説明

可動体の可動装置

【課題】レール内に吊り車及び補助装置を収納可能であって、且つ、剛性が高い、吊り下げ支持される可動体の可動装置を提供することが可能となる。
【解決手段】支持体100に設けられたレール105に吊り下げ支持され、レール105に沿って移動可能な可動体110の可動装置1において、レール105内に設けられた当受体10と、可動体110の上部に固定され、レール105内に収納されるフレーム4と、フレーム4内に固定される基体21と、可動体110の移動方向に沿って移動し、可動体110が移動終了位置に移動する場合に当受体10と係合する当接体22と、基体21及び当接体22間の付勢による基体21又は当接体22の移動を規制し、当接体22が当受体10と係合することで、基体21又は当接体22の移動の規制を解除可能な付勢機構23と、フレーム4に設けられ、当受体10を基体21に通過可能に形成された吊り車6aと、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ支持される可動体を可動させるとともに、当該可動の補助を行う可動体の可動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
戸枠等の支持体に設けられたレールによりその上部を吊り下げ支持される吊り戸等の可動体は、可動体をレールに吊り下げるとともに可動させる吊り車と、付勢機構を用いて可動体を強制移動させるクローザと呼ばれる補助装置と、を有する可動体の可動装置を有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような可動体の可動装置は、レールに沿って可動体を可動させる吊り車がレール内に配置され、補助装置が可動体に配置される。このような可動体の可動装置は、補助装置により可動体を強制移動させるとともに、当受体及び当接体により位置合わせをすることで、可動体を移動終了位置まで移動させることが機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−157010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術では、次のような問題がある。即ち、可動体の可動装置は、可動体を可動させる吊り車及び当受体がレール内に配置され、当接体は可動体に配置される構成であることから、当接体を収める収納部を可動体に設ける必要があった。
【0006】
また、このような補助装置は、当受体がレール内に配置される構成であるため、吊り戸以外の可動体、例えば引き戸に用いる補助装置とはその構成が異なり、共有化が困難である、という問題もある。
【0007】
また、当接体は、各構成品を収納保持するハウジングが樹脂材料で成形されることから、剛性が低いという問題もある。特に、高重量の吊り戸等においては、当受体及び当接体の係合や、吊り戸の移動に際し、ハウジングの強度不足となる虞もある。
【0008】
そこで本発明は、レール内に吊り車及び補助装置を収納可能であって、且つ、剛性が高い、吊り下げ支持される可動体の可動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の可動体の可動装置は次のように構成されている。
【0010】
本発明の一態様として、支持体に設けられたレールに吊り下げ支持され、前記レールに沿って移動可能な可動体の可動装置において、前記レール内に設けられた当受体と、前記可動体の上部に固定され、前記レール内に収納されるフレームと、前記フレームに複数設けられ、少なくともその一つが前記当受体を通過可能に形成されている吊り車と、前記フレーム内であって、且つ、前記複数の吊り車間に固定される基体と、前記基体内に前記可動体の移動方向に沿って移動可能に形成され、前記可動体がその移動終了位置に移動する場合に前記当受体と係合する当接体と、前記基体及び前記当接体間に付勢可能に形成されるとともに、前記付勢による前記基体又は前記当接体の移動を規制し、前記当接体が前記当受体と係合することで、前記基体又は前記当接体の移動の規制を解除可能な付勢機構と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レール内に吊り車及び補助装置を収納可能、且つ、剛性が高い、吊り下げ支持される可動体の可動装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る支持体及び可動体に用いられる可動装置の構成を模式的に示す説明図。
