説明

可動蓋付き容器

【課題】 本願発明の技術課題は、マニキュア容器のような揮発成分を含む内容物を収納し、キャップを取外した状態で長い時間使用することの多い容器において、簡易的に口筒部に蓋ができる構成を見出すことにある。
【解決手段】 胴部の上端に口筒部を起立設した有底筒状の容器本体と、口筒部に密閉状に組付き固定するキャップ体を有する容器において、容器本体に組付き固定する固定部を介して可動蓋部を、口筒部の上端部近傍高さ位置に配設される蝶番部を基端軸として起立姿勢と倒伏姿勢間を移動可能に付設し、キャップ体を口筒部に組付け固定した状態で、可動蓋部をキャップ体の外面の上下方向に沿って起立姿勢にし、キャップ体を取外した状態で、可動蓋部を倒伏姿勢として口筒部の開口部を閉状態とするように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップを取外して使用している際における、内容物の成分の揮発を防ぐために、簡単な操作で口筒部に蓋ができるようにした容器に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、先端にブラシを取り付けた塗布具付きキャップを有するマニキュア容器に係る発明が記載されている。
この種の容器ではキャップを取外し、このキャップを手で掴持し、ブラシに溜まったマニキュアを爪に塗布するようにして使用する。
【特許文献1】特開2003−175961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、マニキュア容器の場合には、複数の爪にマニキュアを塗布する等、キャップを外した状態での作業時間が長くなり、その間は容器本体の口筒部は開放状態になる。一方、マニキュア液は相当量の揮発成分である溶媒を含むものであり、口筒部の開放時間が長くなると液の粘度が高くなってしまうと云う問題を生じる。また、溶媒が大気中に揮散するため安全衛生面と云う点からも問題がある。
【0004】
本願発明の技術課題は、マニキュア容器のような揮発成分を含む内容物の収納し、キャップを取外した状態で長い時間使用することの多い容器において、簡易的に口筒部に蓋ができる構成を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決する本発明の手段のうち、基本的な構成は、
胴部の上端に口筒部を起立設した有底筒状の容器本体と、口筒部に密閉状に組付き固定するキャップ体を有する容器において、
容器本体に組付き固定する固定部を介して、可動蓋部を、口筒部の上端部近傍高さ位置に配設される蝶番部を基端軸として起立姿勢と倒伏姿勢間を移動可能に付設すること、
キャップ体を口筒部に組付け固定した状態で、可動蓋部をキャップ体の外面の上下方向に沿って起立姿勢にし、
キャップ体を取外した状態で、可動蓋部を倒伏姿勢として、口筒部の開口部を閉状態とするように構成する、
と云うものである。
【0006】
上記した構成は、キャップ体の他に可動蓋部を容器本体に組付け固定するようにして、たとえばマニキュア容器でキャップ体を取外した状態で使用中の時には、この可動蓋部を指先で倒伏姿勢にして口筒部を簡単に覆うことができるようにする、と云う基本的な考え方に基づくものである。
この可動蓋部は口筒部の上端部近傍高さ位置に配設される蝶番部を基端軸として、起立姿勢と倒伏姿勢間を指先で簡単に回動させることができる。
【0007】
また、キャップ体を口筒部に組付け固定した状態では、この可動蓋部をキャップ体の外面の上下方向に沿って起立姿勢とすることにより、全体形状がスッキリとするように、また保管等の際に邪魔にならないように可動蓋部を収めることが可能となる。
【0008】
本発明の他の構成は、上記した基本的な構成に加えて、可動蓋部を平板片状とし、倒伏姿勢で口筒部の上端面にこの可動蓋部の片面が当接し、口筒部の開口部を閉状態とするように構成する、と云うものである。
【0009】
上記構成のように可動蓋部の形状を平板状とすることにより、倒伏状態で容易に口筒部を閉状態とすることができ、また、起立状態では邪魔にならないようにキャップ体の外側の上下方向に沿ってスッキリと収めることができる。
【0010】
本発明のさらに他の構成は、
胴部の上端部に段差状に縮径した周段部を周設し、
固定部を、周段部に外嵌する嵌合環と、この嵌合環から起立設する起立板片を有する構成とし、
起立板片の上端部と可動蓋部の基端部で蝶番部を形成する構成とする、
と云うものである。
【0011】
上記構成は、固定部と蝶番部に関する具体的な構成例に係るもので、上記構成により、胴部の上端部に形成した周段部を利用して嵌合環を外嵌させることにより、容器本体に固定部をしっかりと組付き固定することができると共に、スッキリとした外観とすることができる。
【0012】
ここで、起立板片は嵌合環の配設される胴部上端部と、蝶番部が配設される口筒部の上端部近傍と云う高さ位置を調整する機能を有する部分である。
蝶番部は、起立板片の上端部に付設した蝶番片と、可動蓋部の基端部に付設した蝶番片に軸体を挿通して構成することもできるし、
