可変キャパシタ、可変キャパシタ装置、高周波回路用フィルタ及び高周波回路
【課題】複数のキャパシタを組み合わせて所望の容量可変範囲を得る一方、必要とするスイッチの数を低減又はなくす。
【解決手段】可変キャパシタは、基板を含む固定部に設けられた第1の電極部と、可変キャパシタの容量を第1の電極部との間に形成する第2の電極部を有する可動部とを備える。可動部は第1の駆動信号に応答して、第2の電極部が第1の電極部と対向する対向状態と、実質的に対向しない非対向状態とに選択的になるように変位する。
【解決手段】可変キャパシタは、基板を含む固定部に設けられた第1の電極部と、可変キャパシタの容量を第1の電極部との間に形成する第2の電極部を有する可動部とを備える。可動部は第1の駆動信号に応答して、第2の電極部が第1の電極部と対向する対向状態と、実質的に対向しない非対向状態とに選択的になるように変位する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変キャパシタ、これを用いた可変キャパシタ装置、高周波回路用フィルタ及び高周波回路高周波回路用フィルタに関するものである。前記可変キャパシタ及び前記可変キャパシタ装置は、例えば、無線通信装置やRF測定装置等で用いることができるものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの無線通信技術の進展に伴い、高周波回路等で用いる可変キャパシタの重要性が高まっている。従来は、このような可変キャパシタとして半導体デバイスであるバラクタが用いられているが、そのQ値は小さく、種々の不都合を招いていた。
【0003】
そこで、下記非特許文献1には、MEMS(Micro-Electro-Mechanical System)を用いた可変キャパシタが提案されている。この可変キャパシタは、平行平板をなすように配置された固定電極及び可動電極とを備えている。前記可動部は、両電極間の間隔が変化するよう固定電極に対して移動し得るとともに、両電極間の間隔が所定間隔(初期間隔)となる位置に復帰しようとするバネ力が生ずるように、支持部により支持されている。両電極は、当該可変のキャパシタの容量を形成するための容量電極、及び、前記バネ力に抗した静電力を発生させて両者間の間隔を調整するための駆動電極として、兼用されている。
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示された可変キャパシタでは、可変により得られる最小の容量値に対する最大の容量値の比をさほど大きくすることができなかった。その理由について、以下に説明する。
【0005】
非特許文献1に開示された可変キャパシタでは、可動電極は、固定電極と可動電極との間の静電力と前記バネ力とが釣り合う位置に停止する。前記バネ力は、両電極間の間隔が初期間隔から変化した量に比例する。一方、前記静電力は、両電極間の電圧の2乗に比例しかつ両電極間の間隔の2乗に反比例する。
【0006】
したがって、両電極間の電圧を増大させていくと、両電極間の間隔が初期間隔からその1/3の間隔となるまでは、前記バネ力と前記静電力とが安定して釣り合い、印加した電圧に応じた電極間隔で可動電極が安定して停止する。一方、両電極間の電圧を増大させ、両電極間の間隔が初期間隔の1/3の間隔よりも狭まると、前記バネ力と前記静電力とが安定して釣り合うことができず、それ以上両電極間の電圧を増大させなくても、両電極間の間隔が1/3の間隔よりも狭いいずれの位置においても前記静電力が前記バネ力を上回ることになる。これにより、両電極間の間隔が初期間隔の1/3の間隔となるような電圧よりも大きい電圧を印加すると、その電圧の大きさに拘わらず、可動電極が固定電極に限界まで近づいてしまういわゆるプルイン現象が生ずる。
【0007】
このため、両電極間に印加する電圧によって両電極間の間隔を連続的に調整し得る範囲(連続調整範囲)は、初期間隔からその1/3の間隔までの範囲に制限される。したがって、非特許文献1に開示された可変キャパシタでは、初期間隔時の容量値からその容量値の1.5倍の容量値までしか変えることができなかった。
【0008】
そこで、下記特許文献1,2において、容量可変範囲を広げたりするなど所望の容量可変範囲を得ることができるようにするべく、複数の固定又は可変のキャパシタとそれらの他に特別に設けたスイッチとを組み合わせた可変キャパシタ装置が提案されている。
【0009】
特許文献1に開示された可変キャパシタ装置(特許文献1では、「可変容量コンデンサ」と称している。)は、空隙をあけて対向する2つの電極からなる第1乃至第3の固定キャパシタと、第1及び第2のMEMSスイッチとから構成されている。そして、第1の固定キャパシタ(その容量はC1)と、第2の固定キャパシタ(その容量はC2)と第1のMEMSスイッチとの直列回路と、第3の固定キャパシタ(その容量はC3)と第2のMEMSスイッチとの直列回路とが、互いに並列接続されている。この可変キャパシタ装置によれば、第1及び第2のMEMSスイッチのオンオフ状態によって、得られる合成容量をC1、C1+C2、C1+C2+C3の各容量値に可変することができる。
【0010】
特許文献2に開示された可変キャパシタ装置は、可変キャパシタとしてのMEMSキャパシタとMEMSスイッチとの直列回路が複数並列接続されて構成されている。この可変キャパシタ装置によっても、各MEMSスイッチのオンオフ状態を変えることで、得られる合成容量を種々の値に変えることができる。特許文献2の可変キャパシタ装置で用いられている可変キャパシタの単体は、基本的に、非特許文献1に開示された可変キャパシタと同様に構成されている。
【特許文献1】特開平9−199376号公報
【特許文献2】米国特許第6,593,672号明細書
【非特許文献1】Darrin J. Young and Bernhard E. Boser, A micromachined variable capacitor for monolithic low-noise VCOs, Solid-State and Actuator Workshop, Hilton Head, June 1996 pp86-89
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の可変キャパシタ装置では、固定又は可変のキャパシタの他に特別にスイッチを要していたため、占有面積が増大したり、スイッチの接点間の接触抵抗に起因してQ値が低下したり、キャパシタとスイッチとの間を接続する配線の抵抗に起因してQ値が低下したりする。
【0012】
また、用途によっては、2値の容量を得るだけで十分であるが、両容量値の比が大きいことが要請される場合もある。しかし、非特許文献1に開示された可変キャパシタや、特許文献2に開示された可変キャパシタ装置で用いられている可変キャパシタの単体では、前述したような理由で、互いの比の大きい2値の容量を得ることができなかった。そこで、例えば、十分に小さい容量値を持つ第1の固定キャパシタと、比較的大きい容量値を持つ第2のキャパシタとスイッチとの直列回路とを、並列接続することが考えられる。この場合には、前記スイッチをオフにすることで十分に小さい容量値を得ることができる一方、前記スイッチをオンにすることで比較的大きい容量値を得ることができ、互いの比の大きい2値の容量を得ることができる。しかし、この場合には、2つの固定キャパシタを要する上に、特別にスイッチを要するため、占有面積の増大やQ値の低下を招いてしまう。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複数のキャパシタを組み合わせることで所望の容量可変範囲を得ることができる一方、従来の可変キャパシタ装置に比べて特別に必要とするスイッチの数を低減又はなくすことができる可変キャパシタ装置、及び、これに用いることができる可変キャパシタを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、他のキャパシタやスイッチを特別に要することなく、互いの比が大きい2値の容量を少なくとも得ることができる可変キャパシタを提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、前記可変キャパシタ装置や前記可変キャパシタを用いた高周波回路用フィルタ及び高周波回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による可変キャパシタは、基板を含む固定部に設けられた第1の電極部と、当該可変キャパシタの容量を前記第1の電極部との間に形成する第2の電極部を有する可動部とを備え、前記可動部は、第1の駆動信号に応答して、前記第2の電極部が前記第1の電極部と対向する対向状態と前記第2の電極部が前記第1の電極部と実質的に対向しない非対向状態とに選択的になるように、変位するものである。
【0017】
本発明の第2の態様による可変キャパシタは、前記第1の態様において、前記可動部が薄膜で構成されたものである。
【0018】
本発明の第3の態様による可変キャパシタは、前記第1又は第2の態様において、前記非対向状態における前記容量がほぼゼロであるものである。
【0019】
本発明の第4の態様による可変キャパシタは、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記対向状態における前記容量は、前記非対向状態における前記容量の10倍以上であるものである。その倍率は、例えば、100倍以上でもよいし、1000倍以上でもよい。
【0020】
本発明の第5の態様による可変キャパシタは、前記第1乃至第4のいずれかの態様において、前記可動部は、前記固定部に対して固定端が固定された片持ち梁構造を持ち、前記第2の電極部は、前記可動部の先端側に配置されたものである。
【0021】
本発明の第6の態様による可変キャパシタは、前記第5の態様において、前記第1の電極部が高周波信号線の一部をなし、前記基板の主面の法線方向から見た平面視で、前記固定端側から前記先端側に向かう方向が前記高周波信号線の延びる方向と略直交するものである。
【0022】
本発明の第7の態様による可変キャパシタは、前記第5又は第6の態様において、前記可動部は、前記第2の電極部と前記固定端との間に配置された湾曲部と、前記湾曲部と前記固定端との間に配置された直線状部とを有し、前記湾曲部は、前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、自身の保有する応力によって、前記固定端側から前記先端側に向うに従って前記固定部側から反り上がるように湾曲し、前記直線状部は、前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、自身の保有する応力によって、前記固定部から間隔をあけた状態で前記固定端側から前記先端側に向うに従って前記基板の主平面と略平行に延び、前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、前記非対向状態となるものである。
【0023】
本発明の第8の態様による可変キャパシタは、前記第7の態様において、前記固定部は、前記直線状部の少なくとも一部及び前記湾曲部の少なくとも一部に対応する箇所において第3の電極部を有し、前記可動部は、前記直線状部及び前記湾曲部において第4の電極部を有し、前記第1の駆動信号として前記第3及び第4の電極部間に駆動電圧が印加されて前記第3及び第4の電極部間に作用する静電力が、前記第1の駆動信号による駆動力として前記可動部に加えられ、前記第1の駆動信号による所定の大きさ以上の駆動力が前記可動部に加えられたときに、当該駆動力によって、前記直線状部の少なくとも一部及び前記湾曲部の少なくとも一部が前記固定部側にプルインされて前記対向状態となるものである。
【0024】
本発明の第9の態様による可変キャパシタは、前記第8の態様において、前記第2の電極部と前記第4の電極部とが電気的に接続されたものである。
【0025】
本発明の第10の態様による可変キャパシタは、前記第8又は第9の態様において、前記第1の電極部と前記第3の電極部とが電気的に分離されたものである。
【0026】
本発明の第11の態様による可変キャパシタは、前記第1乃至第10のいずれかの態様において、前記基板は、CMOS部が搭載された回路基板であるものである。
【0027】
本発明の第12の態様による可変キャパシタは、前記第1乃至第11のいずれかの態様において、前記可動部は、前記対向状態において、第2の駆動信号に応答して、前記第1の電極部の少なくとも一部と前記第2の電極部との間の間隔が変化するように、部分的に変位するものである。
【0028】
本発明の第13の態様による可変キャパシタは、前記第12の態様において、前記可動部における前記第2の電極の付近の部分が前記対向状態において固定部により支持されるように、前記可動部における前記第2の電極の付近の箇所又は当該箇所に対応する前記固定部における箇所に、前記対向状態において前記固定部又は前記可動部と当接する支持突起が設けられたものである。
【0029】
本発明の第14の態様による可変キャパシタは、前記第13の態様において、前記可動部における前記第2の電極の付近の部分は、前記対向状態において、前記固定部により前記支持突起を介して両持ち状態で支持されるものである。
【0030】
本発明の第15の態様による可変キャパシタは、前記第12乃至第14のいずれかの態様において、前記第2の駆動信号として前記第1及び第2の電極部間に直流バイアス電圧が印加されて前記第1及び第2の電極部間に作用する静電力が、前記第2の駆動信号による駆動力として前記可動部に加えられるものである。
【0031】
本発明の第16の態様による可変キャパシタ装置は、複数のキャパシタを含み、当該複数のキャパシタの容量が合成されてなる合成容量が得られるように電気的に接続される可変キャパシタ装置であって、前記複数のキャパシタのうちの少なくとも1つのキャパシタは、前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタであるものである。
【0032】
本発明の第17の態様による可変キャパシタ装置は、前記第16の態様において、前記複数のキャパシタが並列接続されたものである。
【0033】
本発明の第18の態様による可変キャパシタ装置は、前記第16又は第17の態様において、前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタに対してそれぞれ独立して前記第1の駆動信号を供給し得るように構成されたものである。
【0034】
本発明の第19の態様による可変キャパシタ装置は、前記第16乃至第18のいずれかの態様において、前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタのうちの少なくとも1つの可変キャパシタと当該2つ以上の可変キャパシタのうちの他の少なくとも1つの可変キャパシタとでは、前記対向状態における前記第1及び第2の電極部同士の対向面積が異なるものである。
【0035】
本発明の第20の態様による可変キャパシタ装置は、前記第16乃至第19のいずれかの態様において、前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタであり、指令信号に応じて当該2つ以上の可変キャパシタに対してそれぞれ前記第1の駆動信号を供給する駆動回路を備えたものである。
【0036】
本発明の第21の態様による可変キャパシタ装置は、前記第16乃至第20のいずれかの態様において、前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が前記第12乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタのうちの少なくとも1つの可変キャパシタと当該2つ以上の可変キャパシタのうちの他の少なくとも1つの可変キャパシタとでは、前記対向状態における前記第1の電極部の少なくとも一部と前記第2の電極部との間の間隔の変化に対する前記第2の駆動信号の感度が異なるように構成されたものである。
【0037】
本発明の第22の態様による高周波回路用フィルタは、前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタ又は前記第16乃至第21のいずれかの態様による可変キャパシタ装置を含むものである。
【0038】
本発明の第23の態様による高周波回路は、前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタ又は前記第16乃至第21のいずれかの態様による可変キャパシタ装置を含むものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、複数のキャパシタを組み合わせることで所望の容量可変範囲を得ることができる一方、従来の可変キャパシタ装置に比べて特別に必要とするスイッチの数を低減又はなくすことができる可変キャパシタ装置、及び、これに用いることができる可変キャパシタを提供することができる。
【0040】
また、本発明によれば、他のキャパシタやスイッチを特別に要することなく、互いの比が大きい2値の容量を少なくとも得ることができる可変キャパシタを提供することができる。
【0041】
さらに、本発明によれば、前記可変キャパシタ装置や前記可変キャパシタを用いた高周波回路用フィルタ及び高周波回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明による可変キャパシタ、可変キャパシタ装置、高周波回路用フィルタ及び高周波回路について、図面を参照して説明する。
【0043】
[第1の実施の形態]
【0044】
図1は、本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタ1を模式的に示す概略平面図である。図2は、図1中のA−A’線に沿った概略断面図である。ただし、図1及び図2は、本実施の形態による可変キャパシタ1の製造途中において、犠牲層31〜33等の犠牲層を除去する前の状態を示している。犠牲層31〜33等の犠牲層は、図1及び図2では省略しているので、後述する図9(b)を参照されたい。なお、理解を容易にするため、図1では、膜10,12等の図示は省略するとともに、配線パターン11,14,15及びオン駆動用固定電極13にハッチングを付している。図1において、支持突起16a〜16dは、本来は隠れ線で示すべきであるが、図面表記の便宜上実線で示している。図3,図5及び図6はそれぞれ、本実施の形態による可変キャパシタ1の各動作状態を示す概略断面図であり、図2と同じ断面を示している。図3は後述するオン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力が両方とも印加されていない状態を示し、図5はオン駆動用静電力は印加されているがアナログ駆動用静電力は印加されていない状態を示し、図6はオン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力が両方とも印加されている状態を示している。図4は、本実施の形態による可変キャパシタ1の、図3に示す状態から図5へ示す状態へ移行する過程を示す概略断面図であり、図2と同じ断面を示している。
【0045】
本実施の形態による可変キャパシタ1は、シリコン基板等の基板2と、脚部3と、直線状部4と、湾曲部5と、直線状部6と、平板状のプレート部7と、直線状部8とを備えている。
【0046】
