説明

可動式ホーム柵の設置契約支援システム

【課題】可動式ホーム柵の初期導入設置費用の低減を提案し、鉄道事業者による可動式ホーム柵の導入を促進させる。
【解決手段】可動式ホーム柵を納入設置する事業と、可動式ホーム柵の広告設置スペースによる広告収入事業とを組み合わせ、鉄道事業者が負担すべき可動式ホーム柵の初期導入設置費用を低減し、これにより可動式ホーム柵の設置契約の促進を図るための支援システムである。このシステムでは、可動式ホーム柵を設置するために必要な初期導入設置費用の算出、広告掲載費(広告収入)の検討、減額値(BG)を広告掲載費で回収する回収費用月数(NM)の算出等を行い、これらの算出結果、検討結果を提示できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可動式ホーム柵の設置契約支援システムに係り、特に駅のプラットホームに乗客の転落防止を目的として設置される可動式ホーム柵の初期導入設置費用の低減を提案し、可動式ホーム柵の設置契約を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動式ホーム柵は乗客の安全確保を目的として鉄道事業者により設置される。
【0003】
可動式ホーム柵の戸袋部、可動ドア部には、乗客向けの安全表示物、行き先表示部が掲示され、その他のスペースは、可動式ホーム柵の設置後、鉄道事業者から広告事業者への広告スペースとしての貸し出しによる広告物の掲示が見られる。
【0004】
また、特許文献1には、可動式ホーム柵に液晶パネルなどの情報報知手段を設け、この情報報知手段にテレビ放送、宣伝広告などの一般情報を表示させ、可動式ホーム柵の乗降口付近で待っている乗降客に対して一般情報の提供を行う駅内報知装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−354138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動式ホーム柵は、乗降客の転落防止を目的とするため、プラットホーム全面に設置する必要があり、更に列車側のドア位置に合わせたホーム柵側のドア位置に設置する必要がある。
【0006】
このため、1駅当たりの可動式ホーム柵の設置台数、更に路線全駅への設置台数は多くなり、可動式ホーム柵を設置する鉄道事業者の初期導入設置費用は甚大なものとなる。また、営業中の駅への可動式ホーム柵の据付工事は、作業時間が深夜に限られるため、新設駅への据付工事に比べて、据付工事費が割高になる。
【0007】
従って、鉄道事業者にとって可動式ホーム柵の初期導入設置費用が高額になり、これが可動式ホーム柵の導入の妨げとなっている。
【0008】
一方、鉄道事業者は、設置後の可動式ホーム柵を広告スペースとして貸し出しすことにより広告収入を得ることができるが、この場合でも可動式ホーム柵の初期導入設置費用の低減にはつながらない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、可動式ホーム柵の初期導入設置費用の低減を提案することができ、これにより可動式ホーム柵の導入を促進させることができる可動式ホーム柵の設置契約支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために請求項1に係る可動式ホーム柵の設置契約支援システムは、乗客の転落防止用の可動ホーム柵を駅のプラットホームに設置するために必要な初期導入設置費用を算出するための第1の情報を入力する第1の入力手段と、前記第1の情報に基づいて前記初期導入設置費用を算出する初期導入設置費用算出手段と、前記算出された前記初期導入設置費用と鉄道事業者が負担する負担額との差額を設定する手段と、前記可動ホーム柵を広告スペースとして広告事業者に提供した場合に得られる月又は年単位の広告収入を算出するための第2の情報を入力する第2の入力手段と、前記第2の情報に基づいて前記月又は年単位の広告収入を算出する広告収入算出手段と、前記算出された広告収入によって前記設定された差額分の費用を回収するための月数又は年数を算出する費用回収期間算出手段と、を備え、前記鉄道事業者に対して前記負担額による可動ホーム柵の納入設置契約と、前記月数又は年数分の前記可動ホーム柵の広告スペース提供契約とを結ぶための支援を行うことを特徴としている。
【0011】
