説明

取水管および同取水管を備える手押しポンプ式打抜き井戸

【課題】地中に打ち込むことなく設置でき、手押しポンプ式打抜き井戸の設置場所の条件を緩和することができるとともに、造設工事における経済的負担および騒音負担を軽減することができる取水管を提供する。
【解決手段】手押しポンプ式打抜き井戸を構成する取水管10は、胴部12、ジョイント部13および掘削部14からなる管状本体部11で構成されている。管状体本体部11の内部には、取水管10を地中に挿し込むための高圧水を導くとともに地下水を地表に導くための流路15が形成されている。胴部12には、流路15と連通する状態で取水口12aが形成されている。掘削部14には、高圧水を噴射するための噴射口14aが形成されている。掘削部14の内部には、仕切板14bの下方に小径部14cを塞ぐための止水球17が収容されている。小径部14cには、フィルタ22を介してウエイト体23によって押圧された栓体21が嵌まり込んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に挿し込んだ管を介して地下水を手動で汲み上げる手押しポンプ式打抜き井戸に用いられる取水管および同取水管を備える手押しポンプ式打抜き井戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地中に挿し込んだ管の上端部に手押し式の汲水ポンプを接続することにより地下水を手動で汲み上げる手押しポンプ式打抜き井戸が知られている。この場合、打抜き井戸とは、地中に掘削される縦穴の穴径が地下水を取水するための取水管の直径(太さ)に対応した大きさに形成された形態の井戸であり、同縦穴の穴径が取水管の直径に対して遥かに大きく形成された形態の掘抜き井戸とは区別される。このような手押しポンプ式打抜き井戸を設置するに際しては、通常、ボーリングマシンにて掘削した縦穴内に前記取水管を挿し込んだ後、縦穴の壁面と取水管との間に濾過材を充填して造設される。
【0003】
しかし、このような手押しポンプ式打抜き井戸の造設方法においては、孔の掘削、取水管の設置および濾過材の充填など作業工程が多いため、造設工事に要する時間的負担および経済的負担が大きいという問題がある。このため、例えば、下記特許文献1および特許文献2には、地中に対して直接打ち込むことができる打抜き井戸用の取水管が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−28495号公報
【特許文献2】特開2008−274578号公報
【0005】
しかしながら、上記したような各打抜き井戸用の取水管においては、地中に取水管を挿し込むために取水管を地中に打ち込む打込機が必要となる。このため、打抜き井戸の造設工事が大掛かりなものとなり、打抜き井戸を設置できる場所が打込機での作業が可能な場所に限定されるとともに、造設工事に対する経済的負担が大きいという問題がある。また、打込機での取水管の打ち込み作業においては、取水管の打ち込む際に相応の騒音が不可避的に生じるため、打抜き井戸の造設工事に携る者およびその周囲の者への騒音負担が大きいという問題もある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、地下水を取水するための取水管を地中に打ち込むことなく直接地中に挿し込むことができ、手押しポンプ式打抜き井戸を設置できる場所的条件を緩和することができるとともに、造設工事における経済的負担および騒音負担を軽減することができる取水管および同取水管を備える手押しポンプ式打抜き井戸を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、地中に挿し込んだ管を介して地下水を手動で汲み上げる手押しポンプ式打抜き井戸における地下水を取水するための取水管であって、管状体に構成され、同管状体の内部に水の流路が形成された管状本体部と、管状本体部における一方の端部に形成され、前記流路から導かれる水を噴射するための噴射口と、管状本体部における胴部表面と前記流路とに連通して形成され、地下水を濾しながら前記流路に導く取水部と、前記流路における噴射口と取水部との間の内径が細く形成された小径部と、前記流路における小径部と噴射口との間に配置され、地下水を汲み上げるために手押しポンプにより管状本体部内部に吸引力を生じさせたとき、同吸引力によって前記小径部を塞ぐことができる第1の止水体とを備えることにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、手押しポンプ式打抜き井戸を構成する取水管は、管状本体部の先端部に水を噴射させるための噴射口を備えている。これにより、取水管を地中に挿し込むに際しては、前記噴射口から水を噴射させることにより取水管を挿し込んでいくことができる。すなわち、地下水を取水するための取水管を地中に打ち込むことなく設置できる。