説明

古紙の再生処理方法及び再生紙

【課題】古紙の蛍光染料を消去する従来の技術では不可避のAOX(吸着性有機ハロゲン化合物)やハロゲンガスの発生が無く環境への負荷がない蛍光染料を含む古紙の再生処理方法が求められている。又、古紙に含有される蛍光染料を完全に消去することが求められている。
【解決手段】蛍光染料を含む古紙の再生処理方法において、古紙又は古紙パルプをペルオキソ二硫酸塩及び硫酸塩の存在下処理することを特徴とする古紙の再生処理方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光染料を含む古紙の再生処理方法であって、ペルオキソ二硫酸塩及び硫酸塩を使用する古紙を再利用するための再生処理方法と、その処理方法による再生パルプを配合した再生紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製品の中で特に白さが要求される場合、そのほとんどで蛍光染料を使用して白度を高めている。その結果、流通している白度の高い古紙には蛍光染料が含まれている事が多い。
一方、蛍光染料を含むことを望まない分野、例えば、感熱紙や感圧紙、直接食品に触れることがある食品関係の紙製品、直接肌に触れることがある衛生紙関係等の分野ではバージンパルプを使用してきた。しかしながら、これらの分野でも環境保護の高まりやエネルギー効率を考慮して古紙の再利用が求められている。
【0003】
古紙の再利用には、物理的な方法として少量の蛍光染料が含まれる古紙を大量の蛍光染料を含まない古紙に混入させ、全体的に蛍光強度を低下させる方法が考えられる。しかしながら、この方法では蛍光染料の完全な消去はできない。
そこで、再生処理前に古紙から蛍光染料を含む古紙を人手による抜き取り作業によって除去したり、蛍光染料を含む古紙と蛍光染料を含まない古紙の流通ルートを分けるという手間がかかる方法を行って古紙の再利用をしているのが現状である。
【0004】
又、蛍光を消去する化学的な方法として塩素若しくは塩素を含む化合物を使用する方法が知られている。しかしながら、塩素や塩素を含む化合物による処理では、環境上問題が懸念される塩素やAOX(吸着性有機ハロゲン化合物)が発生し好ましくない。
【0005】
例えば、特許文献1には、古紙を離解によりパルプ状にし、水酸化ナトリウムでpHを10以上に調整し、続いて次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加して蛍光染料を消去する方法が開示されている。しかし、この方法は蛍光の消去が不十分なだけでなく、塩素ガスの発生、更にパルプの黄色化を引き起こす。
【0006】
特許文献2に記載のジクロロイソシアヌール酸ナトリウムを使用する処理方法では、処理剤が塩素化合物であることからAOXが排水中に大量に出るため、環境上の問題を有している。
【0007】
特許文献3には、蛍光染料を含む古紙スラリーに二酸化塩素を使用する蛍光染料の消去方法が開示されている。しかし、二酸化塩素を使用するため、塩素ガスやAOXの発生による環境上の問題から実用性に乏しい。
【0008】
特許文献4には、400nm〜700nmの範囲の波長領域に吸収帯を持つ有色染料の脱色に、ペルオキソ二硫酸塩及び金属塩の使用について記載がある。しかし、蛍光染料の消去への適用については記載されていない。
又、一般に蛍光染料は有色染料と比べて化学的に安定であるため、塩素や塩素を含む化合物を用いない場合、蛍光の消去は脱色より困難であると言われている。
【0009】
【特許文献1】特開昭62−97993号公報
【特許文献2】特許第3118087号公報
【特許文献3】特公平8−19630号公報
【特許文献4】特許第3629033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
古紙の蛍光染料を消去する従来の技術の多くは、塩素若しくは塩素系の化合物によって行われる。しかし、塩素若しくは塩素系の化合物の使用は、AOXやハロゲンガス等を発生させ環境への負荷が非常に高くなる。AOXやハロゲンガスの発生が無く環境への負荷がない蛍光染料を含む古紙の再生処理方法が求められている。
又、従来の技術では蛍光染料を含む古紙の再生処理を行っても蛍光染料が完全に消去されないため、蛍光染料を含むことを望まない分野への古紙の使用が困難であった。従って、蛍光染料を含む古紙を再利用し、古紙としての利用範囲を広げていくために、古紙に含有される蛍光染料を十分に消去することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意研究した結果、360nmの付近に吸収帯を持つ蛍光染料を含む古紙の再生処理方法として、ペルオキソ二硫酸塩及び硫酸塩を組み合わせて使用する方法が有効であることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明は以下の(1)〜(8)に関する。
(1)蛍光染料を含む古紙の再生処理方法において、古紙又は古紙パルプをペルオキソ二硫酸塩及び硫酸塩の存在下処理することを特徴とする古紙の再生処理方法。
(2)処理が古紙の離解、脱墨、除塵、洗浄若しくは漂白のいずれかの工程で行なわれることを特徴とする上記(1)記載の古紙の再生処理方法。
【0012】
(3)ペルオキソ二硫酸塩の使用量が古紙又は古紙パルプに対して0.01重量%〜30重量%であり、硫酸塩の使用量が古紙又は古紙パルプに対して0.001重量%〜30重量%であり、処理時のpHが0.5〜9、温度が5℃〜90℃の範囲である上記(1)又は(2)に記載の古紙の再生処理方法。
(4)ペルオキソ二硫酸塩と硫酸塩の使用比率が1:1〜1:0.01の範囲である上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の古紙の再生処理方法。