即ち、可動ホーム柵の初期導入設置費用を算出するために必要な情報(第1の情報)を入力し、その入力結果に基づいて初期導入設置費用を算出する。続いて、可動式ホーム柵を初期導入するにあたって、鉄道事業者が負担する負担額を決め、これにより初期導入設置費用と前記負担額との差額を設定する。尚、前記差額を直接設定しても良い。次に、設置後の可動式ホーム柵を広告スペースとして広告事業者に提供した場合に得られる月又は年単位の広告収入を算出するための情報(第2の情報)を入力し、この第2の情報に基づいて月又は年単位の広告収入を算出する。この算出された月又は年単位の広告収入によって前記設定された差額分の費用を回収するための費用回収期間(月数又は年数)を算出する。これにより、鉄道事業者に対し、所定の費用回収期間における広告収入を見込んだ安価な可動ホーム柵の初期導入設置費用(負担額)を提示することができ、可動ホーム柵の納入設置契約を促進させることができる。また、初期導入設置費用の変動要因である第1の情報、広告収入の変動要因である第2の情報、あるいは費用回収期間等を適宜変更することで、鉄道事業者の要望に応じてた可動式ホーム柵の初期導入時の負担額等の提示も可能である。
【0012】
請求項2に係る可動式ホーム柵の設置契約支援システムは、乗客の転落防止用の可動ホーム柵を駅のプラットホームに設置するために必要な初期導入設置費用を算出するための第1の情報を入力する第1の入力手段と、前記第1の情報に基づいて前記初期導入設置費用を算出する初期導入設置費用算出手段と、前記可動ホーム柵を広告スペースとして広告事業者に提供した場合に得られる月又は年単位の広告収入を算出するための第2の情報を入力する第2の入力手段と、前記第2の情報に基づいて前記月又は年単位の広告収入を算出する広告収入算出手段と、前記可動ホーム柵を広告スペースとして広告事業者に提供する月数又は年数を設定する期間設定手段と、前記算出された月又は年単位の広告収入と、前記設定された月数又は年数とに基づいて前記初期導入設置費用に対する減額された鉄道事業者の負担額を算出する負担額算出手段と、を備え、前記鉄道事業者に対して前記負担額による可動ホーム柵の納入設置契約と、前記月数又は年数分の前記可動ホーム柵の広告スペース提供契約とを結ぶための支援を行うことを特徴としている。
【0013】
請求項1に係る発明は、減額分の広告スペースの貸し出し期間(費用回収期間)を算出しているのに対し、請求項2に係る発明は、予め費用回収期間を設定した場合に減額される鉄道事業者の負担額を算出している点で相違する。
【0014】
請求項3に示すように請求項1又は2に記載の可動式ホーム柵の設置契約支援システムにおいて、前記第1の情報は、前記可動ホーム柵の購入費に関する情報と、前記可動ホーム柵の据付工事費に関する情報とを含むことを特徴としている。尚、前記可動ホーム柵の購入費に関する情報としては、ホームの長さ、車輛編成、車輛ドア数等の可動式ホーム柵の設置台数を決定するための情報と、可動式ホーム柵の仕様、機種等の1台の可動式ホーム柵の価格に関する情報とが含まれる。また、可動ホーム柵の据付工事費に関する情報としては、工事環境条件(深夜限定作業など)が含まれる。
【0015】
請求項4に示すように請求項1又は2に記載の可動式ホーム柵の設置契約支援システムにおいて、前記第2の情報は、前記可動ホーム柵が設置される駅の乗降客数を含むことを特徴としている。また、第2の情報には、設置周辺環境(地下駅、地上駅、階段、エスカレータ配置、駅構造(島式、相対式))も広告効果を評価する情報として含めることができる。
【0016】
請求項5に示すように請求項1に記載の可動式ホーム柵の設置契約支援システムにおいて、前記費用回収期間算出手段は、前記広告収入算出手段によって算出された月又は年単位の広告収入と費用回収月数又は年数とを乗算し、この乗算値に前記費用回収月数又は年数の期間の金利とを加算し、この加算値が前記設定された差額分の費用以下になるように費用回収月数又は年数を算出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可動式ホーム柵の広告スペースによる広告収入を見込んで、可動式ホーム柵の初期導入設置費用の低減を具体的に提案することができ、これにより可動式ホーム柵の導入を促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下添付図面に従って本発明に係る可動式ホーム柵の設置契約支援システムの好ましい実施の形態について詳説する。
