説明

受信判別システム

【課題】プライマリ信号を検出する上でより検出精度を向上させる。
【解決手段】
他の無線通信ネットワークからの無線信号を受信しないように制御しつつ、ノイズレベルを所定時間に亘って検出し、検出されたノイズレベルから予め決められたアルゴリズムに基づいて受信値を算出し、検出したノイズレベルをその最小値から最大値にかけて複数段階にグループ分けを行うとともに、算出された受信値と予め決められた誤警報比率とに基づいて各グループ毎に閾値を割り当てた閾値参照テーブルを作成し、他の無線通信ネットワークによる無線信号の受信の有無を実際に判別する場合に、閾値参照テーブルを参照して閾値を特定し、これに基づいて無線信号の受信の有無を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通信空間を複数の無線通信ネットワークが共存する場合に、少なくとも一の無線通信ネットワークに実装され、他の無線通信ネットワークによる無線信号の受信の有無を判別する受信判別システムに冠する。
【背景技術】
【0002】
従来よりTV White Space(TVWS)を利用した無線通信システムの標準化が進められている(例えば、特許文献1参照。)。このTVWSを始めとしたプライマリシステムとは異なるセカンダリシステムが同一の通信空間内において存在する場合がある。かかるセカンダリシステム内で実際に無線通信を行う場合には、プライマリシステム内のプライマリ信号との間で通信干渉を防止する必要があるが、先ずはそのプライマリ信号を高精度に検出する必要がある。従来においてプライマリ信号を高精度に検出する方法は、かかるTVWSを利用したシステムが提案されるまでは、あまり研究されてこなかったのが現状である。
【0003】
実際にこのプライマリ信号の検出の成否は、信号検出時の閾値の設定に大きく左右される。しかしながら、近年において多くの無線通信システムが混在する状況下で、様々なノイズが存在する場合があり特にシステム内部のノイズ変動により信号検出精度は大きく影響を受ける。また隣接する無線通信システムとの干渉が多岐に亘るにつれて、従来において行われている信号検出の閾値設定方法では限界があった。特に低いレベルのプライマリ信号を高精度に検出する必要がある場合、測定を行う無線システム内部のノイズ変動が原因で、従来の信号検出の閾値設定方法も限界があった。
【0004】
例えば、ノイズレベルが低い場合には、信号検出の閾値を低く設定することにより、漏れなく信号を検出することができ、Pfa{=(信号の検出がされたと判断される場合)/(実際に信号は存在しない場合)}を理想的なラインに抑えることができる。Pfaは、検出を試みようとする信号が実際に送信されていないという中で、当該検出を試みようとする信号が実際に検出されたものと判断される割合である。即ち、このPfaは、誤警報比率ともいい、他の無線通信ネットワークが使用されていない空きチャネルの利用効率を反映するものである。このPfaが低く設定された場合には、高い利用効率を実現できる。
【0005】
これに対して、ノイズレベルが高い場合には、かかるノイズを検出しないようにするために信号検出の閾値を高く設定する必要も出てくる。しかしながら、この信号検出の閾値を高く設定し過ぎると、ノイズレベルが低い場合には、実際のプライマリ信号を検出することもできない場合も生じ、却ってPd{=(信号の検出がされたと判断される場合)/(実際に信号は存在する場合)が低下してしまう。ここでPdとは、検出を試みようとする信号が実際に送信されているという前提の中で、当該検出を試みようとする信号が実際に検出されたものと判断される割合である。
【0006】
即ち、仮にノイズレベルが低い場合を基準してPfaにより閾値を設定すると、ノイズが高く変動した場合に、Pfaが高くなってしまう。逆にノイズレベルが高い場合を基準して閾値を設定すると、ノイズが低く変動した場合、Pdが低くなってしまう。ノイズレベルの変動が多い場合には従来のように一つの閾値を設定してそれを常時使用するという方法に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2010−283483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
即ち、従来の信号検出の閾値の設定方法では、様々な無線通信システムにおいて求められる検出精度を満たすことができないという問題点があった。このため、検出信号の閾値の設定方法を改善することにより、dBmの低いパワーを検出するとともに、周波数の選択許容性を増加させることができることが期待される。