起立板片の上端に薄肉に形成された蝶番部、所謂、薄肉ヒンジ部を介して可動蓋部を一体連設する構成とすることもできる。
【0013】
本発明のさらに他の構成は、可動蓋部を延設して蝶番部の反対側に摘み片を付設する、と云うものである。
【0014】
上記構成によれば、摘み片を利用して可動蓋部の起立姿勢と倒伏姿勢間の移動をより容易に実施することができる。
【0015】
本発明のさらに他の構成は、マニキュア容器であり、キャップ体の内部に塗布用のブラシを垂下設すると云うものである。
【0016】
上記構成は、用途を特定したものであり、キャップ体を取外した状態でも可動蓋部により簡単に口筒部を閉状態にしてマニキュア液の溶媒成分の揮発を効果的に抑制することができる。
勿論、本発明の用途はマニキュア容器に限定されるものではなく、たとえばマスカラ、アイライナー、ヘアマニキュア等の容器においても同様な作用効果が発揮される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記した構成であり、以下に示す効果を奏する。
基本的な構成のものにあっては、キャップ体を取外した状態で使用中の時には、可動蓋部を指先で倒伏姿勢にして口筒部を簡単に覆うことができる。
また、キャップ体を口筒部に組付け固定した状態では、可動蓋部をキャップ体の外面の上下方向に沿って起立姿勢とすることにより、全体形状をスッキリとして、保管等の際に邪魔にならないように可動蓋部を収めることが可能となる。
【0018】
可動蓋部を平板状とするものにあっては、倒伏状態で容易に口筒部を閉状態とすることができ、また起立状態では邪魔にならないようにキャップ体の外側の上下方向に沿ってスッキリと収めることができる。
【0019】
固定部を周段部に外嵌する嵌合環と起立板片で構成するものにあっては、容器本体に固定部をしっかりと組付き固定することができると共に、スッキリとした外観とすることができる。
また、起立板片により、この起立板片の上端部と可動蓋部の基端部とで構成する蝶番部を口筒部の上端近傍に容易に配設することができる。
【0020】
摘み片を付設するものにあっては、摘み片を利用して可動蓋部の起立姿勢と倒伏姿勢間の移動(回動)をより容易に実施することができる。
【0021】
マニキュア容器として使用するものにあっては、キャップ体を取外した状態でも可動蓋部により簡単に口筒部を閉状態にして内容液の溶媒成分の揮発を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を実施例に沿って、図面を参照しながら説明する。
図1〜図4本発明の可動蓋付き容器の一実施例であるマニキュア容器を示すもので、図1は斜め後方からの斜視図、図2は図1の容器で、キャップ体6を取外した状態の平面図、図3は図1の容器の半縦断図、図4(a)はキャップ体の半縦断面図、図(b)はキャップ体6を取外した状態の半縦断面図である。
【0023】
この容器は胴部4上端に口筒部2を起立設した有底筒状の容器本体1と、口筒部2に密閉状に組付き固定するキャップ体6と、容器本体1に組付き固定する固定部12と、この固定部12に蝶番部14を介して回動可能に付設される可動蓋部13と云う、主として4ケの部材から構成される。
【0024】
容器本体1は透明な合成樹脂製のブロー成形品で、胴部4は角取した正方形筒状であり、この胴部4の上端部には段差状、そして円筒状に縮径した周段部4aが周設されている。
【0025】
キャップ体6は、合成樹脂製の射出成形品である有頂円筒状のキャップ7と、このキャップ7内に嵌入するエラストマー製で有底筒状の固定筒片8を有し、この固定筒片8の下端から軸棒9aの先端に塗布用のブラシ9bを付設したブラシ部9を垂下設している。
また、キャップ体6は口筒部2に螺合により組付き固定されるが、この際、固定筒片8により容器の密閉性が保持される。
【0026】
固定部12は、合成樹脂製の射出成形品で、円環状の嵌合環12aの後部から起立板片12bを起立設したものであり、起立板片12bの上端面に軸孔を貫通形成し、軸体14aの軸受けの機能を発揮する一対の軸受蝶番片12hが付設されている。
【0027】
可動蓋部13は平板状であり、基端部には軸孔の貫通し、軸体14aを軸として回動変位する回動蝶番片13hが付設され、さらにこの回動蝶番片13hに可動蓋部13と直角になるように摘み片15が付設されている。
【0028】
固定部12は、嵌合環12aを容器本体1の胴部4に形成された周段部4aに外嵌するようにして容器本体1に組付き固定され、また、起立板片12bに付設される一対の軸受蝶番片12hと、可動蓋部13の基端部に付設される回動蝶番片13hの軸孔に軸体14aを挿通して蝶番部14が形成されている。
【0029】
そして、キャップ体6を口筒部2に螺合組付きさせた状態では、図1あるいは図3に示されるように、起立板片12bは容器の後部で、キャップ7の外面の上下方向に沿うように位置し、また可動蓋部13は起立状態で、これもキャップ7の外面の上下方向に沿うように位置しており、嵌合環12aが周段部4aに収まっていることも相俟って全体としてスッキリとした外観としている。
【0030】
