説明

取付装置

【課題】アンテナ等の機器を取り付けるための支柱を、ベランダや家屋の壁部(コンクリートフェンス等)に固定する取付装置において、その壁部を挟持する挟持力を調整するためのボルトを、支柱とは反対側から操作できるようにする。
【解決手段】壁部4を挟持する挟持部材12、14の内、一方の挟持部材12の背面には支柱16が連結され、他方の挟持部材14の背面にはL字形状に形成された枠体20の一方の直線部分が連結される。枠体20の他方の直線部分は、壁部4の上方位置にて、支柱16に突設された摺動部材18に対し軸方向に摺動可能に連結されている。枠体20におけるL字の屈曲部分で、連結部26の中心軸方向後端側には、連結部26の外側から内部に向かって挿入されたボルト30が設けられ、ボルト30の先端部分は、連結部26内で摺動部材18の先端部分に螺入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ等の機器をベランダや家屋の障壁に取り付けるのに好適な取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の取付装置としては、図7に示したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図7に示す従来の取付装置50は、ベランダ2の壁部(コンクリートフェンス等)4にアンテナ(図示せず)を固定するためのものであり、壁部4を挟持するための一対の挟持部材52、54を備える。
【0003】
そして、一方の挟持部材52の背面には、アンテナ取付用の支柱56を支持するための支持部材58が連結され、他方の挟持部材54の背面には、壁部4を跨ぐように2点で折り曲げられたアーム部材60の一端が連結されている。
【0004】
また、支柱56を支持した支持部材58は、挟持部材52との間で上下方向に開口した開口部を形成するよう、断面コの字状に形成されており、支持部材58の挟持部材52と対向する面には、外側から開口部内に向けてボルト62が挿通されている。
【0005】
また、開口部内には、アーム部材60の挟持部材54とは反対側端部が挿入され、その挿入された挟持部材54に、ボルト62が螺合されている。
この結果、図7に示した従来の取付装置50は、支持部材58の外側でボルト62の頭部を回転させることで、ボルト62におけるアーム部材60への螺入位置が変化し、これによって、挟持部材52、54における壁部4への当接面同士の間隔(換言すれば、挟持部材52,54による壁部4の挟持力)を調整できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−280814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように構成された従来の取付装置50によれば、挟持部材52、54における壁部4への当接面同士の間隔を簡単に調整できることから、取付対象となる壁部4の厚みが異なる場合でも、取付装置50自体を壁部4にしっかりと固定することができる。
【0008】
ところで、従来の取付装置50において、支柱56は、壁部4の壁面から離れた位置に配置される。このため、取付装置50をベランダ2の壁部4に取り付ける際には、ベランダ2の内側で支柱56が邪魔になることのないよう、取付装置50は、壁部4に対し、支柱56がベランダ2の外側に位置するように取り付けられる。
【0009】
しかし、このようにすると、調整用のボルト62も、ベランダの外側に配置されることになり、取付装置50を壁部4に固定するためにボルト62を回転させるときの作業性が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、アンテナ等の機器を取り付けるための支柱を、ベランダや家屋の障壁に固定する取付装置において、その障壁を挟持する挟持力を調整するためのボルトを、支柱とは反対側から操作できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の取付装置は、
取付対象となる壁部の表裏壁面にそれぞれ当接され、該壁部を挟持する第1挟持部材及び第2挟持部材と、
前記第1挟持部材の前記壁部への当接面とは反対側に連結されることにより、前記第1挟持部材を前記壁部に当接した際、中心軸が前記壁部の壁面と平行となるよう配置され、前記壁部よりも上方位置にて機器を取り付けるための棒状の支柱と、
L字形状に形成され、L字の一方の直線部分が、前記第2挟持部材の前記壁部への当接面とは反対側に連結されることにより、前記第2挟持部材を前記壁部に当接した際、前記壁部の壁面に沿って配置される支持部となり、L字の他方の直線部分が、前記壁部の上方で前記壁部の壁面に対し直交する方向に配置される連結部となるよう構成された枠体と、
