説明

可動体送り装置

【目的】 送りねじ軸の固有振動数を有効に高める位置に来るように中間サポートの位置を設定又は制御し、送りねじ軸の振動を有効に低減できる可動体送り装置を提供する。
【構成】 案内レールに嵌合された直動軸受に支持され軸方向に移動自在とされた中間サポートフレームと、送りねじ軸にボールを介して螺合され中間サポートフレームに軸方向相対移動不能かつ回転自在に支持された中間サポートナットと、送りねじ軸と平行な軸線を有する補助送りねじと、補助送りねじに螺合され中間サポートフレームに固定された中間サポート送りナットと、送りねじ軸の回転に対応して中間サポートフレームを移動させる補助送りねじ駆動手段とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、送りねじ軸の支持間距離(スパン)が長い場合、送りねじ軸の危険速度が低い回転数域となることによる送りねじ軸の共振を回避するため、送りねじ軸の中間部を補助的に支持する送りねじ軸支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】送りねじ軸の回転数が送りねじ軸の固有振動数に近くなると共振が生じ危険である。この危険速度は送りねじ軸の支持スパンの2乗に反比例する。NC制御の平面研削盤などのようにテーブルストロークが長い場合には、テーブルを送る送りねじ軸が長くなり、送りねじ軸の支持スパンが長くなるので危険速度が低い回転域となる。送り速度の高速化に伴い送りねじ軸の回転数は高回転で使用されるので、危険速度領域で使用しなければならないことになる。このような場合はねじ軸の中間部を支持する中間サポートを設けて支持スパンが短くなるようにし、送りねじ軸の固有振動数を高くする手段が知られている。
【0003】従来この種の手段としては、図5に模式的に示すように、送りねじ軸2′の両端部を支える軸受SA、SBの間に、送り方向に移動自在で2個の送りねじ軸支持部A、Bを持つ中間サポートSを設け、送りねじ軸の回転によって移動するナット3′を前記2個の送りねじ支持部A、Bの間に位置せしめ、ナット3′の移動を妨げないよう中間サポートSがナット3′に係合する場合は中間サポートの一方の送りねじ軸支持部がナット3′に押され中間サポートSがナット3′と共に移動するようになっているものである(例えば特開昭58-109242号)。
【0004】また、両端が回転自在に支持された送りねじ軸に螺合されたナットを挟み中間サポートがねじ軸方向に移動可能に配設された送りねじ軸支持装置において、中間サポートをすべり軸受とすることによってねじ軸を支持し、中間サポートをリニアガイド装置で支承すると共に、中間サポートと基台とナット間に動滑車を有する滑車装置を併設する構成とすることによって中間サポートがナットに連動し、ねじ軸の支持スパンがナットの移動に伴い順次短縮されるようにしたものが知られている(例えば特開平2-66359号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来例の特開昭58-109242号公報に示される技術にあっては図5に示されているように、軸受SA、SB間(距離2L)に介挿された中間サポートSは、その支持部A、B(距離L)の間に配された、ナット3′が支持部A、Bいずれにか当接してから移動するようになっているので、ナット3′が一方の端部まで移動した状態の図5(a)の状態からナット3′が左方に移動する場合即ちナット3′が支持部A、Bの中間位置にある間は、支持スパンA〜SAが軸受SA、SB間距離2Lと中間サポートの支持部A、B間距離Lとの差のLにより定まってしまいそれ以上の短縮はできないため危険速度をあまり小さくできないという問題点があり、さらに、中間サポートSは一方の中間サポート支持部がナット3′に当接して動かされるものであるから、ナット3′が中間サポートSに当接するときテーブルの質量に中間サポートSの質量が急激に加わりテーブルの高速移動が妨げられ移動速度が変動するという問題があった。
【0006】また、特開平2-66359号公報に示される技術にあっては次のような問題点がある。
