説明

受動光アクセス・ネットワークにより相互接続された第1のユニット及び複数の第2のユニット間の光送信

受動光アクセス・ネットワーク(5)によって相互接続された中央局ターミナル(15)及び複数の顧客ターミナル(17)間のダウンリンク及びアップリンク・データ・トラフィックを送信するシステムは、複数の振幅を含みかつ複数の顧客ターミナル(17)に対し単一の波長を有する振幅分割多重化された光信号(S)によって搬送されるデータを送り、中央局ターミナル(15)からの光信号(S)をスペクトル・シフティングによって複数の振幅に従った複数の波長に変換して、波長分割多重化された光信号(S’)を形成し、それ故、データは、複数の異なった波長の複数の光信号(S、・・・、S)で複数の顧客ターミナル(17)によって受信され、顧客ターミナル(17)の各々は、少なくとも1つの特定の波長でデータを受信し、そして中央局(15)及び顧客ターミナル(17)間で前記ダウンリンク及びアップリンク・トラフィックをルーティングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動光ネットワーク(PON)タイプのアクセス・ネットワークに関し、特に、受動光アクセス・ネットワークにより相互接続された第1のユニット及び複数の第2のユニット間の光送信に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、遠隔通信オペレータのアクセス・ネットワークは、ほとんど、ADSLのような有線のアクセス搬送技術を使用している。中央のオフィスと加入者との間に光ファイバを設置することにより生じるインフラストラクチャの価格がひどく高いので、光学は非常に多くは用いられていない。
【0003】
PON型のアーキテクチャに基づくアクセス・ネットワークにおける光学の使用は、有線のアクセス技術により達成することが不可能な容量についての相当前進的な飛躍を可能とするが、加入者に向けられるサービスのビット。レートにおける上昇が不可避に与えられる。
【0004】
概して、PONタイプのアクセス・ネットワークは、標準のPON及び波長分割多重(WDM)PONとして知られている2つのタイプのものである。
【0005】
標準のPONは、多重時分割アクセスを用い、送信中央局(送信中央オフィス)においてただ1つの送信器を必要とする。それらは、1×Nの光カプラに基づいており、Nは顧客または加入者の数である。この形態において、送信中央局によって送られる信号によって運ばれる情報は、すべての加入者に送られ、各加入者の構内(プレミス)上の専用のターミナルが、次に、対応の加入者のために実際に意図されている情報を抽出する。このように、単一の波長上を送信中央局から伝達されるデータは、加入者の構内(プレミス)上の各顧客ターミナルにおいて時分割逆多重化される(time-division demultiplexed)。
【0006】
しかしながら、顧客ターミナルは複雑であり、1×Nカプラによる信号の減衰は無視できない。さらに、情報が各顧客ターミナルにおいて抽出される事実は、安全の問題を提起する。
【0007】
WDMのPONは、リソースの波長分割分布を用いる。換言すれば、各顧客は特定の波長を割り当てられる。実際、波長は、送信中央局において各加入者に割り当てられる。各特定の波長は、次に、光ディマルチプレクサによってフィルタ・アウトされて、対応の加入者に送られる。従って、このタイプのネットワークは、加入者及びディマルチプレクサの数に等しい波長分割マルチプレクサの数の使用を必要とする。
【0008】
このように、WDM・PONタイプのネットワークは、簡単さについては各波長が特定の加入者に割り当てられるので、そして性能については光ディマルチプレクサが1×Nカプラよりも大いに少なく減衰するので、標準のPONタイプのネットワークに対して利点を有する。
【0009】
対照的に、それは、簡単な1×Nカプラよりも値段の高いルーティング素子(光ディマルチプレクサ)及び一層多くの波長を用いるので、値段は高い。
【0010】
複数の異なった波長を発するようスイッチングされ得るチューニング可能なレーザを含む中央局も知られている。従って、顧客は、波長をチューニングすることによって次々にアドレスされる。しかしながら、チューニング可能なレーザは、顧客に割り付けられるものよりもN倍大きいビット・レートで動作しなければならず、最良のシナリオにおいて50ナノ秒(ns)であるスイッチング時間が追加されなければならず、これは、非常に高いビット・レートの通信システムにおいては決して無視することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、これらの欠点を解消して、第1のユニットと複数の第2のユニットの間の光送信を単純化することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、第1のユニット及び複数の第2のユニット間の光送信の方法によって達成され、前記第1及び第2のユニットは、受動光アクセス・ネットワークによって相互接続され、当該方法において、前記第1のユニットは、単一の波長を有する光信号によって搬送され、複数の異なった波長における複数の光信号で前記複数の第2のユニットによって受信されるデータを送り、それにより、前記第2のユニットの各々は、少なくとも一つの特定の波長でそれと関連したデータを受信する。
