説明

取付け装置及び保護部材の取付け方法

【課題】光ファイバ同士の融着接続部を保持する保護部材を容易に取付け可能とする取付け装置及び保護部材の取付け方法を提供する。
【解決手段】取付け装置1は、保護部材60を載置する載置部11が設けられた本体部3と、載置部11を間に挟むように本体部3に取付けられ、光ファイバFを掛け渡すように保持する保持部5とを備え、保持部5は、光ファイバFを保持した状態において、載置部11に載置された保護部材60の上方に光ファイバF及び融着接続部Sが位置する第1の高さ位置と、光ファイバF及び融着接続部Sが保護部材60に近接する第2の高さ位置とに移動可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ同士の融着接続部を保護する保護部材を取付けるための取付け装置及び保護部材の取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバ同士が融着接続された融着接続部を保護・補強するための保護部材が知られている。保護部材は、折りたたみ可能な2つの保持部から構成され、融着接続された部分を上下方向から挟持することにより融着接続部を保護している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許4254865号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、保護部材を取付ける際には、捩れなどに起因する断線を防止するために、融着接続部が保持部の所定の位置に位置し、且つ光ファイバが保持部に形成された溝に位置するように、光ファイバの位置決めを正確に行わなければならない。しかしながら、例えば作業現場で保護部材の取付けを行う場合には、一方の手で保護部材を保持し、他方の手で光ファイバを保持して作業を行うことになる。そのため、光ファイバに撓みなどが生じ、融着接続部や光ファイバの位置決を正確に行うことが困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、光ファイバ同士の融着接続部を保持する保護部材を容易に取付け可能とする取付け装置及び保護部材の取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る取付け装置は、光ファイバ同士の融着接続部を挟持して保護する保護部材を光ファイバに取付けるための取付け装置であって、保護部材を載置する載置部が設けられた本体部と、載置部を間に挟むように本体部に取付けられ、光ファイバを掛け渡すように保持する保持部とを備え、保持部は、光ファイバを保持した状態において、載置部に載置された保護部材の上方に光ファイバ及び融着接続部が位置する第1の高さ位置と、光ファイバ及び融着接続部が保護部材に近接する第2の高さ位置とに移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
この取付け装置では、保護部材を載置する載置部と、載置部を挟んで配置され、光ファイバを掛け渡すように保持する保持部とを備えており、保持部は、光ファイバを保持した状態において、保護部材の上方に光ファイバ及び融着接続部が位置する第1の高さ位置と、光ファイバ及び融着接続部が保護部材に近接する第2の高さ位置とに移動可能に構成されている。取付け装置で保護部材を取付ける場合には、保護部材を載置部に載置すると共に、光ファイバを保持部にて保持する。そして、保持部が第1の高さ位置の状態において光ファイバ及び融着接続部の位置決めを行い、位置決めを行った後に保持部を第2の高さ位置にする。これにより、光ファイバ及び融着接続部の保護部材における位置決めを容易に行うことができる。したがって、光ファイバ同士の融着接続部を保持する保護部材を容易に取付けることが可能となる。
【0008】
保持部は、第1の高さ位置から第2の高さ位置に向かうにつれて、光ファイバを軸方向の外側に引っ張ることが好ましい。このような構成によれば、保持部が第2の高さ位置の状態にあるときに、光ファイバにテンション(張力)が加えられる。したがって、光ファイバの撓みをより抑制でき、保護部材取り付け後の光ファイバの捩れや蛇行を防止できる。その結果、光ファイバの断線を防止でき、信頼性の向上を図れる。
【0009】
本体部には、融着接続部の位置を設定するための位置決め部が設けられており、位置決め部は、載置部に保護部材が載置されたときに、当該保護部材において融着接続部が配置される所定の位置に対応する位置に設けられていることが好ましい。この位置決め部により、融着接続部の位置決めをより容易に且つ正確に行うことが可能となる。
