説明

可動端子板

【課題】 端子箱の限られたスペースを有効利用して収容可能とする。
【解決手段】 一方の通信回線としての多心ケーブル110と他方の通信回線としての幹線側ケーブル120との接続地点である責任分界点に配置され、開閉扉101によって閉塞可能な端子箱100内に収容可能な可動端子板1であって、端子箱100の取付け面100bの前方側に傾倒可能に配設された端子板本体部2と、端子板本体部2の一方の面に設けられ多心ケーブル110と接続可能なラッピング端子3と、端子板本体部2の他方の面に設けられ幹線側ケーブル120と接続可能なネジ端子4とを備え、端子板本体部2は、開閉扉101によって端子箱100が閉塞された状態では起立状態で端子箱100内に収納され、開閉扉101によって端子箱100が開放された状態では取付け面100bの前方側に傾倒させることにより端子箱100から外方へ突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信線網の一方の回線と他方の回線との接続点である責任分界点に配設される端子箱に用いられる可動端子板に関する。
【背景技術】
【0002】
電話線や光ファイバケーブルなどの通信線網には、通信事業者側(幹線側)と需要者側(端末側)との設備(機器)および責任の境界を明確にするために、責任分界点として端子板が収容された端子箱が設置されている。
【0003】
図6は、責任分界点としての端子箱100の一例を示している。責任分界点としての端子箱100には、雷やサージによる異常電圧、異常電流から機器を保護するための機器である保安器200が通信業者によって収容されていることから、良好な作業性を確保するため、奥行きの小さい(底が浅い)ものが使用される。端子箱100内の端子板300は、端子箱100の取付け面100b(バックパネル102)に対して略垂直に取付けられている。この端子箱100を基準として、一方の回線は通信事業者の設備であり、他方の回線は需要者の設備である。このように、端子箱100によって責任分界点を明確に切り分けるのは、機器の所有者を明確にするとともに、施工、保守主体(責任)を明確にするためである。また、端子箱100によって責任分界点を明確にすることは、不用意に他者の設備に触れることによって生じる通信障害を防止することにもなる。
【0004】
需要者は、図6の端子板300の幹線側の端子に、予備の多心ケーブル(端末側通信回線)を接続して、IDF(Intermediate Distribution Frame)などの中継用機器に接続しておくことにより、回線を増設する場合にも、他方の回線を端末側機器に接続するだけで、端子箱100を開けることなく、回線を増設できるようになる。
【0005】
ところで、従来から、電子機器に搭載する端子板の取付作業を容易にする技術として、端子板と機器本体とを取付金具を介して取り付けることで、端子板を機器本体に対して回動可能とする端子板取付け装置に関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平06−019271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図6における従来の端子板300は、端子箱100の取付け面100b(バックパネル102)に対して略垂直に(縦置きに)収容されるため、高さt302が制限され、大きな端子板300を収容することはできない。すなわち、端子箱100は、運用時は扉100によって閉塞された状態となるため、端子板300の高さt302を大にすると、端子板300と扉101が干渉し、扉101を閉めることができない。
【0008】
また、回線の増設時には、責任分界点である端子箱100内に端子板300を増設する必要が生じるが、端子箱100には収容スペースに限界があり、回線の増設に対応できないという問題がある。さらに、端子箱100に収容される保安器200も増設される可能性があるため、端子板300を増設するスペースはより限定されてしまう。したがって、端子箱100の限られたスペースを有効利用して収容可能な端子板の開発が望まれる。
【0009】
そこで、この発明は、端子箱内の限られたスペースを有効利用することが可能な可動端子板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、一方の通信回線と他方の通信回線との接続地点である責任分界点に配置され、扉によって閉塞可能な端子箱内に収容可能な可動端子板であって、前記端子箱の取付け面の前方側に傾倒可能に配設された端子板本体部と、前記端子板本体部の一方の面に設けられ、前記一方の通信回線と接続可能な第1の端子と、前記端子板本体部の他方の面に設けられ、前記他方の通信回線と接続可能な第2の端子と、を備え、前記端子板本体部は、前記扉によって前記端子箱が閉塞された状態では起立状態で前記端子箱内に収納され、前記扉によって前記端子箱が開放された状態では前記取付け面の前方側に傾倒させることにより前記端子箱から外方へ突出する、ことを特徴とする可動端子板である。
【0011】
