説明

受枠用締付け固定具

【課題】 固定具本体の緩み止め操作がワンタッチで行え、しかも、施工現場での複数の部材の組み立てが不要となるので、部材紛失の恐れがない。
【解決手段】 受枠13の固定用アンカーボルト14にねじ込まれる締付け固定具において、固定具本体1と、固定具本体1の外側に嵌め込まれるリング状の座金4と、複数本のピン3とからなる。固定具本体1は、アンカーボルト14の挿通孔1bと、挿通孔1bと同軸に埋め込まれたナット2と、外周面軸方向に形成された、ピン3が挿入される複数本の溝1cとを有し、座金4は、内周面に突片4aを有し、ピン3は、固定具本体1の溝1c内を上下動可能で、下降時にピン3の下部は、固定具本体1の下面から突出し、座金4の突片4aに係合する突起3c、3dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受枠用締付け固定具、特に、例えば、マンホールの鉄蓋が嵌め込まれる受枠を、地中に構築された側塊上に固定する際に使用される受枠用締付け固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、図13に示すように、マンホールを閉塞する鉄蓋11は、地中に構築された側塊12上の受枠13に開閉自在に嵌め込まれていた。そして、受枠13は、車等により受ける衝撃によってガタツキが生じないように、側塊12に下部が埋め込まれたアンカーボルト14とこれにねじ込まれるナット15とによって固定されていた。
【0003】
受枠13の側塊12上への固定手段として、特許文献1(実用新案登録第2502400号公報)には、以下のような受枠用締付け固定具が開示されている。以下、この締付け固定具を従来技術といい、図面を参照しながら説明する。
【0004】
図14は、従来技術による受枠の固定状態を示す部分断面図、図15は、従来技術の固定リングを示す図であり、同図(a)は、固定リングを示す部分断面図、同図(b)は、固定リングを示す平面図、図16は、従来技術の回転防止キャップを示す図であり、同図(a)は、回転防止キャップを示す平面図、同図(b)は、回転防止キャップを示す部分断面図である。
【0005】
図14から図16に示すように、従来技術は、固定リング16と、固定リング16の外側に嵌め込まれる回転防止キャップ17と、回転防止キャップ17内に嵌め込まれるナット18とから構成されている。
【0006】
固定リング16は、下面に設けられた突起16aと、座金16bと、外歯16cとを有している。回転防止キャップ17は、ナット18が嵌め込まれる開口17aと、固定リング16をグリップする爪17bと、固定リング16の外歯16bと噛み合う内歯17cとを有している。なお、図14において、19は、受枠13の高さ調整具である。
【0007】
上記従来技術によれば、側塊12に下部が埋め込まれたアンカーボルト14に高さ調整具19を螺合させて、高さ調整をした後、以下のようにして、受枠13が固定される。
【0008】
アンカーボルト14の上端から固定リング16をアンカーボルト14に差し込んで、突起16aを受枠13の長孔13aに嵌め込む。次に、ナット18をアンカーボルト14にねじ込んで固定リング16と一体化した座金16bを介して固定リング16を受枠13に押し付けて受枠13を固定する。次に、回転防止キャップ17をアンカーボルト14に差し込んで、その開口17a内にナット18を嵌め込むと共に、固定リング16の外歯16cと固定リング16の内歯17cとを噛み合せる。これによって、ナット18に緩み方向の回転力が作用しても、この回転力は、回転防止キャップ17を介して固定リング16に伝わるが、固定リング16の突起16aが受枠13の長孔13aに入り込んでいるので、ナット18は回転せず、ナット18の緩みが防止される。
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第2502400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術によれば、固定リング16の突起16aが受枠13の長孔13aに入り込んでいるので、ナット18の緩み方向の回転が阻止されて、ナット18の緩みが確実に防止される。
【0011】
しかしながら、従来技術は、固定リング16、回転防止キャップ17およびナット18と3個の部材からなるので、紛失の恐れがあると共に、これらを施工現場でその都度、組み立てる必要があるので、時間と手間を要していた。
【0012】
従って、この発明の目的は、施工現場での受枠の締め付け作業がワンタッチで容易且つ確実に行え、しかも、部材数が1つで済むことから、紛失の恐れがない受枠用締付け固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0014】
