説明

受光レベル取得装置、光受信器、光通信システム、受光レベル取得方法及びプログラム

【課題】高速、かつ高精度に受光レベルを取得可能な特性を有し、かつ、経済性に優れた受光レベル取得装置等を提供する。
【解決手段】受光素子101の出力は、帰還抵抗106を経由して電流源負荷型エミッタフォロア回路105のエミッタ側の定電流源1051に接続される。光信号受信時には、定電流源1051の電流から受光電流を差し引いた電流が、電流源負荷型エミッタフォロア回路105のエミッタ電流となる。電流生成回路107では、エミッタ電流と略等しいコレクタ電流を生成する。電流生成回路107が生成した電流は電流電圧変換回路108により電圧信号に変換され、ADコンバータ109により電圧値を示すデジタル信号に変換され、メモリ111に記憶される。受光レベル換算部112において、メモリ111に記憶されたデジタル信号を受光レベルに換算して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光レベル取得装置、光受信器、光通信システム、受光レベル取得方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いたアクセス系光通信システムとしてPON(Passive Optical Network)システムが広く用いられている。PONシステムでは、局側装置である1台のOLT(Optical Line Terminal)と、複数の加入者宅に設置される加入者端末装置であるONU(Optical Network Unit)とが、光スターカプラ、光ファイバ網を介して接続されている。OLTから光スターカプラまでは1本の光ファイバで接続されており、光スターカプラから各ONUまでは、それぞれ別個の光ファイバで接続されている。
【0003】
PONシステムの一例として、IEEE802.3ahで規格化されている、伝送速度が1.25Gbit/sのGE−PON(Gigabit Ethernet(登録商標) - Passive Optical Network)システムがある。GE−PONシステムにおいて、OLTからONUへの下り方向は、光波長1480〜1500nm帯を用いた同報通信方式を用い、各ONUは割り当てられたタイムスロットのデータのみ取り出す。一方、各ONUからOLTへの上り方向は、光波長1260〜1360nm帯を用い、各ONUのデータ信号が衝突しないように送出タイミングを制御する時分割多重通信方式を用いている。つまり、各ONUから送信される光信号は光バースト信号である。
【0004】
また、PONシステムの他の例として、IEEE802.3avで規格化されている、伝送速度が10.3Gbit/sの10GE−PONシステムがある。10GE−PONシステムにおいても、GE−PONシステムと同様に、OLTからONUへの下り方向は、同報通信方式を用い、各ONUからOLTへの上り方向は、時分割多重通信方式を用いている。但し、キャリア光の波長が、GE−PONシステムと異なり、下りが1574〜1580nm帯であり、上りが、1260〜1280nm帯である。
【0005】
上記のようなPONシステムでは、各ONUから送信される光バースト信号が光スターカプラを経由して光ファイバを伝送するが、各ONUが光スターカプラから異なる距離に位置するため、各ONUからOLTまで、光バースト信号が伝送する光ファイバ長が異なる。光ファイバを伝送する光信号の強度は伝送距離に比例する減衰量で減衰するため、各ONUから送信される光信号をOLTで受信したときの光信号の強度レベル、つまり受光レベルは、光信号を送信するONU毎に異なる。
【0006】
ここで、PONシステムを安定して運用していくためには、光受信器やその周辺回路、及び伝送路等に対する保守も重要である。OLT用光受信器において、各ONUから送信される光バースト信号の受光レベルを測定し、受光レベルの変動を監視することで、光受信器の故障や、伝送路の障害等を検出することができ、優れた保守運用性を得ることができる。
【0007】
光受信器において、受光レベルを取得する様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、フォトダイオードの受光電流をカレントミラー回路によりミラーリングした電流を検出する方法が開示されている。
【0008】
特許文献1に示された技術では、カレントミラー回路によりミラーリングして検出した受光電流を、電流電圧変換回路により電圧に変換し、さらにAD変換する。AD変換して得られたデジタル信号が示す電圧値を受光レベルに換算することにより、受光レベルを取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−194486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