これにより、手押しポンプ式打抜き井戸を設置できる場所的条件を緩和することができるとともに、造設工事における経済的負担および騒音負担を軽減することができる。また、取水管における管状本体部には、前記噴射口と地下水を濾しながら流路内に取り込む取水部との間における流路内に内径が絞られた小径部が形成されているとともに、同小径部と噴射口との間に管状本体部内に吸引力が生じた際に前記小径部を塞ぐ第1の止水体が配置されている。これにより、地下水の汲み上げ時においては、管状本体部の流路内に噴射口から地下水が吸い込まれることが防止される。すなわち、管状本体部における流路内には、取水部によって砂や泥などの異物が濾された清水のみが導かれる。この結果、異物や濁りのない清水を汲み上げることができる。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記取水管において、さらに、管状本体部における他方の端部側から前記流路における小径部に向って挿入され、地下水を汲み上げるための吸引力に抗して前記流路における小径部を塞ぐ第2の止水体とを備えることにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の特徴によれば、手押しポンプ式打抜き井戸を構成する取水管は、前記管状本体部の流路に形成された小径部を塞ぐために第1の止水体に加えて第2の止水体を備えている。この場合、第2の止水体は、取水管を地中に設置した後に、管状本体部内にセットされて同管状本体部内に生じさせた吸引力に抗しながら小径部を塞ぐ。これにより、より確実に噴射口からの地下水の流入が阻止され、異物や濁りのない清水を汲み上げることができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記取水管において、第2の止水体は、例えば、弾性変形可能な素材で構成され、前記流路における小径部を塞ぐ栓体と、栓体を小径部に押し付けるためのウエイト体とで構成したことにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の特徴によれば、第2の止水体は、弾性変形可能な素材で構成された栓体と、同栓体を小径部に押し付けるためのウエイト体とによって構成されている。したがって、小径部には、ウエイト体によって押し付けられた栓体が嵌まり込む。これにより、小径部が歪に形成されている場合であっても、小径部に栓体が密着してより確実に噴射口からの地下水の浸入を阻止することができる。この結果、異物や濁りのない清水を汲み上げることができる。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記取水管において、第2の止水体は、さらに、栓体とウエイト体との間に配置され、水を濾すためのフィルタを備えることにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の特徴によれば、第2の止水体は、栓体とウエイト体との間に水中に含まれる異物を濾すためのフィルタを備えている。これにより、栓体によって塞がれた小径部から地下水が漏れて浸入した場合であっても、漏れて浸入した地下水に含まれる砂や泥などの異物が濾されて地下水とともに地上に汲み上げられることが防止される。この結果、より確実に異物や濁りのない清水を汲み上げることができる。
【0015】
また、本発明は取水管の発明として実施できるばかりでなく、同取水管を備える手押しポンプ式打抜き井戸としても実施できるものである。
【0016】
すなわち、請求項5に係る本発明の他の特徴は、請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した取水管と、取水管によって取水された地下水を地上に導くための導水管と、地下水を汲み上げるために取水管内に吸引力を生じさせるための手押しポンプとを備えたことにある。このように構成した請求項5に係る本発明の特徴によれば、手押しポンプ式打抜き井戸は、上記取水管により、異物や濁りのない清水を汲み上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る取水管の全体構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す取水管にライザーパイプを接続した状態を示す外観正面図である。
【図3】図2に示す取水管を地中に挿し込む作業の様子を示す説明図である。
【図4】図1に示す取水管が地中を掘削する際の状態を示す断面図である。
【図5】図1に示す取水管における止水球によって小径部が止水された状態で地下水を取水する様子を示す断面図である。