【0019】
図1(A)、(B)及び(C)はそれぞれ可動式ホーム柵の一例を示す上面図、正面図及び側面図である。
【0020】
この可動式ホーム柵10は、主として戸袋部12と、可動ドア部14とから構成されている。これらの戸袋部12及び可動ドア部14の両面は、広告設置スペース16として広告事業者に提供することができる。
【0021】
特に、プラットホーム内に設置される可動式ホーム柵10は、可動ドア部14の前で列車を待つ乗客の目にとまり、広告設置場所としては他に優る広告効果が期待できる。
【0022】
図2は上記可動式ホーム柵10が駅のプラットホームに設置された状態を示している。可動式ホーム柵10は、ホーム全長をカバーできるようにホームの長さに応じた台数分だけ設置される。
【0023】
尚、駅には、主に相対式と島式の2種類の構造があり、図2に示す駅は、線路の両側に2つのホームがあり、上りホームと下りホームが分かれている相対式の駅に関して示している。相対式の駅の場合、可動式ホーム柵10の戸袋部12及び可動ドア部14の線路側の広告設置スペース16もホームにいる乗客の目にとまり、広告効果が期待できる。また、相対式及び島式のいずれも駅の構造でも、可動式ホーム柵10の戸袋部12及び可動ドア部14の線路側の広告設置スペース16は、列車に乗っている乗客の目にとまり、広告効果が期待できる。
【0024】
次に、本発明に係るビジネスモデルの概要について説明する。
【0025】
このビジネスモデルは、可動式ホーム柵を納入設置する事業と、可動式ホーム柵の広告設置スペースによる広告収入事業とを組み合わせ、鉄道事業者が負担すべき可動式ホーム柵の初期導入設置費用を低減する。
【0026】
即ち、鉄道事業者が負担すべき可動式ホーム柵の初期導入設置費用を低減し、その減額値を、期限付きの広告収入によって回収する。
【0027】
図3は本発明に係る可動式ホーム柵の設置契約支援システムを利用した契約に関わる各事業者間の関係を示す図である。
【0028】
図3(A)に示すように、可動式ホーム柵の設置後の所定の費用回収期間、契約支援システム鉄道事業者20と、本発明に係る新事業者22との間では、以下の契約を結ぶ。
【0029】
A.減額された可動式ホーム柵の納入設置契約
B.期限付きの広告スペース提供契約
一方、可動式ホーム柵の納入・設置業者24は、新事業者22に対して、(a) 可動式ホーム柵の納入・設置を行い、新事業者22は、納入・設置業者24に対して、(b) 初期導入設置費用の全額を支払う。
【0030】
また、広告代理店や広告主を含む広告事業者26は、新事業者22に対して、(c) 広告スペースの貸し出しによる対価(広告収入)を徴収し、新事業者22は、広告事業者26に対して、(d) 期限付きの広告スペースの提供を行う。
【0031】
図3(B)に示すように、費用回収期間後、鉄道事業者20は、新事業者22を介在させることなく、可動式ホーム柵の納入・設置業者24や、広告事業者26との間で、任意の契約を交わすことができる。
【0032】
尚、新事業者22は、可動式ホーム柵の納入・設置業者24を兼ねていてもよい。また、可動式ホーム柵の納入・設置業者24は、納入業者と、設置業者とが別々の業者であってもよい。
【0033】
図4は可動式ホーム柵の初期導入設置費用の減額費用を回収する費用回収モデルを示す図である。
【0034】
図4に示すように、可動式ホーム柵の初期導入設置費用をA、この初期導入設置費用Aの減額値をBとすると、鉄道事業者20が初期導入時に支払う負担額Cは、初期導入設置費用Aから減額値Bを減算した額(=A−B)である。
【0035】
上記減額値Bを、期限付きの広告収入で回収する場合、減額値Bの費用回収期間における金利をDとすると、広告収入で回収する費用Eは、減額値Bと金利Dとを加算した額(=B+D)である。
【0036】
いま、可動式ホーム柵の1台当たりのホーム側、軌道側の広告スペースの1年間の広告収入を5万円とし、費用回収期間を10年とすると、全広告収入は、50(=5×10)万円である。一方、50万円を年利3%で借りた場合の10年分の金利は、6万4千円となる。従って、この場合の可動式ホーム柵の1台当たりの初期導入設置費用の減額値は、43万6千円となる。
【0037】
同様にして、可動式ホーム柵の1台当たりの広告スペースの1年間の広告収入を10万円で計算すると、可動式ホーム柵の1台当たりの初期導入設置費用の減額値は、87万2千百円となる。