PONシステムにおいて光受信器の高感度化実現のために、受光素子にはカソード端子に30〜70V程度の高電圧を印加する必要のあるAPD(アバランシェ・フォトダイオード)を適用することが多い。APDを備える光受信器において特許文献1に記載の方法を使用する場合、カレントミラー回路や電流電圧変換回路に、30〜70V程度の電圧に耐え得る高耐圧デバイスが必要となる。一般的に、高耐圧デバイスはスイッチング速度が遅いため、回路の応答速度が遅く、高速に受光レベルを取得する必要がある光受信器には適さないという問題がある。また、一般的に、高耐圧デバイスは高価であり、経済性が要求されるPONシステム用光受信器には適さないという問題がある。
【0011】
さらに、受光レベルがパケット毎に異なる光バースト信号を受信するPONシステム用光受信器においては、受光レベル取得装置の広ダイナミックレンジ特性が要求される。しかしながら、上記特許文献1に示された技術では、例えば、カレントミラー回路の倍率や電流電圧変換回路の利得が高い場合には、低受光レベルの光信号受信時には精度良く取得できるものの、高受光レベルの光信号受信時には取得する電流が飽和することにより精度が劣化する可能性がある。一方、カレントミラー回路の倍率や電流電圧変換回路の利得が低い場合には、高受光レベルの光信号受信時には精度良く取得できるものの、低受光レベルの光信号受信時にはS/N比が悪くなることにより精度が劣化する可能性があるという問題を有している。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高速、かつ高精度に受光レベルを取得可能な特性を有し、かつ、経済性に優れた受光レベル取得装置等を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の受光レベル取得装置は、
受信した光信号を電流信号に変換する受光素子と、前記受光素子が出力する電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプとを有する光受信器において受光レベルを取得する受光レベル取得装置であって、
前記トランスインピーダンスアンプ内の、前記受光素子から出力される電流に対して略線形性をもって変化する回路電流と等価の電流を生成する電流生成手段と、
前記電流生成手段が生成した電流に基づいて受光レベルを取得する受光レベル取得手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、経済性に優れた受光レベル取得装置等で、高速、かつ高精度に受光レベルを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】PONシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る光受信器の内部構成を示すブロック図である。
【図3】光受信器に入力される入力光信号に対するトランスインピーダンスアンプの各部の電流応答を説明するための図である。
【図4】実施の形態2に係る光受信器の内部構成を示すブロック図である。
【図5】選択部の信号選択処理を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態3に係る光受信器の一部の内部構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態4に係る光受信器の一部の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本実施の形態に係る受動光ネットワークシステム(Passive Optical Network System:以下PONシステムと呼ぶ)1は、局側の装置である1台の光終端装置(Optical Line Terminal:以下OLTと呼ぶ)10と、複数の加入者側端末装置である光ネットワークユニット(Optical Network Unit:以下ONUと呼ぶ)20とが、光スターカプラ30及び光ファイバ網31を介して接続されている。
【0018】
OLT10は、波長分割多重方式カプラ(Wavelength Division Multiplexing coupler:以下WDMカプラと呼ぶ)11と、光受信器100と、光送信器130を備える。ここで、WDMカプラ11は、光送信器130からWDMカプラ11に入力された下り信号を、光ファイバ網31側ポートに出力し、光ファイバ網31からWDM11に入力された上り信号を、光受信器100側のポートに出力する。また、より多くのONUへの伝送を可能とするために光送信器110とWDMカプラ11の間に、光増幅器を備え、光送信器110の出力を増幅させる場合もある。
【0019】
一方、ONU20は、WDMカプラ21と、光受信器200と、光送信器230を備える。ONU20の光送信器210から出力される上りの光バースト信号はWDMカプラ21、光ファイバ網31、光スターカプラ30を介してOLT10に入力される。OLT10に入力された上りの光バースト信号は、WDMカプラ11を介して光受信器100に入力される。
【0020】
