説明

取り付け装置

【目的】 Tナット16に複数の寸法の係合部22を設けて、第1取り付け溝24だけでなく、第2,第3の取り付け溝にも用いる。
【構成】 Tナット16の第1係合部30は第1取り付け溝24に、第2係合部32は第2取り付け溝に、第3係合部34は第3取り付け溝に係合して、Tナット16がボルト14と共に回動することを防止すると共に、ボルト14が上方に抜けることを防止する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、工作機械のテーブル等に被加工物や治具等を取付ける際に、テーブル等に設けられた溝とナットが協働して被加工物や治具等をテーブルに固定するための取り付け装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、工作機械のテーブル等に被加工物や治具等を取り付ける際に、取り付け溝と係合するナットを用いた取り付け装置は、実開昭58−132629号公報に記載された取り付け装置が知られている。
【0003】
工作機械のテーブルには、被加工物の取り付け面に沿って延びている断面が逆T字状をなす取り付け溝が形成されており、その取り付け溝はテーブルの取り付け面に開口した開口部と、その開口部に連続し、且つ、開口部より幅の広い深部とから構成されている。取り付けに用いられるTナットは、平面形状略平行四辺形状のヘッド部とそのヘッド部の略中央に設けられた雌ネジ部とから構成されている。その略平行四辺形状をなすヘッド部の一方向の幅は、前記開口部の幅よりも狭く、開口部より取り付け溝内に挿入可能になっていると共に、その一方向とほぼ直交する他方向の幅が取り付け溝の深部の幅の寸法とほぼ等しい長さに設定され、その他方向とほぼ直交する平行四辺形の短辺側の側面(以後、係合面とする。)は、Tナットの回転に伴い取り付け溝の側壁面に係合可能となっている。
また、雌ネジ部に下端で嵌合するボルトには、その上端で被加工物を押さえる押え金が設けられている。更に、被加工物を取り付ける際にTナットの平行四辺形の鈍角頂部が取り付け溝の側壁面に衝突しないように、ヘッドは、平行四辺形の鈍角頂部において僅かに切取られている。
【0004】
工作機械のテーブルへの被加工物の取り付けは、Tナットの雌ネジ部にボルトの先端を少し嵌合させた状態で、次に、Tナットがボルトごと取り付け溝の開口部分から差し込まれた後、ボルトが回転させられる。すると、Tナットはその係合面がボルトの回転に伴い取り付け溝の側壁面に係合して停止するので、さらにボルトが回転されてその回転に伴ってボルトがTナットに嵌合する。こうして、テーブルから突出したボルト部分の長さが短くなり、被加工物が押え金により押え付けられて固定される。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、工作機やテーブル毎に取り付け溝の幅寸法が少しづつ相違するので、被加工物を工作機やテーブル毎に取り付けるためには、工作機やテーブル毎に寸法の異なるTナットを用意しなければならず、Tナットが複数個必要であった。Tナットを複数個所有することはその管理に手間がかかると共に、工作機械やテーブル毎に種類の異なるTナットを選別して使用しなければならず面倒であった。
【0006】
本考案は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ナットの管理の手間を削減すると共に、使い勝手が良い取り付け装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本考案の取り付け装置は、被加工物等を固定するテーブルの表面に開口する開口部とその開口部の幅より幅が広い深部とから成る取り付け溝に挿入されると共に、一方向の幅が取り付け溝の深部の幅の種類に応じて複数の寸法に設定された係合部を有するナットを備えている。
【0008】
【作用】
上記の構成を有する本考案の取り付け装置においては、取り付け溝に挿入されたナットとボルトとが係合して押え金が固定されて、それに伴い被加工物等が押え金によってテーブルに固定される。
【0009】
【実施例】
以下、本考案を具体化した一実施例を図面を参照して説明する。
【0010】
まず、取り付け装置の構成に付いて図1〜図5を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、被加工物10を図示しない3種類の工作機の第1テーブル12a乃至第3テーブル12cに取り付けることができる取り付け装置は、ボルト14と、そのボルト14の下端に嵌合されるTナット16と、そのボルト14の上端に設けられた被加工物10を押さえ付ける押え金18とから構成される。