(1) 中間サポートはテーブルの案内とは別の1本のリニアガイドだけによって案内され(同公報第3頁右上欄第2行乃至第15行)、しかもスライダの軸方向の寸法がスライダからねじ軸支持部までの寸法に比較して短い形状であるので中間サポートが倒れやすく中間サポートの移動性が悪い。
(2) 中間サポートのねじ軸の支持がすべり軸受とされておりねじ軸支持部にはわずかな隙間が有るためねじ軸の振動を十分におさえることが出来ない。
(3) 中間サポートとテーブルの案内が別の部材による案内である為夫々の案内レールの平行度を精密に出すことが困難であり平行度を精密にできない為ねじ軸に無理な力が加わりやすい。
(4) 中間サポートとナットとの間をベルトにより係合したものである為中間サポートとナットとの相対位置関係がベルトのスリップによりずれやすくねじ軸の所定位置関係を精密に維持出来ない。
【0007】そこで本発明はこれらの問題点を解決し、制振作用に優れたねじ軸用中間サポート装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明にあっては基台に固定された案内レールに支持され送りねじ軸により軸方向に移動自在とされた可動体を有する可動体送り装置において、前記案内レールに嵌合された直動軸受に支持され軸方向に移動自在とされた中間サポートフレームと、前記送りねじ軸にボールを介して螺合され前記中間サポートフレームに軸方向相対移動不能かつ回転自在に支持された中間サポートナットと、前記送りねじ軸と平行な軸線を有し前記基台に支持された補助送りねじと、該補助送りねじに螺合され前記中間サポートフレームに固定された中間サポート送りナットと、前記送りねじ軸の回転に対応して前記中間サポートフレームを移動させる補助送りねじ駆動手段とを備えた構成としたものである。
【0009】
【作用】中間サポートナットは送りねじ軸にボールを介して螺合され、そのナットはころがり軸受を介して中間サポートフレームに支持され、このフレームはテーブル案内用と同じ2本の案内レールに嵌合された直動軸受の2つのスライダに支持されている。その為中間サポートフレームがテーブル案内用とは別の案内レールに嵌合された直動軸受のスライダに支持されているものと比べて送りねじ軸と中間サポートの平行度を精密化することが出来るので中間サポートの安定性が良く移動がスムーズである。また、中間サポートナットと送りねじ軸及び中間サポートナットを支持するころがり軸受及び中間サポート支持用スライダに予圧を付与することによって送りねじ軸と中間サポートフレームの支持のガタを無くすことが出来る。さらに、中間サポートは補助送りねじ駆動手段により移動されるのでテーブル用ねじ軸の回転に対応させて中間サポートを所望の位置に移動できる。また、中間サポートの移動量は送りねじ軸の回転には影響されず補助送りねじの回転のみによって独立に移動量が決められる。
【0010】
【実施例】縦長平板状で両側に案内レール取付部材35を設けた基台7の案内レール取付部材には案内レール6が互いに平行に固定されている。案内レール6にはテーブル用スライダ8が軸方向移動自在に嵌合されこのテーブル用スライダ8の上方には可動体であるテーブル10がテーブル取付部材28を介して固定され、テーブルは軸方向に移動自在とされている。
【0011】送りねじ軸2は案内レール6と平行に配され、基台7に固定されたサポートユニット1により両端を回転自在に支持され送りねじ軸2の一端はモータブラケット31を介して基台7に固定された駆動モータ23の出力軸にカップリング22を介して固定され、駆動モータ23を駆動することによって送りねじ軸2に回転を与えられるようにされている。この送りねじ軸2にはテーブル用ナット3が螺合され、このテーブル用ナット3はテーブル10の下面に固定されたナットハウジング25に嵌合され固定されている。
