説明

取水システム及び取水装置

【課題】所定濁度以下の常時安定した取水が可能でありながら、浄水処理のコストを抑えることができる取水システム及び取水装置を提供すること。
【解決手段】河川に設けられたダム2において、河川水がダム2を越流する越流部5aに設けられた第1集水部6と、ダム2の上流側底部に設けられた、濾過層9より河川水を取水する第2集水部11と、第1集水部6と第2集水部11からそれぞれ第1及び第2の独立した取水路7,12を介して給水した水を処理する浄水処理部4と、を備え、第1取水路7の濁度が基準値内では、第1取水路7から浄水処理部4へ給水し、第1取水路7の濁度が基準値を超えたら、第2取水路12から浄水処理部4へ給水するように切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1集水部と第2集水部からそれぞれ第1及び第2の独立した取水路を介して浄水処理部に水を給水する取水システム及び取水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の取水装置は、例えばダム貯水池等に設けられたダムの堤体の下部に取水ゲートと、更に取水ゲートの下方に排砂ゲートが配置されており、これら取水ゲートと排砂ゲートは堤体上部に設けられた同一の巻上機で昇降可能となっており、取水ゲートと排砂ゲート間に設けられた左右連結軸が、排砂ゲートに設けられた上下ロック用溝のいずれかと連結若しくは離脱することで、巻上機による取水路と排砂路の開閉が行なわれ、貯水池から農業用等の灌漑池に水を給水するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、浄水装置としては、例えば給水タンクが給水ラインを介して送水ポンプと、プレフィルターと、逆浸透膜モジュールと、それぞれ連通しており、更に、逆浸透膜モジュールは、系外給水ラインを介して給水口に接続されるとともに、還送ラインを介して給水タンクに接続されており、給水タンク内の原水を送水ポンプによりプレフィルターに送り込むことで、原水内の塩素や臭気元となる有機物を除去する前処理を行い、更に、前処理を行なった原水を逆浸透膜モジュールで不純物を含まない浄水と、濃縮水に分離し、浄水は系外給水ラインから給水口に給水し、濃縮水は還送ラインから給水タンクに戻し、再び浄水を生成しているものがある(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−205022号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】特開2007−136413号公報(第4頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の取水装置にあっては、雨等により泥や木の葉等の異物が水中に混入することで貯水池に貯えられた水が高濁度となると、灌漑池等に給水するには適さないために、水中の異物が沈殿して濁度が小となるまで取水を行うことができなかった。
【0006】
そこで、特許文献2に記載の浄水装置により、給水タンク内の水から浄水を生成することにより、飲料水等に使用可能な低濁度の水を得ることが考案されたが、高い浄水処理能力を有する逆浸透膜モジュールを用いると、逆浸透膜モジュールの交換等によりコストが嵩んでしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、所定濁度以下の常時安定した取水が可能でありながら、浄水処理のコストを抑えることができる取水システム及び取水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の取水システムは、
河川に設けられたダムにおいて、河川水が該ダムを越流する越流部に設けられた第1集水部と、前記ダムの上流側底部に設けられた、濾過層より前記河川水を取水する第2集水部と、前記第1集水部と前記第2集水部からそれぞれ第1及び第2の独立した取水路を介して給水した水を処理する浄水処理部と、を備え、
前記第1集水路の濁度が基準値内では、前記第1集水路から前記浄水処理部へ給水し、前記第1集水路の濁度が基準値を超えたら、前記第2取水路から前記浄水処理部へ給水するように切り換えることを特徴としている。
この特徴によれば第1集水路の濁度が基準値を超えた場合であっても濁度の低い第2取水路から浄水処理部へ給水できるので、常時安定した取水を行うことができる。また、浄水処理部に給水される水を処理する際には、1つの取水路から浄水処理部へ給水する従来のシステムで必要とした高度な浄化処理能力を有する設備を設ける必要が無く、浄水処理部のメンテナンスコストも抑えることができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の取水システムは、請求項1に記載の取水システムであって、
前記取水システムは、前記濁度が基準値よりも所定量大となる限界値を超えたら第2取水路を閉止することを特徴としている。
この特徴によれば、高濁度の河川水が濾過層を通過して第2取水口から第2取水路に取水されたと判断して、浄水処理部へ給水しないようにすることができる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の取水装置は、
河川に設けられたダムにおいて、該ダムの越流部に設けられた集水器と、前記ダムの上流側の砂利を含む濾過部を介して前記河川水を濾過可能な集水管と、前記集水器と該集水管で取水された水を処理する浄水処理部と、前記集水器と前記集水管を該浄水処理部にそれぞれ接続する第1及び第2取水管と、該各取水管に設けた駆動弁と、前記集水器で取水した前記河川水の濁度を測定する第1濁度計と、該濁度計で測定する濁度に応じて前記駆動弁を制御する制御部と、を備えた取水装置であって、
