可動型ケーブル防護管装置
【課題】ケーブル防護管を切断することなくケーブルの保護長さに応じた長さに容易に調整することができ、ケーブル防護管の軸方向の移動によるケーブルの損傷や切断を防止することが可能な可動型ケーブル用防護管装置を提供する。
【解決手段】ケーブル防護管21に、FTTHケーブルを管内に挿入するためのケーブルの軸方向に延びる開閉可能な開口部21aと、FTTHケーブルの軸方向に移動可能に重ね合わされた隣接するケーブル用防護管22をFTTHケーブルの軸方向の任意の位置に固定する固定手段21bとを設ける。
【解決手段】ケーブル防護管21に、FTTHケーブルを管内に挿入するためのケーブルの軸方向に延びる開閉可能な開口部21aと、FTTHケーブルの軸方向に移動可能に重ね合わされた隣接するケーブル用防護管22をFTTHケーブルの軸方向の任意の位置に固定する固定手段21bとを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信ケーブルなどを外力から防護するために用いられるケーブル防護管装置に関し、特に必要に応じてケーブル防護管の長さを容易に調整することが可能な可動型ケーブル防護管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信ケーブルは、樹木などとの干渉による損傷を防止するために合成樹脂からなるケーブル防護管により保護される場合がある。FTTH(Fiber To The Home)は、光ファイバを伝送路として一般個人宅へ直接引き込むアクセス系の光通信網の構成方式であり、これに用いられるFTTHケーブルはケーブルハンガーを介して電柱間の吊線に支持されている。ケーブル防護管は、開口部が閉塞可能なタイプのものが用いられており、開口部の閉塞によってケーブルは吊線およびケーブルハンガーとともに全周にわたって覆われるようになっている。従来においては、既製品のケーブル防護管は軸方向の長さが2mまたは3mの2種類と決まっており、必要とされるケーブル保護長さに応じてこれらを組合せて使用している。
【0003】
従来から通信ケーブルを保護する技術として、下記の特許文献1,2が知られている。特許文献1の保護カバーは、保護カバー本体を軸方向に連結するものであり、連結部が衝撃などによって外れない構成となっている。特許文献2の保護カバーは、強風などによって本体管の回動を防止する機能を有している。
【特許文献1】特開平10−64345号公報
【特許文献2】特開2000−299915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、FTTHケーブルを途中で分岐させ一般個人宅へ引き込む場合は、従来のケーブル防護管を用いることより下記の問題が存在した。すなわち、従来のケーブル防護管は軸方向の長さが2種類と決まっているので、引き込みケーブルの間隔が2mよりも狭い場合は、ケーブル防護管を保護長さに応じた長さに切断する必要があり、現場での作業が増え作業能率が低下するという問題がある。また、引き込みケーブルの間隔に対してケーブル防護管の軸方向の長さが短すぎると、ケーブル防護管が軸方向に移動してFTTHケーブルと干渉し、FTTHケーブルの損傷や切断を招くという問題があった。さらに、従来のケーブル防護管においては、ケーブルの分岐部をカバーできないという問題があった。この問題は、FTTHケーブルに限られず、他の種類の通信ケーブルや電力ケーブルを防護管によって防護する際にも生じる。
【0005】
そこでこの発明は、ケーブル防護管を切断することなくケーブルの保護長さに応じた長さに容易に調整することができ、ケーブル防護管の軸方向の移動によるケーブルの損傷や切断を防止することが可能な可動型ケーブル防護管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、ケーブルを管内に収納するケーブル防護管を前記ケーブルの軸方向に複数配設するケーブル用防護管装置であって、前記ケーブル防護管に、前記ケーブルを管内に挿入するための前記ケーブルの軸方向に延びる開閉可能な開口部と、前記ケーブルの軸方向に移動可能に重ね合わされた隣接するケーブル防護管を前記ケーブルの軸方向の任意の位置に固定する固定手段と、を設けたことを特徴とする可動型ケーブル防護管装置である。
【0007】
この発明によれば、重ね合わされた隣接する可動型ケーブル防護管装置はケーブルの軸方向の任意の位置に固定することが可能となり、重ね合わされたケーブル防護管の全長は所望の長さに調整される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可動型ケーブル防護管装置において、前記ケーブル防護管の固定手段は、前記開口部に沿って前記ケーブルの軸方向に延びるフランジから構成されており、該フランジは前記ケーブルの軸方向に所定の間隔で形成された複数の固定穴を有していることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の可動型ケーブル防護管装置において、前記ケーブル防護管の端部には、前記ケーブルの分岐部を防護するT字型ケーブル防護管が連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、重ね合わされたケーブル防護管のケーブル軸方向の長さを任意に調整することができるので、ケーブル防護管の長さを例えば引き込みケーブルの間隔に一致させることができる。これにより、引き込みケーブルの間におけるケーブル防護管の軸方向の動きを確実に防止することができ、ケーブル防護管との干渉によるケーブルの損傷や切断を防止することができる。また、従来のようにケーブル防護管を現場にて切断する必要がないので、ケーブル引き込み作業能率を高めことができる。さらに、重ね合わされたケーブル防護管を最小長さに収縮させて保管することにより、保管場所におけるケーブル防護管の保管スペースを縮小することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ケーブルの分岐部とケーブル防護管との直接接触を回避することができ、ケーブルの保護機能をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0013】