脚部3は、基板2上に順次形成された酸化珪素膜9,10、アルミニウム系合金膜からなる配線パターン11及び酸化珪素膜12を介して、基板2から立ち上がっている。脚部3の上部の周囲には、補強用段差をなす立ち上がり部3aが形成されている。基板2、酸化珪素膜9,10、12、配線パターン11、並びに、後述するオン駆動用固定電極13、配線パターン14,15等によって、固定部が構成されている。
【0047】
直線状部4の一端は、脚部3に機械的に接続され、固定端となっている。直線状部4は、駆動力(本実施の形態では、オン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力)が加えられていない状態で、自身の保有する応力によって、図3に示すように基板2を含む固定部から間隔をあけた状態で前記一端側から他端側に向かうに従って基板2の主平面と略平行に延びている。
【0048】
直線状部4の他端には、湾曲部5の一端が機械的に接続されている。湾曲部5は、駆動力(オン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力)が加えられていない状態で、自身の保有する応力によって、図3に示すように前記一端側から他端側に向かうに従って基板2側から反り上がるように湾曲している。
【0049】
湾曲部5の他端には、駆動力(オン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力)が加えられていない状態で自身の保有する応力によって平板状となる直線状部6の一端が、機械的に接続されている。
【0050】
直線状部6の他端には、平板状のプレート部7の一端が機械的に接続されている。プレート部7の周囲には、補強用段差をなす立ち上がり部7aが形成されている。これにより、プレート部7は、剛性を持ち、常に平板状を維持する。
【0051】
プレート部7の他端には、駆動力(オン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力)が加えられていない状態で自身の保有する応力によって平板状となる直線状部8の一端が、機械的に接続されている。直線状部8の他端は自由端となっている。直線状部6には支持突起16a,16bが設けられ、直線状部8には後述する支持突起16c,16dが設けられている。支持突起16a,16bは、図1に示すように、直線状部6において、プレート部7における図1中の左側の立ち上がり部7aから距離L1の位置に配置されている。支持突起16c,16dは、直線状部8において、プレート部7における図1中の右側の立ち上がり部7aから距離L1の位置に配置されている。支持突起16a〜16dは、図5や図6に示す状態になったときに、固定部(本実施の形態では、基板2上の酸化珪素膜12)に当接して、プレート部7の付近の部分(本実施の形態では、プレート部7、並びに、その両側の直線状部6における長さL1の部分6a及び直線状部8における長さL1の部分8a)を両持ち状態で支持する。このとき、直線状部6の長さL1の部分6a及び直線状部8における長さL1の部分8aは、バネ部として作用し、剛性を持つプレート部7を基板2と平行のまま基板2との間隔を狭め得るようにプレート部7を支持する。
【0052】
以上説明したように各部3〜8が順次機械的に直列的に接続されることによって、直線状部4、湾曲部5、直線状部6、プレート部7及び直線状部8が、全体として、直線状部4の一端を固定端とした片持ち梁構造を持つ可動部を構成している。もっとも、本発明で採用し得る可動部は、このような片持ち梁構造に限定されるものではない。
【0053】
湾曲部5は、下側の窒化珪素膜21と中間のアルミニウム系合金膜22と上側の窒化珪素膜23とが積層された3層の薄膜で構成されている。湾曲部5は、力を受けない状態において、膜21〜23の応力によって、図3に示すように上方(基板2とは反対側)に湾曲している。このような湾曲状態は、膜21〜23の成膜条件を適宜設定することにより実現することができる。
【0054】
直線状部4は、下側の窒化珪素膜24と、中間下側のアルミニウム系合金膜25と、湾曲部5からそのまま連続して延びた中間上側のアルミニウム系合金膜22と、湾曲部5からそのまま連続して延びた上側の窒化珪素膜23とが積層された4層の薄膜で構成されている。直線状部4は、力を受けない状態において、膜22〜25の応力によって、図3に示すように直線状に延びている。このような直線状態は、膜22〜25の成膜条件を適宜設定することにより実現することができる。
【0055】
脚部3は、直線状部4を構成する窒化珪素膜23,24及びアルミニウム系合金膜22,25がそのまま連続して延びることによって構成されている。アルミニウム系合金膜25は、脚部3において、窒化珪素膜12,24に形成された開口を介して配線パターン11に接続されている。
【0056】
直線状部6,プレート部7及び直線状部8は、下側の窒化珪素膜26と、中間下側のアルミニウム系合金膜27と、湾曲部5からそのまま連続して延びた中間上側のアルミニウム系合金膜22と、湾曲部5からそのまま連続して延びた上側の窒化珪素膜23とが積層された4層の薄膜で構成されている。ただし、直線状部6,8に設けられた支持突起16a〜16dは、アルミニウム系合金膜22,27で構成されている。直線状部6,8は、力を受けない状態において、膜22,23,26,27の応力によって、図3に示すように直線状に延びている。このような直線状態は、膜22,23,26,27の成膜条件を適宜設定することにより実現することができる。また、プレート部7は、膜22,23,26,27の成膜条件の設定によるのみならず、前述した立ち上がり部7aにより補強されることで、常に平板状を維持する。
【0057】
以上の説明からわかるように、本実施の形態では、可動部(直線状部4、湾曲部5、直線状部6、プレート部7及び直線状部8)の全体に渡って全体的に導通するように1層又は2層の導電膜(具体的には、アルミニウム系合金膜22,25,27)が形成され、当該導電膜が配線パターン11に電気的に接続されている。そして、本実施の形態では、当該導電膜は、その箇所に応じて、後述する電極となったりその配線となったりする。
【0058】
本実施の形態では、前記導電膜(アルミニウム系合金膜22,25,27)における直線状部4の大部分、湾曲部5の全体及び直線状部6の一部分に渡って設けられた部分が、オン駆動用可動電極(第4の電極部)となっており、このオン駆動用可動電極に対応する箇所(図1、図2、図5及び図6に示す各状態において対向する箇所)には、酸化珪素膜10,12間に、アルミニウム系合金膜からなるオン駆動用固定電極(第3の電極部)13が形成されている。
【0059】
本実施の形態では、前記導電膜(特に、アルミニウム系合金膜22,27)におけるプレート部7の部分が、容量用可動電極(第2の電極部)となっている。本実施の形態では、この容量用可動電極は、アナログ駆動用可動電極としても兼用される。オン駆動用固定電極(第3の電極部)13に対する配線をなすアルミニウム系合金膜からなる配線パターン14が、酸化珪素膜9,10間に形成されている。図面には示していないが、配線パターン14は、酸化珪素膜10に形成された開口を介して、オン駆動用固定電極13に電気的に接続されている。酸化珪素膜10,12間には、アルミニウム系合金膜からなる配線パターン15が形成されている。本実施の形態では、配線パターン15における前記容量用可動電極に対応する部分(図1、図2、図5及び図6に示す各状態においてプレート部7と対向する配線パターン15の部分)が、容量用固定電極(第1の電極部)となっている。本実施の形態では、この容量用固定電極は、アナログ駆動用固定電極としても兼用される。
【0060】
本実施の形態による可変キャパシタ1の容量は、容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量、したがって、配線パターン11,15間の容量として得られる。配線パターン15は例えば高周波信号線として用いることができ、配線パターン11は例えば接地線又は第2の高周波信号線として用いることができる。なお、本実施の形態では、配線パターン15(したがって、容量用固定電極)とオン駆動用固定電極13とは電気的に分離されているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0061】
なお、先の説明からわかるように、本実施の形態では、前記容量用可動電極と前記オン駆動用可動電極とが電気的に接続され両方とも配線パターン11に接続されていることになるが、両電極を電気的に分離することも可能である。
【0062】
本実施の形態では、図3に示す状態における湾曲部5の湾曲の程度や湾曲部5の長さなどを適宜設定することによって、図3に示す状態において、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)が容量用固定電極としての配線パターン15と実質的に対向しないように、設定されている。本実施の形態では、このように容量用可動電極が容量用可動電極と実質的に対向しないだけでなく、湾曲部5の長さなどを適宜設定することによって図3に示す状態における容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)と容量用固定電極としての配線パターン15との間の距離が十分に長くなるように設定され、これにより、図3に示す状態において、容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量がほぼゼロとなるようになっている。例えば、図3に示す状態における容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量は、図5に示す状態における容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量の1/10以下に設定してもよいし、1/100以下に設定してもよいし、1/1000以下に設定してもよい。本実施の形態では、基板2の主面の法線方向から見た平面視で、前記固定端(脚部3に接続された直線状部4の一端)側から前記自由端(直線状部8の先端)側へ向かう方向が、配線パターン15の延びる方向と直交している。したがって、その方向が斜めをなす場合に比べて、図3に示すような状態において、容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量をよりゼロに近づけ易くなるとともに、後述する第2の実施の形態の場合のように可変キャパシタ1を複数並設する場合に、配置密度を高めることができる。なお、用途によっては、図3に示す状態において、容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量が限りなくゼロに近い方が好ましい場合(例えば、後述する第2の実施の形態の場合)もあるし、ある程度の大きさとなることが好ましい場合(例えば、当該可変キャパシタ1を単体で用いる場合)もある。
【0063】
また、本実施の形態では、湾曲部5の長さや配線パターン15との位置関係などを適宜設定することによって、図5及び図6に示す各状態において、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)が容量用固定電極としての配線パターン15の一部と対向するように、設定されている。本実施の形態では、前述したように、図5及び図6に示す各状態において、支持突起16a〜16dが基板2上の酸化珪素膜12に当接するようになっている。
【0064】
なお、本実施の形態による可変キャパシタ1において、直線状部6,8、プレート部7及び配線パターン15以外の要素によって、被駆動体(直線状部6,8及びプレート部7)を駆動するマイクロアクチュエータが構成されている。
【0065】
次に、本実施の形態による可変キャパシタ1の製造方法の一例について、図7乃至図9を参照して説明する。図7乃至図9は、各製造工程を示す概略断面図であり、図2に対応している。
【0066】
まず、シリコン基板1の上に、酸化珪素膜9を全面に形成する。次いで、酸化珪素膜9上にアルミニウム系合金膜を形成し、フォトリソエッチング法により、そのアルミニウム系合金膜を配線パターン14(図7乃至図9では図示せず。図1参照。)の形状にパターニングする。その後、酸化珪素膜10をデポした後、その酸化珪素膜10に、フォトリソエッチング法により、配線パターン14とのコンタクト部となる開口を形成する。次いで、アルミニウム系合金膜をデポし、フォトリソエッチング法により、そのアルミニウム系合金膜を、配線パターン11,15及びオン駆動用固定電極13の形状にパターニングする。図7(a)は、この状態を示している。なお、配線パターン11,15及びオン駆動用固定電極13の材料としては、アルミニウム、銅、金などを用いてもよい。また、本実施の形態による可変キャパシタ1を高周波回路で使用する場合は、配線パターン11,15及びオン駆動用固定電極13の膜厚は、例えば、1μm以上あるいは2μm以上とすることも可能である。
【0067】
次に、酸化珪素膜12を全面にデポした後、その酸化珪素膜12に、フォトリソエッチング法により、脚部3における配線パターン11とのコンタクト部となる開口12aを形成する。図7(b)は、この状態を示している。
【0068】
次いで、図7(b)に示す状態の基板上の凹所(ただし、脚部3に相当する箇所を除く。)に、レジスト等の犠牲層31を埋め込む。引き続いて、レジスト等の犠牲層32を塗布し、フォトリソグラフィにより、その犠牲層32において、脚部3を形成すべき位置に開口32aを形成するとともに支持突起16a〜16dを形成すべき位置に開口32bを形成する。さらに、レジスト等の犠牲層33を塗布し、その犠牲層33を、フォトリソグラフィにより、脚部3の上部の立ち上がり部3a及びプレート部7の立ち上がり部7aを形成するための形状にパターニングする。図8(a)は、この状態を示している。
【0069】
その後、窒化珪素膜を全面にデポした後、その窒化珪素膜を、フォトリソエッチング法により、脚部3及び直線状部4における窒化珪素膜24の形状並びに直線状部6,8及びプレート部7の窒化珪素膜26の形状に、パターニングする。図8(b)は、この状態を示している。
【0070】
次に、アルミニウム系合金膜をデポし、そのアルミニウム系合金膜を、フォトリソエッチング法により、脚部3及び直線状部4におけるアルミニウム系合金膜25の形状並びに直線状部6,8及びプレート部7のアルミニウム系合金膜27の形状に、パターニングする。次いで、窒化珪素膜21をデポし、フォトリソエッチング法により、その窒化珪素膜21を湾曲部5の形状に合わせてパターニングする。引き続いて、アルミニウム系合金膜22をデポし、フォトリソエッチング法により、そのアルミニウム系合金膜22を、脚部3、直線状部4、湾曲部5、直線状部6、プレート部7及び直線状部8の形状に合わせてパターニングする。図9(a)は、この状態を示している。
【0071】
次いで、窒化珪素膜23をデポし、フォトリソエッチング法により、窒化珪素膜23を、脚部3、直線状部4、湾曲部5、直線状部6、プレート部7及び直線状部8の形状に合わせてパターニングする。図9(b)は、この状態を示している。
【0072】
その後、全面にレジスト等の犠牲層(図示せず)を塗布した後、ダイシングソーなどでチップ毎に分割する。最後に、犠牲層31〜33及びその他の犠牲層を除去する。これにより、湾曲部5が図3に示すように上方に湾曲し、本実施の形態による可変キャパシタ1が完成する。
【0073】
なお、可動部をなす窒化珪素膜21,23,24,26及びアルミニウム系合金膜22、25,27の成膜は、犠牲層を除去した後に、成膜時のストレスによって図3に示すような形状となるような条件で、行う。
【0074】
次に、本実施の形態による可変キャパシタ1の動作について、図3乃至図6を参照して説明する。
【0075】
配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間を同電位とするとともに、配線パターン11と配線パターン15との間に直流バイアス電圧を印加しなければ、オン駆動用可動電極(アルミニウム系合金膜22,25,27における直線状部4の大部分、湾曲部5の全体及び直線状部6の一部分に渡る部分)とオン駆動用固定電極13との間に静電力(オン駆動用静電力)が加わらないとともに、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)と容量用固定電極(配線パターン15の一部)との間に静電力(アナログ駆動用静電力)が加わらない。したがって、図3に示す状態となる。図3に示す状態では、直線状部4は、自身の保有する応力によって、基板2側(固定部)から間隔をあけた状態で基板2の主平面と略平行に延びている。また、図3に示す状態では、湾曲部5は、自身の保有する応力によって、基板2側から反り上がるように湾曲している。直線状部6,8は、自身の保有応力によって平板状となっている。その結果、本実施の形態では、図3に示す状態では、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)は、容量用固定電極(配線パターン15の一部)と実質的に対向しない非対向状態となり、これらの両電極間の容量Cは、ほぼゼロとなっている。両電極間の容量Cがほぼゼロであるので、両電極間の容量形成をオフにした状態と実質的に同一の状態である。したがって、図3に示す状態を非対向状態又はオフ状態と呼ぶ場合がある。
【0076】
従来のMEMS可変キャパシタでは、平行平板を基本原理としており、可変容量を形成すべき容量用可動電極と容量用固定電極は、常に対向状態で用い、両電極間の間隔を変えることで容量を可変にすべきであるというのが、従来の技術常識であった。本実施の形態による可変キャパシタ1では、このような従来の技術常識に反して、図3に示す非対向状態を実現するのである。
【0077】
次に、図3に示す状態において、配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間に所定の大きさ以上の電圧(第1の駆動信号)を印加した場合の、状態遷移について説明する。この電圧は直流でも交流でもよい。この場合、オン駆動用可動電極(アルミニウム系合金膜22,25,27における直線状部4の大部分、湾曲部5の全体及び直線状部6の一部分に渡る部分)とオン駆動用固定電極13との間にオン駆動用静電力が加わる。当初の図3に示す状態では、オン駆動用可動電極のうちの直線状部4の部分とオン駆動用固定電極13との間の間隔が、オン駆動用可動電極のうちの湾曲部5の部分とオン駆動用固定電極13との間の間隔に比べて小さいので、オン駆動用可動電極のうちの直線状部4の部分とオン駆動用固定電極13との間で大きな静電力が加わり、オン駆動用可動電極のうちの湾曲部5の部分とオン駆動用固定電極13との間でさほど静電力は加わらない。その結果、まず、図4に示すように、直線状部4のみがオン駆動用固定電極13側にプルインされることになる。図4に示す状態になると、オン駆動用可動電極のうちの湾曲部5の部分は、その固定端側付近でオン駆動用固定電極13との間の間隔が著しく狭まり、オン駆動用固定電極13から大きな静電力を受けることになる。その結果、湾曲部5は、固定端側の部分から先端側にかけて順次オン駆動用固定電極13側にプルインされていき、最終的に、図5に示すように、湾曲部5のオン駆動用固定電極13側へのプルインが完了する。
【0078】