前記制御部は、前記集水器で取水した水の濁度が基準値を超えると、前記集水器に接続されている前記第1取水管の前記駆動弁を閉止し、且つ、前記集水管に接続されている前記第2取水管の前記駆動弁を開放し、水の濁度が基準値を下回ったら、前記集水管に接続されている前記第2取水管の前記駆動弁を閉止し、且つ、前記集水器に接続されている前記第1取水管の前記駆動弁を開放することを特徴としている。
この特徴によれば、ダムの設置された場所における取水する水の濁度が大雨等で変化しても、制御部が、取水する水の濁度に応じて集水器と下部濾過集水器のどちらで取水するかを選択することで、濁度の小さな水を常時安定して浄水処理部に給水することができる。
【0011】
本発明の請求項4に記載の取水装置は、請求項3に記載の取水装置であって、
前記取水装置には、前記集水管で取水された水の濁度を測定する第2濁度計が設けられており、前記制御部は、前記集水管から前記浄水処理部に給水しているときに、前記第2濁度計で測定された水の濁度が前記基準値を超えると、前記第2取水管の前記駆動弁を閉止することを特徴としている。
この特徴によれば、第2濁度計により集水管からの濁度を監視できるので、基準値以下の濁度の水を集水管から浄水処理部に給水することができる上に、浄水処理部にかかる負荷を減少させることができる。
【0012】
本発明の請求項5に記載の取水装置は、請求項3または4のいずれかに記載の取水装置であって、
前記濾過部は、上部の砂層と、下部の砂利層と、から構成される濾過層と、前記集水管に設けられた多数の細孔によって構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、濾過層の砂層と砂利層、そして集水管の細孔の3段階で河川水を濾過することができるので、第2取水管に濁度の低い水を給水できる。
【0013】
本発明の請求項6に記載の取水装置は、請求項5に記載の取水装置であって、
前記集水管には、前記濾過層で濾過された水の水位を測定する水位計が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、第2取水管から浄水処理部への給水可能量を確認することができるとともに、濾過層の濾過状況を確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る取水システム及び取水装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例1における取水装置の全体像を示す概略図であり、図2は、ダム本体を示す平面図であり、図3は、ダム本体を示す正面図であり、図4は、ダム本体を示す縦断側面図であり、図5は、取水管部と浄水処理部を示す概念図であり、図6は、取水システムの構成を示すブロック図であり、図7は、第1濁度計と第2濁度計の濁度の組合せによる濁度対応表であり、図8は、開閉パターン毎の各駆動弁の開閉を示す開閉パターンテーブルであり、図9は、制御回路で行われる駆動弁開閉処理を示すフローチャートである。以下、図2、図4、図5の紙面左側を取水装置の正面側とし、図3の紙面手前側を取水装置の正面側として説明する。
【0016】
図1の符号1は、本発明の適用された取水装置であり、河川に設けられたダムで工業用水や飲料水等を採取し、配水を行う装置である。この取水装置1は、図1に示すように、大きく分けて河川から河川水を取水するダムとしてのダム本体2と、ダム本体2で取水した河川水を、取水した河川水の濁度に応じて後述する浄水処理部4に給水するか、河川に排水するかを選択可能な取水管部3と、取水管部3から給水された河川水を、工業用水や飲料水等に使用可能なように処理を行う浄水処理部4と、から構成されている。
【0017】
先ず、ダム本体2について説明すると、図2ないし図4に示すように、ダム本体2は、河川を堰き止める堤体5と、堤体5から越流する河川水を取水可能に設けられた第1集水部としての集水器6と、集水器6で取水された河川水を浄水処理部4に給水する第1集水路としての第1取水管7と、集水器6で取水した河川水の濁度を測定する、後述する第1濁度計22(図5参照)に接続される第1検水管8と、ダム本体2の上流側の川底に設けられた濾過層9と、この濾過層9の下方に設けられ、濾過層9によって濾過された河川水から集水する集水管10と、集水管10で取水された河川水を第2集水部としての下部濾過集水器11を介して浄水処理部4に給水する第2取水路としての第2取水管12と、集水管10と下部濾過集水器11を接続する多分岐管17と、集水管10で取水した河川水の濁度を測定する、後述する第2濁度計26(図5参照)に接続される第2検水管13と、集水管10内の水位を常時測定する水位計14,14と、第1取水管7及び第2取水管にそれぞれ接続される空気抜きのための空気抜き管15と、で構成されている。
【0018】
図3に示すように、堤体5の上端部略中央には、河川水が上流(背面側)から下流(正面側)に向けて堤体5を越流する越流部5aが凹設されており、越流部5aの前部には集水器6が設けられている。また、集水器6の上面の右部及び中央には、河川水を集水器6内に取水する取水口6aが設けられており、この取水口6aには集水器6内に落ち葉等の比較的大きな異物の混入を防ぐネット6bが張られている。
【0019】
更に、図4に示すように、集水器6の上面は正面側に向って下方に傾斜して設けられており、この傾斜によって、集水器6上面の上方を流れる河川水の下部からのみ取水が可能となり、河川水の水面に浮遊している落ち葉等が集水器6内に混入することを防ぐ効果を得ている。そして、図3に示すように、集水器6の左端部からは、取水管部3に向けて第1取水管7及び第1検水管8が延設されている。尚、第1検水管8の基端部には、集水器6で取水された河川水の濁度を測定する第1濁度計22が設けられている。
