説明

取付け位置確認用の手摺り

【課題】 住宅購入者にとって真に使い勝手の良い手摺りの取付け位置を、設計者の側からも、また住宅購入者の側からも、詳しく提案していくことができるようにすること。
【解決手段】 本考案は、本来の手摺りそのものではなく、手摺りの取付け位置を確認するのに用いられる取付け位置確認用の手摺り1である。この確認用手摺り1は、手摺り本体2に、これを取付け側4に保持せしめる吸盤3,3が備えられたものである。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、例えば住宅等において用いられる手摺りの取付け位置を確認するのに用いられる取付け位置確認用の手摺りに関する。
【0002】
【従来の技術及び課題】
家族に優しい住まい作りの一環として、浴室やトイレ、洗面脱衣室、上框・廊下部や階段など、さまざまなところに、安全用の手摺りが取り付けられるようになった。
【0003】
手摺りの取付け位置の決定は、住宅の設計段階で、設計担当者が住宅購入者のライフスタイルや家族構成を詳しく把握し、専門家としての経験とセンスに基づいて、その家族に最もふさわしい使い勝手の良い取付け位置を提案することによって行われる。しかし、住宅購入者は、この設計段階において、こうして提案された手摺りの取付け位置が実際に本当に使い勝手の良い取付け位置であるかどうかを確認する術をもたない。
【0004】
手摺りは、住宅購入者とその家族にとって、実際の日常生活の中で直接に触れかかわって使用される非常に身近なものであり、家族は、住宅購入後の日常生活の中ではじめて、その使い勝手の善し悪しを敏感に感じ取ることになる。少しでも使い勝手が悪いと、日常生活の中で頻繁にかかわりをもつものであるだけに、それにクレームをつけるかどうかは別としても、しっかりと取り付けられた手摺りを目の前にして、困惑し、不満をもつものである。
【0005】
そのため、住宅の設計段階において、設計者の提案した手摺りの取付け位置を住宅購入者がその場で体験的に確認でき、住宅購入者側からも必要に応じて取付け位置の微妙な変更を提案できるような、意思疎通の図りやすい事前の打ち合わせ環境づくりというものが必要となってくる。
【0006】
本考案は、このような背景において、住宅購入者にとって真に使い勝手の良い手摺りの取付け位置を、住宅設計者の側からも、また住宅購入者の側からも、詳しく事前提案していくことができるようにすることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、手摺り本体に、これを取付け側に保持せしめる吸盤が備えられてなることを特徴とする取付け位置確認用の手摺りによって解決される。
【0008】
本考案の取付け位置確認用の手摺りは、例えば、等身大の体験空間などを利用することにより、とりわけ有効的に活用することができる。
【0009】
即ち、住宅設計者は、その住宅購入者のライフスタイルや家族構成を把握し、経験とセンスに基づいて、その家族に最適な手摺りの取付け位置を、本考案の取付け位置確認用の手摺りを用いて、これを上記のような体験空間において実際に取り付けて、具体的に示して提案することができる。そして、提案を受けた住宅購入者は、その取付け位置が本当に使い勝手の良い最適な取付け位置がどうかを、その体験空間の中で、確認用手摺りに触れ、これを実際に手摺りとして機能させてみるなどすることによって、体験的に確認することができる。吸盤は、これを取付け側に押し付けて吸着させることによってしっかりと保持され、吸盤と取付け側の面との間の真空力によって、手摺り本体に通常の荷重をかけた程度では外れることはない。
【0010】
この体験的確認によって、住宅購入者側が取付け位置の微妙な変更を希望する場合は、吸盤を取付け側の面から外し、取付け位置を好みの位置に変更して取り付け直すことができる。吸盤は、内部に空気を導入すべく、例えば、吸盤の縁をむしり上げるなどすることによって容易に取り外すことができ、取付け位置を容易に別の位置に変更することができる。
【0011】
このようにして、住宅設計者と住宅購入者とが、設計段階で、住宅購入者にとって真に使い勝手の良い最適な手摺り取付け位置を体験的に探っていくことができ、使い勝手の最も良い取付け位置が決定され、このような決定に基づいて本来の手摺りの取付け施工が行われる。従って、住宅購入者は、住宅の購入後、手摺りの使い勝手の良さに心から満足し、これを永年にわたって重宝に使用していくことができる。
【0012】