本発明者は、このような可変キャパシタ1の動作(特に、マイクロアクチュエータの動作)を次のようにして実証した。すなわち、本発明者は、本実施の形態による可変キャパシタ1と同様の可変キャパシタを試作した。この試作の可変キャパシタにおいて、配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間に印加する直流の印加電圧を0Vから徐々に上げた後に更に徐々に下げて0Vに戻した。そして、可変キャパシタ1の前述したような各動作状態(変位状態)を示す指標値として、各印加電圧を印加しているときにそれぞれ、配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間の容量値を測定した。この可変キャパシタにおいて、測定された容量値が小さいほど、直線状部4や湾曲部5がオン駆動用固定電極13から遠ざかっていることを示し、測定された容量値が大きいほど、直線状部4や湾曲部5がオン駆動用固定電極13に近づいていることを示すことになる。その測定結果を図10に示す。図10の横軸は、配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間の直流の印加電圧を示している。図10の縦軸は、印加電圧が0Vのときに測定された容量値を基準として、この基準容量値に対する測定容量値の変化量(差分)を示している。図10において、印加電圧13Vの付近で測定容量値がステップ状に増大した点Bが、最初に図4に示すように直線状部4のみが固定電極13側にプルインされた状態に相当している。印加電圧28Vの付近で測定容量値が大きく急激に増大した点Cが、最初に図5に示すように直線状部4及び湾曲部5の両方がオン駆動用固定電極13側にプルインされた状態に相当している。図10から、本実施の形態による可変キャパシタ1の前述した動作(特に、マイクロアクチュエータの動作)が実証されたことがわかる。
【0079】
本実施の形態では、可変キャパシタ1(特にそのマイクロアクチュエータ)は、前述した動作を行うため、直線状部4を取り除いて湾曲部5の一端(図1及び図2中の左端)を直接に脚部3に固定した構成を採用するような場合に比べて、より低い駆動電圧で、湾曲部5を固定電極13側へプルインされた状態にすることができる。もっとも、本発明では、直線状部4を取り除いて湾曲部5の一端(図1及び図2中の左端)を直接に脚部3に固定した構成を採用してもよい。
【0080】
本実施の形態では、図5に示す状態において、支持突起16a〜16dが基板2上の酸化珪素膜12に当接する。そして、支持突起16a〜16dによって、プレート部7の付近の部分(本実施の形態では、プレート部7、並びに、その両側の直線状部6における長さL1の部分6a及び直線状部8における長さL1の部分8a)が両持ち状態で支持される。図5に示す状態では、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)は、容量用固定電極(配線パターン15の一部)と対向した対向状態となり、これらの両電極間の容量Cは、ほぼゼロではなく、それよりもかなり大きい予め設定された所望の値となる。したがって、図5に示す状態は、これらの両電極間の容量形成をオンにした状態(すなわち、あたかも、両電極間が対向状態で形成する容量を配線パターン11,15間にスイッチでオンにして有効に接続した状態)と実質的に同一の状態である。よって、図5に示す状態を対向状態又はオン状態と呼ぶ場合がある。この点については、図6に示す状態も図5に示す状態と同様であるので、図6に示す状態も対向状態又はオン状態と呼ぶ場合がある。
【0081】
図5に示す状態では、配線パターン11と配線パターン15との間に直流バイアス電圧は印加されておらず、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)と容量用固定電極(配線パターン15の一部)との間に静電力(アナログ駆動用静電力)が加わっていない状態を示している。図5に示す状態では、アナログ駆動用静電力が加わっていないので、直線状部6における長さL1の部分6a及び直線状部8における長さL1の部分8aは、自身が有する応力によって平板状となっている。
【0082】
図5に示す状態では、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)と容量用固定電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)とが平行平板をなしており、両電極間の間隔(ギャップ)gは初期間隔d0となっている。この初期間隔d0は、例えば、図9(b)中の犠牲層32,33の各厚さによって適宜設定することができる。また、図5に示す状態において、容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量Cは、前記間隔gのみならず両電極の対向面積Sにも依存する。
【0083】
図11は、本実施の形態による可変キャパシタ1で採用し得る現実的な寸法範囲の例において、両電極が平行平板をなす場合の各ギャップgごとの対向面積Sと容量との関係を示す図である。図11の横軸は、寸法のイメージを得るために、対向面積Sの指標値として、当該対向面積Sを持つ正方形の一辺の長さLで示している。例えば、図11の横軸の600μmは、対向面積Sが600μm×600μmであることを示している。本実施の形態による可変キャパシタ1を設計する際には、図11を利用して、ギャップgの初期間隔d0、並びに、対向面積S(すなわち、プレート部7の面積及び配線パターン15の幅)を設定することができる。
【0084】
図6は、図5と同じくオン状態(配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間に所定の大きさ以上の電圧(第1の駆動信号)が印加され、直線状部4及び湾曲部5の両方がオン駆動用固定電極13側にプルインされて、支持突起16a〜16dが基板2上の酸化珪素膜12に当接されている状態)である上に、図5の場合と異なり、配線パターン11と配線パターン15との間に所定の大きさの直流バイアス電圧(第2の駆動信号)が印加され、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)と容量用固定電極(配線パターン15の一部)との間に所定の大きさの静電力(アナログ駆動用静電力)が加わり、直線状部6,8の各部分6a,8aが下方に撓んで、両電極間のギャップgがd1(d1<d0)に狭まった状態を示している。本実施の形態では、従来の可変キャパシタと同様に、配線パターン11と配線パターン15との間に印加する直流バイアス電圧の大きさをアナログ的に変えることで、両電極間の間隔gを初期間隔d0からプルインが生ずるd0/3まで可変できるため、両電極間の容量を初期間隔d0時の容量値C0の1.5倍の容量値である1.5×C0までアナログ的に可変できるようになっている。
【0085】
なお、直線状部6,8の各部分6a,8aのバネ性の硬さは、これらの部分6a,8aの長さL1によって変わる。よって、この長さL1、すなわち、支持突起16a〜16dの位置を変えることで、両電極間の間隔gの変化に対する配線パターン11と配線パターン15との間に印加する直流バイアス電圧(第2の駆動信号)の感度を変えることができ、ひいては、オン状態で両電極間に得られる容量の変化に対する前記直流バイアス電圧の感度を変えることができる。
【0086】
なお、図5に示す状態において、湾曲部5側の支持突起16a,16bは確実に基板2上の酸化珪素膜12に当接するものの、先端側の支持突起16c,16dは酸化珪素膜12から若干浮く可能性がある。このような場合、必要に応じて、配線パターン11と配線パターン15との間に小さい直流のバイアス電圧(容量値C0からほとんど変化しない程度の大きさのバイアス電圧)を印加することで、先端側の支持突起16c,16dも確実に酸化珪素膜12に当接させることができ、安定した容量値C0を得ることができる。
【0087】
図5や図6に示すオン状態(対向状態)において、配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間を同電位とするとともに、配線パターン11と配線パターン15との間の直流バイアス電圧をゼロにすると、図3に示すオフ状態(非対向状態)に復帰する。
【0088】
以上の説明からわかるように、本実施の形態による可変キャパシタ1は、従来の可変キャパシタとスイッチとの直列回路と実質的に同等の機能を有している。すなわち、本実施の形態による可変キャパシタ1の図3に示すオフ状態(非対向状態)では、容量用固定電極と容量用可動電極との間の容量Cがほぼゼロであるので、図3に示す状態は当該直列回路において前記スイッチをオフにした状態と実質的に同等である。また、本実施の形態による可変キャパシタ1の図5及び図6に示すオン状態(対向状態)は、当該直列回路において前記スイッチをオンにした状態と実質的に同等である。しかも、本実施の形態による可変キャパシタ1では、実際はスイッチを有しているわけではないので、特別なスイッチが不要となり、これにより、占有面積を低減することができるとともにQ値の低下を防止することができる。また、配線による、RF信号の反射損や、インダクタンス成分、寄生容量なども、低下させることができる。
【0089】
したがって、複数のキャパシタを組み合わせることで所望の容量可変範囲を得るに際して、当該複数のキャパシタのうちの少なくとも1つとして本実施の形態による可変キャパシタ1を用いれば、本実施の形態による可変キャパシタ1を用いた分だけ、特別なスイッチの数を低減することができ、その分、占有面積を低減することができるとともにQ値の低下を防止することができる。その一例を、後述する第2の実施の形態として説明する。ただし、本発明では、複数のキャパシタを組み合わせたキャパシタ装置は、例えば、前記複数のキャパシタのうちの少なくとも1つが例えば本実施の形態による可変キャパシタ1であれば、他のキャパシタは、例えば非特許文献1に開示された可変キャパシタや特許文献1に開示されたような固定キャパシタでもよいし、当該固定キャパシタ等と併用されるMEMSスイッチ等を含んでもよいし、各キャパシタの接続関係も並列接続のみならず直列接続でもよいし、直並列接続など直列・並列を適宜組み合わせた接続関係を採用してもよい。
【0090】
また、本実施の形態による可変キャパシタ1では、図3に示すオフ状態(非対向状態)において得られる容量Cは、ほぼゼロであるが、ゼロではなくて前記容量C0に比べて十分に小さな値である。よって、本実施の形態による可変キャパシタ1によれば、他のキャパシタやスイッチを特別に要することなく、図3に示すオフ状態で得られる十分に小さな容量値と、オン状態(対向状態)で得られるC0から1.5×C0までの容量値を得ることができ、互いの比が大きい2値の容量を含む容量値を得ることができる。したがって、本実施の形態による可変キャパシタ1は、他のキャパシタと組み合わせずに単体で用いても有用である。
【0091】
本発明では、本実施の形態による可変キャパシタ1を、例えば、以下に説明するように変形してもよい。
【0092】
本実施の形態では、支持突起16a〜16dは可動側の直線状部6,8に設けられているが、その代わりに、支持突起16a〜16dを固定部側(基板2側)に設けてもよい。
【0093】
本実施の形態では、プレート部7はその周囲に立ち上がり部7aによって剛性も有しているが、立ち上がり部7aを形成せずにプレート部7もその両側の部分6a,8aと同じく板ばね状としてもよい。この場合、オン状態において、プレート部7及びその両側の部分6a,8aが全体として撓み得る両持ち梁となるが、オン状態において間隔dを変えるアナログ動作は可能である。
【0094】
本実施の形態では、図5や図6に示すオン状態において、プレート部7及びその両側の部分6a,8aが支持突起16a〜16dによって両持ち状態で支持されているが、例えば、先端側の支持突起16c,16dを取り除いて、オン状態において、プレート部7及びその両側の部分6a,8aが支持突起16a,16bが片持ち状態で支持されてもよい。この場合においても、オン状態において間隔dを変えるアナログ動作は可能である。なお、このような片持ち状態を採用する場合は、直線状部8は不要である。また、このような片持ち状態を採用する場合にも、プレート部7の周囲に立ち上がり部7aを形成せずにプレート部7が撓み得るようにしてもよい。
【0095】
本実施の形態では、前述したように、オン状態において間隔dを変えるアナログ動作が可能であるが、オン状態において間隔dを変えることができずにアナログ動作が不能となるように構成してもよい。具体的には、例えば、支持突起16a〜16dを立ち上がり部7aの直下に配置したり、支持突起16a〜16dを除去したりしてもよい。
【0096】
本実施の形態では、前述したように、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)が、オン状態において間隔dを変えるための電極(アナログ駆動用可動電極)として兼用され、容量用固定電極(オン状態において容量用可動電極が対向する配線パターン15の部分)が、オン状態において間隔dを変えるための電極(アナログ駆動用固定電極)として兼用されている。しかし、容量用可動電極とアナログ動作用可動電極とを別個に設けるとともに、容量用固定電極とアナログ動作用固定電極とを別個に設けてもよい。
【0097】
[第2の実施の形態]
【0098】
図12は、本発明の第2の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図であり、図1に対応している。図12も、図1と同様に、製造途中において犠牲層を除去する前の状態を示している。図12において、図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。図13は、本実施の形態による可変キャパシタ装置を示す回路図である。
【0099】
本実施の形態による可変キャパシタ装置は、前記第1の実施の形態による可変キャパシタ1とそれぞれ同一の構成及び各部の寸法を有する5個の可変キャパシタ41〜45と、制御回路51と、オンオフ駆動回路52と、バイアス電圧印加回路53とを備えている。
【0100】
可変キャパシタ41〜45は、同一のシリコン基板2(図12及び図13では、図示せず。)に搭載されている。可変キャパシタ41〜45に関して、前述した配線パターン11,15がそれぞれ共通に接続されることで、図13に示すように、可変キャパシタ41〜45は並列接続されている。
【0101】
本実施の形態では、オンオフ駆動回路52は、制御回路51からのオンオフ制御信号(各可変キャパシタ41〜45のオンオフ状態を示す制御信号)に応答して、当該オンオフ制御信号が示すオンオフ状態を実現するように、各可変キャパシタ41〜45毎に、第1の駆動信号を供給する(すなわち、対応する配線パターン14と配線パターン11との間にオン駆動用電圧(当該可変キャパシタをオン状態にするのに必要な電圧)を印加するかあるいは配線パターン14を配線パターン11と同電位にする)。なお、本実施の形態では、各配線パターン14はそれぞれ電気的に分離しており、オンオフ駆動回路52によって、各可変キャパシタ41〜45をそれぞれ独立して設定し得るようになっている。
【0102】
バイアス電圧印加回路53は、制御回路51からのバイアス電圧制御信号(配線パターン11,15間に印加すべき直流バイアス電圧の大きさを示す信号)を応答して、当該バイアス電圧制御信号が示す大きさの直流バイアス電圧を配線パターン11,15間に供給する。
【0103】
制御回路51は、外部からの指令信号(配線パターン11,15で得るべき容量の指令値を示す信号)に応答して、当該指令信号が示す容量値が得るために必要なオンオフ制御信号及びバイアス電圧制御信号を、オンオフ駆動回路52及びバイアス電圧印加回路53にそれぞれ供給する。製造誤差等の影響で、可変キャパシタ41〜45の同じオンオフ状態において同じ大きさの直流バイアス電圧を配線パターン11,15間に印加しても、配線パターン11,15間に得られる容量値はばらついてしまう。本実施の形態では、各可変キャパシタ41〜45が前述したアナログ動作可能となっていることを利用して、制御回路51は、バイアス電圧制御信号を、実測データに基づいて得た関係(各可変キャパシタ41〜45のオンオフ状態及び直流バイアス電圧の大きさと配線パターン11,15間に得られる容量値との間の関係)に従って、指令信号が示す容量の指令値が正確に配線パターン11,15間に得られるように較正して出力するように構成されている。
【0104】
なお、用途によって、制御回路51は、前述したアナログ動作を較正目的でのみ利用して離散的な容量値が得られるように構成してもよいし、前述したアナログ動作を利用してある範囲においては連続的な容量値が得られるように構成してもよい。
【0105】
制御回路51、オンオフ駆動回路52及びバイアス電圧印加回路53は、シリコン基板2に搭載してもよいし、外部に配置してもよい。可変キャパシタ41〜45の部分は図7乃至図9を参照して説明した製造方法によって製造することができ、その製造方法はCMOSプロセスとコンパチブルであるので、制御回路51、オンオフ駆動回路52及びバイアス電圧印加回路53をシリコン基板2に搭載する場合、これらの回路のCMOS部を、可変キャパシタ41〜45の部分の下に積層したり、可変キャパシタ41〜45とは基板2における面方向に異なる領域に配置したりすることを、容易に行うことができる。また、基板2に搭載する回路としては、本実施の形態によるキャパシタ装置を含む高周波回路用フィルタ及びその他の高周波回路等も挙げることができる。また、本発明では、前記第1の実施の形態による可変キャパシタ1を単体で用いる場合にも、当該可変キャパシタ1を含む高周波回路用フィルタ又はその他の高周波回路等を基板2に搭載してもよい。この場合も、これらの回路のCMOS部を、可変キャパシタ1の部分の下に積層したり、可変キャパシタ1とは基板2における面方向に異なる領域に配置したりすることを、容易に行うことができる。
【0106】
本発明者は、本実施の形態によるキャパシタ装置と同様のキャパシタ装置を試作した。この試作の可変キャパシタ装置において、可変キャパシタ41〜45のうちオン状態にする可変キャパシタの数を変え、それぞれの場合について配線パターン11,15間の容量を測定した。ただし、配線パターン11,15間には、直流バイアス電圧は印加しなかった。図14はその測定結果を示す。図14の横軸は可変キャパシタ41〜45のうちのオン状態の可変キャパシタの数を示している。例えば、図14の横軸のゼロは可変キャパシタ41〜45の全てをオフ状態にしたことを意味し、図14の横軸のゼロは可変キャパシタ41〜45のうちの2つをオン状態にする一方3つをオフ状態にしたことを意味している。図14の縦軸は、配線パターン11,15間の容量の変化量を示す。ここでは、全ての可変キャパシタ41〜45をオフ状態にした場合、配線パターン11,15間の容量はゼロpFであった。
【0107】
本実施の形態では、各可変キャパシタ41〜45は各部の寸法まで同一であるので、直流バイアス電圧を印加しなければ、各可変キャパシタ41〜45の数に比例して配線パターン11,15間の容量が変化するはずである。図14は、そのことを実証している。
【0108】
本実施の形態によれば、前述した可変キャパシタ41〜45として前述した可変キャパシタ1と同一の構成を有するものが用いられているので、複数のキャパシタを組み合わせた従来のキャパシタ装置と異なり、特別なスイッチが不要となるとともに配線が1つですんでいる。したがって、本実施の形態によれば、占有面積を低減することができるとともにQ値の低下を防止することができる。
【0109】
なお、各可変キャパシタ41〜45として、可変キャパシタ1を前述したようにアナログ動作が不能となるように変形した可変キャパシタを用いてもよい。この場合、バイアス電圧印加回路53は除去される。