【0038】
図5は初期導入設置費用の設定モデルを示す図である。
【0039】
初期導入設置費用は、可動式ホーム柵が設置される駅のさまざまな要素により決定され、可動式ホーム柵本体の価格(購入費)と、可動ホーム柵の据付工事費と、可動ホーム柵の広告スペースに広告を取り付ける広告工事費とからなる。
【0040】
可動式ホーム柵本体の1台当たり価格は、可動式ホーム柵の仕様、機種、メーカなどにより決定される。また、1駅当たりの可動式ホーム柵の設置台数は、その駅のホーム長さ、車輛編成、車輛ドア数などにより決定される。
【0041】
価格・費用を増加させる要因としては、運行中ホームへの据え付け(深夜限定作業)などの工事環境条件、1駅当たりの設置台数に関わる設置条件、費用回収期間の金利などが挙げられる。
【0042】
一方、広告収入での費用回収に向けた広告事業者との契約における価格決定要素としての広告効果評価要因としては、設置駅の乗降客数、設置駅を通過する客数(車輛側から広告を見る客数)、及び設置周辺環境(地下駅・地上駅、階段・エスカレータ、駅構造(島式、相対式))に合わせた回収(広告スペース貸し出し)期間、金利変動などが挙げられる。
【0043】
図6は本発明に係る可動式ホーム柵の設置契約支援システムのハードウエア構成を示すブロック図である。
【0044】
同図に示すように、可動式ホーム柵の設置契約支援システム30は、汎用のパーソナルコンピュータ(パソコン)を利用することができ、主として各構成要素の動作を制御する中央処理装置(CPU)32と、装置の制御プログラムが格納されたり、プログラム実行時の作業領域となる主メモリ34と、パソコンのオペレーティングシステム(OS)、本発明に係る可動式ホーム柵の設置契約支援ソフトを含む各種のアプリケーションソフト、各駅の乗降客数、駅の構造等の各種の情報が格納されるハードディスク装置36、表示用データを一時記憶する表示メモリ38、この表示メモリ38からの文字データ、画像データ等により文字等を表示するCRTモニタや液晶モニタ等のモニタ装置40と、キーボード42と、位置入力装置としてのマウス44と、マウス44の状態を検出してモニタ装置40上のマウスポインタの位置やマウス44の状態等の信号をCPU32に出力するマウスコントローラ46と、上記各構成要素を接続するバス48とから構成されている。
【0045】
尚、上記構成のパソコンは、周知のものであるため、各構成要素の詳細な説明については省略する。
【0046】
次に、本発明に係る可動式ホーム柵の設置契約支援ソフトの機能について説明する。
【0047】
図7は可動式ホーム柵の設置契約支援ソフトの処理内容を説明するためのフローチャートであり、可動式ホーム柵の設置費用を決定する場合に関して示している。
【0048】
図7において、まず、可動式ホーム柵の設置契約支援ソフトを起動させ、可動式ホーム柵を決定する(ステップS10)。この場合、可動式ホーム柵の仕様、機種、メーカなどを入力することで、可動式ホーム柵を決定する。尚、可動式ホーム柵1台の購入予算から可動式ホーム柵を決定するようにしてもよい。
【0049】
続いて、設置駅での可動式ホーム柵の台数を決定する(ステップS12)。この場合、前述したように設置駅のホーム長さ、車輛編成、車輛ドア数などの情報を入力することにより決定することができる。
【0050】
上記ステップS10で決定した可動式ホーム柵の1台当たりの価格と、ステップS12で決定した可動式ホーム柵の台数とを乗算し、可動式ホーム柵の購入費を算出する(ステップS14)。
【0051】
次に、可動式ホーム柵の台数や、工事環境条件(深夜限定作業の有無など)から可動式ホーム柵の据付工事工数を算出し(ステップS16)、据付工事総金額を算出する(ステップS18)。
【0052】
一方、可動式ホーム柵の台数が決定されると、その可動式ホーム柵の広告スペースを活用するか否かが選択される(ステップS20)。広告スペースを活用する場合には、可動式ホーム柵の台数、寸法から広告スペース(大きさ)を算出する(ステップS22)。この広告スペースの大きさから、可動式ホーム柵に広告を取り付けるための取付工事費を算出する(ステップS24)。そして、広告スペースの活用の有用性があると判断すると、広告工事総金額を算出する(ステップS26、S28)。
【0053】