ここで、各加入者宅に設置されるONU20は、光スターカプラ30から異なる距離に位置するため、各ONU20からOLT10まで、光バースト信号が伝送する光ファイバ長が異なる。光ファイバを伝送する光信号の強度は伝送距離に比例する減衰量で減衰するため、OLT10の光受信器100で受光する光バースト信号の強度レベル(以下、受光レベルと呼ぶ)は、その光バースト信号を送信するONU20の位置によって異なる。よって、OLT10の光受信器100は、異なる受光レベルの光バースト信号を安定、かつ、高速に再生する広ダイナミックレンジ特性を有する光受信器から構成される。
【0021】
OLT10の光受信器100は、広ダイナミックレンジのトランスインピーダンスアンプ102とリミッティングアンプ103を使用することで、広範囲の受光レベルの光バースト信号に対して高精度な再生を可能としている。また、優れた保守運用性を得るために、各OLT10が受信する光バースト信号の受光レベルを取得する受光レベル取得機能を有している。
【0022】
以下、光受信器100の構成と受光レベル取得機能について図2、3を用いて詳細に説明する。
【0023】
光受信器100は、図2に示すように、受光素子101、トランスインピーダンスアンプ102、リミッティングアンプ103、電流電圧変換回路108、ADコンバータ109、制御部110と、を備える。この構成のうち、トランスインピーダンスアンプ102に含まれる電流生成回路107と、電流電圧変換回路108と、ADコンバータ109と、制御部110と、が受光レベル取得装置115を構成し、受光レベル取得装置115が受光レベル取得機能を実現する。
【0024】
受光素子101は、受光素子101に入力された光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子であり、光信号強度に比例する電流を出力する。受光素子101の出力電流を受光電流と呼ぶ。
【0025】
ここで、受光素子101が受光する光信号は、例えば、光波長1260〜1360nm帯のキャリア信号に対して、振幅変調、FM変調等の任意の変調方式で変調した光信号である。このため、受光素子101が出力する受光電流の平均は、無変調時のキャリア信号を受光素子101で光電変換して得られた電流値である。
【0026】
受光素子101は、高感度化実現のために、例えば、APD(アバランシェ・フォトダイオード)から構成される。APDの駆動電源は70V程度の専用電源VDD1011である。一方、トランスインピーダンスアンプ102以降の各素子の駆動電源は3.3V又は5VのVCC1021であり、APDの駆動電源VDD1011とは別の電源を使用する。
【0027】
トランスインピーダンスアンプ102は、受光素子101が出力する受光電流を電圧に変換し増幅する。トランスインピーダンスアンプ102は、図2に示すように、入力段のエミッタ接地アンプ回路104と、エミッタ接地アンプ104の出力バッファである電流源負荷型エミッタフォロア回路105と、電流源負荷型エミッタフォロア回路105の出力をエミッタ接地アンプ回路104の入力に帰還する帰還抵抗106と、電流源負荷型エミッタフォロア回路105を構成するトランジスタ1052のコレクタ電流と等価な電流を生成する電流生成回路107と、から構成される。
【0028】
エミッタ接地アンプ104は、NPN型トランジスタ1041と、電源VCC1021とトランジスタ1041のコレクタ端子との間に位置するコレクタ抵抗1042と、トランジスタ1041のエミッタ端子とGNDとの間に位置するエミッタ抵抗1043から構成される。エミッタ接地アンプ104の入力端子である、トランジスタ1041のベース端子は、受光素子101の出力端子に接続されている。エミッタ接地アンプ104の出力端子は、トランジスタ1041のコレクタ端子であり、その出力は、電流源負荷型エミッタフォロア回路105を構成するトランジスタ1052のベース端子に入力される。
【0029】
電流源負荷型エミッタフォロア回路105は、NPN型トランジスタ1052と、トランジスタ1052のエミッタ端子に接続され一定の電流を流す定電流源1051から構成される。電流源負荷型エミッタフォロア回路105の出力端子は、トランジスタ1052のエミッタ端子であり、リミッティングアンプ103に入力されると共に、帰還抵抗106に接続されている。帰還抵抗106の他方の端子は、エミッタ接地アンプ104の入力端子、すなわちトランジスタ1041のベース端子に接続されている。
【0030】
電流生成回路107は、トランジスタ1052のコレクタ電流と等価な電流を生成して出力する。例えば、カレントミラー回路で、電源VCC1021からトランジスタ1052のコレクタ端子に流れこむコレクタ電流をミラーリングして、コレクタ電流と等価の電流を生成する。前述したように、ここでのカレントミラー回路の電源VCC1021は、3.3V等の低電圧源であるため、カレントミラー回路を構成する回路素子に高耐圧性などは要求されない。
【0031】
リミッティングアンプ103は、トランスインピーダンスアンプ102の出力信号を増幅する増幅回路である。その増幅率は、受光レベルによらず振幅が一定となるように制御されている。リミッティングアンプ103の出力が受信データ信号として受信データ信号出力端子144から出力され、その後段の信号処理部で、受信データの復号等の信号処理がなされる。
【0032】