前記支柱の中心軸方向中央部から、前記支柱の中心軸と直交する一方向に延設され、前記枠体の連結部内に、中心軸方向に摺動可能に挿通される摺動部材と、
前記枠体におけるL字の屈曲部分で前記連結部の中心軸方向後端側には、当該連結部の外側から内部に向かって挿入され、該挿入された先端部分が前記連結部内で前記摺動部材の先端部分に螺入されることにより、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とによる前記壁部の挟持間隔を調整可能なねじ部材と、
を備え、
前記枠体がL字に見える方向から前記第2挟持部材を見たとき、前記第2挟持部材の前記壁部への当接面が、前記連結部側ほど前記支持部の中心軸に近づくように、前記支持部の中心軸に対し傾斜していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の取付装置は、請求項1に記載の取付装置において、
前記摺動部材が挿入される前記連結部の開口部において、前記挟持部材とは反対側の外壁面は外方向に折り曲げられ、
前記連結部に挿入される前記摺動部材の先端部において、前記挟持部材側には、摺動時に生じる摩擦を低減するための樹脂部材が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の取付装置は、請求項1又は請求項2に記載の取付装置において、
前記第2挟持部材は、長尺状に形成され、前記支持部に対し、長手方向中央部を中心に回動可能に固定されており、
前記壁部を前記第2挟持部材との間で挟持する際には、当該第2挟持部材の長手方向中心軸が前記支持部の中心軸と直交すると共に、前記壁部への当接面が前記連結部側ほど前記支持部の中心軸に近づくように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の取付装置によれば、取付対象となる壁部の表裏壁面に当接される一対の挟持部材の内、第1挟持部材の背面は、機器を取り付けるための棒状の支柱に連結され、第2挟持部材の背面は、L字形状に形成された枠体の一方の直線部分である支持部に連結されている。
【0015】
また、支柱には、その中心軸方向中央部から中心軸と直交する一方向に延設され、枠体のもう一方の直線部分である連結部内に、中心軸方向に摺動可能に挿通される摺動部材が設けられている。
【0016】
そして、枠体におけるL字の屈曲部分で、連結部の中心軸方向後端側には、当該連結部の外側から内部に向かって挿入され、その挿入された先端部分が連結部内で摺動部材の先端部分に螺入されることにより、第1挟持部材と第2挟持部材とによる壁部の挟持間隔(換言すれば壁部の挟持力)を調整可能なねじ部材が設けられている。
【0017】
このため、本発明の取付装置によれば、枠体の連結部と支柱の摺動部材とを摺動可能に連結して、ねじ部材でその連結状態を保持し、枠体と支柱とを、一対の挟持部材の壁部への当接面同士が対向するように配置すれば、一対の挟持部材にて所望の壁部を挟持できるようになる。
【0018】
また、ねじ部材が連結部に挿入される部分は、枠体におけるL字の屈曲部分であり、支柱とは反対側であるため、一対の挟持部材を取付対象となる壁部を挟むように配置して、当該取付装置を壁部に固定する際には、支持部とは反対側でねじ部材を操作することができる。
【0019】
このため、本発明の取付装置によれば、ベランダ等で支柱を壁部の外側に配置した際、使用者は、壁部の内側からねじ部材を操作することができるようになり、従来装置のように、ねじ部材の操作性が低下することはない。
【0020】
ところで、ねじ部材は、従来装置のように、ねじ部材のアーム部への螺合により一方の近接部材に対し近接・離間される他方の挟持部材の背面側に配置されるのではなく、相互に摺動可能に連結される摺動部材及び連結部の中心軸上に配置される。
【0021】
このため、一対の挟持部材による壁部の挟持力を高めるために、ねじ部材を締め付けてゆくと、支柱の中心軸と枠体の支持部の中心軸とが平行状態から徐々にハの字状に変形してゆくことになる。
【0022】
従って、一対の挟持部材を、それぞれ、壁部への当接面が支柱の中心軸及び支持部の中心軸と平行になるように支柱及び支持部に固定すると、ねじ部材の締め付けにより支柱の中心軸と支持部の中心軸とがハの字状に変形した際、同時に、各挟持部材の壁部への当接面もハの字状になり、壁部の壁面への接触面積が少なくなって、壁部をしっかりと挟持することができなくなる。
【0023】
また、この場合、ねじ部材を更に締め付ければ、各挟持部材における壁部の壁面への接触面積を増加させることはできるが、このようにすると、各支持部材の支柱及び支持部への連結部分が変形して、強度が弱くなり、場合によっては、支持部材が支柱或いは支持部から外れてしまうという問題がある。
【0024】