請求項1記載の発明は、受枠固定用アンカーボルトにねじ込まれる締付け固定具において、固定具本体と、前記固定具本体に嵌め込まれるリング状の座金と、複数本のピンとからなり、前記固定具本体は、前記アンカーボルトの挿通孔と、前記挿通孔と同軸に形成された雌ねじと、軸方向に形成された、前記ピンが挿入される複数本の溝とを有し、前記座金は、突片を有し、前記ピンは、前記固定具本体の前記溝内を上下動可能で、下降時に前記ピンの下部は、前記固定具本体の下面から突出し、前記座金の前記突片に係合する突起を有することに特徴を有するものである。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、座金は、固定具本体の外側に嵌め込まれ、固定具本体に形成された雌ねじは、ナットにより構成され、固定具本体の溝は、固定具本体の外周面に形成され、座金の突片は、座金の内周面に形成されていることに特徴を有するものである。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、固定具本体の上部外周面は、多角形状に形成されていることに特徴を有するものである。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、ピンの上部両側には、外面に突条を有する突出部が形成され、固定具本体の溝の内側面には、突条が入り込むガイド溝が形成されていることに特徴を有するものである。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1から4の何れか1つに記載の発明において、座金を固定具本体の所定高さ位置に保持しておく保持手段が設けられていることに特徴を有するものである。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、保持手段は、座金の内周面軸方向上部に形成された溝と、固定具本体の外周面に形成された、前記溝に嵌まり込む突起とからなることに特徴を有するものである。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1から6の何れか1つに記載の発明において、ピンの、固定具本体の締付け方向側の側面は、円弧状に湾曲していることに特徴を有するものである。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項1から7の何れか1つに記載の発明において、固定具本体を覆うキャップを備えていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、施工現場での受枠の締め付け作業がワンタッチで容易且つ確実に行え、しかも、施工現場での複数の部材の組み立てが不要となるので、部材紛失の恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、この発明の受枠用締付け固定具の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、この発明の受枠用締付け固定具の固定具本体を示す平面図、図2は、この発明の受枠用締付け固定具の固定具本体を示す正面図、図3は、この発明の受枠用締付け固定具の固定具本体を示す底面図、図4は、図1のA−A線断面図、図5は、この発明の受枠用締付け固定具のピンを示す斜視図、図6は、この発明の受枠用締付け固定具の座金を示す平面図、図7は、この発明の受枠用締付け固定具の座金を示す正面図、図8は、組み立てられた、この発明の受枠用締付け固定具を示す平面図、図9は、組み立てられた、この発明の受枠用締付け固定具を示す正面図、図10は、この発明の受枠用締付け固定具による受枠の固定状態を示す部分断面図、図11は、図10のA方向視図、図12は、この発明の受枠用締付け固定具のピンを引き抜いた状態を示す部分断面図である。
【0025】
図1から図9において、1は、固定具本体である。図1から図4に示すように、固定具本体1は、工具によっても回転させることができるように、その上部外周面が六角形状に形成され、下部に、フランジ1aが形成され、中心部に、側塊12に下部が埋め込まれたアンカーボルト14(図14参照)の挿通孔1bが形成され、挿通孔1bの下部には、挿通孔1bと同軸に、アンカーボルトにねじ込まれるナット2が埋め込まれ、外周面には、その軸方向に、後述するピンが挿入される複数本(この例では6本)の溝1cが形成されている。溝1cは、固定具本体1を貫通している。溝1cの内側面には、前記ピンの突条が入り込むガイド溝1dが対向して形成されている。なお、固定具本体1の上部に多角形状の凹陥部を形成し、この凹陥部に工具を挿入可能にしても良い。
【0026】