【0012】第1の中間サポートフレーム13は駆動モータ23とテーブル用ナット3の中間部に配され、第2の中間サポートフレーム14はテーブル用ナット3と駆動モータ23と反対側のサポートユニット1の中間部に配されている。第1及び第2の中間サポートフレーム13、14は案内レール6、6に嵌合された直動軸受である中間サポート用スライダ9、9に両端をボルトB3により固定され、テーブルの移動方向と同じ方向に移動可能とされている。この第1及び第2の中間サポートフレーム13、14の移動はテーブル10と同じ案内レール6、6に案内されるものであるからテーブルとの平行度が確保される。第1及び第2の中間サポートフレーム13、14には送りねじ軸2と同芯の穴が形成されており、この穴にころがり軸受11を介して第1の中間サポートフレーム13には第1の中間サポートナット4が回転自在に支持され、第2の中間サポートフレーム14には第2の中間サポートナット5が回転自在に支持されている。この第1及び第2の中間サポートナット4、5は送りねじ軸2のねじ軸にボールを介して螺合されている。
【0013】第1及び第2の中間サポートナット4、5の外周面にはころがり軸受11が嵌合されブラケット12を介してボルトB1により固定されている。ころがり軸受11の外輪は中間サポートフレーム13、14に嵌合され、プレート34を介してボルトB2によって固定されている。第1の中間サポートフレーム13及び第2の中間サポートフレーム14の夫々の長手方向の両端は中間サポート用スライダ9にボルトB3によって固定され、第1の中間サポートフレーム13及び第2の中間サポートフレーム14は中間サポート連結部材15によって軸方向に所定間隔を保って連結されている。
【0014】送りねじ軸2と一方の案内レール6との間に送りねじ軸2と同一のねじれ方向で同一ピッチのボールねじ溝を有する補助送りねじ16が送りねじ軸2及び一方の案内レール6とに平行に配され両端をサポートユニット17と支持軸受18により回転自在に軸支されている。補助送りねじ16には中間サポート送りナット24がボール(不図示)を介して螺合され、その中間サポート送りナット24の外周面は第1の中間サポートフレーム13にボルトB4によって固定されている。
【0015】図1に於いてテーブル用ナット3の左側に位置する第1の中間サポートナット4、ころがり軸受11、第1の中間サポートフレーム13、中間サポート送りナット24、中間サポート用スライダ9により第1の中間サポート26が構成され、テーブル用ナット3の右側に位置する第2の中間サポートナット5、ころがり軸受11、第2の中間サポートフレーム14、中間サポート用スライダ9により第2の中間サポート27が構成される。
【0016】第1及び第2の中間サポート26、27の位置を図6に於いて説明する。送りねじ軸2を軸支するサポートユニット1、1を夫々SA、SBとし、SA、SB間の距離Lを1/4づつに区切る点をP0、P1、P2、P3、P4とする。第1の中間サポートナット4と第2の中間サポートナット5の位置はテーブル用ナット3がP2の位置に来たときに第1の中間サポートナット4がP3に、第2の中間サポートナット5がP1に位置するように設定されている。
【0017】送りねじ軸2の軸端にはタイミングプーリ19が固定され補助送りねじ16の軸端にはタイミングプーリ20が固定され、このタイミングプーリ19,20にはタイミングベルト21が掛け渡され送りねじ軸2の回転が補助送りねじ16に伝達されるようになっている。タイミングプーリ20の歯数はタイミングプーリ19の歯数の2倍とされている。
【0018】駆動モータ23に駆動されて送りねじ軸2が例えばモータを後部側から見て時計方向となる方向に回転すると、テーブル用ナット3はモータに近づく方向に移動し、このナット3に固定されたテーブル10がリニアガイド装置に案内され、ねじ軸の回転に応じて軸方向に滑らかに移動する。このとき、第1及び第2の中間サポート26、27が設けられ、支点間距離(支持スパン)が短かくされているから、危険速度がねじ軸の使用回転数より大幅にアップされることになり、ねじ軸の共振がさけられる。
