縮包装が広く知られている。この収縮包装は、たとえば内容物を入れたトレーを熱収縮性フィルムで包み、開口部を密封シールして予備包装体を形成した後、熱風トンネルを通過させてあらかじめ設けられた脱気孔または密封シールした後に設けた脱気孔から空気を抜きながら該フィルムを熱収縮させて内容物およびトレーに密着させることによって行われている。このシュリンク包装においては、予備包装体の底部で主に合掌シールによる縦シールおよび前後二方を横シールする場合(ピロー包装方式)、フィルムを半折して開口部である三方をシールする場合(半折フィルム方式)、二枚のフィルムを重ね合わせて四方をシールする場合(上下フィルム方式)等がある。これらの方法はいずれも熱収縮時に包装体内部の空気を排除するためにフィルムに脱気用の孔が設けてあるために雑菌等の侵入を嫌う食品包装としては不適である。この脱気用の孔を設けない包装方法として特許文献1が開示されている。
【0003】
この方法は、熱収縮率および熱収縮後の引張回復性が特定された熱収縮性二軸延伸プラスチックフィルムを用いて、内容物を入れたトレーを包んで内部を脱気するとともに、開口部を密封シールしてトレーの側方に密封シール部を有する予備成形体を形成し、この予備成形体のトレー下側面のプラスチックフィルムを熱収縮させて側方の密封シール部を下方に引き付けた後、トレー上面側のプラスチックフィルムを熱収縮させる包装方法である。
この方法では、脱気用の孔がないために食品包装をする場合に衛生状態を保ちやすく、また側方の密封シール部が包装体の上面にずれ上がることがなく、更に押さえ跡による外観低下が起こり難いために、高い商品性と展示効果が発揮されるものである。
【0004】
一方、食品に対する安全、安心、おいしさ追求といった消費者ニーズに応えるべく、食品添加物、とりわけ保存料を使用しない食品が増え、安全で確実に鮮度保持するための包装方法が一層重要性を増してきている。中でも、ガス置換包装は食品の鮮度を長期間に渡り保持可能で、上記保存料の効果を補完する効果的な包装方法として多用されている。このガス置換が可能な包装方法としては特許文献2が開示されており、ピロー包装機により内容物を収納したトレーをバリヤー性樹脂層とヒートシール性樹脂層とを含む熱収縮性多層フィルムで包み、該フィルムをトレーの底部ならびに縁部にてヒートシールする包装方法である。この方法によれば、気密性に優れた長期保存が可能なトレー包装体が得られ、包装体内部をガス置換した場合、食品の日持ちが大幅に向上されるとの記述がある。
【0005】
しかしながら特許文献1および特許文献2のいずれの包装方法においても、熱収縮後に得られる包装体は、特にコーナー部に大きな曲率を有する丸みを帯びた形状または隅切り形状の容器の場合、さらには高さが高いほどその隅部においてフィルムが収縮しきらずに突起状に残ってしまい(以下、突起状物という。)、外観を損ねたり、輸送中に該突起状物先端部で隣接する別の包装体に傷をつけたり、突起状物自体が繰り返される屈曲によってピンホールを発生させてしまうといった問題がある。
さらには、包装体を開封するにはフィルムと被包装物の隙間に指を突き立ててフィルムを破らなければならなかったり、強靭なフィルムの場合にはハサミや調理ナイフで切り裂く等、衛生的にも使い勝手の面でも問題があるものである。
【特許文献1】特開平9−99908号公報
【特許文献2】特開平4−327153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、食品等の内容物または容器の形状を問わず熱収縮後の外観に優れ、ピンホールの発生も大幅に改善でき、かつ易開封性に優れた包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.両表面層が異なるヒートシール温度を有する熱収縮性フィルムを用いて包装してなる収縮包装体であって、最内層に対してヒートシール温度が高い最外層を有する筒状の熱収縮性フィルムが熱収縮して被包装物に密着し、かつ該筒状フィルムの両端の少なくとも一方が側面から内側に折込まれたガセット形状の密封シール部を有していることを特徴とする収縮包装体。
2.密封シール部の先端が外方に向かってY字状に分かれていることを特徴とする請求項1に記載の収縮包装体。
