説明

受信装置、受信回路および受信回路制御方法

【課題】回路規模や処理負荷を増大させることなく受信装置の受信性能を高めることを課題とする。
【解決手段】周波数検知部212がアナログフィルタ140を通過した信号の周波数帯域を検知し、デシメーション数変更部213が周波数検知部212から入力された周波数帯域に応じてデシメーションフィルタ160のデシメーション数を変更し、動作指示部214が周波数検知部212から入力された周波数帯域に応じて、デシメーションフィルタ160の処理レートと同一の処理レートを算出し、ディジタルフィルタ170に対して、算出した処理レートで動作するように指示するとともに、ディジタル復調部180に対して、算出した処理レートと同一の動作クロックで動作するように指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、受信装置を構成する受信回路および受信装置を構成する受信回路の制御方法に関し、特に、周波数帯域が可変した場合においても回路規模や処理負荷を増大させることなく受信性能を高めることができる受信装置、受信回路および受信回路制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線通信の分野では通信の内容によって要求が異なっている。例えば音声通話は求められるデータ速度はそう高くはないが、通信にかかる遅延時間に対して厳しい要求がある。一方パケット通信に代表されるデータ通信では、遅延時間への要求は音声通信ほど厳しくないが、高いデータ速度が要求される。高いデータ速度が必要な場合、多値変調方式を用いることや、周波数帯域を広くすることで実現できるが、どちらの場合も非常に高い受信性能が求められる。
【0003】
このようにデータ速度の高い通信内容とデータ速度の低い通信内容が混在するなかで、無線周波数全体の効率化を考えた場合、通信を行う周波数帯域をその通信内容によってリアルタイムに可変し、最適化することが望まれる。これらをディジタル信号処理の技術を用いて実現するには以下に示すものがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、アナログ−ディジタル変換回路のサンプリングレートと非同期の周波数信号を出力するクロック発振器を受信装置内部に設け、受信信号に適したサンプリングレートにより復調処理を行う技術が開示されている。これにより、復調処理の精度が向上し、受信装置の受信性能を高めることができる。
【0005】
また、特許文献2には、ディジタルフィルタの制限帯域が処理レートによって変化する特性に着目して、受信キャリアの周波数帯域幅が狭いときほどディジタルダウンコンバータのデシメーション数を大きくするとともに、ディジタルフィルタ等のシステムクロック周波数を低下させることで、受信装置の消費電力を低減することができる技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−300224号公報
【特許文献2】特開2002−64456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術は、受信装置内部にクロック発振器を新たに設ける必要があるので、回路規模が増大するという問題がある。また、クロック発振器から復調処理に最適な周波数信号を出力させる必要があるので、出力させる周波数信号を選定するための手間がかかるという問題が生じる。
【0008】
また、上記特許文献2に開示されている技術は、ディジタルフィルタのタップ係数等を変更する必要があるので、周波数帯域の異なる信号を受信する度にタップ係数等を変更するための処理が必要となり、受信装置の処理負荷が増大するという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、回路規模や処理負荷を増大させることなく受信性能を高めることができる受信装置、受信回路および受信回路制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一つの態様では、入力されたアナログ信号をサンプリングしてディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換器と、アナログ−ディジタル変換器のサンプリング周波数とデシメーション数により定まる処理レートによりアナログ−ディジタル変換器から出力された信号をデシメーションするデシメーションフィルタと、デシメーションフィルタから出力された信号の帯域を制限するディジタルフィルタと、ディジタルフィルタから出力された信号に対してディジタル復調処理を行うディジタル復調部とを有する受信装置であって、前記アナログ信号の周波数帯域を検知する周波数検知手段と、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を変更するデシメーション数変更手段と、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーション数変更手段によりデシメーション数を変更されたことに伴って変更された前記デシメーションフィルタの処理レートと同一の処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示する動作指示手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の態様では、上記の発明の態様において、前記デシメーション数変更手段は、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域が狭いときほど、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を大きい値に変更することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の態様では、上記の発明の態様において、前記動作指示手段は、前記ディジタル復調部に対して、前記ディジタルフィルタに対して指示した処理レートと同一の動作クロックにより動作するよう指示することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の態様では、上記の発明の態様において、前記動作指示手段は、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタの処理レートに所定の定数を乗じた処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の態様では、上記の発明の態様において、前記アナログ信号の周波数帯域に対応付けて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数と、前記ディジタルフィルタの処理レートとを記憶する記憶手段をさらに備え、前記デシメーション数変更手段は、前記記憶手段から、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に対応するデシメーション数を取得し、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を取得したデシメーション数に変更し、前記動作指示手段は、前記記憶手段から、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に対応するディジタルフィルタの処理レートを取得し、前記ディジタルフィルタに対して取得した処理レートにより動作するように指示するとともに、前記ディジタル復調部に対して取得した処理レートと同一の動作クロックにより動作するように指示することを特徴とする。
【0015】