【0110】
[第3の実施の形態]
【0111】
図15は、本発明の第3の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図であり、図12に対応している。図15も、図12と同様に、製造途中において犠牲層を除去する前の状態を示している。図15において、図12中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0112】
本実施の形態による可変キャパシタ装置が前記第2の実施の形態による可変キャパシタ装置と異なる所は、以下に説明する点のみである。本実施の形態では、可変キャパシタ45が除去されている。前記第2の実施の形態では、可変キャパシタ41〜45のいずれも、オン状態での容量用固定電極と容量用可動電極との間の対向面積が同一であるのに対し、本実施の形態では、図15に示すように、可変キャパシタ41〜44では、順次、オン状態での容量用固定電極と容量用可動電極との間の対向面積が大きくなっている。これに伴い、本実施の形態では、配線パターン11における可変キャパシタ41,42に対応する部分の幅W1に比べて、配線パターン11における可変キャパシタ43,44に対応する部分の幅W2の方が広くなっている。本実施の形態では、配線パターン11は高周波信号線として用いられるので、幅W1と幅W2との間の継ぎ目で高周波信号の反射が生じ難くなるように、配線パターン11におけるその継ぎ目には45゜のテーパー部15aが形成されている。
【0113】
本実施の形態によれば、前記第2の実施の形態と同様の利点が得られる他、各キャパシタ41〜44のオン状態の容量がそれぞれ異なることから、前記第1の実施の形態に比べて、より広い範囲で配線パターン11,15間の容量を可変することができるという利点も得られる。
【0114】
本発明者は、本実施の形態によるキャパシタ装置と同様のキャパシタ装置を試作した。この試作の可変キャパシタ装置において、実験用として、配線パターン15及び全ての配線パターン14を短絡し、これらと配線パターン11との間に直流電圧を印加し、その印加電圧を徐々に上げていき、各印加電圧を印加しているときに配線パターン11,15間の容量を測定した。その結果を図16に示す。図16の横軸は前記印加電圧を示し、図16の縦軸は配線パターン11,15間の容量の変化量を示す。ここでは、全ての可変キャパシタ41〜45がオフ状態の場合、配線パターン11,15間の容量は、0pF程度の極小さい値の容量値であった。
【0115】
図16において、点Eでは、可変キャパシタ41がオン状態でかつ可変キャパシタ42〜43はオフ状態であり、配線パターン11,15の容量は0.2pFであった。点Fでは、可変キャパシタ41,42,44がオン状態でかつ可変キャパシタ43がオフ状態であり、配線パターン11,15の容量は4.8pFであり、点Eの容量0.2pFの24倍であった。点Gでは、全ての可変キャパシタ41〜44がオン状態であり、配線パターン11,15の容量は7pFであり、点Eの容量0.2pFの35倍であった。点Hでは、全ての可変キャパシタ41〜44がオン状態であるが点Gの場合に比べてアナログ動作が進行した(電極間間隔が狭まった)ものと考えられ、配線パターン11、15の容量は7.4pFであり、点Eの容量0.2pFの37倍であった。
【0116】
図16によって、0pFから7.4pFの非常に広い範囲(E点を基準にした場合の容量変化率は7.4/0.2=37)で、配線パターン11,15間の容量を可変することができることが、実証された。
【0117】
なお、本来、図16に示すように前記駆動電圧を上げていった場合は、所期の目論見通りであれば、前述したような順序で可変キャパシタ41〜44がオンするはずはないが、製造誤差等の影響でこのような順序でオンしたものと考えられる。ここでの実験結果としては、可変キャパシタ41〜44のオンオフ状態と得られる容量との関係が重要であり、オンする順序は特に問題ではない。
【0118】
ところで、本実施の形態において、例えば、4個の可変キャパシタ41〜44のオン状態(ここでは、初期間隔d0時とするが、例えば、前述したアナログ動作による較正した状態でもよい。)の容量値C41〜C44を、例えば、ΔCを任意の容量値として、1×ΔC、2×ΔC、4×ΔC、8×ΔCにそれぞれ設定してもよい。この設定は、例えば、可変キャパシタ41〜44のオン状態での容量用固定電極と容量用可動電極との間の対向面積を、それぞれ1倍、2倍、3倍、4倍に設定することによって、行うことができる。可変キャパシタ41〜44のオン状態の容量値を前述したように設定すると、各可変キャパシタ41〜44のオン・オフを独立して制御することで、ΔCきざみに、1×ΔCから15×ΔCまでの容量値をデジタル的に得ることができる。勿論、4個の可変キャパシタ41〜44をオフ状態とすれば、得られる容量値を実質的にゼロにすることもできる。
【0119】
同様に、本実施の形態において、例えば、4個の可変キャパシタ41〜44のオン状態(ここでは、初期間隔d0時とするが、例えば、前述したアナログ動作による較正した状態でもよい。)の容量値C41〜C44を、例えば、ΔCを任意の容量値として、10×ΔC、20×ΔC、40×ΔC、80×ΔCにそれぞれ設定してもよい。この場合、各可変キャパシタ41〜44のオン・オフを独立して制御することで、10×ΔCきざみに、10×ΔCから150×ΔCまでの容量値をデジタル的に得ることができる。勿論、4個の可変キャパシタ41〜44をオフ状態とすれば、得られる容量値を実質的にゼロにすることもできる。
【0120】
本実施の形態では、4個の可変キャパシタ41〜44が並列接続されているが、例えば、その個数を8個とし、8個の可変キャパシタのオン状態(ここでは、初期間隔d0時とするが、例えば、前述したアナログ動作による較正した状態でもよい。)の容量値を、1×ΔC、2×ΔC、4×ΔC、8×ΔC、10×ΔC、20×ΔC、40×ΔC、80×ΔCにそれぞれ設定してもよい。この場合、これらの8個の可変キャパシタのオン・オフを独立して制御することで、ΔCきざみに、1×ΔCから165×ΔCまでの容量値をデジタル的に得ることができる。勿論、8個の可変キャパシタをオフ状態とすれば、得られる容量値を実質的にゼロにすることもできる。本発明者は、実際に、このようなデジタル可変キャパシタ装置を試作し、ΔCきざみに、1×ΔCから165×ΔCまでの容量値をデジタル的に得ることができることを確認した。例えば、ΔC=0.01pFのものを作製すれば、0.01pFきざみに、0.01pFから1.65pFまでの容量値をデジタル的に得ることができる。また、ΔC=0.1pFのものを作製すれば、0.1pFきざみに、0.1pFから16.5pFまでの容量値をデジタル的に得ることができる。さらに、ΔC=0.2pFのものを作製すれば、0.2pFきざみに、0.2pFから33pFまでの容量値をデジタル的に得ることができる。
【0121】
[第4の実施の形態]
【0122】
図17は、本発明の第4の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図であり、図12に対応している。図17も、図12と同様に、製造途中において犠牲層を除去する前の状態を示している。図17において、図12中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0123】
本実施の形態による可変キャパシタ装置が前記第2の実施の形態による可変キャパシタ装置と異なる所は、各可変キャパシタ41〜45で、直線状部6における部分6aの長さ及び直線状部8における部分8aの長さ(図1中のL1に相当)が互いに異なっている点のみである。したがって、各可変キャパシタ41〜45で、直線状部6,8の各部分6a,8aのバネ性の硬さが互いに異なり、ひいては、個々に得られる容量に対する配線パターン11,15間に印加する直流バイアス電圧(第2の駆動信号)の感度が互いに異なっている。
【0124】
したがって、本実施の形態によれば、前記第2の実施の形態と同様の利点が得られる他、次の利点も得られる。すなわち、本実施の形態によれば、例えば、全ての可変キャパシタ41〜45がオン状態で、配線パターン11,15間に印加する直流バイアス電圧を徐々に変えていく場合、配線パターン11,15間の容量が前記第1の実施の形態に比べて大きく変化することになる。よって、本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態に比べて、より広い範囲で配線パターン11,15間の容量を可変することができるという利点も得られる。
【0125】
[その他の実施の形態]
【0126】
ここで、高周波回路の一例として高周波回路用フィルタの各例を図18に示す。図18(a)はローパスフィルタ、図18(b)はハイパスフィルタ、図18(c)はバンドパスフィルタ、図18(d)はバンドエリミネーションフィルタをそれぞれ示す。これらの図において、Cはキャパシタ、Lはインダクタンス、P1,P2はポートを示す。
【0127】
本発明の各実施の形態による高周波回路用フィルタとして、図18(a)〜(d)にそれぞれ示すフィルタにおいて、キャパシタCの代わりに、前記第1の実施の形態による可変キャパシタ1又はその変形例あるいは前記第2乃至第4のいずれかの実施の形態による可変キャパシタ装置を用いたフィルタを挙げることができる。勿論、本発明による可変キャパシタ及び可変キャパシタ装置は、フィルタ以外の種々の高周波回路(例えば、可変周波数発振器(VFO)、同調増幅器、位相シフタ、インピーダンス整合回路など)においても用いることができる。
【0128】
以上、本発明の各実施の形態及びその変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0129】
例えば、前述した実施の形態では、各可変キャパシタで採用されている対向状態と非対向状態との切り替えを行うためのアクチュエータは、駆動力として静電力が用いられる静電型であったが、いわゆる熱型や電磁型や圧電駆動型などの種々のマイクロアクチュエータを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタを模式的に示す概略平面図である。
【図2】図2は、図1中のA−A’線に沿った概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタの一動作状態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタの状態遷移過程を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタの他の動作状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタの更に他の動作状態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタの製造方法を示す工程図である。
【図8】図7に引き続く工程を示す工程図である。
【図9】図8に引き続く工程を示す工程図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタに関する測定結果を示す図である。
【図11】平行平板間の面積と容量との関係を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態による可変キャパシタ装置を示す回路図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態による可変キャパシタ装置に関する測定結果を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態による可変キャパシタ装置に関する測定結果を示す図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図である。
【図18】高周波回路用フィルタの各例を示す図である。
【符号の説明】
【0131】
1,41〜45 可変キャパシタ
2 基板
4,6,8 直線部
5 湾曲部
7 プレート部
11,14,15 配線パターン
13 オン駆動用固定電極
16a〜16d 支持突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変キャパシタ、これを用いた可変キャパシタ装置、高周波回路用フィルタ及び高周波回路高周波回路用フィルタに関するものである。前記可変キャパシタ及び前記可変キャパシタ装置は、例えば、無線通信装置やRF測定装置等で用いることができるものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの無線通信技術の進展に伴い、高周波回路等で用いる可変キャパシタの重要性が高まっている。従来は、このような可変キャパシタとして半導体デバイスであるバラクタが用いられているが、そのQ値は小さく、種々の不都合を招いていた。
【0003】
そこで、下記非特許文献1には、MEMS(Micro-Electro-Mechanical System)を用いた可変キャパシタが提案されている。この可変キャパシタは、平行平板をなすように配置された固定電極及び可動電極とを備えている。前記可動部は、両電極間の間隔が変化するよう固定電極に対して移動し得るとともに、両電極間の間隔が所定間隔(初期間隔)となる位置に復帰しようとするバネ力が生ずるように、支持部により支持されている。両電極は、当該可変のキャパシタの容量を形成するための容量電極、及び、前記バネ力に抗した静電力を発生させて両者間の間隔を調整するための駆動電極として、兼用されている。
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示された可変キャパシタでは、可変により得られる最小の容量値に対する最大の容量値の比をさほど大きくすることができなかった。その理由について、以下に説明する。
【0005】
非特許文献1に開示された可変キャパシタでは、可動電極は、固定電極と可動電極との間の静電力と前記バネ力とが釣り合う位置に停止する。前記バネ力は、両電極間の間隔が初期間隔から変化した量に比例する。一方、前記静電力は、両電極間の電圧の2乗に比例しかつ両電極間の間隔の2乗に反比例する。
【0006】
したがって、両電極間の電圧を増大させていくと、両電極間の間隔が初期間隔からその1/3の間隔となるまでは、前記バネ力と前記静電力とが安定して釣り合い、印加した電圧に応じた電極間隔で可動電極が安定して停止する。一方、両電極間の電圧を増大させ、両電極間の間隔が初期間隔の1/3の間隔よりも狭まると、前記バネ力と前記静電力とが安定して釣り合うことができず、それ以上両電極間の電圧を増大させなくても、両電極間の間隔が1/3の間隔よりも狭いいずれの位置においても前記静電力が前記バネ力を上回ることになる。これにより、両電極間の間隔が初期間隔の1/3の間隔となるような電圧よりも大きい電圧を印加すると、その電圧の大きさに拘わらず、可動電極が固定電極に限界まで近づいてしまういわゆるプルイン現象が生ずる。
【0007】
このため、両電極間に印加する電圧によって両電極間の間隔を連続的に調整し得る範囲(連続調整範囲)は、初期間隔からその1/3の間隔までの範囲に制限される。したがって、非特許文献1に開示された可変キャパシタでは、初期間隔時の容量値からその容量値の1.5倍の容量値までしか変えることができなかった。
【0008】
そこで、下記特許文献1,2において、容量可変範囲を広げたりするなど所望の容量可変範囲を得ることができるようにするべく、複数の固定又は可変のキャパシタとそれらの他に特別に設けたスイッチとを組み合わせた可変キャパシタ装置が提案されている。
【0009】
特許文献1に開示された可変キャパシタ装置(特許文献1では、「可変容量コンデンサ」と称している。)は、空隙をあけて対向する2つの電極からなる第1乃至第3の固定キャパシタと、第1及び第2のMEMSスイッチとから構成されている。そして、第1の固定キャパシタ(その容量はC1)と、第2の固定キャパシタ(その容量はC2)と第1のMEMSスイッチとの直列回路と、第3の固定キャパシタ(その容量はC3)と第2のMEMSスイッチとの直列回路とが、互いに並列接続されている。この可変キャパシタ装置によれば、第1及び第2のMEMSスイッチのオンオフ状態によって、得られる合成容量をC1、C1+C2、C1+C2+C3の各容量値に可変することができる。
【0010】
特許文献2に開示された可変キャパシタ装置は、可変キャパシタとしてのMEMSキャパシタとMEMSスイッチとの直列回路が複数並列接続されて構成されている。この可変キャパシタ装置によっても、各MEMSスイッチのオンオフ状態を変えることで、得られる合成容量を種々の値に変えることができる。特許文献2の可変キャパシタ装置で用いられている可変キャパシタの単体は、基本的に、非特許文献1に開示された可変キャパシタと同様に構成されている。
【特許文献1】特開平9−199376号公報
【特許文献2】米国特許第6,593,672号明細書
【非特許文献1】Darrin J. Young and Bernhard E. Boser, A micromachined variable capacitor for monolithic low-noise VCOs, Solid-State and Actuator Workshop, Hilton Head, June 1996 pp86-89
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の可変キャパシタ装置では、固定又は可変のキャパシタの他に特別にスイッチを要していたため、占有面積が増大したり、スイッチの接点間の接触抵抗に起因してQ値が低下したり、キャパシタとスイッチとの間を接続する配線の抵抗に起因してQ値が低下したりする。
【0012】
また、用途によっては、2値の容量を得るだけで十分であるが、両容量値の比が大きいことが要請される場合もある。しかし、非特許文献1に開示された可変キャパシタや、特許文献2に開示された可変キャパシタ装置で用いられている可変キャパシタの単体では、前述したような理由で、互いの比の大きい2値の容量を得ることができなかった。そこで、例えば、十分に小さい容量値を持つ第1の固定キャパシタと、比較的大きい容量値を持つ第2のキャパシタとスイッチとの直列回路とを、並列接続することが考えられる。この場合には、前記スイッチをオフにすることで十分に小さい容量値を得ることができる一方、前記スイッチをオンにすることで比較的大きい容量値を得ることができ、互いの比の大きい2値の容量を得ることができる。しかし、この場合には、2つの固定キャパシタを要する上に、特別にスイッチを要するため、占有面積の増大やQ値の低下を招いてしまう。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複数のキャパシタを組み合わせることで所望の容量可変範囲を得ることができる一方、従来の可変キャパシタ装置に比べて特別に必要とするスイッチの数を低減又はなくすことができる可変キャパシタ装置、及び、これに用いることができる可変キャパシタを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、他のキャパシタやスイッチを特別に要することなく、互いの比が大きい2値の容量を少なくとも得ることができる可変キャパシタを提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、前記可変キャパシタ装置や前記可変キャパシタを用いた高周波回路用フィルタ及び高周波回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による可変キャパシタは、基板を含む固定部に設けられた第1の電極部と、当該可変キャパシタの容量を前記第1の電極部との間に形成する第2の電極部を有する可動部とを備え、前記可動部は、第1の駆動信号に応答して、前記第2の電極部が前記第1の電極部と対向する対向状態と前記第2の電極部が前記第1の電極部と実質的に対向しない非対向状態とに選択的になるように、変位するものである。