3.密封シール部が下方に位置することを特徴とする1.または2.に記載の収縮包装体。
4.熱収縮性フィルムがガスバリア性を有することを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の収縮包装体。
5.熱収縮性フィルムの熱収縮率が、横方向で10%以上かつ縦方向で20%以上であることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の収縮包装体。
【発明の効果】
【0008】
本発明が従来技術と最も相違する点は、まず密封シール部にガゼット形状の折込を設けた点にあり、これにより従来問題であった熱収縮後の突起状物そのものが発生しないため、得られる包装体は外観が綺麗で、かつ突起状物がもたらしたピンホール発生等の損傷が大幅に改善される。特に、ガスバリア性を有した熱収縮性フィルムのうち、耐ピンホール性を強化するためにポリアミド系樹脂層を配したフィルムは概して熱収縮性が低いが、これら熱収縮性に乏しいフィルムに対しても突起状物のない綺麗な包装が可能である。さらにヒートシール温度が異なる特性を有する熱収縮性のフィルムを使用して、ヒートシール温度の高い表面層を包装体の外側になるように配置することで、上記ガゼット折込部において密封シール部の端部にツマミ部を設けることが可能となり、これによって易開封性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好ましい包装体について、図1から図10を用いて説明する。まず図1〜図3は、隅切りトレーを使用した従来の包装方法の場合を示したもので、図1は内容物を入れた隅切りトレー2(図では内容物は省略。以下、同様にすべての図において内容物は省略。)を熱収縮性フィルム1からなる縦シール4によって形成される筒状フィルム内に収容し、これを脱気するとともに開口部を密封シールして得られた予備包装体である。図2はこれの平面図である。図3はこの予備包装体のトレー下側面のフィルムを先に熱収縮させて、開口部の密封シール部3を下方に引き付けた後、全体を熱風にて加熱し上面のフィルムをシュリンクさせて得られた収縮包装体を示す。この収縮包装体には突起状物5が発生しており、外観上、商品としての美粧性を損ね、また該突起状物先端部で隣接する別の包装体に損傷を与えるといった問題や開封しずらいといった問題が生じていた。
【0010】
次に本発明の好ましい形態について説明する。図4〜図6は上記と同じ隅切りトレーおよび両表面層のヒートシール温度が異なる熱収縮性フィルムを使用した本発明の例を示したものである。図4は熱収縮性フィルム1からなる縦シール4によって形成される、ヒートシール温度の高い表面層を包装体の外側になるように配置した筒状フィルム内に内容物を入れた隅切りトレー2を収納し、該筒状フィルムの両方の開口部がその側面から内側に折り込み部を設けた状態で内部を脱気するとともに密封シールされた、ガゼット部6を有する予備包装体である。この折り込み部は必ずしも両側面に設ける必要はなく、一方の側面のみでもよく、また、両側面の場合は、左右の折込部の程度に差を設けても良い。図5はこれの平面図である。ここで縦シールは、熱収縮性フィルム端部の内側面同士を対向させて融着する合掌貼り方式、又は熱収縮性フィルム端部を重ねて内面と外面を融着する封筒貼り方式があり、該フィルムの両表面層のヒートシール特性を考慮して適宜選択すれば良いが、密封の完全性といった観点より、合掌貼り方式が好ましい。
【0011】
この予備包装体を得た段階で、通常はガゼット形状の密封シール部にその先端が外方に向かってY字状に分かれたツマミ部8を形成している。これは、包装体の密封シールがフィルムの最内層のシールに適した温度条件にて行うため、当然シール温度が高い最外層同士は融着しずらいために易開封に適したツマミ部が形成できるが、両表面層のシール温度に差があればあるほどこのツマミ部は容易に形成できる。