(5)更に、界面活性剤を加えて処理することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の古紙の再生処理方法。
【0013】
(6)ペルオキソ二硫酸塩がペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム又はペルオキソ二硫酸カリウムである上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の古紙の再生処理方法。
(7)硫酸塩が硫酸ニッケル、硫酸鉄、硫酸銅又は硫酸亜鉛である上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の古紙の再生処理方法。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の古紙の再生処理方法により得られた再生パルプを5重量%〜95重量%配合された再生紙。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、蛍光染料を含む古紙の再生処理に際し、ペルオキソ二硫酸塩及び硫酸塩を組み合わせて使用することにより、既存の技術であるジクロロイソシアヌール酸ナトリウムや次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素等を使用する処理方法に比べ、より高い蛍光の消去効果を有し、且つ、有毒なハロゲンガスや、廃水中の負荷を高めるAOXを発生しないで短時間での処理が可能な実用的に優れた処理方法である。更に、ジクロロイソシアヌール酸ナトリウムや次亜塩素酸ナトリウムに比べて保管時の経時安定性がよいので、使いやすい特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の蛍光染料を含む古紙の再生処理方法は、古紙又は古紙パルプをペルオキソ二硫酸塩及び硫酸塩の存在下処理することを特徴としている。
【0016】
本発明によって再生処理される古紙の種類は特に限定されず、例えば、新聞紙、雑誌古紙、印刷物古紙、カタログ・チラシ古紙又は家庭や事務所から出る蛍光染料を含む紙を含む古紙に用いられる。
蛍光染料とは360nm付近、凡そ340〜380nmに吸収極大を有する染料であり、代表的な蛍光染料としては、文献等に記載されている2〜6のスルホン酸基を有するスチルベン誘導体等が挙げられる。
【0017】
古紙は、離解、選別、脱墨、除塵、洗浄、精選、漂白、抄紙の工程により再利用される。本発明の再生処理方法は、古紙の処理工程の離解、脱墨、除塵、洗浄、漂白等のいずれの工程で行ってもよい。
【0018】
本発明の古紙の再生処理方法に用いられるペルオキソ二硫酸塩は特に限定されないが、ペルオキソ二硫酸アンモニウム又はペルオキソ二硫酸アルカリ金属塩等が挙げられ、ペルオキソ二硫酸アルカリ金属塩の中でもペルオキソ二硫酸ナトリウム又はペルオキソ二硫酸カリウムが好ましい。その使用量は処理する古紙又は古紙パルプに対して0.01重量%〜30重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%である。
【0019】
本発明の古紙の再生処理方法に用いられる硫酸塩としては特に限定されないが、硫酸遷移金属塩が挙げられ、例えば、硫酸ニッケル、硫酸鉄、硫酸銅又は硫酸亜鉛等が挙げられ、中でも硫酸鉄が好ましい。その使用量は処理する古紙又は古紙パルプに対して0.001重量%〜30重量%、好ましくは0.005重量%〜3重量%である。
【0020】
本発明の古紙の再生処理方法の処理条件は、水溶媒中で処理温度5〜90℃、好ましくは30℃〜80℃、特に好ましくは50℃〜65℃であり、pHは0.5〜9であるが、酸性条件下であるpH1〜5が好ましく、pH2〜3.5が特に好ましい。処理液中の古紙パルプ濃度は0.5重量%〜50重量%、好ましくは0.7重量%〜40重量%、特に好ましくは1重量%〜20重量%である。
【0021】
又、本発明の古紙の再生処理方法においてペルオキソ二硫酸塩と硫酸塩の使用比率は1:1〜1:0.01の範囲が好ましい。
【0022】
本発明の古紙の再生処理方法には界面活性剤を使用してもよく、該界面活性剤としてはアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられ、市販の界面活性剤を用いればよい。
【0023】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノール燐酸エステル塩、長鎖アルコール硫酸エステル塩、第二アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸エステル塩、脂肪酸アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸多価アルコール硫酸エステル塩、硫酸化油、脂肪酸石鹸等が挙げられる。
【0024】
カチオン性界面活性剤としては、長鎖1級アミン塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルエチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、アシルアミノエチルメチルジエチルアンモニウム塩、アシルアミノエチルピリジニウム塩、脂肪酸トリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン脂肪酸トリエタノールアミン塩、アルキルイミダゾリン塩等が挙げられる。
【0025】