なお、本発明の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一つの態様によれば、ディジタルフィルタのタップ長やタップ係数を変更することなくディジタルフィルタの周波数特性を変化させることができ、さらに、回路規模や処理負荷を増大させることなく受信装置の受信性能を高めることができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明の一つの態様によれば、受信信号の周波数帯域が狭いときほど、デシメーションフィルタの処理レートが低くなり、受信装置の処理負荷を低減することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明の一つの態様によれば、ディジタルフィルタの処理レートが変更された場合であっても、正常に復調処理を行うことができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明の一つの態様によれば、デシメーションフィルタとディジタルフィルタとの処理レートの比が一定であればディジタルフィルタのタップ長やタップ係数を変更することなくディジタルフィルタの周波数特性を変化させることができ、さらに、回路規模や処理負荷を増大させることなく受信装置の受信性能を高めることができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明の一つの態様によれば、デシメーション数算出処理や処理レート算出処理を行う必要がなくなるので、受信装置の処理負荷をより低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る受信装置、受信回路および受信回路制御方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
以下の実施例1では、受信方式がダイレクトコンバージョン方式である一般的な受信装置について説明し、次に一般的な受信装置が周波数帯域の異なる複数の信号を受信するための取り得る方式について説明し、最後に本実施例1に係る受信装置の概要、構成、処理手順等を順に説明する。
【0023】
まず、図1および図2を用いて、受信方式がダイレクトコンバージョン方式である一般的な受信装置について説明する。図1は、一般的な受信装置の回路構成を示すブロック図である。図2は、一般的な受信装置における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。
【0024】
図1に示すように、受信装置100は、低雑音増幅器(以下、LNA(Low Noise Amplifier)という)110と、局部発振器120と、ミキサ130と、アナログフィルタ140と、ΣΔADC150と、デシメーションフィルタ160と、ディジタルフィルタ170と、ディジタル復調部180と、制御部190とを有する。
【0025】
LNA110は、雑音指数の小さい増幅回路である。具体的には、図示しないアンテナから入力されたアナログ信号を増幅し、増幅したアナログ信号をミキサ130へ出力する。局部発振器120は、所定の信号を出力する発振器である。具体的には、ミキサ130が周波数変換を行うために必要となる局部発振信号をミキサ130へ出力する。
【0026】
ミキサ130は、入力された複数の信号を混合する回路や装置である。具体的には、LNA110から入力されたアナログ信号と、局部発振器120から入力された局部発振信号とを混合して、LNA110から入力されたアナログ信号をベースバンド帯の周波数に変換し、周波数変換後のアナログ信号をアナログフィルタ140へ出力する。
【0027】
アナログフィルタ140は、入力されたアナログ信号から所定の周波数成分を除去する回路である。具体的には、ミキサ130から入力されたアナログ信号から所定の周波数以上の周波数成分を除去する。アナログフィルタ140を通過したアナログ信号は、ΣΔADC150へ入力される。アナログフィルタ140が除去する周波数成分は、アナログフィルタ140の回路構成等により定まる。
【0028】
ΣΔADC150は、アナログ信号をディジタル信号に変換する回路である。具体的には、アナログフィルタ140を通過したアナログ信号をオーバサンプリングしてディジタル信号に変換し、デシメーションフィルタ160へ出力する。
【0029】
図2に示した例では、ΣΔADC150のサンプリング周波数「fs」は、「m・f0」であるので、ΣΔADC150は、アナログフィルタ140を通過したアナログ信号をサンプリング周波数「m・f0」によりオーバサンプリングする。なお、「f0」は、アナログフィルタを通過したアナログ信号の周波数であり、「m」は、システムに固定的に設定される任意の値である。
【0030】
ここで、アナログフィルタ140は、ミキサ130から入力されたアナログ信号から、ΣΔADC150のサンプリング周波数の半分以上の周波数成分を除去しなければならない。ΣΔADC150に入力されるアナログ信号にΣΔADC150のサンプリング周波数の半分以上の周波数成分が含まれているとエリアシングが発生するからである。
【0031】
図2に示した例では、ΣΔADC150のサンプリング周波数は「m・f0」であるので、アナログフィルタ140は、ミキサ130から入力されたアナログ信号から、「(m・f0)/2」以上の周波数成分を除去しなければならない。つまり、アナログフィルタ140を通過するアナログ信号の最高周波数成分は、「(m・f0)/2」以下でなければならない。
【0032】
デシメーションフィルタ160は、入力されたディジタル信号を所定の処理レートによりデシメーションする回路である。具体的には、ΣΔADC150から入力されたディジタル信号を所定の処理レートによりデシメーションし、デシメーション後のディジタル信号をディジタルフィルタ170へ出力する。なお、デシメーションフィルタ160の処理レートは、「サンプリングレート」や「サンプリング周波数」等とも呼ばれるが、本明細書では、「処理レート」と呼ぶこととする。
【0033】
デシメーションフィルタ160の処理レートは、ΣΔADC150のサンプリング周波数とデシメーション数により定まる。ΣΔADC150のサンプリング周波数が「fs」であり、デシメーション数が「N」である場合、デシメーションフィルタ160の処理レートは、「fs/N」となる。
【0034】
図2に示した例では、デシメーションフィルタ160のデシメーション数「N」が「m/4」であり、ΣΔADC150のサンプリング周波数が「m・f0」であるので、デシメーションフィルタ160の処理レートは、「m・f0」を「m/4」により除算した値に該当する「4・f0」となる。
【0035】
ディジタルフィルタ170は、入力されたディジタル信号の所定の周波数帯域を制限する回路である。具体的には、デシメーションフィルタ160から入力されたディジタル信号の周波数帯域を制限する。ディジタルフィルタ170を通過したディジタル信号は、ディジタル復調部180へ入力される。なお、図1に示した例では、ディジタルフィルタ170として、入力された信号をパルス状に整形することができるRRC(Root raised cosine)フィルタを用いている。
【0036】
ディジタルフィルタ170の制限帯域は、ディジタルフィルタ170の処理レート、回路構成、タップ長、タップ係数等により定まり、ディジタルフィルタ170の制限帯域とディジタルフィルタ170の処理レートとは比例の関係がある。なお、ディジタルフィルタ170の処理レートは、「サンプリングレート」や「サンプリング周波数」等とも呼ばれるが、本明細書では、「処理レート」と呼ぶこととする。
【0037】
ディジタル復調部180は、入力されたディジタル信号を復調する回路である。具体的には、ディジタル復調部180は、ディジタルフィルタ170の処理レートと同一の動作クロックにより動作し、ディジタルフィルタ170を通過したディジタル信号を復調する。
【0038】
制御部190は、ΣΔADC150、デシメーションフィルタ160、ディジタルフィルタ170、ディジタル復調部180を制御する制御部である。具体的には、制御部190は、ΣΔADC150、デシメーションフィルタ160、ディジタルフィルタ170、ディジタル復調部180に対して所定の処理レートまたは動作クロックより動作するように指示する。これらの処理レートまたは動作クロックは、通常は固定値である。
【0039】