【0017】
本発明の第2の態様による可変キャパシタは、前記第1の態様において、前記可動部が薄膜で構成されたものである。
【0018】
本発明の第3の態様による可変キャパシタは、前記第1又は第2の態様において、前記非対向状態における前記容量がほぼゼロであるものである。
【0019】
本発明の第4の態様による可変キャパシタは、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記対向状態における前記容量は、前記非対向状態における前記容量の10倍以上であるものである。その倍率は、例えば、100倍以上でもよいし、1000倍以上でもよい。
【0020】
本発明の第5の態様による可変キャパシタは、前記第1乃至第4のいずれかの態様において、前記可動部は、前記固定部に対して固定端が固定された片持ち梁構造を持ち、前記第2の電極部は、前記可動部の先端側に配置されたものである。
【0021】
本発明の第6の態様による可変キャパシタは、前記第5の態様において、前記第1の電極部が高周波信号線の一部をなし、前記基板の主面の法線方向から見た平面視で、前記固定端側から前記先端側に向かう方向が前記高周波信号線の延びる方向と略直交するものである。
【0022】
本発明の第7の態様による可変キャパシタは、前記第5又は第6の態様において、前記可動部は、前記第2の電極部と前記固定端との間に配置された湾曲部と、前記湾曲部と前記固定端との間に配置された直線状部とを有し、前記湾曲部は、前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、自身の保有する応力によって、前記固定端側から前記先端側に向うに従って前記固定部側から反り上がるように湾曲し、前記直線状部は、前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、自身の保有する応力によって、前記固定部から間隔をあけた状態で前記固定端側から前記先端側に向うに従って前記基板の主平面と略平行に延び、前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、前記非対向状態となるものである。
【0023】
本発明の第8の態様による可変キャパシタは、前記第7の態様において、前記固定部は、前記直線状部の少なくとも一部及び前記湾曲部の少なくとも一部に対応する箇所において第3の電極部を有し、前記可動部は、前記直線状部及び前記湾曲部において第4の電極部を有し、前記第1の駆動信号として前記第3及び第4の電極部間に駆動電圧が印加されて前記第3及び第4の電極部間に作用する静電力が、前記第1の駆動信号による駆動力として前記可動部に加えられ、前記第1の駆動信号による所定の大きさ以上の駆動力が前記可動部に加えられたときに、当該駆動力によって、前記直線状部の少なくとも一部及び前記湾曲部の少なくとも一部が前記固定部側にプルインされて前記対向状態となるものである。
【0024】
本発明の第9の態様による可変キャパシタは、前記第8の態様において、前記第2の電極部と前記第4の電極部とが電気的に接続されたものである。
【0025】
本発明の第10の態様による可変キャパシタは、前記第8又は第9の態様において、前記第1の電極部と前記第3の電極部とが電気的に分離されたものである。
【0026】
本発明の第11の態様による可変キャパシタは、前記第1乃至第10のいずれかの態様において、前記基板は、CMOS部が搭載された回路基板であるものである。
【0027】
本発明の第12の態様による可変キャパシタは、前記第1乃至第11のいずれかの態様において、前記可動部は、前記対向状態において、第2の駆動信号に応答して、前記第1の電極部の少なくとも一部と前記第2の電極部との間の間隔が変化するように、部分的に変位するものである。
【0028】
本発明の第13の態様による可変キャパシタは、前記第12の態様において、前記可動部における前記第2の電極の付近の部分が前記対向状態において固定部により支持されるように、前記可動部における前記第2の電極の付近の箇所又は当該箇所に対応する前記固定部における箇所に、前記対向状態において前記固定部又は前記可動部と当接する支持突起が設けられたものである。
【0029】
本発明の第14の態様による可変キャパシタは、前記第13の態様において、前記可動部における前記第2の電極の付近の部分は、前記対向状態において、前記固定部により前記支持突起を介して両持ち状態で支持されるものである。
【0030】
本発明の第15の態様による可変キャパシタは、前記第12乃至第14のいずれかの態様において、前記第2の駆動信号として前記第1及び第2の電極部間に直流バイアス電圧が印加されて前記第1及び第2の電極部間に作用する静電力が、前記第2の駆動信号による駆動力として前記可動部に加えられるものである。
【0031】
本発明の第16の態様による可変キャパシタ装置は、複数のキャパシタを含み、当該複数のキャパシタの容量が合成されてなる合成容量が得られるように電気的に接続される可変キャパシタ装置であって、前記複数のキャパシタのうちの少なくとも1つのキャパシタは、前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタであるものである。
【0032】
本発明の第17の態様による可変キャパシタ装置は、前記第16の態様において、前記複数のキャパシタが並列接続されたものである。
【0033】
本発明の第18の態様による可変キャパシタ装置は、前記第16又は第17の態様において、前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタに対してそれぞれ独立して前記第1の駆動信号を供給し得るように構成されたものである。
【0034】
本発明の第19の態様による可変キャパシタ装置は、前記第16乃至第18のいずれかの態様において、前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタのうちの少なくとも1つの可変キャパシタと当該2つ以上の可変キャパシタのうちの他の少なくとも1つの可変キャパシタとでは、前記対向状態における前記第1及び第2の電極部同士の対向面積が異なるものである。
【0035】
本発明の第20の態様による可変キャパシタ装置は、前記第16乃至第19のいずれかの態様において、前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタであり、指令信号に応じて当該2つ以上の可変キャパシタに対してそれぞれ前記第1の駆動信号を供給する駆動回路を備えたものである。
【0036】
本発明の第21の態様による可変キャパシタ装置は、前記第16乃至第20のいずれかの態様において、前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が前記第12乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタのうちの少なくとも1つの可変キャパシタと当該2つ以上の可変キャパシタのうちの他の少なくとも1つの可変キャパシタとでは、前記対向状態における前記第1の電極部の少なくとも一部と前記第2の電極部との間の間隔の変化に対する前記第2の駆動信号の感度が異なるように構成されたものである。
【0037】
本発明の第22の態様による高周波回路用フィルタは、前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタ又は前記第16乃至第21のいずれかの態様による可変キャパシタ装置を含むものである。
【0038】
本発明の第23の態様による高周波回路は、前記第1乃至第15のいずれかの態様による可変キャパシタ又は前記第16乃至第21のいずれかの態様による可変キャパシタ装置を含むものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、複数のキャパシタを組み合わせることで所望の容量可変範囲を得ることができる一方、従来の可変キャパシタ装置に比べて特別に必要とするスイッチの数を低減又はなくすことができる可変キャパシタ装置、及び、これに用いることができる可変キャパシタを提供することができる。
【0040】
また、本発明によれば、他のキャパシタやスイッチを特別に要することなく、互いの比が大きい2値の容量を少なくとも得ることができる可変キャパシタを提供することができる。
【0041】
さらに、本発明によれば、前記可変キャパシタ装置や前記可変キャパシタを用いた高周波回路用フィルタ及び高周波回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明による可変キャパシタ、可変キャパシタ装置、高周波回路用フィルタ及び高周波回路について、図面を参照して説明する。
【0043】
[第1の実施の形態]
【0044】
図1は、本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタ1を模式的に示す概略平面図である。図2は、図1中のA−A’線に沿った概略断面図である。ただし、図1及び図2は、本実施の形態による可変キャパシタ1の製造途中において、犠牲層31〜33等の犠牲層を除去する前の状態を示している。犠牲層31〜33等の犠牲層は、図1及び図2では省略しているので、後述する図9(b)を参照されたい。なお、理解を容易にするため、図1では、膜10,12等の図示は省略するとともに、配線パターン11,14,15及びオン駆動用固定電極13にハッチングを付している。図1において、支持突起16a〜16dは、本来は隠れ線で示すべきであるが、図面表記の便宜上実線で示している。図3,図5及び図6はそれぞれ、本実施の形態による可変キャパシタ1の各動作状態を示す概略断面図であり、図2と同じ断面を示している。図3は後述するオン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力が両方とも印加されていない状態を示し、図5はオン駆動用静電力は印加されているがアナログ駆動用静電力は印加されていない状態を示し、図6はオン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力が両方とも印加されている状態を示している。図4は、本実施の形態による可変キャパシタ1の、図3に示す状態から図5へ示す状態へ移行する過程を示す概略断面図であり、図2と同じ断面を示している。
【0045】
本実施の形態による可変キャパシタ1は、シリコン基板等の基板2と、脚部3と、直線状部4と、湾曲部5と、直線状部6と、平板状のプレート部7と、直線状部8とを備えている。
【0046】
脚部3は、基板2上に順次形成された酸化珪素膜9,10、アルミニウム系合金膜からなる配線パターン11及び酸化珪素膜12を介して、基板2から立ち上がっている。脚部3の上部の周囲には、補強用段差をなす立ち上がり部3aが形成されている。基板2、酸化珪素膜9,10、12、配線パターン11、並びに、後述するオン駆動用固定電極13、配線パターン14,15等によって、固定部が構成されている。
【0047】
直線状部4の一端は、脚部3に機械的に接続され、固定端となっている。直線状部4は、駆動力(本実施の形態では、オン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力)が加えられていない状態で、自身の保有する応力によって、図3に示すように基板2を含む固定部から間隔をあけた状態で前記一端側から他端側に向かうに従って基板2の主平面と略平行に延びている。
【0048】
直線状部4の他端には、湾曲部5の一端が機械的に接続されている。湾曲部5は、駆動力(オン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力)が加えられていない状態で、自身の保有する応力によって、図3に示すように前記一端側から他端側に向かうに従って基板2側から反り上がるように湾曲している。
【0049】
湾曲部5の他端には、駆動力(オン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力)が加えられていない状態で自身の保有する応力によって平板状となる直線状部6の一端が、機械的に接続されている。
【0050】
直線状部6の他端には、平板状のプレート部7の一端が機械的に接続されている。プレート部7の周囲には、補強用段差をなす立ち上がり部7aが形成されている。これにより、プレート部7は、剛性を持ち、常に平板状を維持する。
【0051】
プレート部7の他端には、駆動力(オン駆動用静電力及びアナログ駆動用静電力)が加えられていない状態で自身の保有する応力によって平板状となる直線状部8の一端が、機械的に接続されている。直線状部8の他端は自由端となっている。直線状部6には支持突起16a,16bが設けられ、直線状部8には後述する支持突起16c,16dが設けられている。支持突起16a,16bは、図1に示すように、直線状部6において、プレート部7における図1中の左側の立ち上がり部7aから距離L1の位置に配置されている。支持突起16c,16dは、直線状部8において、プレート部7における図1中の右側の立ち上がり部7aから距離L1の位置に配置されている。支持突起16a〜16dは、図5や図6に示す状態になったときに、固定部(本実施の形態では、基板2上の酸化珪素膜12)に当接して、プレート部7の付近の部分(本実施の形態では、プレート部7、並びに、その両側の直線状部6における長さL1の部分6a及び直線状部8における長さL1の部分8a)を両持ち状態で支持する。このとき、直線状部6の長さL1の部分6a及び直線状部8における長さL1の部分8aは、バネ部として作用し、剛性を持つプレート部7を基板2と平行のまま基板2との間隔を狭め得るようにプレート部7を支持する。
【0052】
以上説明したように各部3〜8が順次機械的に直列的に接続されることによって、直線状部4、湾曲部5、直線状部6、プレート部7及び直線状部8が、全体として、直線状部4の一端を固定端とした片持ち梁構造を持つ可動部を構成している。もっとも、本発明で採用し得る可動部は、このような片持ち梁構造に限定されるものではない。
【0053】
湾曲部5は、下側の窒化珪素膜21と中間のアルミニウム系合金膜22と上側の窒化珪素膜23とが積層された3層の薄膜で構成されている。湾曲部5は、力を受けない状態において、膜21〜23の応力によって、図3に示すように上方(基板2とは反対側)に湾曲している。このような湾曲状態は、膜21〜23の成膜条件を適宜設定することにより実現することができる。
【0054】
直線状部4は、下側の窒化珪素膜24と、中間下側のアルミニウム系合金膜25と、湾曲部5からそのまま連続して延びた中間上側のアルミニウム系合金膜22と、湾曲部5からそのまま連続して延びた上側の窒化珪素膜23とが積層された4層の薄膜で構成されている。直線状部4は、力を受けない状態において、膜22〜25の応力によって、図3に示すように直線状に延びている。このような直線状態は、膜22〜25の成膜条件を適宜設定することにより実現することができる。
【0055】
脚部3は、直線状部4を構成する窒化珪素膜23,24及びアルミニウム系合金膜22,25がそのまま連続して延びることによって構成されている。アルミニウム系合金膜25は、脚部3において、窒化珪素膜12,24に形成された開口を介して配線パターン11に接続されている。
【0056】
直線状部6,プレート部7及び直線状部8は、下側の窒化珪素膜26と、中間下側のアルミニウム系合金膜27と、湾曲部5からそのまま連続して延びた中間上側のアルミニウム系合金膜22と、湾曲部5からそのまま連続して延びた上側の窒化珪素膜23とが積層された4層の薄膜で構成されている。ただし、直線状部6,8に設けられた支持突起16a〜16dは、アルミニウム系合金膜22,27で構成されている。直線状部6,8は、力を受けない状態において、膜22,23,26,27の応力によって、図3に示すように直線状に延びている。このような直線状態は、膜22,23,26,27の成膜条件を適宜設定することにより実現することができる。また、プレート部7は、膜22,23,26,27の成膜条件の設定によるのみならず、前述した立ち上がり部7aにより補強されることで、常に平板状を維持する。
【0057】
以上の説明からわかるように、本実施の形態では、可動部(直線状部4、湾曲部5、直線状部6、プレート部7及び直線状部8)の全体に渡って全体的に導通するように1層又は2層の導電膜(具体的には、アルミニウム系合金膜22,25,27)が形成され、当該導電膜が配線パターン11に電気的に接続されている。そして、本実施の形態では、当該導電膜は、その箇所に応じて、後述する電極となったりその配線となったりする。
【0058】
本実施の形態では、前記導電膜(アルミニウム系合金膜22,25,27)における直線状部4の大部分、湾曲部5の全体及び直線状部6の一部分に渡って設けられた部分が、オン駆動用可動電極(第4の電極部)となっており、このオン駆動用可動電極に対応する箇所(図1、図2、図5及び図6に示す各状態において対向する箇所)には、酸化珪素膜10,12間に、アルミニウム系合金膜からなるオン駆動用固定電極(第3の電極部)13が形成されている。
【0059】
本実施の形態では、前記導電膜(特に、アルミニウム系合金膜22,27)におけるプレート部7の部分が、容量用可動電極(第2の電極部)となっている。本実施の形態では、この容量用可動電極は、アナログ駆動用可動電極としても兼用される。オン駆動用固定電極(第3の電極部)13に対する配線をなすアルミニウム系合金膜からなる配線パターン14が、酸化珪素膜9,10間に形成されている。図面には示していないが、配線パターン14は、酸化珪素膜10に形成された開口を介して、オン駆動用固定電極13に電気的に接続されている。酸化珪素膜10,12間には、アルミニウム系合金膜からなる配線パターン15が形成されている。本実施の形態では、配線パターン15における前記容量用可動電極に対応する部分(図1、図2、図5及び図6に示す各状態においてプレート部7と対向する配線パターン15の部分)が、容量用固定電極(第1の電極部)となっている。本実施の形態では、この容量用固定電極は、アナログ駆動用固定電極としても兼用される。
【0060】
本実施の形態による可変キャパシタ1の容量は、容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量、したがって、配線パターン11,15間の容量として得られる。配線パターン15は例えば高周波信号線として用いることができ、配線パターン11は例えば接地線又は第2の高周波信号線として用いることができる。なお、本実施の形態では、配線パターン15(したがって、容量用固定電極)とオン駆動用固定電極13とは電気的に分離されているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0061】
なお、先の説明からわかるように、本実施の形態では、前記容量用可動電極と前記オン駆動用可動電極とが電気的に接続され両方とも配線パターン11に接続されていることになるが、両電極を電気的に分離することも可能である。
