説明

取引支援処理システム及び取引支援処理方法

【課題】より的確な値決めを効率的に行なうための取引支援処理システム及び取引支援処理方法を提供する。
【解決手段】クライアント端末10から洗替指示を受信した取引支援処理システム20の制御部21は、取引実績データ記憶部22から取引実績データを取得し、人気マップ作成処理を実行する。次に、取引支援処理システム20の制御部21は、ベース算出幅データ記憶部23を用いてベース算出幅の決定処理を実行する。取引支援処理システム20の制御部21は、人気マップに基づいて算出幅の変更処理を実行する。そして、取引支援処理システム20の制御部21は、PVテーブル作成処理を実行する。作成されたPVテーブルを取得した取引支援処理システム20の制御部21は、PVテーブルの記録処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デリバティブ(金融派生商品)について的確な値決めを効率的に行なうための取引支援処理システム及び取引支援処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デリバティブ(金融派生商品)等に関する取引を行なう場合、迅速かつ的確な値決めを行なうことが大切である。しかし、例えば、デリバティブは金融市場で決定される金利、ボラティリティ、為替レート等価格決定の要素となる基準価格(マーケットレートと呼ぶ)が刻一刻と変動し、マーケットレートをリアルタイムに把握する必要がある。また、マーケットレートを基にデリバティブの価格を算出するには、単純な線形変換ではなく確率計算やシミュレーションによって高度な計算処理を行なわなければ的確な値決めができない。このため、効率的に、デリバティブの値決めを行ない、インディケーション作成や成約を迅速に行なうためのデリバティブの販売管理方法も検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。この文献1に記載の技術によれば、発注者とトレーダがアプリケーション及びデータベースを共有することによって、発注者が値決めと約定を実行できるように構成する。トレーダはプライシングに必要なマーケット・データを常時更新する。次に、発注者は取引条件をウェブブラウザ画面から送信してトレーダ用のアプリケーションを直接操作する。次に、送信した取引条件に応じて送信時点におけるマーケット・データから計算されたプライスを確認しながら値決めを行なう。そして、成約の処理は、発注者がプライス確認後に送信する成約確認信号によって開始される。
【特許文献1】特開2002−56185号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、デリバティブの金利商品(スワップ、オプション等)については、将来のキャッシュ・フローを現在価値に割り引いて評価する。例えば、金利スワップ、通貨スワップ等のスワップにおいては、現在価値が等価なキャッシュ・フローを相対する当事者間で合意した条件の下で交換する取引である。オプション取引とは、基礎商品を、将来の一定期日までに、特定の価格(権利行使価格)で、売付け・買付けする権利(オプション)の取引である。そして、オプションの契約レートを「行使価格」(ストライク・プライス)と呼ぶ。
【0004】
このようなデリバティブで利用する現在価値(PV)の算出には時間がかかる。例えば、期限前解約特約付定期預金の値決めにおいては、商品の取引条件(商品属性)によりマトリクス化して一度に16種類の市場金利を提供する。1種類の市場金利を提供するには、7回のPVを算出する必要があり、合計112回の算出が必要である。ここで、取引条件を指定されてから16種類の市場金利を提供するまでの業務上の許容時間は約10秒である。従って、毎回、PVを算出していたのではタイムリーな取引が困難になる。
【0005】
そこで、事前にPVを算出したPVテーブルを準備しておくことにより、迅速な処理を実現することも可能である。しかし、PVテーブルの作成中は取引を行なうことができないため、このPVテーブルの作成に許容される時間にも制限(例えば、5分以内)がある。
【0006】
更に、PVを算出する場合に用いる想定市場金利の算出幅を細分化してPVを精緻化することにより、より的確な値決めを行ないたいというニーズもある。しかし、この算出幅を画一的に細分化した場合、PVテーブルの作成に要する時間が許容時間を超過してしま