電流電圧変換回路108は、トランスインピーダンスアンプ102の電流生成回路107から出力される電流信号を電圧信号に変換する。ADコンバータ109は、電流電圧変換回路108から出力される電圧信号を量子化して、電圧値を示すデジタル信号に変換する。
【0033】
制御部110はマイコン等から構成され、ADコンバータ109の出力値を記憶するメモリ部111と、メモリ部111に記憶されたADコンバータ109の出力値を受光素子101が受光した光信号の強度である受光レベルに換算する受光レベル換算部112を備える。
【0034】
制御部110の受光レベル換算部112で換算された受光レベルは、受光レベル出力端子113から出力される。出力された受光レベルを示す信号は、光伝送路設計により予め設定しておいた標準値と比較するなどして、受信器100の故障や、伝送路上の障害などによる受光レベルの低下を検知する。そして、検知した情報に基づいて、警告を発して、管理者に修理を促すなど、PONシステム1の保守に利用する。
【0035】
次に上記のように構成されたOLT10の光受信器100において受光レベルを取得するまでの光受信器100の各構成部の動作について説明する。
【0036】
まず、受光素子101に入力する入力光信号に対する、トランスインピーダンスアンプ102の各部の電流応答について説明する。図3は、入力光信号の強度波形に対する各部の電流応答波形の例を示したものである。
【0037】
OLT10の光受信器100に入力された光は、受光素子101により光電変換され、光信号強度に比例する受光電流が出力される。図3(a)のように時刻tから立ちあがる入力光信号強度Pinの光信号が入力されたときには、図3(b)の受光電流Ipdのように、時刻tから立ちあがる受光電流が出力される。
【0038】
受光素子101から出力された受光電流Ipdは、帰還抵抗6を経由して電流源負荷型エミッタフォロア回路5のエミッタ側の定電流源1051に流れ込む。
【0039】
図3(b)の例における時刻t以前のように、OLTの光受信器100が光信号を受信していない時は、帰還抵抗6側から定電流源1051に流れ込む受光電流Ipdはほぼ0であるため、電流源負荷型エミッタフォロア回路105のエミッタ電流Ieは、エミッタフォロア回路105のエミッタに接続された定電流源1051の電流Icと略等しい。一方、図3(b)の例における時刻t以降のように、光信号を受信している時には、受光電流Ipdとエミッタフォロア回路105のエミッタ電流Ieが定電流源1051に流れ込むため、エミッタフォロア回路105のエミッタ電流Ieは、定電流源1051の電流Icから受光電流Ipdを差し引いた電流となる。よって、受光電流Ipdは、定電流源1051の電流Icと、エミッタフォロア回路105のエミッタ電流Ieの差分に相当する。つまり、受光電流に対してエミッタ電流は線形性をもって変化すると言える。
【0040】
トランスインピーダンスアンプ102の電流源負荷型エミッタフォロア回路105において、トランジスタ1052の増幅率が十分に大きい場合には、コレクタ電流はベース電流に対して十分に大きいため、コレクタ電流とエミッタ電流は略等しい。よって、コレクタ電流も受光電流に対して線形性をもって変化すると言える。そこで、電流生成回路107において、電流源負荷型エミッタフォロア回路105のコレクタ電流と等価の電流を生成し、その電流に基づいて受光レベルを取得する。
【0041】
電流生成回路107が生成し出力した電流源負荷型エミッタフォロア回路105のコレクタ電流と等価な電流は、電流電圧変換回路108により電圧信号に変換され、ADコンバータ109で電圧値を示すデジタル信号に変換され、出力される。
【0042】
ADコンバータ109から出力されるデジタル信号は、制御部110のメモリ111に記憶される。そして、受光レベル換算部112において、メモリ111に記憶された電圧値を示すデジタル信号を受光レベルに換算する。換算して求められた受光レベルを示す信号が受光レベル出力端子113より出力される。
【0043】
つまり、例えば、3.3V等の低電圧電源を電源とするトランスインピーダンスアンプ102内において、受光電流に対して線形性をもって変化する回路電流と等価の電流を生成する電流生成回路107と、生成した電流を受光レベルに換算して取得する受光レベル取得部により、受光レベルが取得可能となる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、受光レベル取得装置115を、トランスインピーダンスアンプ102に備える電流生成回路107と、電流電圧変換部108とADコンバータ109と制御部110とを備える受光レベル取得部から構成したため、高耐圧デバイスは不要であり、また、低電圧電源の応答の早いデバイスを使用することができるため、異なる受光レベルの光バースト信号に対して、高速に受光レベルを取得可能となる。また、高価な高耐圧のデバイスを使用しないため、経済性に優れた受光レベル取得装置、光受信器等を実現できる。