固定具本体1の外周面には、後述する座金の凹部に嵌まり込む、保持手段としての突起1eが複数個(この例では3つ)設けられている。突起1e上に前記座金を持ち上げることによって、前記座金がその位置で保持される。すなわち、保持手段は、固定具本体1の締め込み時に、前記座金を持ち上げて、前記ピンを受枠13の長孔13aから引き抜く必要があるが、このときに前記座金を固定具本体1の所定高さ位置に保持しておくためのものである。
【0027】
3は、固定具本体1の溝1cに上下動可能に嵌め込まれるピンである。図5に示すように、ピン3の上部両側には、外面に突条3bを有する突出部3aが形成され、突出部3aの前面には、後述する座金の突片に係合する突起3cが形成されている。突出部3a間にも前記座金の突片に係合する突起3dが形成されている。ピン3は、樹脂等によって構成され、突出部3aは、指等で容易に内側に撓む。ピン3の下部は、これを下降させたとき、固定具本体1の下面から突出し、受枠13の長孔13aと係合して、固定具本体1の緩み方向の回転を阻止する。なお、図5中、一点鎖線で示すように、固定具本体1の締付け方向側のピン3の下部側面を円弧状に湾曲させておけば、固定具本体1の締付け時にピン3に上昇力が作用するので、ピン3を前記座金により持ち上げておく必要がない。
【0028】
4は、固定具本体1の外側に嵌め込まれるリング状の座金である。図6および図7に示すように、座金4の内周面には、ピン3の突起3c、3dと係合する突片4aがピン3と同数(この例では6個)形成されている。さらに、座金4の内周面には、固定具本体1の突起1eが入り込む溝4bが突起1eと同数形成されている。溝4bは、座金4の内周面の上部に形成されている。これは、座金4を上下移動させるとき、座金4を傾斜させながら固定具本体1の突起1eを乗り越える必要があるが、溝4bを設けないと、座金4の全高さ分(図7中、Mで示す)だけ突起1eの乗り越え操作をする必要がある。しかし、溝4bを設ければ、溝4b以外の残りの高さ分(図7中、Lで示す)だけの乗り越え操作で済むからである。
【0029】
上述した、この発明の受枠用締付け固定具によれば、以下のようにして、受枠が側塊上に固定される。
【0030】
まず、図8および図9に示すように、この発明の受枠用締付け固定具を組み立てる。すなわち、固定具本体1に、そのフランジ1aに当たるまで座金4を嵌め込む。この際、固定具本体1の突起1eが座金4に当たるが、固定具本体1と座金4との間には、若干のクリアランスと座金4の撓みがあるので、座金4を傾斜させることによって、突起1eを乗り越えることができる。この乗り越え操作は、突起1eが座金4の溝4aに嵌まり込み、その間は、突起1eは自在に移動するので、図9中、(L)で示す高さ分だけの乗り越え操作で済む。
【0031】
このようにして、座金4を固定具本体1に嵌め込んだら、固定具本体1の各溝1cにピン3を嵌め込む。この際、ピン3の突出部3aを指でつまんで内側に撓ませ、突起3c、3dを前面にして、ピン3の突条3bを溝1cのガイド溝1dに嵌め込む。これによりピン3は、固定具本体1から外れない。ピン3は、その突起3c、3dが座金4の突片4aに当たるまで下降する。この状態でピン3の下部は、固定具本体1の下面から突出する。
【0032】
このようにして、予め組み立てておいた締付け固定具を受枠13の施工現場まで運び、座金4を固定具本体1の突起1eの上まで持ち上げて、ピン3を引き上げ保持しておく。次に、ピン3が引き上げられた固定具本体1を、受枠13の長孔13aから突出したアンカーボルト14にねじ込んで受枠13を固定する。ピン3が引き上げられることによってピン3と長孔13aとは係合しないので、固定具本体1は自在に回転する。
【0033】
そして、図10および図11に示すように、固定具本体1を手あるいは工具を使用して締め付けて、受枠13を固定する。この後、座金4を下降させて、ピン3を固定具本体1の下面から突出させれば、固定具本体1に緩め方向の回転力が作用しても、ピン3が長孔13aに係合する結果、固定具本体1に緩みは生じない。
【0034】
なお、図10に示すように、座金4上に乗せられ、固定具本体1を覆うキャップ5を用いれば、キャップ5を被せると同時に、座金4を下降させることができる。キャップ5を被せることによって、固定具本体1を敷設アスファルトから保護することができ、再利用が可能となる。
【0035】
以上のように、この発明の受枠用締付け固定具によれば、固定具本体の緩み止め操作がワンタッチ、すなわち、座金4を下降させる操作のみで行え、しかも、施工現場での複数の部材の組み立てが不要となるので、部材紛失の恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の受枠用締付け固定具の固定具本体を示す平面図である。
【図2】この発明の受枠用締付け固定具の固定具本体を示す正面図である。