次に、受信装置100が周波数帯域の異なる複数の信号を受信するための取り得る方式について説明する。受信装置100が周波数帯域の異なる複数の信号を受信するための取り得る方式として、(1)受信信号の周波数帯域とΣΔADC150以降のサンプリング周波数や処理レートとの比を一定にする方式と、(2)受信信号の周波数帯域に関わらず、ΣΔADC150以降のサンプリング周波数や処理レートを一定にする方式とが考えられる。なお、以下では、受信信号の周波数帯域として、アナログフィルタ140を通過したアナログ信号の周波数帯域(以下、アナログフィルタ140を通過したアナログ信号の周波数帯域を「入力信号周波数帯域」という)を用いる。
【0040】
まず、図3−1、図3−2および図4を用いて、(1)の方式について説明する。図3−1および図3−2は、入力信号周波数帯域とΣΔADC150以降のサンプリング周波数や処理レートとの比を一定とした場合の、受信装置100における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。図4は、図3−1および図3−2に示した例における受信装置100のΣΔADC150以降のサンプリング周波数や処理レートの相関を示す図である。図3−1では、入力信号周波数帯域が「f0」である例を示し、図3−2では、入力信号周波数帯域が「f0’」である例を示す。なお、「f0」>「f0’」であるとする。
【0041】
入力信号周波数帯域が「f0」である場合、図3−1に示したように、ΣΔADC150のサンプリング周波数「fs」は「m・f0」であるとする。このとき、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合、図3−2に示したように、ΣΔADC150のサンプリング周波数「fs」は「m・f0’」となる。(1)の方式では、入力信号周波数帯域とΣΔADC150のサンプリング周波数との比を一定にするからである。
【0042】
また、図3−1および図3−2の例において、デシメーションフィルタ160のデシメーション数を「m/4」とすると、デシメーションフィルタ160の処理レートは、入力信号周波数帯域が「f0」である場合は「4・f0」となり、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合は「4・f0’」となる。
【0043】
かかる場合、(1)の方式では、入力信号周波数帯域とディジタルフィルタ170の処理レートとの比を一定とするので、ディジタルフィルタ170の処理レートは、入力信号周波数帯域が「f0」である場合は「4・f0」となり、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合は「4・f0’」となる。なお、入力信号周波数帯域とディジタルフィルタ170の処理レートとの比が一定であればよいので、入力信号周波数帯域が「f0」である場合は「2・f0」とし、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合は「2・f0’」等としてもよい。
【0044】
上述した図3−1および図3−2に示した例をまとめると、図4に示したように、(1)の方式では、入力信号周波数帯域が「f0」である場合、ΣΔADC150のサンプリング周波数が「m・f0」であり、デシメーションフィルタ160およびディジタルフィルタ170の処理レートが「4・f0」であるとすると、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合は、ΣΔADC150のサンプリング周波数が「m・f0’」となり、デシメーションフィルタ160およびディジタルフィルタ170の処理レートが「4・f0’」となる。
【0045】
ここで、前述のように、エリアシングの発生を防止するため、ΣΔADC150のサンプリング周波数が「m・f0」である場合、アナログフィルタ140は、「(m・f0)/2」以上の周波数成分を除去しなければならず、ΣΔADC150のサンプリング周波数が「m・f0’」である場合、アナログフィルタ140は、「(m・f0’)/2」以上の周波数成分を除去しなければならない。したがって、アナログフィルタ140が除去する周波数成分(以下、アナログフィルタ140が除去する周波数成分を「アナログフィルタ140の帯域」という)を、少なくとも「(m・f0)/2」から「(m・f0’)/2」の範囲で可変にしなければならない。
【0046】
アナログフィルタ140の帯域を可変にすることは、例えば、バリキャップの容量値を変化させることでアナログフィルタのカットオフ周波数を変化させたり、複数のフィルタを直列接続して、使用するフィルタの段数を変化させたりすることで実現できるが、複数の容量(キャパシタ)を用いたり、複数段のフィルタを用いたりすることが必要になるので、回路規模や消費電流が増大するという問題が生じる。また、アナログ回路では制限帯域の可変精度に限界があるので、受信性能が低下するという問題が生じる。
【0047】
次に、図5−1、図5−2および図6を用いて、(2)の方式について説明する。図5−1および図5−2は、受信信号の周波数帯域に関わらず、ΣΔADC150のサンプリング周波数を一定とした場合の、受信装置100における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。図6は、図5−1および図5−2に示した例における受信装置100のΣΔADC150以降のサンプリング周波数や処理レートの相関を示す図である。図5−1では、入力信号周波数帯域が「f0」である例を示し、図5−2では、入力信号周波数帯域が「f0’」である例を示す。
【0048】
入力信号周波数帯域が「f0」である場合、図5−1に示したように、ΣΔADC150のサンプリング周波数「fs」が「m・f0」であるとする。このとき、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合も、図5−2に示したように、ΣΔADC150のサンプリング周波数「fs」は「m・f0」となる。(2)の方式では、ΣΔADC150のサンプリング周波数を常に一定にするからである。
【0049】
また、図5−1および図5−2の例において、デシメーションフィルタ160のデシメーション数を「m/4」とすると、デシメーションフィルタ160の処理レートは、入力信号周波数帯域が「f0」である場合は「4・f0」となり、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合も「4・f0」となる。
【0050】
かかる場合、(2)の方式では、入力信号周波数帯域に関わらず、ディジタルフィルタ170の処理レートを一定にするので、ディジタルフィルタ170の処理レートは、入力信号周波数帯域が「f0」であっても「f0’」であっても固定の値となる。
【0051】
上述した図5−1および図5−2に示した例をまとめると、図6に示したように、(2)の方式では、入力信号周波数帯域が「f0」である場合、ΣΔADC150のサンプリング周波数が「m・f0」であり、デシメーションフィルタ160およびディジタルフィルタ170の処理レートが「4・f0」であるとすると、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合も、ΣΔADC150のサンプリング周波数が「m・f0」であり、デシメーションフィルタ160およびディジタルフィルタ170の処理レートが「4・f0」となる。
【0052】
このように、(2)の方式は、ΣΔADC150のサンプリング周波数を常に一定にするので、アナログフィルタ140の帯域も一定にすることができ、上記(1)の方式のようなアナログフィルタ140の帯域を可変にするために発生する問題は生じない。
【0053】
しかしながら、(2)の方式は、ディジタルフィルタ170の処理レートを常に一定に保ったまま、ディジタルフィルタ170の制限帯域を受信信号の周波数帯域に応じて変更するため、タップ長やタップ係数を変更しなければならない。このことは、周波数帯域の異なる信号を受信する度に、タップ長やタップ係数を変更する処理が必要となり、受信装置の処理負荷が増大するという問題を招く。
【0054】
以上のように、上記(1)および(2)の方式を用いると、受信性能が低下するという問題や、処理負荷が増大するという問題が生じる。