図1ないし図11は、この発明の実施の形態を示している。図1において、符号1は電柱間に渡された吊線を示しており、吊線1は引張り強度の高い鋼線などから構成されている。吊線1の外周には螺旋状のケーブルハンガー5が配設されており、このケーブルハンガー5は吊線1の延線方向に沿って延びている。この実施の形態におけるケーブルとしてのFTTHケーブル2は、光ファイバを伝送路として一般個人宅へ直接引き込むアクセス系の光通信網に使用されるものであり、複数の心線2a〜2nを有している。図1においては、FTTHケーブル2の複数の心線2a〜2nのうち、心線2a〜2cがケーブルハンガー5の内側を通るように配設されており、心線2a〜2cはケーブルハンガー5を介して吊線1に吊下げられている。さらに、FTTHケーブル2における心線2a〜2cのうち心線2bと心線2cは、途中でそれぞれ分岐されており、一般個人宅へ引き込まれている。
【0014】
図2および図3は、FTTHケーブル2における心線2cの一般個人宅への引き込み状態を示している。心線2cを家屋50に引き込む際は、図3に示すように吊線1に支持金具3が固定され、この支持金具3の先端部には引き留め具4が連結される。心線2cは、引張り強度の高い補強線2caを有しており、補強線2caの端部が引き留め具4に支持された状態で補強線2caとともに家屋50側に引き込まれている。家屋50の外壁部51には固定具6が取付けられており、家屋50内に引き込まれる心線2cの途中は固定具6によって固定されるようになっている。家屋50内に引き込まれた心線2cは、室内52に配置された通信用端末機器53に接続されている。
【0015】
つぎに、FTTHケーブル2を防護するためのFTTHケーブル防護管装置10について説明する。図1に示すように、吊線1およびケーブルハンガー5によって吊り下げられたFTTHケーブル2の分岐部は、複数のケーブル防護管からなるFTTHケーブル防護管装置10によって防護されている。この実施の形態においては、FTTHケーブル防護管装置10は、軸方向に伸縮可能な可動型ケーブル防護管装置20と、FTTHケーブル2の分岐に用いられるT字型ケーブル防護管30と、軸方向に所定の長さを有する固定型ケーブル防護管40とを有している。
【0016】
図4は、可動型ケーブル防護管装置20の詳細を示している。可動型ケーブル防護管装置20は、ケーブル防護管としての合成樹脂からなる外側防護管21および内側防護管22を有している。外側防護管21と内側防護管22は、FTTHケーブル2の軸方向に互いに移動可能となるように重ね合わされている。外側防護管21は、FTTHケーブル2の軸方向に延びる筒状に形成されており、FTTHケーブル2を管内に挿入するための開閉可能な開口部21aを有している。開口部21aは、FTTHケーブル2の軸方向に延びており、外側防護管21の全長にわたって形成されている。外側防護管21には、FTTHケーブル2の軸方向に移動可能に重ね合わされた隣接する内側防護管22をFTTHケーブル2の軸方向の任意の位置に固定するともに、開口部21aを閉塞させる固定手段としての一対のフランジ21bが形成されている。フランジ21bは、開口部21aに沿ってFTTHケーブル2の軸方向に延びており、フランジ21bはFTTHケーブル2の軸方向に所定の間隔で形成された多数の固定穴21cを有している。
【0017】
内側防護管22は、FTTHケーブル2の軸方向に延びる筒状に形成されており、外側防護管21の内側に配設されることから外径が外側防護管21よりも若干小に形成されている。内側防護管22は、FTTHケーブル2を管内に挿入するための開閉可能な開口部22aを有している。開口部22aは、FTTHケーブル2の軸方向に延びており、外側防護管22の全長にわたって形成されている。内側防護管22には、外側防護管21をFTTHケーブル2の軸方向の任意の位置に固定するともに、開口部22aを閉塞させる固定手段としての一対のフランジ22bが形成されている。フランジ22bは、開口部22aに沿ってFTTHケーブル2の軸方向に延びており、フランジ22bはFTTHケーブル2の軸方向に所定の間隔で形成された多数の固定穴22cを有している。
【0018】
このように、可動型ケーブル防護管装置20は、外側防護管21と内側防護管22とが重ね合わされた構成となっており、固定手段としての外側防護管21側のフランジ21bおよび内側防護管22側のフランジ22bは、開口部21a、22aを閉塞させる機能と、外側防護管21と内側防護管22をFTTHケーブル2の軸方向の任意の位置に固定する機能を有している。詳しくは、図4に示すように、外側防護管21と内側防護管22とが重ね合わされた状態では、フランジ21bの内側にフランジ22bが位置することになり、重なった外側防護管21の固定穴21cと内側防護管22の固定穴22cに連結用紐Hを通し、連結用紐Hによりフランジ21bとフランジ22bとを縛ることにより、外側防護管21と内側防護管22をFTTHケーブル2の軸方向の任意の位置に固定することが可能となる。また、上記の連結用紐Hによるフランジ21bとフランジ22bとの縛りにより、外側防護管21の開口部21aと内側防護管22の開口部22aは閉塞するようになっている。この実施の形態においては、上述したように、内側防護管22は外側防護管21よりも外径が若干小に形成されているが、外側防護管21と内側防護管22との軸方向の動きを連結用紐Hによって拘束することができれば、外側防護管21と内側防護管22は同径であってもよい。
【0019】