う可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より的確な値決めを効率的に行なうための取引支援処理システム及び取引支援処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、商品属性毎に取引量を記録した取引実績データ記憶手段と、現在価値を算出する場合に用いる想定市場金利のベース算出幅と取引基準量に対応させて変更幅を記録した算出幅データ記憶手段と、現在価値と想定市場金利とを対応させた現在価値算出テーブルを算出する制御手段とを備え、金融商品の値決めを行なう取引を支援するためのシステムであって、前記制御手段が、前記現在価値算出テーブルの洗替の指示を取得した場合、前記取引実績データ記憶手段から、商品属性毎に取引実績を取得し、前記算出幅データ記憶手段を用いて、前記取引実績に対応した変更幅を取得し、現在価値の算出に用いるベース算出幅と変更幅とを用いて商品属性毎に算出幅を決定し、前記算出幅を用いて想定市場金利を変更して現在価値を算出し、現在価値と想定市場金利とを対応させた現在価値算出テーブルを生成することを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の取引支援処理システムにおいて、前記制御手段が、更に、現在価値算出テーブルを生成する演算装置の稼動状態に関する情報を取得し、この稼動状態に基づいて変更幅を算出して算出幅を決定することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の取引支援処理システムにおいて、前記算出幅の決定においては、前記演算装置の稼動状態に基づいて、所定時間内の演算可能量を算出し、前記ベース算出幅を用いての現在価値を算出するために必要なベース演算量を算出し、前記演算可能量からベース演算量を差し引いた追加演算可能量を算出し、前記追加演算可能量を、商品属性毎に取引実績に応じて割り振り、各追加演算可能量に基づいて算出幅を決定することを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、商品属性毎に取引量を記録した取引実績データ記憶手段と、現在価値を算出する場合に用いる想定市場金利のベース算出幅と取引基準量に対応させて変更幅を記録した算出幅データ記憶手段と、現在価値と想定市場金利とを対応させた現在価値算出テーブルを算出する制御手段とを備えた取引支援処理システムを用いて、金融商品の値決めを行なう取引を支援するための方法であって、前記制御手段が、前記現在価値算出テーブルの洗替の指示を取得した場合、前記取引実績データ記憶手段から、商品属性毎に取引実績を取得し、前記算出幅データ記憶手段を用いて、前記取引実績に対応した変更幅を取得し、現在価値の算出に用いるベース算出幅と変更幅とを用いて商品属性毎に算出幅を決定し、前記算出幅を用いて想定市場金利を変更して現在価値を算出し、現在価値と想定市場金利とを対応させた現在価値算出テーブルを生成することを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の取引支援処理方法において、前記制御手段が、更に、現在価値算出テーブルを生成する演算装置の稼動状態に関する情報を取得し、この稼動状態に基づいて変更幅を算出して算出幅を決定することを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の取引支援処理方法において、前記算出幅の決定においては、前記演算装置の稼動状態に基づいて、所定時間内の演算可能量を算出し、前記ベース算出幅を用いての現在価値を算出するために必要なベース演算量を算出し、前記演算可能量からベース演算量を差し引いた追加演算可能量を算出し、前記追加演算可能量を、商品属性毎に取引実績に応じて割り振り、各追加演算可能量に基づいて算出幅を決定することを要旨とする。
【0014】
(作用)
請求項1又は4に記載の発明によれば、取引支援処理システムは、現在価値算出テーブルの洗替の指示を取得した場合、取引実績データ記憶手段から、商品属性毎に取引実績を取得する。次に、算出幅データ記憶手段を用いて、取引実績に対応した変更幅を取得し、現在価値の算出に用いるベース算出幅と変更幅とを用いて商品属性毎に算出幅を決定する。そして、算出幅を用いて想定市場金利を変更して現在価値を算出し、現在価値と想定市場金利とを対応させた現在価値算出テーブルを生成する。これにより、金融商品の人気に応じて、より的確な値決めを行なうための現在価値算出テーブルを生成することができる。