この発明によれば、端子板本体部は、扉によって端子箱が閉塞された状態では起立状態で端子箱内に収納され、扉によって端子箱が開放された状態では取付け面の前方側に傾倒させることにより端子箱から外方へ突出する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可動端子板において、前記端子板本体部は、前記端子箱の前記取付け面に固定された支持部によって傾倒可能に支持されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の可動端子板において、前記支持部には、一方の通信回線のケーブルと他方の通信回線のケーブルとを拘束するケーブル拘束具が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の可動端子板において、前記第1の端子と前記第2の端子の少なくともいずれか一方は、ラッピング端子から構成されており、該ラッピング端子のピンの長さは既存のラッピング端子よりも短く設定されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、端子板本体部は、扉によって端子箱が閉塞された状態では起立状態で端子箱内に収納でき、扉によって端子箱が開放された状態では、取付け面の前方側に傾倒させることにより端子箱から外方へ突出させることができる。このため、可動端子板は、高さが端子箱の取付け面から扉までの高さより大であっても、端子箱に収容することができる。したがって、可動端子板を従来の端子板よりも大型化することができ、端子板を増設しなくとも、回線の増加に対応することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、端子板本体部は、端子箱の取付け面に固定された支持部によって傾倒可能に支持されているので、端子箱の取付け面と支持部との間に収容スペースを形成することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、支持部には、一方の通信回線のケーブルと他方の通信回線のケーブルとを拘束するケーブル拘束具が設けられているので、端子板本体部が傾倒する場合でも、ケーブルの動きを拘束することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、第1の端子と第2の端子の少なくともいずれか一方は、ラッピング端子から構成されており、ラッピング端子のピンの長さは既存のラッピング端子よりも短く設定されているので、可動端子板の厚さを小とすることができ、端子箱の内部空間を有効利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1に係る可動端子板を端子箱に収容し扉を閉めた状態を示す断面図である。
【図2】図1の可動端子板を端子箱の取付け面側に起立させた状態を示す斜視図である。
【図3】図1の可動端子板を端子箱の取付け面に対して傾倒させた状態を示す斜視図である。
【図4】図1の可動端子板を通信回線の着脱のために傾倒させた状態を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る可動端子板を端子箱の取付け面側に起立させた状態を示す斜視図である。
【図6】従来の端子板を端子箱に収容した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1ないし図4は、この発明の実施の形態1を示している。
【0022】
可動端子板1は、幹線側の一方の通信回線(多心ケーブル)110と、需要者側の他方の通信回線(幹線側ケーブル)120との接続地点である責任分界点に配置され、扉(開閉扉)101によって閉塞可能な端子箱100内に収容可能なものである。
【0023】
ここで、端子箱100は、前面100a側に開閉自在な開閉扉101を有し、取付け面100b側が壁Wに固定されている。この端子箱100を基準として、一方の通信回線側は需要者の設備であり、他方の通信回線側は通信事業者の設備となっている。そして、端子箱100から敷設された多心ケーブル110を、IDF(Intermediate Distribution Frame)などの中継用機器(図示略)を介して端末側機器(図示略)に接続することによって、端末側機器を通信網に接続することができるようになっている。また、端子箱100の取付け面100b内周には、板状のバックパネル102が配設されている。バックパネル102には、可動端子板1や保安器200が取り付けられている。
【0024】
保安器200は、雷やサージによって印加された異常電圧、異常電流から機器を保護するためのもので、端子箱100より幹線側に通信事業者によって取り付けられるものである。そして、保安器200は、幹線側ケーブル120を介して可動端子板1と接続されている。
【0025】
可動端子板1は、図1ないし図4に示すように、主として、端子板本体部2と、端末側端子3と、幹線側端子4と、支持部5と、ケーブル保持具としての幹線側保持部6と幹線側保持部7とを有している。
【0026】