【0062】
本実施の形態では、図3に示す状態における湾曲部5の湾曲の程度や湾曲部5の長さなどを適宜設定することによって、図3に示す状態において、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)が容量用固定電極としての配線パターン15と実質的に対向しないように、設定されている。本実施の形態では、このように容量用可動電極が容量用可動電極と実質的に対向しないだけでなく、湾曲部5の長さなどを適宜設定することによって図3に示す状態における容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)と容量用固定電極としての配線パターン15との間の距離が十分に長くなるように設定され、これにより、図3に示す状態において、容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量がほぼゼロとなるようになっている。例えば、図3に示す状態における容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量は、図5に示す状態における容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量の1/10以下に設定してもよいし、1/100以下に設定してもよいし、1/1000以下に設定してもよい。本実施の形態では、基板2の主面の法線方向から見た平面視で、前記固定端(脚部3に接続された直線状部4の一端)側から前記自由端(直線状部8の先端)側へ向かう方向が、配線パターン15の延びる方向と直交している。したがって、その方向が斜めをなす場合に比べて、図3に示すような状態において、容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量をよりゼロに近づけ易くなるとともに、後述する第2の実施の形態の場合のように可変キャパシタ1を複数並設する場合に、配置密度を高めることができる。なお、用途によっては、図3に示す状態において、容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量が限りなくゼロに近い方が好ましい場合(例えば、後述する第2の実施の形態の場合)もあるし、ある程度の大きさとなることが好ましい場合(例えば、当該可変キャパシタ1を単体で用いる場合)もある。
【0063】
また、本実施の形態では、湾曲部5の長さや配線パターン15との位置関係などを適宜設定することによって、図5及び図6に示す各状態において、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)が容量用固定電極としての配線パターン15の一部と対向するように、設定されている。本実施の形態では、前述したように、図5及び図6に示す各状態において、支持突起16a〜16dが基板2上の酸化珪素膜12に当接するようになっている。
【0064】
なお、本実施の形態による可変キャパシタ1において、直線状部6,8、プレート部7及び配線パターン15以外の要素によって、被駆動体(直線状部6,8及びプレート部7)を駆動するマイクロアクチュエータが構成されている。
【0065】
次に、本実施の形態による可変キャパシタ1の製造方法の一例について、図7乃至図9を参照して説明する。図7乃至図9は、各製造工程を示す概略断面図であり、図2に対応している。
【0066】
まず、シリコン基板1の上に、酸化珪素膜9を全面に形成する。次いで、酸化珪素膜9上にアルミニウム系合金膜を形成し、フォトリソエッチング法により、そのアルミニウム系合金膜を配線パターン14(図7乃至図9では図示せず。図1参照。)の形状にパターニングする。その後、酸化珪素膜10をデポした後、その酸化珪素膜10に、フォトリソエッチング法により、配線パターン14とのコンタクト部となる開口を形成する。次いで、アルミニウム系合金膜をデポし、フォトリソエッチング法により、そのアルミニウム系合金膜を、配線パターン11,15及びオン駆動用固定電極13の形状にパターニングする。図7(a)は、この状態を示している。なお、配線パターン11,15及びオン駆動用固定電極13の材料としては、アルミニウム、銅、金などを用いてもよい。また、本実施の形態による可変キャパシタ1を高周波回路で使用する場合は、配線パターン11,15及びオン駆動用固定電極13の膜厚は、例えば、1μm以上あるいは2μm以上とすることも可能である。
【0067】
次に、酸化珪素膜12を全面にデポした後、その酸化珪素膜12に、フォトリソエッチング法により、脚部3における配線パターン11とのコンタクト部となる開口12aを形成する。図7(b)は、この状態を示している。
【0068】
次いで、図7(b)に示す状態の基板上の凹所(ただし、脚部3に相当する箇所を除く。)に、レジスト等の犠牲層31を埋め込む。引き続いて、レジスト等の犠牲層32を塗布し、フォトリソグラフィにより、その犠牲層32において、脚部3を形成すべき位置に開口32aを形成するとともに支持突起16a〜16dを形成すべき位置に開口32bを形成する。さらに、レジスト等の犠牲層33を塗布し、その犠牲層33を、フォトリソグラフィにより、脚部3の上部の立ち上がり部3a及びプレート部7の立ち上がり部7aを形成するための形状にパターニングする。図8(a)は、この状態を示している。
【0069】
その後、窒化珪素膜を全面にデポした後、その窒化珪素膜を、フォトリソエッチング法により、脚部3及び直線状部4における窒化珪素膜24の形状並びに直線状部6,8及びプレート部7の窒化珪素膜26の形状に、パターニングする。図8(b)は、この状態を示している。
【0070】
次に、アルミニウム系合金膜をデポし、そのアルミニウム系合金膜を、フォトリソエッチング法により、脚部3及び直線状部4におけるアルミニウム系合金膜25の形状並びに直線状部6,8及びプレート部7のアルミニウム系合金膜27の形状に、パターニングする。次いで、窒化珪素膜21をデポし、フォトリソエッチング法により、その窒化珪素膜21を湾曲部5の形状に合わせてパターニングする。引き続いて、アルミニウム系合金膜22をデポし、フォトリソエッチング法により、そのアルミニウム系合金膜22を、脚部3、直線状部4、湾曲部5、直線状部6、プレート部7及び直線状部8の形状に合わせてパターニングする。図9(a)は、この状態を示している。
【0071】
次いで、窒化珪素膜23をデポし、フォトリソエッチング法により、窒化珪素膜23を、脚部3、直線状部4、湾曲部5、直線状部6、プレート部7及び直線状部8の形状に合わせてパターニングする。図9(b)は、この状態を示している。
【0072】
その後、全面にレジスト等の犠牲層(図示せず)を塗布した後、ダイシングソーなどでチップ毎に分割する。最後に、犠牲層31〜33及びその他の犠牲層を除去する。これにより、湾曲部5が図3に示すように上方に湾曲し、本実施の形態による可変キャパシタ1が完成する。
【0073】
なお、可動部をなす窒化珪素膜21,23,24,26及びアルミニウム系合金膜22、25,27の成膜は、犠牲層を除去した後に、成膜時のストレスによって図3に示すような形状となるような条件で、行う。
【0074】
次に、本実施の形態による可変キャパシタ1の動作について、図3乃至図6を参照して説明する。
【0075】
配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間を同電位とするとともに、配線パターン11と配線パターン15との間に直流バイアス電圧を印加しなければ、オン駆動用可動電極(アルミニウム系合金膜22,25,27における直線状部4の大部分、湾曲部5の全体及び直線状部6の一部分に渡る部分)とオン駆動用固定電極13との間に静電力(オン駆動用静電力)が加わらないとともに、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)と容量用固定電極(配線パターン15の一部)との間に静電力(アナログ駆動用静電力)が加わらない。したがって、図3に示す状態となる。図3に示す状態では、直線状部4は、自身の保有する応力によって、基板2側(固定部)から間隔をあけた状態で基板2の主平面と略平行に延びている。また、図3に示す状態では、湾曲部5は、自身の保有する応力によって、基板2側から反り上がるように湾曲している。直線状部6,8は、自身の保有応力によって平板状となっている。その結果、本実施の形態では、図3に示す状態では、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)は、容量用固定電極(配線パターン15の一部)と実質的に対向しない非対向状態となり、これらの両電極間の容量Cは、ほぼゼロとなっている。両電極間の容量Cがほぼゼロであるので、両電極間の容量形成をオフにした状態と実質的に同一の状態である。したがって、図3に示す状態を非対向状態又はオフ状態と呼ぶ場合がある。
【0076】
従来のMEMS可変キャパシタでは、平行平板を基本原理としており、可変容量を形成すべき容量用可動電極と容量用固定電極は、常に対向状態で用い、両電極間の間隔を変えることで容量を可変にすべきであるというのが、従来の技術常識であった。本実施の形態による可変キャパシタ1では、このような従来の技術常識に反して、図3に示す非対向状態を実現するのである。
【0077】
次に、図3に示す状態において、配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間に所定の大きさ以上の電圧(第1の駆動信号)を印加した場合の、状態遷移について説明する。この電圧は直流でも交流でもよい。この場合、オン駆動用可動電極(アルミニウム系合金膜22,25,27における直線状部4の大部分、湾曲部5の全体及び直線状部6の一部分に渡る部分)とオン駆動用固定電極13との間にオン駆動用静電力が加わる。当初の図3に示す状態では、オン駆動用可動電極のうちの直線状部4の部分とオン駆動用固定電極13との間の間隔が、オン駆動用可動電極のうちの湾曲部5の部分とオン駆動用固定電極13との間の間隔に比べて小さいので、オン駆動用可動電極のうちの直線状部4の部分とオン駆動用固定電極13との間で大きな静電力が加わり、オン駆動用可動電極のうちの湾曲部5の部分とオン駆動用固定電極13との間でさほど静電力は加わらない。その結果、まず、図4に示すように、直線状部4のみがオン駆動用固定電極13側にプルインされることになる。図4に示す状態になると、オン駆動用可動電極のうちの湾曲部5の部分は、その固定端側付近でオン駆動用固定電極13との間の間隔が著しく狭まり、オン駆動用固定電極13から大きな静電力を受けることになる。その結果、湾曲部5は、固定端側の部分から先端側にかけて順次オン駆動用固定電極13側にプルインされていき、最終的に、図5に示すように、湾曲部5のオン駆動用固定電極13側へのプルインが完了する。
【0078】
本発明者は、このような可変キャパシタ1の動作(特に、マイクロアクチュエータの動作)を次のようにして実証した。すなわち、本発明者は、本実施の形態による可変キャパシタ1と同様の可変キャパシタを試作した。この試作の可変キャパシタにおいて、配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間に印加する直流の印加電圧を0Vから徐々に上げた後に更に徐々に下げて0Vに戻した。そして、可変キャパシタ1の前述したような各動作状態(変位状態)を示す指標値として、各印加電圧を印加しているときにそれぞれ、配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間の容量値を測定した。この可変キャパシタにおいて、測定された容量値が小さいほど、直線状部4や湾曲部5がオン駆動用固定電極13から遠ざかっていることを示し、測定された容量値が大きいほど、直線状部4や湾曲部5がオン駆動用固定電極13に近づいていることを示すことになる。その測定結果を図10に示す。図10の横軸は、配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間の直流の印加電圧を示している。図10の縦軸は、印加電圧が0Vのときに測定された容量値を基準として、この基準容量値に対する測定容量値の変化量(差分)を示している。図10において、印加電圧13Vの付近で測定容量値がステップ状に増大した点Bが、最初に図4に示すように直線状部4のみが固定電極13側にプルインされた状態に相当している。印加電圧28Vの付近で測定容量値が大きく急激に増大した点Cが、最初に図5に示すように直線状部4及び湾曲部5の両方がオン駆動用固定電極13側にプルインされた状態に相当している。図10から、本実施の形態による可変キャパシタ1の前述した動作(特に、マイクロアクチュエータの動作)が実証されたことがわかる。
【0079】
本実施の形態では、可変キャパシタ1(特にそのマイクロアクチュエータ)は、前述した動作を行うため、直線状部4を取り除いて湾曲部5の一端(図1及び図2中の左端)を直接に脚部3に固定した構成を採用するような場合に比べて、より低い駆動電圧で、湾曲部5を固定電極13側へプルインされた状態にすることができる。もっとも、本発明では、直線状部4を取り除いて湾曲部5の一端(図1及び図2中の左端)を直接に脚部3に固定した構成を採用してもよい。
【0080】
本実施の形態では、図5に示す状態において、支持突起16a〜16dが基板2上の酸化珪素膜12に当接する。そして、支持突起16a〜16dによって、プレート部7の付近の部分(本実施の形態では、プレート部7、並びに、その両側の直線状部6における長さL1の部分6a及び直線状部8における長さL1の部分8a)が両持ち状態で支持される。図5に示す状態では、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)は、容量用固定電極(配線パターン15の一部)と対向した対向状態となり、これらの両電極間の容量Cは、ほぼゼロではなく、それよりもかなり大きい予め設定された所望の値となる。したがって、図5に示す状態は、これらの両電極間の容量形成をオンにした状態(すなわち、あたかも、両電極間が対向状態で形成する容量を配線パターン11,15間にスイッチでオンにして有効に接続した状態)と実質的に同一の状態である。よって、図5に示す状態を対向状態又はオン状態と呼ぶ場合がある。この点については、図6に示す状態も図5に示す状態と同様であるので、図6に示す状態も対向状態又はオン状態と呼ぶ場合がある。
【0081】
図5に示す状態では、配線パターン11と配線パターン15との間に直流バイアス電圧は印加されておらず、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)と容量用固定電極(配線パターン15の一部)との間に静電力(アナログ駆動用静電力)が加わっていない状態を示している。図5に示す状態では、アナログ駆動用静電力が加わっていないので、直線状部6における長さL1の部分6a及び直線状部8における長さL1の部分8aは、自身が有する応力によって平板状となっている。
【0082】
図5に示す状態では、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)と容量用固定電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)とが平行平板をなしており、両電極間の間隔(ギャップ)gは初期間隔d0となっている。この初期間隔d0は、例えば、図9(b)中の犠牲層32,33の各厚さによって適宜設定することができる。また、図5に示す状態において、容量用可動電極と容量用固定電極との間の容量Cは、前記間隔gのみならず両電極の対向面積Sにも依存する。
【0083】
図11は、本実施の形態による可変キャパシタ1で採用し得る現実的な寸法範囲の例において、両電極が平行平板をなす場合の各ギャップgごとの対向面積Sと容量との関係を示す図である。図11の横軸は、寸法のイメージを得るために、対向面積Sの指標値として、当該対向面積Sを持つ正方形の一辺の長さLで示している。例えば、図11の横軸の600μmは、対向面積Sが600μm×600μmであることを示している。本実施の形態による可変キャパシタ1を設計する際には、図11を利用して、ギャップgの初期間隔d0、並びに、対向面積S(すなわち、プレート部7の面積及び配線パターン15の幅)を設定することができる。
【0084】
図6は、図5と同じくオン状態(配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間に所定の大きさ以上の電圧(第1の駆動信号)が印加され、直線状部4及び湾曲部5の両方がオン駆動用固定電極13側にプルインされて、支持突起16a〜16dが基板2上の酸化珪素膜12に当接されている状態)である上に、図5の場合と異なり、配線パターン11と配線パターン15との間に所定の大きさの直流バイアス電圧(第2の駆動信号)が印加され、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)と容量用固定電極(配線パターン15の一部)との間に所定の大きさの静電力(アナログ駆動用静電力)が加わり、直線状部6,8の各部分6a,8aが下方に撓んで、両電極間のギャップgがd1(d1<d0)に狭まった状態を示している。本実施の形態では、従来の可変キャパシタと同様に、配線パターン11と配線パターン15との間に印加する直流バイアス電圧の大きさをアナログ的に変えることで、両電極間の間隔gを初期間隔d0からプルインが生ずるd0/3まで可変できるため、両電極間の容量を初期間隔d0時の容量値C0の1.5倍の容量値である1.5×C0までアナログ的に可変できるようになっている。
【0085】
なお、直線状部6,8の各部分6a,8aのバネ性の硬さは、これらの部分6a,8aの長さL1によって変わる。よって、この長さL1、すなわち、支持突起16a〜16dの位置を変えることで、両電極間の間隔gの変化に対する配線パターン11と配線パターン15との間に印加する直流バイアス電圧(第2の駆動信号)の感度を変えることができ、ひいては、オン状態で両電極間に得られる容量の変化に対する前記直流バイアス電圧の感度を変えることができる。
【0086】
なお、図5に示す状態において、湾曲部5側の支持突起16a,16bは確実に基板2上の酸化珪素膜12に当接するものの、先端側の支持突起16c,16dは酸化珪素膜12から若干浮く可能性がある。このような場合、必要に応じて、配線パターン11と配線パターン15との間に小さい直流のバイアス電圧(容量値C0からほとんど変化しない程度の大きさのバイアス電圧)を印加することで、先端側の支持突起16c,16dも確実に酸化珪素膜12に当接させることができ、安定した容量値C0を得ることができる。
【0087】
図5や図6に示すオン状態(対向状態)において、配線パターン11とオン駆動用固定電極13との間を同電位とするとともに、配線パターン11と配線パターン15との間の直流バイアス電圧をゼロにすると、図3に示すオフ状態(非対向状態)に復帰する。
【0088】