【0013】
このように、各第2のユニットに1つの特定の波長を割り付けることによりリソースの波長分割配分を用いつつ、単一波長を有する信号を送る第1のエンティティにおける単一の送信器で複数の信号が発生され得る。このことは、(標準のWDM PONに比較して)価格を減少し、かつ性能及び安全性を高め、そしてPON型ネットワークを単純化する。
【0014】
本発明の1つの特徴によれば、前記第1のユニットによって送られる光信号は、複数の振幅を有する振幅分割多重化された光信号であり、そして、少なくとも1つの特定の振幅は、前記第2のユニットの各々に割り当てられる。
【0015】
このように、振幅分割多重化された光信号は、データを搬送する信号のパルスのための明瞭に限定された振幅を各第2のユニットに割り当てるための単純かつ即効性の方法を提供する。
【0016】
前記第1のユニットによって送られる前記光信号の単一波長は、非線形スペクトル・シフティング効果(non-linear spectrum shifting effect)により、前記複数の振幅に一致する複数の波長に変換されるのが有利であり、それにより、波長分割多重化された光信号を形成する。
【0017】
時分割多重化から波長分割多重化への変換により、波長の空間分布が得られ、それにより、各第2のユニットはそれと関連する波長だけを受信する。このことは、データの安全性を高め、かつ第2のユニットによるデータ受信を単純化する。
【0018】
本発明は、また、第1のユニットと複数の第2のユニットとの間での光送信のためのシステムにも向けられており、前記第1及び第2のユニットは、受動光ネットワークにより相互接続され、当該システムにおいて、前記第1のユニットは単一波長を有する光信号によって搬送されるデータを送るよう適合された送信器を含み、前記複数の第2のユニットは、複数の異なった波長を有する複数の光信号におけるデータを受信するよう適合された複数の受信器を含み、それにより、前記第2のユニットの各々は、少なくとも1つの特定の波長でそれと関連したデータを受信するよう適合されている。
【0019】
第1のユニットが、単一波長を有する信号を送るためのただ1つの送信器を含むので、システムのアーキテクチャは、履行するのに非常に簡単である。さらに、該システムは、少なくとも1つの特定の波長を各第2のユニットに関連させるので、最適な安全性及び良好な性能を提供する。
【0020】
本発明の1つの特徴によれば、前記第1のユニットの送信器によって送られる光信号は、複数の振幅を有する振幅分割多重化された光信号であり、それ故、少なくとも1つの特定の振幅が前記第2のユニットの各々に割り当てられる。
【0021】
このように、光信号の振幅分割多重化は、種々の振幅と複数の第2のユニットの間で単純かつ即効性の対応を提供する。
【0022】
システムは、前記第1のユニットによって送られた前記光信号の単一波長を、スペクトル・シフティング(spectral shifting)によって、前記複数の振幅に一致する複数の波長に変換するよう適合された非線形手段を含み、それにより、波長分割多重化された光信号を形成するのが有利である。
【0023】
このように、非線形手段は、時分割多重化から波長分割多重化への変換を行い、少なくとも1つの特定の波長を各第2のユニットに関連させる。このことは、安全性を高め、かつシステムのアーキテクチャを単純化する。
【0024】
本発明のもう1つの特徴によれば、当該システムは、前記非線形手段の下流に配置され、かつ前記波長分割多重化された光信号を前記複数の光信号に逆多重化して、それらを前記複数の第2のユニットに送るようにて記号されたディマルチプレクサを含む。
【0025】
このように、ディマルチプレクサは、各第2のユニットに、特定の波長を有する減衰されない信号を割り付ける。非線形手段の下流に配置されたディマルチプレクサは、非線形手段が、各第2のユニットにアドレスされたデータの出力(power)に比例させて波長をシフトするのを可能とする。
【0026】
本発明のシステムは、第1のユニットを含む中央局ターミナルと、各々が前記複数の第2のユニットからの1つの第2のユニットを含む複数の顧客ターミナルとを備える。