【図2】同可動装置による可動体の動作を模式的に示す説明図。
【図3】同可動装置の構成を示す斜視図。
【図4】同可動装置に用いられる補助装置の構成を示す斜視図。
【図5】同可動装置に用いられる吊り車の構成を示す斜視図。
【図6】本発明の変形例に係る可動装置に用いられる吊り車機構の構成を模式的に示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態かかる可動体110の可動装置1について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態に係る支持体100及び可動体110に設けられる可動装置1の構成を模式的に示す説明図、図2は可動装置1による可動体110の動作を模式的に示す説明図、図3は可動装置1の構成を示す斜視図、図4は可動装置1に用いられる吊り車機構2の構成を示す斜視図、図5は可動装置1に用いられる補助装置3の構成を示す斜視図である。
【0015】
なお、図1乃至図5中、矢印X,Y,Zはそれぞれ互いに直交する3方向を示す。なお、X方向は可動体110のスライド方向を、Y方向は可動体110の厚み方向を、Z方向は上下方向を示す。
【0016】
図1及び図2に示すように、可動装置1は、支持体100及び可動体110に設けられ、可動体110の移動を行うとともに、可動体110の補助を行う。なお、本実施形態において、支持体100は戸枠であり、可動体110は吊り戸である。以下、支持体100を戸枠100とし、可動体110を吊り戸110として説明する。
【0017】
図1に示すように、戸枠100は、上枠101、左枠102、右枠103、及び下枠を備えている。上枠101には吊り戸110のスライド方向に沿うレール溝104が形成されており、このレール溝104に吊り戸110の上部を移動可能に支持するレール105が固定されている。
【0018】
なお、レール105は、図3に一部断面で示すように、下面105aの一部がその延設方向(スライド方向)に沿って開口すると共に、可動装置1を内部に収納可能に形成されている。また、レール105は、その下面105aにより、後述する吊り車群5と当接し、当該吊り車群5を摺動可能に支持する。
【0019】
吊り戸110の上端部には、スライド方向に沿って可動装置1が連結部材120を介して接続されている。なお、ここでは一枚の吊り戸110に着目し、左側が戸先側、右側が戸尻側とし、吊り戸110が左枠102と当接する位置を、吊り戸110の移動終了位置とする。吊り戸110の戸先側である左端部には取っ手112が形成されている。
【0020】
図1に示すように吊り戸110が移動終了位置に達していない(移動終了位置以外に位置する)開状態を第1状態、図2に示すように戸先側の移動終了位置に移動し左枠102に当接した閉状態を第2状態とする。
【0021】
可動装置1は、吊り戸110をレール105に沿って移動させる吊り車機構2と、吊り戸110の移動の補助を行う補助装置3と、を備えている。可動装置1は、レール105内に配置されるとともに、その一部がレール105に、その他部が吊り戸110に連結部材120を介して固定される。
【0022】
吊り車機構2は、フレーム4と、吊り車群5と、を備えている。なお、フレーム4は、金属材料で形成され、吊り車群5の後述する第1吊り車6を摺動可能に支持するとともに、補助装置3の一部を収納可能に形成されている。フレーム4は、レール105内に収納される。
【0023】
フレーム4は、例えば、吊り戸110のスライド方向に延設された一対の側面部4a,4aと、連結部材120と連結される底面部4bと、を備えている。フレーム4は、その側面部4a,4aの一部に、補助装置3と係合する係合部4cと、第1吊り車6を支持する支持部4dと、を備えている。
【0024】
底面部4bは、その上面にアシストユニット20を載置させるとともに、連結部材120と締結部材等を介して接続される。なお、底面部4bには、例えば当該締結部材を挿通させる挿通孔4eが形成されている。