以上の説明からわかるように、本実施の形態による可変キャパシタ1は、従来の可変キャパシタとスイッチとの直列回路と実質的に同等の機能を有している。すなわち、本実施の形態による可変キャパシタ1の図3に示すオフ状態(非対向状態)では、容量用固定電極と容量用可動電極との間の容量Cがほぼゼロであるので、図3に示す状態は当該直列回路において前記スイッチをオフにした状態と実質的に同等である。また、本実施の形態による可変キャパシタ1の図5及び図6に示すオン状態(対向状態)は、当該直列回路において前記スイッチをオンにした状態と実質的に同等である。しかも、本実施の形態による可変キャパシタ1では、実際はスイッチを有しているわけではないので、特別なスイッチが不要となり、これにより、占有面積を低減することができるとともにQ値の低下を防止することができる。また、配線による、RF信号の反射損や、インダクタンス成分、寄生容量なども、低下させることができる。
【0089】
したがって、複数のキャパシタを組み合わせることで所望の容量可変範囲を得るに際して、当該複数のキャパシタのうちの少なくとも1つとして本実施の形態による可変キャパシタ1を用いれば、本実施の形態による可変キャパシタ1を用いた分だけ、特別なスイッチの数を低減することができ、その分、占有面積を低減することができるとともにQ値の低下を防止することができる。その一例を、後述する第2の実施の形態として説明する。ただし、本発明では、複数のキャパシタを組み合わせたキャパシタ装置は、例えば、前記複数のキャパシタのうちの少なくとも1つが例えば本実施の形態による可変キャパシタ1であれば、他のキャパシタは、例えば非特許文献1に開示された可変キャパシタや特許文献1に開示されたような固定キャパシタでもよいし、当該固定キャパシタ等と併用されるMEMSスイッチ等を含んでもよいし、各キャパシタの接続関係も並列接続のみならず直列接続でもよいし、直並列接続など直列・並列を適宜組み合わせた接続関係を採用してもよい。
【0090】
また、本実施の形態による可変キャパシタ1では、図3に示すオフ状態(非対向状態)において得られる容量Cは、ほぼゼロであるが、ゼロではなくて前記容量C0に比べて十分に小さな値である。よって、本実施の形態による可変キャパシタ1によれば、他のキャパシタやスイッチを特別に要することなく、図3に示すオフ状態で得られる十分に小さな容量値と、オン状態(対向状態)で得られるC0から1.5×C0までの容量値を得ることができ、互いの比が大きい2値の容量を含む容量値を得ることができる。したがって、本実施の形態による可変キャパシタ1は、他のキャパシタと組み合わせずに単体で用いても有用である。
【0091】
本発明では、本実施の形態による可変キャパシタ1を、例えば、以下に説明するように変形してもよい。
【0092】
本実施の形態では、支持突起16a〜16dは可動側の直線状部6,8に設けられているが、その代わりに、支持突起16a〜16dを固定部側(基板2側)に設けてもよい。
【0093】
本実施の形態では、プレート部7はその周囲に立ち上がり部7aによって剛性も有しているが、立ち上がり部7aを形成せずにプレート部7もその両側の部分6a,8aと同じく板ばね状としてもよい。この場合、オン状態において、プレート部7及びその両側の部分6a,8aが全体として撓み得る両持ち梁となるが、オン状態において間隔dを変えるアナログ動作は可能である。
【0094】
本実施の形態では、図5や図6に示すオン状態において、プレート部7及びその両側の部分6a,8aが支持突起16a〜16dによって両持ち状態で支持されているが、例えば、先端側の支持突起16c,16dを取り除いて、オン状態において、プレート部7及びその両側の部分6a,8aが支持突起16a,16bが片持ち状態で支持されてもよい。この場合においても、オン状態において間隔dを変えるアナログ動作は可能である。なお、このような片持ち状態を採用する場合は、直線状部8は不要である。また、このような片持ち状態を採用する場合にも、プレート部7の周囲に立ち上がり部7aを形成せずにプレート部7が撓み得るようにしてもよい。
【0095】
本実施の形態では、前述したように、オン状態において間隔dを変えるアナログ動作が可能であるが、オン状態において間隔dを変えることができずにアナログ動作が不能となるように構成してもよい。具体的には、例えば、支持突起16a〜16dを立ち上がり部7aの直下に配置したり、支持突起16a〜16dを除去したりしてもよい。
【0096】
本実施の形態では、前述したように、容量用可動電極(アルミニウム系合金膜22,27におけるプレート部7の部分)が、オン状態において間隔dを変えるための電極(アナログ駆動用可動電極)として兼用され、容量用固定電極(オン状態において容量用可動電極が対向する配線パターン15の部分)が、オン状態において間隔dを変えるための電極(アナログ駆動用固定電極)として兼用されている。しかし、容量用可動電極とアナログ動作用可動電極とを別個に設けるとともに、容量用固定電極とアナログ動作用固定電極とを別個に設けてもよい。
【0097】
[第2の実施の形態]
【0098】
図12は、本発明の第2の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図であり、図1に対応している。図12も、図1と同様に、製造途中において犠牲層を除去する前の状態を示している。図12において、図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。図13は、本実施の形態による可変キャパシタ装置を示す回路図である。
【0099】
本実施の形態による可変キャパシタ装置は、前記第1の実施の形態による可変キャパシタ1とそれぞれ同一の構成及び各部の寸法を有する5個の可変キャパシタ41〜45と、制御回路51と、オンオフ駆動回路52と、バイアス電圧印加回路53とを備えている。
【0100】
可変キャパシタ41〜45は、同一のシリコン基板2(図12及び図13では、図示せず。)に搭載されている。可変キャパシタ41〜45に関して、前述した配線パターン11,15がそれぞれ共通に接続されることで、図13に示すように、可変キャパシタ41〜45は並列接続されている。
【0101】
本実施の形態では、オンオフ駆動回路52は、制御回路51からのオンオフ制御信号(各可変キャパシタ41〜45のオンオフ状態を示す制御信号)に応答して、当該オンオフ制御信号が示すオンオフ状態を実現するように、各可変キャパシタ41〜45毎に、第1の駆動信号を供給する(すなわち、対応する配線パターン14と配線パターン11との間にオン駆動用電圧(当該可変キャパシタをオン状態にするのに必要な電圧)を印加するかあるいは配線パターン14を配線パターン11と同電位にする)。なお、本実施の形態では、各配線パターン14はそれぞれ電気的に分離しており、オンオフ駆動回路52によって、各可変キャパシタ41〜45をそれぞれ独立して設定し得るようになっている。
【0102】
バイアス電圧印加回路53は、制御回路51からのバイアス電圧制御信号(配線パターン11,15間に印加すべき直流バイアス電圧の大きさを示す信号)を応答して、当該バイアス電圧制御信号が示す大きさの直流バイアス電圧を配線パターン11,15間に供給する。
【0103】
制御回路51は、外部からの指令信号(配線パターン11,15で得るべき容量の指令値を示す信号)に応答して、当該指令信号が示す容量値が得るために必要なオンオフ制御信号及びバイアス電圧制御信号を、オンオフ駆動回路52及びバイアス電圧印加回路53にそれぞれ供給する。製造誤差等の影響で、可変キャパシタ41〜45の同じオンオフ状態において同じ大きさの直流バイアス電圧を配線パターン11,15間に印加しても、配線パターン11,15間に得られる容量値はばらついてしまう。本実施の形態では、各可変キャパシタ41〜45が前述したアナログ動作可能となっていることを利用して、制御回路51は、バイアス電圧制御信号を、実測データに基づいて得た関係(各可変キャパシタ41〜45のオンオフ状態及び直流バイアス電圧の大きさと配線パターン11,15間に得られる容量値との間の関係)に従って、指令信号が示す容量の指令値が正確に配線パターン11,15間に得られるように較正して出力するように構成されている。
【0104】
なお、用途によって、制御回路51は、前述したアナログ動作を較正目的でのみ利用して離散的な容量値が得られるように構成してもよいし、前述したアナログ動作を利用してある範囲においては連続的な容量値が得られるように構成してもよい。
【0105】
制御回路51、オンオフ駆動回路52及びバイアス電圧印加回路53は、シリコン基板2に搭載してもよいし、外部に配置してもよい。可変キャパシタ41〜45の部分は図7乃至図9を参照して説明した製造方法によって製造することができ、その製造方法はCMOSプロセスとコンパチブルであるので、制御回路51、オンオフ駆動回路52及びバイアス電圧印加回路53をシリコン基板2に搭載する場合、これらの回路のCMOS部を、可変キャパシタ41〜45の部分の下に積層したり、可変キャパシタ41〜45とは基板2における面方向に異なる領域に配置したりすることを、容易に行うことができる。また、基板2に搭載する回路としては、本実施の形態によるキャパシタ装置を含む高周波回路用フィルタ及びその他の高周波回路等も挙げることができる。また、本発明では、前記第1の実施の形態による可変キャパシタ1を単体で用いる場合にも、当該可変キャパシタ1を含む高周波回路用フィルタ又はその他の高周波回路等を基板2に搭載してもよい。この場合も、これらの回路のCMOS部を、可変キャパシタ1の部分の下に積層したり、可変キャパシタ1とは基板2における面方向に異なる領域に配置したりすることを、容易に行うことができる。
【0106】
本発明者は、本実施の形態によるキャパシタ装置と同様のキャパシタ装置を試作した。この試作の可変キャパシタ装置において、可変キャパシタ41〜45のうちオン状態にする可変キャパシタの数を変え、それぞれの場合について配線パターン11,15間の容量を測定した。ただし、配線パターン11,15間には、直流バイアス電圧は印加しなかった。図14はその測定結果を示す。図14の横軸は可変キャパシタ41〜45のうちのオン状態の可変キャパシタの数を示している。例えば、図14の横軸のゼロは可変キャパシタ41〜45の全てをオフ状態にしたことを意味し、図14の横軸のゼロは可変キャパシタ41〜45のうちの2つをオン状態にする一方3つをオフ状態にしたことを意味している。図14の縦軸は、配線パターン11,15間の容量の変化量を示す。ここでは、全ての可変キャパシタ41〜45をオフ状態にした場合、配線パターン11,15間の容量はゼロpFであった。
【0107】
本実施の形態では、各可変キャパシタ41〜45は各部の寸法まで同一であるので、直流バイアス電圧を印加しなければ、各可変キャパシタ41〜45の数に比例して配線パターン11,15間の容量が変化するはずである。図14は、そのことを実証している。
【0108】
本実施の形態によれば、前述した可変キャパシタ41〜45として前述した可変キャパシタ1と同一の構成を有するものが用いられているので、複数のキャパシタを組み合わせた従来のキャパシタ装置と異なり、特別なスイッチが不要となるとともに配線が1つですんでいる。したがって、本実施の形態によれば、占有面積を低減することができるとともにQ値の低下を防止することができる。
【0109】
なお、各可変キャパシタ41〜45として、可変キャパシタ1を前述したようにアナログ動作が不能となるように変形した可変キャパシタを用いてもよい。この場合、バイアス電圧印加回路53は除去される。
【0110】
[第3の実施の形態]
【0111】
図15は、本発明の第3の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図であり、図12に対応している。図15も、図12と同様に、製造途中において犠牲層を除去する前の状態を示している。図15において、図12中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0112】
本実施の形態による可変キャパシタ装置が前記第2の実施の形態による可変キャパシタ装置と異なる所は、以下に説明する点のみである。本実施の形態では、可変キャパシタ45が除去されている。前記第2の実施の形態では、可変キャパシタ41〜45のいずれも、オン状態での容量用固定電極と容量用可動電極との間の対向面積が同一であるのに対し、本実施の形態では、図15に示すように、可変キャパシタ41〜44では、順次、オン状態での容量用固定電極と容量用可動電極との間の対向面積が大きくなっている。これに伴い、本実施の形態では、配線パターン11における可変キャパシタ41,42に対応する部分の幅W1に比べて、配線パターン11における可変キャパシタ43,44に対応する部分の幅W2の方が広くなっている。本実施の形態では、配線パターン11は高周波信号線として用いられるので、幅W1と幅W2との間の継ぎ目で高周波信号の反射が生じ難くなるように、配線パターン11におけるその継ぎ目には45゜のテーパー部15aが形成されている。
【0113】
本実施の形態によれば、前記第2の実施の形態と同様の利点が得られる他、各キャパシタ41〜44のオン状態の容量がそれぞれ異なることから、前記第1の実施の形態に比べて、より広い範囲で配線パターン11,15間の容量を可変することができるという利点も得られる。
【0114】
本発明者は、本実施の形態によるキャパシタ装置と同様のキャパシタ装置を試作した。この試作の可変キャパシタ装置において、実験用として、配線パターン15及び全ての配線パターン14を短絡し、これらと配線パターン11との間に直流電圧を印加し、その印加電圧を徐々に上げていき、各印加電圧を印加しているときに配線パターン11,15間の容量を測定した。その結果を図16に示す。図16の横軸は前記印加電圧を示し、図16の縦軸は配線パターン11,15間の容量の変化量を示す。ここでは、全ての可変キャパシタ41〜45がオフ状態の場合、配線パターン11,15間の容量は、0pF程度の極小さい値の容量値であった。
【0115】
図16において、点Eでは、可変キャパシタ41がオン状態でかつ可変キャパシタ42〜43はオフ状態であり、配線パターン11,15の容量は0.2pFであった。点Fでは、可変キャパシタ41,42,44がオン状態でかつ可変キャパシタ43がオフ状態であり、配線パターン11,15の容量は4.8pFであり、点Eの容量0.2pFの24倍であった。点Gでは、全ての可変キャパシタ41〜44がオン状態であり、配線パターン11,15の容量は7pFであり、点Eの容量0.2pFの35倍であった。点Hでは、全ての可変キャパシタ41〜44がオン状態であるが点Gの場合に比べてアナログ動作が進行した(電極間間隔が狭まった)ものと考えられ、配線パターン11、15の容量は7.4pFであり、点Eの容量0.2pFの37倍であった。
【0116】
図16によって、0pFから7.4pFの非常に広い範囲(E点を基準にした場合の容量変化率は7.4/0.2=37)で、配線パターン11,15間の容量を可変することができることが、実証された。
【0117】
なお、本来、図16に示すように前記駆動電圧を上げていった場合は、所期の目論見通りであれば、前述したような順序で可変キャパシタ41〜44がオンするはずはないが、製造誤差等の影響でこのような順序でオンしたものと考えられる。ここでの実験結果としては、可変キャパシタ41〜44のオンオフ状態と得られる容量との関係が重要であり、オンする順序は特に問題ではない。
【0118】
ところで、本実施の形態において、例えば、4個の可変キャパシタ41〜44のオン状態(ここでは、初期間隔d0時とするが、例えば、前述したアナログ動作による較正した状態でもよい。)の容量値C41〜C44を、例えば、ΔCを任意の容量値として、1×ΔC、2×ΔC、4×ΔC、8×ΔCにそれぞれ設定してもよい。この設定は、例えば、可変キャパシタ41〜44のオン状態での容量用固定電極と容量用可動電極との間の対向面積を、それぞれ1倍、2倍、3倍、4倍に設定することによって、行うことができる。可変キャパシタ41〜44のオン状態の容量値を前述したように設定すると、各可変キャパシタ41〜44のオン・オフを独立して制御することで、ΔCきざみに、1×ΔCから15×ΔCまでの容量値をデジタル的に得ることができる。勿論、4個の可変キャパシタ41〜44をオフ状態とすれば、得られる容量値を実質的にゼロにすることもできる。
【0119】
同様に、本実施の形態において、例えば、4個の可変キャパシタ41〜44のオン状態(ここでは、初期間隔d0時とするが、例えば、前述したアナログ動作による較正した状態でもよい。)の容量値C41〜C44を、例えば、ΔCを任意の容量値として、10×ΔC、20×ΔC、40×ΔC、80×ΔCにそれぞれ設定してもよい。この場合、各可変キャパシタ41〜44のオン・オフを独立して制御することで、10×ΔCきざみに、10×ΔCから150×ΔCまでの容量値をデジタル的に得ることができる。勿論、4個の可変キャパシタ41〜44をオフ状態とすれば、得られる容量値を実質的にゼロにすることもできる。
【0120】
本実施の形態では、4個の可変キャパシタ41〜44が並列接続されているが、例えば、その個数を8個とし、8個の可変キャパシタのオン状態(ここでは、初期間隔d0時とするが、例えば、前述したアナログ動作による較正した状態でもよい。)の容量値を、1×ΔC、2×ΔC、4×ΔC、8×ΔC、10×ΔC、20×ΔC、40×ΔC、80×ΔCにそれぞれ設定してもよい。この場合、これらの8個の可変キャパシタのオン・オフを独立して制御することで、ΔCきざみに、1×ΔCから165×ΔCまでの容量値をデジタル的に得ることができる。勿論、8個の可変キャパシタをオフ状態とすれば、得られる容量値を実質的にゼロにすることもできる。本発明者は、実際に、このようなデジタル可変キャパシタ装置を試作し、ΔCきざみに、1×ΔCから165×ΔCまでの容量値をデジタル的に得ることができることを確認した。例えば、ΔC=0.01pFのものを作製すれば、0.01pFきざみに、0.01pFから1.65pFまでの容量値をデジタル的に得ることができる。また、ΔC=0.1pFのものを作製すれば、0.1pFきざみに、0.1pFから16.5pFまでの容量値をデジタル的に得ることができる。さらに、ΔC=0.2pFのものを作製すれば、0.2pFきざみに、0.2pFから33pFまでの容量値をデジタル的に得ることができる。
【0121】
[第4の実施の形態]
【0122】
図17は、本発明の第4の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図であり、図12に対応している。図17も、図12と同様に、製造途中において犠牲層を除去する前の状態を示している。図17において、図12中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0123】
本実施の形態による可変キャパシタ装置が前記第2の実施の形態による可変キャパシタ装置と異なる所は、各可変キャパシタ41〜45で、直線状部6における部分6aの長さ及び直線状部8における部分8aの長さ(図1中のL1に相当)が互いに異なっている点のみである。したがって、各可変キャパシタ41〜45で、直線状部6,8の各部分6a,8aのバネ性の硬さが互いに異なり、ひいては、個々に得られる容量に対する配線パターン11,15間に印加する直流バイアス電圧(第2の駆動信号)の感度が互いに異なっている。
【0124】
したがって、本実施の形態によれば、前記第2の実施の形態と同様の利点が得られる他、次の利点も得られる。すなわち、本実施の形態によれば、例えば、全ての可変キャパシタ41〜45がオン状態で、配線パターン11,15間に印加する直流バイアス電圧を徐々に変えていく場合、配線パターン11,15間の容量が前記第1の実施の形態に比べて大きく変化することになる。よって、本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態に比べて、より広い範囲で配線パターン11,15間の容量を可変することができるという利点も得られる。