【図6】図1に示す取水管における栓体によって小径部が止水された状態で地下水を取水する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る取水管の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る取水管10の全体構成を模式的に示す断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この取水管10は、手押しポンプ式打抜き井戸において地中に設置されて地下水を取水するための管である。この場合、手押しポンプとは、取水管10に直接的または間接的に連結した状態で地上に設置され、使用者によるハンドルの人力操作によって取水管10内に吸引力を発生させて地下水を汲み上げる手動式のポンプである。また、打抜き井戸とは、前記したように、地中に掘削される縦穴の穴径が取水管10の直径(太さ)に対応した径に形成された形態の井戸である。
【0019】
(取水管10の構成)
取水管10は、管状本体部11を備えている。管状本体部11は、鋼管製の胴部12の両端部に筒状のジョイント部13および掘削部14がそれぞれ取り付けられた管状体で構成されている。これらの胴部12、ジョイント部13および掘削部14によって構成される管状本体部11の内部空間には、水が流通する流路15が形成されている。
【0020】
胴部12は、胴部12の内部、すなわち、環状体本体部11の内部である流路15に地下水を取り込む部材であり、外周面の上部に流路15と連通する状態で複数の取水口12aが形成されている。この胴部12の外周面上には、網体16が設けられている。網体16は、取水口12aを介して流路15内に地下水を吸い込む際に取水口12aに土砂が侵入することを防止するための網状のフィルタである。この網体16は、粗目と細目の互いに異なる2つの網目のステンレス製の網を互いに重ねて構成されており、胴部12の外周面上にそれぞれ巻き回されて設けられている。すなわち、これらの取水口12aおよび網体16が、本発明に係る取水部に相当する。
【0021】
ジョイント部13は、管状本体部11と地上に設置される手押しポンプ(図示せず)とを結ぶライザーパイプ30(図1においては図示せず)の一方の端部を接続するための鋼製の接続部材である。また、掘削部14は、地上からライザーパイプ30を介して供給される水を噴射させるための鋼製の筒状部材であり、図示下方の先端部に2つの噴射口14aが流路15に連通した状態でそれぞれ形成されている。
【0022】
この掘削部14の内部空間には、同空間を胴部12側(図示上方側)と噴射口14a側(図示下方側)とに仕切る仕切板14bが設けられている。仕切板14bは、鋼製の板状体で構成されており、表面中央部に上面と下面とを貫通した状態で流路15の内径(胴部12の内径)より小径の小径部14cが形成されている。この仕切板14bによって仕切られた噴射口14a側の内部空間には止水球17が収容されている。止水体17は、仕切板14bに形成された小径部14cを塞ぐための鋼球体であり、仕切板14bによって仕切られた内部空間内にて自由に変位可能な状態で収容されている。
【0023】
仕切板14bにおける小径部14cには、胴部12側(図示上方)から栓体21が嵌め込まれている。栓体21は、仕切板14bに形成された小径部14cを塞ぐゴム製の栓であり、図示下方から図示上方に向かって径が大きくなる略円錐状に形成れている。栓体21の上方における胴部12の流路15内にはフィルタ22が詰められている。フィルタ22は、栓体21が嵌め込まれて塞がれた小径部14cから漏れ出る地下水に含まれる異物を濾し取る濾過部材である。本実施形態においては、フィルタ22は、ステンレスウールで構成されている。
【0024】
フィルタ22の上方には、ウエイト体23が配置されている。ウエイト体23は、フィルタ22および栓体21を仕切板14b側(図示下方)に押し付けることにより栓体21を小径部14cに嵌め込んで密着させるためのステンレス製の錘である。このウエイト体23は、地下水を汲み上げるために流路15内にて生起される吸引力に抗して栓体21を押し付けることができる質量(重量)で構成されており、本実施形態においては胴部12の内径より小径の略円柱状に形成されている。これらの、栓体21、フィルタ22およびウエイト体23は、取水管10が地中に設置されて地下水を汲み上げる際に胴部12内における流路15内に投入されて配置される。この取水管10の大きさは、地下水を汲み上げる量および深さに対応する外径および長さに形成されており、本実施形態においては、網体16を含む胴部12の直径が約40mm、長さが約600mmに形成さている。
【0025】
(取水管10の作動)