【0027】
このように、中央局ターミナルは、特定の波長を各顧客ターミナルに割り付けるのと同じ時刻に単一の波長上で信号を送るためのただ1つの送信器を含む。
【0028】
本発明は、また、振幅分割多重化された光信号によって搬送され、かつ単一波長を有するデータを送るように適合された送信器と、前記振幅分割多重化された光信号を、スペクトル・シフティング(spectrum shifting)により、波長分割多重化された光信号に変換するよう適合された非線形手段と、を含む光送信中央局ターミナルにも向けられている。
【0029】
単一波長で光信号を送るための単一の送信器と、波長の空間分布のための線形手段とが充分であるので、設備のアーキテクチャは非常に単純である。
【0030】
第1の実施形態において、中央局ターミナルは、受信ディマルチプレクサと、各々が前記受信ディマルチプレクサに接続された複数の受信器と、非線形手段及び前記受信ディマルチプレクサ間に配置されたサーキュレータとを含む。
【0031】
このように、サーキュレータは、中央局ターミナルによって送られかつ受信される光信号を適切にルーティングする(routes)。
【0032】
第2の実施形態において、中央局ターミナルは、さらなる非線形手段と、前記さらなる非線形手段に接続された受信器と、前記非線形手段及び前記さらなる非線形手段間に配置されたサーキュレータとを含む。
【0033】
この第2の実施形態は、中央局ターミナルにただ1つの受信器を有するという利点を有する。
【0034】
第3の実施形態において、中央局ターミナルは、受信器と、送信器及び非線形手段間に配置されたサーキュレータとを含み、前記受信器に接続される。
【0035】
この第3の実施形態は、中央局ターミナルにただ1つの非線形手段及びただ1つの受信器を有するという利点を有する。
【0036】
本発明は、また、上述の特徴を有する中央局ターミナルからまたは該ターミナルに特定の波長で光信号によって搬送されるデータを受信または送信するよう適合された受信器/送信器を含む光送信顧客ターミナルにも向けられている。
【0037】
このように、顧客ターミナルは、それにアドレスされるデータを抽出するための何等かの特定の手段を有する必要がないので、非常に安全かつ非常に単純である。
【0038】
本発明の他の特徴及び長所は、添付図面を参照して非制限的な説明によって以下に与えられる記載を読むことによって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、第1のユニット1及び複数の第2のユニット3との間の光送信のための本発明のシステムの大いに概略的な例を示す。第1及び第2のユニットは、受動光ネットワーク(PON)5によって相互接続される。
【0040】
第1のユニット1は、複数の第2のユニット3に単一の波長で光信号Sによって搬送されるデータを送るための送信器7を含む。複数の第2のユニット3は、複数の異なった波長で複数の光信号S、・・・、Sにおけるデータを受信するよう意図された複数の受信器9を含む。この例においては、Nは第2のユニット3の数以上の数を示し、それ故、各第2のユニット3は、少なくとも1つの特定の波長でそれと関連したデータを受信するように意図されている、ということに留意されたし。
【0041】
このように、最適なアーキテクチャで、単一の波長が第1のユニット1によって送られ、少なくとも1つの特定の波長が、各第2のユニット3に割り付けられる。
【0042】
さらに、第1のユニット1の送信器7によって送られる光信号Sは、複数の振幅を有する振幅分割多重化された(amplitude-division multiplexed)光信号であり、少なくとも1つの特定の振幅が、前記第2のユニット3の各々に割り当てられる。
【0043】
このように、光信号Sを振幅分割多重化することは、データを搬送するこの信号Sのパルスの明瞭に限定された振幅の各第2のユニット3への即効性の割付けを可能にする。各第2のユニット3に対して意図されたデータは、時分割多重化されているが、各データ・フレームは異なった出力(振幅)で送られる。
【0044】
図2は、光送信システムの受動光ネットワーク5が、振幅分割多重化を波長分割多重化に変換するよう意図された非線形手段11を含むということを示す。
【0045】
非線形手段11は、第1のユニット1によって送られる光信号の単一の波長を、スペクトル・シフティング(spectrum shifting)によって、複数の振幅の関数として複数の波長に変換する。各フレームの波長は、フレームの光出力(optical power)に依存する量だけ増加する。このように、波長分割多重化された(WDM)光信号S’は、非線形手段11の出力において形成される。