この取り付け装置は、各工作機の第1テーブル12a乃至第3テーブル12cの被加工物の取り付け面に開口する開口部とその開口部に連続してその開口部より幅の広い深部とから構成される断面逆T字状を成す取り付け溝24,26,28に挿入されて、そのTナット16が取り付け溝24,26,28の下向きの面Dと内側壁M1,M2,M3とに係合した状態で固定されて図示するように被加工物10を固定する。
【0012】
図1及び図2に示すように、Tナット16は、前記ボルト14の下端と嵌合する円柱状の雌ネジ部20と雌ネジ部20の下端から水平に突出した平面形状略平行四辺形状を成す板状の係合部22から構成されている。図2乃至図5に示すように、Tナット16の係合部22の短手方向の幅はLであり、この係合部22の短手方向の幅Lは、Tナット16が各取り付け溝24,26,28内に挿入可能なように、取り付け溝24,26,28の各開口部の幅Wより狭い。一方、係合部22の前記短手方向と略平行に延びる両側面には、その両側面間において、第1係合幅L1,第2係合幅L2,第3係合幅L3という相異なる3種類の幅が生じるようにして第1係合部30,第2係合部32,第3係合部34が形成される。
【0013】
図3に示すように、このTナット16の、第1係合部30間に生ずる第1係合幅L1は、第1テーブル12aの第1取り付け溝24の深部の幅寸法W1と等しく、従って、第1係合部30は第1取り付け溝24の内側壁M1に係合可能である。
【0014】
図4に示すように、このTナット16の、第2の係合部32間に生じる第2係合幅L2は、第2テーブル12bの取り付け溝26の深部の幅寸法W2(=W1+P)と等しく、従って、第2係合部32は、第2取り付け溝26の内側壁M2に係合可能である。
【0015】
図5に示すように、このTナット16の、第3の係合部34間に生じる第3係合幅L3は、第3テーブル12cの取り付け溝28の深部の幅寸法W3(=W1+Q)と等しく、第3係合部34は、第3取り付け溝28の内側壁M3に係合可能である。
【0016】
尚、係合部22の鈍角部は、図示しないが僅かに切れ込みが入れられており、Tナット16が取り付け溝24,26,28内で回動可能になっている。この3種類の取り付け溝24,26,28の幅の大小関係はP<Qとして、W1<W2<W3である。また、取り付け溝24,26,28の開口部の幅W及び深さは等しい。
【0017】
従って、Tナット16の長手方向の両側面に第1係合幅L1、第2係合幅L2、第3係合幅L3という3種類の幅が生じるように第1係合部30,第2係合部32,第3係合部34を形成することで、Tナット16は3種類の第1取り付け溝24,第2取り付け溝26,及び第3取り付け溝28に共通して係合可能であり、従って、3種類の工作機のテーブル12a〜12c間で共用利用が可能である。よって、押え金18及びTナット16の保有数が最小数で済み、保管場所や製作コストが低減できる。また、どの工作機にどのTナット16を用いればよいか迷うことがなく選択できるので、被加工物10の固定に伴う段取り時間も短縮できる。
【0018】
尚、押え金18の一端には貫通孔36が鉛直方向に設けられ、ボルト14がその貫通孔36に挿通されている。この押え金18の貫通孔36の内径はボルト14の外径より大きくなっており、この押え金18はボルト14が回動してもボルト14とは一緒に回動しないが、ボルト14が上下に移動するとボルト14と一緒に上下移動する様に、この押え金18はボルト14の上端に固定されている。
ボルト14の下方先端が取り付け溝24,26,28に挿入されるので、その押え金18の下面より下のボルト14の長さ寸法は、被加工物10の高さ寸法より長く、被加工物10の高さと取り付け溝24,26,28の深さを合わせた寸法よりは短い。
【0019】
以下、被加工物12の取り付け動作に付いて図1〜図5を参照して説明する。
【0020】