【0009】
そこで本発明は、上述した問題点を解決するために、TV信号を始めとしたプライマリ信号を検出する上でより検出精度を向上させつつ周波数の選択許容性を増加させることが可能な受信判別システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明を適用した受信判別システムは、上述した課題を解決するために、通信空間を複数の無線通信ネットワークが共存する場合に、少なくとも一の無線通信ネットワークに実装され、他の無線通信ネットワークによる無線信号の受信の有無を判別する受信判別システムにおいて、他の無線通信ネットワークからの無線信号を受信しないように制御しつつ、ノイズレベルを所定時間に亘って検出する検出手段と、上記検出と同時に上記ノイズレベルに基づいて予め決められたアルゴリズムに基づいて受信値を算出する受信値算出手段と、上記検出手段により検出されたノイズレベルをその最小値から最大値にかけて複数段階にグループ分けを行うとともに、上記受信値算出手段により算出された受信値と予め決められた誤警報比率とに基づいて上記各グループ毎に閾値を割り当てた閾値参照テーブルを作成するテーブル作成手段と、他の無線通信ネットワークによる無線信号の受信の有無を実際に判別する場合に、当該他の無線通信ネットワークからの無線信号を受信しないように制御しつつ当該判別時のノイズレベルを検出し、検出したノイズレベルに対応するグループを上記テーブル作成手段によって予め作成された閾値参照テーブルから選択し、その選択したグループに割り当てられた閾値を特定する閾値特定手段とを備え、上記受信値算出手段は、当該他の無線通信ネットワークからの無線信号を実際に受信可能状態に制御された場合に、上記アルゴリズムに基づいて受信値を新たに算出するとともに、上記閾値特定手段により特定された閾値と比較することにより、当該無線信号の受信の有無を判別することを特徴とする受信判別システム。
【0011】
本発明を適用した受信判別システムは、上述した課題を解決するために、通信空間を複数の無線通信ネットワークが共存する場合に、少なくとも一の無線通信ネットワークに実装され、他の無線通信ネットワークによる無線信号の受信の有無を判別する受信判別システムにおいて、他の無線通信ネットワークからの無線信号を受信しないように制御しつつ、ノイズレベルを検出する検出手段と、上記検出と同時に上記ノイズレベルに基づいて予め決められたアルゴリズムに基づいて受信値を算出する受信値算出手段と、上記受信値算出手段により算出された受信値を閾値とする閾値設定手段とを備え、上記受信値算出手段は、当該他の無線通信ネットワークからの無線信号を実際に受信可能状態に制御された場合に、上記アルゴリズムに基づいて受信値を新たに算出するとともに、上記閾値特定手段により特定された閾値と比較することにより、当該無線信号の受信の有無を判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成からなる本発明によれば、実際のノイズとの関係において最適な閾値を設定することができることから、他の無線通信システムと通信空間を共有する場合に、当該他の無線通信システムからの受信信号を高精度に検出することができると同時に、当該他の無線通信システムが送信していない事実も高精度に判明することができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した受信判別システムの構成例を示している。
【図2】本発明を適用した受信判別システムの動作例について説明をするための図である。
【図3】図2に示すN1〜N2のグループに対応する受信値のR1〜R2の範囲を拡大表示した図である。
【図4】閾値参照テーブルが作成されるまでのフローチャートである。
【図5】他の無線通信ネットワークによる無線信号の受信の有無を実際に判別するためのフローチャートである。
【図6】予め定義された条件との適合性に基づいて適切な閾値参照テーブルを選択する例を示す図である。
【図7】受信判別を行う上での閾値をリアルタイムで設定するフローチャートである。
【図8】受信判別を行う上での閾値をリアルタイムで設定する他のフローチャートである。
【図9】環境ノイズをも考慮に入れた閾値参照テーブルを作成するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0015】