図8ないし図10は、可動型ケーブル防護管装置20と連結されるT字型ケーブル防護管30の詳細を示している。T字型ケーブル防護管30は、合成樹脂からなる半割り形の筒体31を有しており、筒体31は軸方向に延びる連結部Cを中心として上下方向に開閉可能となっている。筒体31における連結部Cの下側には、FTTHケーブル2の軸方向に延びる固定手段としてのフランジ31aが筒体31と一体成形されている。フランジ31aには、FTTHケーブル2の軸方向に所定の間隔で多数の固定穴31bが形成されている。筒体31の軸方向の中央部には、FTTHケーブル2の軸方向と直交する方向に延びる分岐管32が連結されている。分岐管32は、筒体31と一体成形されており、筒体31と同様に連結部Cを中心として上下方向に開閉可能となっている。分岐管32における連結部Cの下側には、FTTHケーブル2の軸方向と直交する方向に延びるフランジ32aが分岐管32と一体成形されている。フランジ32aには、FTTHケーブル2の軸方向と直交する方向に所定の間隔で多数の固定穴が形成されている。
【0020】
図5に示すように、筒体31は、隣接する可動型ケーブル防護管装置20の外側防護管21または内側防護管22と重ね合わせることが可能となっている。筒体31が外側防護管21または内側防護管22と重ね合わされた状態では、筒体31のフランジ31aに形成された多数の固定穴31bは、外側防護管21または内側防護管22の固定穴21c、22cと合致可能となっている。これにより、筒体31の固定穴31bに通される連結用紐Hを外側防護管21の固定穴21cまたは内側防護管22の固定穴22cに通すことにより、T字型ケーブル防護管30を外側防護管21または内側防護管22に連結することが可能となっている。
【0021】
筒体31の接合部には、接合手段31cが形成されている。接合手段31cは、図9および図10に示すように、接合板31d、31e、接合突起31f、接合穴31gから構成されている。接合板31dは、連結部Cを中心として筒体31の上側外周部に沿って延びる板状部材であり、筒体31と一体成形されている。同様に、接合板31eは、連結部Cを中心として筒体31の下側外周部に沿って延びる板状部材であり、筒体31と一体成形されている。接合板31dと接合板31eは対向可能となっており、接合板31dに形成された棒状の接合突起31fと接合板31eに形成された接合穴31gとが嵌合することにより、接合板31dと接合板31eとの接合が行われるようになっている。
【0022】
図6は、固定型ケーブル防護管40の詳細を示している。固定型ケーブル防護管40は、合成樹脂からなりFTTHケーブル2の軸方向に延びる筒状に形成されている。固定型ケーブル防護管40は、軸方向に一定の長さを有しており、たとえば従来のケーブル用防護管と同様に軸方向の長さが2mまたは3mに設定されている。固定型ケーブル防護管40は、FTTHケーブル2を管内に挿入するための開閉可能な開口部41aを有している。開口部41aは、FTTHケーブル2の軸方向に延びており、固定型ケーブル防護管40の全長にわたって形成されている。固定型ケーブル防護管40には、FTTHケーブル2の軸方向に移動可能に重ね合わされた隣接する可動型ケーブル防護管装置20における内側防護管22と連結するための一対のフランジ41bが形成されている。フランジ41bは、開口部41aに沿ってFTTHケーブル2の軸方向に延びており、フランジ41bにはFTTHケーブル2の軸方向に所定の間隔で形成された多数の固定穴41cが形成されている。固定型ケーブル防護管40が内側防護管22と重ね合わされた状態では、固定型ケーブル防護管40のフランジ41bに形成された多数の固定穴41cは、内側防護管22の固定穴22cと合致可能となっている。これにより、固定穴22cに通された連結用紐Hをフランジ41bの固定穴41cに通すことによって、固定型ケーブル防護管40は内側防護管22と連結することが可能となっている。
【0023】
つぎに、この実施の形態に係るFTTHケーブル防護管装置10を用いたFTTHケーブル2の引き込み作業手順およびFTTHケーブル防護管装置10の作用について説明する。
【0024】
FTTHケーブル2は、上述したように、光ファイバを伝送路として一般個人宅へ直接引き込むアクセス系の光通信網に使用されるものであり、図2に示すように、FTTHケーブル2における心線2cが一般個人の家屋50に引き込まれている。また、FTTHケーブル2の心線2bも図示しない別の家屋に引き込まれている。FTTHケーブル2の心線2cを家屋50に引き込む際は、図3に示すように、電柱間の吊線1に支持金具3を固定し、この支持金具3の先端部に引き留め具4連結する。心線2cは、引張り強度の高い補強線2caを有しているので、補強線2caの端部を引き留め具4に支持させた状態で心線2cを補強線2caとともに家屋50側に引き込み、補強線2caのみを家屋50の外壁部51に取付けられた固定具6に固定する。その後、外壁51を通して心線2cを家屋50内に引き込み、心線2cの通信用端末機器53への接続を行う。同様に、FTTHケーブル2の心線2bの別の家屋への引き込みも上記作業に準じて行う。
【0025】
心線2bおよび心線2cの引き込み作業が終了すると、FTTHケーブル2の分岐部を保護するためにFTTHケーブル防護管装置10が取付けられる。まず、FTTHケーブル2から分岐される心線2bおよび心線2cを支持するための支持金具3および引き留め具4の外周には、T字型ケーブル防護管30が取付けられる。T字型ケーブル防護管30は、筒体31が連結部Cを中心として上下方向に開閉可能となっているので、心線2bおよび心線2cを上下方向から筒体31で覆うことが可能となる。すなわち、心線2bおよび心線2cを筒体31で覆った状態で、接合板31dに形成された棒状の接合突起31fと接合板31eに形成された接合穴31gとを嵌合させることにより、接合板31dと接合板31eを密着させることができ、FTTHケーブル2から分岐された心線2bおよび心線2cの分岐部をT字型ケーブル防護管30で覆うことができる。T字型ケーブル防護管30は、FTTHケーブル2の軸方向と直交する方向に延びる分岐管32を有しているので、家屋50側に延びる心線2cおよび別の家屋に延びる心線2bの分岐部は、それぞれ分岐管32によって確実に保護される。