まず、上端に押え金18を固定されたボルト14の下端が少しTナット16に嵌合され、続いて、Tナット16が、図2に示すように、Tナット16の長手方向が開口部に平行になる状態で、第1取り付け溝24の開口部に上方から挿入される。次に、ボルト14が回動させられると、図3のようにTナット16の第1係合部30と第1取り付け溝26の内側壁M1とが係合し、Tナット16はボルト14のその後の回動に伴いそれ以上回動できなくなる。そして、ボルト14がさらに回動されるとボルト14とTナット16との嵌合がさらに進むと共に、図1に示すように係合部22の上面が取り付け溝24の下向きの面Dに当接して、Tナット16の上方に抜けが防止される。そして、第1テーブル12aに置かれた被加工物10の上面に押え金18が当接するまで、ボルト14が回動させられ、被加工物10が工作機の第1テーブル12aに取り付けられる。
【0021】
また、別の工作機の第2テーブル12bに被加工物10を固定する場合も、Tナット16の長手方向が開口部と平行な向きで、ボルト14の下端が第2取り付け溝26に挿入される。次に、ボルト14が回動させられると、今度はTナット16の第2係合部32が、図4に示すように第2取り付け溝26の内側壁M2に係合して、被加工物10が第2テーブル12bに取り付けられる。
【0022】
更に、別の工作機の第3テーブル12cに被加工物10を固定する場合も、Tナット16の長手方向が開口部と平行な向きで、ボルト14の下端が第3取り付け溝28に挿入される。次に、ボルト14が回動させられると、今度はTナット16の第3係合部34が、図5に示すように第3取り付け溝28の内側壁M3に当接して、被加工物10が第3テーブル12cに取り付けられる。
【0023】
尚、工作機のテーブルに設けられた取り付け溝24,26,28は、断面の逆T字の溝に限らず、図6や図7の様な形状あったり、あるいはブロック等を組み合わせて溝状のものを形成して取り付け溝を形成しても良く、その場合には、その取り付け溝に係合するようにTナット16の形状を変形する必要がある。また、例えば、取り付け溝24の深部の内側壁M1がTナット16の回動を防止したが、係合部22が図1に示す開口部の側壁Eなど他の部分に係合することにより回動が防止されても良い。また、取り付け溝24,26,28に係合する係合部22は雌ネジ部20の下部に限らず雌ネジ部20の側面の略中央や上部に設けられても良い。更に、係合部22には3種類の係合部30,32,34を設けたが、係合部22に設ける数は、取り付け溝の数に応じて2種であったり4種であっても良い。係合部22の平面形状も多角形に限らず、スプラインなどから構成される曲形状であっても良い。
【0024】
【考案の効果】
以上説明したことから明かなように、本考案によれば、ナットに一方向の幅が取り付け溝の深部の幅の種類に応じて複数の寸法に設定された係合部を備えたことで、ナットの個数を最小限にして管理の手間を削減されるので、どのナットを使用するかの選別とメンテナンスとが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例の取り付け装置を備える工作機の図である。
【図2】取り付け装置を備える工作機の平面図である。
【図3】Tナット固定時の平面図で、Tナットの係合巾が一番小さい時の使用状態を示す図である。
【図4】Tナット固定時の平面図で、Tナットの係合巾が二番目に大きい時の使用状態を示す図である。
【図5】Tナット固定時の平面図で、Tナットの係合巾が一番目に大きい時の使用状態を示す図である。
【図6】他の取り付け溝の形状を示す工作機の要部側断面図である。
【図7】他の取り付け溝の形状を示す工作機の要部側断面図である。
【符号の説明】
10 被加工物
12a 第1テーブル
14 ボルト
16 Tナット
20 雌ネジ部
22 係合部
24 第1取り付け溝
26 第1取り付け溝
28 第1取り付け溝
30 第1係合部
32 第2係合部
34 第3係合部

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 被加工物等を搭載するテーブルの表面に開口する開口部と、その開口部の幅より幅が広い深部とから成る取り付け溝に挿入されると共に、一方向の幅が前記取り付け溝の深部の幅の種類に応じて複数の寸法に設定された係合部を有するナットを有することを特徴とする取り付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】実開平6−3536
【公開日】平成6年(1994)1月18日
【考案の名称】取り付け装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平4−42384
【出願日】平成4年(1992)6月19日
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)