説明

受動素子シート及び半導体パッケージ

【課題】半導体パッケージに内蔵された半導体チップにより近い位置にコンデンサ等の受動素子を配置できるようにする。また、コンデンサ等の受動素子を所望とする位置に容易に配置できる技術を提供する。
【解決手段】基材上に導体層及び誘電体層が積層されてなる受動素子シートであって、前記誘電体層は、金属酸化物の薄膜により形成されており、前記金属酸化物の薄膜は、前記金属酸化物の原料となる金属を含む金属化合物を溶媒に溶解した原料液をキャリアガス中で超音波振動により霧化することによってエアロゾルを発生させて、そのエアロゾルを加熱した後に、前記基材を加熱しつつこの基材に対して前記エアロゾルを吹き付けることによって形成されている、受動素子シート。基板上に半導体チップが実装されてなる半導体パッケージであって、前記基板と前記半導体チップとの間に、前記受動素子シートが実装されていることを特徴とする、半導体パッケージ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾルCVD法を用いて誘電体層が形成された受動素子シート、及び、このような受動素子シートが実装された半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抵抗、コイル、コンデンサなどの受動素子を電子回路基板に実装する方法として、受動素子を構成する部品を基板の表面に実装する方法や、受動素子を基板の内層に埋め込む方法などが知られている(特許文献1,2を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−340955公報
【特許文献2】特開2004−228190公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術には、以下のような問題がある。
特許文献1に開示されているように、基板の表面に対して半導体パッケージ(ICパッケージ)及びコンデンサを実装する場合には、半導体パッケージにできるだけ近い位置にコンデンサ(バイパスコンデンサやデカップリングコンデンサ等)を配置するのが好ましい。なぜなら、半導体パッケージの電源電流に混入するノイズを効果的に除去するためには、半導体パッケージとコンデンサとの配線長ができるだけ短い方が好ましいからである。しかし、部品の大きさに伴う物理的な制約があるために、半導体パッケージにコンデンサを近づける距離には一定の限界があるという問題がある。そこで、特許文献2に開示されているように、回路基板の内層にコンデンサを埋め込むことによって、半導体パッケージの直下の位置にコンデンサを配置する方法が考えられる。この方法の場合、半導体パッケージにより近い位置にコンデンサを配置することが可能になるために、半導体パッケージの電源電流に混入するノイズをより効果的に除去することが可能となる。
【0005】
ところで、近年、半導体パッケージに内蔵される半導体チップの高集積度化、及び、半導体チップに使用される電源電流の高周波化に伴い、半導体チップの電源電流に混入するノイズをより確実に除去することが求められている。しかしながら、今までのように積層回路基板の内層にコンデンサを埋め込む方法では、ノイズの除去が不十分になってきているという問題がある。このような事情から、半導体パッケージに内蔵される半導体チップにより近い位置にコンデンサを配置したいという強い要望があった。
また、受動素子自体の小型化が進んだことから(例えばチップコンデンサ等)、受動素子を基板上あるいは基板の内層に配置する作業が非常に困難になっており、コンデンサ等の受動素子を所望とする位置に容易に配置できる技術が強く望まれていた。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体パッケージに内蔵される半導体チップにより近い位置にコンデンサ等の受動素子を配置できるようにすることである。また、コンデンサ等の受動素子を所望とする位置に容易に配置できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、大気中で良質の薄膜を形成することのできる成膜方法、および装置を開発すべく鋭意研究してきたところ、原料となる金属化合物をキャリアガス中で超音波振動により霧化してエアロゾルを発生させ、さらにこのエアロゾルを加熱してから基材に吹き付けることにより、従来よりも格段に薄く、均一で、品質の良い膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、かかる新規な知見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、基材上に導体層及び誘電体層が積層されてなる受動素子シートであって、前記誘電体層は、金属酸化物の薄膜により形成されており、前記金属酸化物の薄膜は、前記金属酸化物の原料となる金属を含む金属化合物を溶媒に溶解した原料液をキャリアガス中で超音波振動により霧化することによってエアロゾルを発生させて、そのエアロゾルを加熱した後に、前記基材を加熱しつつこの基材に対して前記エアロゾルを吹き付けることによって形成されている、受動素子シートである。
【0009】
前記金属化合物は、薄膜の原料である金属酸化物を構成する金属を含む金属化合物であって、使用する溶媒に可溶なものであればよく、例えば、金属アルコキシド等の有機金属化合物、キレート化合物、ハロゲン化金属等を使用できる。
【0010】
前記金属化合物を溶解するための溶媒としては、例えば炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン、水等を使用できる。特に、超音波振動による霧化が容易であることから、トルエン、メタノール、アセチルアセトン、水等を好ましく使用できる。
【0011】
前記金属酸化物としては、例えば、Co,Cu,Zn,Fe,In,Cr,Ba,Sn,Ti,V,Zr,Al,Y,Sr,Mg,Ni,La等の酸化物、あるいはこれらの金属の複合酸化物を挙げることができる。
【0012】
前記基材の材料としては、例えば、アルミナ、シリコン、ジルコニア、セラミックス、ガラス等を挙げることができる。この中では、半導体チップとの熱膨張率の差が小さいことから、アルミナが好ましい。アルミナ製の基材を使用した場合には、半導体チップの温度変化に伴って半導体チップあるいは基材が破損するのを防止することができる。
【0013】
本発明に係る受動素子シートは、前記基材上に導体層及び誘電体層が積層された後に、前記基材の少なくとも一部が厚み方向に削られていてもよい。これにより、基材全体の厚みが削られた分だけ減少するので、さらに薄い受動素子シートを実現することが可能である。
【0014】
本発明に係る受動素子シートは、極めて薄く、かつ均一な厚みを有しているために、半導体パッケージに内蔵される半導体チップと基板との間に“中継基板”として実装することが可能である(なお、従来の薄膜コンデンサ等は、本発明の受動素子シートよりも厚みがあるために、半導体チップと基板との間に中継基板として実装することは困難であった)。