また、図4(b)に示されるようにキャップ体6を取外した状態では、摘み片15を利用して可動蓋部13を蝶番部14を基端軸として、2点鎖線で示す起立状態から回動させて倒伏状態とし、平板状の可動蓋部13の片面を口筒部2の上端面に当接させる。このように当接させることにより口筒部2の開口部3を容易に閉状態とすることができ、マニキュア液の溶媒成分の揮発を効果的に抑制することができる。
また、キャップ体6でのマニキュア液の塗布操作を終了した際には、この可動蓋部13を起立状態に戻して、キャップ体6を口筒部2に螺合組付けする。
【0031】
以上、本発明の可動蓋付き容器について実施例に沿ってその構成とその作用効果について説明したが、本発明の作用効果は上記実施例に限定されるものではない。
本発明の容器はマニキュア容器だけでなく、たとえばマスカラ、アイライナー、ヘアマニキュアの容器等で、内容物が揮発成分を含み、さらにキャップ体を取外した状態で長い時間使用するタイプの容器に適したものである。また揮発成分を含まない場合でも、誤って容器本体を倒した際の液漏れを防ぐ目的で使用することもできる。
【0032】
また、可動蓋部の形状は上記実施例のように平板状に限定されるものではなく、たとえば口筒部の開口部に嵌入するようにシール筒片を付設するような構成とすることもできる。
また、本実施例のように蝶番片に軸体を挿通するタイプの蝶番部の場合には、スプリングを配設して、たとえばキャップ体6を取外した際にこのスプリングの作用により、可動蓋部13を自動的に倒伏状態とするような構成とすることもできる。また、起立板片の上端を薄肉形成して蝶番部、所謂、薄肉ヒンジ部とし、この蝶番部を介して可動蓋部を一体連設する構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の可動蓋付き容器は、揮発成分を含む内容物を収納し、キャップ体を取外した状態で長い時間使用する必要のある容器において、容易に口筒部に蓋をできるようにしたものであり、マニキュア容器等の容器として幅広い用途への展開が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の容器の一実施例の斜め後方からの斜視図である。
【図2】図1の容器のキャップ体を取外した状態の平面図である。
【図3】図1の容器の半縦断側面図である。
【図4】図1の容器の(a)はキャップ体の半縦断側面図、(b)はキャップ体を取外した状態の半縦断側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ;容器本体
2 ;口筒部
3 ;開口部
4 ;胴部
4a;周段部
6 ;キャップ体
7 ;キャップ
8 ;固定筒片
9 ;ブラシ部
9a;軸棒
9b;ブラシ
12;固定部
12a;嵌合環
12b;起立板片
12h;軸受蝶番片
13;可動蓋部
13h;回動蝶番片
14;蝶番部
14a;軸体
15;摘み片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部(4)の上端に口筒部(2)を起立設した有底筒状の容器本体(1)と、前記口筒部(2)に密閉状に組付き固定するキャップ体(6)を有する容器において、容器本体(1)に組付き固定する固定部(12)を介して可動蓋部(13)を、口筒部(2)の上端部近傍高さ位置に配設される蝶番部(14)を基端軸として起立姿勢と倒伏姿勢間の移動可能に付設し、前記キャップ体(6)を口筒部(2)に組付け固定した状態で、前記可動蓋部(13)をキャップ体(6)の外面の上下方向に沿って起立姿勢にし、前記キャップ体(6)を取外した状態で、前記可動蓋部(13)を倒伏姿勢として前記口筒部(2)の開口部(3)を閉状態とするように構成したことを特徴とする可動蓋付き容器。
【請求項2】
可動蓋部(13)を平板片状とし、倒伏姿勢で口筒部(3)の上端面に前記可動蓋部(13)の片面が当接し、口筒部(2)の開口部(3)を閉状態とするように構成した請求項1記載の可動蓋付き容器。
【請求項3】
胴部(4)の上端部に段差状に縮径した周段部(4a)を周設し、固定部(12)を、該周段部(4a)に外嵌する嵌合環(12a)と、該嵌合環(12a) から起立設する起立板片(12b)を有する構成とし、該起立板片(12b)の上端部と可動蓋部(13)の基端部で蝶番部(14)を形成する構成とした請求項1または2記載の可動蓋付き容器。
【請求項4】
可動蓋部(13)を延設して蝶番部(14)の反対側に摘み片(15)を付設した請求項1、2または3記載の可動蓋付き容器。
【請求項5】
マニキュア容器であり、キャップ体(6)の内部に塗布用のブラシ(9b)を垂下設した請求項1、2、3または4記載の可動蓋付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−78850(P2009−78850A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250926(P2007−250926)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】