説明

可塑化装置

【課題】剪断力が大きく、混錬作用が働く可塑化装置を提供すること。
【解決手段】中心部に穴を有する固定円板2と該固定円板2と対向する回転円板1とを有し、その対向面間に該固定円板2と該回転円板1の周縁部から原料を送り込み途中で該原料を可塑化させつつ可塑化した溶融原料を該固定円板2の該穴から外部に送り出す可塑化装置において、前記回転円板1と前記固定円板2の少なくとも一方は、対向する面に周縁部から中心部に向かう螺旋状溝4を持ち、該螺旋状溝4には前記原料の流れに抵抗する抵抗部材43が設けられていることを特徴とする可塑化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機や射出成形機に適用される可塑化装置に関し、さらに詳しくは固定円板と回転円板を使った樹脂可塑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可塑化装置として、図11〜13に示すように、例えば、固定円板に螺旋状溝を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図11は、従来の可塑化装置の全体構造を示す概略図であり、台盤52上には、電動機53、減速機54及び固定盤55が固定されている。固定盤55には、背面部に加熱装置、56´を取り付けた固定円板51が固定され、該固定円板51の中央には導管57が固定盤55を貫通して外部へ突出固着されている。一方、減速機54には、回転円板50が回転軸58を介して連結されており、回転円板50は、固定盤55に回転可能に嵌め込まれている。動力は、電動機53から減速機54を介して回転円板50に伝達される。
【0004】
固定円板51には、図12に示すように円板の周縁部から中心部に向かう螺旋状溝cが加工されている。この溝cの深さは、図13に示すように、周縁部から中心部にかけて一定で、中心部のみ深さが大になっている。一方の回転円板50の対向面は、平面である。
【0005】
いま原料溜まり59から落下した原料は、固定円板51に形成された溝cの開口部A(図12参照)より落下し、回転円板50と原料との摩擦により固定円板51の溝c内をその中心に向かって送られながら加熱装置56、56´により加熱され、回転円板50の表面と固定円板51の溝底とで剪断力を受け可塑化される。
【特許文献1】特開昭61−262107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで従来のこの種の可塑化装置では、上記したごとく回転円板50の固定円板51に対する対向面が滑らかで、溝cの底及び側壁も滑らかであるため、摩擦力が小さくて原料の発熱が少なく、溶融状態でかかる剪断力も小さい。その結果均一な混錬状態を作ることができない。
【0007】
本発明は、上記従来の可塑化装置の問題に鑑みてなされたものであり、剪断力が大きく、混錬作用が働く可塑化装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、中心部に穴を有する固定円板と該固定円板と対向する回転円板とを有し、その対向面間に該固定円板と該回転円板の周縁部から原料を送り込み途中で該原料を可塑化させつつ可塑化した溶融原料を該固定円板の該穴から外部に送り出す可塑化装置において、前記回転円板と前記固定円板の少なくとも一方は、対向する面に周縁部から中心部に向かう螺旋状溝を持ち、該螺旋状溝には前記原料の流れに抵抗する抵抗部材が設けられていることを特徴とする可塑化装置である。
【0009】
螺旋状溝は原料の流れに抵抗する抵抗部材が設けられているので、溶融状態の原料にかかる剪断力を大きくできると共に、混錬作用を働かせることができる。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の可塑化装置であって、前記回転円板と前記固定円板の少なくとも一方は、対向する面に周縁部から中心部に向かう螺旋状溝を複数持つことを特徴としている。
【0011】
本発明のように、抵抗部材を螺旋状溝に設けた場合、原料の流れが抵抗部材により抑制される結果、吐出量が低減されることも考えられるが、上記形態のように螺旋状溝を複数有することで、剪断力を向上しつつ吐出量も遜色ない可塑化装置を提供することができる。さらに、複数の螺旋状溝を有することで、中心部における樹脂の速度が周縁部における樹脂の速度に対して低下する割合が大きくなり、その結果、樹脂が中心部において圧縮されやすくなる。そのため、溶融過程で入り込んだ気泡を効果的に除くことができる。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の可塑化装置であって、前記抵抗部材は前記螺旋状溝の前記中心部に設けられていることを特徴としている。
【0013】
原料は中心部付近で溶融状態の原料になるので、溶融状態の原料が抵抗部材を乗り越えることになり、剪断力がより一層大きくなる。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、請求項1に記載の可塑化装置であって、前記抵抗部材は前記螺旋状溝の底或いは及び側壁から該溝の空間に突き出す突起を含むことを特徴としている。