【0025】
係合部4cは、例えば、図3に示すように、側面部4aの一部に設けられ、補助装置3の後述するアシストユニット20の側面に設けられた被係合部21cと係合可能に形成されている。係合部4cは、互いに対向する側面部4a側に突出する突起であり、具体的には、その一部が対向する側面部4a側に突起する爪である。支持部4dは、一対の側面部4aに設けられ、第1吊り車6の各吊り車6a、6bを軸支可能に形成されており、例えば軸受等が設けられている。
【0026】
吊り車群5は、吊り戸110上部に連結部材120を介して固定されるとともに、レール105内に吊り戸110を移動可能に配置されている。吊り車群5は、吊り戸110を、連結部材120を介してレール105に吊り下げ支持する。具体的には、吊り車群5は、フレーム4内に配置される第1吊り車6と、連結部材120に接続される第2吊り車7を備えている。
【0027】
第1吊り車6は、例えば、フレーム4内に設けられた複数の吊り車6a,6bである。これら吊り車6a,6bは、それぞれ軸体6cを有し、この軸体6cがフレーム4の支持部4dに回転可能に支持される。吊り車6a,6bは、レール105の下面105aに摺動可能に当接する。吊り車6a,6bは、その一方が、後述する補助装置3のストライカ10を通過可能に形成されている。
【0028】
吊り車6a,6bは、例えば、その一方の吊り車6aが、フレーム4の吊り戸110の戸先側に配置され、他方の吊り車6bが、フレーム4の吊り戸110の戸尻側に配置される。以下、一方の吊り車6aを小吊り車6a、他方の吊り車6bを大吊り車6bとして説明する。
【0029】
小吊り車6aは、ストライカ10を通過可能に形成されている。図3及び図4に示すように、小吊り車6aは、例えば、その外径の少なくとも一部が、ストライカ10を通過可能な径に形成されている。小吊り車6aは、その外形状等により、一つ又は複数設けられる。本実施の形態においては、小吊り車6aは、2つ隣接して設けられ構成を用いて説明する。
【0030】
具体的には、小吊り車6aは、その軸心方向の両端側、即ち、レール105の下面105aと摺動する部位がストライカ10と当接する径で形成され、その中央側であってストライカ10が通過する部位が、ストライカ10を通過可能な径に形成されている。大吊り車6bは、例えば、小吊り車6aよりもその外径が大径に形成されている。
【0031】
第2吊り車7は、図1及び図2中においては一つのみ表示しているが、吊り戸110の形状や重量に応じて複数有する構成であってもよい。第2吊り車7は、連結部材120に設けられた一対の大吊り車6b,6bである。
【0032】
補助装置3は、所謂クローザと呼ばれ、吊り戸110の移動の補助を行う。具体的には、補助装置3は、吊り戸110が所定の位置、本実施の形態においては、戸先側の移動終了位置近辺に移動した場合に、吊り戸110を強制移動させる機構である。補助装置3は、レール105に設けられたストライカ10と、フレーム4に設けられたアシストユニット20と、を備える。
【0033】
ストライカ10は、当受体である。ストライカ10は、レール105の上面であって、吊り戸110の戸先側の移動終了位置から一定の位置に固定される。
【0034】
ストライカ10は、上枠101に取り付けられる板状の取付部材11と、取付部材11からY方向及びZ方向に沿って、X方向に離間する2つの面をなし、上枠101から下方に突出する係合突起部12と、を備えている。ストライカ10は、例えば、取付部材11及び係合突起部12を一枚の板状の金属板を板金加工等により曲折させて成形される。
【0035】
取付部材11は、一対の平板上のベース11aと、ベース11aに設けられ、レール105を介して上枠101にボルトや木螺子等の締結部材によりベース11aを上枠101に固定する孔部11bと、を備えている。
【0036】
係合突起部12は、一対のベース11a間を渡すように、ベース11aに設けられる。具体的には、係合突起部12は、Y方向からの側面視で上方が開口する「コ」の字形状に形成されており、その端部がベース11aに接続される。係合突起部12は、吊り戸110の移動により、フレーム4に軸支された吊り車6aを通過後ラッチ22に係合してアシストユニット20内に入り込み、又は、アシストユニット20から出て解放可能に形成されている。