【0055】
次に、本実施例1に係る受信装置の概要について説明する。図7は、本実施例1に係る受信装置の概要を説明するための図である。同図に示すように、受信装置200は、アナログフィルタ140と、ΣΔADC150と、デシメーションフィルタ160と、ディジタルフィルタ170と、制御部210とを有する。なお、以下の説明では、図1に示した構成部位と同様の機能を有する部位には同一符号を付すこととしてその詳細な説明を省略する。また、図1に示した例では、ディジタルフィルタ170として、RRCフィルタを用いたが、受信装置200を構成するディジタルフィルタ170は、RRCフィルタに限らない。
【0056】
本実施例1に係る受信装置200は、受信信号の周波数帯域に関わらず、ΣΔADC150のサンプリング周波数を常に一定にする。これにより、アナログフィルタ140の通過帯域を常に一定にすることができるので、上記(1)の方式を用いるために発生する問題は生じない。
【0057】
制御部210は、入力信号周波数帯域を検知し(ステップS11)、入力信号周波数帯域とデシメーションフィルタ160の処理レートとの比が常に一定となるようにデシメーションフィルタ160のデシメーション数を変更する(ステップS12)。
【0058】
そして、制御部210は、デシメーション数を変更されたことに伴って変更されたデシメーションフィルタ160の処理レートと同一の値となる処理レートを算出し、ディジタルフィルタ170に対して、算出した処理レートにより動作するように指示する(ステップS13)。これにより、入力信号周波数帯域とディジタルフィルタ170の処理レートとの比が一定となり、ディジタルフィルタ170の制限帯域を、タップ長やタップ係数を変更することなく入力信号周波数帯域に適したものに変更することができる。したがって、上記(2)の方式を用いるために発生する問題は生じない。
【0059】
次に、図8−1、図8−2、図9を用いて、上述した本実施例1に係る受信装置200の概要について例を挙げて説明する。図8−1および図8−2は、本実施例1に係る受信装置200における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。図9は、図8−1および図8−2に示した例における受信装置200のΣΔADC150以降のサンプリング周波数や処理レートの相関を示す図である。図8−1では、入力信号周波数帯域が「f0」である例を示し、図8−2では、入力信号周波数帯域が「f0’」である例を示す。
【0060】
入力信号周波数帯域が「f0」である場合、図8−1に示したように、ΣΔADC150のサンプリング周波数は「m・f0」であるとする。このとき、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合も、図8−2に示したように、ΣΔADC150のサンプリング周波数は「m・f0」となる。本実施例1に係る受信装置200は、ΣΔADC150のサンプリング周波数を常に一定にするからである。
【0061】
そして、入力信号周波数帯域が「f0」である場合、図8−1に示したように、デシメーションフィルタ160のデシメーション数が「m/4」であるとすると、デシメーションフィルタ160の処理レートは、「4・f0」となる。この場合、制御部210は、ディジタルフィルタ170に対してデシメーションフィルタ160の処理レートと同一の「4・f0」により動作するように指示する。
【0062】
入力信号周波数帯域が「f0’」である場合、図8−2に示したように、制御部210は、入力信号周波数帯域「f0’」を検知し、入力信号周波数帯域とデシメーションフィルタ160の処理レートとの比が一定となるように、デシメーションフィルタ160のデシメーション数を変更する。
【0063】
具体的には、入力信号周波数帯域が「f0」である場合は、図8−1に示したように、デシメーションフィルタ160の処理レートが「4・f0」であるので、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合は、デシメーションフィルタ160の処理レートが「4・f0’」となるように、デシメーション数を変更する。つまり、制御部210は、デシメーション数を「(m/4)・(f0/f0’)」に変更する。
【0064】
これにより、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合、デシメーションフィルタ160の処理レートは、ΣΔADC150のサンプリング周波数「m・f0」を「(m/4)・(f0/f0’)」により除算した値に該当する「4・f0’」となる。この場合、制御部210は、ディジタルフィルタ170に対して、デシメーションフィルタ160の処理レートと同一の「4・f0’」により動作するように指示する。
【0065】
上述した図8−1および図8−2に示した例をまとめると、図9に示したように、本実施例1に係る受信装置200では、入力信号周波数帯域が「f0」である場合、ΣΔADC150のサンプリング周波数が「m・f0」であり、デシメーションフィルタ160およびディジタルフィルタ170の処理レートが「4・f0」であるとすると、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合は、ΣΔADC150のサンプリング周波数が「m・f0」であり、デシメーションフィルタ160およびディジタルフィルタ170の処理レートが「4・f0’」となる。
【0066】
ディジタルフィルタ170の制限帯域は、入力信号周波数帯域が「f0」である場合、ディジタルフィルタ170の処理レートを「4・f0」にすれば、最適な値になるようにタップ長やタップ係数が設定されているものとする。ディジタルフィルタ170の制限帯域と処理レートとは比例の関係があるので、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合、ディジタルフィルタ170の処理レートを「4・f0’」にすれば、受信信号に対して最適な制限帯域となる。
【0067】
以上のように、本実施例1に係る受信装置200は、ディジタルフィルタ170のタップ長やタップ係数を1度設定すれば、その後はタップ長やタップ係数を変更することなくディジタルフィルタ170の制限帯域を受信信号に適したものに変更することができる。これにより、タップ長やタップ係数を変更するための処理が不要となるので、受信装置の処理負荷を増大させることなく、受信装置200の受信性能を高めることができる。
【0068】
次に、本実施例1に係る受信装置200の回路構成について説明する。図10は、本実施例1に係る受信装置200の回路構成を示すブロック図である。同図に示すように、受信装置200は、LNA110と、局部発振器120と、ミキサ130と、アナログフィルタ140と、ΣΔADC150と、デシメーションフィルタ160と、ディジタルフィルタ170と、ディジタル復調部180と、制御部210とを有する。
【0069】
制御部210は、ΣΔADC150、デシメーションフィルタ160、ディジタルフィルタ170、ディジタル復調部180を制御する制御部であり、固定クロック生成部211と、周波数検知部212と、デシメーション数変更部213と、動作指示部214とを有する。
【0070】
固定クロック生成部211は、ΣΔADC150およびデシメーションフィルタ160に対して所定の動作クロックより動作するように指示する処理部である。具体的には、ΣΔADC150およびデシメーションフィルタ160がサンプリングするために必要十分な動作クロックを算出して、算出した動作クロックにより動作するように指示する。
【0071】
周波数検知部212は、アナログフィルタ140を通過したアナログ信号の周波数帯域(入力信号周波数帯域)を検知し、検知した入力信号周波数帯域をデシメーション数変更部213および動作指示部214へ出力する処理部である。
【0072】
デシメーション数変更部213は、周波数検知部212から入力された入力信号周波数帯域に応じてデシメーションフィルタ160のデシメーション数を変更する処理部である。具体的には、デシメーション数変更部213は、入力信号周波数帯域とデシメーションフィルタの処理レートとの比が常に一定になるように、デシメーション数を変更する。