【0046】
時分割多重化(TDM)から波長分割多重化(WDM)への変換は、波長の空間分布を生成し、それにより、各第2のユニットは、それと関連した波長だけを受信する。
【0047】
光送信システムは、非線形手段11の下流に配置された低損失の光ディマルチプレクサ13を含む。このディマルチプレクサ13は、波長分割多重化された光信号S’を、複数の光信号S、・・・、Sに逆多重化して、それらを複数の第2のユニット3に送るように意図されている。
【0048】
このように、ディマルチプレクサ13は、弱く減衰された信号(チャンネルの数とは無関係な損失)を、特定の波長で、各第2のユニット3に割り付ける。非線形手段11の下流に配置されたディマルチプレクサ13は、これらの非線形手段11が、各第2のユニット3に対して意図されたデータ出力に比例して波長をシフトさせるのを可能とする。結果として、各第2のユニット3は、それと関連している波長だけを受信し、このことは、データの安全性を高めかつ受信システムを単純化する。
【0049】
時分割多重化されたデータは、振幅分割多重化(特定の第2のユニット3に対応する与えられた振幅)もされているので、(ストリームまたは信号Sの走行方向に対して)光ディマルチプレクサ13のすぐ前に置かれた非線形手段11は、信号Sの波長を、それを構成するパルスの振幅に比例してシフトさせる。このように、非線形手段11の下流で、光ディマルチプレクサ13のすぐ前で、振幅分割多重化されたデータは、波長分割多重化もされる。
【0050】
もちろん、非線形手段11を通過する際に、発生されるスペクトル・シフト(spectrum shift)が、光ディマルチプレクサ13のスペクトル割付け(spectrum allocations)に対応するということに注意を払わなければならない。
【0051】
さらに、非線形手段11によって生成される非線形スペクトル・シフティング効果は、ソリトン自己周波数型(soliton self-frequency shift type)のもの、自己位相変調型のもの、または、同じスペクトル・シフティング効果をもたらす任意の他の型のものであって良い。
【0052】
ソリトン自己周波数シフト現象は、“ソリトン自己周波数シフトの発見”(1986年10月のOptics Letters、11巻、第10、659−661頁)において、Mollenauer及びMitschkeによって報告された物理現象である。
【0053】
光ファイバにおいては、基本的なソリトンよりも多くのエネルギを運ぶソリトン型(セカント双曲線プロフィル[secant hyperbolic pforile])のパルス(例えば、S)は、非線形圧縮を受ける。もし圧縮係数が充分に高いならば、高いピーク出力のパルスが発生される。時間圧縮は、強いスペクトル拡張(spectrum widening)を誘起し、これは、ラマン拡散(Raman diffusion)がパルス上に作用するのを可能とする。このように、ラマン効果は、パルスのスペクトルを、非線形手段11の非線形性のレベルに比例した周波数シフトに従属させる。非線形手段11のソリトン自己周波数シフトによって発生されるスペクトル・シフトは、創成されるパルスのピーク出力に比例するか、もしくはその時間幅に反比例する。ピーク出力が大きければ大きいほど、換言すれば、圧縮係数が高ければ高いほど、周波数シフトは大きい。異なったピーク出力を有する初期のパルスは、従って、非線形圧縮による、そして次に、ソリトン自己周波数シフトによる、異なった波長のパルスを生じさせる。
【0054】
例として、約8ピコ秒(ps)で約33%の時間幅(デューティ・サイクル)のそして1550nmに等しい波長λを有するパルスτで、第1のユニット1によって送られる1秒につき40ギガビット(Gbit/s)におけるデータ・ストリームもしくは信号Sを考慮する。
【0055】
また、1ワットにつき2.10−18平方メートル(m/W)に等しい非線形インデックス(non-linear index)n及び50平方マイクロメートル(μm)に等しい有効面積Aeffのカルコゲナイド・グラス・ファイバ(chalcogenide glass fiber)素子からなる非線形手段をも考慮する。カルコゲナイド・グラス・ファイバの非線形インデックスnは、標準のグラス・ファイバのものよりも非常に高いことに留意されたし。さらに、1キロメートルごとのナノメートルごとの(per nanometer per kilometer)10ピコ秒(ps/nm/km)に等しい波長分散(chromatic dispersion)Dのレベルがこのグラス・ファイバのために選ばれることができる。
【0056】
真空中の光の速度を考慮すると、ソリトンの分散長さZは以下の式で与えられる。
【数1】