ここで、両表面層のヒートシール温度差とは、各々の表面層を構成する主体樹脂のヒートシール指標温度差が好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上である。このヒートシール指標温度が高い表面を最外層に配置して包装されたものであればよい。本発明において、ヒートシール指標温度とは結晶性樹脂の場合は、示差走査熱量計(DSC)によって10℃/分の昇温速度で測定された再融解ピーク温度であり、非結晶性樹脂の場合は同じくDSC法によってJIS−K7121に準拠して10℃/分の昇温速度によって測定されたガラス転移温度+30℃の温度をいう。
【0012】
また、ツマミ部の形成を容易にする補助手段として、最外層を架橋させて熱流動性を低下させたり、融着を阻害させるための塗布や添加剤を加えたりすることも可能であり、一方最内層には融着を促進するための粘着剤等を添加することも可能である。
この密封シール部の端部のツマミは両端に形成させる必要はなく、一端だけでも良い。この予備包装体を得た段階で、場合によってはY字状に分かれたツマミ部が見られないこともあるが、次の熱収縮完了後にツマミ部が形成されるか、またはそれでもツマミ部が形成されていなくても後述するようにわずかな力でY字状のツマミが形成することができる。
【0013】
縦シールを含め本発明の密封シールはヒートシールによるものであるが、ヒートシーラーとしては熱板シーラー、インパルスシーラー、超音波シーラー、バンドシーラー、熱風シーラー、高周波シーラー、フレームシーラー等がありこれらから適宜選択すればよい。また内部の脱気は、すべての開口部を密封シールしてしまう前に行われるもので、フィルムが熱収縮した際に、包装体が内部の気体によって膨れてしまうのを防止するためのものである。そして、この脱気を行うことで従来の収縮包装で用いられていた脱気孔を設けることなく、フィルムが被包装体に密着した包装体が得られる。
脱気の方法としては、最後の密封シール部を形成する寸前に、例えばスポンジ等の柔軟な材料で被包装物を押さえつけて内部の気体を押出すやり方の他、真空ポンプによる吸引のような周辺との圧力差を利用して脱気する方法があるが適宜選択すればよい。
【0014】
図6が、この予備包装体のトレー下側面のフィルムを先に熱収縮させて、開口部の密封シール部3を下方に引き付けた後、上面側のフィルムをシュリンクさせて得られた本発明の収縮包装体の例である。
得られた包装体は、前述の如く、場合によっては一見してツマミ部が形成されていない場合があるが、密封シール部端部のガゼット折込部に指を挿入すれば簡単にY字状のツマミが形成されるものである。開封時のツマミの利用の仕方はさまざまであるが、端部のY字型ツマミを各々両手でつまみ、上下に開くようにして開封するか、又は同様につまんで捻るようにして密封シール部に裂け目を生じさせることによって開封する等、容易に開封が可能となるが、ノッチのような切り欠きを適宜設けてもよい。
【0015】
熱収縮させる手段としては熱風が好ましいが温水、加熱スチーム、赤外線等を適宜用いることができる。また、上面側のフィルムのシュリンクは、トレーの上方からだけの加熱で行ってもよいが、全方向から熱風等を当てることで行ってもよい。ここで、トレー下側面のフィルムを先に熱収縮させて、開口部の密封シール部3を下方に引き付ける目的は、次に行うトレーの上面側のフィルムを熱収縮させる際に、この密封シール部が包装体の上面にずり上がって外観を損ねることを抑制するためのものである。従って、予備包装体のトレー下側面のフィルムを先に熱収縮させた時点において、該密封シール部は被包装物の上面に位置しないことを意味するものである。そして、次いで行うトレー上面側のフィルムを収縮して最終的に得られる収縮包装体における該密封シール部はその大部分が、好ましくは該密封シール部の横寸法の80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは横寸法の全てが最終包装体の側面ないしは底面に位置するものである。得られた収縮包装体には従来の包装方法で生じていた突起状物5は見られず、外観上好ましい商品性を有すると共に、従来突起状物5の先端部がもたらしていた隣接包装体へのピンホール発生等の損傷が大幅に改善される。
同様に図7〜図9は丼形状の容器を使用した場合の本発明の収縮包装体の例を示したもので、図10は蓋付容器を被包装物とした予備包装体を熱収縮させて得られた本発明の収縮包装体の例を示したものである。
【0016】