【0073】
ここで、図8−1および図8−2を用いて、デシメーション数変更手順について説明する。かかる場合、デシメーション数変更部213は、デシメーション数を「(m/4)・(f0/X)」に変更している。「m」は、ΣΔADC150がオーバサンプリングする際に用いるシステムに固定的に設定される値であり、「4」は、システムに固定的に設定される値であり(本実施例1では、「4」と例示したがいかなる値であってもよい)、「f0」は、システムに固定的に設定される基準となる周波数である。「X」は、周波数検知部212から入力された入力信号周波数帯域である。
【0074】
例えば、入力信号周波数帯域が「f0」である場合、デシメーション数変更部213は、図8−1に示したように、デシメーション数を「(m/4)・(f0/f0)」、すなわち、「m/4」に変更する。入力信号周波数帯域が「f0’」である場合、デシメーション数変更部213は、図8−2に示したように、デシメーション数を「(m/4)・(f0/f0’)」に変更する。
【0075】
このように、デシメーション数変更部213は、システムに固定的に設定される値(図8−1および図8−2の例では「m」「4」「f0」)を用いて、入力信号周波数帯域とデシメーションフィルタの処理レートとの比が常に一定になるようにデシメーション数を容易に変更することができる。
【0076】
動作指示部214は、周波数検知部212から入力された周波数帯域に応じて、デシメーションフィルタ160の処理レートと同一の処理レートを算出し、ディジタルフィルタ170に対して、算出した処理レートにより動作するように指示するとともに、ディジタル復調部180に対して、算出した処理レートと同一の動作クロックにより動作するように指示する処理部である。
【0077】
ここで、図8−1および図8−2の例を用いて、処理レート算出手順について説明する。かかる場合、動作指示部214は、ディジタルフィルタ170の処理レートを「4・X」に変更している。「4」は、システムに固定的に設定される値であり(本実施例1では、「4」と例示したがいかなる値であってもよい)、「X」は、周波数検知部212から入力された入力信号周波数帯域である。
【0078】
例えば、入力信号周波数帯域が「f0」である場合、動作指示部214は、ディジタルフィルタ170に対して、処理レート「4・f0」により動作するように指示する。図8−1に示したように、デシメーションフィルタ160の処理レートは「4・f0」であるので、デシメーションフィルタ160とディジタルフィルタ170の処理レートは同一となる。
【0079】
同様に、入力信号周波数帯域が「f0’」である場合、動作指示部214は、ディジタルフィルタ170に対して、処理レート「4・f0’」により動作するように指示する。図8−2に示したように、デシメーションフィルタ160の処理レートは「4・f0’」であるので、デシメーションフィルタ160とディジタルフィルタ170の処理レートは同一となる。
【0080】
このように、動作指示部214は、システムに固定的に設定される値(図8−1および図8−2の例では「4」)を用いて、ディジタルフィルタ170に対してデシメーションフィルタ160の処理レートと同一の処理レートにより動作するように指示することができる。
【0081】
次に、図10に示した制御部210の処理手順について説明する。図11は、図10に示した制御部210の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、周波数検知部212は、アナログフィルタ140を通過したアナログ信号が存在する場合(ステップS301肯定)、入力信号周波数帯域を検知する(ステップS302)。そして、周波数検知部212は、検知したアナログ信号の周波数帯域をデシメーション数変更部213および動作指示部214へ出力する。
【0082】
周波数検知部212からアナログ信号の周波数帯域を入力されたデシメーション数変更部213は、周波数検知部212から入力された周波数帯域とデシメーションフィルタの処理レートとの比が常に一定となるように、デシメーションフィルタ160のデシメーション数を変更する(ステップS303)。
【0083】
周波数検知部212からアナログ信号の周波数帯域を入力された動作指示部214は、デシメーション数を変更されたことに伴って変更されたデシメーションフィルタ160の処理レートと同一の値となる処理レートを算出し、(ステップS304)、ディジタルフィルタ170に対して、算出した処理レートにより動作するように指示するとともに(ステップS305)、ディジタル復調部180に対して、算出した処理レートと同一の動作クロックにより動作するように指示する(ステップS306)。
【0084】
次に、図10に示したディジタルフィルタ170のインパルス応答特性について説明する。図12は、図10に示したディジタルフィルタ170のインパルス応答特性の一例を示す図である。同図に示すように、本実施例1に係る受信装置200を構成するディジタルフィルタ170は、タップ長やタップ係数を変更する必要がないため、一定のインパルス応答特性となる。
【0085】
次に、図10に示したディジタルフィルタ170の周波数応答特性について説明する。図13は、図10に示したディジタルフィルタ170の周波数応答特性を示す図である。同図の例では、ディジタルフィルタ170の処理レートが「15.36MHz」である場合と、「30.72MHz」である場合とにおけるディジタルフィルタ170の周波数応答特性を示している。
【0086】
同図に示すように、本実施例1に係る受信装置200を構成するディジタルフィルタ170は、処理レートが「15.36MHz」である場合に比べて、「30.72MHz」である場合は、制限帯域が2倍になる。このように、ディジタルフィルタ170の制限帯域と処理レートとは比例関係にある。
【0087】
上述してきたように、本実施例1では、周波数検知部212がアナログフィルタ140を通過した信号の周波数帯域を検知し、デシメーション数変更部213が周波数検知部212から入力された周波数帯域に応じてデシメーションフィルタ160のデシメーション数を変更し、動作指示部214が周波数検知部212から入力された周波数帯域に応じて、デシメーションフィルタ160の処理レートと同一の処理レートを算出し、ディジタルフィルタ170に対して、算出した処理レートで動作するように指示するとともに、ディジタル復調部180に対して、算出した処理レートと同一の動作クロックで動作するように指示する構成としたので、ディジタルフィルタ170のタップ長やタップ係数を変更することなくディジタルフィルタ170の周波数特性を変化させることができる。したがって、回路規模や処理負荷を増大させることなく受信装置200の受信性能を高めることができる。
【0088】
なお、上記実施例1では、デシメーションフィルタ160の処理レートと、ディジタルフィルタ170の処理レートおよびディジタル復調部180の動作クロックを同一にする場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、デシメーションフィルタ160の処理レートと、ディジタルフィルタ170の処理レートおよびディジタル復調部180の動作クロックとの比を一定にするように構成してもよい。
【0089】
例えば、デシメーションフィルタ160の処理レートが「4・f0」である場合、ディジタルフィルタ170を処理レート「2・f0」により動作させることで、ディジタルフィルタ170の制限帯域が最適となるようにタップ長やタップ係数を初期設定しているならば、デシメーションフィルタ160の処理レートが「4・f0’」である場合、動作指示部214は、ディジタルフィルタ170を処理レート「2・f0’」により動作させる。
【0090】
本実施例1に係る受信装置200は、例えば、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末装置、無線通信を行うための通信カードや通信ボード、通信カードや通信ボードを内蔵したパーソナルコンピュータ等に適用することができる。また、本実施例1に係る受信装置200は、例えば、携帯端末装置や通信カード等が有する電子回路等に適用することができる。