【0019】この実施例では更にテーブル用ナット3と第1の中間サポートフレーム13がタイミングプーリ19、20とタイミングベルト21を介して連動され第2の中間サポートフレーム14は第1の中間サポートフレーム13と中間サポート連結部材15を介して連結されているので第1と第2の中間サポートフレームは同じ間隔を保って連動するようにされている。中間サポートの作動について図7により説明する。両端のサポートユニット1、1間の距離Lを1/4づつに区切る点を夫々P0、P1、P2、P3、P4とする。テーブル用ナット3と第2の中間サポート27とが共に送りねじ軸2の右端P0点にあるとする(図7(a))。このとき支持スパンは、送りねじ軸2の左端(P4点)と第1の中間サポート26(P2点)間において最長でP2〜P4=L/2である。この状態から駆動モータ23によって送りねじ軸2を回転しテーブル用ナット3を左方に移動し、これに伴いテーブル10が左方に移動するとタイミングプーリ19、20とタイミングベルト21によって送りねじ軸2の回転数が1/2に減少されて補助送りねじ16に伝達され送りねじ軸2と補助送りねじ16とはねじピッチが同一であるからテーブル用ナット3の移動量に対して1/2の割合で第1の中間サポート26及び第2の中間サポート27も移動する。
【0020】第1の中間サポートナット4と第2の中間サポートナット5の外周部にはころがり軸受11が嵌合されており、送りねじ軸2が回転すると第1の中間サポートナット4及び第2のサポートナット5は送りねじ軸2と同一回転方向で回転するので第1及び第2の中間サポートナット4、5は送りねじ軸2に対して移動せず、したがって第1及び第2の中間サポート26、27の移動はタイミングプーリ19、20及びタイミングベルト21を介して回転駆動される補助送りねじ16の回転のみによっておこなわれる。したがって、テーブル用ナット3が右端からL/4移動してP1点に達したとき、左端のサポートユニットと第1の中間サポート26間の支持スパンaはa=3/8Lになり、従来の場合におけるL/2より短縮されている(図7(b))。更にテーブル用ナット3がL/4左方に移動してP2点に達したときは、第1の中間サポート26はL/8左方に進行しており、P3点の位置になり、支持スパンaはa=L/4に縮小している(図7(c)).これから更にテーブル用ナット3がL/4左方に移動してP3点に達したときは、第1の中間サポート26も更にL/8左方に進行しており、P3〜P4点の中間位置になり、支持スパンaはa=L/8に縮小する(図7(d))。また更にテーブル用ナット3がL/4左方に移動して左端に移動して左端のP4点に達したときは、第1の中間サポート26も更にL/8左方に進行しており、左端P4点の位置になる。このとき支持スパンaはa=0になる。一方、右側の第2の中間サポート27はP2点になり、右端P0点との間の支持スパンdは最長のL/2となる(図7(e))。
【0021】かくして、左方の支持スパンaは、テーブル用ナット3の左方移動と共に順次縮小していき、左端において零となり、反対に右方の支持スパンdは、テーブル用ナット13の左方移動と共に順次拡大していき、最大L/2となる。テーブル用ナット3が送りねじ軸2の左端部に至り左側の第1の中間サポート26に近接すると、図外のリミットスイッチが作動して駆動モータ23が停止され、送りねじ軸2の回転が停止すると同時に、テーブル10と第1及び第2の中間サポート26、27も停止し中間サポートとサポートユニットが衝突しないように安全がはかられている。
【0022】次に、駆動モータ23を反対方向に回転させる(このとき上記のリミットスイッチは働かないようにされている)と、テーブル用ナット3はテーブル10と共に図1で駆動モータから遠ざかる方向に移動をはじめる(図7(e))。テーブル用ナット3が左端から右方に移動し、図7の(d),(c),(b),(a),のように前と逆方向の作動となる。右方のサポートユニット1と第2の中間サポートユニット27との支持スパンdは連続的に縮小されていく。