図1は、本発明を適用した受信判別システム1の構成例を示している。この受信判別システム1は、無線通信ネットワーク10a、10bの少なくとも一以上に実装されるものである。以下の例では、無線通信ネットワーク10aに実装された場合を例にとり説明をする。無線通信ネットワーク10aは、複数の端末装置2aを備えている。受信判別システム1は、端末装置2aに実装される。
【0016】
上述した図1に示す受信判別システム1では、あくまで2つの無線通信ネットワーク10a、10bから構成されている場合を例示しているが、これに限定されるものではなく、3以上の無線通信ネットワーク10からなるものであってもよいことは勿論である。
【0017】
端末装置2は、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)や、携帯電話等を初めとした各種携帯情報端末等で構成される。端末装置2は、少なくともWPANにおいて他の端末装置2との間で無線パケット通信を行う。何れかの端末装置2は、ネットワーク全体を制御する役割を担うようにしてもよい。
【0018】
この無線通信ネットワーク10aに実装された受信判別システム1では、他の無線通信ネットワーク10bにおける無線信号の受信の有無を判別する。仮に他の無線通信ネットワーク10bにおける無線信号を受信できた場合には、これとの干渉を防止するための処理に移行することが可能となる。
【0019】
次に、本発明を適用した受信判別システム1の動作について説明をする。先ず本発明では、他の無線通信ネットワーク10bからの無線信号を受信しないように制御しつつ、ノイズレベルを所定時間に亘って検出する。図2下段に示すように、t1からt2に至る所定時間においてノイズレベルを検出した一例を示している。受信判別システム1は、このノイズレベルを予め決められたアルゴリズムに基づいて受信値を算出する。図2上段は、この受信値の算出結果を示している。受信値は、あくまでノイズレベルに対してあるアルゴリズムによる演算が行われ、算出されたものであることから、その時系列的な傾向はノイズレベルに対応したものとなっている。このアルゴリズムはいかなるものであってもよいが、例えば受信電力をそのまま受信値とするものであってもよい。
【0020】
次に、受信判別システム1では、検出された図2のノイズレベルをその最小値から最大値にかけて複数段階にグループ分けを行う。この図2の例では、Nmin〜N1、N1〜N2、N2〜N3、・・・・、Ni〜Nmaxにグループ分けを行っている。
【0021】
次にそれぞれのグループNmin〜N1、N1〜N2、N2〜N3、・・・・、Ni〜Nmaxに対してそれぞれ閾値を割り当てる。この閾値は、受信値と、Pfaに基づいて決定する。ここでいうPfa{=(信号の検出がされたと判断される場合)/(実際に信号は存在しない場合)}を理想的なラインに抑えることができる。Pfaは、検出を試みようとする信号が実際に送信されていないという中で、当該検出を試みようとする信号が実際に検出されたものと判断される割合であり、誤警報比率ともいう。仮にPfa=0.1の場合は、閾値を高く設定した結果、実際に信号は存在しないにも拘わらず信号の検出がされたと判断される場合が10%であることを示している。このPfaは受信判別システム1において予め設定されている。
【0022】
閾値は、このPfaと、実際の受信値とに基づいて決められる。図2に示すN1〜N2のグループに対応する受信値のR1〜R2の範囲を拡大表示したのが図3であるが、仮にPfaが0.1であれば、閾値は、そのR1〜R2の範囲における上から10%のラインとなる。このようにして、全てのノイズレベルのグループに対応する受信値の範囲についても同様にPfaに基づいて閾値を決定していく。その結果、最終的には、以下の表1に示すような閾値参照テーブルTHtabが作成されることとなる。
【0023】
即ち、本発明では、他の無線通信システム10bの無線信号を受信しないように制御した状態で、ノイズレベルを所定時間に亘り検出して記録し、所定のアルゴリズムを使用することにより受信値を算出する。このとき、ノイズレベルは多岐に亘るものであっても、これに対応できるように最小値Nminと最大値Nmaxを設定し、その範囲内にノイズが入るようにする(Nmin≦ノイズ≦Nmax)。そして、このノイズの範囲を小範囲(M)に分割する。更には、それぞれのノイズグループにおいて、Pfaを使用して閾値TH1、TH2、・・・、THMの設定を行う。
【0024】
【表1】

【0025】