そして、この中継基板として実装された受動素子シートの表面あるいは裏面には、金属酸化物の薄膜によって形成されたコイル、抵抗、コンデンサ等の受動素子を、任意の場所、大きさ、個数で配置することが可能であるために、半導体チップにより近い位置にこれらの受動素子を配置することが可能となる。
【0015】
本発明に係る受動素子シートを半導体チップと基板との間に中継基板として実装することによって、半導体チップの電源端子に極めて近い位置にバイパスコンデンサあるいはデカップリングコンデンサを配置することが可能である。これにより、半導体チップの電源電流に混入するノイズをより確実に低減することが可能である。したがって、半導体チップの高機能化・高集積化に寄与することが可能である。
【0016】
また、本発明に係る受動素子シートは、基材の上に受動素子が形成されてシート状となっており、取り扱いが容易である。したがって、受動素子をつまむ等の作業が不要であり、受動素子が非常に小型化されているにもかかわらず、その受動素子を所望の位置に容易に配置することが可能である。
【0017】
また、本発明に係る受動素子シートは、基材上の任意の位置にコンデンサ等の受動素子を形成することが可能であるために、半導体チップにおける電源端子の近傍にバイパスコンデンサやデカップリングコンデンサ等を容易に配置することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体パッケージに内蔵される半導体チップの電源端子により近い位置にバイパスコンデンサやデカップリングコンデンサを配置することが可能となる。また、コンデンサ等の受動素子を所望の位置に容易に配置することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
(成膜装置)
図1には、薄膜を成膜するための成膜装置1を示す。この成膜装置1には、原料となる金属化合物を溶媒に溶解した原料液Sを霧化してエアロゾルを発生させる超音波霧化装置10と、発生したエアロゾルを加熱する加熱塔20と、この加熱塔20の先端に取り付けられてエアロゾルを基材Bに向かって吹き付けるノズル33と、基材Bを保持するためのステージ40とが備えられている。
【0021】
超音波霧化装置10には、内部に原料液Sを貯留可能なエアロゾル発生槽11と、このエアロゾル発生槽11に取り付けられた超音波振動子12とを備えている。エアロゾル発生槽11には、キャリアガスを導入するためのガスボンベ13が、ガス管14およびバルブ16を介して接続されている。また、エアロゾル発生槽11の天井部には、発生したエアロゾルを加熱塔20に送るためのエアロゾル供給管15の一端が接続されている。
【0022】
加熱塔20は、外筒部21と、この外筒部21に収容されたカートリッジヒータ24とからなる(図2、図3参照)。外筒部21はステンレスにより有底の円筒状に形成されており、その上端の開口部には、径方向外側に張り出すパイプフランジ22が設けられている。このパイプフランジ22には、厚さ方向(上下方向)に貫通する複数のねじ穴22Aが周方向に均等ピッチで設けられている。外筒部21の上端付近には、側方に開口して外筒部21の内部空間と外部空間とを連通する流入口23が設けられている。この流入口23は、切り替え弁32を介してエアロゾル発生槽11から延びるエアロゾル供給管15、およびキャリアガスのガスボンベ13から延びるガス管14に接続されている。
【0023】
また、図2に示すように、カートリッジヒータ24は、その外径が、外筒部21の内径よりもやや小さくなるように形成されている。このカートリッジヒータ24の一端部には耐熱樹脂製のキャップ29が被せられるとともに、このキャップ29から通電用のリード線25が導出されている。このカートリッジヒータ24の上端部(リード線25側の端部)よりもやや下方の位置には、ヒータフランジ26が外装されている。ヒータフランジ26は、カートリッジヒータ24を嵌入可能な筒部26Aと、この筒部26Aの下端部から径方向外側に張り出すフランジ部26Bとを備えている。フランジ部26Bは、その外径が、パイプフランジ22の外径とほぼ同じ大きさとなるように形成されている。このフランジ部26Bには複数のねじ穴26Cが形成される一方、このフランジ部26Bに接続するパイプフランジ22にはねじ穴22Aが形成されている。ねじ穴26C及びねじ穴22Aにねじ28が挿通されることによって、ヒータフランジ26及びパイプフランジ22が接続される。
【0024】
カートリッジヒータ24は、リード線25側の端部を上側に向けた姿勢で外筒部21に収容され、ヒータフランジ26をパッキン27を介してパイプフランジ22にねじ止めすることによって外筒部21に固定されている。なお、ヒータフランジ26とパイプフランジ22との間に介装されるパッキン27は、例えばゴムによりヒータフランジ26と同径の薄板状に形成されており、ヒータフランジ26の筒部26Aおよびねじ穴26Cに対応する位置にそれぞれカートリッジヒータ24、ねじ28を挿通可能なヒータ挿通孔27A、ねじ穴27Bが設けられている。
【0025】
図2に示すように、カートリッジヒータ24の外周面と外筒部21の内周面との間には約1mmの隙間が設けられており、この隙間はエアロゾルが通過可能なエアロゾル流路30となっている。なお、エアロゾル流路30の外周側に行くほど、すなわちカートリッジヒータ24の外周面から離れるほどカートリッジヒータ24からの熱が伝わりにくくなるから、エアロゾル流路30の径方向の幅、すなわちカートリッジヒータ24の外周面から外筒部21の内周面までの距離をあまり大きくすると、エアロゾルの加熱効率の低下や加熱ムラが生じるおそれがある。このため、カートリッジヒータ24の外周面から外筒部21の内周面までの距離を充分に小さくして、エアロゾル流路30をカートリッジヒータ24からの熱が充分に伝わる距離内に設定することが好ましい。これにより、エアロゾル流路30内を流れるエアロゾルを効率的に、かつ均一に加熱することができる。
【0026】
このエアロゾル流路30内には、転流ガイド31が挿入されている。転流ガイド31は直径1mm、すなわちエアロゾル流路30の幅(カートリッジヒータ24の外周面と外筒部21の内周面との距離)とほぼ等しい外径のワイヤ状に形成され、エアロゾル流路30のほぼ全長にわたってらせん状に配置されている。これにより、エアロゾル流路30に進入したエアロゾルが、転流ガイド31に案内されてらせん状に下降するようになっている。このように、エアロゾルがらせん状に流れるようにすることよって、エアロゾルの流路を細くするとともに、加熱塔20を大型化することなく流路長を確保している。これにより、エアロゾルを均一に、効率よく加熱するようにしている。
【0027】
なお、詳細には図示しないが、外筒部21の底面とカートリッジヒータ24との間の空間には熱電対が設置されており、カートリッジヒータ24によって加熱された後のエアロゾルの温度が測定されるようになっている。測定されたエアロゾルの温度は、エアロゾル流路30内の温度制御の入力値として使用されるようになっている。
【0028】