特に、本考案の取付け位置確認用の手摺りは、吸盤を用いて手摺り本体を取付け側に保持させる構成としているから、取付け側は、吸盤を吸着させうるものでありさえすればよく、しかも、取付け位置を無段階に変更していくことができて、取付け位置の提案や変更を細かいレベルで正確に行っていくことができる。
【0013】
また、吸盤に代え、磁石の備えられた確認用手摺りによっても同様のメリットが得られる。磁石は、吸盤と同様に、取付け、取外しが容易であり、取付け位置も無段階に変更していくことができる。また、取付け側も、金属などの磁性体からなるものでありさえすればよい。
【0014】
【考案の実施の形態】
次に、本考案の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1(イ)(ロ)に示す取付け位置確認用の手摺り1は、棒状あるいはパイプ状の手摺り本体2と、この手摺り本体2を取付け側4に保持させるための吸盤3,3とを備えたものである。
【0016】
手摺り本体2は、実際に手摺りとして用いられる手摺り材の手摺り本体部をそのまま流用したものであってもよいし、あるいは、取付け位置確認用として特別に製作したものであってもよい。材質も各種の金属、合成樹脂など種々のものが用いられてよい。手摺り本体2の具体的形状やサイズは、住宅のどこに取り付けられて用いられる手摺りであるかなどを勘案し、それに合った各種の態様のものに設計されてよい。例えば、浴室用、トイレ用などによって使い勝手の良い形状・サイズというものがあり、それに則した形状に作成されたものであってよい。
【0017】
吸盤3,3は、軟質樹脂を椀状に成形した図示のような一般的なものが用いられている。最近では、吸盤3と取付け側4の面との間の空気を操作レバーなどによって強制的に抜くことによって強力な吸着力を発揮し得るタイプのものも提供されている。取付け位置を体験的に充分に確認するためには、取付け側4に保持させた確認用の手摺り本体2に触れてみるというだけではなく、手摺り本体2に自らの体重をかけて本来の手摺りとして機能させてみるというような極限的な使用状態での使い勝手も確認できればなおよい。そのような場合は、吸盤3,3として、それ自体で構造的にしっかりしたもの、また、上記のような強力な吸着力を発揮し得る特別な構造のものなどが用いられてよい。
【0018】
取付け側4は、上記のような取付け位置確認用の手摺り1の吸盤3,3を吸着させ得るような面、例えばタイル類をはじめ、金属や合成樹脂などによる凹凸のない平滑な面をもったものであればよい。
【0019】
最近では、住宅メーカーなどが、等身大の体験空間を作成し、これを利用して様々なシミュレーションを行いながら、住宅購入者の希望をひとつひとつ丁寧に確認していくことが行われている。手摺りの取付けが必要とされる箇所を想定して製作したこのような等身大の体験空間を利用し、その体験空間における壁面を確認用手摺り1の吸盤3,3を吸着させ得る面として用いることによって、手摺りの取付け位置の確認を有効的に行っていくことができる。
【0020】
上記の取付け位置確認用手摺り1は、例えばこのような体験空間を利用して、次のようにして、手摺りの取付け位置の確認に用いることができる。即ち、図2には、浴室を想定した体験空間において、浴槽6周りの浴室壁面4に取り付けられる手摺りの取付け位置の確認に、確認用の手摺り1を用いた例である。また、図3は、上框・廊下部を想定した体験空間において、その脇の壁面4に取り付けられる手摺りの取付け位置の確認に、確認用の手摺り1を用いた例である。実際の上框・廊下部における壁面4が吸盤3,3を吸着させ得ないようなものであっても、体験空間においては予め吸盤3,3を吸着させ得るような壁面に形成しておけばよい。
【0021】
手摺りの取付け位置の決定は、設計担当者が、まず住宅購入者から得た情報をもとにその住宅購入者に最適な取付け位置を、上記のような体験空間において、実際に取付け位置確認用の手摺り1を取り付けてみせて、具体的に提案する。そして、提案を受けた住宅購入者は、その取付け位置が本当に使い勝手の良い最適な取付け位置であるかどうかを、その体験空間の中で、確認用手摺り1に触れ、これを実際に手摺りとして機能させてみることによって、体験的に確認する。この体験的確認によって、住宅購入者が取付け位置の微妙な変更を希望する場合は、吸盤3,3の縁をむしり上げるようにして内部に空気を導入して取付け側4の面から外し、取付け位置を好みの位置に変更して取り付け直してみる。手摺り本体2を取付け側4に保持させるのに吸盤3,3を使用しているから、取付け位置を無段階に微妙に変更していくことができて、取付け位置の提案や変更を細かく行っていくことができる。このようにして、住宅設計者と住宅購入者とが、設計段階で、住宅購入者にとって真に使い勝手の良い最適な手摺り取付け位置を体験的に探っていくことができ、最適な取付け位置を決定することができる。
