説明

取っ手構造

【課題】 移動させたり持ち運ぼうとする製品の重量が重くなっても、コストを抑えて、容易にしっかりと握ることができる取っ手構造を提供する。
【解決手段】 除湿機1では、前面パネル、背面部、1対の側面部4、上面部、底面部によってケーシングが構成されている。側面部4の上部には、指を装着する差し入れ部4aが設けられ、その差し入れ部4aと、上面部における側面部4側の上面端部5aとによって取っ手構造が形成されている。差し入れ部4aに差し入れられた人差し指、中指、薬指および小指の4本の指差し入れ上面部に接触し、親指とその親指の付け根部分は上面端部5aに接触する。側面部4を正面から見て、差し入れ上面部および上面端部5aは、それぞれ下に向かって凸状の円弧の一部となるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は取っ手構造に関し、特に、電化製品を含め種々の物品に適用される取っ手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電化製品には室内で移動させたり、あるいは、持ち運びをするために取っ手が設けられている。そのような取っ手が設けられた従来の電化製品の一例として、特許文献1に開示された空気調和機(除湿機)について説明する。図10に示すように、空気調和機101では、ケーシングの所定の位置に空気を取り込むための吸込口102と、空気を吹出すための吹出口103,104が設けられている。そのケーシング内には、蒸発器、凝縮器および送風機(いずれも図示せず)等が配設されている。吸込口102よりケーシング内に取り込まれた空気は蒸発器によって冷風とされ、一方、凝縮器によって温風とされる。発生した冷風あるいは温風は、送風機によって吹出口103,104から室内に向かって送り出されることになる。
【0003】
そのような空気調和機101の上面部には、操作パネル105と持ち運び用の取っ手106が設けられている。また、空気調和機101の下面部には、移動を容易にするためのキャスタ(図示せず)が取り付けられている。この取っ手106は、通常の状態では上面部の側に倒された状態(実線の取っ手106a)とされる。一方、空気調和機101を移動させたり等する際には取っ手106が起こされた状態(想像線の取っ手106b)とされて、その起こされた取っ手106を掴むことで空気調和機101の移動等が行なわれることになる。
【特許文献1】特開2003−314855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電化製品等の取っ手においては次のような問題点があった。電化製品として、たとえば、より多くの機能をもたせることで重量が重くなったり、あるいは、部屋の大きさに対応するためにサイズを大きく等する場合には、その電化製品の重量や大きさに応じて取っ手の強度を補強する必要が生じる。そのため、上述した従来の取っ手106では、取っ手106の取り付け部分をより頑丈なものにしたり、取っ手106そのものにも強度をもたせる必要があり、コストがアップするという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、移動させたり持ち運ぼうとする物品の重量が重くなっても、コストを抑えて、容易にしっかりと握ることができる取っ手構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る取っ手構造は、所定の筐体に設けられ、人差し指、中指、薬指および小指の4本指と、これら4本の指と対向する親指およびその親指の付け根部分とで挟み込む態様の取っ手を有する取っ手構造である。その取っ手は、第1接触部と第2接触部とを備えている。第1接触部には4本の指が宛がわれる。第2接触部はその第1接触部と対向し、親指およびその親指の付け根部分が宛がわれる。第1接触部および第2接触部には、取っ手を挟み込んだ状態における手の形状に沿うように丸みがつけられている。
【0007】
この構造によれば、第1接触部および第2接触部に取っ手を挟み込んだ状態における手の形状に沿うように丸みがつけられていることで、取っ手を挟み込む際に4本の指が第1接触部にフィットするとともに、親指およびその付け根部分が第2接触部にフィットして、第1接触部と第2接触部との間の部分を確実に握りやすくすることができる。これにより、取っ手を挟み込む際に手に力が入れやすくなって、移動や持ち運びをより容易に、かつ、安全に行なうことができる。しかも、指が接触する部分の成型だけで、付加的な補強部材等も不要でコストの上昇も抑制することができる。
【0008】
また、そのような取っ手を左右1対配設させることで、より確実に移動や持ち運びを行なうことができる。
【0009】
取っ手を挟み込んだ状態における手の形状に沿うようにするには、第1接触部は、取っ手を挟み込んだ状態で4本の指の配列された方向に沿って下に向かって凸となるように形成され、第2接触部は、親指およびその親指の付け根部分に沿って下に向かって凸となるように形成されていることが好ましい。
【0010】
また、第1接触部には、第2接触部の側に向かって窪んだへこみ部を形成することが好ましく、これにより、取っ手をより確実に握ることができる。
【0011】
さらに、そのへこみ部は4本の指のそれぞれに対応する窪みを含むようにしてもよい。この場合には、4本の指をより確実に第1接触にフィットさせることができる。