【0010】
載置部には、当該載置部に保護部材が載置されたときに、保護部材の下方に空間を形成する窪み部が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、窪み部に作業者の指を挿入できるため、保護部材を載置部に載置するときや、保護部材を載置部から取り外すときの作業性の向上を図れる。
【0011】
本発明に係る保護部材の取付け方法は、光ファイバ同士の融着接続部を挟持して保護する保護部材を載置する載置部が設けられた本体部と、載置部を間に挟むように本体部に取付けられ、光ファイバを掛け渡すように保持する保持部とを備え、保持部が、光ファイバを保持した状態において、載置部に載置された保護部材の上方に光ファイバ及び融着接続部が位置する第1の高さ位置と、光ファイバ及び融着接続部が保護部材に近接する第2の高さ位置とに移動可能に構成されている取付け装置により保護部材を光ファイバに取付ける方法であって、載置部に保護部材を載置する載置工程と、保持部に光ファイバを保持する保持工程と、保持部に光ファイバを保持した状態において、光ファイバ及び融着接続部の位置決めを行う位置決め工程と、位置決め工程の実施後に、保持部を第1の高さ位置から第2の高さ位置に移動させる移動工程と、保護部材を光ファイバに取付ける取付け工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
この保護部材の取付け方法では、保護部材を載置する載置部と、載置部を挟んで配置され、光ファイバを掛け渡すように保持する保持部とを備えており、保持部は、光ファイバを保持した状態において、保護部材の上方に光ファイバ及び融着接続部が位置する第1の高さ位置と、光ファイバ及び融着接続部が保護部材に近接する第2の高さ位置とに移動可能に構成されている取付け装置を用いている。この取付け装置で保護部材を取付ける場合には、保護部材を載置部に載置すると共に、光ファイバを保持部にて保持する。そして、保持部が第1の高さ位置の状態において光ファイバ及び融着接続部の位置決めを行い、位置決めを行った後に保持部を第2の高さ位置にする。これにより、光ファイバ及び融着接続部の保護部材における位置決めを容易に行うことができる。したがって、光ファイバ同士の融着接続部を保持する保護部材を容易に取付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバ同士の融着接続部を保持する保護部材を容易に取付け可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】取付け装置を後方から見た斜視図である。
【図2】取付け装置を前方から見た斜視図である。
【図3】保護部材を示す斜視図である。
【図4】(a)は保持部を示す斜視図であり、(b)は保持部の一部を拡大して示す図である。
【図5】保護部材の取付け工程を示す図である。
【図6】保護部材の取付け工程を示す図である。
【図7】保護部材の取付け工程を示す図である。
【図8】保護部材の取付け工程を示す図である。
【図9】保護部材の取付け工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、説明中、「上」及び「下」なる語を使用することがあるが、これは各図の上下方向に対応したものである。
【0016】
図1は、取付け装置を後方から見た斜視図である。図2は、前方から見た斜視図である。各図示す取付け装置1は、光ファイバF同士の融着接続部S(図6参照)を保護する保護部材60(図3参照)を光ファイバFに取付けるための装置である。取付け装置1は、本体部3と、保持部5とを備えている。取付け装置1は、例えばABS樹脂などのプラスチック材料から形成されている。
【0017】
最初に、保護部材60について説明する。図3は、保護部材を示す斜視図である。保護部材60は、融着接続された光ファイバFの融着接続部Sを保護・補強する部材である。保護部材60は、第1保持部62と、第2保持部64とから構成されている。
【0018】