【0015】
溶融状態の原料が乗り越える抵抗部材が突起であるので、より一層大きな剪断力が作用すると共に、混錬作用も増大する。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、請求項1に記載の可塑化装置であって、前記抵抗部材は前記螺旋状溝の側壁より低い堰を含むことを特徴としている。
【0017】
溶融状態の原料が乗り越える抵抗部材が堰であるので、大きな剪断力と混錬作用が溝幅全体に作用する。
【0018】
また、請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の可塑化装置であって、前記抵抗部材は、前記螺旋状溝の深さが前記周縁部から前記中心部に向けて小さくなるように、前記回転円板と前記固定円板との少なくとも一方に形成される前記螺旋状溝の底部であることを特徴としている。
【0019】
螺旋状溝の深さが周縁部から中心部に向けて小さくなるので、溝の断面積が中心部に向けて小さくなり、溶融状態の原料に圧縮作用が働く。その結果、溶融過程で入り込んだ気泡を除くことができる。さらに、螺旋状溝に形成されている抵抗部材としての突起部や堰と併用することにより、圧縮作用が働く状態で剪断力を受けるので、原料の可塑化に、より一層寄与する。さらに複数の螺旋状溝を形成し、且つ本構成を採用すれば、原料の圧縮効果が飛躍的に高まることになる。
【発明の効果】
【0020】
螺旋状溝は原料の流れに抵抗する抵抗部材が設けられているので、溶融状態の原料にかかる剪断力を大きくできると共に、混錬作用を働かせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1〜3に本発明を実施するための最良の形態を示す。図1は、可塑化装置の全体構造を示す概略図、図2は、回転円板の正面図、図3は、図2のD−D線断面図である。
【0023】
台盤31上には、モータ33、減速機34及び固定盤32が固定されている。固定盤32には、背面部にヒータ37´を取り付けた固定円板2が固定され、該固定円板2の中央には導管9が固定盤31を貫通して外部へ突出固着されている。一方、減速機34には、背面部にヒータ37を取り付けた回転円板1が回転軸36を介して連結されており、回転円板1は、固定盤32に回転可能に嵌め込まれている。動力は、モータ33から減速機34を介して回転円板1に伝達される。35は、回転軸36の軸受けである。
【0024】
回転円板1には、図2、3に示す螺旋状溝4が形成されている。すなわち、回転円板1には、円板の周縁部(原料の入口)から中心部(溶融原料の出口)に向かう螺旋状溝4が形成され、中心部付近の該溝4の底42には抵抗部材としてのいぼ状突起43を備えている。
【0025】
原料を供給するホッパー38の下端部が回転円板1の溝4に当接されており、原料が回転円板1の螺旋状溝4に供給される。
【0026】
いまホッパー38から原料が落下して回転円板1の螺旋状溝4に落下し、固定円板2と原料の摩擦と、回転円板2の螺旋状溝4の底42および側壁41と原料の摩擦と、により、溝4内をその中心部に向かって送られながら、ヒータ37、37′により加熱され、溝4の途中、たとえばいぼ状突起43が現れる位置付近で溶融原料になる。溶融原料は、固定円板2の表面と回転円板1の溝底42とで剪断力を受け可塑化されるが、中心部付近溝底42にいぼ状突起43があるので、溶融原料にかかる剪断力を大きくできると共に、混錬作用を働かせることができる。その結果、溶融原料が均一化される。
【0027】
突起の高さは低すぎると混錬作用が弱く、高すぎると溶融原料が流れにくくなる。溝4の側壁41の高さをh、いぼ状突起43の高さをh′とすると、実験的にh′/h=0.1〜0.8が望ましい。
【0028】
本実施形態では突起を溝底42のみに設けたが、溝側壁41にも設けるとよい。それにより混錬作用が増大する。
【0029】
(実施形態2)
図4及び図5は、本発明の第2実施形態である回転円板1の抵抗部材形状を示すもので、図4は回転円板の正面図、図5は図4のE−E線断面図である。なお、本実施形態の可塑化装置は、回転円板1以外は、実施形態1と同じである。
【0030】
本実施形態の回転円板1は、中心部付近の溝4に抵抗部材としての堰44を備えている。堰44は、高さが溝側壁41より低く、中心から径方向に放射状に配置されている。
【0031】
図6に示すように、堰44′を溝側壁41に接するように設けてもよい。こうすることで、堰の長さが大になり、溶融原料にかかる剪断力を一層大きくできると共に、混錬作用を強めることができる。
【0032】
(実施形態3)
図7〜図9は、本発明の第3実施形態である回転円板1の溝形状を示すもので、図7は回転円板の正面図、図8は図7のF−F線断面図、図9は図7のG視図である。
【0033】
本実施形態の螺旋状溝4は、溝の深さが周縁部(原料の入口)から中心部(溶融原料の出口)に向けて小さくなっている。すなわち、図9に示すように、溝底42が螺旋階段のように周辺部から中心部に向けて持ち上がっている。したがって、図8に示すように、溝の深さを周縁部から中心部に向けてd1、d2、d3、・・・・・とすると、d1≧d2≧d3≧d4≧d5≧d6≧d7の関係がある。