続いて、ステップS14で算出した可動式ホーム柵の購入費と、ステップS18で算出した据付工事総金額とを加算し、更に広告スペースを活用する場合にはステップS28で算出した広告工事総金額を加算して初期導入設置費用の総額を算出する(ステップS30)。
【0054】
尚、広告表示機能を有する仕様の可動式ホーム柵の場合や、可動式ホーム柵の戸袋部や可動ドア部の広告スペースにシール状の広告を貼り付ける場合には、前記広告工事費は不要になる。
【0055】
図8は可動式ホーム柵の設置契約支援ソフトの処理内容を説明するためのフローチャートであり、可動式ホーム柵の広告掲載費や費用回収期間を決定する場合に関して示している。
【0056】
図8において、まず、広告の掲載エリア(可動式ホーム柵を設置する路線や区間など)を選定し(ステップS50)、その選定した掲載エリア内の掲載駅(数)を選定する(ステップS52)。掲載駅の選定により、その掲載駅における月平均乗降者数βが決まる。尚、月平均乗降者数βの情報は、路線ごとに一般に公開されている一日平均乗降者数や月平均乗降者数の情報を利用することができる。
【0057】
次に、上記選定した掲載駅での1月当たりの広告掲載費の検討を行う(ステップS54)。即ち、次式に示すように、掲載駅での1月当たりの広告掲載費を、月平均乗降者数βで除算した値と、乗降客1人当たりの1日の広告費用対効果α(乗降客1人当たりの1日の広告費として支払うことができる額)とを比較する(ステップS56)。
【0058】
[数1]
(広告掲載費/駅・月)/β≦α …(1)
上記式(1)を満足しない場合には、ステップS50に戻り、月平均乗降者数βが多くなるように掲載エリアの選定、掲載駅の選定を変更したり、広告掲載費の額を低くする。尚、式(1)の左辺と右辺とが一致するように選定を行うことが好ましい。
【0059】
一方、式(1)を満足する場合には、式(1)に示されている広告掲載費/駅・月と、掲載駅数とを乗算して、1カ月分の広告掲載費(γ)を算出する(ステップS58)。
【0060】
次に、費用回収月数(NM)の算出を行う(ステップS60)。即ち、次式に示すように、1カ月分の広告掲載費(γ)と費用回収月数(NM)とを乗算し、その乗算値から鉄道事業者(顧客)が減額を希望する減額値(BG)に対する、費用回収月数(NM)分の金利(RI)を減算した値と、上記減額値(BG)とを比較する(ステップS62)。
【0061】
[数2]
(γ×NM)−RI≧BG …(2)
上記式(2)を満足しない場合には、そのときの費用回収月数(NM)が、平均広告掲載月数以下か否かを判別し(ステップS64)、YESの場合には、ステップS60に戻り、費用回収月数(NM)を増加させ、NOの場合には、1カ月分の広告掲載費(γ)が大きくなるような掲載エリアの選定、掲載駅の選定を変更したり、広告掲載費の額を高くする。この場合、再度、式(1)を満たす選定等を行う必要があることは言うまでもない。
【0062】
一方、ステップS62において、上記式(2)を満足すると判別されると、式(2)に示す1カ月分の広告掲載費(γ)、及び費用回収月数(NM)が決定される。
【0063】
新事業者は、鉄道事業者に対して、図7で説明した初期導入設置費用や、図8で説明した減額値(BG)、又は初期導入設置費用から減額値(BG)を減算した、鉄道事業者が実際に負担する負担額を提示するとともに、広告スペースの貸し出し期間(費用回収月数(NM))を提示し、減額された可動式ホーム柵の納入設置契約、及び期限付きの広告スペース提供契約を促進することができる。
【0064】
尚、この実施の形態では、費用回収月数(NM)が平均広告掲載月数を超えないように、費用回収月数を算出するようにしているが、費用回収月数に制限を設けないようにしてもよい。この場合には、1カ月分の広告掲載費(γ)が小さい程、あるいは鉄道事業者が希望する減額値(BG)が大きい程、費用回収月数が大きく(費用回収期間が長く)なる。
【0065】
また、この実施の形態では、1カ月分の広告掲載費(γ)や、費用回収月数(NM)を算出するようにしているが、1年分の広告掲載費や、費用回収年数を算出するようにしてもよい。
【0066】
更に、予め費用回収月数、年数等の費用回収期間や掲載駅等を決めておき、この場合の広告収入による初期導入設置費用の減額値を算出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1(A)、(B)及び(C)はそれぞれ可動式ホーム柵の一例を示す上面図、正面図及び側面図である。