第1保持部62は、断面半円形状を呈している。第1保持部62の平坦部62aには、長手方向の両端部に溝66a,66bがそれぞれ形成されている。溝66a,66bは、光ファイバFの被覆Fa(図6参照)が位置する部分である。溝66a,66bは、第1保持部62の長手方向に沿って延びており、溝66a,66bの外側の端部には、テーパー68a,68bが形成されている。また、第1保持部62の平坦部62aには、粘着剤(図示しない)が全面に塗布されている。第1保持部62の湾曲部62bには、長手方向の両端部に凹部70a,70bがそれぞれ形成されている。凹部70a,70bは、上面視において矩形状を呈しており、湾曲部62bの頂部に設けられている。
【0019】
第2保持部64は、第1保持部62と同様の構成を有している。すなわち、第2保持部64は、断面半円形状を呈している。第2保持部64の平坦部64aには、長手方向の両端部に溝72a,72bがそれぞれ形成されている。溝72a,72bは、光ファイバFの被覆Faが位置する部分である。溝72a,72bは、第2保持部64の長手方向に沿って延びており、溝72a,72bの外側の端部には、テーパー74a,74bが形成されている。また、第2保持部64の平坦部64aには、粘着剤(図示しない)が塗布されている。第2保持部64の湾曲部64bには、長手方向の両端部に凹部76a,76bがそれぞれ形成されている。凹部76a,76bは、上面視において矩形状を呈しており、湾曲部64bの頂部に設けられている。
【0020】
保護部材60は、第1保持部62と第2保持部64が幅方向の一端で接合されている。保護部材60は、図3(a)に示すように、第1保持部62の平坦部62aと第2保持部64の平坦部64aとが平行な状態が初期状態であり、この平坦部62a,64aにわたって剥離シートH(図5(b)参照)が設けられている。保護部材60は、第1保持部62と第2保持部64とが折りたたまれる、つまり第1保持部62の平坦部62aと第2保持部64の平坦部64aとが対向するように2つに折りたたまれることにより、上下方向から光ファイバF及び融着接続部Sを挟持する。保護部材60は、長さが例えば40mm程度であり、光ファイバF及び融着接続部Sを保持した状態(第1保持部62と第2保持部64とが折りたたまれた状態)の直径φが例えば3.4mm程度である。
【0021】
図1及び図2に戻って、本体部3は、底部3aと、底部3aに立設された基体部3bと、基体部3bの両端部に設けられた側壁部3c,3dとから構成されている。側壁部3c,3dは、基体部3bにおける側面部3bBの面外方向に張り出している。本体部3の基体部3bには、開口部7と、載置部11と、位置決め部13と、剥離部15a,15bと、ガイド溝17a,17bとが設けられている。開口部7は、基体部3bの長手方向の中央部で且つ高さ方向の下部に形成されており、基体部3bの下方に開口している。
【0022】
載置部11は、保護部材60を載置する部分である。載置部11は、基体部3bの上面部3bAにおいて長手方向の中央部に設けられている。載置部11は、その断面が初期状態の保護部材60の外形形状に対応した形状となっており、断面半円形状の2本の溝が基体部3bの長手方向に沿って延びている。
【0023】
載置部11の中央部には、窪み部9が設けられている。窪み部9は、基体部3bの側面部3bB側から見て、半円形状に形成されている。窪み部9は、基体部3bの上面部3bAの位置から湾曲面状に窪んでいる。窪み部9には、載置部11に保護部材60が載置された状態で、保護部材60との間に空間を形成している。この空間は、作業者の指が入る程度となっている。
【0024】
また、載置部11には、凸部11a,11bが設けられている。凸部11a,11bは、保護部材60の凹部70a,70b又は凹部76a,76bに挿入される部分であり、窪み部9を挟んで離間して配置されている。凸部11a,11bは、保護部材60が載置部11に載置されたときに、凹部70a,70b又は凹部76a,76bに対応する位置に配置されている。凸部11a,11bは、凹部70a,70b及び凹部76a,76bに対応した形状を成しており、基体部3bの長手方向に沿って延在している。
【0025】
また、凸部11a,11bの上部には、延在方向に沿って溝11aA,11bAが形成されている。溝11aA,11bAは、凹部70a,70b又は凹部76a,76bの個体差による寸法の違いに対応するために設けられている。すなわち、溝11aA,11bAは、例えば凹部70a,70b又は凹部76a,76bの寸法が小さい場合において、挿入時に凸部11a,11bの先端が細くなるように変形する。
【0026】