そこで、本発明の取付装置では、枠体がL字に見える方向から第2挟持部材を見たとき、第2挟持部材の壁部への当接面が、連結部側ほど支持部の中心軸に近づくように、支持部の中心軸に対し傾斜している。
【0025】
このため、本発明の取付装置によれば、ねじ部材の締め付けにより支柱の中心軸と支持部の中心軸とがハの字状に変形した際、各挟持部材の壁部への当接面が平行に近づき、各挟持部材における壁部の壁面への接触面積が広くなって、壁部をしっかりと挟持することができるようになる。
【0026】
なお、第1挟持部材の壁部への当接面については、第2挟持部材と同様、支柱の中心軸に対し傾斜させてもよい。しかし、第1挟持部材の壁部への当接面を傾斜させると、ねじ部材の締め付け状態によっては、機器が取り付けられる支柱が壁部の壁面に対し傾斜し、見栄えが悪くなることも考えられるので、第1挟持部材の壁部への当接面は、支柱の中心軸に対し平行になるようにするとよい。
【0027】
また、本発明のように、挟持部材の壁部への接触面積を確保するには、第1挟持部材の支柱への取付部分や、第2挟持部材の支持部への取付部分に、支柱若しくは支持部の中心軸に対し第1挟持部材若しくは第2挟持部材を揺動可能に固定する固定部材を設けることも考えられる。
【0028】
そして、このようにしても、支柱の中心軸と支持部の中心軸とがハの字状に変形した際、各挟持部材における壁部の壁面への接触面積を増加させることはできる。
しかし、この場合、第1挟持部材や第2挟持部材を揺動可能に固定するための固定部材が必要になるため、取付装置のコストアップを招く。
【0029】
また、第1挟持部材や第2挟持部材を揺動可能に固定するようにすると、その揺動部分で強度が弱くなるため、その揺動部分を補強することが必要になり、その補強によって取付装置が大型化し、重量も増加するので、取付装置の軽量化の妨げになり、取付作業者にとっては、扱い難く、作業性の悪い取付装置となってしまう。
【0030】
これに対し、本発明の取付装置は、第2挟持部材を支持部に取り付ける際に、単に、壁部への当接面を支持部の中心軸に対し傾斜させるだけでよいため、こうした問題が発生するのを防止することができる。
【0031】
次に、請求項2に記載の取付装置においては、摺動部材が挿入される連結部の開口部において、挟持部材とは反対側の外壁面は外方向に折り曲げられ、連結部に挿入される摺動部材の先端部において、挟持部材側には、摺動時に生じる摩擦を低減するための樹脂部材が設けられている。
【0032】
これは、ねじ部材の締め付けにより、支柱の中心軸と枠体の支持部の中心軸とがハの字状になると、連結部の開口部においては、挟持部材とは反対側の開口端縁に、連結部内に挿入された摺動部材の側壁が当接され、摺動部材の先端部においては、挟持部材側端縁が連結部の内壁に当接されるためである。
【0033】
つまり、この当接部分では、枠体の連結部と摺動部材との摺動時に摩擦が発生して、摺動し難くなる。そこで、本発明では、上記のように構成することで、支柱の中心軸と枠体の支持部の中心軸とがハの字状になったときに、連結部及び摺動部材の先端部分が摺動部材及び枠体の連結部に当接されて、連結部と摺動部材とが摺動し難くなるのを防止している。
【0034】
この結果、本発明の取付装置によれば、第1挟持部材と第2挟持部材とによる壁部の挟持間隔(換言すれば壁部の挟持力)をより良好に調整することができるようになり、使用者にとって使い勝手のよい取付装置を提供することができる。
【0035】
また次に、請求項3に記載の取付装置においては、第2挟持部材が、長尺状に形成され、支持部に対し、長手方向中央部を中心に回動可能に固定されている。
そして、壁部を第2挟持部材との間で挟持する際には、第2挟持部材の長手方向中心軸が支持部の中心軸と直交すると共に、壁部への当接面が連結部側ほど支持部の中心軸に近づくように配置される。
【0036】
この結果、請求項3に記載の取付装置によれば、取付対象となる壁部の上方に間隔を空けて手摺り等の構造物が設けられている場合でも、長尺状の第2挟持部材の中心軸が支持部の中心軸と平行になるように第2挟持部材を配置することで、枠体を壁部と構造物との間に通して、第1挟持部材と第2挟持部材とで壁部を挟持できるようになる。
【0037】
また、第1挟持部材と第2挟持部材とで壁部を挟持する際には、支持部に対し第2挟持部材を回動させて、第2挟持部材の中心軸が支持部の中心軸と直交するように第2挟持部材を配置し、ねじ部材を操作する(換言すれば、締め付ける)ことにより、第1挟持部材と第2挟持部材とで壁部をしっかりと挟持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態の取付装置全体の構成を表す構成図である。
【図2】取付装置の壁部への取付状態を説明する説明図である。