図4は、この閾値参照テーブルTHtabが作成されるまでのフローを示している。ステップS11においてスイッチをオフの状態でシステムを動作させる。ここでいうスイッチオフの状態とは、外部から電波の受信するアイソレータ等の構成についてスイッチオフする場合をいう。その結果、他の無線通信ネットワーク10bからの無線信号は一切受信できない状態となり、検出可能なのは、自己のシステム内のノイズのみとなる。即ち、無線通信ネットワーク10aを構成するとともに、受信判別システム1が実装された端末装置2aの外部から電波の受信する手段についてスイッチオフすることにより、他の無線通信ネットワーク10bからの無線信号を受信しないように制御することを行っている。
【0026】
次にステップS12においてノイズを測定しこれをNiとする。また、予め設定されたアルゴリズムを使用して受信値(Rni)の算出を行う。かかる算出は、ノイズレベルの検出と同時に行うようにしてもよい。ステップS13に移行した場合には、この測定したNiと、アルゴリズム使用して得られた受信値Rniをバッファーに記録する。次にステップS14においてtがT未満であるか否か比較を行う。tがT未満であればステップS15へ移行し、tがT未満でない場合、即ちtがT以上である場合には、ステップS16へ移行する。ステップS15では、tについてt0を加算したものを新たにtとして定義し直し、再び上述したステップS12へと戻る。このt0は、任意の正の数とされている。ステップS16では、上述した表1に示す閾値参照テーブルTHtabを作成する。
【0027】
このように、本発明では、ノイズ測定を行い、ノイズレベルNiと使用したアルゴリズムRiをステップS13において毎回バッファーに記録する。ちなみにノイズの検出期間は、受信判別システム1が採用している通信規格の要求と受信判別システム1字芯の許容度の双方に基づいて予め最適化されている。表1に示すように、今後新たに取得しようとするノイズは、最小値Nminから最大値Nmaxに至るまでのうちいずれかの範囲で捉えることができる。即ち今後新たに取得しようとするは多様であるがそれを漏らさずカバーすることが可能となり、それに応じた閾値を設定することが可能となる。
【0028】
このようにして閾値参照テーブルTHtabの作成が完了すると、次に他の無線通信ネットワークによる無線信号の受信の有無を実際に判別していくこととなる。
【0029】
図5に示すステップS21において、先ずスイッチオフを行う。これにより、他の無線通信ネットワーク10bからの無線信号は一切受信できない状態となり、検出可能なのは、自己のシステム内のノイズのみとなる。次にステップS22においてノイズレベルの検出を行う。このノイズレベルの検出は、あくまで実際の判別時点において、自己のシステム内においてどの程度のノイズが発生しているかを確認するために行うものである。この判別時に検出したノイズレベルをnとする。
【0030】
次にステップS25へ移行し、受信レベルの判別に用いる閾値THcorrの探索を行う。この閾値の探索は、閾値参照テーブルTHtabを参照することにより行う。即ち、ノイズレベル(n)に対応するグループを閾値参照テーブルTHtabから選択し、その選択したグループに割り当てられた閾値THcorrを特定する。例えば、表1の例において、ノイズレベル(n)が、N1<n≦N2であれば、閾値THcorrは、TH2であり、ノイズレベル(n)が、N2<n≦N3であれば、閾値THcorrは、TH3である。
【0031】
また、ステップS22からステップS23へ移行し、スイッチをオンに設定する。これにより、無線通信ネットワーク10aは、他の無線通信ネットワーク10bからの無線信号を受信可能な状態に制御されたこととなる。次にステップS24へ移行し、アルゴリズムを使用することにより受信値の算出を行う。このアルゴリズムは、上述したアルゴリズムと基本的には同一のものである。かかる算出は、ノイズレベルの検出と同時に行うようにしてもよい。あくまで閾値は、アルゴリズムを経て算出された受信値Rniを基準としているところ、これと整合させるために、あえてこの新たに受信した信号についても同様にアルゴリズムを用いて受信値Rxに変換する必要があるためである。次にステップS26へ移行し、新たに取得した受信値Rxと、ステップS25において特定した閾値THcorrとを比較する。そして、受信値が閾値THcorr以上であれば、他の無線通信システム10bからの無線信号を受信したものと判別する。また、受信値が閾値THcorr未満であれば、他の無線通信システム10bからの無線信号を受信しなかったものと判別する。以上、ステップS26を終了させることにより一連の受信判別動作が終了となる。