【0057】
このように、上のデータによれば、分散長さZは1.6155キロメートル(km)に等しい。さらに、ソリトン周期Zは、以下の式で与えられ、
【数2】

それ故、この例においては、ソリトン周期Zは2.5377kmに等しい。基本ソリトン(fundamental soliton)のピーク出力Pは、次に、値
【数3】

を有し、それ故、この例においては、ピーク出力Pは3.8124ミリワット(mW)を有する。対応のパルス・ストリームの平均出力は、次に、1ミリワットに対し−1.5991デシベル(dBm)に等しい。
【0058】
さらに、カルコゲナイド・グラス非線形ファイバ(非線形手段11)におけるピーク出力Pcで幅8psのパルスの伝播に対応する非線形長さLNL及び分散長さLは、以下の式で与えられる。
【数4】

【0059】
パルスは、もしそれらのピーク出力Pcが以下の式
【数5】

を満足するならば、N次ソリトン(Nth order soliton)に非常に近いものとして考慮され得ることに留意されたし。
【0060】
例えば、N=2の場合、対応のピーク出力Pcは、次に、値4.9mWを有する。
【数6】

【0061】
非線形手段11に上述で計算されたピーク出力を有するこれらのパルスを注入すると、これらのパルスの圧縮係数Fは、以下の式で与えられる。
【数7】

【0062】
この圧縮を得るために必要なファイバの長さLoptは、従って、値
【数8】

を有し、すなわち、N=2の場合、
【数9】

である。
【0063】
圧縮係数は、従って、約8であり(圧縮後のパルスの幅は1psに等しい)、そして該圧縮を得るために必要なカルコゲナイド・グラス・ファイバの長さは、1100メートル(m)に等しい。
【0064】
パルスの非線形圧縮のこの段階の後には、ソリトン自己周波数シフト効果によるパルスのスペクトル・シフティングが続く。ソリトン自己周波数シフトによって発生される単位長さあたりのスペクトル・シフトdω/dzは、以下の式で与えられる(J.P.Gordonによる“ソリトン自己周波数シフトの理論[Theory of the soliton self−frequency shift]”、Optics Letters,Vol.11,No.10,662頁〜664頁、1986年10月)
【数10】

ここに、ωは、ソリトンの正規化された周波数であり、αは、使用されるファイバのラマン減衰の係数であり、そしてΩはソリトン・ユニットにおけるスペクトル偏差である。これは、以下の式によってファイバのラマン利得Gに連結される。
【数11】

ここに、νは、テラヘレツ(THz)における周波数シフトである。
【0065】
カルコゲナイド・グラス・ファイバ(非線形手段11)は、シリカ・グラス・ファイバのものよりも約700倍大きいラマン効力(Raman efficacy)を有することが知られている。シリカ・ファイバのラマン利得Gのピーク値は、1ワットにつき1.10−13であり、従って、カルコゲナイド・グラス・ファイバのピーク値は、7.10−11程度である。ピークにおいて、ラマン減衰係数αは、従って、以下のように書かれ得る。
【数12】

すなわち、数値としては、
【数13】

である。
【0066】
本当の単位に戻すと、式(4)は、従って、
【数14】

となる。何故ならば、
【数15】

だからである。
【0067】
ラマン利得ピークは、ポンプから13.2THzに等しい周波数ΔνMaxで生じると仮定している。式(8)は以下のように書かれ得る。
【数16】

何故ならば、
【数17】

だからである。
【0068】
式(10)は、次に、
【数18】

となる。
【0069】
波長λをnmで表現し、波長分散Dをps/(nm.km)で表現し、光の速度cを1秒ごとのメートル(m/s)で表現し、ΔνMaxをTHzで表現し、そして、τをpsで表現すれば、式(12)は、
【数19】