【0045】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2におけるPONシステムの構成は、実施の形態1に係るPONシステム1と同様であり、OLT10の光受信器の受光レベル取得装置125の構成が実施の形態1と異なる。以下、本実施の形態2に係る光受信器200について図4を用いて詳細に説明する。
【0046】
光受信器200は、図4に示すように、受光素子101、トランスインピーダンスアンプ102、リミッティングアンプ103、電流電圧変換回路208、218、ADコンバータ209、219、制御部210を備える。
【0047】
電流電圧変換回路208と218は電流生成回路107の出力に並列に接続され、電流生成回路107が出力する電流を二分岐した電流値を電圧値に変換する。ADコンバータ209と219はそれぞれ電流電圧回路208と209の出力に接続され、電流電圧変換回路208、209が出力するアナログ電圧値を量子化して電圧値を示すデジタル信号に変換する。
【0048】
制御部210に備えるメモリ211と221はそれぞれADコンバータ209と219に接続され、ADコンバータ209、219が出力するデジタル信号を記憶する。受光レベル換算部212と222はそれぞれメモリ部211と221に接続され、メモリ部211と221に記憶されている電圧値を示すデジタル信号から受光レベルに換算して受光レベルを示す信号を出力する。選択部220は、受光レベル換算部212と222の出力に接続され、どちらか一方の出力を取捨選択する。
【0049】
次にこのように構成された光受信器200の動作について説明する。
【0050】
光受信器200に入力された光信号は、受光素子101により光電変換され、光信号強度に比例する受光電流が出力される。受光電流に対して線形変化するトランスインピーダンス102内の回路電流と等価の電流を、電流生成部207により生成される。電流生成方法は実施の形態1と同様である。
【0051】
電流生成回路107で生成された電流は二分岐され、それぞれ電流電圧変換回路208、218により電圧信号に変換され、ADコンバータ209、219でそれぞれの電圧値を示すデジタル信号に変換され、出力される。
【0052】
ADコンバータ209、219からそれぞれ出力される電圧値を示すデジタル信号は、制御部210のメモリ211、221に記憶される。そして、受光レベル換算部212、222において、メモリ211、221に記憶されたデジタル信号をそれぞれ受光レベルに換算する。換算して求められた受光レベルを示す信号のうち、一方の信号が選択部220により選択され、受光レベル出力端子113より出力される。
【0053】
ここで、電流電圧変換回路208と218は互いに異なる変換利得特性を有しており、例えば、電流電圧変換回路208は高利得、電流電圧変換回路218は低利得の変換効率を有している。この場合、予め定めた閾値より低い受光レベルの光信号受信時には、電流電圧変換回路208を通るパスの受光レベル換算値の方が、電流電圧変換回路218を通るパスの受光レベル換算値よりもS/N比が高いために高精度に受光レベルを取得可能となる。よって、選択部220は、電流電圧変換回路208を通るパスの受光レベル換算値を示す信号を選択するのが望ましい。一方、前記閾値より高い受光レベル信号受信時には、電流電圧変換回路218を通るパスの受光レベル換算値は、電流電圧変換回路208を通るパスの受光レベル換算値よりも回路飽和の影響を受け難いために、高精度に受光レベルを取得可能となる。よって、選択部220は、電流電圧変換回路218を通るパスの受光レベル換算値を示す信号を選択するのが望ましい。
【0054】
ここで、選択部220による信号選択処理の例について、図5のフローチャートに沿って説明する。まず、受光レベル換算部222が出力する受光レベルを取得し(ステップS201)、その受光レベルが予め定めた閾値以下である場合に(ステップS202:Yes)、受光レベル換算部212が出力する受光レベルを取得し(ステップS203)、受光レベル換算部212が出力する受光レベルを受光レベル出力値として(ステップS204)、受光レベル出力端子113から出力する(ステップS206)。一方、受光レベル換算部222が出力する受光レベルが予め定めた閾値よりも高い場合に(ステップS202:No)、受光レベル換算部222が出力する受光レベルを受光レベル出力値として(ステップS205)、受光レベル出力端子113から出力する(ステップS206)。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電流生成回路107で生成した電流を、変換利得の異なる2つの電流電圧変換回路208と218でそれぞれ電圧に変換し、AD変換したデジタル信号を受光レベルに換算した受光レベル換算値のうち、低い受光レベルの光信号受信時には高い変換利得特性を有する電流電圧変換回路218を通るパスの受光レベル換算値を選択部220で選択して出力し、高い受光レベル信号受信時には低い変換利得特性を有する電流電圧変換回路208を通るパスの受光レベル換算値を選択部220で選択するようにしたため、広範囲の受光レベルの受信信号に対して、高精度に受光レベルを取得することができる。