【0037】
係合突起部12は、一方のベース11aと連続する第1係合面13と、他方のベース11aと連続する第2係合面14と、第1係合面13及び第2係合面14を連続させる連続部15と、を備えている。
【0038】
第1係合面13は、一対のベース11aのうち、吊り戸110の移動終了位置側のベース11aに連続して下方に延設されたY方向及びZ方向に沿った面である。第1係合面13は、アシストユニット20の一部と係合する。
【0039】
第2係合面14は、他方のベース11aに連続して下方に延設されたY方向及びZ方向に沿った、第1係合面13と同一形状の面である。第2係合面14は、アシストユニット20の一部と係合する。詳しくは、第2係合面14は、その一方の主面が、後述するラッチ22のフック部32fと当接し係合する係合面を形成し、その他方の主面が後述する被押圧部32cを押圧する押圧面を形成する。第2係合面14は、第1係合面13よりも、スライド方向において、左枠102から離間して配置される。
【0040】
連続部15は、第1係合面13及び第2係合面14を連続させると共に、そのY方向の幅が第1係合面13及び第2係合面14のY方向の幅よりも小さく形成されている。この連続部15は、第1係合面13及び第2係合面14の下端であって、第1係合面13及び第2係合面14のY方向で略中央に配置される。連続部15は、後述するラッチ22のフック部32fを通過可能に形成されている。
【0041】
アシストユニット20は、フレーム4内に収納されて固定される。アシストユニット20は、ハウジング21と、ラッチ22と、付勢機構23と、制動機構24と、を備えている。
【0042】
ハウジング21は、樹脂材料で形成されたフレーム4内であって、吊り車6a及び吊り車6b間に固定される基体である。図3及び図5に示すように、ハウジング21は、上面開口でスライド方向に細長い箱状に形成されている。
【0043】
ハウジング21は、Y方向に離間して設けられ、フレーム4の一対の側面部4a,4aと平行に形成され、その外面間が側面部4a,4aの内面間と略同一寸法に形成された一対の側壁21a,21aを有している。ハウジング21は、図3及び図5に示すように、その側壁(側面)21a,21aに、フレーム4の係合部4cと係合可能な被係合部21cを備えている。
【0044】
被係合部21cは、係合部4cである突起を係合可能な側面よりも落ち込む窪み又は開口である。ハウジング21は、フレーム4の底面部4bに載置されるとともに、側面部4a,4a間に挟持され、且つ、その被係合部21cが係合部4cと係合することで、フレーム4に固定される。
【0045】
ハウジング21は、その一方側(図1乃至図3及び図5中、左側)においては、Z方向に開放し、且つ、その他方側(図1乃至図3及び図5中、右側)にZ方向中央に仕切板が設けられ、上側の上部室、下側の下部室が形成されている。ハウジング21は、上部室の一方側は開放され、側壁21a,21aの間にラッチ22を収納可能に形成されている。
【0046】
ハウジング21の側壁21a,21aは、それら一方側に、互いに対向する同形状のスリット27を有している。スリット27は、X軸に沿ってその一方側(図1中左側)の待機位置(第1位置)から他方側の引込位置(第2位置)に至って延びる主ガイド路27aと、主ガイド路27aの待機位置側の端部から湾曲して下方に延びる待機路27bと、主ガイド路27aの引込位置側の中途部から分岐して下方及び一方側に向かって円弧状に湾曲して延びる退避路27cと、を有している。スリット27は、主ガイド路27a、待機路27b及び退避路27cが連続して形成される。退避路27cは退避動作の際に第2軸部を中心とした円弧状を形成する。
【0047】
ハウジング21の下部室には付勢機構23の一部をハウジング21に対して固定するための連結部が形成されている。連結部は、例えば側壁21a,21a間に掛け渡された軸状部材である。
【0048】
ラッチ22は、当受体であるストライカ10と当接する当接体である。ラッチ22は、ハウジング21の側壁21a,21aの間のスライド方向の一方側(図1中左側)の端部に収められるとともに、待機位置と引込位置との間でスライド移動可能にハウジング21に支持される。