【実施例2】
【0091】
ところで、上記実施例1では、周波数検知部212からアナログ信号を検知する度に、周波数帯域に応じたデシメーションフィルタ160のデシメーション数を算出したり、ディジタルフィルタ170の処理レートを算出したりする例を示したが、周波数検知部212から入力される入力信号周波数帯域に対応付けて、デシメーションフィルタ160のデシメーション数やディジタルフィルタ170の処理レートを予め所定の記憶部に記憶しておくように構成してよい。
【0092】
そこで、本実施例2では、入力信号周波数帯域に対応付けて、デシメーションフィルタ160のデシメーション数やディジタルフィルタ170の処理レートを予め所定の記憶部に記憶しておく例を示すこととする。
【0093】
まず、本実施例2に係る受信装置の回路構成について説明する。図14は、本実施例2に係る受信装置400の回路構成を示すブロック図である。同図に示すように、受信装置400は、LNA110と、局部発振器120と、ミキサ130と、アナログフィルタ140と、ΣΔADC150と、デシメーションフィルタ160と、ディジタルフィルタ170と、ディジタル復調部180と、記憶部410と、制御部420とを有する。
【0094】
記憶部410は、各種情報を記憶する記憶回路等であり、具体的には、入力信号周波数帯域に対応付けて、デシメーションフィルタ160のデシメーション数とディジタルフィルタ170の処理レートとを記憶する。
【0095】
デシメーション数変更部421は、周波数検知部212から入力信号周波数帯域を入力されると、入力された入力信号周波数帯域に対応するデシメーション数を記憶部410から取得し、デシメーションフィルタ160のデシメーション数を取得したデシメーション数に変更する。
【0096】
動作指示部422は、周波数検知部212から入力信号周波数帯域を入力されると、入力された入力信号周波数帯域に対応する処理レートを記憶部410から取得し、ディジタルフィルタ170に対して取得した処理レートにより動作するように指示するとともに、ディジタル復調部180に対して取得した処理レートと同一の動作クロックにより動作するように指示する。
【0097】
上述してきたように、本実施例2では、周波数検知部212がアナログフィルタ140を通過した信号の周波数帯域を検知し、デシメーション数変更部421が周波数検知部212から入力された周波数帯域に対応するデシメーション数を記憶部410から取得してデシメーションフィルタ160のデシメーション数を取得したデシメーション数に変更し、動作指示部422が周波数検知部212から入力された周波数帯域に対応する処理レートを記憶部410から取得してディジタルフィルタ170に対して取得した処理レートにより動作するように指示するとともに、ディジタル復調部180に対して取得した処理レートと同一の動作クロックにより動作するように指示する構成としたので、デシメーション数算出処理や処理レート算出処理を行う必要がなくなり、受信装置400にかかる処理負荷が更に低減する。
【0098】
(付記1)入力されたアナログ信号をサンプリングしてディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換器と、アナログ−ディジタル変換器のサンプリング周波数とデシメーション数により定まる処理レートによりアナログ−ディジタル変換器から出力された信号をデシメーションするデシメーションフィルタと、デシメーションフィルタから出力された信号の帯域を制限するディジタルフィルタと、ディジタルフィルタから出力された信号に対してディジタル復調処理を行うディジタル復調部とを有する受信装置であって、
前記アナログ信号の周波数帯域を検知する周波数検知手段と、
前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を変更するデシメーション数変更手段と、
前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーション数変更手段によりデシメーション数を変更されたことに伴って変更された前記デシメーションフィルタの処理レートと同一の処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示する動作指示手段と
を備えたことを特徴とする受信装置。
【0099】
(付記2)前記デシメーション数変更手段は、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域が狭いときほど、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を大きい値に変更することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0100】
(付記3)前記動作指示手段は、前記ディジタル復調部に対して、前記ディジタルフィルタに対して指示した処理レートと同一の動作クロックにより動作するよう指示することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0101】
(付記4)前記動作指示手段は、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタの処理レートに所定の定数を乗じた処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0102】
(付記5)前記アナログ信号の周波数帯域に対応付けて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数と、前記ディジタルフィルタの処理レートとを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記デシメーション数変更手段は、前記記憶手段から、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に対応するデシメーション数を取得し、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を取得したデシメーション数に変更し、
前記動作指示手段は、前記記憶手段から、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に対応するディジタルフィルタの処理レートを取得し、前記ディジタルフィルタに対して取得した処理レートにより動作するように指示するとともに、前記ディジタル復調部に対して取得した処理レートと同一の動作クロックにより動作するように指示することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0103】
(付記6)入力されたアナログ信号をサンプリングしてディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換器と、アナログ−ディジタル変換器のサンプリング周波数とデシメーション数により定まる処理レートによりアナログ−ディジタル変換器から出力された信号をデシメーションするデシメーションフィルタと、デシメーションフィルタから出力された信号の帯域を制限するディジタルフィルタと、ディジタルフィルタから出力された信号に対してディジタル復調処理を行うディジタル復調部とを有する受信回路であって、
前記アナログ信号の周波数帯域を検知する周波数検知手段と、
前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を変更するデシメーション数変更手段と、
前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーション数変更手段によりデシメーション数を変更されたことに伴って変更された前記デシメーションフィルタの処理レートと同一の処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示する動作指示手段と