【0032】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば表2に示すように複数の閾値参照テーブルTHtab1、THtab2を予め作成するようにしてもよい。の閾値参照テーブルTHtab1、THtab2は、互いに同一のグループNmin〜N1、N1〜N2、N2〜N3、・・・・、Ni〜Nmaxが設定されているが、実際にそれらに割り当てられる閾値がTHtab1、THtab2との間で互いに異なる。このような複数種の閾値参照テーブルTHtab1、THtab2を予め作成した上で図6に示すようなフローに基づいて受信判別を行う。
【0033】
【表2】

【0034】
ステップS31において、先ずスイッチオフを行う。これにより、他の無線通信ネットワーク10bからの無線信号は一切受信できない状態となり、検出可能なのは、自己のシステム内のノイズのみとなる。次にステップS32において上述したステップS22と同様にノイズレベル(n)の検出を行う。ステップS33へ移行し、スイッチをオンに設定する。これにより、無線通信ネットワーク10aは、他の無線通信ネットワーク10bからの無線信号を受信可能な状態に制御されたこととなる。ステップS34において実際に受信を開始し、受信した内容から受信情報を取得する。そして、この受信情報と、予め定義された条件との適合性を計算、又は判別する。この受信情報の例は、受信電力であり、予め定義された条件の例は、その受信電力の許容範囲である。即ち、受信電力が予め定義された受信電力の許容範囲内において実際に適合するか否かを判別する。
【0035】
次にステップS35に移行し、実際に判別した適合性に応じて表2に示す閾値参照テーブルTHtab1、THtab2の何れかを選択する。例えば、受信電力が予め定義された受信電力の許容範囲内にある場合には、閾値参照テーブルTHtab1を、許容範囲外にある場合には閾値参照テーブルTHtab2を選択するようにしてもよい。
【0036】
次にステップS36に移行し、アルゴリズムを使用することにより受信値Rxの算出を行う。かかる算出は、ノイズレベルの検出と同時に行うようにしてもよい。
【0037】
また、ステップS37では、上述したステップS25と同様に、受信レベルの判別に用いる閾値THcorrの探索を行う。この閾値の探索は、ステップS35において選択した閾値参照テーブルTHtabを参照することにより行う。即ち、ノイズレベル(n)に対応するグループを閾値参照テーブルTHtabから選択し、その選択したグループに割り当てられた閾値THcorrを特定する。この特定の方法は、ステップS25と同様である。
【0038】
次にステップS38へ移行し、ステップS36において新たに取得した受信値と、ステップS37において特定した閾値THcorrとを比較する。そして、受信値が閾値THcorr以上であれば、他の無線通信システム10bからの無線信号を受信したものと判別する。また、受信値が閾値THcorr未満であれば、他の無線通信システム10bからの無線信号を受信しなかったものと判別する。以上、ステップS38を終了させることにより一連の受信判別動作が終了となる。
【0039】
図7は、受信判別を行う上での閾値をリアルタイムで設定する例である。ステップS41において、先ずスイッチオフを行う。これにより、他の無線通信ネットワーク10bからの無線信号は一切受信できない状態となり、検出可能なのは、自己のシステム内のノイズのみとなる。次にステップS42においてノイズレベル(n)の検出を行う。但し、このステップS42におけるノイズレベルの検出は、長時間に亘るものである必要はなく、受信判別を行う前の僅かな期間であってもよい。それと同時にアルゴリズムを使用することにより、ノイズレベルに基づいて実際の受信値Rnを求める。そして、この受信値を閾値とする。
【0040】
次にステップS43へ移行し、スイッチオンする。次にステップS44へ移行し、受信を行い、アルゴリズムを使用することにより受信値Rxの算出を行う。このアルゴリズムは、上述したアルゴリズムに対応させていることは勿論である。そして、このステップS44において算出された受信値RxをステップS42において得られた閾値Rnとを比較し、上述したような受信判別を行う。
【0041】
これにより閾値をリアルタイムで取得し、これと受信値を比較することで即座に受信判別を行うことが可能となる。
【0042】
このときRn>TH0であれば閾値=TH0とし、それ以外では、閾値=Rnとするようにしてもよい。ここでTH0は予め決められた所定値である。Rni=閾値と設定するとPfa=0になる。このとき、Pfaの値を上に設定したい場合、例えば、Pfa=0.1に設定したい場合は、Rn>THx(ここでx=0.1)であれば閾値はRnではなくTHxに設定する。 ここで、THx(ここでx=0.1)は予め決められたPfa=0.1に基づいて計算したものである。