【0049】
具体的には、図5に示すように、ラッチ22は、ラッチベース31と、ラッチベース31の先端部に回動可能に連結したカム部32と、を備えている。
【0050】
ラッチベース31は、その側面にX方向に沿って延設された突起部31aを有している。突起部31aは、スリット27へ挿入可能に形成されている。ラッチベース31は、突起部31aがスリット27へ挿入されることで、スリット27に沿ってスライド可能に一対の側壁21a,21aの間に保持される。ラッチベース31は、その先端部に、退避路27cに沿って円弧状に開口する溝31bを有する支持片31cが設けられている。
【0051】
カム部32は、その軸心がY方向に沿って配置されたY方向に突出する一対の第1軸部32bを有している。この第1軸部32bは、スリット27及び溝31bに挿通される。カム部32は、スリット27及び溝31bに挿入された第1軸部32bにより、スリット27内を移動可能、かつ、第1軸部32bを中心に回動可能に形成されている。
【0052】
カム部32は、その外周部の先端上方に突出するキャッチャ32aと、後端上方に突出する被押圧部32cと、キャッチャ32aの下方に設けられた一対の第2軸部32dと、後端下方側に設けられた被付勢部32eと、を備えている。
【0053】
キャッチャ32aはカム部32の先端側に設けられ、カム部32の上方に突出する一対のフック部32fを有している。フック部32fはY方向両側にそれぞれ設けられ、三角形の板状部材を有している。
【0054】
被押圧部32cはカム部32の上部において上方に突出形成され、可動体の移動によりストライカ10の第2係合面14に当接して引込方向に押圧される。
【0055】
一対の第2軸部32dは、キャッチャ32aにY方向に突出して形成され、Y方向に沿う軸心を有する。第2軸部32dは、スリット27に挿通され、スリット27内に移動可能に係合される。
【0056】
被付勢部32eは、カム部32の下部に設けられ、第2軸部32dよりもX方向で被押圧部32c側であって、且つ、第2軸部32dの下方に位置している。この被付勢部32eはハウジング21の下部に配置され、引張コイルばね41の一端が連結される。この引張りコイルばね41により被付勢部32eが常時引込方向に引張られる。
【0057】
付勢機構23は、ラッチ22をハウジング21に対してスライド方向の他方側に付勢するとともに、その付勢によるラッチ22の移動を規制する。付勢機構23は、付勢手段である引張コイルばね41と、引張コイルバネ41の付勢によるカム部32の移動を規制する第2軸部32d及びスリット27と、により構成される。
【0058】
即ち、付勢機構23は、カム部32に引張コイルバネ41により付勢を行うとともに、待機路27bに第2軸部32dが位置することで、カム部32の移動を規制し、且つ、カム部32が、第1係合面13と係合することで、カム部32が回動し、第2軸部32dが主ガイド路27aに位置することで、カム部32の移動の規制が解除される。引張コイルばね41は、ハウジング21の下部において、その軸心方向がスライド方向に沿って配置されている。
【0059】
引張コイルばね41の一端はラッチ22の下部の被付勢部32eに連結され、他端はハウジング21の連結部に連結される。この引張コイルばね41は、待機状態にあるラッチ22を引込方向に付勢することで待機路27bに引っ掛けて保持させる機能と、主ガイド路27aにあるラッチ22を引込方向に付勢して強制移動させる機能と、ラッチ22をその先端が下方に回動する方向に付勢する機能と、を有している。
【0060】
制動機構24は、ラッチ22に連結され、ラッチ22のスライド移動に抵抗力を付与して干渉する。制動機構24は、ハウジング21の上部室内に設けられたピストンダンパ50である。ピストンダンパ50は、内部に流体が封入されたシリンダと、シリンダ内でX方向に沿って往復動するピストンと、このピストンに連結されたピストンロッドとを有している。ピストンロッドの端部はハウジング21に固定され、ピストンに対向するシリンダの外側端部がラッチ22の後端に接続される。
【0061】