【0022】
図4(イ)(ロ)に示す取付け位置確認用の手摺り1は、手摺り本体2を取付け側4に保持させるために磁石5,5を使用したものである。吸盤に代え、磁石5,5を用いることによっても上記と同様にして、設計者との間で、住宅購入者にとって真に使い勝手の良い最適な手摺り取付け位置を体験空間において体験的に探っていくことができ、最適な取付け位置を決定していくことができる。
【0023】
以上に本考案の実施形態を示したが、本考案は、これに限られるものではなく、考案の技術思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、住宅購入に際し、住宅購入予定者と設計者とが、仮想の体験空間を利用してその中で、体験的に手摺りの取付け位置を確認していくのに用いた場合の例を示したが、その他、例えば、購入後の住宅に住人のあとからの希望により手摺りを後付けするような場合には、その取付け箇所が浴室などのようにそもそも吸盤3,3を吸着させ得るようなタイルなどの平滑な面を備えたものであれば、そのような面をそのまま利用して、現場にて確認用手摺りを用いて取付け位置の確認を行うというような用い方など各種の用い方がなされてよい。また、上記実施形態における確認用手摺りは、浴室の壁面、上框・廊下部の脇の壁面に取り付けられる手摺りの取付け位置の確認に用いられる確認用手摺りを具体例として示したが、階段脇の壁面、あるいは、トイレ内の便器の脇の壁面や洗面脱衣室の壁面などに取り付けられる各種手摺りの取付け位置の確認用として構成されたものであってよい。
【0024】
【考案の効果】
以上の次第で、本考案は、手摺りそのものではなく、手摺りの取付け位置を体験的に確認するために用いられる取付け位置確認用の手摺りであり、このような確認用手摺りにおいて、その手摺り本体に、これを取付け側に保持せしめる吸盤あるいは磁石を備えさせたものであるから、これを用いることによって、住宅の設計段階において、設計者の提案した手摺りの取付け位置を住宅購入者がその場で体験的に確認でき、住宅購入者側からも必要に応じて取付け位置の微妙な変更を提案できて、手摺りを住宅購入者に真に使い勝手の良い取付け位置に取り付けて、住宅購入者に確実に満足を与えていくことができる。
【0025】
しかも、手摺り本体を取付け側に保持させるための手段として吸盤や磁石を用いたものであるから、取付け側は、吸盤や磁石を吸着させうるものでありさえすればよく、のみならず、取付け位置を無段階に微妙に調整、変更しえて、最適な取付け位置を細かく探っていくことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】確認用手摺りの一実施形態を示すもので、図(イ)は取付け側に保持させる前の確認用手摺りを示す断面平面図、図(ロ)は確認用手摺りを取付け側の壁面に保持させた状態を示す断面平面図である。
【図2】確認用手摺りを浴室における手摺りの取付け位置確認に用いた場合の例を示す斜視図である。
【図3】確認用手摺りを上框・廊下部における手摺りの取付け位置確認に用いた場合の例を示す斜視図である。
【図4】確認用手摺りの他の実施形態を示すもので、図(イ)は取付け側に保持させる前の確認用手摺りを示す断面平面図、図(ロ)は確認用手摺りを取付け側の壁面に保持させた状態を示す断面平面図である。
【符号の説明】
1…取付け位置確認用の手摺り
2…手摺り本体
3…吸盤
4…取付け側
5…磁石

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 手摺り本体に、これを取付け側に保持せしめる吸盤が備えられてなることを特徴とする取付け位置確認用の手摺り。
【請求項2】 手摺り本体に、これを取付け側に保持せしめる磁石が備えられてなることを特徴とする取付け位置確認用の手摺り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【登録番号】第3046559号
【登録日】平成9年(1997)12月17日
【発行日】平成10年(1998)3月10日
【考案の名称】取付け位置確認用の手摺り
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−8050
【出願日】平成9年(1997)8月25日
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)