【0020】
また、第1取水管7の途上には、集水器6で河川水を取水した際に混入した空気を第1取水管7内から排出する空気抜き管15が上方に向けて設けられている。この空気抜き管15によって第1取水管7内の空気が排出されることで、第1取水管7内の河川水はスムーズに取水管部3及び浄水処理部4に向って送水される。
【0021】
図4に示すように、堤体5の上流側(背面側)には、川底としての濾過層9が形成されており、この濾過層9は、上部の砂層9aと、下部の砂利層9bと、から構成されている。河川水の一部は、この濾過層9に水圧によって浸透し、濾過層9の下方に貯水される。また、濾過層9の下方に貯水される河川水は、濾過層9の通過時に泥等の細かい異物が濾過されることで、河川を流れているときよりも濁度が小さい状態で貯水される。
【0022】
更に、濾過層9の下方には、内部が中空に形成された集水管10が埋設されている。この集水管10は、図2に示すように、濾過層9の下方に左右方向に複数が設けられている。そして、各集水管10の表面には、集水管10内部まで貫通する細孔10aが多数設けられていおり、これら細孔10aは濾過層9と同様に河川水を濾過する効果を有している。つまり、濾過層9と集水管10の多数の細孔10aによって河川水を濾過する一連の濾過部16が構成されている。
【0023】
尚、図2に示すように、多分岐管17は、集水管10で取水された河川水を堤体5前部に設けられた第2集水部としての下部濾過集水器11に送水する配管であり、後端部は各集水管10の前端部と接続されている。また、多分岐管17の前端部は、堤体5の下部に前後方向に貫通して設けられた穿設孔5bを介して下部濾過集水器11の後端部に接続されている。
【0024】
そして、図3に示すように、下部濾過集水器11の左端部からは、取水管部3に向けて第2取水管12及び第2検水管13が延設されている。また、第2検水管13の基端部には、下部濾過集水器11で取水された河川水の濁度を測定する、第1濁度計22と同一構成の第2濁度計26が設けられている。
【0025】
更に、第2取水管12の途上には、第1取水管7と同一構成の空気抜き管15が設けられており、この空気抜き管15によって第2取水管12内の空気が排出され、第2取水管12内の河川水はスムーズに取水管部3及び浄水処理部4に向って送水される。
【0026】
尚、図2に示すように、濾過層9下方に埋設された集水管10のうち、左右端に配置された集水管10,10には、集水管10,10内での水位を測定する水位計14,14が設けられている。これら水位計14,14は後述する制御装置18に接続されており、測定した集水管10内の水位データを制御装置に送信することにより、濾過層9に貯水されている水量が確認できるとともに、濾過層9の目詰まり状態を検知することができる。
【0027】
次に、取水管部3及び浄水処理部4について説明すると、図5に示すように、取水管部3は、ダム本体2から浄水処理部4に向けて延設される第1取水管7及び第2取水管12と、浄水処理部4への給水を第1取水管7と第2取水管12で切り換える制御部としての制御装置18とから構成されている。
【0028】
第1取水管7には、取水管部3内において制御装置18から発せられる電気信号により開閉可能な駆動弁としての第1駆動弁19aが設けられており、この第1駆動弁19aの上流側(背面側)には、集水器6から送水されてきた河川水の流量を測定する第1流量計20が設けられている。また、これら第1駆動弁19aと第1流量計20の前後には、手動で開閉可能な第1手動バルブ21a及び第2手動バルブ21bが設けられている。
【0029】
尚、本実施例における駆動弁は制御装置18から発せられる電気信号により開閉可能な電動弁を用いているが、制御装置18から発せられる信号により開閉可能な弁であれば、圧縮空気操作弁等を使用してもよい。
【0030】
そして、第1取水管7には、第1駆動弁19aと、第1流量計20と、第1手動バルブ21aと、第2手動バルブ21bと、を迂回するように第1バイパス管7aが並設されている。更に、第1バイパス管7aには、第1駆動弁19aが閉止されていた場合に河川水を河川に排出する第1ドレイン管7bが、第1バイパス管7aから分岐するように設けられている。この第1ドレイン管7bには、第1駆動弁19aと同一構成の第2駆動弁19bが設けられている。
【0031】
更に、第1取水管7の第1バイパス管7aと分岐する箇所の上流側(背面側)には、第1取水管7内の濁度を測定する第3濁度計28が設けられている。尚、第1バイパス管7aには、第1ドレイン管7bと分岐した箇所よりも下流側(正面側)に第1手動バルブ21a及び第2手動バルブ21bと同一構成の第3手動バルブ21cが設けられている。
【0032】
また、第2取水管12には、第1取水管と同様に、電気信号により開閉可能な駆動弁としての第3駆動弁23aが設けられており、この第3駆動弁23aの上流側(背面側)には、下部濾過集水器11から送水されてきた河川水の流量を測定する第2流量計24が設けられている。また、これら第3駆動弁23aと第2流量計24の前後には、手動で開閉可能な第4手動バルブ25a及び第5手動バルブ25bが設けられている。
【0033】
そして、第2取水管12には、第3駆動弁23aと、第2流量計24と、第4手動バルブ25aと、第5手動バルブ25bと、を迂回するように第2バイパス管12aが並設されている。更に、第2バイパス管12aには、第3駆動弁23aが閉止されていた場合に河川水を河川に排出する第2ドレイン管12bが、第2バイパス管12aから分岐するように設けられている。この第2ドレイン管12bには、第3駆動弁23aと同一構成の第4駆動弁23bが設けられている。