【0056】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3におけるOLT10の光受信器300の受光レベル取得装置は、実施の形態1の受光レベル取得装置のトランスインピーダンスアンプ102と電流電圧変換回路108の部分を図6に示す構成に変更したものである。以下実施の形態3に係る受光レベル取得装置を、図6を用いて詳細に説明する。
【0057】
光受信器300は、トランスインピーダンスアンプ302と、実施の形態1と同様の、受光素子101、リミッティングアンプ103、ADコンバータ109、制御部110を備える。
【0058】
トランスインピーダンスアンプ302において、エミッタフォロア回路305のトランジスタのコレクタ電流をカレントミラー回路307によりミラーリングして、コレクタ電流と等価の電流を生成している(図6)。
【0059】
カレントミラー回路307で生成したコレクタ電流と等価の電流を、抵抗素子308に流すと、抵抗素子308の両端の電圧値は、カレントミラー回路307で生成した電流に抵抗素子308の抵抗値を積算したものである。抵抗素子308のGNDと逆側の端子の電位を出力するように出力端子を設けることで、カレントミラー回路307で生成した電流信号を電圧信号に変換して出力したことになる。この出力端子をADコンバータ109に接続する。
【0060】
抵抗素子308のGNDと逆側の端子から出力するアナログ電圧信号は、ADコンバータ109で電圧値を示すデジタル信号に変換され、得られたデジタル信号は、制御部110のメモリ111に記憶される。そして、受光レベル換算部112において、メモリ111に記憶されたデジタル信号を受光レベルに換算する。換算して求められた受光レベルを示す信号が受光レベル出力端子より出力される。
【0061】
すなわち、本実施の形態においては、エミッタフォロア回路305のコレクタ電流と等価の電流が抵抗素子308に流れ、電流値と抵抗値の積により電流電圧変換がなされるため、簡易な回路構成によりコレクタ電流と等価の電流の生成と電流電圧変換が可能となる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態によれば、トランスインピーダンスアンプ302内のエミッタフォロア回路305のコレクタ電流をミラーリングするカレントミラー回路307と、その電流を電圧に変換するための抵抗素子308を備えることにより、実施の形態1の電流生成と電流電圧変換を、簡易な回路構成により実現することが可能となる。従って、より経済性に優れた光受信器および受光レベル取得装置を実現できる。
【0063】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4におけるOLT10の光受信器400の受光レベル取得装置は、実施の形態2の受光レベル取得装置のトランスインピーダンスアンプ102と電流電圧変換回路208、218の部分を図7に示す構成に変更したものである。以下実施の形態4に係る受光レベル取得装置を、図7を用いて詳細に説明する。
【0064】
光受信器400は、トランスインピーダンスアンプ402と、実施の形態2と同様の、受光素子101、リミッティングアンプ103、ADコンバータ209、219、制御部210を備える。
【0065】
トランスインピーダンスアンプ402において、エミッタフォロア回路405のトランジスタのコレクタ電流をカレントミラー回路407によりミラーリングして、コレクタ電流と等価の電流を生成している(図7)。
【0066】
カレントミラー回路407で生成した電流を、互いに直列接続された抵抗素子408、418に流したとき、抵抗素子418のGNDから離れた方の端子の電位はカレントミラー回路407で生成した電流に抵抗素子418の抵抗値を積算したものとなる。また、抵抗素子408のGNDから離れた方の端子の電位は、カレントミラー回路407で生成した電流と、抵抗素子408と418の抵抗値を加算したものとを積算した値となる。抵抗素子408、418それぞれのGNDから離れた方の端子の電位を出力するように出力端子を設けることで、カレントミラー回路307で生成した電流信号を電圧信号に変換して出力することができる。
【0067】
抵抗素子408のGNDから離れた方の端子はADコンバータ209に接続し、抵抗素子418のGNDから離れた方の端子はADコンバータ219に接続する。抵抗素子408、418のGNDから離れた方の端子から出力するアナログ電圧信号は、ADコンバータ209、219で電圧値を示すデジタル信号に変換され、得られたデジタル信号は、制御部210のメモリ211、221に記憶される。そして、受光レベル換算部212、222において、メモリ111に記憶されたデジタル信号をそれぞれ受光レベルに換算する。換算して求められた受光レベルを示す信号のうち一方を選択部220で選択して、選択された信号を受光レベル出力端子より出力する。
【0068】