となる。
【0070】
(8psの幅で第1のユニット1によって発生される)圧縮された1psパルスτに対して、ファイバの1キロメートルごとに0.76THzのシフト(ほぼ6mn)が得られる。(圧縮のために必要な1100mを含む)全体で6kmのファイバの終りにおいては、3.8THzのシフト(約30nm)があるであろう。
【0071】
図3は、例として、第1のユニット1を含む中央局ターミナル15と、各々が1つの第2のユニット3を含む複数の顧客(もしくは加入者)ターミナル17とを備えた光送信システムを示す。
【0072】
さらに、1つまたは2つ以上の第2のユニット3は、中央局ターミナル15に含まれることができ、そして、第1のユニット1は、顧客ターミナル17に含まれることができる、ということに留意されたし。
【0073】
PON型ネットワークを有する図3からのシステムは、40の顧客(または加入者)ターミナル17を含み、かつ顧客ターミナル17ごとのビット・レートは、1Gbit/sであるということを考慮し、次に、3.8から4.9mWまで配分されたフレームの40の(ピーク)出力値を考慮すると、30nmのバンド(帯域)、すなわち100GHzごとにほぼ1波長、に渡って、(40の顧客ターミナル17に行く)40のダウンリンク波長を配分することが可能である。
【0074】
光ディマルチプレクサ13の下流のビット・レートが単に1Gbit/sである場合、1psパルスの光検出(光検波)は何等特別な問題を生じないということに留意されたし。ここでの目的はパルスを分析することに成功することではなく、“0”から“1”を識別することであるので、従って、超高速検出器は必要でない。
【0075】
さらに、ソリトン自己周波数シフトが充分に蓄積されない場合にのみ(換言すれば、非線形ファイバが短すぎる場合に)、WDMチャンネル間のクロストークが重要である。
【0076】
しかしながら、標準のファイバにおけるパルスの増幅無しでの数百メートルに渡る伝播(パルスがファイバに入る際に1psの幅を有するならば14mに等しい分散長さ)は、パルスを拡張し(ソリトン伝播を非安定化する)かつスペクトルを圧縮する効果を有し、それ故、何等重要なクロストークまたは干渉はディマルチプレクサ13において観察されない。
【0077】
上述の数値例は、全体的に合理的であるディマルチプレクサ13の種々のパラメータのための大きさの程度でもって、40Gbit/sのデータ・ストリームのスペクトル逆多重化のためのソリトン自己周波数シフトの効力を示している。
【0078】
このように、本発明は、PON型ネットワーク・アーキテクチャの2つの型の利点を両立させる。換言すれば、中央局ターミナル15は、単一波長を送り、低損失の光ディマルチプレクサは、各加入者が彼等に対して特定である1つの波長と関連するように、ネットワークにおいて履行される。
【0079】
図4乃至図6は、図3からの中央局ターミナルの種々の実施形態を示す。
【0080】
これらの実施形態において、光送信中央局ターミナル115、215、315は、単一波長において振幅分割多重化された光信号Sを送るよう意図された送信器7と、振幅分割多重化された光信号Sを波長分割多重化された光信号S’にスペクトル・シフティングによって変換するよう意図された非線形手段11とを含む。
【0081】
単一の送信器7は、波長の空間分布のための非線形手段11で単一の波長を有する光信号を送るために充分であるので、設備のアーキテクチャは非常に単純である。
【0082】
さらに、光送信顧客ターミナル17は、光送信中央局ターミナル115、215、315からまたはそれらへ特定の波長における光信号Siによって運ばれるデータを受信するまたは送信するように意図された送受信器19を含む。このように、各顧客ターミナル17は、それのために意図されたデータを抽出するための専用の手段を用いる必要がないので、非常に安全であり、かつ非常に単純である。
【0083】
図4は、中央局ターミナル115が、受信ディマルチプレクサ21と、受信ディマルチプレクサ21に接続された複数の受信器109と、非線形手段11及び受信ディマルチプレクサ19間に配置されたサーキュレータ23とを含むという第1の実施形態を示す。このように、サーキュレータ21は、中央局ターミナル115によって適切に送信されかつ受信される光信号S’をルーティングすることができる。
【0084】
図4の例において、TDM−WDM変換は、(顧客ターミナル17に行く)ダウンリンク光信号に関している。(顧客ターミナル17から)中央局ターミナル115に行くデータの場合、ネットワークは、波長分割多重化―逆多重化を用いた標準WDM PON型のネットワークであって良い。非線形手段11と受信光ディマルチプレクサ19との間に置かれたサーキュレータ21は、ダウンリンク及びアップリンクのトラフィックを適切にルーティングする(routes)。
【0085】
図5は、中央局ターミナル215が、さらなる非線形手段211と、これらのさらなる非線形手段211に接続された受信器209と、非線形手段11及びさらなる非線形手段211間に配置されたサーキュレータ23とを含む第2の実施形態を示す。
【0086】