両性界面活性剤としては、アミドアミノ酸系界面活性剤、カルボベタイン系界面活性剤、スルホベタイン系界面活性剤、アミドスルホンベタイン系界面活性剤、ホスホベタイン系界面活性剤、イミダゾリウムベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0026】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、N―アルキルプロピレンジアミン、N―アルキルポリエチレンポリアミン等が挙げられる。
【0027】
上記の界面活性剤を単独で使用しても混合して使用してもよい。
【0028】
本発明の古紙の再生処理方法に界面活性剤を使用する場合、その使用量は処理する古紙又は古紙パルプに対して0.0001重量%〜10重量%、好ましくは0.0005重量%〜8重量%、特に好ましくは0.001重量%〜5重量%である。
【0029】
本発明の古紙の再生処理方法における処理液中には、水の他に、アルコール、エタノールアミン、グリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、有機酸エステル、コリン、植物油、尿素、ε−カプロラクタム、ポリアクリル酸、pH緩衝剤、蒸解助剤、漂白剤、解離剤、サイズ剤、紙力増強剤、紙質改善剤、填料、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、洗浄剤、抗菌剤、防カビ剤、泡消剤、歩留向上剤、凝集剤、耐水剤、帯電防止剤、透明化剤、表面加工樹脂、可溶性澱粉、脱墨剤、他の酸化剤等を必要に応じて同時に添加して使用してもよい。
【0030】
本発明の古紙の再生処理によって得られる再生パルプは、抄紙してそのまま再生紙として用いることができ、又、バージンパルプと配合し再生紙を生産することができる。本発明にはこれらの再生紙も含まれ、再生紙中の本発明の古紙の再生処理によって得られる再生パルプの割合は5重量%〜95重量%である。
【実施例】
【0031】
以下の実施例により本発明を詳細に説明する。実施例において%は重量%を意味する。抄紙した用紙のL値、a値、b値及び蛍光強度は、スガ試験機(株)分光白色度測色計「SC−10W」(商品名、スガ試験機(株)製)によって測定した。
【0032】
実施例1
蛍光染料を含む古紙を、繊維状にほぐす離解処理に施し古紙パルプとした。この古紙パルプに水酸化ナトリウム水溶液を加え撹拌しながら1時間加熱し、引き続き1%希硫酸によりpHを7付近に調節し、ろ過してパルプを得た。
このパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.016g、硫酸鉄0.002gを加えた。60℃で2時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0033】
実施例2
実施例1において調製したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.5に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.016g、硫酸鉄0.002gを加えた。60℃で2時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0034】
実施例3
実施例1において調整したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを3に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.016g、硫酸鉄0.002gを加えた。60℃で2時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0035】
実施例4
実施例1において調製したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.4に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.016g、硫酸鉄0.00018g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.00002gを加えた。60℃で2時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0036】
実施例5
実施例1において調整したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.3に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.012g、硫酸鉄0.00018g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.00002gを加えた。60℃で2時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0037】
実施例6
実施例1において調製したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.3に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.008g、硫酸鉄0.0018g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.0002gを加えた。60℃で2時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0038】
実施例7
実施例1において調製したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.1に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.008g、硫酸鉄0.0009g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.0001gを加えた。60℃で2時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0039】