すなわち、本実施の形態においては、エミッタフォロア回路405のコレクタ電流と等価な電流が抵抗素子408、418を流れ、電流値と抵抗値の積により電流電圧変換がなされるため、簡易な回路構成によりコレクタ電流と等価の電流の生成と電流電圧変換が可能となる。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態によれば、トランスインピーダンスアンプ402内のエミッタフォロア回路405のコレクタ電流をミラーリングするカレントミラー回路407と、その電流を電圧に変換するための抵抗素子408、418を備えることにより、実施の形態2の電流生成と電流電圧変換を、簡易な回路構成により実現することが可能となる。従って、より高精度で受光レベルを取得可能でかつ、より経済性に優れた光受信器および受光レベル取得装置を実現できる。
【0070】
このように本発明は、トランスインピーダンスアンプに備える電流生成回路で、受光電流に対して線形に変化する電流を生成し、その電流に基づいて受光レベルを取得するため、高速、かつ高精度に受光レベルを取得可能な特性を有し、かつ、経済性に優れた受光レベル取得装置等を実現できる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0072】
例えば、上記実施の形態においては、受光レベル取得装置を、OLTの光受信器に備えるとしたが、例えば、ONUの光受信器に同様の受光レベル取得装置を備えても良い。加入者宅のONUの受光レベルを取得することが可能となり、取得された受光レベルをONUの設定・保守等に利用することができる。
【0073】
また、上記実施の形態において、トランスインピーダンスアンプに用いるトランジスタはNPN型のトランジスタを使用した例について説明したが、PNP型のトランジスタでも、同様の効果を得ることができる。この場合、電流源負荷型エミッタフォロア回路のトランジスタのコレクタ側に定電流源を設け、エミッタ側に電流生成回路を設け、電流生成回路で生成される電流は、定電流源の電流と受光電流の和であるエミッタ電流であることを用いて、電流生成回路で生成された電流を受光レベルに換算して、受光レベルを取得する。
【0074】
また、上記実施の形態において、受光素子101としてAPDを使用する構成について説明したが、他の種類のフォトダイオードや、フォトトランジスタで構成しても良い。
【0075】
また、実施の形態2及び4において、電流電圧変換回路、ADコンバータ、メモリ、受光レベル換算部を2つ備え、電流生成回路で生成した電流を2分岐して、2つのパスによる受光レベルをそれぞれ取得するとしたが、電流電圧変換回路等の数は任意であり、3以上のパスによる受光レベルの取得を行っても良い。変換利得効率の異なる電流電圧回路を3以上備えることにより、より精度の高い受光レベルの取得が可能となる。
【0076】
また、実施の形態2及び4において、メモリを各パス毎にそれぞれ設ける構成としたが、1つのメモリを使用し、メモリのアドレスをパスによって変えることにより、それぞれのパスの電圧値を示すデジタル信号を記憶するようにしてもよい。これにより、構成をより簡易化できる。
【0077】
また、上記実施の形態2、4において、制御部210は、メモリ211、221に記憶された電圧値を読込み、読み込んだ電圧を受光レベルに換算し、得られた受光レベルのうちいずれかを選択する処理を行うが、この制御部210が実行する処理のプログラムは配布可能である。配布方法は任意であり、例えば、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 PONシステム
10 OLT
11 WDMカプラ
100 光受信器
130 光送信器
20 ONU
21 WDMカプラ
200 光受信器
230 光送信器
30 光スターカプラ
31 光ファイバ網
101 受光素子
1011 電源(VDD)
102、302、402 トランスインピーダンスアンプ
1021 電源(VCC)
103 リミッティングアンプ
104、304、404 エミッタ接地アンプ回路
1041 トランジスタコレクタ抵抗
1042 コレクタ抵抗
1043 エミッタ抵抗
105、305、405 電流源負荷型エミッタフォロア回路
1051 定電流源
1052 トランジスタ
106、306、406 帰還抵抗
107 電流生成回路
108、208、218 電流電圧変換回路
109、209、219 ADコンバータ
110、210 制御部
111、211、221 メモリ
112、212、222 受光レベル換算部
113 受光レベル出力端子
114 受信データ信号出力端子
115、125 受光レベル取得装置
220 選択部
307 カレントミラー回路
308、408、418 抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した光信号を電流信号に変換する受光素子と、前記受光素子が出力する電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプとを有する光受信器において受光レベルを取得する受光レベル取得装置であって、
前記トランスインピーダンスアンプ内の、前記受光素子から出力される電流に対して略線形性をもって変化する回路電流と等価の電流を生成する電流生成手段と、