アップリンク・ストリーム上にさらなる非線形手段211を設けることは、中央局ターミナル215にただ1つの受信器209を用いることを可能とする。さらなる非線形手段211は、最も高い波長を有するアップリンク・チャンネルのものよりも僅かに高い単一の波長に種々のチャンネルを再チューニングする(retune)。波長が周波数に関して満足に再チューニングされ得るように、出力においてフレームを送ることが各顧客ターミナル17において当然必要である。アップリンク信号が時間において正確にインターリーブされるようにアップリンク信号を送る際に良好な同期が与えられるならば、この第2の実施形態の利点は、中央局ターミナル215にただ1つの受信器209を有することである。
【0087】
図6は、中央局ターミナル315が、受信器309と、該受信器309に接続されたサーキュレータ23とを含む第3の実施形態を示す。この実施形態において、サーキュレータ23は、送信器7と、非線形手段11との間に配置されている。
【0088】
このように、この第3の実施形態においては、同じ非線形手段11が、ダウンリンク・ストリーム及びアップリンク・ストリーム上で動作する。中央局ターミナル315(ダウンリンク・ストリームに関して)及び顧客ターミナル17(アップリンク・ストリームに関して)において、発生されたスペクトル・シフトが、(アップリンク・ストリームに対しては)ディマルチプレクサ13の図に正しく対応し、(ダウンリンク・ストリームに対しては)単一の搬送波長の図に正しく対応するように、種々のフレームの正確な出力分割多重化を適用することが必要である。顧客ターミナル17におけるアップリンク・フレームの時間同期も必要である。
【0089】
図4乃至6の実施形態では、異なった距離に配置された顧客を接続するためにフレーム出力が異なっているという事実を利用することも可能である。中央局ターミナル115、215、315の近辺の顧客は、一層低い出力(一層短い波長)のフレームからの波長と関連している。遠くにいる顧客は、一層高い出力(一層長い波長)のフレームからの波長によって接続される。このすべては、ダウンリンク・ストリームに対しては中央局ターミナル115、215、315において、そしてアップリンク・ストリームに対しては顧客ターミナル17において管理され得る。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】受動光ネットワークにより相互接続された第1のユニットと複数の第2のユニットとの間の、本発明による光送信システムの大いに概略的な例を示す図である。
【図2】図1からの光送信システムの一実施形態を示す図である。
【図3】中央局ターミナルと複数の顧客ターミナルとの間の、図1からの光送信システムの一例を示す図である。
【図4】図3からの中央局の1つの実施形態を示す図である。
【図5】図3からの中央局のもう1つの実施形態を示す図である。
【図6】図3からの中央局のさらにもう1つの実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 第1のユニット
3 第2のユニット
5 受動光ネットワーク
7 送信器
9 受信器
11 非線形手段
13 ディマルチプレクサ
15 中央局ターミナル
17 顧客ターミナル
19 送受信器
21 受信ディマルチプレクサ
23 サーキュレータ
109 受信器
115 光送信中央局ターミナル
209 受信器
211 さらなる非線形手段
215 光送信中央局ターミナル
309 受信器
315 光送信中央局ターミナル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動光アクセス・ネットワーク(5)によって相互接続された中央局ターミナル(115、215、315)及び複数の顧客ターミナル(17)間のダウンリンク及びアップリンク・データ・トラフィックを送信する光送信方法であって、
複数の振幅を含みかつ前記複数の顧客ターミナル(17)に対し単一の波長を有する振幅分割多重化された光信号(S)によって搬送されるデータを送るステップと、
前記中央局ターミナル(115、215、315)によって送られた前記光信号(S)を、スペクトル・シフティングによって、前記複数の振幅に従った複数の波長に変換するステップと、それにより、波長分割多重化された光信号(S’)を形成し、それ故、前記データは、複数の異なった波長における複数の光信号(S、・・・、S)で前記複数の顧客ターミナル(17)によって受信され、前記顧客ターミナル(17)の各々は、少なくとも1つの特定の波長でそれと関連したデータを受信し、
前記中央局ターミナル(115、215、315)及び顧客ターミナル(17)間で前記ダウンリンク及びアップリンク・トラフィックをルーティングするステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
スペクトル・シフティングによる前記変換は、ソリトン自己周波数シフト型の非線形効果によって行なわれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
中央局ターミナル(115、215、315)と複数の顧客ターミナル(17)との間でダウンリンク及びアップリンク・データ・トラフィックを提供する光送信システムであって、前記顧客ターミナル(17)及び前記中央局ターミナル(115、215、315)は、受動光ネットワーク(5)によって相互接続された光送信システムにおいて、前記中央局ターミナル(115、215、315)は、