【0026】
図1に示すように、FTTHケーブル2の分岐された心線2bと心線2cとの間隔は、家屋50の位置関係などの理由から作業場所毎に異なることがあり、心線2bと心線2cを覆うT字型ケーブル防護管30の軸方向端部間の距離L1も場所毎に異なることになる。ここで、T字型ケーブル防護管30の間に位置する可動型ケーブル防護管装置20は、外側防護管21と内側防護管22とがFTTHケーブル2の軸方向に互いに移動可能となるように重ね合わされていることから、可動型ケーブル防護管装置20の軸方向の長さを、T字型ケーブル防護管30の軸方向端部間の距離L1に合わせて調整することができる。これにより、可動型ケーブル防護管装置20の軸方向両端部はT字型ケーブル防護管30の軸方向端部と密着することになり、可動型ケーブル防護管装置20の軸方向の動きを防止することができる。また、心線2bと心線2cの分岐部を完全に覆うことが可能となるので、外力から確実にFTTHケーブル2を保護することができる。さらに、従来のようにケーブル用防護管を現場で切断して軸方向の長さを合わせる必要がなくなるので、現場での作業能率を高めることができる。可動型ケーブル防護管装置20の保管については、軸方向の長さを最小長さに収縮させて保管することができるので、従来に比べて保管スペースを縮小することができる。
【0027】
このように、この実施の形態においては、可動型ケーブル防護管装置20は軸方向に伸縮可能なことから、図1の右側に配置される一方の可動型ケーブル防護管装置20の軸方向の長さL2を調整することにより、FTTHケーブル2の心線2aを防護する範囲を自由に設定することが可能となる。同様に、図1の左側に配置される他方の可動型ケーブル防護管装置20の軸方向の長さL3を調整することにより、FTTHケーブル2の心線2a、2b、2cを防護する範囲を自由に設定することが可能となる。また、図1に示す各防護管の組み合わせだけでなく、図5ないし図7に示すように、可動型ケーブル防護管装置20と、T字型ケーブル防護管30と、固定型ケーブル防護管40を任意に組み合わせることにより、FTTHケーブル防護管装置10の軸方向の長さ自在に調整することができ、FTTHケーブル2を最適な長さをもって防護することが可能となる。
【0028】
この実施の形態におけるFTTHケーブル防護管装置10は、FTTHケーブル2の分岐以外にも使用可能であり、図11に示すように、T字型ケーブル防護管30を端部に配置することにより、電柱間におけるFTTHケーブル2の90度のルート変更箇所にも適用することができる。したがって、FTTHケーブル2の延線方向と直交する別のケーブルハンガー5´に沿って延びるFTTHケーブル2の保護も容易となる。
【0029】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、ケーブル用防護管装置10によって防護されるケーブルはFTTHケーブル2に限られず、他の種類の通信用ケーブルや電力ケーブルであってもよい。また、連結用紐Hを使用してケーブル用防護管をケーブルの軸方向の任意の位置に固定するようにしているが、連結用紐Hの代用として樹脂製のネジや固定ピンなどを採用する構成としてもよい。さらに、図6において外側防護管21と内側防護管22を共に軸方向にまっすぐ延びる直管としているが、いずれか一方をケーブルの分岐に用いるT字管とする構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係わる可動型ケーブル防護管装置を用いたFTTHケーブル用防護管装置の全体斜視図である。
【図2】図1の可動型ケーブル防護管装置を用いたFTTHケーブルの家屋への引き込み状態を示す概要図である。
【図3】図1におけるT字型ケーブル防護管近傍の拡大斜視図である。
【図4】図1における可動型ケーブル防護管装置の斜視図であって、(a)は伸長時の可動型ケーブル防護管装置を示す斜視図であり、(b)は収縮時の可動型ケーブル防護管装置示す斜視図である。
【図5】図4の可動型ケーブル防護管装置とT字型ケーブル防護管との接続状態を示す斜視図である。
【図6】図1のFTTHケーブル防護管装置における各防護管の組み合わせの変形例を示す斜視図である。
【図7】図1のFTTHケーブル防護管装置における各防護管の組み合わせの別の変形例を示す斜視図である。
【図8】図1のT字型ケーブル防護管の分解斜視図である。
【図9】図8のA部拡大斜視図である。
【図10】図8のB部拡大斜視図である。
【図11】図1におけるT字型ケーブル防護管の別の使用法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 吊線
2 FTTHケーブル(ケーブル)
2b 心線
2c 心線
3 支持金具
4 引き留め具
5 ケーブルハンガー
10 FTTHケーブル防護管装置
20 可動型ケーブル防護管装置
21 外側防護管(ケーブル用防護管)
21a 開口部
21b フランジ(固定手段)
22 内側防護管(ケーブル用防護管)
22a 開口部
22b フランジ(固定手段)
30 T字型ケーブル防護管
31f 接合突起
31g 接合穴
40 固定型ケーブル防護管
H 連結用紐
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信ケーブルなどを外力から防護するために用いられるケーブル防護管装置に関し、特に必要に応じてケーブル防護管の長さを容易に調整することが可能な可動型ケーブル防護管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信ケーブルは、樹木などとの干渉による損傷を防止するために合成樹脂からなるケーブル防護管により保護される場合がある。FTTH(Fiber To The Home)は、光ファイバを伝送路として一般個人宅へ直接引き込むアクセス系の光通信網の構成方式であり、これに用いられるFTTHケーブルはケーブルハンガーを介して電柱間の吊線に支持されている。ケーブル防護管は、開口部が閉塞可能なタイプのものが用いられており、開口部の閉塞によってケーブルは吊線およびケーブルハンガーとともに全周にわたって覆われるようになっている。従来においては、既製品のケーブル防護管は軸方向の長さが2mまたは3mの2種類と決まっており、必要とされるケーブル保護長さに応じてこれらを組合せて使用している。