端子板本体部2は、端子箱100の取付け面100bに固定されたバックパネル102の前方側に傾倒可能に配設され、板状の電気絶縁性材料で構成されている。端子板本体部2の大きさは、バックパネル102より小、かつ、開閉扉101より小に設定されている。この端子板本体部2の一方の面(前面側)に多心ケーブル110と接続可能な複数の第1の端子(ラッピング端子)3が配設され、他方の面(背面側)に幹線側ケーブル120と接続可能な複数の第2の端子(ネジ端子)4が配設されている。
【0027】
第1の端子としてのラッピング端子3は、多心ケーブル110の単心被覆銅線111と接続可能なものである。ラッピング端子3は、ラッピング工具を使用して単心被覆銅線111を巻きつけることで密着させて、電気的に接続するようになっている。ここでは、ラッピング端子3は、単心被覆銅線111を1周巻きすることによって電気的に接続可能である。また、ラッピング端子3の高さhは、単心被覆銅線111を1周巻きが可能な長さに設定されている。つまり、ラッピング端子3の高さhは、図6の従来のラッピング端子303の高さh303より小となっている(h<h303)。
【0028】
第2の端子としてのネジ端子4は、幹線側ケーブル120と接続可能なものである。ネジ端子4は、ネジの座面で幹線側ケーブル120を押圧して密着させることによって、電気的に接続するものである。
【0029】
支持部5は、図2および図3に示すように、端子箱100の取付け面100b(バックパネル102)に固定され、端子板本体部2を傾倒可能に支持するものである。支持部5は、略コの字型に加工された板状の電気絶縁性材料で構成されている。支持部5は、バックパネル102から略垂直に延びる1対の高さtの垂直部51a、51bと、垂直部51a、51bの間にバックパネル102と略平行に延びる水平部51cとを有し、1対の垂直部51a、51bの先端側に配設された軸52a、52bで端子板本体部2を回動自在(傾倒自在)に支持するようになっている。また、水平部51cは、ネジなどの固定手段(図示略)によってバックパネル102に取り付けられるようになっている。さらに、軸52a、52bには、端子板本体部2の傾倒範囲を制限するストッパ(図示略)が配設されている。
【0030】
このような構成の端子板本体部2は、図1および図2に示すように、開閉扉101によって端子箱100が閉塞された状態では起立状態で端子箱100内に収納され、バックパネル102に沿って略平行となっている。このとき、端子板本体部2とバックパネル102との間は、支持部5の高さt分の距離を有し、端子板本体部2に配設されたネジ端子4と保安器200とは、接触せずにスペースを有している。そして、端子板本体部2が傾倒した下方に形成された収容スペースに、保安器200が位置するようになっている。また、端子板本体部2に配設されたラッピング端子3と開閉扉101とは、接触せずにスペースを有している。
【0031】
さらに、図3および図4に示すように、開閉扉101によって端子箱100が開放された状態では、バックパネル102の前方側(バックパネル102から離接する方向)に傾倒させることにより端子箱100から外方へ突出し、バックパネル102に略垂直となっている。この端子板本体部2の可動範囲は、略90°に設定されており、ここでは、図2に示すように、バックパネル102に沿って略平行となる状態(起立状態)から、図3に示すように、バックパネル102に対して略垂直となる状態までの間で傾倒可能となっている。
【0032】
ケーブル拘束具は、多心ケーブル110と幹線側ケーブル120とを拘束するもので、図2および図3に示すように、主として、端子板本体部2の外周に沿って配設された複数の端末側保持部6および複数の幹線側保持部7と、支持部5に配設されたリング部8とを有している。幹線側保持部7の構造は、端末側保持部6の構造に準じているので、ここでは、端末側保持部6の構造についてのみ説明する。
【0033】
端末側保持部6は、絶縁性部材で略L字型形状に形成され、端子板本体部2の外周からラッピング端子3に対して垂直方向に突出する突出部61と、端子板本体部2の外周からラッピング端子3の長手方向に沿って突出する基端部62とを有している。このような構成の端末側保持部6が、端子板本体部2の外周に沿ってラッピング端子3に対応する所定間隔で配設され、ここでは、10個の端末側保持部6〜610が配設されている。このような構成の端末側保持部6は、例えば、ラッピング端子3に接続された単心被覆銅線111を、端末側保持部6〜6の突出部61に沿って保持し、さらにリング部8によって拘束するようになっている。このため、端子板本体部2が傾倒する場合であっても、端末側保持部6によって、単心被覆銅線111は端子板本体部2の外周に沿って拘束された状態で、ともに傾倒するようになっている。また、端末側保持部6の基端部62と幹線側保持部7の基端部72とは、一体的に形成されている。
【0034】
つぎに、この実施の形態における可動端子板1の使用方法および作用について説明する。
【0035】
事務所や集合住宅などに通信回線を新しく敷設したり増設したりする際には、図3および図4に示すように、開閉扉101が開放されて、可動端子板1が、支持部5を介してバックパネル102に取り付けられる。そして、図1および図2に示すように、端子板本体部2をバックパネル102側に起立させた状態で、開閉扉101が閉じられる。