前記電流生成手段が生成した電流に基づいて受光レベルを取得する受光レベル取得手段と、
を備えることを特徴とする受光レベル取得装置。
【請求項2】
前記トランスインピーダンスアンプは、前記受光素子が出力する電流信号が入力されるエミッタ接地アンプ回路と、前記エミッタ接地アンプ回路の出力信号が入力される電流源負荷型エミッタフォロア回路を備え、前記エミッタ接地アンプ回路の入力と前記電流源負荷型エミッタフォロア回路の出力とが抵抗を介して接続されており、
前記電流生成手段は、前記電流源負荷型エミッタフォロア回路を構成するトランジスタのコレクタ電流又はエミッタ電流と等価の電流を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の受光レベル取得装置。
【請求項3】
前記電流源負荷型エミッタフォロア回路を構成するトランジスタのエミッタ端子又はコレクタ端子には定電流源が接続されており、
前記電流生成手段が生成する電流は、定電流源の電流から、前記受光素子が出力する電流を差し引いた電流、又は、定電流源の電流に前記受光素子が出力する電流を加算した電流と等価の電流である、
ことを特徴とする請求項2に記載の受光レベル取得装置。
【請求項4】
前記電流生成手段から出力する電流信号を予め定めた変換効率で電圧信号に変換する電流電圧変換回路を更に備え、
前記受光レベル取得手段は、前記電流電圧変換回路の出力電圧値に基づいて受光レベルを取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の受光レベル取得装置。
【請求項5】
前記電流生成手段から出力する電流信号を分岐したものを、互いに異なる変換効率で電圧信号に変換する複数の電流電圧変換回路と、
前記複数の電流電圧変換回路の出力信号のいずれか1つを選択する信号選択手段と、
を更に備え、
前記受光レベル取得手段は、前記信号選択手段で選択された電流電圧変換回路の出力信号の電圧値に基づいて受光レベルを取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の受光レベル取得装置。
【請求項6】
受信した光信号を電流信号に変換する受光素子と、
前記受光素子が出力する電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプと、
前記トランスインピーダンスアンプ内の、前記受光素子から出力される電流に対して略線形性をもって変化する回路電流を生成する電流生成手段と、
前記電流生成手段が生成した電流に基づいて受光レベルを取得する受光レベル取得手段と、
を備えることを特徴とする光受信器。
【請求項7】
1つの局側装置と複数の加入者側装置からなる光通信システムであって、
前記局側装置の光受信器が、
受信した光信号を電流信号に変換する受光素子と、
前記受光素子が出力する電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプと、
前記トランスインピーダンスアンプ内の、前記受光素子から出力される電流に対して略線形性をもって変化する回路電流と等価の電柱を生成する電流生成手段と、
前記電流生成手段が生成した電流に基づいて受光レベルを取得する受光レベル取得手段と、
を備えることを特徴とする光通信システム。
【請求項8】
受信した光信号を電流信号に変換する受光素子と、前記受光素子が出力する電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプとを有する光受信器において、
前記トランスインピーダンスアンプ内の、前記受光素子から出力される電流に対して略線形性をもって変化する回路電流と等価の電流を生成する電流生成ステップと、
前記電流生成ステップで生成した電流に基づいて受光レベルを取得する受光レベル取得ステップと、
を含むことを特徴とする受光レベル取得方法。
【請求項9】
受信した光信号を電流信号に変換する受光素子と、前記受光素子が出力する電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプとを有する光受信器を制御するプログラムであって、
コンピュータに、
前記トランスインピーダンスアンプ内の、前記受光素子から出力される電流に対して略線形性をもって変化する回路電流と等価の電流を生成して、前記回路電流と等価の電流を2以上に分岐したときの電流値を、利得の異なる2以上の電流電圧変換手段で変換した電圧値を取得する手順と、
前記電流電圧変換手段で変換した電圧値に基づいて受光レベルを取得する手順と、
前記受光素子から出力される電流が予め定めた値以下の場合には、高利得の電流電圧変換手段で変換した電圧値に基づく受光レベルを選択し、前記受光素子から出力される電流が予め定めた値よりも大きい場合には、低利得の電流電圧変換手段で変換した電圧値に基づく受光レベルを選択する手順と、
前記選択された受光レベルを出力する手順と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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