【図3】枠体の連結部と摺動部材との先端部分の構成を表す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は一部破断側面図である。
【図4】枠体の支持部への挟持部材の取付構造を表す説明図であり、(a)は支持部に対し挟持部材を直交配置した状態を表し、(b)は支持部に対し挟持部材を平行に配置した状態を表す。
【図5】手摺りのある壁部に取付装置を取り付ける方法を説明する説明図である。
【図6】挟持部材の支持部への取付構造の変形例を表す説明図である。
【図7】従来の取付装置全体の構成を表す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
本実施形態の取付装置10は、図7に示した従来の取付装置50と同様、ベランダ2の壁部(所謂コンクリートフェンス)4にアンテナ(図示せず)を固定するためのものであり、壁部4を挟持するための一対の挟持部材12、14を備える。
【0040】
これら挟持部材12、14は、強度を確保するため、金属製であるが、壁部4への当接面には、ゴム若しくは合成樹脂からなる滑り止め用のパッド(図示せず)が設けられている。
【0041】
そして、一方の挟持部材(第1挟持部材)12の壁部4への当接面とは反対側(つまり背面)には、挟持部材12を壁部4に当接した際、支柱16の中心軸が壁部4の壁面と平行となるように、連結具15を介して、アンテナ取付用の棒状の支柱16が連結されている。
【0042】
また、他方の挟持部材(第2挟持部材)14の壁部4への当接面とは反対側(つまり背面)には、L字形状に形成された枠体20の一方の直線部分の先端部付近に連結されている。
【0043】
なお、支柱16、連結具15、枠体20及び後述の摺動部材18も、挟持部材12、14と同様、金属製である。
枠体20において、挟持部材14が連結される直線部分は、挟持部材14を支持する支持部22であり、挟持部材14は、枠体20が形成するL字の内側に配置され、支持部22を貫通するように設けられるボルト23及びナット24を介して、支持部22に固定されている。
【0044】
また、支柱16には、中心軸方向中央部から、その中心軸に直交するように、直線形状の摺動部材18が突設されている。
また、枠体20において、L字を形成し、且つ、支持部22とは異なる、他方の直線部分は、支柱16に突設された摺動部材18が、軸方向に摺動可能に挿入されることにより、支柱16と連結される連結部26となっている。
【0045】
また、枠体20におけるL字の屈曲部分で、連結部26の中心軸方向後端側には、連結部26の外側から内部に向かって挿入されたボルト30が設けられている。
このボルト30は、本発明のねじ部材に相当するものであり、ボルト30の先端部分は、連結部26内で摺動部材18の先端部分に螺入されている。
【0046】
このため、ボルト30は、連結部26の中心軸方向後端側で外部に突出された頭部を回動させることにより、ボルト30の連結部26への螺入位置(換言すれば、連結部26と摺動部材18とが中心軸方向に重なる重なり長さが変化し、一対の挟持部材12,14による壁部4の挟持間隔を調整できるようになる。
【0047】
そして、本実施形態では、挟持間隔調整用のボルト30が、枠体20におけるL字の屈曲部分で連結部26内に挿入され、支柱16とは反対側でボルト30を回転操作できる。
このため、本実施形態の取付装置によれば、ベランダ2で支柱16が邪魔になることのないよう、ベランダ2の壁部4の外側に支柱16が配置されるように取付装置10を壁部4に装着した際、使用者は、ベランダ2の内側からボルト30を操作することができるようになり、従来装置のように、ボルトの操作性が低下することはない。
【0048】
ところで、本実施形態の取付装置においては、ボルト30により近接・離間される摺動部材18と連結部26とが、挟持部材12、14で挟持される壁部4よりも上方に配置される。
【0049】
このため、取付装置10を壁部4にしっかりと固定するために、ボルト30を締め付けてゆくと、挟持部材12、14による挟持位置(換言すれば下端位置)での支持部22と支柱16との間隔に比べ、摺動部材18と連結部26との連結部分での支持部22と支柱16との間隔が狭くなって、支柱16の中心軸と支持部22の中心軸とが初期の平行状態からハの字状に変化することになる。
【0050】
そこで、本実施形態では、ボルト30を締め付けることによって、支柱16の中心軸と支持部22の中心軸とがハの字を呈するようになったとき(換言すれば取付装置10を壁部4にしっかりと固定したとき)に、挟持部材12、14の壁部4への当接面が支柱16及び支持部22の中心軸と平行になって、壁部4の壁面への接触面積が最大となるよう、挟持部材14の壁部4への当接面を、支持部22の中心軸に対し傾斜させている。