【0015】
請求項2又は5に記載の発明によれば、現在価値算出テーブルを生成する演算装置の稼動状態に関する情報を取得し、この稼動状態に基づいて変更幅を算出して算出幅を決定する。これにより、演算装置の稼動状態を考慮して算出幅を決定することができる。
【0016】
請求項3又は6に記載の発明によれば、演算装置の稼動状態に基づいて、所定時間内の演算可能量を算出し、ベース算出幅を用いての現在価値を算出するために必要なベース演算量を算出し、演算可能量からベース演算量を差し引いた追加演算可能量を算出する。そして、追加演算可能量を、商品属性毎に取引実績に応じて割り振り、各追加演算可能量に基づいて算出幅を決定する。これにより、所定時間内に、金融商品の人気に応じて、より的確な値決めを行なうための現在価値算出テーブルを生成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より的確な値決めを効率的に行なうための取引支援処理システム及び取引支援処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図1〜図5を用いて説明する。本実施形態では、金融機関がデリバティブの販売や管理を行なう場合に用いる取引支援処理システム及び取引支援処理方法として説明する。本実施形態では、市場金利の下限値から上限値までの間を、所定の算出幅で順次変更させた想定市場金利毎に現在価値(PV)を算出し、データベースに記憶させておく。このPVを用いることにより、デリバティブの値決めを行なうことができる。
【0019】
図1に示すように、本実施形態では、クライアント端末10及び取引支援処理システム20を用いてデリバティブに関する取引の支援処理を行なう。
この取引支援処理システム20は、取引支援処理を実行するコンピュータシステムである。取引支援処理システム20は、CPU、RAM、ROM等の制御手段から構成された制御手段としての制御部21、取引実績データ記憶手段としての取引実績データ記憶部22、算出幅データ記憶手段としてのベース算出幅データ記憶部23及び変更幅テーブルデータ記憶部24やPVテーブルデータ記憶部25を備える。そして、取引支援処理システム20は、ネットワークを介してクライアント端末10と接続されており、各種データの交換を行なう。
【0020】
取引支援処理システム20の制御部21は、取引支援処理を行なうための各種データの管理処理(洗替指示の取得段階、商品属性毎の取引実績取得段階、現在価値の算出に用いる算出幅決定段階、現在価値算出テーブル生成段階の処理等)を行なう。そのための取引支援処理プログラムを実行することにより、制御部21は、図4に示すように人気マップ作成処理手段211、算出幅決定手段212、テーブル作成処理手段215として機能す
る。
【0021】
ここで、人気マップ作成処理手段211は、商品毎に取引実績を取得し、人気マップの作成処理を実行する。算出幅決定手段212は、取引実績に対応した変更幅を取得し、ベース算出幅と変更幅とに基づいて、PVテーブルを作成する場合に用いる算出幅を決定する。テーブル作成処理手段215は、決定した算出幅を用いて想定市場金利を変更させて算出したPVテーブルを生成する。
【0022】
取引実績データ記憶部22には、図2に示すように、デリバティブの取引実績データ220が記録されている。この取引実績データ220は、デリバティブに関する取引があった場合に逐次、登録される。取引実績データ220には、商品種別毎に、期間(トータル期間及び利払い期間)、取引実績量に関するデータが相互に関連付けられて記録されている。
【0023】
商品種別データ領域には、取引が行なわれた商品の種類を特定するための識別子に関するデータが記録される。
期間データ領域には、この商品種別において用いられる期間を特定するためのデータが記録される。本実施形態では、この期間データには、トータル期間及び利払い期間に関する要素から構成されており、それぞれが商品属性を決定する要素として機能する。
【0024】
取引実績量データ領域には、この商品種別の取引実績量に関するデータが記録される。本実施形態では、この商品属性に属する商品の取引があった場合に、取引実績量がカウントアップされる。
【0025】