【0003】
従来から通信ケーブルを保護する技術として、下記の特許文献1,2が知られている。特許文献1の保護カバーは、保護カバー本体を軸方向に連結するものであり、連結部が衝撃などによって外れない構成となっている。特許文献2の保護カバーは、強風などによって本体管の回動を防止する機能を有している。
【特許文献1】特開平10−64345号公報
【特許文献2】特開2000−299915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、FTTHケーブルを途中で分岐させ一般個人宅へ引き込む場合は、従来のケーブル防護管を用いることより下記の問題が存在した。すなわち、従来のケーブル防護管は軸方向の長さが2種類と決まっているので、引き込みケーブルの間隔が2mよりも狭い場合は、ケーブル防護管を保護長さに応じた長さに切断する必要があり、現場での作業が増え作業能率が低下するという問題がある。また、引き込みケーブルの間隔に対してケーブル防護管の軸方向の長さが短すぎると、ケーブル防護管が軸方向に移動してFTTHケーブルと干渉し、FTTHケーブルの損傷や切断を招くという問題があった。さらに、従来のケーブル防護管においては、ケーブルの分岐部をカバーできないという問題があった。この問題は、FTTHケーブルに限られず、他の種類の通信ケーブルや電力ケーブルを防護管によって防護する際にも生じる。
【0005】
そこでこの発明は、ケーブル防護管を切断することなくケーブルの保護長さに応じた長さに容易に調整することができ、ケーブル防護管の軸方向の移動によるケーブルの損傷や切断を防止することが可能な可動型ケーブル防護管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、ケーブルを管内に収納するケーブル防護管を前記ケーブルの軸方向に複数配設するケーブル用防護管装置であって、前記ケーブル防護管に、前記ケーブルを管内に挿入するための前記ケーブルの軸方向に延びる開閉可能な開口部と、前記ケーブルの軸方向に移動可能に重ね合わされた隣接するケーブル防護管を前記ケーブルの軸方向の任意の位置に固定する固定手段と、を設けたことを特徴とする可動型ケーブル防護管装置である。
【0007】
この発明によれば、重ね合わされた隣接する可動型ケーブル防護管装置はケーブルの軸方向の任意の位置に固定することが可能となり、重ね合わされたケーブル防護管の全長は所望の長さに調整される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可動型ケーブル防護管装置において、前記ケーブル防護管の固定手段は、前記開口部に沿って前記ケーブルの軸方向に延びるフランジから構成されており、該フランジは前記ケーブルの軸方向に所定の間隔で形成された複数の固定穴を有していることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の可動型ケーブル防護管装置において、前記ケーブル防護管の端部には、前記ケーブルの分岐部を防護するT字型ケーブル防護管が連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、重ね合わされたケーブル防護管のケーブル軸方向の長さを任意に調整することができるので、ケーブル防護管の長さを例えば引き込みケーブルの間隔に一致させることができる。これにより、引き込みケーブルの間におけるケーブル防護管の軸方向の動きを確実に防止することができ、ケーブル防護管との干渉によるケーブルの損傷や切断を防止することができる。また、従来のようにケーブル防護管を現場にて切断する必要がないので、ケーブル引き込み作業能率を高めことができる。さらに、重ね合わされたケーブル防護管を最小長さに収縮させて保管することにより、保管場所におけるケーブル防護管の保管スペースを縮小することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ケーブルの分岐部とケーブル防護管との直接接触を回避することができ、ケーブルの保護機能をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0013】
図1ないし図11は、この発明の実施の形態を示している。図1において、符号1は電柱間に渡された吊線を示しており、吊線1は引張り強度の高い鋼線などから構成されている。吊線1の外周には螺旋状のケーブルハンガー5が配設されており、このケーブルハンガー5は吊線1の延線方向に沿って延びている。この実施の形態におけるケーブルとしてのFTTHケーブル2は、光ファイバを伝送路として一般個人宅へ直接引き込むアクセス系の光通信網に使用されるものであり、複数の心線2a〜2nを有している。図1においては、FTTHケーブル2の複数の心線2a〜2nのうち、心線2a〜2cがケーブルハンガー5の内側を通るように配設されており、心線2a〜2cはケーブルハンガー5を介して吊線1に吊下げられている。さらに、FTTHケーブル2における心線2a〜2cのうち心線2bと心線2cは、途中でそれぞれ分岐されており、一般個人宅へ引き込まれている。
【0014】
図2および図3は、FTTHケーブル2における心線2cの一般個人宅への引き込み状態を示している。心線2cを家屋50に引き込む際は、図3に示すように吊線1に支持金具3が固定され、この支持金具3の先端部には引き留め具4が連結される。心線2cは、引張り強度の高い補強線2caを有しており、補強線2caの端部が引き留め具4に支持された状態で補強線2caとともに家屋50側に引き込まれている。家屋50の外壁部51には固定具6が取付けられており、家屋50内に引き込まれる心線2cの途中は固定具6によって固定されるようになっている。家屋50内に引き込まれた心線2cは、室内52に配置された通信用端末機器53に接続されている。