本発明方法において、該筒状フィルムの両方の開口部をその側面から内側に折り込み部を設けた状態で密封シールしてガゼット部6を有する予備包装体を成形する際、例えば、図2、図5、図8に示すガゼット形状を有する予備包装体の密封シール部横寸法Lsが、被包装物の上面から見た最大投影横寸法Li以下であることが好ましい。Liの測定は被包装物に対して十分な大きさの面積を有する互いに直角関係にある3枚の平板で構成された角形成体に被包装物を各板面に接触するように置き、同様な別の角形成体で被包装物を挟み込むようにして二つの角形成体の面間距離を測定する方法が簡便である。また、上記密封シール部はフィルムの熱収縮により多少湾曲する傾向にあるが、該密封シール部の両端の直線距離を測定しこれをLsとする。
【0017】
これにより熱収縮後に最終的に得られる包装体は熱収縮性に乏しいフィルムを使用したり、または開口部を密封シールする直前の脱気が若干不十分であっても、問題となる密封シール部の角部または先端部が縦シールと平行にある容器側面上よりも出っ張ることがなく、隣接する包装体への悪影響に対する改善効果が一層確実なものとなる。
次に、本発明でいう容器とは、トレーのみ、または蓋と本体で構成される容器類を含み、フードパックと称されるヒンジを有する蓋と本体が一体となったものをも含む。さらに、上記にはトレーの内側または蓋と本体の中間に位置する中皿を有していてもよい。容器がガス置換包装に用いられる場合は、特に蓋付の容器の場合にガスの置換が容易に行われるように蓋または本体、あるいは蓋と本体を嵌合した状態で開口部が設けられているのが通常であり、更に小袋タイプの脱酸素剤が収納可能な形状に成形されたものでも良い。これら容器の材質は特に制限はないが、公知の樹脂類、金属、紙、木材(パルプ含)、等から適宜単独または複合化されて使用されるが、透明性および形状の多様性という観点からの成形性が優れる点で、公知の樹脂類が好ましい。
【0018】
本発明で用いる熱収縮性フィルムは、好ましくはその熱収縮率が横方向で10%以上かつ縦方向で20%以上のものである。横方向の熱収縮率が10%以上であれば、熱収縮後のフィルムと被包装物の密着性が十分となり、フィルムにタルミやシワが生じにくい。一方、縦方向の熱収縮率が20%以上であれば、ガゼット形成のための折込の程度によって両端開放部の密封シール部が不規則な収縮を起こしにくい。横方向と縦方向の両方が同時に上記熱収縮率を満たすことが好ましく、熱収縮率の上限については特に制限はないが、熱収縮時の容器変形等を回避する上で、横方向と縦方向の熱収縮率は共に、90%以下であることが好ましい。
【0019】
さらに密封シール部をツマミとして利用し、易開封性をも有効に発揮させるための好ましい熱収縮率は、折込の程度にもよるが、横方向の熱収縮率が10〜70%かつ縦方向が20〜70%であり、より好ましくは横方向10〜60%かつ縦方向が20〜60%であり、更に好ましくは横方向が10〜50%かつ縦方向が20〜50%である。
なお、本発明における熱収縮率とは、100mm角のフィルム試料を所定の温度に設定したエアーオーブン式恒温槽に入れ、自由に熱収縮できる状態で10分間処理した後、横方向、縦方向の熱収縮寸法を求め、元の寸法で除した値の百分率で表すものとする。熱収縮温度は、実際の包装時の加熱収縮温度条件を考慮し、80℃から160℃の間の任意の温度で測定すればよい。
【0020】
熱収縮性フィルムを構成する樹脂としては、ヒートシールが可能である熱可塑性樹脂を含んでいれば特に制限はないが、例えば高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体(線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、および左記以外のX線法による結晶化度が30%以下の軟質樹脂等)、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン系樹脂(ホモ及びコモノマーとしてエチレン、ブテン等の少なくとも1種のαオレフィンとの共重合体)、ポリ4メチルペンテン系樹脂、結晶性1,2ポリブタジエン、上記エチレン−αオレフィン共重合体とは異なるαオレフィン共重合体よりなる軟質重