ベース算出幅データ記憶部23には、PVテーブルを作成する場合に用いる刻み幅(算出幅)に関するデータが記録されている。本実施形態では、この算出幅を用いて、想定市場金利を変更してPVテーブルを作成する。ベース算出幅としては、PVテーブルを生成する場合には、取引を行なうために必要な幅であって、最も粗い値を設定する。
【0026】
変更幅テーブルデータ記憶部24には、図3に示すように、取引実績量に応じて算出幅を変更させるために用いる変更幅テーブル240が記録されている。この変更幅テーブル240は、本処理に先立ち予め登録される。変更幅テーブル240には、取引基準量に対応させて決定する変更幅に関するデータが相互に関連付けられて記録されている。ここでは、取引基準量が多くなれば、変更幅は小さくなるように設定されている。この結果、人気が高く取引実績量が多い場合には、小さな算出幅を用いてきめ細かなPVテーブルを作成することができる。
【0027】
PVテーブルデータ記憶部25には、現在価値算出テーブル(PVテーブル)に関するデータが記録される。このPVテーブルは、PV算出処理を実行した場合に更新記録される。PVテーブルには、商品属性(トータル期間及び利払い期間)毎に設定された商品について、指定された算出幅で変更した想定市場金利に対応させた現在価値に関するデータが相互に関連付けられて記録されている。
【0028】
更に、取引支援処理システム20は、演算処理管理装置30に接続されている。この演算処理管理装置30は、複数の演算装置(ここでは、演算処理サーバ31)の稼動状況を監視する。そして、演算処理管理装置30は、これらの演算処理サーバ31に実行させる演算処理の配分を行なう。
【0029】
以上のように構成された取引支援処理システム20を用いて、取引支援処理を行なう処理手順を、図5を用いて説明する。
まず、取引支援処理システム20は、洗替指示を取得する(ステップS1−1)。具体的には、担当者は、取引前や市場状況に応じてクライアント端末10に洗替の指示を入力する。この場合、クライアント端末10は、ネットワークを介して洗替指示を取引支援処理システム20に送信する。
【0030】
クライアント端末10から洗替指示を受信した取引支援処理システム20の制御部21は、人気マップ作成処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、制御部21の人気マップ作成処理手段211は、取引実績データ記憶部22から取引実績データ220を取得する。本実施形態では、商品属性(トータル期間及び利払い期間)毎に直近のデリバティブの取引実績量を取得する。これにより、2つの変数(トータル期間及び利払い期間)を用いて、金融商品の人気を取引実績量で表現した分布(人気マップ)を作成することができる。
【0031】
次に、取引支援処理システム20の制御部21は、ベース算出幅の決定処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、制御部21の算出幅決定手段212は、ベース算出幅データ記憶部23から、PVテーブルを生成する場合のベース算出幅に関するデータを取得する。そして、算出幅決定手段212は、商品属性毎に算出幅を設定したPVテーブル作成指示ファイルを生成する。この場合、すべての商品属性に対してベース算出幅を設定する。
【0032】
次に、取引支援処理システム20の制御部21は、人気マップに基づいて算出幅の変更処理を実行する(ステップS1−4)。具体的には、制御部21の算出幅決定手段212は、人気マップ作成処理手段211が算出した人気マップに含まれる取引実績量と、変更幅テーブルデータ記憶部24に記録された取引基準量とを、商品属性毎に比較する。取引実績量が取引基準範囲に含まれる場合には、算出幅決定手段212は、変更幅テーブル240を参照して取引基準範囲に対応する算出幅を取得する。そして、この商品属性に関して、PVテーブル作成指示ファイルの算出幅を、変更幅テーブル240から取得した算出幅に変更する。
【0033】
取引支援処理システム20の制御部21は、PVテーブル作成処理を実行する(ステップS1−5)。具体的には、制御部21のテーブル作成処理手段215は、ステップS1−3、S1−4において決定した算出幅を含むPVテーブル作成指示ファイルを演算処理管理装置30に供給する。このPVテーブル作成指示ファイルには、PVテーブルを作成する商品属性毎に算出幅の指定データが含まれる。
【0034】