制動機構24は、シリンダ内に納められたピストンの動作にシリンダ内の流体の流体対向を作用させることで、シリンダもしくはピストンロッドの押し込み及び引張り動作に対して抵抗力を付与してラッチ22のハウジング21に対するスライド動作を制動する。
【0062】
このように構成された可動装置1によれば、吊り車群5によりレール105に吊り下げ支持された吊り戸110が操作者によりスライド方向に押圧されると、可動装置1は、吊り車群5の第1吊り車6及び第2吊り車7がレール105の下面105aと回転摺動することにより、スライド方向に吊り戸110を移動させる。
【0063】
また、吊り戸110が戸先側の移動終了位置側に移動し、正常状態のラッチ22とストライカ10とが係合すると、アシストユニット20により吊り戸110は移動終了位置に強制移動することとなる。
【0064】
具体的には、吊り戸110がストライカ10に到達していない第1状態では、ラッチ22の第2軸部32dが待機路27bに引っかかり引張コイルばね41によって引張られることで保持され、ラッチ22がハウジング21の端部の待機位置に保持されている。
【0065】
第1状態から操作者が吊り戸110を左枠102側に向かって移動させることにより、吊り戸110が所定位置に至ると、ラッチ22がストライカ10に当接する。この当接により第2係合面14が被押圧部32cを押圧することで、カム部32は、第1軸部32bを中心としてその先端が上方に回動する。
【0066】
この回動によって、カム部32のフック部32fがストライカ10に係合し、ラッチ22にストライカ10が捕捉される。また、当該回動により、下方の第2軸部32dが上方に移動して主ガイド路27aに入り込む位置に至り、待機路27bへの保持が解除されるとともに、主ガイド路27a沿って移動可能な状態となる。
【0067】
この状態で引張コイルばね41の復元力により、ラッチ22は、ハウジング21の他方側に移動し、引込位置まで相対移動する。換言すると、ラッチ22はストライカ10と係合しているため、引張コイルばね41の復元力により、ストライカ10に対してハウジング21がスライド方向の一方側に相対的に強制移動させられる。このハウジング21の移動に伴って、ハウジング21が固定されたフレーム4も移動し、結果、フレーム4に接続された吊り戸110が移動終了位置まで強制移動することとなる。なお、このとき制動機構24により抵抗力が付与され、緩衝しながらゆっくり自動的に吊り戸110が閉まる方向に移動することとなる。
【0068】
なお、第2状態から第1状態とするには、移動終了位置から離間する方向に操作者が吊り戸110を押圧することで、上述したアシストユニット20の動作の逆の動作により、ラッチ22のストライカ10との係合が解除される。
【0069】
また、誤作動等によりラッチ22がストライカ10に係合しないまま引込位置に移動してしまった状態からの復帰動作について説明する。ストライカ10との係合が解除された状態でラッチ22が引込位置にある状態から、吊り戸110が支持体に対して移動終了位置側に向かって移動すると、フック部32fがストライカ10に当接し、後方に押圧される。この押圧により、カム部32は、第2軸部32dを中心として、第1軸部32bが退避路27cに沿って下方に移動しつつラッチ22の先端が上方に回動しながら揺動する。
【0070】
この揺動により、キャッチャ32aのフック部32fの上端が第2状態よりも下方に退避することで、ストライカ10の第2係合面14はフック部32fを乗越え可能となり、スライド方向に沿って移動することでラッチ22に係合可能な位置まで引込方向に移動可能となる。
【0071】
ストライカ10の第2係合面14がフック部32fを乗越えると、引張りコイルばね41の復元力によりカム部32の後方が上方に回動して、フック部32fが第1係合面13及び第2係合面14間に位置することでストライカ10とラッチ22が係合する。
【0072】
この係合状態で吊り戸110を移動終了位置から離間する方向に移動させると、ストライカ10がラッチ22に捕捉された状態で、主ガイド路27aに沿って移動する。そして所定位置に至ると、当接体と前記当受体との係合が解除されるとともに前記当接体が待機位置に保持される状態に復帰する。
【0073】