位置決め部13は、光ファイバFの融着接続部Sが保護部材60において所定の箇所に位置するように、融着接続部Sの移動範囲を設定する部分である。すなわち、位置決め部13は、保護部材60において融着接続部Sが配置される所定の位置、つまり平坦部62a,64aの平面部分の長さに対応した幅を有している。位置決め部13は、板状の部材であり、基体部3bの上面部3bAから上方に突出している。位置決め部13は、載置部11に隣接して設けられている。載置部11は、基体部3bの幅方向の一端側寄りに設けられており、位置決め部13は、基体部3bの幅方向の他端側寄り設けられている。
【0027】
剥離部15a,15bは、載置部11に保護部材60が載置されたときに、剥離シートHを持ち上げる部分である。剥離部15a,15bは、載置部11の外側の端部に設けられており、載置部11を挟んで離間して配置されている。剥離部15a,15bは、基体部3bの上面部3bAから上方に突出している。剥離部15a,15bには、スリット15aA,15bAが形成されている。スリット15aA,15bAは、略V字状を呈している。このスリット15aA,15bAは、載置部11に保護部材60が載置された状態で光ファイバFがセットされたときに、保護部材60の第1保持部62又は第2保持部64の幅方向の略中央に光ファイバFが位置するように、光ファイバFの位置決めを行う。
【0028】
ガイド溝17a,17bは、基体部3bの上面部3bAに設けられている。ガイド溝17a,17bは、剥離部15a,15bの外側にそれぞれ形成されており、基体部3bの長手方向に沿って延びている。ガイド溝17a,17bは、剥離部15a,15bのスリット15aA,15bAと同一直線上に設けられている。
【0029】
側壁部3c,3dには、ガイド溝19a,19bが形成されている。ガイド溝19a,19bは、側壁部3c,3dの幅方向の中央部に、側壁部3c,3dの高さ方向に沿って設けられている。ガイド溝19a,19bは、後述する保持部5のガイドレール39a,39bをガイドする。側壁部3c,3dの上部には、スリット21a,21bが形成されている。スリット21a,21bは、略V字状を呈しており、基体部3bのガイド溝17a,17bと同一直線上に設けられている。
【0030】
次に、保持部5について、図4を参照して詳細に説明する。図4(a)は、保持部を示す斜視図であり、図4(b)は、保持部の一部を拡大して示す図である。図4に示すように、保持部5は、本体部3に着脱可能に構成されている。保持部5は、光ファイバFを把持する二つの把持部23a,23bと、把持部23a,23bを連結する連結部25とを有している。
【0031】
把持部23aと把持部23bとは、同様の構成を有している。以下では、把持部23aについて具体的に説明する。把持部23aは、クランプレバー27と、支持部29とから構成されている。クランプレバー27は、支持部29に回動可能に設けられている。クランプレバー27は、光ファイバFを上方から押さえつけて支持部29と協働で光ファイバFを把持する。クランプレバー27には、係止爪27aが設けられており、係止爪27aは、後述する支持部29の係止部30に係合する。クランプレバー27において、光ファイバFと当接する部分には、弾性部材Bが設けられている。弾性部材Bは、光ファイバFに傷などがつかないようするための保護部材である。
【0032】
支持部29は、枠状を成しており、クランプレバー27を回動可能に軸支している。支持部29には、その内部にガイド溝31が形成されている。ガイド溝31は、支持部29の側壁部29a,29bの対向方向に沿って延びている。また、支持部29の側壁部29a,29bには、スリット33a,33bが形成されている。このスリット33a,33bは、ガイド溝31を挟んで形成されており、ガイド溝31と同一直線上に位置している。ガイド溝31及びスリット33a,33bは、保持部5が本体部3に取付けられたときに、基体部3bに形成されたガイド溝17a,17bと同一直線上に位置する。
【0033】
支持部29の側壁部29cには、係止部30が設けられている。係止部30は、側壁部29cを一部切り欠いて形成されており、クランプレバー27が閉じられたときに、クランプレバー27の係止爪27aと係合する。この係止部30により、クランプレバー27の閉状態が維持される。
【0034】
側壁部29bの外面には、テーパー部35a,35bが設けられている。図4(b)に示すように、テーパー部35a,35bは、側壁部29bの下部から上部に向かって上り勾配となる傾斜面を有している。テーパー部35a,35bは、保持部5が本体部3に取付けられたときに、本体部3の側壁部3c,3dに当接する。