外筒部21の底部には、キャリアガスを基材Bに吹き付けるためのノズル33が接続されている。このノズル33は、全体として円筒状に形成されて、その下端部に開口径12mmの円形をなす吐出口33Aが開口されたもので、その内部の空間はエアロゾル流路30に連通されている。
【0029】
このノズル33の吐出口の下方には、基材Bをその上面に載置可能なステージ40が設けられている。このステージ40は、図示しない駆動機構によって基材Bの面に沿った2方向(X方向及びY方向)に移動可能とされており、これにより、基材Bをノズル33に対して移動できるようになっている。また、ステージ40には、その上面に載置された基材Bを加熱するための加熱コイル41が内蔵されており、基材Bの外形よりもやや大きな範囲(図4中点線で示すエリアR)にわたって加熱を行うことができるようになっている。
【0030】
次に、上記のように構成された成膜装置1を用いて金属酸化物の膜を形成する方法について説明する。
【0031】
まず、膜の原料である金属化合物を溶媒に溶解して原料液Sを調製する。例えば、STO(チタン酸ストロンチウム(SrTiO))の膜を形成する場合には、ストロンチウムを含む金属化合物としてSr(OCH(CH(ジイソプロポキシストロンチウム)を、チタンを含む金属化合物としてTi(OC(テトラブトキシチタン)を、溶媒としてトルエンおよび1−メトキシ−2−プロパノールを使用することができる。原料液Sの濃度は、例えば0.02〜0.5mol/kgとなるように調製するのが好ましい。
【0032】
原料液Sの調製が終了したら、この原料液Sをエアロゾル発生槽11の内部に投入する。また、膜を形成する対象物である基材Bをステージ40上に載置する。基材Bの材質としては特に制限はないが、例えば、アルミナ、シリコン、ガラス、樹脂、あるいはこれらの複合材料等を使用することができる。
【0033】
そして、バルブ16を開いてガスボンベ13からキャリアガスを導入しつつ超音波振動子12によって原料液Sに超音波振動を与えて、キャリアガス中に原料液Sの液滴が分散したエアロゾルを発生させる(霧化工程)。キャリアガスとしては、例えば酸素、空気、窒素、アルゴン等を使用できる。また、超音波の印加は例えば、出力周波数1.6〜2.4MHzで行なうことができ、これにより、直径1〜5μm程度の微細な液滴を含むエアロゾルを発生させることができる。
【0034】
切り替え弁32を操作して加熱塔20とエアロゾル供給管15とを接続すると、発生したエアロゾルは、エアロゾル供給管15を通って加熱塔20に送られる。加熱塔20に進入したエアロゾルは、転流ガイド31に案内されてエアロゾル流路30をらせん状に下っていく。このとき、エアロゾルは、加熱塔20の内部に挿入されたカートリッジヒータ24によって暖められる(加熱工程)。このようにエアロゾルを加熱することによって、液滴に含まれる溶媒がある程度蒸発する。これにより、液滴がさらに微粒化し、このことが均一で緻密な膜の形成に寄与しているものと考えられる。
【0035】
エアロゾルの加熱は、含まれる溶媒を適度に蒸発させて液滴の微細化を制御することを目的として行なうものである。したがって、エアロゾルの加熱温度は、使用する溶媒の種類に応じて適宜設定すればよい。また、この加熱は、膜の原料である金属化合物が分解・酸化反応する温度(基材Bの加熱温度)よりも低い温度で行なうことが好ましい。例えば、溶媒としてトルエンを使用する場合には100℃程度で行なうことが好ましく、加熱塔20内部でのエアロゾルの滞留時間は約0.1〜0.5秒程度が好ましい。なお、エアロゾルの加熱は、カートリッジヒータ24へのエアロゾルの付着を低減する効果もあるため好ましい。
【0036】
エアロゾル流路30を通過したエアロゾルは、加熱塔20の下部に取り付けられたノズル33から基材Bに吹き付けられる(膜形成工程)。吹き付けは、ステージ40を駆動機構により駆動して、基材Bに対するノズル33の相対位置を少しずつずらしながら板面方向に沿って走査させることによって行なわれ、これにより、基材Bの全面に渡って膜が形成される。このとき、ステージ40に内蔵されている加熱コイル41により基材Bを加熱する。基材Bの加熱温度は、原料である金属化合物が分解・酸化反応して基材Bの表面に膜を形成可能な程度の温度であれば良く、例えば、STO膜を形成する場合には450〜600℃程度であれば良い。
エアロゾルの液滴が基材Bに達すると、液滴に含まれる金属化合物が分解・酸化反応して基材Bの表面に金属酸化物の膜が形成される。このとき、エアロゾルの液滴は超音波霧化により形成され、さらに加熱塔20で加熱処理されることで極めて微細なものとなっているから、形成される膜は極めて薄く、均一性が良いものとなっている。
【0037】
ここで、基材Bの加熱により基材Bの面上では上昇気流が生じるため、ノズル33の先端から基材Bの表面までの距離があまり離れすぎていると、上昇気流に阻害されてエアロゾルが基材Bの表面に到達しにくくなる。したがって、ノズル33の開口を基材Bの表面に近接させる(例えば5〜50mm程度)とともに、エアロゾルをある程度の流速(例えば0.5〜2.0リットル/sec)をもって基材Bに吹き付けるのが良い。
【0038】
成膜を終了したら、基材Bをステージ40から取り外し、次の工程へ搬送する。例えば、形成された膜をコンデンサの誘電体層として使用する場合には、形成された膜をエッチング等によりパターニングした後、スパッタリング等により膜上に導体層を形成すればよい。
【0039】
なお、基材Bのステージ40への取り付け、取り外し時など、成膜操作を行なっていないときには、切り替え弁32をガス管14側に切り替え、原料液Sの液滴を含まないキャリアガスを流しておくことが好ましい。ノズル33−基材B間の雰囲気の変動を抑制して膜形成の安定化を図るため、および、ステージ40の過熱を防止するためである。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、原料となる金属化合物をキャリアガス中で超音波振動により霧化してエアロゾルを発生させ、さらにこのエアロゾルを加熱してから基材Bに吹き付けることにより、均一で品質の良い膜を得ることができる。
【0041】
そして、本実施形態によれば、基材B上に導体層及び誘電体層が積層されてなる受動素子シートであって、前記誘電体層は、金属酸化物の薄膜により形成されており、前記金属酸化物の薄膜は、前記金属酸化物の原料となる金属を含む金属化合物を溶媒に溶解した原料液Sをキャリアガス中で超音波振動により霧化することによってエアロゾルを発生させて、そのエアロゾルを加熱した後に、前記基材Bを加熱しつつこの基材Bに対して前記エアロゾルを吹き付けることによって形成されている受動素子シートを作製することができる。
【0042】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態を図5および図6を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施形態の成膜装置50は、第1実施形態と同様の構成の超音波霧化装置10を備えており、この超音波霧化装置10には、加熱塔51が接続されている(図5参照)。加熱塔51は、エアロゾルを加熱しつつ基材Wに向かって噴出するスリット部52を備えている。