【図3】この発明の受枠用締付け固定具の固定具本体を示す底面図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】この発明の受枠用締付け固定具のピンを示す斜視図である。
【図6】この発明の受枠用締付け固定具の座金を示す平面図である。
【図7】この発明の受枠用締付け固定具の座金を示す正面図である。
【図8】組み立てられた、この発明の受枠用締付け固定具を示す平面図である。
【図9】組み立てられた、この発明の受枠用締付け固定具を示す正面図である。
【図10】この発明の受枠用締付け固定具による受枠の固定状態を示す部分断面図である。
【図11】図10のA方向視図である。
【図12】この発明の受枠用締付け固定具のピンを引き抜いた状態を示す部分断面図である。
【図13】側塊上に固定された受枠を示す概略断面図である。
【図14】従来技術による受枠の固定状態を示す部分断面図である。
【図15】従来技術の固定リングを示す図であり、同図(a)は、固定リングを示す部分断面図、同図(b)は、固定リングを示す平面図である。
【図16】従来技術の回転防止キャップを示す図であり、同図(a)は、回転防止キャップを示す平面図、同図(b)は、回転防止キャップを示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1:固定具本体
1a:フランジ
1b:挿通孔
1c:溝
1d:ガイド溝
1e:突起
2:ナット
3:ピン
3a:突出部
3b:突条
3c:突起
3d:突起
4:座金
5:キャップ
4a:突片
4b:溝
11:鉄蓋
12:側塊
13:受枠
13a:長孔
14:アンカーボルト
15:ナット
16:固定リング
16a:突起
16b:座金
16c:外歯
17:回転防止キャップ
17a:開口
17b:爪
17c:内歯
18:ナット
19:高さ調整具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受枠固定用アンカーボルトにねじ込まれる締付け固定具において、
固定具本体と、前記固定具本体に嵌め込まれるリング状の座金と、複数本のピンとからなり、前記固定具本体は、前記アンカーボルトの挿通孔と、前記挿通孔と同軸に形成された雌ねじと、軸方向に形成された、前記ピンが挿入される複数本の溝とを有し、前記座金は、突片を有し、前記ピンは、前記固定具本体の前記溝内を上下動可能で、下降時に前記ピンの下部は、前記固定具本体の下面から突出し、前記座金の前記突片に係合する突起を有することを特徴とする受枠用締付け固定具。
【請求項2】
前記座金は、前記固定具本体の外側に嵌め込まれ、前記固定具本体に形成された前記雌ねじは、ナットにより構成され、前記固定具本体の前記溝は、前記固定具本体の外周面に形成され、前記座金の前記突片は、前記座金の内周面に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の受枠用締付け固定具。
【請求項3】
前記固定具本体の上部外周面は、多角形状に形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の受枠用締付け固定具。
【請求項4】
前記ピンの上部両側には、外面に突条を有する突出部が形成され、前記固定具本体の前記溝の内側面には、前記突条が入り込むガイド溝が形成されていることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の受枠用締付け固定具。
【請求項5】
前記座金を前記固定具本体の所定高さ位置に保持しておく保持手段が設けられていることを特徴とする、請求項1から4の何れか1つに記載の受枠用締付け固定具。
【請求項6】
前記保持手段は、前記座金の内周面軸方向上部に形成された溝と、前記固定具本体の外周面に形成された、前記溝に嵌まり込む突起とからなることを特徴とする、請求項5記載の受枠用締付け固定具。
【請求項7】
前記ピンの、前記固定具本体の締付け方向側の側面は、円弧状に湾曲していることを特徴とする、請求項1から6の何れか1つに記載の受枠用締付け固定具。
【請求項8】
前記固定具本体を覆うキャップを備えていることを特徴とする、請求項1から7の何れか1つに記載の受枠用締付け固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−23724(P2007−23724A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211571(P2005−211571)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000231877)日本鋳鉄管株式会社 (48)
【Fターム(参考)】