PVテーブル作成指示ファイルを受けた演算処理管理装置30は、PVテーブル作成処理を演算処理サーバ31に割り振る。各演算処理サーバ31は、PVテーブル作成において指定された算出幅を用いて想定市場金利を変動させて現在価値を算出し、PVテーブルを作成する。そして、演算処理サーバ31は、作成したPVテーブルを取引支援処理システム20に返送する。
【0035】
作成されたPVテーブルを取得した取引支援処理システム20の制御部21は、PVテーブルの記録処理を実行する(ステップS1−6)。具体的には、テーブル作成処理手段215は、取得したPVテーブルをPVテーブルデータ記憶部25に記録する。これにより、取引支援処理システム20は、取引の値決め時にクライアント端末10からPVテーブルデータ記憶部25に記録されたデータを参照できるように開放する。
【0036】
以上、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
・ 上記実施形態では、洗替指示を受信した場合に、PVテーブルの作成処理を実行する。PV算出には計算時間を要するが、予めPVテーブルをPVテーブルデータ記憶部2
5に記憶しておくことにより迅速な値決めを行なうことができる。
【0037】
また、制御部21は、人気マップに基づいて算出幅の変更処理を実行する(ステップS1−4)。これにより、人気がある商品に関しては、精緻なPVテーブルを作成することができるので、的確な値決めを行なうことができる。
【0038】
・ 上記実施形態では、制御部21は、ベース算出幅の決定処理を実行する(ステップS1−3)。これにより、人気のない商品であっても、最低限の算出幅でPVテーブルを準備しておくことができる。
【0039】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、制御部21は、ベース算出幅の決定処理(ステップS1−3)、人気マップに基づく算出幅の変更処理(ステップS1−4)を実行する。そして、制御部21は、この算出幅を用いてPVテーブル作成処理を実行する(ステップS1−5)。第2の実施形態においては、更に、演算処理サーバ31の稼動状態を考慮して、算出幅を決定する。このため、制御部21は、図6に示すように、更に稼動状態取得処理手段213、算出幅変更手段214として機能する。この稼動状態取得処理手段213は、演算処理管理装置30から各演算処理サーバ31の稼動状態に関する情報を取得する。算出幅変更手段214は、この稼動状態に基づいて算出幅を変更する。
【0040】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図7を用いて説明する。ステップS2−1〜S2−3、S2−6、S2−7は、それぞれ第1の実施形態におけるステップS1−1〜S1−3、S1−5、S1−6と同じ処理である。
【0041】
第2の実施形態においては、更に、制御部21は、CPU稼動状態の取得処理を実行する(ステップS2−4)。具体的には、制御部21の稼動状態取得処理手段213は、演算処理管理装置30から、各演算処理サーバ31のCPUの稼動状況に関するデータを取得する。
【0042】
そして、制御部21は、算出幅の変更を実行する(ステップS2−5)。具体的には、まず、制御部21の算出幅変更手段214は、算出幅決定手段212により決定された算出幅を用いてPVテーブルを生成する場合に必要な演算量(ベース演算量)を算出する。例えば、演算量として、CPUにおける計算回数を用いる。
【0043】
そして、算出幅変更手段214は、稼動状態取得処理手段213が取得したCPU稼動状態に基づいて、所定時間内に計算可能な演算量(演算可能量)を算出する。ここで、所定時間とは、利用者がPVテーブルの作成待ちの待機許容時間である。本実施形態では、算出幅変更手段214は、待機許容時間に関するデータを予め保持している。
【0044】
次に、算出幅変更手段214は、演算可能量からベース演算量を差し引いた差分から追加演算可能量を算出する。そして、算出幅変更手段214は、この追加演算可能量を人気マップに応じて、各商品のPV算出処理に割り振る。具体的には、算出幅変更手段214は、人気マップにおける取引実績量を合計して取引総量を算出し、各商品の取引実績量を取引総量で除算した取引割合を算出する。
【0045】