【0034】
本実施形態の回転円板1は、上記のように、溝の深さが周縁部(原料の入口)から中心部(溶融原料の出口)に向けて小さくなる螺旋状溝4を持つので、溝の断面積が中心部に向けて小さくなり、溶融状態の原料に圧縮作用が働く。その結果、溶融過程で入り込んだ気泡を除くことができる。
【0035】
なお、本実施形態では、溝の深さが連続的に小さくなる例であったが、例えば、入口付近と出口付近は一定の深さで、入口付近と出口付近を結ぶ区間の溝深さを連続的に小さくなるようにしてもよい。
【0036】
(実施形態4)
図10は、本発明の第4実施形態である回転円板1の正面図である。図10中4a、4b、4cが螺旋状溝で、本実施形態の回転円板1は、螺旋状溝を3つ持っている。
【0037】
螺旋状溝を複数持つので、可塑化ルートが複数になり、吐出量が多くなる。さらに、短い距離で周速が下がるので圧縮作用が働き、溶融過程で入り込んだ気泡を除くことができる。このような構成は、実施形態1から3の構成に付加することができる。
【0038】
上述の実施形態では、いずれも回転円板に抵抗部材を持つ螺旋状溝を設けた場合であったが、固定円板に設けることもできることは、自明である。
【0039】
さらに、本実施形態1から4の構成を組み合わせて実施することもできる。具体的には、実施形態1の構成に実施形態2、3、4の構成をそれぞれ付加したり、実施形態2の構成に実施形態3、4の構成をそれぞれ付加したり、実施形態1あるいは実施形態2の構成に実施形態3及び4の構成を付加したりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、自動車産業や電気・電子産業などにおけるプラスチック部品製造に広く利用される可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1に係る可塑化装置の全体構造を示す概略図である。
【図2】実施形態1における回転円板の正面図である。
【図3】図2のD−D線断面図である。
【図4】実施形態2における回転円板の正面図である。
【図5】図4のE−E線断面図である。
【図6】実施形態2における別の形態の回転円板の正面図である。
【図7】実施形態3における回転円板の正面図である。
【図8】図7のF−F線断面図である。
【図9】図7のG視図である。
【図10】実施形態4における回転円板の正面図である。
【図11】従来の可塑化装置の一例を示す全体図である。
【図12】従来の固定円板の一例を示す正面図である。
【図13】図12のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・・・・・・回転円板
2・・・・・・・・固定円板
4・・・・・・・・螺旋状溝
41・・・・・・・溝側壁
42・・・・・・・溝底
43・・・・・・・いぼ状突起(抵抗部材)
44、44′・・・堰(抵抗部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に穴を有する固定円板と該固定円板と対向する回転円板とを有し、その対向面間に該固定円板と該回転円板の周縁部から原料を送り込み途中で該原料を可塑化させつつ可塑化した溶融原料を該固定円板の該穴から外部に送り出す可塑化装置において、
前記回転円板と前記固定円板の少なくとも一方は、対向する面に周縁部から中心部に向かう螺旋状溝を持ち、該螺旋状溝には前記原料の流れに抵抗する抵抗部材が設けられていることを特徴とする可塑化装置。
【請求項2】
前記回転円板と前記固定円板の少なくとも一方は、対向する面に周縁部から中心部に向かう螺旋状溝を複数持つことを特徴とする請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項3】
前記抵抗部材は前記螺旋状溝の前記中心部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項4】
前記抵抗部材は前記螺旋状溝の底或いは及び側壁から該溝の空間に突き出す突起を含むことを特徴とする請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項5】
前記抵抗部材は前記螺旋状溝の側壁より低い堰を含むことを特徴とする請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項6】
前記抵抗部材は、前記螺旋状溝の深さが前記周縁部から前記中心部に向けて小さくなるように、前記回転円板と前記固定円板との少なくとも一方に形成される前記螺旋状溝の底部であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の可塑化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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