【0034】
更に、第2取水管12の第2バイパス管12aと分岐する箇所の上流側(背面側)には、第1取水管12内の濁度を測定する第4濁度計29が設けられている。尚、第2バイパス管12aには、第2ドレイン管12bと分岐した箇所よりも下流側(正面側)に第4動手動バルブ25a及び第5手動バルブ25bと同一構成の第6手動バルブ25cが設けられている。
【0035】
これら第1〜第6手動バルブ21a,21b,21c,25a,25b,25cは、例えば、取水装置1の管理者が、第1駆動弁19a及び第3駆動弁23aと、第1流量計20及び第2流量計24の点検保守作業や、第1駆動弁19a及び第3駆動弁が故障した際等に、手動で第1取水管7と第2取水管12を切り換える為に使用するバルブである。
【0036】
通常時は、第1手動バルブ21a及び第2手動バルブ21bと、第4手動バルブ25a及び第5手動バルブ25bは開放されており、第3手動バルブ21c及び第6手動バルブ25cは閉止されている。
【0037】
これら第1濁度計22及び第2濁度計26は、河川水中に含まれる泥や砂等の微小な粒子によって濁った河川水の濁度を測定している。尚、本実施例では下流の浄水処理部4に浄化負荷が大きくかからないように、濁度が50度以下を通常濁度とし、通常濁度の上限値である50度を基準値(使用限界値まで設定可能)としている。しかし、この基準値は、浄水処理部4側の浄化能力によって設定される。
【0038】
更に尚、第1濁度計22及び第2濁度計26は、第1検水管8及び第2検水管13に送水した河川水の濁度を常時測定できる様になっており、特に図示しないが、濁度を測定した河川水は、第1検水管8及び第2検水管13から河川に排水される。
【0039】
尚、取水管部3は、例えば、取水装置1の管理を行う管理棟内に設けられており、前述したように管理者によって管理及び操作が可能であることが望ましい。
【0040】
浄水処理部4は、図5に示すように、集水器6から第1取水管7を介して、または、下部濾過取水管11から第2取水管12を介して、給水される着水池4aと、着水池4aで給水された河川水に薬注や攪拌を行った後に微小な異物を沈殿させることで水中から異物を除去する沈殿池4bと、沈殿池4bにおける薬注によって濾過可能な大きさまで成長した異物を濾過膜によって濾過する濾過池4cと、濾過池4cで濾過された水を貯水し、各用途に応じて配水を行う配水池4dと、から構成されている。また、配水池4dには、配水池4dの貯水量を常時測定する配水地水位計27が設けられている。
【0041】
更に、図5及び図6に示すように、取水管部3内に設けられた制御装置18は、浄水処理部4の配水池4dに設けられた配水地水位計27と、集水管10,10に設けられた水位計14,14と、検水管8の基端部に設けられた第1濁度計22と、検水管13の基端部に設けられた第2濁度計26と、第3濁度計28及び第4濁度計29と、第1流量計20及び第2流量計24と、第1〜第4駆動弁19a,19b,23a,23bと、が接続され、配水地水位計27と、第1濁度計22及び第2濁度計26と、第1流量計20及び第2流量計24からの入力に従って第1〜第4駆動弁19a,19b,23a,23bの開閉制御を行う制御回路18aと、第1濁度計22及び第2濁度計26で測定された濁度に応じた第1〜第4駆動弁19a,19b,23a,23bの開閉動作等が登録された記憶装置18bと、から構成されている。
【0042】
尚、詳しくは、記憶装置18bには、図7及び図8に示すように、第1濁度計22及び第2濁度計26で測定された濁度に関連付けて制御回路18aが切り換える第1〜第4駆動弁19a,19b,23a,23bの開閉パターンが対応付けられて登録されている濁度対応表と、各開閉パターンによって制御回路18aが開閉を行う第1〜第4駆動弁19a,19b,23a,23bの開閉動作を登録した開閉パターンテーブルと、が記憶されている。
【0043】
尚、制御装置18は、電源ケーブル28により外部電源に接続されており、この外部電源から供給された電力によって、制御装置18が稼動するようになっている。
【0044】
次に、本実施例における制御回路18aが実行する第1〜第4駆動弁19a,19b,23a,23bの、駆動弁開閉処理を図7の濁度対応表と、図8の開閉パターンテーブル及び図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0045】
図9に示すように、駆動弁開閉処理では、先ずSa01のステップにおいて、制御回路18aは、配水池4dに設けられた配水地水位計27で測定された水位に基づいて、配水池4dの水位が基準水位未満か否かを判定する。この基準水位とは、本実施例では、配水池4dが満水となる水位等の、配水池4dの許容限界を指す水位であるが、取水装置1の使用環境等によって適宜設定してもよいことは勿論である。
【0046】
そして、配水地水位計27で測定された水位が基準水位未満であればSa02のステップに進み、配水地水位計27で測定された水位が基準水位以上であればSa13のステップに進む。
【0047】
Sa02のステップにおいて、制御回路18aは、第1検水管8に接続された第1濁度計22及び第2検水管13に接続された第2濁度計26によって河川水の濁度を測定してSa03のステップに進む。
【0048】
Sa03のステップにおいて、制御回路18aは、記憶装置18bに記憶された濁度対応表を参照し、Sa02のステップで測定された濁度に基づいて、選択された開閉パターンは、開閉パターンAか否かを判定する。選択された開閉パターンが開閉パターンAであればSa04のステップに進み、選択された開閉パターンが開閉パターンAでなければSa07に進む。