【0015】
つぎに、FTTHケーブル2を防護するためのFTTHケーブル防護管装置10について説明する。図1に示すように、吊線1およびケーブルハンガー5によって吊り下げられたFTTHケーブル2の分岐部は、複数のケーブル防護管からなるFTTHケーブル防護管装置10によって防護されている。この実施の形態においては、FTTHケーブル防護管装置10は、軸方向に伸縮可能な可動型ケーブル防護管装置20と、FTTHケーブル2の分岐に用いられるT字型ケーブル防護管30と、軸方向に所定の長さを有する固定型ケーブル防護管40とを有している。
【0016】
図4は、可動型ケーブル防護管装置20の詳細を示している。可動型ケーブル防護管装置20は、ケーブル防護管としての合成樹脂からなる外側防護管21および内側防護管22を有している。外側防護管21と内側防護管22は、FTTHケーブル2の軸方向に互いに移動可能となるように重ね合わされている。外側防護管21は、FTTHケーブル2の軸方向に延びる筒状に形成されており、FTTHケーブル2を管内に挿入するための開閉可能な開口部21aを有している。開口部21aは、FTTHケーブル2の軸方向に延びており、外側防護管21の全長にわたって形成されている。外側防護管21には、FTTHケーブル2の軸方向に移動可能に重ね合わされた隣接する内側防護管22をFTTHケーブル2の軸方向の任意の位置に固定するともに、開口部21aを閉塞させる固定手段としての一対のフランジ21bが形成されている。フランジ21bは、開口部21aに沿ってFTTHケーブル2の軸方向に延びており、フランジ21bはFTTHケーブル2の軸方向に所定の間隔で形成された多数の固定穴21cを有している。
【0017】
内側防護管22は、FTTHケーブル2の軸方向に延びる筒状に形成されており、外側防護管21の内側に配設されることから外径が外側防護管21よりも若干小に形成されている。内側防護管22は、FTTHケーブル2を管内に挿入するための開閉可能な開口部22aを有している。開口部22aは、FTTHケーブル2の軸方向に延びており、外側防護管22の全長にわたって形成されている。内側防護管22には、外側防護管21をFTTHケーブル2の軸方向の任意の位置に固定するともに、開口部22aを閉塞させる固定手段としての一対のフランジ22bが形成されている。フランジ22bは、開口部22aに沿ってFTTHケーブル2の軸方向に延びており、フランジ22bはFTTHケーブル2の軸方向に所定の間隔で形成された多数の固定穴22cを有している。
【0018】
このように、可動型ケーブル防護管装置20は、外側防護管21と内側防護管22とが重ね合わされた構成となっており、固定手段としての外側防護管21側のフランジ21bおよび内側防護管22側のフランジ22bは、開口部21a、22aを閉塞させる機能と、外側防護管21と内側防護管22をFTTHケーブル2の軸方向の任意の位置に固定する機能を有している。詳しくは、図4に示すように、外側防護管21と内側防護管22とが重ね合わされた状態では、フランジ21bの内側にフランジ22bが位置することになり、重なった外側防護管21の固定穴21cと内側防護管22の固定穴22cに連結用紐Hを通し、連結用紐Hによりフランジ21bとフランジ22bとを縛ることにより、外側防護管21と内側防護管22をFTTHケーブル2の軸方向の任意の位置に固定することが可能となる。また、上記の連結用紐Hによるフランジ21bとフランジ22bとの縛りにより、外側防護管21の開口部21aと内側防護管22の開口部22aは閉塞するようになっている。この実施の形態においては、上述したように、内側防護管22は外側防護管21よりも外径が若干小に形成されているが、外側防護管21と内側防護管22との軸方向の動きを連結用紐Hによって拘束することができれば、外側防護管21と内側防護管22は同径であってもよい。
【0019】
図8ないし図10は、可動型ケーブル防護管装置20と連結されるT字型ケーブル防護管30の詳細を示している。T字型ケーブル防護管30は、合成樹脂からなる半割り形の筒体31を有しており、筒体31は軸方向に延びる連結部Cを中心として上下方向に開閉可能となっている。筒体31における連結部Cの下側には、FTTHケーブル2の軸方向に延びる固定手段としてのフランジ31aが筒体31と一体成形されている。フランジ31aには、FTTHケーブル2の軸方向に所定の間隔で多数の固定穴31bが形成されている。筒体31の軸方向の中央部には、FTTHケーブル2の軸方向と直交する方向に延びる分岐管32が連結されている。分岐管32は、筒体31と一体成形されており、筒体31と同様に連結部Cを中心として上下方向に開閉可能となっている。分岐管32における連結部Cの下側には、FTTHケーブル2の軸方向と直交する方向に延びるフランジ32aが分岐管32と一体成形されている。フランジ32aには、FTTHケーブル2の軸方向と直交する方向に所定の間隔で多数の固定穴が形成されている。
【0020】
図5に示すように、筒体31は、隣接する可動型ケーブル防護管装置20の外側防護管21または内側防護管22と重ね合わせることが可能となっている。筒体31が外側防護管21または内側防護管22と重ね合わされた状態では、筒体31のフランジ31aに形成された多数の固定穴31bは、外側防護管21または内側防護管22の固定穴21c、22cと合致可能となっている。これにより、筒体31の固定穴31bに通される連結用紐Hを外側防護管21の固定穴21cまたは内側防護管22の固定穴22cに通すことにより、T字型ケーブル防護管30を外側防護管21または内側防護管22に連結することが可能となっている。
【0021】