【0012】
また、第1接触部には滑り止めのための所定の凹凸部が形成されていてもよい。
【0013】
この場合には、取っ手を挟み込んだ状態で指が抜けるようなことを抑制することができる。
【0014】
また、筐体は、上面部とその上面部の端部に接続された側面部とその側面部に設けられた凹部とを含み、第1接触部を上面部における端部の側に位置する面とし、第2接触部を凹部における上面部側に位置する面とすることが好ましい。
【0015】
これにより、筐体から突出しない取っ手とすることができる。
【0016】
その側面部に設けられた凹部は側面部と一体的に形成されていることが好ましい。
【0017】
これにより、組立て部材の点数を削減してコストを抑制することができる。
【0018】
また、側面部と凹部とは別体とされていてもよい。
【0019】
この場合には、凹部として手の形状を反映したより複雑な形状の凹部を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る取っ手構造の一例として、除湿機に設けられる取っ手構造について説明する。まず、除湿機の全体構造について説明する。図1および図2に示すように、除湿機1では、前面パネル2、背面部3、1対の側面部4、上面部5、底面部6によってケーシング7が構成されている。上面部5から前面パネル2の上端部にかけて前面吹出口9が形成されている。前面吹出口9には、空気を所定の方向に向かって吹出させるためのルーバ10が配設されている。背面部3には、第1吸込口12、第2吸込口13および背面吹出口14が形成されている。
【0021】
ケーシング7の内部では、背面部3側の上部に冷風を発生させるための蒸発器15が配設されている。その蒸発器15の下方には、温風を発生させるための凝縮器16が配設されている。蒸発器15と前面パネル2との間には、第1吸込口12から空気を吸込んで蒸発器15を通過させるためのクロスフローファン17が配設されている。また、凝縮器16と前面パネル2との間には、第2吸込口13から空気を吸込んで凝縮器16を通過させるためのシロッコファン18が配設されている。そのシロッコファン18と前面パネル2との間には、蒸発器15において結露した水分を貯留する排水タンク20が配設されている。
【0022】
クロスフローファン17とシロッコファン18との間には、凝縮器16によって発生した温風の流路を運転モードに応じて切り替えるための所定の流路ガイド19が配設されている。凝縮器16によって発生した温風を冷風と合流させて前面吹出口9から吹出させる第1の運転モードでは、流路ガイド19は、温風を前面パネル2の側に導くように回動され、冷風だけを前面吹出口9から吹出させる第2の運転モードでは、温風を背面吹出口14から吹出させるために温風を背面部3の側に導くよう回動される。なお、この運転モードの切り換え等は、上面部5に設けられた操作パネル11から行なわれることになる。
【0023】
そして、この除湿機1では、図1に示すように、側面部4の上部に指を差し入れる差し入れ部4aが設けられ、その差し入れ部4aと、上面部5における側面部4側の上面端部5aとによって取っ手構造8が形成されている。その取っ手構造8についてさらに詳しく説明する。図3および図4に示すように、差し入れ部4aには、手21の指のうち、人差し指22、中指23、薬指24および小指25の4本の指が差し入れられ、それらの指は差し入れ部4aにおける差し入れ上面部4aaに接触する。一方、この4本の指と対向する親指26とその親指の付け根部分は上面端部5aに接触する。こうして差し入れ上面部4aaと上面端部5aとの間の部分が、4本の指と親指等とによって挟み込まれることになる。
【0024】
その差し入れ上面部4aaは、4本の指の配列方向に沿って下に向かって凸となるように形成され、上面端部5aは親指および親指の付け根部分に沿って下に向かって凸となるように形成されている。すなわち、具体的には、図5に示すように、側面部4を正面から見て、差し入れ上面部4aaおよび上面端部5aは、それぞれ下に向かって凸状の円弧の一部となるように形成されている。その差し入れ上面部4aaの円弧の部分の半径Rは、たとえば約285mmとされ、また、上面端部5aの円弧の部分の半径rは約257mmとされる。そして、差し入れ上面部4aaと上面端部5aとの間隔Lは約28mmとされる。この差し入れ上面部4aaと上面端部5aとによる取っ手構造8は、図6に示すように、左右1対となるように互いに対向する側面部4にそれぞれ設けられている。
【0025】
上述した除湿機1の取っ手構造8では、人差し指、中指、薬指および小指の4本の指と、これらの指に対向する親指およびその付け根部分とで挟み込む態様の取っ手構造8が採用され、その取っ手構造8において、4本の指が接触する差し入れ部4aの差し入れ上面部4aaが凸状の円弧の一部となるように形成され、そして、親指とその付け根部分が接触する上面端部5aも、凸状の円弧の一部となるように形成されている。
【0026】
これにより、差し入れ上面部4aaと上面端部5aとの間の部分を4本の指と親指等とで挟み込む際に、4本の指が差し入れ上面部4aaにフィットするとともに、親指およびその付け根部分が上面端部5aにフィットして、差し入れ上面部4aaと上面端部5aとの間の部分が握りやすくなる。これにより、取っ手構造8を挟み込む際に手に力が入れやすくなって、たとえ除湿機1の重量が増えたとしても、除湿機1の移動や持ち運びをより容易に、かつ、安全に行なうことができる。しかも、指が接触する部分の成型だけで、付加的な補強部材等も不要でコストの上昇も抑制することができる。