【0023】テーブル用ナット3、第1の中間サポートナット4及び第2の中間サポートナット5は送りねじ軸2とボールを介して螺合されボールねじを構成しておりまた直動案内はリニアガイド装置を用いているから、テーブル10及中間サポート26、27の送りは、高速でも極めて円滑で追従性が良く、且つ送りねじ軸2の軸線に対する直角方向の振れが抑制されテーブルの動作が高精度である。このボールねじは送りねじ軸と夫々のナットが送りねじ軸の外面にボールねじを形成し、夫々のナットの内面に対向させて設けられたボール転動溝を転動する多数のボールを介して予圧を付加された状態で組合せてあり、リニアガイド装置にあっては、案内レール6とテーブル用スライダ8とが、両者の側面に対向させて設けられたボール転動溝内を転動する多数の予圧されたボールを介して組合せてあり、夫々のボールナット3、4、5及びテーブル用スライダ8の直線移動性が高剛性、高精度であり、しかも非常に軽く安定しているためである。また、第1の中間サポート26及び第2の中間サポート27とテーブル10の直進移動の案内は同一の案内レール6、6によるリニアガイド装置による為夫々の移動の際の平行度が精密に確保でき送りねじ軸2に無理な力が加わらない。
【0024】テーブル用ナット3が距離Lを移動し、第1及び第2の中間サポート26、27がこれに連動して、やがて送りねじ軸2の右端部に至ると、左端部におけると同様に図外のリミットスイッチが作動して駆動モータ23が停止され、送りねじ軸2の回転が停止すると同時に、テーブル10と第1及び第2の中間サポート26、27も停止するようにされている。
【0025】この第1の実施例によれば、テーブル用ナット3の位置が送りねじ軸2の両端部にあるときを除き、第1及び第2の中間サポート26、27による送りねじ軸2の支持スパンは常に従来より短くなり、したがって軸危険速度が安全側に高められる。また、中間サポート連結部材15により互いに連結された第1及び第2の中間サポート26、27の移動はタイミングプーリ19、20及びタイミングベルト21を介して行われる為本出願人の先の出願(特開平2-66359号)に開示した滑車及び平ベルトを介して中間サポートを移動させる構成のようにベルトのすべりによってテーブルと中間サポートとの相対位置関係がずれてしまうということが無い。
【0026】図3は第2の実施例を示している。第2の実施例は第1の実施例に於いて送りねじ軸2の駆動モータ23と反対側の軸端をサポートユニット1の代りにブラケットに嵌合させた支持軸受130により支持した場合で第1の中間サポート26は設けず第2の中間サポート27のみとし、この第2の中間サポート27を第1の実施例と同様にボールねじにより移動可能としたものである。補助送りねじ116のピッチは送りねじ軸102のピッチと等しくされており、補助送りねじ116がタイミングプーリ119、120及びタイミングベルト121を介して送りねじ軸102の回転数の1/2で回転されるという点も第1の実施例と同様である。その結果、送りねじ軸102が駆動モータ23によって回転駆動されるとテーブル用ナット3が移動し第2の中間サポート127はテーブル用ナット3に連動してテーブル用ナット3の移動量の1/2同じ方向に移動し、常に第2の中間サポート127が送りねじ軸102をテーブル用ナット3と支持軸受130とのほぼ中央で支持されるようになっており送りねじ軸102の危険速度が高められるようになっている。
【0027】第2の実施例の場合、駆動モータ23側のサポートユニット1とテーブル用ナット3との間に中間サポートが設けられていないがこの例は補助送りねじ16が駆動モータ23に近い側に設けるスペースがとれない場合のものである。この例においてサポートユニット1はベアリングのアンギュラコンタクト構造によって送りねじ軸102を固定し、テーブル用ナットと送りねじ軸102とはボールを介して互いに螺合されしかも予圧が与えられているので送りねじ軸はテーブル用ナット3によってガタがなくサポートユニット1とテーブル用ナット3との送りねじ軸102の固有振動数は高くなり振動しにくくなっているので中間サポートを片側に設けたものでも十分に使用できる。
【0028】図4は第3の実施例を表している。送りねじ軸202は長尺のボールねじ軸で両端を固定ブロック40、40によって固定されている。送りねじ軸202にはテーブル用ナット203がボールを介して螺合されその前後に第1及び第2の中間サポートナット204、205がボールを介して螺合されている。テーブル用ナット203のフランジ部には送りねじ軸202を挿通するように設けられたテーブルを駆動するテーブル駆動モータ(中空モータ)41が取付部材42を介して固定されている。