このように構成された可動装置1によれば、補助装置3による強制移動において、ストライカ10に対するハウジング21の移動は、ハウジング21が固定されたフレーム4を介して吊り車群5に伝達されることとなる。即ち、フレーム4には、ハウジング21及び第1吊り車6が設けられていることから、付勢機構23により付勢された力は、ハウジング21及びフレーム4を介してフレーム4に軸支された第1吊り車6に伝達されることとなる。即ち、付勢機構23により付勢された力が、第1吊り車6まで伝達する距離及び構成品の数が少なくてよく、第1吊り車6に伝達される場合の損失を低減することが可能となる。
【0074】
また、第1吊り車6は、複数の吊り車6a,6bが、フレーム4の両端側に設けられる構成であることから、フレーム4に均一に荷重が加わり、荷重が分散され、片荷重等の偏りによる抵抗の増大等を防止できる。これらのことにより、可動装置1は、付勢機構23により付勢された力の損失を極力防止することが可能となる。
【0075】
また、第1吊り車6は、ラッチ22とストライカ10とが係合する場合に通過する側の吊り車6aを、ストライカ10が通過可能な構成としたことから、アシストユニット20のスライド方向の延長上に吊り車6aが位置しても、ストライカ10の通過を妨げることがない。
【0076】
また、樹脂材料で形成されたハウジング21は、金属材料で形成されたフレーム4の側面部4a,4aに挟持されて収納されることから、フレーム4によりハウジング21の剛性が向上することとなる。即ち、ハウジング21は、フレーム4によりその強度が向上されることで、破損等を防止することが可能となる。
【0077】
また、ハウジング21は、フレーム4に配置させ、その被係合部21cをフレーム4の係合部4cと係合させるだけでフレーム4に固定されることとなる。このように、ハウジング21は、フレーム4へ容易に固定することが可能となる。
【0078】
上述したように、本発明の一実施の形態に係る吊り戸(可動体)110の可動装置1によれば、ハウジング21をフレーム4内に配置することで、レール105内に吊り車機構2及び補助装置3を収納可能、且つ、剛性を向上することが可能となる。
【0079】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、フレーム4は、側面部4a,4a間及び底面部4bにハウジング21を配置させ、係合部4c及び被係合部21cによりハウジング21を固定する構成を説明したが、これに限定されない。例えば、フレーム4は、図6の変形例に示すように、スライド方向にハウジング21スライド方向の移動を防止する壁部4fをさらに有する構成であってもよい。
【0080】
また、上述した例では、第1吊り車6は、吊り車(小吊り車)6aにストライカ10を通過させるために、ストライカ10を通過可能な小径、又は、その外周面のうち、ストライカ10が通過する部位を小径とする構成とし、吊り車(大吊り車)6bよりも小径とする構成を説明したがこれに限定されない。
【0081】
例えば、図6の変形例に係る吊り車機構2Aの構成を示す上面図に示すように、第1吊り車6は、ストライカ10を通過させる一方の吊り車6aとして、フレーム4の支持部4dに、互いに対向する片持ちの円盤状の車6dを一対(2つ)設ける構成であってもよい。即ち、これら片持ちの車6d,6d間に、ストライカ10が通過できる隙間を設けて配置する構成とすることで、一対の片持ちの車6d,6dの間にストライカ10を通過させることが可能となり、ストライカ10と吊り車6aとが干渉することがない。また、図6に示すように、他方の吊り車6bも、一方の吊り車6aと同様に片持ちの車6dを一対設ける構成としてもよい。
【0082】
また、上述した例では、フレーム4に設けられる係合部4cは、突起であり、ハウジング21に設けられる被係合部21cは、係合部4cである突起を係合可能な窪み又は開口である構成を説明したが、これに限定されない、例えば、係合部4cを窪み又は開口とし、被係合部21cを突起としてもよい。即ち、係合部4c及び被係合部21cは、互いに係合することで、フレーム4にハウジング21を固定可能であれば、他の形状であってもよい。また、係合部4c及び被係合部21cは、複数設けられていてもよい。
【0083】