を備えたことを特徴とする受信回路。
【0104】
(付記7)前記デシメーション数変更手段は、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域が狭いときほど、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を大きい値に変更することを特徴とする付記6に記載の受信回路。
【0105】
(付記8)前記動作指示手段は、前記ディジタル復調部に対して、前記ディジタルフィルタに対して指示した処理レートと同一の動作クロックにより動作するよう指示することを特徴とする付記6に記載の受信回路。
【0106】
(付記9)前記動作指示手段は、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタの処理レートに所定の定数を乗じた処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示することを特徴とする付記6に記載の受信回路。
【0107】
(付記10)前記アナログ信号の周波数帯域に対応付けて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数と、前記ディジタルフィルタの処理レートとを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記デシメーション数変更手段は、前記記憶手段から、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に対応するデシメーション数を取得し、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を取得したデシメーション数に変更し、
前記動作指示手段は、前記記憶手段から、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に対応するディジタルフィルタの処理レートを取得し、前記ディジタルフィルタに対して取得した処理レートにより動作するように指示するとともに、前記ディジタル復調部に対して取得した処理レートと同一の動作クロックにより動作するように指示することを特徴とする付記6に記載の受信回路。
【0108】
(付記11)入力されたアナログ信号をサンプリングしてディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換器と、アナログ−ディジタル変換器のサンプリング周波数とデシメーション数により定まる処理レートによりアナログ−ディジタル変換器から出力された信号をデシメーションするデシメーションフィルタと、デシメーションフィルタから出力された信号の帯域を制限するディジタルフィルタと、ディジタルフィルタから出力された信号に対してディジタル復調処理を行うディジタル復調部とを有する受信回路を制御する受信回路制御方法であって、
前記アナログ信号の周波数帯域を検知する周波数検知ステップと、
前記周波数検知ステップにより検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を変更するデシメーション数変更ステップと、
前記周波数検知ステップにより検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーション数変更ステップによりデシメーション数を変更されたことに伴って変更された前記デシメーションフィルタの処理レートと同一の処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示する動作指示ステップと
を含んだことを特徴とする受信回路制御方法。
【0109】
(付記12)前記デシメーション数変更ステップは、前記周波数検知ステップにより検知された周波数帯域が狭いときほど、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を大きい値に変更することを特徴とする付記11に記載の受信回路制御方法。
【0110】
(付記13)前記動作指示ステップは、前記ディジタル復調部に対して、前記ディジタルフィルタに対して指示した処理レートと同一の動作クロックにより動作するよう指示することを特徴とする付記11に記載の受信回路制御方法。
【0111】
(付記14)前記動作指示ステップは、前記周波数検知ステップにより検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタの処理レートに所定の定数を乗じた処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示することを特徴とする付記11に記載の受信回路制御方法。
【0112】
(付記15)前記デシメーション数変更ステップは、前記デシメーションフィルタのデシメーション数と、前記ディジタルフィルタの処理レートとを前記アナログ信号の周波数帯域に対応付けて記憶する記憶手段から、前記周波数検知ステップにより検知された周波数帯域に対応するデシメーション数を取得し、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を取得したデシメーション数に変更し、
前記動作指示ステップは、前記記憶手段から、前記周波数検知ステップにより検知された周波数帯域に対応するディジタルフィルタの処理レートを取得し、前記ディジタルフィルタに対して取得した処理レートにより動作するように指示するとともに、前記ディジタル復調部に対して取得した処理レートと同一の動作クロックにより動作するように指示することを特徴とする付記11に記載の受信回路制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上のように、本発明に係る受信装置、受信回路および受信回路制御方法は、周波数帯域の異なる複数の信号を受信することが必要な場合に有用であり、特に、回路規模や処理負荷を増大させることなく受信性能を高める場合に適する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】一般的な受信装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】一般的な受信装置における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。
【図3−1】入力信号周波数帯域とΣΔADC以降のサンプリング周波数や処理レートとの比を一定とした場合の、受信装置における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。
【図3−2】入力信号周波数帯域とΣΔADC以降のサンプリング周波数や処理レートとの比を一定とした場合の、受信装置における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。
【図4】図3−1および図3−2に示した例における受信装置のΣΔADC以降のサンプリング周波数や処理レートの相関を示す図である。
【図5−1】受信信号の周波数帯域に関わらず、ΣΔADCのサンプリング周波数を一定とした場合の、受信装置における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。
【図5−2】受信信号の周波数帯域に関わらず、ΣΔADCのサンプリング周波数を一定とした場合の、受信装置における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。
【図6】図5−1および図5−2に示した例における受信装置のΣΔADC以降のサンプリング周波数や処理レートの相関を示す図である。
【図7】本実施例1に係る受信装置の概要を説明するための図である。
【図8−1】本実施例1に係る受信装置における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。
【図8−2】本実施例1に係る受信装置における信号の周波数応答特性の一例を示す図である。