【0125】
[その他の実施の形態]
【0126】
ここで、高周波回路の一例として高周波回路用フィルタの各例を図18に示す。図18(a)はローパスフィルタ、図18(b)はハイパスフィルタ、図18(c)はバンドパスフィルタ、図18(d)はバンドエリミネーションフィルタをそれぞれ示す。これらの図において、Cはキャパシタ、Lはインダクタンス、P1,P2はポートを示す。
【0127】
本発明の各実施の形態による高周波回路用フィルタとして、図18(a)〜(d)にそれぞれ示すフィルタにおいて、キャパシタCの代わりに、前記第1の実施の形態による可変キャパシタ1又はその変形例あるいは前記第2乃至第4のいずれかの実施の形態による可変キャパシタ装置を用いたフィルタを挙げることができる。勿論、本発明による可変キャパシタ及び可変キャパシタ装置は、フィルタ以外の種々の高周波回路(例えば、可変周波数発振器(VFO)、同調増幅器、位相シフタ、インピーダンス整合回路など)においても用いることができる。
【0128】
以上、本発明の各実施の形態及びその変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0129】
例えば、前述した実施の形態では、各可変キャパシタで採用されている対向状態と非対向状態との切り替えを行うためのアクチュエータは、駆動力として静電力が用いられる静電型であったが、いわゆる熱型や電磁型や圧電駆動型などの種々のマイクロアクチュエータを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタを模式的に示す概略平面図である。
【図2】図2は、図1中のA−A’線に沿った概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタの一動作状態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタの状態遷移過程を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタの他の動作状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタの更に他の動作状態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタの製造方法を示す工程図である。
【図8】図7に引き続く工程を示す工程図である。
【図9】図8に引き続く工程を示す工程図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態による可変キャパシタに関する測定結果を示す図である。
【図11】平行平板間の面積と容量との関係を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態による可変キャパシタ装置を示す回路図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態による可変キャパシタ装置に関する測定結果を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態による可変キャパシタ装置に関する測定結果を示す図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態による可変キャパシタ装置の要部を模式的に示す概略平面図である。
【図18】高周波回路用フィルタの各例を示す図である。
【符号の説明】
【0131】
1,41〜45 可変キャパシタ
2 基板
4,6,8 直線部
5 湾曲部
7 プレート部
11,14,15 配線パターン
13 オン駆動用固定電極
16a〜16d 支持突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変キャパシタであって、
基板を含む固定部に設けられた第1の電極部と、当該可変キャパシタの容量を前記第1の電極部との間に形成する第2の電極部を有する可動部とを備え、
前記可動部は、第1の駆動信号に応答して、前記第2の電極部が前記第1の電極部と対向する対向状態と前記第2の電極部が前記第1の電極部と実質的に対向しない非対向状態とに選択的になるように、変位することを特徴とする可変キャパシタ。
【請求項2】
前記可動部が薄膜で構成されたことを特徴とする請求項1記載の可変キャパシタ。
【請求項3】
前記非対向状態における前記容量がほぼゼロであることを特徴とする請求項1又は2記載の可変キャパシタ。
【請求項4】
前記対向状態における前記容量は、前記非対向状態における前記容量の10倍以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項5】
前記可動部は、前記固定部に対して固定端が固定された片持ち梁構造を持ち、
前記第2の電極部は、前記可動部の先端側に配置されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項6】
前記第1の電極部が高周波信号線の一部をなし、
前記基板の主面の法線方向から見た平面視で、前記固定端側から前記先端側に向かう方向が前記高周波信号線の延びる方向と略直交することを特徴とする請求項5記載の可変キャパシタ。
【請求項7】
前記可動部は、前記第2の電極部と前記固定端との間に配置された湾曲部と、前記湾曲部と前記固定端との間に配置された直線状部とを有し、
前記湾曲部は、前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、自身の保有する応力によって、前記固定端側から前記先端側に向うに従って前記固定部側から反り上がるように湾曲し、
前記直線状部は、前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、自身の保有する応力によって、前記固定部から間隔をあけた状態で前記固定端側から前記先端側に向うに従って前記基板の主平面と略平行に延び、
前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、前記非対向状態となる、
ことを特徴とする請求項5又は6記載の可変キャパシタ。
【請求項8】
前記固定部は、前記直線状部の少なくとも一部及び前記湾曲部の少なくとも一部に対応する箇所において第3の電極部を有し、
前記可動部は、前記直線状部及び前記湾曲部において第4の電極部を有し、
前記第1の駆動信号として前記第3及び第4の電極部間に駆動電圧が印加されて前記第3及び第4の電極部間に作用する静電力が、前記第1の駆動信号による駆動力として前記可動部に加えられ、
前記第1の駆動信号による所定の大きさ以上の駆動力が前記可動部に加えられたときに、当該駆動力によって、前記直線状部の少なくとも一部及び前記湾曲部の少なくとも一部が前記固定部側にプルインされて前記対向状態となる、
ことを特徴とする請求項7記載の可変キャパシタ。
【請求項9】
前記第2の電極部と前記第4の電極部とが電気的に接続されたことを特徴とする請求項8記載の可変キャパシタ。
【請求項10】
前記第1の電極部と前記第3の電極部とが電気的に分離されたことを特徴とする請求項8又は9記載の可変キャパシタ。
【請求項11】
前記基板は、CMOS部が搭載された回路基板であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項12】
前記可動部は、前記対向状態において、第2の駆動信号に応答して、前記第1の電極部の少なくとも一部と前記第2の電極部との間の間隔が変化するように、部分的に変位することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項13】
前記可動部における前記第2の電極の付近の部分が前記対向状態において固定部により支持されるように、前記可動部における前記第2の電極の付近の箇所又は当該箇所に対応する前記固定部における箇所に、前記対向状態において前記固定部又は前記可動部と当接する支持突起が設けられたことを特徴とする請求項12記載の可変キャパシタ。
【請求項14】
前記可動部における前記第2の電極の付近の部分は、前記対向状態において、前記固定部により前記支持突起を介して両持ち状態で支持されることを特徴とする請求項13記載の可変キャパシタ。
【請求項15】
前記第2の駆動信号として前記第1及び第2の電極部間に直流バイアス電圧が印加されて前記第1及び第2の電極部間に作用する静電力が、前記第2の駆動信号による駆動力として前記可動部に加えられる、ことを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項16】
複数のキャパシタを含み、当該複数のキャパシタの容量が合成されてなる合成容量が得られるように電気的に接続される可変キャパシタ装置であって、
前記複数のキャパシタのうちの少なくとも1つのキャパシタは、請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタであることを特徴とする可変キャパシタ装置。
【請求項17】
前記複数のキャパシタが並列接続されたことを特徴とする請求項16記載の可変キャパシタ装置。
【請求項18】
前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタに対してそれぞれ独立して前記第1の駆動信号を供給し得るように構成されたことを特徴とする請求項16又は17記載の可変キャパシタ装置。
【請求項19】
前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタのうちの少なくとも1つの可変キャパシタと当該2つ以上の可変キャパシタのうちの他の少なくとも1つの可変キャパシタとでは、前記対向状態における前記第1及び第2の電極部同士の対向面積が異なることを特徴とする請求項16乃至18のいずれかに記載の可変キャパシタ装置。
【請求項20】
前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタであり、指令信号に応じて当該2つ以上の可変キャパシタに対してそれぞれ前記第1の駆動信号を供給する駆動回路を備えたことを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載の可変キャパシタ装置。
【請求項21】
前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が請求項12乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタのうちの少なくとも1つの可変キャパシタと当該2つ以上の可変キャパシタのうちの他の少なくとも1つの可変キャパシタとでは、前記対向状態における前記第1の電極部の少なくとも一部と前記第2の電極部との間の間隔の変化に対する前記第2の駆動信号の感度が異なるように構成されたことを特徴とする請求項16乃至20のいずれかに記載の可変キャパシタ装置。
【請求項22】
請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタ又は請求項16乃至21のいずれかに記載の可変キャパシタ装置を含むことを特徴とする高周波回路用フィルタ。
【請求項23】
請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタ又は請求項16乃至21のいずれかに記載の可変キャパシタ装置を含むことを特徴とする高周波回路。
【請求項1】
可変キャパシタであって、
基板を含む固定部に設けられた第1の電極部と、当該可変キャパシタの容量を前記第1の電極部との間に形成する第2の電極部を有する可動部とを備え、
前記可動部は、第1の駆動信号に応答して、前記第2の電極部が前記第1の電極部と対向する対向状態と前記第2の電極部が前記第1の電極部と実質的に対向しない非対向状態とに選択的になるように、変位することを特徴とする可変キャパシタ。
【請求項2】
前記可動部が薄膜で構成されたことを特徴とする請求項1記載の可変キャパシタ。
【請求項3】
前記非対向状態における前記容量がほぼゼロであることを特徴とする請求項1又は2記載の可変キャパシタ。
【請求項4】
前記対向状態における前記容量は、前記非対向状態における前記容量の10倍以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項5】
前記可動部は、前記固定部に対して固定端が固定された片持ち梁構造を持ち、
前記第2の電極部は、前記可動部の先端側に配置されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項6】
前記第1の電極部が高周波信号線の一部をなし、
前記基板の主面の法線方向から見た平面視で、前記固定端側から前記先端側に向かう方向が前記高周波信号線の延びる方向と略直交することを特徴とする請求項5記載の可変キャパシタ。
【請求項7】
前記可動部は、前記第2の電極部と前記固定端との間に配置された湾曲部と、前記湾曲部と前記固定端との間に配置された直線状部とを有し、
前記湾曲部は、前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、自身の保有する応力によって、前記固定端側から前記先端側に向うに従って前記固定部側から反り上がるように湾曲し、
前記直線状部は、前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、自身の保有する応力によって、前記固定部から間隔をあけた状態で前記固定端側から前記先端側に向うに従って前記基板の主平面と略平行に延び、
前記可動部に駆動力が加えられていない状態において、前記非対向状態となる、
ことを特徴とする請求項5又は6記載の可変キャパシタ。
【請求項8】
前記固定部は、前記直線状部の少なくとも一部及び前記湾曲部の少なくとも一部に対応する箇所において第3の電極部を有し、
前記可動部は、前記直線状部及び前記湾曲部において第4の電極部を有し、
前記第1の駆動信号として前記第3及び第4の電極部間に駆動電圧が印加されて前記第3及び第4の電極部間に作用する静電力が、前記第1の駆動信号による駆動力として前記可動部に加えられ、
前記第1の駆動信号による所定の大きさ以上の駆動力が前記可動部に加えられたときに、当該駆動力によって、前記直線状部の少なくとも一部及び前記湾曲部の少なくとも一部が前記固定部側にプルインされて前記対向状態となる、
ことを特徴とする請求項7記載の可変キャパシタ。
【請求項9】
前記第2の電極部と前記第4の電極部とが電気的に接続されたことを特徴とする請求項8記載の可変キャパシタ。
【請求項10】
前記第1の電極部と前記第3の電極部とが電気的に分離されたことを特徴とする請求項8又は9記載の可変キャパシタ。
【請求項11】
前記基板は、CMOS部が搭載された回路基板であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項12】
前記可動部は、前記対向状態において、第2の駆動信号に応答して、前記第1の電極部の少なくとも一部と前記第2の電極部との間の間隔が変化するように、部分的に変位することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項13】
前記可動部における前記第2の電極の付近の部分が前記対向状態において固定部により支持されるように、前記可動部における前記第2の電極の付近の箇所又は当該箇所に対応する前記固定部における箇所に、前記対向状態において前記固定部又は前記可動部と当接する支持突起が設けられたことを特徴とする請求項12記載の可変キャパシタ。
【請求項14】
前記可動部における前記第2の電極の付近の部分は、前記対向状態において、前記固定部により前記支持突起を介して両持ち状態で支持されることを特徴とする請求項13記載の可変キャパシタ。
【請求項15】
前記第2の駆動信号として前記第1及び第2の電極部間に直流バイアス電圧が印加されて前記第1及び第2の電極部間に作用する静電力が、前記第2の駆動信号による駆動力として前記可動部に加えられる、ことを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の可変キャパシタ。
【請求項16】
複数のキャパシタを含み、当該複数のキャパシタの容量が合成されてなる合成容量が得られるように電気的に接続される可変キャパシタ装置であって、
前記複数のキャパシタのうちの少なくとも1つのキャパシタは、請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタであることを特徴とする可変キャパシタ装置。
【請求項17】
前記複数のキャパシタが並列接続されたことを特徴とする請求項16記載の可変キャパシタ装置。
【請求項18】
前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタに対してそれぞれ独立して前記第1の駆動信号を供給し得るように構成されたことを特徴とする請求項16又は17記載の可変キャパシタ装置。
【請求項19】
前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタのうちの少なくとも1つの可変キャパシタと当該2つ以上の可変キャパシタのうちの他の少なくとも1つの可変キャパシタとでは、前記対向状態における前記第1及び第2の電極部同士の対向面積が異なることを特徴とする請求項16乃至18のいずれかに記載の可変キャパシタ装置。
【請求項20】
前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタであり、指令信号に応じて当該2つ以上の可変キャパシタに対してそれぞれ前記第1の駆動信号を供給する駆動回路を備えたことを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載の可変キャパシタ装置。
【請求項21】
前記複数のキャパシタのうちの2つ以上のキャパシタの各々が請求項12乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタであり、当該2つ以上の可変キャパシタのうちの少なくとも1つの可変キャパシタと当該2つ以上の可変キャパシタのうちの他の少なくとも1つの可変キャパシタとでは、前記対向状態における前記第1の電極部の少なくとも一部と前記第2の電極部との間の間隔の変化に対する前記第2の駆動信号の感度が異なるように構成されたことを特徴とする請求項16乃至20のいずれかに記載の可変キャパシタ装置。
【請求項22】
請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタ又は請求項16乃至21のいずれかに記載の可変キャパシタ装置を含むことを特徴とする高周波回路用フィルタ。
【請求項23】
請求項1乃至15のいずれかに記載の可変キャパシタ又は請求項16乃至21のいずれかに記載の可変キャパシタ装置を含むことを特徴とする高周波回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−159661(P2008−159661A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343991(P2006−343991)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
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