次に、算出幅変更手段214は、演算可能量に対して商品毎の取引割合を乗算した割当演算量を算出し、各商品のPV算出処理に割り振る。そして、算出幅変更手段214は、商品毎に、この割当演算量を用いて計算可能な算出幅を決定する。
【0046】
そして、PVテーブル作成処理(ステップS2−6)においては、テーブル作成処理手
段215は、ステップS2−5において決定した算出幅をPV算出処理毎に指定したテーブル算出指示を作成し、演算処理管理装置30に供給する。
【0047】
以上、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
・ 上記実施形態では、制御部21は、CPU稼動状態の取得処理を実行する(ステップS2−4)。そして、算出幅変更手段214は、稼動状態取得処理手段213が取得したCPU稼動状態に基づいて、所定時間内に計算可能な演算量(演算可能量)を算出する。次に、算出幅変更手段214は、演算可能量からベース演算量を差し引いた差分を算出し、この差分を人気マップに応じて、各商品のPV算出処理に割り振る。これにより、待機許容時間を利用して、PVテーブルの精緻化を図ることができる。
【0048】
なお、上記実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
○ 上記第1、第2の実施形態では、商品属性を構成する要素としてトータル期間及び利払い期間を用いた。この商品属性は、商品の人気を評価できる要素であれば、種類や数についても、これらに限定されるものではない。
【0049】
○ 上記第1、第2の実施形態では、クライアント端末10から洗替指示を受信した取引支援処理システム20の制御部21は、人気マップ作成処理を実行する。具体的には、制御部21の人気マップ作成処理手段211は、取引実績データ記憶部22から取引実績データ220を取得する。人気マップの生成方法はこれに限定されるものではなく、各商品の人気を予測できるものであればよい。例えば、取引実績データ220から取引実績量の変化値を取得し、この変化値を考慮して、人気マップを生成してもよい。具体的には、取引実績量が増加傾向の場合には、算出幅を小さくする関数やテーブルを用いて人気マップの生成処理を行なう。これにより、将来の取引傾向を予測して、これに対応したPVテーブルを準備しておくことが可能である。
【0050】
○ 上記第1、第2の実施形態では、PVテーブル作成処理を実行する場合、テーブル作成処理手段215は、決定した算出幅をPV算出処理毎に指定したテーブル算出指示を、演算処理管理装置30に供給する。これに代えて、演算処理サーバ31においてベース算出幅を用いてPVテーブルを算出させた後、人気マップに基づいて算出した変更幅を用いて追加分を補足するように構成してもよい。具体的には、まず、取引支援処理システム20の制御部21は、ベース算出幅を用いてPVテーブルを作成する。そして、PVテーブルの作成完了後に、待機許容時間からPVテーブルの作成に要した時間を差し引いた残存時間を算出する。更に、この残存時間内に計算可能な演算量(演算可能量)を算出し、この演算量を、人気マップに基づいて各PV算出処理に分配する。そして、分配された演算量を用いて算出した変更幅により、PV算出処理を行なう。これにより、まず必要最小限のPVテーブルを取得し、時間的に余裕がある場合には、PVテーブルの精緻化を図ることができる。
【0051】
○ 上記第1、第2の実施形態では、人気マップ作成処理においては、制御部21の人気マップ作成処理手段211は、取引実績データ記憶部22から取引実績データ220を取得し、この取引実績量を用いて取引分布を作成する。これに加えて、取引分布を加工して人気マップを生成してもよい。例えば、取引分布に基づいて、各商品周辺の商品の取引量を予測することも可能である。具体的には、特定の商品の取引実績量を、この商品の商品属性(トータル期間及び利払い期間)の類似度(距離)に応じて分散させる。これにより、所定の商品の取引実績に基づいて、人気を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態のシステムの概略図。
【図2】取引実績データ記憶部に記録されたデータの説明図。
【図3】変更幅テーブルデータ記憶部に記録されたデータの説明図。
【図4】本発明の一実施形態の機能ブロックの説明図。
【図5】本発明の一実施形態の処理手順の説明図。
【図6】他の実施形態の機能ブロックの説明図。
【図7】他の実施形態の処理手順の説明図。