【0035】
連結部25は、略コ字状を呈している。連結部25は、長尺状の底部25aと、底部25aの両端部に立設された一対の立設部25b,25cとから構成されている。底部25aの中央部には、矩形状の操作部37が設けられている。操作部37の上面と底部25aの上面とは、略面一となっている。図1及び図2に示すように、操作部37は、保持部5が本体部3に取り付けられたときに、開口部7に位置する。
【0036】
立設部25b,25cの先端部には、把持部23a,23bが設けられている。この構成により、光ファイバFは、把持部23a,23bに掛け渡されるように保持される。立設部25b,25cの内面には、ガイドレール39a,39bがそれぞれ形成されている。ガイドレール39a,39bは、立設部25b,25cの高さ方向に延在している。このガイドレール39a,39bは、本体部3のガイド溝19a,19bに挿入される。なお、把持部23a,23bと連結部25とは一体成形されている。
【0037】
このような構成を有する保持部5を本体部3に取付ける際には、本体部3の下方から保持部5を装着する。本体部3に保持部5が装着されると、把持部23a,23bが本体部3の載置部11を挟むように配置される。つまり、把持部23a,23bは、本体部3の基体部3bの長手方向の両端部に位置する。また、保持部5の操作部37は、本体部3の開口部7に位置し、保持部5のガイドレール39a,39bは、本体部3の側壁部3c,3dに形成されたガイド溝19a,19bに挿入される。
【0038】
続いて、取付け装置1の動作について説明する。保持部5は、本体部3に対して上下方向に移動可能に構成されている。具体的には、保持部5は、本体部3のガイド溝19a,19bに沿ってガイドレール39a,39bがスライドし、本体部3に対して上下方向に移動する。保持部5の移動量は、本体部3の基体部3bに形成された開口部7の高さとなっている。すなわち、保持部5は、操作部37の上面が開口部7に当接する状態が最も高い高さ位置となる。また、保持部5は、操作部37が最下部まで押し下げられた状態が最も低い位置となる。以下の説明では、保持部5の最も高い高さ位置を第1の高さ位置とし、保持部5の最も低い高さ位置を第2の高さ位置とする。
【0039】
保持部5が第1の高さ位置では、把持部23a,23bに設けられたテーパー部35a,35bは、本体部3の側壁部3c,3dに当接しない。保持部5を押し下げると、把持部23a,23bに設けられたテーパー部35a,35bが側壁部3c,3dに徐々に当接する。そして、保持部5が第2の高さ位置では、把持部23a,23bに設けられたテーパー部35a,35bの最も本体部3側に張り出す部分が本体部3の側壁部3c,3dに当接する。これにより、把持部23a,23bは、外側に傾く。
【0040】
続いて、取付け装置1による保護部材60の取付け方法について、図5〜図9を参照しながら説明する。
【0041】
図5(a)に示すように、まず、取付け装置1を準備する。このとき、把持部23a,23bのクランプレバー27を開放状態にしておく。また、保持部5を第1の高さ位置にしておく。次に、図5(b)に示すように、保護部材60を載置部11に載置する(載置工程)。具体的には、第1保持部62と第2保持部64とが開いた状態の保護部材60を準備し、保護部材60の凹部76a,76bに載置部11の凸部11a,11bが挿入されるように、保護部材60を載置部11に載置する。そして、剥離部15a,15bにより持ち上げられた剥離シートHの一端を摘み、保護部材60から剥離シートHを剥離する。
【0042】
続いて、図6(a)に示すように、保持部5の把持部23a,23bに光ファイバFをセットする。具体的には、支持部29のスリット33a,33bに光ファイバFを挿入すると共に、ガイド溝31に光ファイバFが沿うように光ファイバFを支持部29にセットする。これにより、光ファイバFは、把持部23a,23bに掛け渡される。そして、図6(b)に示すように、一方の把持部23bのクランプレバー27を閉じ、光ファイバFを仮固定する。
【0043】
続いて、光ファイバFの融着接続部Sが位置決め部13に位置するように、光ファイバFの融着接続部Sの位置を調整する(位置決め工程)。このとき、把持部23aでは、クランプレバー27に設けられた弾性部材Bとガイド溝31とによって光ファイバFを把持(挟持)しているため(強固に固定されていないため)、光ファイバFの移動が適度に許可されている。そして、融着接続部Sの位置決めの後、図7(a)に示すように、もう一方の把持部23aのクランプレバー27を閉じ、光ファイバFを固定する(保持工程)。この状態では、保持部5は、第1の高さ位置に位置している。したがって、光ファイバF同士の融着接続部Sは、載置部11に載置された保護部材60の上方に位置している。