【0044】
スリット部52は、例えばステンレスにより矩形厚板状に形成されたヒータブロック53を厚み方向に2枚重ね合わせたものである。各ヒータブロック53の側面からは通電用のリード部54が導出されて電源(図示せず)に接続されるようになっている。
【0045】
一対のヒータブロック53において互いに対向する面には、幅方向中央からそれよりもやや外側の領域にかけて凹部が形成されている。この凹部はヒータブロック53の板面側および上下の端面側に開放されており、両ヒータブロック53が重ね合わせられた際に2つの凹部が合わさって形成される空間は、断面矩形状をなすとともに上下方向に貫通するエアロゾル流路55とされている。
【0046】
このエアロゾル流路55の短辺方向(ヒータブロック53の厚さ方向に沿う方向)の幅は約3mmであり、両ヒータブロック53からの熱が充分かつ均一にエアロゾル流路55内のエアロゾルに伝わる程度に狭くなっている。一方、長辺方向の幅は、基材Wの幅と等しいか、それよりも僅かに大きな幅となっている(図6参照)。
【0047】
スリット部52の上面には、エアロゾル流路55と連通してエアロゾルをこのエアロゾル流路55に導く連結部56が接続されている。この連結部56は全体として上下方向に貫通する筒状に形成されるとともに、その上側の開口部56Aは円筒状をなし、下側の開口部56Bはエアロゾル流路55の上側の開口とほぼ同形のスリット状をなしている。上側の開口部56Aは、切り替え弁32を介してエアロゾル発生槽11から延びるエアロゾル供給管15、およびキャリアガスのガスボンベ13から延びるガス管14に接続されている。また、下側の開口部56Bは、開口縁から外側に張り出すフランジ57を備えており、このフランジ57がスリット部52の上面にねじ止めによって固定されている。
【0048】
スリット部52の下方には、基材Wをその上面に載置可能なステージ58が設けられている。このステージ58は、図示しない駆動機構によって基材Wの面に沿った1方向(X方向)に移動可能とされたXテーブルであること以外は、第1実施形態のステージ40と同様の構成である。
【0049】
この成膜装置50を使用して金属酸化物の膜を形成するには、まず、第1実施形態と同様にして、超音波霧化装置10によりエアロゾルを発生させる。
次に、切り替え弁32を操作して加熱塔51とエアロゾル供給管15とを接続すると、発生したエアロゾルは、エアロゾル供給管15、および連結部56を通ってスリット部52に送られる。スリット部52に進入したエアロゾルは、エアロゾル流路55を下っていく間に、ヒータブロック53によって暖められる(加熱工程)。これにより、第1実施形態と同様に、エアロゾルの液滴に含まれる溶媒がある程度蒸発して液滴がさらに微粒化する。エアロゾルの加熱条件は第1実施形態と同様でよい。
【0050】
エアロゾル流路55を通過したエアロゾルは、下端側の吐出口55Aから基材Wに吹き付けられる(膜形成工程)。吹き付けは、ステージ58を駆動機構により吐出口55Aの短辺方向に沿う方向(図5、図6の矢印方向)に駆動して、基材Wに対する吐出口55Aの相対位置を少しずつずらしながら板面方向に沿って走査させることによって行なわれる。このとき、ステージ58に内蔵されている加熱コイル41により基材Wを加熱する。基材Wに対してエアロゾルを吹き付ける流速、そのときの基材Wの加熱温度、そのときの吐出口55Aと基材Wとの距離等の条件は、第1実施形態と同様でよい。基材Wに対してエアロゾルを吹き付けることによって、基材Wの表面に金属酸化物の膜を形成することができる。
【0051】
このように、本実施形態においても、第1実施形態と同様に原料となる金属化合物をキャリアガス中で超音波振動により霧化してエアロゾルを発生させ、さらにこのエアロゾルを加熱してから基材Wに吹き付けることにより、均一で品質の良い膜を得ることができる。
【0052】
そして、本実施形態によれば、基材W上に導体層及び誘電体層が積層されてなる受動素子シートであって、前記誘電体層は、金属酸化物の薄膜により形成されており、前記金属酸化物の薄膜は、前記金属酸化物の原料となる金属を含む金属化合物を溶媒に溶解した原料液Sをキャリアガス中で超音波振動により霧化することによってエアロゾルを発生させて、そのエアロゾルを加熱した後に、前記基材Wを加熱しつつこの基材Wに対して前記エアロゾルを吹き付けることによって形成されている受動素子シートを作製することができる。
【0053】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態を、図7〜図10を参照しつつ説明する。なお、第1及び第2実施形態と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、まず、上述の第2実施形態で説明した成膜装置50を用いて、φ3インチのPt/Ta/SiO/Siウェーハ(基材W)上に、STO(SrTiO)の単層膜の成膜を行った。成膜用の原料液Sとしては、豊島製作所(株)製のトルエン系STO用溶液(濃度0.2mol/kg)を使用した。
【0055】
成膜の手順としては、まず、原料液Sをエアロゾル発生槽11の内部に投入した。つぎに、Pt/Ta/SiO/Siウェーハ(基材W)をステージ58上に載置した。そして、バルブ16を開いてガスボンベ13からキャリアガスを導入しつつ超音波振動子12によって原料液Sに超音波振動を与えて、キャリアガス中に原料液Sの液滴が分散したエアロゾルを発生させた(霧化工程)。超音波振動子12としては、本多電子(株)製の超音波霧化ユニット(f=2.4MHz)を使用した。キャリアガスとしては、空気を使用した。キャリアガスの速度は、10L/minに設定した。
【0056】
スリット部52によるエアロゾルの加熱温度(加熱工程における加熱温度)は、100℃以上400℃以下に設定した。ステージ58上に載置されたPt/Ta/SiO/Siウェーハの加熱温度(膜形成工程における加熱温度)は、450℃以上550℃以下に設定した。Pt/Ta/SiO/Siウェーハの表面にエアロゾルを吹き付けて薄膜を形成する時間は、5分以上30分以下に設定した。なお、薄膜の形成は大気中で行った。
【0057】
得られたSTO単層膜を用いて、Pt/STO/Pt薄膜コンデンサを作製した。Pt薄膜の形成には、簡易DCスパッタ装置を使用した。得られたPt/STO/Pt薄膜コンデンサについて、SEMによる組織観察を行うとともに、静電容量、tanδ、及びV−I特性をそれぞれ測定した。測定結果を図7及び図8に示す。
【0058】
次に、アルミナ多結晶セラミックス基板上に、10層のSTO/Pt薄膜積層コンデンサを作製した。STO薄膜の成膜条件は、上記のSTO単層膜と同じ条件で行った。得られた10層のSTO/Pt積層薄膜コンデンサについて、SEMによる組織観察を行うとともに、静電容量、tanδ、及びV−I特性をそれぞれ測定した。測定結果を図7及び図8に示す。また、図9には、SEMによるSTO/Pt薄膜積層コンデンサの断面写真を示す。
【0059】