【0027】
なお、上述した除湿機1における取っ手8構造としては、たとえば図7に示すように、差し入れ部4aにおいて差し入れられた4本の指が接触する差し入れ上面部4aaの部分に、上面端部5aの側に向かって窪んだへこみ4abを形成するようにしてもよい。これにより、指で挟み込む際に力がより入れやすくなる。また、このへこみ4abを4本の指の形状に合わせて形成するようにしてもよい。
【0028】
また、図8に示すように、差し入れ上面部4aaの部分に滑り止めのための凹凸部4acを形成するようにしてもよく、これにより、手が滑って差し入れ部4から指が容易に抜けるようなことがなくなって、移動や持ち運び等の安全性をさらに高めることができる。
【0029】
さらに、差し入れ部4aとしては、側面部4に凹みを一体的に形成した態様のものの他に、たとえば、図9に示すように、側面部4にあらかじめ設けた開口部4bに対して、差し入れ部に対応する差し入れ成型体44をその開口部4bに装着させる態様のものであってもよい。
【0030】
さらに、上述した実施の形態では、除湿機1に適用される取っ手構造8を例に挙げて説明したが、この取っ手構造8としては除湿機1に限られず、たとえば石油ファンヒータ等の他の電化製品、あるいは電化製品に限られず、たとえば家具や容器等の移動や持ち運び等にも適用することができる。
【0031】
なお、今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る取っ手構造を備えた除湿機の斜視図である。
【図2】同実施の形態において、図1に示す断面線II−IIにおける除湿機の断面斜視図である。
【図3】同実施の形態において、取っ手構造を示す第1の部分斜視図である。
【図4】同実施の形態において、取っ手構造を示す第2の部分斜視図である。
【図5】同実施の形態において、取っ手構造を示す部分平面図である。
【図6】同実施の形態において、取っ手構造を示す第3の部分斜視図である。
【図7】同実施の形態において、変形例に係る取っ手構造を示す部分断面図である。
【図8】同実施の形態において、他の変形例に係る取っ手構造を示す部分断面図である。
【図9】同実施の形態において、さらに他の変形例に係る取っ手構造を示す部分分解斜視図である。
【図10】従来の取っ手構造を備えた除湿機の斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 除湿機、2 前面パネル、3 背面部、4 側面部、4a 差し入れ部、4aa 差し入れ上面部、4ab へこみ、4ac 凹凸部、4b 開口部、44 差し入れ成型体、5 上面部、6 底面部、7 ケーシング、8 取っ手構造、9 前面吹出口、10 ルーバ、11 操作パネル、12 第1吸込口、13 第2吸込口、14 背面吹出口、15 蒸発器、16 凝縮器、17 クロスフローファン、18 シロッコファン、19 流路ガイド、20 排水タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の筐体に設けられ、人差し指、中指、薬指および小指の4本指と、これら4本の指と対向する親指およびその親指の付け根部分とで挟み込む態様の取っ手を有する取っ手構造であって、
前記取っ手は、
前記4本の指が宛がわれる第1接触部と、
前記第1接触部と対向し、前記親指および前記親指の付け根部分が宛がわれる第2接触部と
を備え、
前記第1接触部および前記第2接触部は、前記取っ手を挟み込んだ状態における手の形状に沿うように丸みがつけられた、取っ手構造。
【請求項2】
前記取っ手は左右1対配設された、請求項1記載の取っ手構造。
【請求項3】
前記第1接触部は、前記取っ手を挟み込んだ状態で前記4本の指の配列された方向に沿って下に向かって凸となるように形成され、
前記第2接触部は、前記親指および前記親指の付け根部分に沿った方向に対して、下に向かって凸となるように形成された、請求項1または2に記載の取っ手構造。
【請求項4】
前記第1接触部には、前記第2接触部の側に向かって窪んだへこみ部が形成された、請求項1〜3のいずれかに記載の取っ手構造。
【請求項5】
前記へこみ部は、前記4本の指のそれぞれに対応する窪みを含む、請求項4記載の取っ手構造。
【請求項6】
前記第1接触部には滑り止めのための所定の凹凸部が形成された、請求項1〜5のいずれかに記載の取っ手構造。
【請求項7】
前記筐体は、
上面部と、
前記上面部の端部に接続された側面部と、
前記側面部に設けられた凹部と
を含み、
前記第1接触部は前記上面部における前記端部の側に位置する面であり、
前記第2接触部は前記凹部における上面部側に位置する面である、請求項1〜6のいずれかに記載の取っ手構造。
【請求項8】
前記側面部に設けられた凹部は、前記側面部と一体的に形成された、請求項7記載の取っ手構造。
【請求項9】
前記側面部と前記凹部とは別体とされた、請求項7記載の取っ手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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