【0044】
続いて、図7(b)に示すように、保持部5の操作部37を押し下げ、保持部5を第2の高さ位置にする(移動工程)。このとき、図9に示すように、把持部23a,23bは、支持部29のテーパー部35a,35bによって、下方に向かうにつれて外側に傾く。これにより、把持部23a,23bに把持された光ファイバFが外側に引っ張られて光ファイバFにテンションが加えられる。光ファイバF同士の融着接続部Sは、テンションが加えられた状態で、保護部材60の第2保持部64の平坦部64aに近接(当接)する。つまり、保持部5が第2の高さ位置に位置している場合には、光ファイバF同士の融着接続部Sが保護部材60に近接する。
【0045】
また、保持部5が第2の高さ位置の状態では、光ファイバFが本体部3の基体部3bに形成されたガイド溝17a,17b及び剥離部15a,15bのスリット15aA,15bAに沿って配置される。これにより、光ファイバFの融着接続部Sは、一直線上に配置されると共に、保護部材60の第2保持部64の中央部に沿って位置する。
【0046】
そして、窪み部9に指を挿入し、図8に示すように、第1保持部62を第2保持部64側に折りたたむ。つまり、第1保持部62の平坦部62aと第2保持部64の平坦部64aとを対向させ、第1保持部62と第2保持部64とにより光ファイバFを上下方向から挟持する(取付け工程)。これにより、保護部材60は、第1及び第2保持部62,64の各平坦部62a,64aに塗布された粘着剤によって第1保持部62と第2保持部62,64とが接合される。最後に、把持部23a,23bのクランプレバー27を開放状態とし、保護部材60を載置部11から持ち上げる。この後、保護部材60を押圧して光ファイバFに粘着剤をなじませる。以上のようにして、光ファイバFの融着接続部Sに保護部材60が取付けられる。
【0047】
以上説明したように、取付け装置1では、保護部材60を載置する載置部11が設けられた本体部3と、載置部11を挟んで配置され、光ファイバFが掛け渡すように保持する保持部5とを備えており、保持部5は、光ファイバFを保持した状態において、保護部材60の上方に光ファイバF及び融着接続部Sが位置する第1の高さ位置と、光ファイバF及び融着接続部Sが保護部材60に近接する第2の高さ位置とに移動可能に構成されている。
【0048】
このような構成を有する取付け装置1で保護部材60を取付ける場合には、保護部材60を載置部11に載置すると共に、光ファイバFを保持部5にて保持する。そして、保持部5が第1の高さ位置の状態において光ファイバF及び融着接続部Sの位置決めを行い、位置決めを行った後に保持部5を第2の高さ位置にする。これにより、光ファイバF及び融着接続部Sの保護部材60における位置決めを容易に行うことができる。したがって、光ファイバF同士の融着接続部Sを保持する保護部材60を容易に取付けることが可能となる。
【0049】
また、保持部5における把持部23a,23bには、テーパー部35a,35bが設けられている。テーパー部35a,35bは、保持部5が本体部3に取り付けられた状態において、下方側から上方側に向かうにつれて本体部3側に張り出す傾斜部となっている。これにより、保持部5を第1の高さ位置から第2の高さ位置に移動させるにつれて、把持部23a,23bが外側に傾く。これにより、把持部23a,23bに保持された光ファイバFが軸方向の外側に引っ張られ、光ファイバFにテンションが加えられる。したがって、光ファイバFの撓みをより抑制でき、保護部材60取り付け後の捩れや蛇行を防止できる。その結果、光ファイバFの断線を防止でき、信頼性の向上を図れる。
【0050】
また、本体部3には、融着接続部Sの位置を設定するための位置決め部13が設けられている。この位置決め部13は、載置部11に保護部材60が載置されたときに、この保護部材60において融着接続部Sが配置される所定の位置に対応する位置に配置されている。したがって、融着接続部Sの位置決めをより容易に且つ正確に行うことができる。
【0051】
また、載置部11には、窪み部9が設けられている。そのため、窪み部9に作業者の指を挿入できるので、保護部材60を載置部11に載置するときや、保護部材60を載置部11から取り外すときの作業性の向上を図れる。