次に、アルミナ多結晶セラミックス基板上に、5層のBST55/Pt薄膜積層コンデンサを作製した。BSTとは、( Ba0.5Sr0.5)TiOのことである。BST薄膜の原料液Sとしては、豊島製作所(株)製のトルエン系BST用溶液(濃度0.2mol/kg)を使用した。BST薄膜の成膜条件は、上述のSTO単層膜と同じ条件で行った。得られた5層のBST55/Pt薄膜積層コンデンサについて、積層数毎の静電容量を測定した。測定結果を図10に示す。
【0060】
SEMによる観察結果より、Pt/STO/Pt薄膜コンデンサの厚みは250nm以上480nm以下であることが判明した。
また、Pt/STO/Pt薄膜コンデンサの比誘電率は約20以上40以下であり、単位面積あたりの静電容量が約40nF/cm以上180nF/cm以下、tanδが約1%(周波数1kHz時)、リーク電流が約10−8A/cm以上10−6A/cm以下であることが判明した(図7及び図8参照)。
【0061】
これに対し、10層のSTO/Pt薄膜積層コンデンサの厚みは全体で約3.6μmであり、このうちSTO薄膜の厚みは一層あたり約160nmであり、Pt薄膜の厚みは一層あたり約120nmであることが判明した(図9参照)。
また、STO/Pt薄膜積層コンデンサの静電容量は、周波数1kHz〜100kHzではほとんど変化がないが、周波数500kHz〜1MHzでは急激に低下することが判明した。STO/Pt薄膜積層コンデンサのtanδは、周波数1kHz〜100kHzでは0.1%未満であり、ほとんど変化がないが、周波数500kHz〜1MHzでは急激に上昇することが判明した(図7参照)。これらの原因は必ずしも明らかではないが、おそらく電極抵抗の影響であると考えられる。
また、STO/Pt薄膜積層コンデンサのリーク電流は、Pt/STO/Pt薄膜コンデンサとほぼ同程度の約10−8A/cm以上10−6A/cm以下であることが判明した(図8参照)。
【0062】
5層のBST55/Pt薄膜積層コンデンサは、STO/Pt薄膜積層コンデンサとほぼ同程度の誘電性能を示すことが確認された。また、5層までの静電容量密度が約800nF/cmであり(図10参照)、これは9層までのSTO/Pt薄膜積層コンデンサとほぼ同程度の容量であった。
【0063】
以上の結果より、第2実施形態における成膜装置50によって作製されたSTO/Pt薄膜積層コンデンサは、積層数の増加に比例して静電容量が増加する一方で、リーク電流が単層膜とほぼ同程度であり、構造的に極めて安定性が高いことが実証された。また、これは、極めて薄く均一なSTO薄膜が形成されたことを示すものである。
【0064】
また、第2実施形態における成膜装置50は、STO薄膜以外にも、BST55薄膜など、その他の金属酸化物の薄膜形成にも適用できることが実証された。
【0065】
以上説明したように、本実施形態では、基材W上に導体層及び誘電体層が積層されてなる受動素子シートであって、前記誘電体層は、STOやBST55などの金属酸化物の薄膜により形成されており、前記金属酸化物の薄膜は、前記金属酸化物の原料となる金属を含む金属化合物を溶媒に溶解した原料液Sをキャリアガス中で超音波振動により霧化することによってエアロゾルを発生させて、そのエアロゾルを加熱した後に、前記基材Wを加熱しつつこの基材Wに対して前記エアロゾルを吹き付けることによって形成されている受動素子シートを作製することができた。
【0066】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態を、図11及び図12を参照しつつ説明する。なお、第1〜第3実施形態と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
本実施形態では、まず、上述の第2実施形態で説明した成膜装置50を用いて、ガラス製の基材W(寸法50mm×50mm)上に、ITO(SnドープIn)の薄膜の成膜を行った。成膜用の原料液Sとしては、豊島製作所(株)製のITO溶液(濃度0.1mol/kg)を使用した。
【0068】
成膜の手順としては、まず、原料液Sをエアロゾル発生槽11の内部に投入した。つぎに、ガラス製の基材Wをステージ58上に載置した。そして、バルブ16を開いてガスボンベ13からキャリアガスを導入しつつ超音波振動子12によって原料液Sに超音波振動を与えて、キャリアガス中に原料液Sの液滴が分散したエアロゾルを発生させた(霧化工程)。超音波振動子12としては、本多電子(株)製の超音波霧化ユニット(f=2.4MHz)を使用した。キャリアガスとしては、空気を使用した。キャリアガスの速度は、20L/minに設定した。
【0069】
スリット部52によるエアロゾルの加熱温度(加熱工程における加熱温度)は、100℃以上400℃以下に設定した。ステージ58上に載置されたガラス基板の加熱温度(膜形成工程における加熱温度)は、550℃以上600℃以下に設定した。ガラス基板の表面にエアロゾルを吹き付けて薄膜を形成する時間は、5分以上30分以下に設定した。なお、薄膜の形成は大気中で行った。
【0070】
得られたITO薄膜について、SEMによる組織観察を行うとともに、抵抗率及び透過率を測定した。測定結果を図11及び図12に示す。
【0071】
SEMによる観察結果により、成膜装置50によって得られたITO薄膜の厚みは、90nm以上450nm以下であることが判明した(図11参照)。
【0072】
ITO薄膜の抵抗率は、4.5×10−4Ω・cm以上2.0×10−3Ω・cm以下であることが判明した。
また、ITO薄膜を気圧10−3Paのチャンバー内で350℃、1時間の加熱処理をすることにより、1.5×10−4Ω・cm以上3.1×10−4Ω・cm以下の抵抗率となることが判明した。
【0073】
また、図12に示すように、成膜装置50によって得られたITO薄膜の透過率は、可視領域で概ね80%以上であり、良好な透過特性を有していることを確認することができた。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、基材W上に導体層及び誘電体層が積層されてなる受動素子シートであって、前記誘電体層は、ITOなどの金属酸化物の薄膜により形成されており、前記金属酸化物の薄膜は、前記金属酸化物の原料となる金属を含む金属化合物を溶媒に溶解した原料液Sをキャリアガス中で超音波振動により霧化することによってエアロゾルを発生させて、そのエアロゾルを加熱した後に、前記基材Wを加熱しつつこの基材Wに対して前記エアロゾルを吹き付けることによって形成されている受動素子シートを作製することができた。
【0075】
<第5実施形態>
以下、本発明の第5実施形態について、図13〜図18を参照しながら説明する。
第5実施形態では、本発明に係る受動素子シートの一例であるコンデンサシートの製造方法について説明する。
【0076】
図13〜図18は、コンデンサシート110の製造工程を示す断面図である。
図13、図14に示すように、コンデンサシート110を作製するためには、まず、アルミナ製の基材112を準備した後に、このアルミナ製の基材112の所定箇所に貫通孔114を形成する。この貫通孔114を形成するためには、レーザードリルやエッチングといった公知の手法を用いることができる。なお、アルミナ製の基材112は、例えば、厚み0.2mm程度の市販の基材を使用することができる。
