説明

取っ手

【課題】不使用時は取っ手の凹みをなくし、使用時には必要な凹みを現出させて取っ手として使用でき、また何れの部位も凹ませることができるようにして方向性をなくし、デザイン的な向上と施工性の向上を図る。
【解決手段】ケーシング1の前面に施された窓2の周辺に係止縁4を形成し、ケーシング1に後退可能に収納されたカバー5の背面を弾性押し圧部材3により弾発してその周縁15を上記係止縁4に弾接させる。使用時にカバー5を押すと押した部分が内方に凹み、係止縁4に指を掛けて襖や引戸を開閉できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、普段は凹みを意識させず、使用時は指先が掛かって戸の開け閉めをすることができ、しかも上下左右のいずれの側からでも指を掛けて使用でき、取り付けに当たっても方向性がなく施工性が良い取っ手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から襖などの引き戸には浅く凹んだ取っ手(引き手)が一般的に使用されている。
【0003】
しかし、平面の一部が取っ手の所だけ凹むことになり、デザイン的にアクセントになるものの、逆にそこがネックになることもあり、全体的に平面構成として統一させたい場合、単一性に欠ける欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、通常は凹みがなく、面としてのデザインに統一性を持たせることができ、しかも引き戸の開け閉め時には何れの側(部位)でも凹ませて指を掛けることができ、また方向性がないために取り付けの施工性が向上する取っ手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主たる特徴は、ケーシング1の前面に施された窓2の周辺に係止縁4を形成し、ケーシング1に後退可能に収納されたカバー5の背面を弾性押し圧手段3により前方に押し圧し、カバー5の周縁15を上記係止縁4に弾接させたことである。
【発明の効果】
【0006】
本発明にあっては上述のように、カバー5は背面が弾性押し圧手段3により前方に押し圧され弾発されているだけであるから、指で触れていない部位が係止縁に接触したままいわば軸となり、指で触ったところが凹んで指が係止縁4に掛かり、子供や年寄りのような力の弱い者でも軽い力で操作できるものであって、操作性が良好である。特に高いところの引戸を開け閉めする場合には、閉めようとする真横(左右)の側縁ではなく、下を押さえてもカバー5が凹んで指が掛かり、開け閉めがし易い。
【0007】
また、カバー5の背面が弾性押し圧手段3で弾発されていて、周辺の何れの部位も指で軽く押せば凹み、方向性がないため、取り付けは何れの向きに行なっても同一の機能を発揮するものであり、施工性が良い。
【0008】
更にデザイン面から見ると、通常はカバー5が前面に迫り出しているため、全体を平坦なデザインに納めることができるものであって、従来のように取っ手の部分が凹み、平面性を損なうことがなく、全体として壁面に溶け込む均一な平面デザインを達成できる。しかも凹みがなくなるので、長期使用に当たっても、取っ手部分にゴミがたまりにくい利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。図1において薄箱状のケーシング1はアルミニウムや鉄、銅等の金属、木、合成樹脂等の任意の素材で形成されるもので、全面に開口した窓2の周辺が内方に折り返されて係止縁4が形成され、この係止縁4をストッパとして、ケーシング1に収納されたカバー5はコイルばねを弾性押し圧部材3として用い、これにより後方から係止縁4の方に常時弾発されている。15は係止縁4に当接するカバー5の周縁である。尚、窓2の周辺を折り返さず、窓2の開口縁を直ちに係止縁4としても構わない。
【0010】
6は裏蓋で、その中央部には、必要に応じて弾性押し圧部材3保持用の係止凸部7が設けられ、また、カバー5の裏面にも必要に応じて同様の係止凸部8が設けられていて、弾性押し圧部材3の両端が係止凸部7、8に保持される。
【0011】
上記例では弾性押し圧部材3としてコイル状のばねを用いた例を示したが、線状のばねや板状のばねでも構わない。図5は蛇腹上の軟質樹脂容器に空気などの流体を密封した弾性体を弾性押し圧部材3に使用したものであり、図6は対になった板のばね両端を固着したものを弾性押し圧部材3として使用した例、図7は合成樹脂や金属の弾性体で複数の脚を周囲に突出させて変形自在としたものを弾性押し圧部材3とした例である。
【0012】