次に、このように構成された取水管10の作動について説明する。まず、作業者は、取水管10、ライザーパイプ30およびジェットポンプ(図示せず)をそれぞれ用意する。この場合、ライザーパイプ30は、取水管10に対して地上から供給される掘削用の高圧水を導くとともに、取水管10から取水された地下水を地上に導くための鋼製の管体である。このライザーパイプ30は、地下水を汲み上げる量および深さに対応する外径および長さに形成されており、本実施形態においては、直径が約40mm、長さが約5000mmに形成さている。なお、図2においては、ライザーパイプ30の中央部を省略して示している。また、ジェットポンプは、取水管10の先端部の噴射口14aから噴射させて地中を掘削するための高圧水(ジェット水流)を供給するための原動機付の送水ポンプである。
【0026】
作業者は、取水管10におけるジョイント部13にライザーパイプ30の一方(図示下方)の端部を接続するとともに、同ライザーパイプ30の他方(図示上側)の端部にジェットポンプを接続する。この場合、作業者は、取水管10における流路15内に、栓体21、フィルタ22およびウエイト体23が配置されていないことを確認した上でライザーパイプ30の接続を行う。そして、作業者は、図3に示すように、手押しポンプ式打抜き井戸を設置する地表面に取水管10を立てた状態でジェットポンプを作動させる。これにより、取水管10の掘削部14の先端部に形成された噴射口14aから掘削用の高圧水が下方に向かって噴射される。
【0027】
この場合、図4に示すように、取水管10における掘削部14の内部に収容された止水球17は、ジェットポンプから供給される掘削用の高圧水HWによって噴射口14a側に強く押し付けられた状態となる。これにより、流路15および噴射口14aが止水球17によって塞がれることなく噴射口14aから高圧水HWが噴射される。また、この場合、流路15に連通して形成された取水口12aからも高圧水HWの一部が流出する。これにより、取水管10を地中に挿し込む際における網体16に砂、小石および泥などの異物が詰まることが防止されるとともに、流路15内への泥水等の流入が防止される。
【0028】
作業者は、取水管10が接続されたライザーパイプ30をパイプバイス31を介して保持しながら同ライザーパイプ30を図示上下方向に上下動させて取水管10およびライザーパイプ30を地中に挿し込んでいく。なお、地表面が硬い場合には、深さ500〜1000mm程度の深さの下穴を掘削した後、同下穴に取水管10を差し込んで掘削を開始するようにしてもよい。
【0029】
そして、作業者は、取水管10を所定の深さまで挿し込んだ場合には、ジェットポンプの作動を停止させる。次に、作業者は、地中に挿し込んだ取水管10からの取水量の確認を行なう。具体的には、作業者は、ライザーパイプ30の他方の端部からジェットポンプを取り外した後、同端部にジェットポンプに代えて手押しポンプ(図示せず)を一時的に接続する。そして、作業者は、手押しポンプのハンドルを手動操作することにより、取水管10およびライザーパイプ30を介して地下水を汲み上げる。
【0030】
この場合、図5に示すように、管状本体部11の流路15内には、地上に向って吸引力が発生する。これにより、掘削部14内に収容されている止水球17が仕切板14bの小径部14cに向って吸引されるため、同小径部14cは止水球17によって塞がれる。このため、胴部12の流路15内には、取水口12aから地下水SWが網体16を介して吸い込まれる。この場合、地下水SWは網体16を介して流路15内に吸い込まれるため、地下水SWに含まれる小石や砂などの異物が除去されて流路15内に導かれる。そして、胴部12の流路15内に吸い込まれた地下水SWはライザーパイプ30を介して地上に導かれる。すなわち、止水球17が、本発明に係る第1の止水体に相当する。
【0031】
但し、この場合、流路15内に生じる吸引力は、作業者による手押しポンプの操作に基づいているため不安定である。したがって、止水球17は、地下水SWの汲み上げ時においては、小径14cに対する吸着力が一時的に弱くなったり、小径部14cから一時的に外れることがある。このため、流路15内には、噴射口14aから吸い込まれ小径部14cを介して地下水が流入することがある。
【0032】
作業者は、取水管10から取水される地下水SWの量や質が不十分であると判断される場合には、取水管10の挿し込み作業を続行する。すなわち、作業者は、ライザーパイプ3における他方の端部から手押しポンプを取り外すとともに、同端部に再度ジェットポンプを接続する。そして、前記と同様にして、掘削用の高圧水を管状本体部11の先端部の噴射口14aから噴出させて取水管10の挿し込み作業を再開する。
【0033】