筒体31の接合部には、接合手段31cが形成されている。接合手段31cは、図9および図10に示すように、接合板31d、31e、接合突起31f、接合穴31gから構成されている。接合板31dは、連結部Cを中心として筒体31の上側外周部に沿って延びる板状部材であり、筒体31と一体成形されている。同様に、接合板31eは、連結部Cを中心として筒体31の下側外周部に沿って延びる板状部材であり、筒体31と一体成形されている。接合板31dと接合板31eは対向可能となっており、接合板31dに形成された棒状の接合突起31fと接合板31eに形成された接合穴31gとが嵌合することにより、接合板31dと接合板31eとの接合が行われるようになっている。
【0022】
図6は、固定型ケーブル防護管40の詳細を示している。固定型ケーブル防護管40は、合成樹脂からなりFTTHケーブル2の軸方向に延びる筒状に形成されている。固定型ケーブル防護管40は、軸方向に一定の長さを有しており、たとえば従来のケーブル用防護管と同様に軸方向の長さが2mまたは3mに設定されている。固定型ケーブル防護管40は、FTTHケーブル2を管内に挿入するための開閉可能な開口部41aを有している。開口部41aは、FTTHケーブル2の軸方向に延びており、固定型ケーブル防護管40の全長にわたって形成されている。固定型ケーブル防護管40には、FTTHケーブル2の軸方向に移動可能に重ね合わされた隣接する可動型ケーブル防護管装置20における内側防護管22と連結するための一対のフランジ41bが形成されている。フランジ41bは、開口部41aに沿ってFTTHケーブル2の軸方向に延びており、フランジ41bにはFTTHケーブル2の軸方向に所定の間隔で形成された多数の固定穴41cが形成されている。固定型ケーブル防護管40が内側防護管22と重ね合わされた状態では、固定型ケーブル防護管40のフランジ41bに形成された多数の固定穴41cは、内側防護管22の固定穴22cと合致可能となっている。これにより、固定穴22cに通された連結用紐Hをフランジ41bの固定穴41cに通すことによって、固定型ケーブル防護管40は内側防護管22と連結することが可能となっている。
【0023】
つぎに、この実施の形態に係るFTTHケーブル防護管装置10を用いたFTTHケーブル2の引き込み作業手順およびFTTHケーブル防護管装置10の作用について説明する。
【0024】
FTTHケーブル2は、上述したように、光ファイバを伝送路として一般個人宅へ直接引き込むアクセス系の光通信網に使用されるものであり、図2に示すように、FTTHケーブル2における心線2cが一般個人の家屋50に引き込まれている。また、FTTHケーブル2の心線2bも図示しない別の家屋に引き込まれている。FTTHケーブル2の心線2cを家屋50に引き込む際は、図3に示すように、電柱間の吊線1に支持金具3を固定し、この支持金具3の先端部に引き留め具4連結する。心線2cは、引張り強度の高い補強線2caを有しているので、補強線2caの端部を引き留め具4に支持させた状態で心線2cを補強線2caとともに家屋50側に引き込み、補強線2caのみを家屋50の外壁部51に取付けられた固定具6に固定する。その後、外壁51を通して心線2cを家屋50内に引き込み、心線2cの通信用端末機器53への接続を行う。同様に、FTTHケーブル2の心線2bの別の家屋への引き込みも上記作業に準じて行う。
【0025】
心線2bおよび心線2cの引き込み作業が終了すると、FTTHケーブル2の分岐部を保護するためにFTTHケーブル防護管装置10が取付けられる。まず、FTTHケーブル2から分岐される心線2bおよび心線2cを支持するための支持金具3および引き留め具4の外周には、T字型ケーブル防護管30が取付けられる。T字型ケーブル防護管30は、筒体31が連結部Cを中心として上下方向に開閉可能となっているので、心線2bおよび心線2cを上下方向から筒体31で覆うことが可能となる。すなわち、心線2bおよび心線2cを筒体31で覆った状態で、接合板31dに形成された棒状の接合突起31fと接合板31eに形成された接合穴31gとを嵌合させることにより、接合板31dと接合板31eを密着させることができ、FTTHケーブル2から分岐された心線2bおよび心線2cの分岐部をT字型ケーブル防護管30で覆うことができる。T字型ケーブル防護管30は、FTTHケーブル2の軸方向と直交する方向に延びる分岐管32を有しているので、家屋50側に延びる心線2cおよび別の家屋に延びる心線2bの分岐部は、それぞれ分岐管32によって確実に保護される。
【0026】
図1に示すように、FTTHケーブル2の分岐された心線2bと心線2cとの間隔は、家屋50の位置関係などの理由から作業場所毎に異なることがあり、心線2bと心線2cを覆うT字型ケーブル防護管30の軸方向端部間の距離L1も場所毎に異なることになる。ここで、T字型ケーブル防護管30の間に位置する可動型ケーブル防護管装置20は、外側防護管21と内側防護管22とがFTTHケーブル2の軸方向に互いに移動可能となるように重ね合わされていることから、可動型ケーブル防護管装置20の軸方向の長さを、T字型ケーブル防護管30の軸方向端部間の距離L1に合わせて調整することができる。これにより、可動型ケーブル防護管装置20の軸方向両端部はT字型ケーブル防護管30の軸方向端部と密着することになり、可動型ケーブル防護管装置20の軸方向の動きを防止することができる。また、心線2bと心線2cの分岐部を完全に覆うことが可能となるので、外力から確実にFTTHケーブル2を保護することができる。さらに、従来のようにケーブル用防護管を現場で切断して軸方向の長さを合わせる必要がなくなるので、現場での作業能率を高めることができる。可動型ケーブル防護管装置20の保管については、軸方向の長さを最小長さに収縮させて保管することができるので、従来に比べて保管スペースを縮小することができる。
【0027】