さらに、上述した例では、フレーム4に設けられる第1吊り車6は、2つの小吊り車6aと1つの大吊り車6bを有する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、小吊り車6aは1つであっても、3つ以上であってもよい。即ち、第1吊り車6のうち、少なくとも、ストライカ10がラッチ22へと移動する際に通過する吊り車を、ストライカ10が通過可能な小吊り車6aとすればよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…可動装置、2、2A…吊り車機構、3…補助装置、4…フレーム、4a…側面部、4b…底面部、4c…係合部、4d…支持部、4e…挿通孔、4f…壁部、5…吊り車群、6…第1吊り車、6a…吊り車(小吊り車)、6b…吊り車(大吊り車)、6c…軸体、6d…車、7…第2吊り車、10…ストライカ(当受体)、11…取付部材、11a…ベース、11b…孔部、12…係合突起部、13…第1係合面、14…第2係合面、15…連続部、20…アシストユニット、21…ハウジング、21a…側壁、21c…被係合部、22…ラッチ(当接体)、23…付勢機構、24…制動機構、27…スリット、27a…主ガイド路、27b…待機路、27c…退避路、31…ラッチベース、31a…突起部、31b…溝、31c…支持片、32…カム部、32a…キャッチャ、32b…第1軸部、32c…被押圧部、32d…第2軸部、32e…被付勢部、32f…フック部、41…引張コイルバネ、50…ピストンダンパ、100…戸枠(支持体)、101…上枠、102…左枠、103…右枠、104…レール溝、105…レール、105a…下面、110…吊り戸(可動体)、112…取っ手、120…連結部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に設けられたレールに吊り下げ支持され、前記レールに沿って移動可能な可動体の可動装置において、
前記レール内に設けられた当受体と、
前記可動体の上部に固定され、前記レール内に収納されるフレームと、
前記フレームに複数設けられ、少なくともその一つが前記当受体を通過可能に形成されている吊り車と、
前記フレーム内であって、且つ、前記複数の吊り車間に固定される基体と、
前記基体内に前記可動体の移動方向に沿って移動可能に形成され、前記可動体がその移動終了位置に移動する場合に前記当受体と係合する当接体と、
前記基体及び前記当接体間に付勢可能に形成されるとともに、前記付勢による前記基体又は前記当接体の移動を規制し、前記当接体が前記当受体と係合することで、前記基体又は前記当接体の移動の規制を解除可能な付勢機構と、
を備えることを特徴とする可動体の可動装置。
【請求項2】
前記当受体を通過可能な前記吊り車は、その外周面の一部が、前記当受体を通過可能な外径に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可動体の可動装置。
【請求項3】
前記当受体を通過可能な前記吊り車は、前記当受体を通過可能な外径に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可動体の可動装置。
【請求項4】
前記当受体を通過可能な前記吊り車は、前記当受体を通過可能に離間して前記フレームに設けられた一対の車であることを特徴とする請求項1に記載の可動体の可動装置。
【請求項5】
前記フレームはその側面に係合部を有し、
前記基体は、その側面に設けられ、前記係合部と係合する被係合部を有し、
前記基体は、前記被係合部を前記係合部に係合させて前記フレームに固定されることを特徴とする請求項1に記載の可動体の可動装置。
【請求項6】
前記係合部及び前記被係合部は、その一方が窪み又は開口であり、その他方が、前記窪み又は開口に挿入することで係合される突起であることを特徴とする請求項5に記載の可動体の可動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225043(P2012−225043A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93252(P2011−93252)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)