【0052】
また、取付け装置1では、載置部11に保護部材60が載置されたときに、剥離部15a,15bにより剥離シートHが持ち上げられる。したがって、保護部材60から剥離シートHを容易に剥がすことができる。
【0053】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、本体部3に窪み部9、位置決め部13及び剥離部15a,15bが設けられているが、これらは本体部3に設けられなくてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、載置部11の凸部11a,11bが保護部材60の第1保持部62又は第2保持部64に形成された凹部70a,70b又は凹部76a,76bに対応する形状となっているが、凸部11a,11bの形状はこれに限定されない。凸部11a,11bは、例えば複数の部材によって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…取付け装置、3…本体部、5…保持部、9…窪み部、11…載置部、13…位置決め部、60…保護部材、F…光ファイバ、S…融着接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ同士の融着接続部を挟持して保護する保護部材を前記光ファイバに取付けるための取付け装置であって、
前記保護部材を載置する載置部が設けられた本体部と、
前記載置部を間に挟むように前記本体部に取付けられ、前記光ファイバを掛け渡すように保持する保持部とを備え、
前記保持部は、前記光ファイバを保持した状態において、前記載置部に載置された前記保護部材の上方に前記光ファイバ及び前記融着接続部が位置する第1の高さ位置と、前記光ファイバ及び前記融着接続部が前記保護部材に近接する第2の高さ位置とに移動可能に構成されていることを特徴とする取付け装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記第1の高さ位置から前記第2の高さ位置に向かうにつれて、前記光ファイバを軸方向の外側に引っ張ることを特徴とする請求項1記載の取付け装置。
【請求項3】
前記本体部には、前記融着接続部の位置を設定するための位置決め部が設けられており、
前記位置決め部は、前記載置部に前記保護部材が載置されたときに、当該保護部材において前記融着接続部が配置される所定の位置に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の取付け装置。
【請求項4】
前記載置部には、当該載置部に前記保護部材が載置されたときに、前記保護部材の下方に空間を形成する窪み部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の取付け装置。
【請求項5】
光ファイバ同士の融着接続部を挟持して保護する保護部材を載置する載置部が設けられた本体部と、
前記載置部を間に挟むように前記本体部に取付けられ、前記光ファイバを掛け渡すように保持する保持部とを備え、
前記保持部が、前記光ファイバを保持した状態において、前記載置部に載置された前記保護部材の上方に前記光ファイバ及び前記融着接続部が位置する第1の高さ位置と、前記光ファイバ及び前記融着接続部が前記保護部材に近接する第2の高さ位置とに移動可能に構成されている取付け装置により前記保護部材を前記光ファイバに取付ける方法であって、
前記載置部に前記保護部材を載置する載置工程と、
前記保持部に前記光ファイバを保持する保持工程と、
前記保持部に前記光ファイバを保持した状態において、前記光ファイバ及び前記融着接続部の位置決めを行う位置決め工程と、
前記位置決め工程の実施後に、前記保持部を前記第1の高さ位置から前記第2の高さ位置に移動させる移動工程と、
前記保護部材を前記光ファイバに取付ける取付け工程とを含むことを特徴とする保護部材の取付け方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−255996(P2012−255996A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130190(P2011−130190)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【Fターム(参考)】