説明

可変光減衰ユニットおよびその制御方法

【課題】減衰量を自動的に最適なものに設定することができる可変光減衰器を提供する。
【解決手段】強度検出手段20において電圧Vn+1にした後の出射光L2の光強度In+1が検出され、エラー判定手段40において電圧Vn+1の増減方向と光強度In+1の減衰方向とが一致するか否かが判定される。ここで、Vn+1(=V−ΔV)を供給したときに光強度In+1が光強度Iに比べて大きくなっているか(In+1>I)、もしくはVn+1(=V+ΔV)を印加したときに光強度In+1が光強度Iに比べて小さくなっているか(In+1<I)が判定される。電圧Vn+1の増減方向と光強度In+1の減衰方向とが一致している場合、使用領域TR2での使用であって正常である判定する。一方、電圧Vn+1の増減方向と光強度In+1とが一致していない場合、可変光減衰器10による正常な減衰を行われていないと判定し、警告を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的に光の減衰量を制御する可変光減衰ユニットおよびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、WDM光通信システム(波長多重光通信システム)の光送信機の光パワー調整などに可変光減衰器が用いられている。可変光減衰器には様々な種類があり、モーターやアクチュエータ(MEMS)などを使って機械的に光軸をずらして光量減衰量を調整するタイプ、熱によって屈折率を変化させて光減衰量を調整するタイプ、電圧供給により偏波面回転角度が変化するピエゾ素子を用いたタイプ等がある。
このうち、特許文献1に示すようなピエゾ素子を用いた可変光減衰器においては、ピエゾ素子に印加される電圧を制御してピエゾ素子の偏光角度を変化させることにより、可変光減衰器から出射される出射光の光強度を可変的に変化させるようにしている。さらに、特許文献2には上記ピエゾ素子の特性を利用したQ−スイッチが開示されている。
【特許文献1】特表2002−519716号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/94678号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1、2のタイプに限らず上述した様々なタイプの可変光減衰器において、減衰量の調整を行う場合には可変光減衰器の減衰特性を予めメモリ等に記憶しておき、メモリを参照して入射光に対して所望の光強度の出射光が出射されるように減衰量を決定するような制御が行われる。しかし、可変光減衰器の減衰特性は温度変化により変化する場合があり、さらに各製品間の性能ばらつきがある。このため、メモリ等に記憶されている減衰特性と実際の減衰特性との間にずれが生じ、所望の光強度の出射光を得ることができないという問題がある。特に、上述した特許文献1、2に示すピエゾ素子を用いた可変光減衰器の場合には、温度変化による減衰特性の変化および製品間の減衰特性のばらつきが大きく、所望の光強度の出射光を得ることができないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、可変光減衰器の減衰量を自動的に最適なものに設定することができる可変光減衰ユニットおよびその制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の可変光減衰ユニットは、入射光の光強度を減衰した出射光を出射する、減衰量が印加される電圧により変化する可変光減衰器と、可変光減衰器から出射された出射光の光強度を検出する強度検出手段と、強度検出手段において検出された出射光の光強度と予め設定された設定光強度とを比較し、比較結果に応じて可変光減衰器に印加する電圧を所定量だけ増減して可変光減衰器の減衰量を制御する減衰制御手段と、減衰制御手段による減衰量の増減の制御と可変光減衰器における減衰量の増減とが一致しているか否かを判定するエラー判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の可変光減衰ユニットの制御方法は、入射光の光強度を減衰した出射光を出射する、減衰量が印加される電圧により変化する可変光減衰器から出射された出射光の光強度を検出し、検出した出射光の光強度と予め設定された設定光強度とを比較し、比較結果に応じて可変光減衰器に印加する電圧を所定量だけ増減して可変光減衰器の減衰量を制御し、減衰量の増減の制御と可変光減衰器における減衰量の増減とが一致しているか否かを判定することを特徴とするものである。