【0049】
尚、開閉パターンAは、第1濁度計22で測定された濁度が0度以上50度未満且つ第2濁度計26で測定された濁度が0度以上25度未満である場合に選択される開閉パターンである。
【0050】
Sa04のステップにおいて、制御回路18aは、現在選択されている開閉パターンが、開閉パターンB若しくは開閉パターンDか否かを判定する。現在選択されている開閉パターンが、開閉パターンB若しくは開閉パターンDであればSa06のステップに進み、現在選択されている開閉パターンが、開閉パターンB若しくは開閉パターンDでなければSa05のステップに進む。
【0051】
ここで、開閉パターンBは、第1濁度計22で測定された濁度が度以上50度未満且つ第2濁度計26で測定された濁度が25度以上である場合に選択される開閉パターンである。
【0052】
また、開閉パターンDは、第1濁度計22で測定された濁度が50度以上且つ第2濁度計26で測定された濁度が50度以上である場合に選択される開閉パターンであり、開閉パターンBと開閉パターンDはどちらも第3駆動弁23aを閉止している。
【0053】
Sa05のステップにおいて、制御回路18aは、図8に示す開閉パターンテーブルを参照して、現在の開閉パターンから開閉パターンAに切り換える開閉パターンA切換処理を行う。具体的には、第3濁度計28で測定された濁度が、第1濁度計22で測定された濁度以下となってから、第1駆動弁19a及び第3駆動弁23aを開放し、第2駆動弁19b及び第4駆動弁23bを閉止して駆動弁開閉処理を終了する。
【0054】
このようにすることで、第1濁度計22で測定された濁度よりも第1取水管7内の河川水が高濁度であった場合でも、第1取水管7内の濁度が大である河川水が排水されるまで開閉パターンが開閉パターンAに切り換えられないので、着水池4aに高濁度の河川水が給水されることを防ぐことができる。
【0055】
尚、本実施例では第1及び第2濁度計22,26で測定される濁度を、50度を基準値として開閉パターンを変更しているが、この基準値は河川の水質や集水管10の規模、等の要素によって適宜任意の値を取ることが可能である。特に、第2濁度計26は濾過部16で一度濾過された河川水の濁度を測定するので、第2濁度計26での基準値を第1濁度計22での基準値よりも小さく設定してもよい。
【0056】
更に尚、このとき、着水池4aには集水器6から第1取水管7を介して給水が開始されるとともに、集水管10から第2取水管12を介して給水が開始されるので、大量の河川水を取水することができる。
【0057】
また、Sa04のステップにおいて、制御回路18aは、現在選択されている開閉パターンが、開閉パターンB若しくは開閉パターンDか否かを判定し、現在選択されている開閉パターンが、開閉パターンB若しくは開閉パターンDであればSa06のステップに進む。
【0058】
Sa06のステップにおいて、制御回路18aは、第2取水管12内の河川水を排水する、排水処理を行う。具体的には、現在の開閉パターンが開閉パターンB若しくは開閉パターンDである状態で、制御回路18aが第4駆動弁23bを所定時間開放することで、第2取水管12内の河川水を第2ドレイン管12bから排水する。このとき、第4濁度計29で測定される濁度が、第2濁度計26で測定される濁度以下となるまで排水を続ける。
【0059】
このようにすることで、第2取水管12内に高濁度の河川水を全て河川に排水することができるので、この排水処理の後に第3駆動弁23aを開放しても、着水池4aに高濁度の河川水が給水されることを防ぐことができる。
【0060】
この排水処理は、開閉パターンB若しくは開閉パターンDで第3駆動弁23aが閉止されたことにより第2取水管12内に留まっている濁度が50度以上の高濁度の河川水を着水池4aに給水しないための処理であり、第4駆動弁23bを所定時間開放することによって高濁度の河川水を第2ドレイン管12bから全て河川に排出する。尚、本実施例では第4駆動弁23bを開放する所定時間を1分前後とするが、第4駆動弁23bを開放する所定時間は第2取水管12の全長により適宜変更することが望ましい。
【0061】
また、制御回路18aは、Sa06のステップにおいて排水処理が終了したらSa05のステップに進み、開閉パターンA切換処理を行った後に駆動弁開閉処理を終了する。
【0062】
Sa03のステップにおいて、制御回路18aは、記憶装置18bに記憶された濁度対応表を参照し、Sa02のステップで測定された濁度に基づいて、選択された開閉パターンは、開閉パターンAか否かを判定し、選択された開閉パターンが開閉パターンAでなければSa07に進む。
【0063】
Sa07のステップにおいて、制御回路18aは、記憶装置18bに記憶された濁度対応表を参照し、Sa02のステップで測定された濁度に基づいて、選択された開閉パターンは、開閉パターンBか否かを判定する。選択された開閉パターンが開閉パターンBであればSa08のステップに進み、選択された開閉パターンが開閉パターンBでなければSa09に進む。
【0064】
Sa08のステップにおいて、制御回路18aは、図8に示す開閉パターンテーブルを参照して、現在の開閉パターンから開閉パターンBに切り換える開閉パターンB切換処理を行う。具体的には、第3濁度計28で測定された濁度が、第1濁度計22で測定された濁度以下となってから、第1駆動弁19を開放し、第2〜4駆動弁19b,23a,23bを閉止して駆動弁開閉処理を終了する。このようにすることで、Sa05のステップと同じく、第1取水管7内の濁度が大である河川水が排水されるまで開閉パターンが開閉パターンCに切り換えられないので、着水池4aに高濁度の河川水が給水されることを防ぐことができる。
【0065】