【0036】
そして、通信事業者が幹線側ケーブル120の接続作業を行う際は、図3および図4に示すように、開閉扉101が開放されて、端子板本体部2をバックパネル102の前方側に傾倒させた状態で、幹線側ケーブル120がネジ端子4に接続される。そして、接続作業が終了すると、端子板本体部2をバックパネル102側に起立させた状態で、開閉扉101が閉じられる。
【0037】
また、需要者が多心ケーブル110の接続作業を行う際は、図3および図4に示すように、開閉扉101が開放されて、端子板本体部2をバックパネル102の前方側に傾倒させた状態で、多心ケーブル110の単心被覆銅線111がラッピング端子3に接続される。そして、接続作業が終了すると、端子板本体部2をバックパネル102側に起立させた状態で、端子箱100の開閉扉が閉じられる。このとき、多心ケーブル110の心線数は、余裕をもって敷設しておくことにより、通信回線の増設に対応し易くなる。
【0038】
このようにして、可動端子板1のラッピング端子3とネジ端子4に、多心ケーブル110と幹線側ケーブル120とがそれぞれ接続される。
【0039】
これにより、需要者と通信事業者は、可動端子板1を責任分界点として、例えば保安器200などそれぞれの機器に対して接続作業などを行うことができる。
【0040】
つづいて、通信回線を増設する場合は、多心ケーブル110の心線数に余裕がある(空きがある)場合は、端末側の機器を、端子箱100から引き出されている多心ケーブル110の空き心線(単心被覆銅線)に接続するだけで、端末側の機器を通信網に接続できるようになる。つまり、端子箱100を開放して可動端子板1に触れることなく、通信回線が増設できる。
【0041】
また、多心ケーブル110の心線数に余裕がない(空きがない)場合は、端子箱100に可動端子板1が増設される。この場合は、開閉扉101を開放して、可動端子板1を設置可能なスペースを探す。可動端子板1を設置可能スペースとは、支持部5の水平部51cを、バックパネル102に取り付け可能で、支持部5上端と開閉扉101の内周との間の距離が、ラッピング端子3の高さhよりも大であればよい。そして、設置可能スペースに可動端子板1を配設し、ラッピング端子3とネジ端子4に、それぞれ多心ケーブル110と幹線側ケーブル120とが接続される。
【0042】
以上のように、端子板本体部2は、開閉扉101によって端子箱100が閉塞された状態では起立状態で端子箱100内に収納でき、開閉扉101によって端子箱100が開放された状態では、バックパネル102の前方側に傾倒させることにより端子箱100から外方へ突出させることができるので、可動端子板1は、高さがバックパネル102から開閉扉101までの高さより大であっても、端子箱100に収容することができる。したがって、可動端子板2を従来の端子板よりも大型化することができ、端子板を増設しなくとも、回線の増加に対応することが可能となる。これにより、バックパネル102よりも小さい端子板本体部2であれば、端子箱100に収容することができるので、端子箱100の限られたスペースを有効利用可能である。具体的には、端子板本体部2をバックパネル102の前方側に傾倒させた状態で、端子箱100から突出してしまう場合であっても、端子板本体部2を起立させることによって端子箱100に収容することができる。このため、可動端子板1はより多くのラッピング端子3およびネジ端子4を有する端子板を配設可能となるので、多心ケーブル110の心線数が多い端子板を予め接続しておくことが可能となる。つまり、通信回線の増設時に、可動端子板1を増設しなくとも(端子箱100に触れることなく)、多心ケーブル110が接続された中継機器と端末側機器との接続作業のみで、通信回線の増設に対応できる場合を増やすことができる。
【0043】
また、多心ケーブル110または幹線側ケーブル120の着脱時は、端子板本体部2をバックパネル102の前方側に傾倒させることができるので、多心ケーブル110または幹線側ケーブル120の着脱が容易である。つまり、多心ケーブル110または幹線側ケーブル120の着脱作業がし易い位置に、可動端子板1を傾倒させることができるので、狭小なスペースの端子箱100の中であっても作業性を損なうことがない。さらに、可動端子板1にラッピング端子3およびネジ端子4が密集して配設されていても、作業性を損なうことがない。
【0044】
また、端子板本体部2は、バックパネル102に固定された支持部5によって傾倒可能に支持されているので、バックパネル102と支持部5との間に収容スペースを形成することができる。このため、収容スペースに、例えば保安器2などの他の機器を配設し、その上方に端子板本体部2を配設することが可能となるので、端子箱100内のスペースを有効利用できる。
【0045】
また、支持部5には、多心ケーブル110および幹線側ケーブル120を拘束するケーブル拘束具としての端末側保持部6と、幹線側保持部7と、リング部8とが設けられているので、端子板本体部2が傾倒する場合でも、多心ケーブル110および幹線側ケーブル120の動きを拘束することができる。つまり、ケーブル拘束具としての端末側保持部6、幹線側保持部7、リング部8によって、端子板本体部2の傾倒時も、幹線側ケーブル120および多心ケーブル110が端子板本体部2の外周に沿うように保持されるので、端子板本体部2が傾倒する際にも取り回しが良い。