また図8は、カバー5を合成樹脂で成形するとともに、これと一体に弾性押し圧部材3を形成した例であって、弾性押し圧部材3がカバー5と一体であるため、別体の場合のように組み込む過程が不要となり、コストの低減が期待できると共に、弾性押し圧部材3はカバー5より外れることもないので、動作の安定性が向上する。尚、弾性押し圧部材3はその他、一対の線状ばねの中央部を枢支したものを用いたり、ガススプリングを用いても良い。いずれにしてもカバー5を裏面側より前面に弾性的に押し付けるものであれば制限なく使用できる。
【0013】
また、弾性押し圧部材3は一つのカバー5に対して一つ設ける他、任意の複数個を設けることができる。図9は4個の弾性押し圧部材3を用いた例を示す。
【0014】
全体の平面形状は図1では略正方形であるが、長方形、円、楕円、ひし形、三角形やその他の多角形、その他任意の形状とすることができる。また、図10はケーシング1に複数の窓を設け、その窓2の夫々にカバー5を装着したもので、いずれのカバー5も弾性押し圧部材により周縁15が係止縁4に弾発されている。この窓2の数、配列も任意である。
【0015】
(使用方法)
本発明取っ手は、図1のように襖や引戸等の戸面10の側端近くに施された凹所又は透口11に装着して施工し、使用されるもので、外観は一見、凹みがなく平坦であるが、窓2から見えるカバー5のどこを触ってもその部位が凹んで指が係止縁4に掛かり、左右上下の何れの方向にも戸を閉めることができる。指を離すとカバー5は元通りに復帰して平坦に戻る。
【0016】
尚、戸面10への取り付けが透口11の場合は、裏蓋6の周辺をケーシング1よりもやや外方に張り出すように形成して、透口11の裏側周辺に取り付けるようにすることができる。12は裏蓋6に施された取り付け穴で、ネジ孔13にネジ止めしてケーシング1に裏蓋6が装着される。14は裏蓋6を透口11周辺にネジ止めするための取り付け孔である。
【0017】
本発明にあって、使用しないときはカバー5は弾性押し圧部材3により前方に押し出され、周縁15が係止縁4に密着して窓2を塞いでいるが、例えば図3、図4、図8のA部分を矢印aの方向に押すと、B部分が軸となりA部分は弾性押し圧部材3に抗して内方に沈んで凹みができ、係止縁4にそのまま指を掛けて矢印b方向に引くことができる。引き終わり、力を抜くと弾性押し圧部材3でカバー5は元の状態に復帰する。逆の方向に引く時は、Bを押せば、その所が凹んで逆に引くことができる。上下の場合も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明にあっては、左右にスライドさせる襖や引戸に適用できる他、上下の引き違い戸、可動パーティション、天井や床の点検口蓋、キャビネットの押し込み可能な持上げ用取っ手等にも適用することができるもので、戸面や壁面の適所に施された取っ手装着用の凹所に本発明取っ手を装着して使用することができるもので、その場合に従来の引戸のように凹みが目立たず、平面的な壁状のフラットな外観を達成できる。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例の分解斜視図。
【図2】同上の逆方向からの斜視図。
【図3】同上の作用説明斜視図。
【図4】同上の作用説明断面図。
【図5】同上の蛇腹を用いた実施例の分解斜視図。
【図6】同上の合わせ板ばねを用いた実施例の分解斜視図。
【図7】同上の複数の脚をもつばねを用いた実施例の分解斜視図。
【図8】同上の複数の脚をもつばねをカバーと一体に成形した実施例の作用説明断面図。
【図9】同上の複数の弾性押し圧部材を用いた例の平面図。
【図10】同上の複数の窓を有する実施例を示すもので、(a)は一部切り欠いた側面図、(b)は平面図、(c)は底面図。
【符号の説明】
【0020】
1 ケーシング
2 窓
3 弾性押し圧部材
4 係止縁
5 カバー
15 周縁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング1の前面に施された窓2の周辺に係止縁4を形成し、ケーシング1に後退可能に収納されたカバー5の背面を弾性押し圧手段3により前方に押し付けてカバー5の周縁15を上記係止縁4に弾接させて成ることを特徴とする取っ手。
【請求項2】
カバー5を合成樹脂で形成し、弾性押し圧手段3をカバー5と一体に形成したことを特徴とする請求項1に記載の取っ手。
【請求項3】
窓2が複数個である請求項1又は2に記載の取っ手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−328796(P2006−328796A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153709(P2005−153709)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(305021845)
【出願人】(305021867)