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体およびその二重結合の少なくとも一部を水素添加処理した等の誘導体、左記以外のスチレン系エラストマー、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下、EVOHと記す)、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、生分解性樹脂(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート等)、およびこれらの変性重合体(酸変性、イオン化等)が挙げられ、これらの中から選ばれた1種、または2種以上の樹脂を混合したブレンド樹脂又はこれらの樹脂を主体として(50重量%以上含むことを意味する)上記以外の樹脂を混合したブレンド樹脂を用いることができる。
【0021】
本発明で用いる熱収縮性フィルムは多層構成であるが、同時押出成形加工によって得られたものが好ましいが、ラミネーションされたものでもよく、厚みは特に制限はないが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは10〜50μmである。
なお、両表面層に使用する樹脂は上記の該熱収縮性フィルムを構成する樹脂の例を含め、適宜選択すればよい。
また、本発明で用いる熱収縮性フィルムは架橋処理がされていてもよく、防曇剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、抗菌剤、着色剤、各種界面活性剤、アンチブロック剤、無機フィラー、粘着付与剤等を含ませることができ、また、コロナ処理やプラズマ処理、各種コーティング処理を施しておくこともできる。
【0022】
本発明による最も好ましい形態は、ガスバリアー性を有した熱収縮性フィルムを用いた場合であり、通常ガスバリア性のフィルムはその熱収縮性が乏しいものが多いため、本発明の包装方法は特に有用である。本発明の熱収縮性フィルムがガスバリア性フィルムである場合、そのバリア性は、好ましくは23℃、65%RHにおける酸素透過度の値で通常約30,000ml/(m・day・Mpa)以下であり、より好ましくは20,000ml/(m・day・Mpa)以下、さらに好ましくは10,000ml/(m・day・Mpa)以下、より更に好ましくは5000ml/(m・day・Mpa)以下である。なお、酸素透過度はASTM−D−3985の方法により測定される。
【0023】
ガスバリア層としては、EVOH、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリグリコール酸樹脂、等の少なくとも1種を含む樹脂層であったり、塩化ビニリデン系樹脂やポリビニルアルコール、EVOH、アクリル酸系樹脂、およびこれらの樹脂に無機フィラーを分散させたもの、等によるコート層を含むものでもよい。更に、酸素を嫌う内容物を包装する場合においては、酸素吸収層を配した多層構成であることが好ましい。
本発明においてはガスバリア性を有した熱収縮性フィルムは主としてガス置換包装に用いられ、使用するガスとしては、窒素、酸素、二酸化炭素、アルゴン、キセノン、クリプトン、アルコール類やアリルカラシ油、等があり、目的に応じてこれらのうちから単独または混合して使用される。本発明におけるガス置換方法としては、ガスフラッシュ法が一般的であるが、ガス置換率を向上する目的で適当な真空度による減圧処理とガスフラッシュを組み合わせてガス置換を行うことも可能である。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
層構成が、ポリアミド系樹脂/EVOH/接着性樹脂/エチレン−αオレフィン共重合体(最内層ヒートシール層)で、各層の厚み比率(%)が40/10/5/45、厚みが25μmのフィルムを用いて包装を行った。このフィルムのヒートシール指標温度差は75℃であった。なお、上記エチレン−αオレフィン共重合体層には非イオン系界面活性剤を主体とする防曇剤を2wt%含むものであった。このフィルムの酸素透過度は200ml/(m・day・Mpa)、120℃の熱収縮率がタテ22%、ヨコ24%であった。