【0051】
つまり、図1の右上に記載の挟持部材14の拡大図から明らかなように、枠体20がL字に見える方向から挟持部材14を見たとき、挟持部材14の壁部4への当接面14aが、連結部26側(図の上方)ほど支持部22の中心軸22aに近づくように、支持部22の中心軸22aに対し傾斜している。
【0052】
このため、図2に示すように、本実施形態の取付装置10によれば、ボルト30の締め付けにより、支柱16の中心軸と支持部22の中心軸とがハの字を呈するように変形したとき、挟持部材12、14の壁部4への当接面が壁部4の壁面に対し平行に配置されて、各挟持部材12、14における壁部4の壁面への接触面積が広くなり、両挟持部材12、14にて壁部4をしっかりと挟持できるようになる。
【0053】
また、図2から明らかなように、ボルト30の締め付けにより、支柱16の中心軸と支持部22の中心軸とがハの字を呈するように変形した際には、摺動部材18が挿入される連結部26の開口部において、挟持部材14とは反対側(図では上方)の開口端縁に摺動部材18の側壁が当接され、摺動部材18の先端部では、挟持部材12側(図では下方)の端縁が挟持部材の内壁に当接される。
【0054】
そして、その当接部分では、連結部26と摺動部材18とが摺動し難くなる。
そこで、本実施形態では、図3に示すように、連結部26の開口部において、上側端縁部分には、外方向に折り曲げて曲折部26aを形成することにより、摺動部材18の側壁への当接部分に丸み(所謂R)が形成され、摺動部材18の先端部分において、下方には、樹脂片18aを装着するための切り欠き18bが形成されている。
【0055】
樹脂片18aは、摺動部材18と連結部26との間で摺動時に生じる摩擦を低減するためのものであり、合成樹脂にて形成されている。
このため、本実施形態の取付装置10によれば、ボルト30の締め付けにより、支柱16の中心軸と支持部22の中心軸とがハの字を呈するように変形した際、連結部26と摺動部材18とが摺動し難くなるのを防止し、挟持部材12、14の間隔調整を良好に実施することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、連結部26は、上面及び左右側面が断面コの字状を呈し、左右側面の下端部分をそれぞれ内側に折り曲げ、案内片26bを形成することで、摺動部材18の樹脂片18aが当接される下面を形成した、筒状(詳しくは筒の一部が中心軸に沿って開放されたレール状)に形成されているが、連結部26は外周全域が閉塞された筒状に形成してもよい。
【0057】
また、この連結部26に挿入される摺動部材18の先端は閉塞され、ボルト30を螺入するためのねじ孔18cが穿設されている。そして、切り欠き18bは、そのねじ孔18cが穿設された摺動部材18の最先端位置から中心軸方向に所定長さだけ内側に入った位置に形成されているが、この切り欠き18bの形成位置についても、ボルト30を締め付けた際に、樹脂片18aが連結部26の内壁(本実施形態では案内片26b)に当接される位置であればよい。
【0058】
次に、図4(a)に示すように、挟持部材14は、長尺形状に形成されており、壁部4に当接された際、枠体20が支持部22の中心軸周りに揺動することのないよう、支持部22の中心軸22aに対し、挟持部材14の中心軸が直交するように支持部22に固定されている。
【0059】
そして、挟持部材14の支持部22への固定は、挟持部材14の長手方向中央部にねじ孔を穿設し、そのねじ孔に上述したボルト23を挿通して、ナット24を用いてボルト23を締め付けることで行われるが、図4(b)に示すように、その締め付けを緩めることによって、挟持部材14は、中心軸が支持部22の中心軸22aと平行になるように配置することもできる。
【0060】
これは、図5に示すように、取付対象となる壁部4の上方に間隔を空けて手摺り6が設けられているような場合でも、枠体20の支持部22及び挟持部材14を、壁部4と手摺り6との間の隙間に通し、その後、連結部26を中心軸周りに略90度回転させることで、挟持部材12と挟持部材14とを壁部4を挟持可能な位置に配置できるようにするためである。
【0061】