【0077】
基材112に貫通孔114を形成した後、図15に示すように、貫通孔114の内部に導電性ペーストを充填する。導電性ペーストの種類は特に制限するものではなく、例えば、銀やカーボンなどの導電性フィラーが熱硬化性樹脂に混入された導電性ペーストを使用することができる。また、導電性ペーストの充填方法は特に制限するものではなく、例えば、スクリーン印刷といった公知の手法を用いることができる。貫通孔114に導電性ペーストを充填することによって、基材112を貫通する4つのビアホール120a〜120dを形成することができる。
【0078】
貫通孔114に導電性ペーストを充填した後、図16に示すように、基材112の表面に導体膜からなる導体層116を形成する。この導体層116は、例えば、Pt等の金属を、マスク及びスパッタ装置を使用して、所定のマスクパターンで基材112の表面にスパッタすることによって形成することができる。
【0079】
基材112の表面に導体層116を形成した後、図17に示すように、導体層116の上に被せるようにして、ITOやSTO等の金属酸化物の膜からなる誘電体層118を形成する。この誘電体層118は、例えば、上述の実施形態1あるいは実施形態2において説明した成膜装置1あるいは成膜装置50を使用して所定のマスクパターンで形成することができる。
【0080】
導体層116の上に誘電体層118を形成した後、図18に示すように、この誘電体層118の上に被せるようにして、Pt等の金属の導体膜からなる導体層116を再度形成する。これにより、基材112上に導体層116及び誘電体層118が交互に積層したコンデンサシート110を作製することができる。このコンデンサシート110では、一層目の導体層116はビアホール120a、120dに接続しており、二層目の導体層116はビアホール120b、120cに接続している。したがって、これらのビアホール120a〜120dを半導体パッケージに内蔵されている半導体チップ及び基板にそれぞれ接続することによって、半導体チップの電源電流に混入するノイズを除去するためのバイパスコンデンサあるいはデカップリングコンデンサを構成することが可能である。
【0081】
なお、基材112の上に導体層116及び誘電体層118を積層してコンデンサシート110を作製した後に、基材112の全部又は一部を厚み方向に削り取って薄くしても良い。これにより、基材112の厚みが削られた分だけ減少するので、さらに薄いコンデンサシート110を実現することが可能である。
【0082】
<第6実施形態>
以下、本発明の第6実施形態について、図19を参照しながら説明する。
第6実施形態では、本発明に係る受動素子シートの一例であるコンデンサシートの具体的な構造について説明する。
【0083】
図19は、本実施形態に係るコンデンサシート130の断面図である。
図19に示すコンデンサシート130では、アルミナ製の基材132の上に導体層134a〜134d及び誘電体層136が交互に積層してコンデンサを形成している。下から1番目の導体層134aと下から3番目の導体層134cは一体となって第1の電極138を形成しており、下から2番目の導体層134bと下から4番目の導体層134dは一体となって第2の電極140を形成している。第1の電極138にはビアホール142が接続しており、第2の電極140にはビアホール144が接続している。なお、導体層134a〜134d及び誘電体層136を基材132の上に形成する方法は、上述の第5実施形態と同様である。
【0084】
このように、図19に示すコンデンサシート130によれば、導体層134a〜134d及び誘電体層136を複数積層することによって、コンデンサの電極面積を増大させることができる。これにより、コンデンサの電気容量を増大させることが可能である。そして、基材132を貫通するビアホール142、144を半導体パッケージに内蔵されている半導体チップ及び基板にそれぞれ接続することによって、半導体チップの電源電流に混入するノイズを除去するためのバイパスコンデンサあるいはデカップリングコンデンサを構成することが可能である。
【0085】
なお、コンデンサシート130を作製した後に、基材132の全部又は一部を厚み方向に削り取って薄くしても良い。これにより、基材132の厚みが削られた分だけ減少するので、さらに薄いコンデンサシート130を実現することが可能である。
【0086】
<第7実施形態>
以下、本発明の第7実施形態について、図20を参照しながら説明する。
第7実施形態では、本発明に係る受動素子シートの一例であるコンデンサシートの具体的な構造について説明する。
【0087】
図20は、本実施形態に係るコンデンサシート150の断面図である。
図20に示すコンデンサシート150では、アルミナ製の基材152の上に導体層154a〜154d及び誘電体層156が交互に積層してコンデンサを形成している。下から1番目の導体層154aと下から3番目の導体層154cは一体となって第1の電極158を形成しており、下から2番目の導体層154bと下から4番目の導体層154dは一体となって第2の電極160を形成している。第2の電極160にはビアホール164が接続しており、このビアホール164は基材152を貫通して基材152の下面側に形成された配線166に接続している。なお、基材152の上に導体層154a〜154d及び誘電体層156を形成する方法は、上述の第5実施形態と同様である。
【0088】
本実施形態に係るコンデンサシート150では、図20に示すように、基材152の上に絶縁体の単層膜からなる犠牲層168が形成されている。この犠牲層168は、例えばSiOなどの絶縁体によって形成することができる。
【0089】
犠牲層168は、ビアホール162と第1の電極158あるいは第2の電極160との絶縁を図るためのものである。すなわち、例えば、ビアホール162と第2の電極160とが絶縁されずに導通している場合は、第1の電極158と第2の電極160が配線166を介して導通してしまうためにコンデンサとしての機能が果たされなくなるのであるが、犠牲層168によってビアホール162と第2の電極160との絶縁が図られることによってこのような事態が回避されている。
【0090】
本実施形態に係るコンデンサシート150によれば、基材152に対して不要なビアホール162が形成されている場合であっても、その不要なビアホール162と第1の電極158あるいは第2の電極160とを絶縁することが可能であるために、コンデンサを基材152上に自由に配置することが可能となる。これにより、複数のビアホールが予め形成されているアルミナ基材であっても使用可能となるために、コンデンサシート150の製造コストを低減することが可能である。
【0091】
なお、コンデンサシート150を作製した後に、基材152の全部又は一部を厚み方向に削り取って薄くしても良い。これにより、基材152の厚みが削られた分だけ減少するので、さらに薄いコンデンサシート150を実現することが可能である。
【0092】
<第8実施形態>