このとき、着水池4aには集水器6から第1取水管7を介して給水が開始される。また、集水管10から第2取水管12を介して着水池4aに行う給水が停止されるので、第2取水管12の管内では河川水の流れが停止する。このため、濾過層9下方には、濾過層9を通過した河川水が貯水される。また、この貯水量は、水位計14によって確認することができる。
【0066】
尚、Sa08のステップにおいて、開閉パターンBが選択されることにより第3駆動弁23aが閉止されるので、集水管10から第2取水管12を介して着水池4aに行う給水が停止されるが、これは濾過層9の濾過機能を長持ちさせるための措置である。
【0067】
Sa07のステップにおいて、制御回路18aは、記憶装置18bに記憶された濁度対応表を参照し、Sa02のステップで測定された濁度に基づいて、選択された開閉パターンは、開閉パターンBか否かを判定し、選択された開閉パターンが開閉パターンBでなければSa09に進む。
【0068】
Sa09のステップにおいて、制御回路18aは、記憶装置18bに記憶された濁度対応表を参照し、Sa02のステップで測定された濁度に基づいて、選択された開閉パターンは、開閉パターンCか否かを判定する。選択された開閉パターンが開閉パターンCであればSa010のステップに進み、選択された開閉パターンが開閉パターンCでなければSa14に進む。
【0069】
Sa010のステップにおいて、制御回路18aは、Sa04のステップと同様に、現在選択されている開閉パターンが、開閉パターンB若しくは開閉パターンDか否かを判定する。現在選択されている開閉パターンが、開閉パターンB若しくは開閉パターンDであればSa12のステップに進み、現在選択されている開閉パターンが、開閉パターンB若しくは開閉パターンDでなければSa11のステップに進む。
【0070】
Sa11のステップにおいて、制御回路18aは、図8に示す開閉パターンテーブルを参照して、現在の開閉パターンから開閉パターンCに切り換える開閉パターンC切換処理を行う。具体的には、第2駆動弁19b及び第3駆動弁23aを開放し、第1駆動弁19a及び第4駆動弁23bを閉止して駆動弁開閉処理を終了する。
【0071】
ここで、開閉パターンCは、第1濁度計22で測定された濁度が50度以上且つ、第2濁度計26で測定された濁度が0度以上50度未満である場合に選択される開閉パターンである。
【0072】
このとき、集水器6から第1取水管7を介して着水池4aに行う給水が停止され、第1取水管7内の河川水は第1ドレイン管7bから河川に排水される。また、集水管10から第2取水管12を介して着水池4aに行う給水が開始されるので、着水池4aには、濁度が0度以上50度未満である、通常濁度の河川水が給水される。
【0073】
また、Sa10のステップにおいて、制御回路18aは、現在選択されている開閉パターンが、開閉パターンB若しくは開閉パターンDか否かを判定し、現在選択されている開閉パターンが、開閉パターンB若しくは開閉パターンDであればSa12のステップに進む。
【0074】
Sa12のステップにおいて、制御回路18aは、Sa06のステップと同様に、第2取水管12内の河川水を排水する、排水処理を行う。そして、Sa12のステップにおいて排水処理が終了したらSa11のステップに進み、開閉パターンC切換処理を行った後に駆動弁開閉処理を終了する。
【0075】
Sa09のステップにおいて、制御回路18aは、記憶装置18bに記憶された濁度対応表を参照し、Sa02のステップで測定された濁度に基づいて、選択された開閉パターンは、開閉パターンCか否かを判定し、選択された開閉パターンが開閉パターンCでなければSa14に進む。
【0076】
Sa14のステップにおいて、制御回路18aは、図8に示す開閉パターンテーブルを参照して、現在の開閉パターンから開閉パターンDに切り換える開閉パターンD切換処理を行う。具体的には、第2駆動弁19bを開放し、第1駆動弁19a及び第3〜第4駆動弁23a,23bを閉止して駆動弁開閉処理を終了する。
【0077】
このとき、集水器6から第1取水管7を介して着水池4aに行う給水が停止され、第1取水管7内の河川水は第1ドレイン管7bから河川に排水される。また、集水管10から第2取水管12を介して着水池4aに行う給水が停止されるので、濾過層9下方には、濾過層9を通過した河川水が貯水される。つまり、開閉パターンDに切り換えられることで、着水池4aへの給水は完全に停止されるので、着水池4aへの高濁度の河川水の給水を防ぐことができる。
【0078】
更に、大雨の場合は第1濁度計22で測定された濁度が基準値である50度を大幅に超える。この状態では、開閉パターンが開閉パターンDに切り換えられることで第1駆動弁19a及び第3〜第4駆動弁23a,23bを閉止し、第2駆動弁19bを開放することで、細かい砂や小さなゴミ等を常時排除し、集水器6にゴミが溜まることを防止する。
【0079】
また、第3及び第4駆動弁23a,23bが閉止されることにより、濾過部16での河川水の濾過が停止する。このとき、水位計14で測定される水位が上昇するとともに、一度濾過層9で濾過された河川水が、河川水を濾過した際に砂層9a内に残留した異物とともに噴出する。そして、これら異物は大雨に伴う河川の水流によって下流に流される。つまり、濾過層9には逆洗作用が働くので、濾過層9の濾過能力をメンテナンスによらず回復させることができる。
【0080】
尚、この逆洗作用は、大雨の場合に限らず、開閉パターンが開閉パターンDに切り換えられることで発生させることができる。
【0081】
また、Sa01のステップにおいて、制御回路18aは、配水池4dに設けられた配水地水位計27で測定された水位に基づいて、配水池4dの水位が基準水位未満か否かを判定し、配水地水位計27で測定された水位が基準水位以上であればSa13のステップに進む。