【0043】
図8に示すフローチャートも同様に受信判別を行う上での閾値をリアルタイムで設定する例である。この図8において、ステップS41〜S45は、上述した図7と同様であるため、その説明を引用することにより以下での説明を省略する。
【0044】
ステップS45の終了後、ステップS46において変数jを定数Jと比較する。その結果、j<JであればステップS47へ移行し、j<Jで無ければステップS41へ移行して上述した処理を繰り返す。ステップS47へ移行した場合、j+1を新たにjと定義し直して再度ステップS44へ移行する。
【0045】
即ち、この図8に示す例では、閾値の設定を一度行った後、受信値の算出を連続して何回か行い、ある回数までその受信値の算出と算出された受信値と上記の閾値との比較により判別プロセスを繰り返した後、再度閾値の設定を行うものである。
【0046】
即ち、このリアルタイムの閾値に基づく方法では、フェーズA)において他の無線通信システム10bからの受信信号は、しばらくの間ブロックされる。そして検出アルゴリズムにおいて閾値の計算が行われる。またフェーズB)において、他の無線通信システム10bからの受信が行われたときに、検出アルゴリズムが実行され、閾値以上か否かの判定が行われる。
【0047】
システム特性(ノイズの多様性)及び/又は環境条件(干渉の多様性)を考慮した場合、上述の2つのフェーズA)、B)をA)→B)→A)→B)と交互に実行していくか、或いはA)を一度実行した後、連続してB)を何回か行い、再度A)を一度実行した後、連続してB)を何回か行うことを繰り返し行うようにしてもよい。
【0048】
即ち、予めアップデートされた閾値に基づいて判別する場合には、常に閾値は1種類で固定されてしまうが、このリアルタイムによる方法では周期的に閾値をアップデートすることが可能となる。
【0049】
なお本発明は、他の無線通信ネットワーク10bからの無線信号を受信しないように制御することを、スイッチをオフの状態とすることで自己のシステム内のノイズのみ検出する場合を想定しているが、これに限定されるものでは無い。例えば、他の無線通信ネットワーク10bからの無線信号を受信しないように制御することを、以下に説明するフローを実行することで環境ノイズも検出できるようにしてもよい。
【0050】
先ずステップS61において無線通信ネットワーク10aは、図示しないデータベースにアクセスする。このデータベースは、例えば、各種無線通信ネットワーク10についての、例えばチャネルの使用状況等を始めとした無線通信状態が随時記録されている。このため、このデータベースにアクセスすることにより、他の無線通信システム10bが現時点においてチャネルを使用して無線通信を行っているか否かを確認することができる。次にステップS62へ移行し、他の無線通信システム10bが現時点においてチャネルを使用して無線通信を行っていないか判別する。他の無線通信システム10bが現時点においてチャネルを使用して無線通信を行っていないのであればステップS12へ、他の無線通信システム10bが現時点においてチャネルを使用して無線通信を行っているのであればステップS63へ移行する。
【0051】
ステップS12へ移行した場合には、ノイズを測定しこれをNiとする。ここで測定されるノイズレベルは、システム内のノイズのみならず、あくまで外部から受信される環境のイズをも含まれる。これらのノイズレベルに基づいて、予め設定されたアルゴリズムを使用して受信値の算出を行う。ステップS13に移行した場合には、この測定したNiと、アルゴリズム使用して得られた受信値をバッファーに記録する。次にステップS64においてtについてt0を加算したものを新たにtとして定義し直し、ステップS65においてtがT未満であるか否か比較を行う。tがT未満であればステップS61へ移行して上述した処理を繰り返し、tがT未満でない場合、即ちtがT以上である場合には、ステップS66へ移行する。 ステップS63に移行した場合には、t0の期間待機し、再びステップS61へ移行して上述した処理を繰り返す。また、ステップS66に移行した場合には、上述した表1に示すような閾値参照テーブルTHtabを作成する。
【0052】