以下、本発明の第8実施形態について、図21を参照しながら説明する。
第8実施形態では、上記で説明したコンデンサシートを半導体パッケージの中継基板として実装した例について説明する。
【0093】
図21は、本実施形態に係る半導体パッケージ170の側断面図である。この半導体パッケージ170は、プリント基板172(本発明の基板に相当する)に半導体チップ174を実装し、半導体チップ174の周囲をケース部材176で覆うとともに封止した構造のものである。
【0094】
プリント基板172は、絶縁層の両面に所定の導体回路が形成された周知の構造のものであって、半導体チップ174の外形よりも一回り大きく形成されている。導体回路の一部はランド178とされている。表裏のランド178のうち、半導体チップ174が搭載される側の面(図21の上面)に設けられた表面側ランド178Aは、半導体チップ174に設けられた電極パッド180との接続のためのものである。一方、これとは逆側の面(図21の下面)に設けられた裏面側ランド178Bは、外部基板(図示せず)との接続のためのものである。表面側ランド178Aと裏面側ランド178Bとの間は、プリント基板172に貫通形成されたビアホール182によって電気的に接続されている。また、裏面側ランド178B上には、外部基板(図示せず)との接続のための基板側バンプ184が形成されている。
【0095】
このプリント基板172上に搭載される半導体チップ174は周知の構成のものであって、シリコン基板171の一方の面(図21の下面)に半導体素子が形成されたものである。半導体チップ174の素子が形成された側の面はパッシベーション膜173によって覆われており、このパッシベーション膜173の開口からは電極パッド180が臨んでいる。この電極パッド180上には、チップ側バンプ186が形成されている。
【0096】
プリント基板172と半導体チップ174との間には、中継基板200が実装されている。この中継基板200は、コンデンサシート202の一方の面(図21の下面)に接続用のバンプ204を形成したものである。この中継基板200の下側面に形成されたバンプ204の配列は、半導体チップ174に形成されたチップ側バンプ186の配列と同じとなっている。中継基板200側のバンプ204は、コンデンサシート202に貫通形成されたビアホール206を介してチップ側バンプ186と電気的に接続されている。
【0097】
中継基板200として実装されるコンデンサシート202は、上述の実施形態6ないし実施形態7で説明したコンデンサシートと同様の構造を有している。
すなわち、コンデンサシート202の表裏両面のうち少なくとも一方の面には、Pt等の金属製の薄膜からなる導体層、及び、ITOやSTO等の金属酸化物の薄膜からなる誘電体層が積層したコンデンサ208が形成されている。このコンデンサ208は従来のコンデンサよりも非常に薄いために、プリント基板172と半導体チップ174との間にコンデンサシート202を実装した際に、コンデンサシート202に形成されたコンデンサ208がプリント基板172ないし半導体チップ174と干渉しないようになっている。
【0098】
図22は、半導体チップ174に形成されているチップ側バンプ186とコンデンサ208との配置関係を表した平面図である。なお、図22において、四角形で囲まれている各領域C1〜C5は、コンデンサ208が配置されている領域を表している。
図22に示すように、本実施形態のコンデンサシート202では、コンデンサ208を任意の場所、大きさ、個数で配置することが可能である。なぜなら、コンデンサ208の配置、大きさ、形状等が、プリント基板172の表面に形成されている導体回路やビアホール182との関係で制約されることがないからである。また、コンデンサ208の配置、大きさ、形状等が、プリント基板172の内層に埋め込まれている部品等との関係で制約されることがないからである。
【0099】
また、本実施形態のコンデンサシート202では、半導体チップ174のチップ側バンプ186が形成されていない領域にもコンデンサ208を配置することが可能であり(図22の領域C5を参照)、コンデンサ208の厚みを増大させることなく、コンデンサ208の面積を増やすことが可能である。したがって、コンデンサ208の電気容量を飛躍的に増大させることが可能である。
【0100】
コンデンサ208の一方の電極をチップ側バンプ186を介して半導体チップ174の電源ピンに接続するとともに、他方の電極をビアホール206を介して中継基板200側のバンプ204に接続することによって、半導体チップ174の電源端子に対してコンデンサ208を直列的に接続することができる。これにより、コンデンサ208をデカップリングコンデンサとして機能させることが可能である。
【0101】
また、コンデンサ208の一方の電極をチップ側バンプ186を介して半導体チップ174の電源ピンに接続するとともに、他方の電極をチップ側バンプ186を介して半導体チップ174のグランドピンに接続することによって、コンデンサ208をバイパスコンデンサとして機能させることが可能である。
【0102】
そして、本実施形態に係る半導体パッケージ170によれば、半導体チップ174の電源端子により近い位置にコンデンサ208(デカップリングコンデンサあるいはバイパスコンデンサ)を配置することが可能であり、半導体チップ174の電源電流に混入するノイズをより効果的に除去することが可能である。これにより、半導体チップ174の高周波化、高集積化に寄与することが可能となる。
【0103】
半導体チップ174の周囲を覆うケース部材176は金属製であり、プリント基板172の上面に接着剤により固着されている。なお、ケース部材176は金属製以外(例えばプラスチック製やセラミック製)であってもよいが、放熱効果の観点からは金属製であることが好ましい。
ケース部材176の内部には、液状の冷媒Fが封入されている。冷媒Fは、絶縁性で半導体チップ174やプリント基板172の材料と反応しない液体であれば特に制限はなく、例えば、住友スリーエム(株)製「フロリナート(登録商標)」、ソルベイソレクシス(株)製「ガルデン(登録商標)」等の不燃性であるフッ素系不活性液を使用できる。なお、冷媒Fは、沸点150℃以上の液体が好ましく、沸点200℃以上の液体であればさらに好ましい。
【0104】
図21に示すように、コンデンサシート202の上面側には、チップ側バンプ186の高さに相当する空間(隙間)が形成されている。また、コンデンサシート202の下面側には、中継基板側のバンプ204の高さに相当する空間(隙間)が形成されている。これらの隙間には冷媒Fが循環可能であるために、冷媒Fによる半導体チップ174の冷却効率が飛躍的に高まっている。
【0105】
また、コンデンサシート202にアルミナ製の基材を使用した場合には、アルミナ製の基材は半導体チップ174との熱膨張率の差が非常に小さいために、半導体チップ174とコンデンサシート202との間における熱応力の発生を極力低減することができる。これにより、半導体チップ174とコンデンサシート202との間における割れや剥離等の発生を防止することができる
【0106】