一方、取水管10から取水される地下水SWの量や質が十分であると判断される場合には、作業者は、取水管10の挿し込み作業を終えて手押しポンプの設置作業を行う。具体的には、作業者は、ライザーパイプ30の他方の端部に接続された手押しポンプを取り外した後、同端部から栓体21、フィルタ22およびウエイト体23を取水管10に向けて投入する。ライザーパイプ30内に投入された栓体21およびフィルタ22は、ライザーパイプ30内をウエイト体23に押されて自由落下した後、取水管10の流路15内に到達する。そして、栓体21がウエイト体23に押された状態で仕切板14bに形成された小径部14c内に嵌まり込む。この場合、栓体21は弾性を有するゴム材で構成されているため、小径部14cの形状に沿って弾性変形する。これにより、仕切板14bの小径部14cが栓体21によって隙間無く塞がれる。
【0034】
次に、作業者は、ライザーパイプ30の他方の端部に手押しポンプ(図示せず)を接続する。そして、作業者は、ライザーパイプ30に接続された手押しポンプを地表面上に固定するなどの各種仕上げ作業を経て手押しポンプ式打抜き井戸を完成させる。
【0035】
このように構成された手押しポンプ式打抜き井戸を使用するに際しては、使用者は、手押しポンプ式打抜き井戸における手押しポンプのハンドルを操作することにより、取水管10を介して地下水SWを汲み上げることができる。この場合、図6に示すように、取水管10における流路15内においては、仕切板14bに形成された小径部14cが栓体21によって塞がれている。このため、流路15内には、噴射口14aからの地下水の流入が阻止された状態で、取水口12aから地下水SWが流入する。これにより、手押しポンプ式打抜き井戸の吐水口からは異物や濁りのない清水が汲み上げられることになる。
【0036】
この場合、ウエイト体23は、流路15内に生じる吸引力に抗しながら栓体21を小径部14cに常に押し付ける。このため、使用者による手押しポンプの操作により管状本体部11の流路15内の圧力が変化した場合であっても栓体21による小径部14cの閉塞状態を維持することができ、噴射口14aからの地下水の流入を阻止することができる。また、何らかの事情により栓体21と小径部14cとの間に隙間が生じた場合であっても、同隙間から浸入した地下水に含まれる砂や泥などの異物はフィルタ22によって濾し取られる。このため、栓体21と小径部14cとの間の隙間から地下水が浸入した場合であっても、異物や濁りのない清水を汲み上げることができる。すなわち、栓体21、フィルタ22およびウエイト体23が、本発明に係る第2の止水体に相当する。
【0037】
そして、使用者による手押しポンプの操作を停止して地下水SWの汲み上げ作業を終了した場合においても、栓体21による小径部14cの閉塞状態はウエイト体23によって維持される。このため、次回、使用者が手押しポンプを操作して地下水SWの汲み上げ作業を行った場合においても流路15内に噴射口14aからの地下水が混入することはなく、異物や濁りのない清水を汲み上げることができる。
【0038】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、手押しポンプ式打抜き井戸を構成する取水管10は、管状本体部11の先端部に水を噴射させるための噴射口14aを備えている。これにより、取水管10を地中に挿し込むに際しては、噴射口14aから水を噴射させることにより取水管10を挿し込んでいくことができる。すなわち、地下水SWを取水するための取水管10を地中に打ち込むことなく設置できる。これにより、手押しポンプ式打抜き井戸を設置できる場所的条件を緩和することができるとともに、造設工事における経済的負担および騒音負担を軽減することができる。また、取水管10における管状本体部11には、前記噴射口14aと地下水SWを濾しながら流路15内に取り込む取水口12aとの間における流路15内に内径が絞られた小径部14cが形成されているとともに、同小径部14cと噴射口14aとの間に管状本体部11内に吸引力が生じた際に前記小径部14cを塞ぐ止水球17が配置されている。これにより、地下水SWの汲み上げ時においては、管状本体部11の流路15内に噴射口14aから地下水SWが吸い込まれることが防止される。すなわち、管状本体部11における流路15内には、取水口12aおよび網体16によって砂や泥などの異物が濾された清水のみが導かれる。この結果、異物や濁りのない清水を汲み上げることができる。
【0039】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態においては、管状本体部11の胴部12の外周面に網体16を配置して地下水SWに含まれる小石や砂などの異物を濾す構成とした。しかし、網体16は、地下水SWに含まれる異物の種類や量(すなわち、井戸を設置する地質)に応じて適宜設ければよい。すなわち、網体16に代えてまたは加えて、管状本体部11の胴部12に形成された取水口12aの大きさ、数および形状を適宜設定することにより地下水SWに含まれる異物を除去することができる。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0041】