かかる方法によれば、システム内のノイズのみならず環境ノイズをも考慮に入れた閾値参照テーブルTHtabを作成することが可能となる。そして、実際に閾値THcorrを特定するための処理を行う際にも、上述したスイッチをオフすることに代えて、データベースにアクセスして、他の無線通信システム10bが現在チャネルを使用していないことを確認して受信を行うことで、自己のシステム内のノイズのみならず環境ノイズをも考慮に入れたノイズを検出していくこととなる。
【符号の説明】
【0053】
1 受信判別システム
2 端末装置
10 無線通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信空間を複数の無線通信ネットワークが共存する場合に、少なくとも一の無線通信ネットワークに実装され、他の無線通信ネットワークによる無線信号の受信の有無を判別する受信判別システムにおいて、
他の無線通信ネットワークからの無線信号を受信しないように制御しつつ、ノイズレベルを所定時間に亘って検出する検出手段と、
上記検出と同時に上記ノイズレベルに基づいて予め決められたアルゴリズムに基づいて受信値を算出する受信値算出手段と、
上記検出手段により検出されたノイズレベルをその最小値から最大値にかけて複数段階にグループ分けを行うとともに、上記受信値算出手段により算出された受信値と予め決められた誤警報比率とに基づいて上記各グループ毎に閾値を割り当てた閾値参照テーブルを作成するテーブル作成手段と、
他の無線通信ネットワークによる無線信号の受信の有無を実際に判別する場合に、当該他の無線通信ネットワークからの無線信号を受信しないように制御しつつ当該判別時のノイズレベルを検出し、検出したノイズレベルに対応するグループを上記テーブル作成手段によって予め作成された閾値参照テーブルから選択し、その選択したグループに割り当てられた閾値を特定する閾値特定手段とを備え、
上記受信値算出手段は、当該他の無線通信ネットワークからの無線信号を実際に受信可能状態に制御された場合に、上記アルゴリズムに基づいて受信値を新たに算出するとともに、上記閾値特定手段により特定された閾値と比較することにより、当該無線信号の受信の有無を判別すること
を特徴とする受信判別システム。
【請求項2】
上記検出手段並びに上記閾値特定手段は、外部からの電波受信手段をスイッチオフすることにより、他の無線通信ネットワークからの無線信号を受信しないように制御すること
を特徴とする請求項1記載の受信判別システム。
【請求項3】
上記検出手段並びに上記閾値特定手段は、他の無線通信ネットワークによる無線通信状態が記録されるデータベースにアクセスし、他の無線通信ネットワークによる無線通信が行われていない時間帯において上記動作を行うことにより、他の無線通信ネットワークからの無線信号を受信しないように制御すること
を特徴とする請求項1記載の受信判別システム。
【請求項4】
上記テーブル作成手段は、同一のグループに割り当てられる閾値が互いに異なる複数種の閾値参照テーブルを作成し、
上記閾値特定手段は、受信情報と予め定義された条件との適合性に応じて何れかの閾値参照テーブルを選択すること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の受信判別システム。
【請求項5】
通信空間を複数の無線通信ネットワークが共存する場合に、少なくとも一の無線通信ネットワークに実装され、他の無線通信ネットワークによる無線信号の受信の有無を判別する受信判別システムにおいて、
他の無線通信ネットワークからの無線信号を受信しないように制御しつつ、ノイズレベルを検出する検出手段と、
上記検出と同時に上記ノイズレベルに基づいて予め決められたアルゴリズムに基づいて受信値を算出する受信値算出手段と、
上記受信値算出手段により算出された受信値を閾値とする閾値設定手段とを備え、
上記受信値算出手段は、当該他の無線通信ネットワークからの無線信号を実際に受信可能状態に制御された場合に、上記アルゴリズムに基づいて受信値を新たに算出するとともに、上記閾値特定手段により特定された閾値と比較することにより、当該無線信号の受信の有無を判別すること
を特徴とする受信判別システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−222411(P2012−222411A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83178(P2011−83178)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「電波資源拡大のための研究開発」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】