被包装物には、内容物にダミーとして約100gの粘土を収納した蓋付容器を用いた。該蓋付容器は外寸が130mm(長さ)×110mm(横)×38mm(高さ)(容器本体の高さは21mm)、蓋にはガス置換用の孔が付設してあり、容器は各コーナー部が曲率半径約38mm、弧の長さ53mmの丸みを帯びた形状であり、容器の素材は蓋がポリスチレン製、本体は無機フィラー充填ポリプロピレン製のものを用いた。
【0025】
包装はガスフラッシュ方式によるガス置換が可能なピローシュリンク包装機にて毎分30パックの速度で連続的に行った。ガスフラッシュによって窒素/二酸化炭素=70/30(体積比)の雰囲気に置換された筒状フィルム内に被包装物を収納した筒状フィルムをエンドシーラーの前後の直近に設けたガゼット折り込みバーを押し込んで筒状フィルムの内側に折り込み部を設けた状態でまず前方を密封シールし、次いで筒状フィルムが前方へ移動し、同様に折込部が設けられた状態のもう一方の開口端から筒状内部の余分なガスをスポンジで抑えて脱気した後に該開口端を密封シールすることで、連続的にガゼット形状を有する予備包装体を成形した。この際、Ls/Liの値は88/110=0.80であった。
【0026】
これら予備包装体は引き続き、下部から熱風をあてて容器下面および側面のフィルムを収縮させた後、予備包装体の上部から更に熱風を当てて、タイトな仕上がりの包装体を得た。得られた包装体は、容器コーナー部にフィルムの突起状物が残っておらず綺麗な外観を有していた。また、フィルムは筒を形成した外面がポリアミド系樹脂であるため、密封シール端面がY字型になってツマミを形成しており、そのツマミを両手でつまんで引っ張ることで容易に開封できるものであった。
更に、得られた包装体を1段あたり4個を2段に積載して計8ケをダンボールに箱詰し、JIS Z0232の包装貨物−振動試験方法に準拠して振動を与えた後、包装体を取り出して三菱瓦斯化学(株)製「エージレス・シールチェック」にてピンホールの有無を調査した。振動試験条件は、ダンボール箱は固定し、加速度0.75G、振動数5〜50Hzで垂直方向に40分間、水平横方向に20分間、水平縦方向に20分の合計80分で行った。
その結果、包装体にはピンホールは認められなかった。
【0027】
(比較例1)
実施例1と同じフィルムを用いて、筒状フィルムの内側に折り込み部を形成せずに包装を行った以外は実施例1と同様にして収縮包装体を得た。このときの予備包装体のLs/Liは1.09であった。得られた包装体はコーナー部に明らかな突起が認められ、美観に劣り、しかも1つの突起の先端部は硬く尖っていた。この包装体を実施例1と同様な方法で振動試験を行い、ピンホールの発生をしらべたところ、8個中3個の包装体に、突起先端部に起因していると思われるピンホールが認められた。また、この包装体は手で開封することが極めて困難であり、ハサミ等の器具を用いる必要があり、易開封性に問題のある包装体であった。
【0028】
(実施例2)
実施例1と同様にして、層構成が、ポリプロピレン系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/非晶性ポリエステル/EVOH/接着性樹脂/エチレン−αオレフィン共重合体(最内層ヒートシール層)で、各層の厚み比率(%)が10/5/20/20/10/5/30、厚みが25μmのフィルムを用いて包装を行った。このフィルムのヒートシール指標温度差は22℃であった。なお、上記エチレン−αオレフィン共重合体層には非イオン系界面活性剤を主体とする防曇剤を各層に対し2wt%含み、またフィルムの酸素透過度は150ml/(m・day・Mpa)、120℃の熱収縮率がタテ35%、ヨコ33%であった。また、予備包装体のLs/Liは0.73であった。
得られた包装体はタイトな仕上がりであり、容器コーナー部にフィルムの突起状物が残っておらず綺麗な外観を有していた。また、実施例1と同様な条件で振動を与えて耐ピンホール性を調査したところ、包装体にはピンホールは認められなかった。さらに一見密封シール部が線状に綺麗に仕上がってはいるが、折り込み部を指先で引っ掛けるように引っ張るとシール端部が容易にY字型になってツマミを形成することが可能で、実施例1と同様にツマミを捻るように引張るとフィルムが容易に裂けて開封が可能であった。