このように、この実施の形態においては、可動型ケーブル防護管装置20は軸方向に伸縮可能なことから、図1の右側に配置される一方の可動型ケーブル防護管装置20の軸方向の長さL2を調整することにより、FTTHケーブル2の心線2aを防護する範囲を自由に設定することが可能となる。同様に、図1の左側に配置される他方の可動型ケーブル防護管装置20の軸方向の長さL3を調整することにより、FTTHケーブル2の心線2a、2b、2cを防護する範囲を自由に設定することが可能となる。また、図1に示す各防護管の組み合わせだけでなく、図5ないし図7に示すように、可動型ケーブル防護管装置20と、T字型ケーブル防護管30と、固定型ケーブル防護管40を任意に組み合わせることにより、FTTHケーブル防護管装置10の軸方向の長さ自在に調整することができ、FTTHケーブル2を最適な長さをもって防護することが可能となる。
【0028】
この実施の形態におけるFTTHケーブル防護管装置10は、FTTHケーブル2の分岐以外にも使用可能であり、図11に示すように、T字型ケーブル防護管30を端部に配置することにより、電柱間におけるFTTHケーブル2の90度のルート変更箇所にも適用することができる。したがって、FTTHケーブル2の延線方向と直交する別のケーブルハンガー5´に沿って延びるFTTHケーブル2の保護も容易となる。
【0029】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、ケーブル用防護管装置10によって防護されるケーブルはFTTHケーブル2に限られず、他の種類の通信用ケーブルや電力ケーブルであってもよい。また、連結用紐Hを使用してケーブル用防護管をケーブルの軸方向の任意の位置に固定するようにしているが、連結用紐Hの代用として樹脂製のネジや固定ピンなどを採用する構成としてもよい。さらに、図6において外側防護管21と内側防護管22を共に軸方向にまっすぐ延びる直管としているが、いずれか一方をケーブルの分岐に用いるT字管とする構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係わる可動型ケーブル防護管装置を用いたFTTHケーブル用防護管装置の全体斜視図である。
【図2】図1の可動型ケーブル防護管装置を用いたFTTHケーブルの家屋への引き込み状態を示す概要図である。
【図3】図1におけるT字型ケーブル防護管近傍の拡大斜視図である。
【図4】図1における可動型ケーブル防護管装置の斜視図であって、(a)は伸長時の可動型ケーブル防護管装置を示す斜視図であり、(b)は収縮時の可動型ケーブル防護管装置示す斜視図である。
【図5】図4の可動型ケーブル防護管装置とT字型ケーブル防護管との接続状態を示す斜視図である。
【図6】図1のFTTHケーブル防護管装置における各防護管の組み合わせの変形例を示す斜視図である。
【図7】図1のFTTHケーブル防護管装置における各防護管の組み合わせの別の変形例を示す斜視図である。
【図8】図1のT字型ケーブル防護管の分解斜視図である。
【図9】図8のA部拡大斜視図である。
【図10】図8のB部拡大斜視図である。
【図11】図1におけるT字型ケーブル防護管の別の使用法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 吊線
2 FTTHケーブル(ケーブル)
2b 心線
2c 心線
3 支持金具
4 引き留め具
5 ケーブルハンガー
10 FTTHケーブル防護管装置
20 可動型ケーブル防護管装置
21 外側防護管(ケーブル用防護管)
21a 開口部
21b フランジ(固定手段)
22 内側防護管(ケーブル用防護管)
22a 開口部
22b フランジ(固定手段)
30 T字型ケーブル防護管
31f 接合突起
31g 接合穴
40 固定型ケーブル防護管
H 連結用紐
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを管内に収納するケーブル防護管を前記ケーブルの軸方向に複数配設するケーブル用防護管装置であって、前記ケーブル防護管に、前記ケーブルを管内に挿入するための前記ケーブルの軸方向に延びる開閉可能な開口部と、前記ケーブルの軸方向に移動可能に重ね合わされた隣接するケーブル防護管を前記ケーブルの軸方向の任意の位置に固定する固定手段と、を設けたことを特徴とする可動型ケーブル防護管装置。
【請求項2】
前記ケーブル防護管の固定手段は、前記開口部に沿って前記ケーブルの軸方向に延びるフランジから構成されており、該フランジは前記ケーブルの軸方向に所定の間隔で形成された複数の固定穴を有していることを特徴とする請求項1に記載の可動型ケーブル防護管装置。
【請求項3】
前記ケーブル防護管の端部には、前記ケーブルの分岐部を防護するT字型ケーブル防護管が連結されていることを特徴とする請求項1に記載の可動型ケーブル防護管装置。
【請求項1】
ケーブルを管内に収納するケーブル防護管を前記ケーブルの軸方向に複数配設するケーブル用防護管装置であって、前記ケーブル防護管に、前記ケーブルを管内に挿入するための前記ケーブルの軸方向に延びる開閉可能な開口部と、前記ケーブルの軸方向に移動可能に重ね合わされた隣接するケーブル防護管を前記ケーブルの軸方向の任意の位置に固定する固定手段と、を設けたことを特徴とする可動型ケーブル防護管装置。
【請求項2】
前記ケーブル防護管の固定手段は、前記開口部に沿って前記ケーブルの軸方向に延びるフランジから構成されており、該フランジは前記ケーブルの軸方向に所定の間隔で形成された複数の固定穴を有していることを特徴とする請求項1に記載の可動型ケーブル防護管装置。
【請求項3】
前記ケーブル防護管の端部には、前記ケーブルの分岐部を防護するT字型ケーブル防護管が連結されていることを特徴とする請求項1に記載の可動型ケーブル防護管装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−153243(P2009−153243A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326672(P2007−326672)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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