【図2】図2は上記可動式ホーム柵が駅のプラットホームに設置された状態を示す図である。
【図3】図3は本発明に係る可動式ホーム柵の設置契約支援システムを利用した契約に関わる各事業者間の関係を示す図である。
【図4】図4は可動式ホーム柵の初期導入設置費用の減額費用を回収する費用回収モデルを示す図である。
【図5】図5は初期導入設置費用の設定モデルを示す図である。
【図6】図6は本発明に係る可動式ホーム柵の設置契約支援システムのハードウエア構成を示すブロック図である。
【図7】図7は可動式ホーム柵の設置契約支援ソフトの処理内容を説明するためのフローチャートである。
【図8】図8は可動式ホーム柵の設置契約支援ソフトの処理内容を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
10…可動式ホーム柵、12…戸袋部、14…可動ドア部、16…広告設置スペース、20…鉄道事業者、22…新事業者、24…可動式ホーム柵の納入・設置業者、26…広告事業者、30…可動式ホーム柵の設置契約支援システム(パソコン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客の転落防止用の可動ホーム柵を駅のプラットホームに設置するために必要な初期導入設置費用を算出するための第1の情報を入力する第1の入力手段と、
前記第1の情報に基づいて前記初期導入設置費用を算出する初期導入設置費用算出手段と、
前記算出された前記初期導入設置費用と鉄道事業者が負担する負担額との差額を設定する手段と、
前記可動ホーム柵を広告スペースとして広告事業者に提供した場合に得られる月又は年単位の広告収入を算出するための第2の情報を入力する第2の入力手段と、
前記第2の情報に基づいて前記月又は年単位の広告収入を算出する広告収入算出手段と、
前記算出された広告収入によって前記設定された差額分の費用を回収するための月数又は年数を算出する費用回収期間算出手段と、を備え、
前記鉄道事業者に対して前記負担額による可動ホーム柵の納入設置契約と、前記月数又は年数分の前記可動ホーム柵の広告スペース提供契約とを結ぶための支援を行うことを特徴とする可動式ホーム柵の設置契約支援システム。
【請求項2】
乗客の転落防止用の可動ホーム柵を駅のプラットホームに設置するために必要な初期導入設置費用を算出するための第1の情報を入力する第1の入力手段と、
前記第1の情報に基づいて前記初期導入設置費用を算出する初期導入設置費用算出手段と、
前記可動ホーム柵を広告スペースとして広告事業者に提供した場合に得られる月又は年単位の広告収入を算出するための第2の情報を入力する第2の入力手段と、
前記第2の情報に基づいて前記月又は年単位の広告収入を算出する広告収入算出手段と、
前記可動ホーム柵を広告スペースとして広告事業者に提供する月数又は年数を設定する期間設定手段と、
前記算出された月又は年単位の広告収入と、前記設定された月数又は年数とに基づいて前記初期導入設置費用に対する減額された鉄道事業者の負担額を算出する負担額算出手段と、を備え、
前記鉄道事業者に対して前記負担額による可動ホーム柵の納入設置契約と、前記月数又は年数分の前記可動ホーム柵の広告スペース提供契約とを結ぶための支援を行うことを特徴とする可動式ホーム柵の設置契約支援システム。
【請求項3】
前記第1の情報は、前記可動ホーム柵の購入費に関する情報と、前記可動ホーム柵の据付工事費に関する情報とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の可動式ホーム柵の設置契約支援システム。
【請求項4】
前記第2の情報は、前記可動ホーム柵が設置される駅の乗降客数を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の可動式ホーム柵の設置契約支援システム。
【請求項5】
前記費用回収期間算出手段は、前記広告収入算出手段によって算出された月又は年単位の広告収入と費用回収月数又は年数とを乗算し、この乗算値に前記月数又は年数の期間の金利とを加算し、この加算値が前記設定された差額分の費用以下になるように費用回収月数又は年数を算出することを特徴とする請求項1に記載の可動式ホーム柵の設置契約支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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