【0029】送りねじ軸202を挟んで送りねじ軸202と平行に案内レール206、206が配され基台207に固定されている。夫々の案内レール206、206には2個のテーブル用スライダ208が夫々ボールを介して嵌合され同一案内レール上のテーブル用スライダ208、208の前後には中間サポート用スライダ209、209が同様にボールを介して案内レール206に嵌合されている。
【0030】4個のテーブル用スライダ208にはテーブル210が載置されテーブル210とテーブル駆動モータ41とはブラケット43を介して固定されている。第1及び第2の中間サポートナット204、205の外周面にはころがり軸受211が嵌合されブラケット212を介してボルトB5により固定されている。そのころがり軸受211は中間サポートフレーム29に嵌合しプレート234によって抜け止めがされている。中間サポートフレーム29、29は夫々長手方向の両端を中間サポート用スライダ209、209に固定され、第1の中間サポート226及び第2の中間サポート227を構成している。第1及び第2の中間サポート226、227は互いに連結板44を介してボルトB6によってねじ止め固定されている。連結板44の近くに案内レール206と平行に補助送りねじ216が配され両端を支持軸受218及びサポートユニット217によって回転自在に軸支されている。補助送りねじ216には中間サポート送りナット224がボールを介して螺合され補助送りねじ216のサポートユニット217側の端面はカップリング222を介して中間サポート駆動用モータ45の出力軸と連結されている。中間サポート送りナット224は連結板44の中央付近に於いて連結板と固定されている。
【0031】次に作用を説明する。テーブル駆動モータ41の出力軸を所定方向に回転させるとテーブル駆動モータ41の出力軸と取付部材42を介して固定されたテーブル用ナット203も回転する。送りねじ軸202は両端を固定ブロック40によって固定されているのでテーブル用ナット203が回転することによってテーブル用ナット203が送りねじ軸202に沿って移動し、したがってテーブル210もテーブル用スライダ208に案内されながら移動する。次に中間サポート駆動用モータ45を回転駆動させることによって補助送りねじ216を回転させると中間サポート送りナット224が補助送りねじ216に沿って移動する。このとき、中間サポート送りナット224には第1及び第2の中間サポート226、227を連結する連結板44が固定されているので中間サポート送りナット224の移動と連動して移動する。
【0032】第3の実施例に於いては第1及び第2の実施例のように補助送りねじ216は送りねじ軸202の回転力を伝達され、所定の回転数に減速されて回転するようにはなっておらずテーブル駆動モータ41の回転によるテーブル用ナット203の移動、すなわちテーブル210の移動に応じて中間サポート駆動用モータ45の回転数を制御することによって連結板44により互いに連結された第1及び第2の中間サポート226、227の移動位置を決める。テーブル用ナット203と第1及び第2の中間サポート226、227との相対位置関係の制御は第1の実施例と同様にテーブル用ナット203の位置にかかわらずテーブル用ナット203と固定ブロック40、40との間の2ヵ所の送りねじ軸の夫々のほぼ中央部に常に第1及び第2の中間サポート226、227が移動するようにされている。したがってテーブル用ナット203に対して第1の実施例と同様に第1及び第2の中間サポートナット204、205の位置を決めることが出来、送りねじ軸202の支持スパンは常に従来より短くなることにより軸危険速度が安全側に高められ送りねじ軸202が振動しにくくなるのでテーブル用ナット203の高速送りが可能となった。
【0033】なお、第1及び第2の実施例において送りねじ軸と補助送りねじのボールねじ溝のピッチは等しくした場合について述べたが必ずしも等しくする必要はない。但し、その場合ピッチの違いを考慮して2つのタイミングプーリの歯数を決めればよい。また第1乃至第3の実施例において中間サポートの位置は送りねじ軸の両端支持部とテーブル用ナットとの間の夫々の中間を支持するようにされているが中間サポートの位置は中間付近に位置するようにさせればよい。さらにまた、第1乃至第3の実施例において、テーブル用ナット及び中間サポート用ナットはナットを1個で使用するシングルナットを用いてもよいしダブルナットを用いてもよいことは勿論である。