つまり、挟持部材14の中心軸が支持部22の中心軸と直交するように、挟持部材14を支持部22に連結した状態では、図5に示すように手摺り6が設けられた壁部4に取付装置10を取り付けるのは困難であるが、本実施形態では、挟持部材14が支持部22に対し回動可能に取り付けられているので、壁部4の上に間隔を空けて手摺り6が設けられていても、挟持部材14を支持部22に対し回動させることで、壁部4に取付装置10を簡単に取り付けることができる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて、種々の態様をとることができる。 例えば、上記実施形態において、挟持部材12、14の間隔を調整するためのねじ部材として、ボルト30を使用するものとして説明したが、このねじ部材としては、ねじの頭部に「+」若しくは「−」のドライバ挿入部を設けたねじを使用するようにしてもよく、或いは、ねじの頭部に、使用者が手動操作可能な操作部を有するねじを使用するようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、図1〜図5では、枠体20を構成する連結部26及び支持部22の断面形状、連結部26内に挿入される摺動部材18の断面形状、挟持部材14の断面形状は、全て矩形形状であるものとして記載したが、これら各部の断面形状は、円形若しくは楕円形であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、図1の右上に記載した拡大図から明らかなように、挟持部材14の壁部4への当接面を横から見たときの挟持部材14の外形形状を、四角形から変形させた台形形状にすることで、挟持部材14の壁部4への当接面を、支持部22の中心軸22aに対し傾斜させている。
【0065】
これに対し、図6に示すように、挟持部材14の外形形状は四角形とし、支持部22における挟持部材14の取付部分を、支持部22の中心軸22aに対し傾斜させることで、挟持部材14の壁部4への当接面を、支持部22の中心軸に対し傾斜させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
2…ベランダ、4…壁部、6…手摺り、10…取付装置(実施形態)、12,14…挟持部材、15…連結具、16…支柱、18…摺動部材、18a…樹脂片、18b…切り欠き、18c…ねじ孔、20…枠体、22…支持部、23…ボルト、24…ナット、26…連結部、26a…曲折部、26b…案内片、30…ボルト(ねじ部材)、50…取付装置(従来)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象となる壁部の表裏壁面にそれぞれ当接され、該壁部を挟持する第1挟持部材及び第2挟持部材と、
前記第1挟持部材の前記壁部への当接面とは反対側に連結されることにより、前記第1挟持部材を前記壁部に当接した際、中心軸が前記壁部の壁面と平行となるよう配置され、前記壁部よりも上方位置にて機器を取り付けるための棒状の支柱と、
L字形状に形成され、L字の一方の直線部分が、前記第2挟持部材の前記壁部への当接面とは反対側に連結されることにより、前記第2挟持部材を前記壁部に当接した際、前記壁部の壁面に沿って配置される支持部となり、L字の他方の直線部分が、前記壁部の上方で前記壁部の壁面に対し直交する方向に配置される連結部となるよう構成された枠体と、
前記支柱の中心軸方向中央部から、前記支柱の中心軸と直交する一方向に延設され、前記枠体の連結部内に、中心軸方向に摺動可能に挿通される摺動部材と、
前記枠体におけるL字の屈曲部分で前記連結部の中心軸方向後端側には、当該連結部の外側から内部に向かって挿入され、該挿入された先端部分が前記連結部内で前記摺動部材の先端部分に螺入されることにより、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とによる前記壁部の挟持間隔を調整可能なねじ部材と、
を備え、
前記枠体がL字に見える方向から前記第2挟持部材を見たとき、前記第2挟持部材の前記壁部への当接面が、前記連結部側ほど前記支持部の中心軸に近づくように、前記支持部の中心軸に対し傾斜していることを特徴とする取付装置。
【請求項2】
前記摺動部材が挿入される前記連結部の開口部において、前記挟持部材とは反対側の外壁面は外方向に折り曲げられ、
前記連結部に挿入される前記摺動部材の先端部において、前記挟持部材側には、摺動時に生じる摩擦を低減するための樹脂部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の取付装置。
【請求項3】
前記第2挟持部材は、長尺状に形成され、前記支持部に対し、長手方向中央部を中心に回動可能に固定されており、
前記壁部を前記第2挟持部材との間で挟持する際には、当該第2挟持部材の長手方向中心軸が前記支持部の中心軸と直交すると共に、前記壁部への当接面が前記連結部側ほど前記支持部の中心軸に近づくように配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−90054(P2013−90054A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227064(P2011−227064)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】