【図9】図8−1および図8−2に示した例における受信装置のΣΔADC以降のサンプリング周波数や処理レートの相関を示す図である。
【図10】本実施例1に係る受信装置の回路構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示した制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】図10に示したディジタルフィルタのインパルス応答特性の一例を示す図である。
【図13】図10に示したディジタルフィルタの周波数応答特性を示す図である。
【図14】本実施例2に係る受信装置の回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0115】
100 受信装置
110 LNA
120 局部発振器
130 ミキサ
140 アナログフィルタ
150 ΣΔADC
160 デシメーションフィルタ
170 ディジタルフィルタ
180 ディジタル復調部
190 制御部
200 受信装置
210 制御部
211 固定クロック生成部
212 周波数検知部
213 デシメーション数変更部
214 動作指示部
400 受信装置
410 記憶部
420 制御部
421 デシメーション数変更部
422 動作指示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたアナログ信号をサンプリングしてディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換器と、アナログ−ディジタル変換器のサンプリング周波数とデシメーション数により定まる処理レートによりアナログ−ディジタル変換器から出力された信号をデシメーションするデシメーションフィルタと、デシメーションフィルタから出力された信号の帯域を制限するディジタルフィルタと、ディジタルフィルタから出力された信号に対してディジタル復調処理を行うディジタル復調部とを有する受信装置であって、
前記アナログ信号の周波数帯域を検知する周波数検知手段と、
前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を変更するデシメーション数変更手段と、
前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーション数変更手段によりデシメーション数を変更されたことに伴って変更された前記デシメーションフィルタの処理レートと同一の処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示する動作指示手段と
を備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記デシメーション数変更手段は、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域が狭いときほど、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を大きい値に変更することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記動作指示手段は、前記ディジタル復調部に対して、前記ディジタルフィルタに対して指示した処理レートと同一の動作クロックにより動作するよう指示することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記動作指示手段は、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタの処理レートに所定の定数を乗じた処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
前記アナログ信号の周波数帯域に対応付けて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数と、前記ディジタルフィルタの処理レートとを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記デシメーション数変更手段は、前記記憶手段から、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に対応するデシメーション数を取得し、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を取得したデシメーション数に変更し、
前記動作指示手段は、前記記憶手段から、前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に対応するディジタルフィルタの処理レートを取得し、前記ディジタルフィルタに対して取得した処理レートにより動作するように指示するとともに、前記ディジタル復調部に対して取得した処理レートと同一の動作クロックにより動作するように指示することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項6】
入力されたアナログ信号をサンプリングしてディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換器と、アナログ−ディジタル変換器のサンプリング周波数とデシメーション数により定まる処理レートによりアナログ−ディジタル変換器から出力された信号をデシメーションするデシメーションフィルタと、デシメーションフィルタから出力された信号の帯域を制限するディジタルフィルタと、ディジタルフィルタから出力された信号に対してディジタル復調処理を行うディジタル復調部とを有する受信回路であって、
前記アナログ信号の周波数帯域を検知する周波数検知手段と、
前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を変更するデシメーション数変更手段と、
前記周波数検知手段により検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーション数変更手段によりデシメーション数を変更されたことに伴って変更された前記デシメーションフィルタの処理レートと同一の処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示する動作指示手段と
を備えたことを特徴とする受信回路。
【請求項7】
入力されたアナログ信号をサンプリングしてディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル変換器と、アナログ−ディジタル変換器のサンプリング周波数とデシメーション数により定まる処理レートによりアナログ−ディジタル変換器から出力された信号をデシメーションするデシメーションフィルタと、デシメーションフィルタから出力された信号の帯域を制限するディジタルフィルタと、ディジタルフィルタから出力された信号に対してディジタル復調処理を行うディジタル復調部とを有する受信回路を制御する受信回路制御方法であって、
前記アナログ信号の周波数帯域を検知する周波数検知ステップと、
前記周波数検知ステップにより検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーションフィルタのデシメーション数を変更するデシメーション数変更ステップと、
前記周波数検知ステップにより検知された周波数帯域に基づいて、前記デシメーション数変更ステップによりデシメーション数を変更されたことに伴って変更された前記デシメーションフィルタの処理レートと同一の処理レートにより動作するように前記ディジタルフィルタに対して指示する動作指示ステップと
を含んだことを特徴とする受信回路制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−60175(P2009−60175A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223179(P2007−223179)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】