【0082】
Sa13のステップにおいて、制御回路18aは、第1流量計20及び第2流量計24で測定された単位時間当たりの河川水の流量に基づいて、第1流量計20または第2流量計24で測定された流量が基準量未満か否かを判定する。この基準量は、配水池4dから工業用水や飲料水として配水される水量と同量であることが望ましい。つまり、本実施例の基準量とは、配水池4dが満水であっても給水可能な限界水量を示している。尚、この基準量は、取水装置1の使用環境によって適宜設定してもよいことは勿論である。
【0083】
そして、第1流量計20及び第2流量計24で測定された流量が基準量未満であればSa02のステップに進み、第1流量計20または第2流量計24で測定された流量が基準量より多ければSa14のステップに進む。
【0084】
Sa14のステップにおいて、制御回路18aは、図8に示す開閉パターンテーブルを参照して、現在の開閉パターンから開閉パターンDに切り換える開閉パターンD切換処理を行い、駆動弁開閉処理を終了する。
【0085】
このとき、配水池4dには、第1取水管7と第2取水管12のどちらからも給水が行われないので、配水池4dの水位は基準水位から上昇することがない。また、上述したように着水池4aに低濁度の河川水を給水することができるので、濾過池4c内で異物を濾過するフィルターカートリッジにかかる負担が軽減し、結果としてフィルターカートリッジの洗浄や交換コストを抑えることができる。
【0086】
以上、ダム本体2の設置された場所における取水する水の濁度が大雨等で変化しても、制御回路18aが、取水する水の濁度に応じて集水器6と下部濾過集水器11のどちらで取水するかを選択することで、濁度の小さな水を常時安定して浄水処理部4に給水することができる。
【0087】
また、制御回路18aは、集水管10から浄水処理部4に給水しているときに、第2濁度計26で測定された水の濁度が基準値を超えると、第2取水管12の第3駆動弁23aを閉止することで、第2濁度計26により集水管10からの濁度を監視できるので、基準値以下の濁度の水を集水管10から浄水処理部4に給水することができる上に、浄水処理部4にかかる負荷を減少させることができる。
【0088】
また、濾過部16は、上部の砂層9aと、下部の砂利層9bと、から構成される濾過層9と、集水管10に設けられた多数の細孔10aによって構成されていることで、濾過層9の砂層9aと砂利層9b、そして集水管10の細孔10aの3段階で河川水を濾過することができるので、第2取水管12に濁度の低い水を給水できる。
【0089】
また、集水管10には、濾過層9で濾過された水の水位を測定する水位計14,14が設けられているので、第2取水管12から浄水処理部4への給水可能量を確認することができるとともに、濾過層9の濾過状況を確認できる。
【実施例2】
【0090】
次に、実施例2に係る取水システム及び取水装置について実施例1と同一図面である図5を参照して説明する。
【0091】
本実施例では、集水器6で取水された河川水の濁度を第1濁度計22のみで測定し、この測定した濁度に応じて、制御回路18aは、着水池4aへの給水を第1取水管7と第2取水管12で切り換える。
【0092】
先ず、図5に示すように、制御回路18aは、第1検水管8に接続された第1濁度計22で測定された河川水の濁度が通常濁度である0度以上50度以下か否かを判定する。第1濁度計22で測定された河川水の濁度が0度以上50度以下であれば、制御回路18aは第1駆動弁19aを開放し、第2駆動弁19bを閉止した後に、第3駆動弁23a及び第4駆動弁23bを閉止することで、集水器6から第1取水管7を介して着水池4aに給水を開始する。
【0093】
また、第1濁度計22で測定された河川水の濁度が50より大きければ、制御回路18aは、第1駆動弁19aを閉止し、第2駆動弁19bを開放した後に、第3駆動弁23aを開放し、第4駆動弁23bを閉止することで、集水管10から第2取水管12を介して着水池4aに給水を開始する。
【0094】
更に、制御回路18aは、第1濁度計22で測定された河川水の濁度が、基準値である50度から更に所定量である、例えば50度大きくなった、限界値としての100度以上か否かを判定する。第1濁度計22で測定された河川水の濁度が100度よりも大きければ、制御回路18aは、第3駆動弁23a及び第4駆動弁23bを閉止することで、着水池4aへの給水を停止する。
【0095】
このようにすることで、第2濁度計26を用いなくとも濾過層9を介した河川水を着水池4aに給水することができる。尚、上述した所定量をどの程度の値にするかは、濾過層9の濾過能力によって設定され、長期使用により濾過能力が低下したときは、限界値を下げるようにする。
【0096】
更に尚、本実施例では実施例1と同一の図面である図5を参照して説明したが、制御回路18aは、各駆動弁19a,19b,23a,23bの開閉を第1濁度計22で測定された濁度のみで制御するので、第2濁度計26及び第2検水管13を設けなくともよいのは勿論である。
【0097】
以上、第1取水管7の濁度が基準値を超えた場合であっても濁度の低い第2取水管12から浄水処理部4へ給水できるので、常時安定した取水を行うことができる。また、浄水処理部4に給水される水を処理する際には、1つの取水管から浄水処理部4へ給水する従来のシステムで必要とした高度な浄化処理能力を有する設備を設ける必要が無く、浄水処理部4のメンテナンスコストも抑えることができる。
【0098】
また、第1濁度計22で測定される濁度が基準値よりも所定量大となる限界値を超えたら、高濁度の河川水が濾過層9を通過して下部濾過集水器11から第2取水管12に取水されたと判断して、浄水処理部4へ給水しないようにすることができる。