実施例8
実施例1において調製したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.0に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.008g、硫酸鉄0.00018g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.00002gを加えた。60℃で2時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0040】
実施例9
純水35.5mlの中に蛍光染料「カヤホールSTCリキッド」(商品名、スチルベン系蛍光染料、日本化薬(株)製)の0.023%溶液を10ml添加する。このなかに固型分率16.7%の広葉樹晒クラフトパルプ(以下、LBKPと略す)12.0gをいれ5分間攪拌する。0.01%ロジンサイズ剤水溶液「FR1900」(商品名、ロジン系サイズ剤、星光PMC(株)製)2.0mlを加え、更に5分間攪拌する。0.03%硫酸アルミ水溶液2.0mlを加え、更に5分間攪拌する。染色されたLBKPは洗浄脱水する。
このLBKPを純水100mlの中にいれ、1%硫酸にてpHを2.5に調節し、攪拌しながら加温し液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.02g、硫酸鉄0.0018g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.0002gを加えた。60℃で5時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0041】
実施例10
実施例1において調整したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.3に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.02g、硫酸鉄0.0036g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.0004gを加えた。60℃で5時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0042】
実施例11
実施例1において調整したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.3に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.02g、硫酸鉄0.0072g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.0008gを加えた。60℃で5時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0043】
実施例12
実施例1において調整したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.3に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.02g、硫酸鉄0.0108g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.0012gを加えた。60℃で5時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0044】
実施例13
実施例1において調整したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.3に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.02g、硫酸鉄0.0144g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.0016gを加えた。60℃で5時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0045】
実施例14
実施例1において調整したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.3に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.02g、硫酸鉄0.018g、アニオン性界面活性剤(商品名、デモールN、花王(株)製)0.002gを加えた。60℃で5時間処理し、ろ過して再生パルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0046】
比較例1
実施例1において調製したパルプを本発明の再生を行わず、そのまま抄紙して未処理紙とした。その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0047】
比較例2
実施例1において調製したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.3に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.012gを加えた。60℃で2時間処理し、ろ過してパルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0048】
比較例3