【符号の説明】
【0053】
10…クライアント端末、20…取引支援処理システム、21…制御部、211…人気マップ作成処理手段、212…算出幅決定手段、213…稼動状態取得処理手段、214…算出幅変更手段、215…テーブル作成処理手段、22…取引実績データ記憶部、23…ベース算出幅データ記憶部、24…変更幅テーブルデータ記憶部、25…PVテーブルデータ記憶部、30…演算処理管理装置、31…演算処理サーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品属性毎に取引量を記録した取引実績データ記憶手段と、
現在価値を算出する場合に用いる想定市場金利のベース算出幅と取引基準量に対応させて変更幅を記録した算出幅データ記憶手段と、
現在価値と想定市場金利とを対応させた現在価値算出テーブルを算出する制御手段とを備え、金融商品の値決めを行なう取引を支援するためのシステムであって、
前記制御手段が、
前記現在価値算出テーブルの洗替の指示を取得した場合、
前記取引実績データ記憶手段から、商品属性毎に取引実績を取得し、
前記算出幅データ記憶手段を用いて、前記取引実績に対応した変更幅を取得し、現在価値の算出に用いるベース算出幅と変更幅とを用いて商品属性毎に算出幅を決定し、
前記算出幅を用いて想定市場金利を変更して現在価値を算出し、現在価値と想定市場金利とを対応させた現在価値算出テーブルを生成することを特徴とする取引支援処理システム。
【請求項2】
前記制御手段が、更に、現在価値算出テーブルを生成する演算装置の稼動状態に関する情報を取得し、
この稼動状態に基づいて変更幅を算出して算出幅を決定することを特徴とする請求項1に記載の取引支援処理システム。
【請求項3】
前記算出幅の決定においては、
前記演算装置の稼動状態に基づいて、所定時間内の演算可能量を算出し、
前記ベース算出幅を用いての現在価値を算出するために必要なベース演算量を算出し、
前記演算可能量からベース演算量を差し引いた追加演算可能量を算出し、
前記追加演算可能量を、商品属性毎に取引実績に応じて割り振り、各追加演算可能量に基づいて算出幅を決定することを特徴とする請求項2に記載の取引支援処理システム。
【請求項4】
商品属性毎に取引量を記録した取引実績データ記憶手段と、
現在価値を算出する場合に用いる想定市場金利のベース算出幅と取引基準量に対応させて変更幅を記録した算出幅データ記憶手段と、
現在価値と想定市場金利とを対応させた現在価値算出テーブルを算出する制御手段とを備えた取引支援処理システムを用いて、金融商品の値決めを行なう取引を支援するための方法であって、
前記制御手段が、
前記現在価値算出テーブルの洗替の指示を取得した場合、
前記取引実績データ記憶手段から、商品属性毎に取引実績を取得し、
前記算出幅データ記憶手段を用いて、前記取引実績に対応した変更幅を取得し、現在価値の算出に用いるベース算出幅と変更幅とを用いて商品属性毎に算出幅を決定し、
前記算出幅を用いて想定市場金利を変更して現在価値を算出し、現在価値と想定市場金利とを対応させた現在価値算出テーブルを生成することを特徴とする取引支援処理方法。
【請求項5】
前記制御手段が、更に、現在価値算出テーブルを生成する演算装置の稼動状態に関する情報を取得し、
この稼動状態に基づいて変更幅を算出して算出幅を決定することを特徴とする請求項4に記載の取引支援処理方法。
【請求項6】
前記算出幅の決定においては、
前記演算装置の稼動状態に基づいて、所定時間内の演算可能量を算出し、
前記ベース算出幅を用いての現在価値を算出するために必要なベース演算量を算出し、
前記演算可能量からベース演算量を差し引いた追加演算可能量を算出し、
前記追加演算可能量を、商品属性毎に取引実績に応じて割り振り、各追加演算可能量に基づいて算出幅を決定することを特徴とする請求項5に記載の取引支援処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−272723(P2007−272723A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99757(P2006−99757)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(592131906)みずほ情報総研株式会社 (187)
【出願人】(592259978)株式会社みずほ銀行 (117)