また、上記実施形態においては、胴部12の内部における流路15内に栓体21,フィルタ22およびウエイト23からなる第2の止水体を配置して噴射口14aからの地下水の流入を防止した。しかし、第2の止水体の構成は、地下水SWの汲み上げ時に胴部21内の流路15内に生じる吸引力に抗して小径部14cを塞ぐことができる構成であれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、栓体21の重量を前記流路15内に生じる吸引力に抗することができる程度の重さで構成すれば、ウエイト体23を省略することもできる。また、小径部14cと栓体21との間の隙間からの地下水の浸入がない、または地下水の浸入が許容できる範囲である場合にはフィルタ22も省略することができる。
【0042】
更には、掘削部14の内部に収容した止水球17による小径部14cの閉塞によって十分に地下水の浸入が防止できる、またはある程度の地下水の浸入が許容できる場合などには、第2の止水体自体を省略して構成することもできる。なお、栓体21、フィルタ22およびウエイト体23を構成する素材や形状も、栓体21、フィルタ22およびウエイト体23の設置環境、小径部14cの形状等によって適宜決定すればよく、上記実施形態に限定されるものでないことは、当然である。
【0043】
また、上記実施形態においては、仕切板14bに小径部14cを形成した。しかし、小径部14cは、流路15内において流路15の内径を部分的に細く形成したものであれば、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、胴部12または掘削部14の内周面に直接小径部14cを形成してもよい。また、小径部14cの形状も上記実施形態のように内径が一定の形状であってもよいし、内径が軸線方向に沿って変化するテーパ状に形成されていてもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0044】
HW…高圧水、SW…地下水、10…取水管、11…管状本体部、12…胴部、12a…取水口、13…ジョイント部、14…掘削部、14a…噴射口、14b…仕切板、14c…小径部、15…流路、16…網体、17…止水体、21…栓体、22…フィルタ、23…ウエイト体、30…ライザーパイプ、31…パイプバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に挿し込んだ管を介して地下水を手動で汲み上げる手押しポンプ式打抜き井戸における前記地下水を取水するための取水管であって、
管状体に構成され、同管状体の内部に水の流路が形成された管状本体部と、
前記管状本体部における一方の端部に形成され、前記流路から導かれる水を噴射するための噴射口と、
前記管状本体部における胴部表面と前記流路とに連通して形成され、前記地下水を濾しながら前記流路に導く取水部と、
前記流路における前記噴射口と前記取水部との間の内径が細く形成された小径部と、
前記流路における前記小径部と前記噴射口との間に配置され、前記地下水を汲み上げるために前記手押しポンプにより前記管状本体部内部に吸引力を生じさせたとき、同吸引力によって前記小径部を塞ぐことができる第1の止水体とを備えることを特徴する取水管。
【請求項2】
請求項1に記載した取水管において、さらに、
前記管状本体部における他方の端部側から前記流路における前記小径部に向って挿入され、前記地下水を汲み上げるための前記吸引力に抗して前記流路における前記小径部を塞ぐ第2の止水体とを備えることを特徴とする取水管。
【請求項3】
請求項2に記載した取水管において、
前記第2の止水体は、
弾性変形可能な素材で構成され、前記流路における前記小径部を塞ぐ栓体と、
前記栓体を前記小径部に押し付けるためのウエイト体とで構成されることを特徴とする取水管。
【請求項4】
請求項3に記載した取水管において、
前記第2の止水体は、さらに、
前記栓体と前記ウエイト体との間に配置され、水を濾すためのフィルタを備えることを特徴とする取水管。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した取水管と、
前記取水管によって取水された地下水を地上に導くための導水管と、
前記地下水を汲み上げるために前記取水管内に吸引力を生じさせるための手押しポンプとを備えたことを特徴とする手押しポンプ式打抜き井戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−275751(P2010−275751A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128303(P2009−128303)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(508334661)株式会社プランアンドテクニック (2)