実施例1において調製したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.5に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.008gを加えた。60℃で2時間処理し、ろ過してパルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0049】
比較例4
実施例9において調製したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%希硫酸にてpHを2.5に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を50℃にした。この中に30%過酸化水素水30mlを6時間かけて滴下した。過酸化水素水にて処理し、ろ過してパルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0050】
比較例5
実施例1において調製したパルプ2g相当を純水100mlの中にいれパルプ濃度2%になるように調整し、1%水酸化ナトリウム水溶液にてpHを11.0に調整し、攪拌しながら加温して液の温度を50℃にした。この中に1.2%次亜塩素酸ナトリウム水溶液8mlを5時間かけて滴下した。ろ過しパルプを得た後、それを直径16cmの円形に抄紙し、その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0051】
比較例6
実施例9において調製したパルプを本発明の再生を行わず、そのまま抄紙して未処理紙とした。その測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0052】
比較例7
実施例9において染色されたLBKPを純水100mlの中にいれ、1%硫酸にてpHを2.5に調節し、攪拌しながら加温し液の温度を60℃にした。この中にペルオキソ二硫酸アンモニウム0.02gを加えた。5時間処理したLBKPをろ過した後、直径16cmの円形に抄紙した。測色・蛍光強度の測定値を表1に示す。
【0053】
表1 測色・蛍光強度
L値 a値 b値 蛍光強度
実施例1 91.82 −0.28 1.60 0.04
実施例2 91.62 −0.10 1.96 0.38
実施例3 92.04 −0.06 1.60 0.59
実施例4 93.03 −0.36 1.37 0.50
実施例5 93.65 0.28 1.65 0.49
実施例6 93.71 −0.05 1.39 0.36
実施例7 93.53 −0.11 1.91 0.58
実施例8 93.71 −0.13 1.65 0.81
実施例9 94.60 −0.48 2.24 0.55
実施例10 94.12 −0.33 2.45 0.45
実施例11 93.64 −0.36 3.74 0.47
実施例12 94.00 −1.19 5.17 0.69
実施例13 93.15 −0.63 6.44 0.50
実施例14 93.91 −1.12 6.47 0.47
比較例1(未処理紙) 92.34 1.92 −3.57 7.24
比較例2 92.96 −0.07 1.47 1.00
比較例3 93.25 −0.13 0.43 1.69
比較例4 92.52 1.31 −2.86 5.04
比較例5 93.04 0.19 −0.65 1.96
比較例6(未処理紙) 95.54 1.48 −3.51 9.30
比較例7 94.95 −0.21 1.54 1.57
【0054】
表1の結果から実施例1〜14に記載の本願発明の古紙の再生処理方法により処理された再生パルプを抄紙した再生紙は、いずれも蛍光強度が比較例1又は比較例6の未処理紙に比べて低くなっており、ほぼ完全に蛍光染料が消去されている。又、実施例1〜14の蛍光強度が、比較例2、3、7のペルオキソ二硫酸塩のみを用いた方法、比較例4の過酸化水素水のみを用いた方法、比較例5の次亜塩素酸ナトリウムを用いた方法のそれよりも低いことは、既存の処理方法よりも本発明の処理方法が一層効果的である事を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光染料を含む古紙の再生処理方法において、古紙又は古紙パルプをペルオキソ二硫酸塩及び硫酸塩の存在下処理することを特徴とする古紙の再生処理方法。
【請求項2】
処理が古紙の離解、脱墨、除塵、洗浄若しくは漂白のいずれかの工程で行なわれることを特徴とする請求項1記載の古紙の再生処理方法。
【請求項3】
ペルオキソ二硫酸塩の使用量が古紙又は古紙パルプに対して0.01重量%〜30重量%であり、硫酸塩の使用量が古紙又は古紙パルプに対して0.001重量%〜30重量%であり、処理時のpHが0.5〜9、温度が5℃〜90℃の範囲である請求項1又は2に記載の古紙の再生処理方法。
【請求項4】
ペルオキソ二硫酸塩と硫酸塩の使用比率が1:1〜1:0.01の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の古紙の再生処理方法。
【請求項5】
更に、界面活性剤を加えて処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の古紙の再生処理方法。
【請求項6】
ペルオキソ二硫酸塩がペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム又はペルオキソ二硫酸カリウムである請求項1〜5のいずれか一項に記載の古紙の再生処理方法。
【請求項7】
硫酸塩が硫酸ニッケル、硫酸鉄、硫酸銅又は硫酸亜鉛である請求項1〜6のいずれか一項に記載の古紙の再生処理方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の古紙の再生処理方法により得られた再生パルプを5重量%〜95重量%配合された再生紙。