【0099】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0100】
例えば、前記実施例では、堤体5の上流側の川底に、上部の砂層9aと、下部の砂利層9bと、からなる濾過層9と、この濾過層9の下方に埋設された集水管10の多数の細孔10aによって河川水を濾過する一連の濾過部16が構成されたが、濾過層9を複数の浄水用のフィルターを積層させることで構成し、集水管10で取水される河川水を更に小濁度としてもよい。
【0101】
また、前記実施例では、集水管10内の水位を常時測定する水位計14,14を設け、第2取水管12から浄水処理部4への給水可能量を確認したが、第3駆動弁が制御回路18によって開放されているときに第2流量計24で測定される第2取水管12の流量と水位計14,14で測定される集水管10内の水位を比較することにより、濾過部16の目詰まりや、濾過部16の清掃時期を判断できるようにしてもよい。
【0102】
また、基準値は、浄水処理部4の処理負荷との関係で設定されるものであり、処理負荷を下げれば基準値を低くし、処理負荷を高めれば基準値を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施例1における取水装置の全体像を示す概略図である。
【図2】ダム本体を示す平面図である。
【図3】ダム本体を示す正面図である。
【図4】ダム本体を示す縦断側面図である。
【図5】取水管部と浄水処理部を示す概念図である。
【図6】取水システムの構成を示すブロック図である。
【図7】第1濁度計と第2濁度計の濁度の組合せによる濁度対応表である。
【図8】開閉パターン毎の各駆動弁の開閉を示す開閉パターンテーブルである。
【図9】制御回路で行われる駆動弁開閉処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0104】
1 取水装置
2 ダム本体(ダム)
3 取水管部
4 浄水処理部
5 堤体
5a 越流部
6 集水器(第1集水部)
7 第1取水管(第1取水路)
9 濾過層
9a 砂層
9b 砂利層
10 集水管
10a 細孔
11 下部濾過集水器(第2集水部)
12 第2取水管(第2取水路)
14 水位計
16 濾過部
18 制御装置(制御部)
18a 制御回路
19a 第1駆動弁
19b 第2駆動弁
20 第1流量計
22 第1濁度計
23a 第3駆動弁
23b 第4駆動弁
24 第2流量計
26 第2濁度計
27 配水池水位計
28 第3濁度計
29 第4濁度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に設けられたダムにおいて、河川水が該ダムを越流する越流部に設けられた第1集水部と、前記ダムの上流側底部に設けられた、濾過層より前記河川水を集水する第2集水部と、前記第1集水部と前記第2集水部からそれぞれ第1及び第2の独立した取水路を介して給水した水を処理する浄水処理部と、を備え、
前記第1取水路の濁度が基準値内では、前記第1取水路から前記浄水処理部へ給水し、前記第1取水路の濁度が基準値を超えたら、前記第2取水路から前記浄水処理部へ給水するように切り換えることを特徴とする取水システム。
【請求項2】
前記取水システムは、前記濁度が基準値よりも所定量大となる限界値を超えたら第2取水路を閉止することを特徴とする請求項1に記載の取水システム。
【請求項3】
河川に設けられたダムにおいて、該ダムの越流部に設けられた集水器と、前記ダムの上流側の砂利を含む濾過部を介して前記河川水を濾過可能な集水管と、前記集水器と該集水管で集水された水を処理する浄水処理部と、前記集水器と前記集水管を該浄水処理部にそれぞれ接続する第1及び第2取水管と、該各取水管に設けた駆動弁と、前記集水器で集水した前記河川水の濁度を測定する第1濁度計と、該濁度計で測定する濁度に応じて前記駆動弁を制御する制御部と、を備えた取水装置であって、
前記制御部は、前記集水器で集水した水の濁度が基準値を超えると、前記集水器に接続されている前記第1取水管の前記駆動弁を閉止し、且つ、前記集水管に接続されている前記第2取水管の前記駆動弁を開放し、水の濁度が基準値を下回ったら、前記集水管に接続されている前記第2取水管の前記駆動弁を閉止し、且つ、前記集水器に接続されている前記第1取水管の前記駆動弁を開放することを特徴とする取水装置。
【請求項4】
前記取水装置には、前記集水管で集水された水の濁度を測定する第2濁度計が設けられており、前記制御部は、前記集水管から前記浄水処理部に給水しているときに、前記第2濁度計で測定された水の濁度が前記基準値を超えると、前記第2取水管の前記駆動弁を閉止することを特徴とする請求項3に記載の取水装置。
【請求項5】
前記濾過部は、上部の砂層と、下部の砂利層と、から構成される濾過層と、前記集水管に設けられた多数の細孔によって構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の取水装置。
【請求項6】
前記集水管には、前記濾過層で濾過された水の水位を測定する水位計が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の取水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−174215(P2009−174215A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15003(P2008−15003)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(595077016)山大機電株式会社 (7)