【0029】
(比較例2)
層構成が、エチレン−αオレフィン共重合体/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/エチレン−αオレフィン共重合体で、各層の厚み比率(%)が38/7/10/7/38、厚みが25μmのフィルムを用いて実施例1と同様にして包装を行った。なお、上記両表面層のエチレン−αオレフィン共重合体は同一樹脂を用い、またこの各層には非イオン系界面活性剤を主体とする防曇剤が各層に対し1wt%含むものであった。このフィルムの酸素透過度は220ml/(m・day・Mpa)、100℃の熱収縮率がタテ40%、ヨコ34%であった。この包装における予備包装体のLs/Liは0.82であった。得られた包装体は容器コーナー部にフィルムの突起状物が残っておらず、タイトで綺麗な仕上がりであったが、手での開封は困難で易開封性に問題のあるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、食品包装等のシュリンク包装分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】隅切りトレーを使用した従来の包装方法による密封シール完了後、熱収縮前の予備包装体を示す斜視図。
【図2】図1に示した予備包装体の平面図。
【図3】図1に示した予備包装体を熱収縮させて得られる包装体を示す平面図。
【図4】隅切りトレーを使用した本発明のガゼット形状の予備包装体の例を示す斜視図。
【図5】図4に示した予備包装体の平面図。
【図6】図4に示した予備包装体を熱収縮させて得られる、密封シール部にツマミ部を有する本発明の包装体の例を示す斜視図。
【図7】丼形状の容器を使用した本発明のガゼット形状の予備包装体の例を示す斜視図。
【図8】図7に示した予備包装体の平面図。
【図9】図7に示した予備包装体を熱収縮させて得られる密封シール部にツマミ部を有する本発明の包装体の例を示す斜視図。
【図10】蓋付容器を被包装物とした、密封シール部にツマミ部を有する本発明の包装体の例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0032】
1 フィルム
2 トレーもしくは容器本体
3 開口部密封シール部
4 筒状フィルムを形成するためのヒートシール部(縦シール)
5 突起状物
6 ガゼット部
7 蓋
8 Y字状にわかれたツマミ部
Li 被包装物の上面から見た最大投影横寸法
Ls 予備包装体の密封シール部の横寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両表面層が異なるヒートシール温度を有する熱収縮性フィルムを用いて包装してなる収縮包装体であって、最内層に対してヒートシール温度が高い最外層を有する筒状の熱収縮性フィルムが熱収縮して被包装物に密着し、かつ該筒状フィルムの両端の少なくとも一方が側面から内側に折込まれたガセット形状の密封シール部を有していることを特徴とする収縮包装体。
【請求項2】
密封シール部の先端が外方に向かってY字状に分かれていることを特徴とする請求項1に記載の収縮包装体。
【請求項3】
密封シール部が下方に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の収縮包装体。
【請求項4】
熱収縮性フィルムがガスバリア性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の収縮包装体。
【請求項5】
熱収縮性フィルムの熱収縮率が、横方向で10%以上かつ縦方向で20%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の収縮包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−103751(P2006−103751A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292777(P2004−292777)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【Fターム(参考)】