【0046】
さらに、ラッピング端子3は、単心被覆銅線111を1周巻きが可能な程度の長さに設定され、既存のラッピング端子よりも短いため、可動端子板1の厚さを小とすることができる。つまり、保安器200と開閉扉101の内周とのスペースが小さい場合であっても、可動端子板1を設置可能となり、端子箱100のスペースをより有効利用することが可能である。
【0047】
さらにまた、可動端子板1は、既設の端子箱100にも支持部5を介して容易に取り付けることができる。
【0048】
(実施の形態2)
図5は、この発明の実施の形態2を示している。この実施の形態では、端子板本体部20の一方の面(前面側)に複数の幹線側端子としてのネジ端子40が配設され、他方の面(背面側)に複数の端末側端子としてのラッピング端子30が配設されている点が、実施の形態1と異なる。このため、実施の形態1と同等の構成については、同一または対応する符号を付することで、その説明を省略する。
【0049】
このような構成の端子板本体部20は、図5に示すように、端子箱100への収容時は、軸52a、52bを介して起立し、ラッピング端子30が保安器200側に位置し、ネジ端子40は前面側に露出した状態となる。このとき、端子板本体部20に配設されたラッピング端子30と保安器200とは、接触せずにスペースを有し、ネジ端子40と、開閉扉101とは、接触せずにスペースを有すようになっている。
【0050】
この実施の形態においては、開閉扉101を開放した状態で、ラッピング端子30が保安器200側に位置しており、前面側に露出しないようにすることができる。このように、端子箱100が設置される場所の作業スペースや、開閉扉101の形状や構造などに合わせて、ラッピング端子30およびネジ端子40の取付面を変えることができる。このため、ラッピング端子30およびネジ端子40への通信回線の着脱作業がより容易になる。例えば、ネジ端子40に対する通信回線の着脱作業が多い場合には、ネジ端子40を前面側に露出させておくことで、端子板本体部2を傾倒させることなく着脱作業を行えるようにし、着脱作業をより少ない手順で行えるようにすることが可能である。
【0051】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、端末側端子および幹線側端は、それぞれラッピング端子、ネジ端子として説明したが、端子の種類はこれに限定されないことはもちろんである。
【符号の説明】
【0052】
1 可動端子板
2 端子板本体部
3 ラッピング端子(第1の端子)
4 ネジ端子(第2の端子)
5 支持部
6 端末側保持部
7 幹線側保持部
100 端子箱
101 開閉扉(扉)
102 バックパネル(取付け面)
110 多心ケーブル(幹線側通信回線、一方の通信回線)
120 ケーブル(幹線側通信回線、他方の通信回線)
200 保安器(幹線側機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の通信回線と他方の通信回線との接続地点である責任分界点に配置され、扉によって閉塞可能な端子箱内に収容可能な可動端子板であって、
前記端子箱の取付け面の前方側に傾倒可能に配設された端子板本体部と、
前記端子板本体部の一方の面に設けられ、前記一方の通信回線と接続可能な第1の端子と、
前記端子板本体部の他方の面に設けられ、前記他方の通信回線と接続可能な第2の端子と、
を備え、
前記端子板本体部は、前記扉によって前記端子箱が閉塞された状態では起立状態で前記端子箱内に収納され、前記扉によって前記端子箱が開放された状態では前記取付け面の前方側に傾倒させることにより前記端子箱から外方へ突出する、
ことを特徴とする可動端子板。
【請求項2】
前記端子板本体部は、前記端子箱の前記取付け面に固定された支持部によって傾倒可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の可動端子板。
【請求項3】
前記支持部には、一方の通信回線のケーブルと他方の通信回線のケーブルとを拘束するケーブル拘束具が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の可動端子板。
【請求項4】
前記第1の端子と前記第2の端子の少なくともいずれか一方は、ラッピング端子から構成されており、該ラッピング端子のピンの長さは既存のラッピング端子よりも短く設定されている、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の可動端子板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−25866(P2013−25866A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156067(P2011−156067)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】