前記複数の顧客ターミナル(17)に複数の振幅を含みかつ単一波長を有する振幅分割多重化された光信号(S)によって搬送されるデータを送るための送信器(7)と、
前記中央局ターミナル(115、215、315)によって送られる前記光信号(S)の単一波長を、スペクトル・シフティングにより、前記複数の振幅に従って複数の波長に変換し、それにより、波長分割多重化された光信号(S’)を形成するための少なくとも1つの非線形手段(11)と、それ故、前記データは、複数の異なった波長における複数の光信号(S、・・・、S)で前記複数の顧客ターミナル(17)によって受信され、前記顧客ターミナル(17)の各々は、少なくとも1つの特定の波長でそれと関連したデータを受信し、
前記中央局ターミナル(115、215、315)及び顧客ターミナル(17)間で前記ダウンリンク及びアップリンク・トラフィックをルーティングするためのサーキュレータ(23)と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの非線形手段(11)は、非線形ソリトン自己周波数シフト効果により、前記信号(S)を前記信号(S’)に変換することを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記サーキュレータ(23)は、前記少なくとも1つの非線形手段(11)と受信ディマルチプレクサ(21)との間に配置され、前記受信ディマルチプレクサ(21)は、複数の受信器(109)に接続されることを特徴とする請求項3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記中央局ターミナル(115、215、315)は、少なくとも第1及び第2の非線形手段(11、211)を含み、第1の非線形手段(11)は、前記送信器(7)及び前記サーキュレータ(23)間に位置し、前記第2の非線形手段(211)は、前記サーキュレータ(23)及び受信器ユニット(209)間に位置することを特徴とする請求項3または4に記載のシステム。
【請求項7】
前記サーキュレータ(23)は、前記送信器(7)及び前記少なくとも1つの非線形手段(11)間に配置され、前記サーキュレータ(23)は、受信器(309)に接続されていることを特徴とする請求項3または4に記載のシステム。
【請求項8】
複数の顧客ターミナル(17)とのダウンリンク及びアップリンク・トラフィックを提供する中央光送信ターミナルであって、前記中央局ターミナル(115、215、315)は、
前記複数の顧客ターミナル(17)に複数の振幅を有しかつ単一波長を有する振幅分割多重化された光信号(S)によって搬送されるデータを送るための送信器(7)と、
前記光信号(S)の単一波長を、スペクトル・シフティングにより、前記複数の振幅に従って複数の波長に変換し、それにより、波長分割多重化された光信号(S’)を形成し、それ故、前記データは、複数の異なった波長における複数の光信号(S、・・・、S)で前記複数の顧客ターミナル(17)によって受信されるための少なくとも1つの非線形手段(11)と、
前記ダウンリンク及びアップリンク・トラフィックをルーティングするためのサーキュレータ(23)と、
を含むことを特徴とするターミナル。
【請求項9】
前記少なくとも1つの非線形手段(11)は、非線形ソリトン自己周波数シフト効果により、前記信号(S)を前記信号(S’)に変換することを特徴とする請求項8に記載のターミナル。
【請求項10】
前記サーキュレータ(23)は、前記少なくとも1つの非線形手段(11)と、複数の受信器(109)に接続される受信ディマルチプレクサ(21)との間に配置されることを特徴とする請求項8または9に記載のターミナル。
【請求項11】
当該ターミナルは、第1及び第2の非線形手段(11、211)を含み、第1の非線形手段(11)は、前記送信器(7)及び前記サーキュレータ(23)間に位置し、前記第2の非線形手段(211)は、前記サーキュレータ(23)及び受信器ユニット(209)間に位置することを特徴とする請求項8または9に記載のターミナル。
【請求項12】
前記サーキュレータ(23)は、前記送信器(7)及び前記少なくとも1つの非線形手段(11)間に配置され、前記サーキュレータ(23)は、受信器(309)に接続されていることを特徴とする請求項8または9に記載のターミナル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−536390(P2008−536390A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504814(P2008−504814)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050293
【国際公開番号】WO2006/106260
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(591034154)フランス テレコム (290)
【Fターム(参考)】