【0034】
【発明の効果】中間サポートナットは送りねじ軸にボールを介して螺合されそのナットの外周面にころがり軸受が嵌合されそのころがり軸受を嵌合したフレームはテーブルを案内するのと同じ案内レールに支承されたスライダに2ヵ所を支持されている。その為フレームが1個のスライダに固定される場合と比べて中間サポートの安定性が良く、移動が送りねじ軸と案内レールの平行度を精密に出すことが出来、テーブル及び中間サポートが送りねじ軸方向に移動する際送りねじ軸にラジアル方向に加わる力は極めて小さくまた中間サポート用ボールねじ部ところがり軸受及びフレーム固定部のリニアガイドに予圧を付加することによって中間サポートのガタを無くし送りねじ軸の振動を有効に抑止することが出来、中間サポートはボールねじのねじ軸の回転に応じて移動されその中間サポートナットは予圧を付加されたボールを介して螺合され、予圧構造とされた中間サポート送りナットによって駆動されるので、送りねじ軸の回転に対応した中間サポートナットの移動のずれが無く、精密に中間サポートの位置を設定又は制御出来、また中間サポートをテーブルに固定されたテーブル用スライダと衝突させずに移動させることが出来、中間サポートは送りねじ軸に影響されず又中間サポートナットの移動によって送りねじ軸の回転に影響を与えることなしに補助送りねじの回転によってのみ移動量がきめられる。
【0035】その結果、中間サポートがテーブルに対応して連動する場合と異なり中間サポートが送りねじ軸の固有振動数を有効に高める位置に来るように中間サポートの位置を設定又は制御することができ、送りねじ軸の振動を有効に低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例を示す平面図
【図2】第1の実施例を示す正面図
【図3】第2の実施例を示す平面図
【図4】第3の実施例を示す平面図
【図5】(a)〜(e)は従来例におけるナットと中間サポートとの作動説明図
【図6】第1の実施例における中間サポートの位置を示す図
【図7】(a)〜(e)は第1の実施例におけるナットと中間サポートとの作動説明図
【符号の説明】
2,102.202 送りねじ軸
4,204 第1の中間サポートナット
5,205 第2の中間サポートナット
6,206 案内レール
7,207 基台
9,109,209 中間サポート用スライダ(直動軸受)
10,210 テーブル
13,113 第1の中間サポートフレーム
14, 第2の中間サポートフレーム
16,116,216 補助送りねじ
24,124,224 中間サポート送りナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基台に固定された案内レールに支持され送りねじ軸により軸方向に移動自在とされた可動体を有する可動体送り装置において、前記案内レールに嵌合された直動軸受に支持され軸方向に移動自在とされた中間サポートフレームと、前記送りねじ軸にボールを介して螺合され前記中間サポートフレームに軸方向相対移動不能かつ回転自在に支持された中間サポートナットと、前記送りねじ軸と平行な軸線を有し前記基台に支持された補助送りねじと、該補助送りねじに螺合され前記中間サポートフレームに固定された中間サポート送りナットと、前記送りねじ軸の回転に対応して前記中間サポートフレームを移動させる補助送りねじ駆動手段とを備えたことを特徴とする可動体送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平6−129510
【公開日】平成6年(1994)5月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−300558
【出願日】平成4年(1992)10月14日
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)