以上説明したように、本発明によれば、半導体パッケージに内蔵される半導体チップにより近い位置にコンデンサ等の受動素子を配置することが可能となる。また、コンデンサ等の受動素子を所望とする位置に容易に配置することが可能となる。
【0107】
本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、例えば、次に記載するようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、受動素子シートの一例としてコンデンサシートについて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、導体膜及び誘電体膜によって基材上に抵抗が形成された抵抗シート、あるいは、導体膜及び誘電体膜によって基材上にコイルが形成されたコイルシートを作製することも可能である。
(2)上記実施形態では、ケース部材176の内部に冷媒Fが封入された半導体パッケージ170の例について説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、半導体チップの周囲が樹脂で封止された半導体パッケージに対しても本発明を適用することができる。
(3)上記実施形態では、プリント基板172は絶縁層の両面に所定の導体回路が形成された単層の基板である例について説明したが、複数の絶縁性基板と導体層とが積層された多層プリント配線板であっても構わない。プリント基板172は、ガラス基板あるいはセラミックス基板に貫通電極を設けた構造であれば、放熱効果が高く、機械剛性も向上するため、更に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】第1実施形態の成膜装置の全体外略図である。
【図2】加熱塔の側断面図である。
【図3】加熱塔の分解側断面図である。
【図4】基板を載置したステージの上面図である。
【図5】第2実施形態の成膜装置における加熱塔およびステージの斜視図である。
【図6】シリコンウエハを載置したステージの上面図である。
【図7】単層のPt/STO/Pt薄膜コンデンサ、及び、STO/Pt薄膜積層コンデンサの静電容量密度及びtanδを示すグラフである。
【図8】単層のPt/STO/Pt薄膜コンデンサ、及び、STO/Pt薄膜積層コンデンサのV−I特性の測定結果を示すグラフである。
【図9】STO/Pt薄膜積層コンデンサのSEMによる断面写真である。
【図10】5層のBST55/Pt薄膜積層コンデンサについて、積層数毎の静電容量密度を測定した結果を示すグラフである。
【図11】ITO薄膜のSEMによる断面写真である。
【図12】ITO薄膜の透過率の測定結果を示すグラフである。
【図13】コンデンサシートの製造工程を示す断面図である。
【図14】コンデンサシートの製造工程を示す断面図である。
【図15】コンデンサシートの製造工程を示す断面図である。
【図16】コンデンサシートの製造工程を示す断面図である。
【図17】コンデンサシートの製造工程を示す断面図である。
【図18】コンデンサシートの製造工程を示す断面図である。
【図19】第6実施形態に係るコンデンサシートの断面図である。
【図20】第7実施形態に係るコンデンサシートの断面図である。
【図21】第8実施形態に係る半導体パッケージの側断面図である。
【図22】半導体チップに形成されているコンデンサとチップ側バンプとの配置関係を表した平面図である。
【符号の説明】
【0109】
1…成膜装置
10…超音波霧化装置
11…エアロゾル発生槽)
12…超音波振動子
13…ガスボンベ
20…加熱塔
24…カートリッジヒータ
30…エアロゾル流路
33…ノズル
40…ステージ
41…加熱コイル
B…基板
S…原料液
W…シリコンウエハ(被処理材)
110、130、150、202…コンデンサシート
112、132、152…基材
116、134a〜134d、154a〜154d…導体層
118、136、156…誘電体層
138、158…第1の電極
140、160…第2の電極
166…配線
168…犠牲層
170…半導体パッケージ
172…プリント基板(基板)
173…パッシベーション膜
174…半導体チップ
176…ケース部材
178…ランド
184…基板側バンプ
186…チップ側バンプ
200…中継基板
208…コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に導体層及び誘電体層が積層されてなる受動素子シートであって、
前記誘電体層は、金属酸化物の薄膜により形成されており、
前記金属酸化物の薄膜は、前記金属酸化物の原料となる金属を含む金属化合物を溶媒に溶解した原料液をキャリアガス中で超音波振動により霧化することによってエアロゾルを発生させて、そのエアロゾルを加熱した後に、前記基材を加熱しつつこの基材に対して前記エアロゾルを吹き付けることによって形成されている、受動素子シート。
【請求項2】
請求項1に記載の受動素子シートであって、
前記導体層及び前記誘電体層によってコンデンサが形成されていることを特徴とする、受動素子シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の受動素子シートであって、
前記基材は、アルミナ、シリコン、ジルコニア、セラミックス、あるいはガラス製の基材であることを特徴とする、受動素子シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の受動素子シートであって、
前記基材上に導体層及び誘電体層が積層された後に、前記基材の少なくとも一部が削られて薄くなっていることを特徴とする、受動素子シート。
【請求項5】
基板上に半導体チップが実装されてなる半導体パッケージであって、
前記基板と前記半導体チップとの間に、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の受動素子シートが実装されていることを特徴とする、半導体パッケージ。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体パッケージであって、
前記導体層及び前記誘電体層によってバイパスコンデンサあるいはデカップリングコンデンサが形成されていることを特徴とする、半導体パッケージ。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の半導体パッケージであって、
前記半導体チップの周囲が金属製のケース部材によって覆われており、
前記ケース部材の内部に液状の冷媒が封入されていることを特徴とする、半導体パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−141121(P2008−141121A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328341(P2006−328341)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(591074091)株式会社野田スクリーン (17)