【0007】
ここで、可変光減衰器は、電圧の印加により減衰量を制御されるものであればどのような構造のものであってもよく、たとえば入射光が透過される複数のピエゾ素子を有するものであり、減衰制御手段がピエゾ素子に電圧を供給することにより出射光の光強度を減衰するものであってもよい。あるいは、可変光減衰器はいわゆるMEMSを用いたもの等公知のものであってもよい。
【0008】
また、減衰制御手段は、出射光の光強度に基づいて可変光減衰器の減衰量を制御するようないわゆるフィードバック制御を行うものであればよく、特に、可変光減衰器がピエゾ素子を有するものである場合、減衰制御手段は、出射光の光強度が設定光強度よりも大きいとき電圧を所定量だけ減少し、出射光の光強度が設定光強度よりも小さいとき電圧を所定量だけ増加する。このとき、エラー判定手段は、電圧を増加させた後に出射光の光強度が減少しているか、もしくは電圧を減少させた後に出射光の光強度が増加しているかを判定するものであってもよい。
【0009】
あるいは、可変光減衰器が、電圧が増加すればするほど減衰量が増加するような特性を有する場合、減衰制御手段は、出射光の光強度が設定光強度よりも大きいとき電圧を所定量だけ増加し、出射光の光強度が設定光強度よりも小さいとき電圧を所定量だけ減少するようにしてもよい。このとき、エラー判定手段は、電圧を増加させた後に出射光の光強度が増加しているか、もしくは電圧を減少させた後に出射光の光強度が減少しているかを判定するものであってもよい。
【0010】
また、エラー判定手段は、減衰制御手段により行われた減衰量の増減の制御と、強度検出手段において検出された出射光の光強度の増減方向とが一致しているか否かを判定するものであればよく、減衰制御手段により行われた減衰量の増減の量と可変光減衰器における減衰量とが一致しているか否かまで判定するかしないかは問わない。
【0011】
さらに、エラー判定手段は、減衰制御手段により行われた減衰量の増減の制御と減衰量の増減とが一致していないとき、警告を出力する機能を有するものであってもよいし、可変光減衰器の機能を停止させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の可変光減衰ユニットおよびその制御方法によれば、入射光の光強度を減衰した出射光を出射する、減衰量が印加される電圧により変化する可変光減衰器から出射された出射光の光強度を検出し、検出した出射光の光強度と予め設定された設定光強度とを比較し、比較結果に応じて可変光減衰器に印加する電圧を所定量だけ増減して可変光減衰器の減衰量を制御し、減衰量の増減の制御と可変光減衰器における減衰量の増減とが一致しているか否かを判定することにより、可変光減衰器が温度変化等により電圧−減衰特性に大幅な変化がある場合や製品間の性能ばらつきがある場合においても、確実に所望の光強度の出射光が出射されるように自動的に制御できるとともに、異常な光強度の出射光が出射されるのを防止することができる。
【0013】
なお、可変光減衰器が電圧を印加することにより偏光角度が変化するピエゾ素子を有するものであるとき、ピエゾ素子を用いた可変光減衰器は温度変化等により電圧−減衰特性に大幅な変化がある場合や製品間の性能ばらつきが顕著なものであっても、確実に所望の光強度の出射光が出射されるように自動的に制御できるとともに、異常な光強度の出射光が出射されるのを防止することができる。
【0014】
また、減衰制御手段が、出射光の光強度が設定光強度よりも大きいとき電圧を所定量だけ減少し、出射光の光強度が設定光強度よりも小さいとき電圧を所定量だけ増加するものであり、エラー判定手段が、電圧を増加させた後に出射光の光強度が減少しているか、もしくは電圧を減少させた後に出射光の光強度が増加しているかを判定するものであれば、ピエゾ素子の電圧−減衰特性に合わせた減衰量の自動制御およびエラーの判定を行うことができる。
【0015】
さらに、エラー判定手段が、減衰制御手段による減衰量の増減の制御と可変光減衰器における減衰量の増減とが一致していないとき、警告を出力するもしくは可変光減衰器の動作を停止させる機能を有するものであるとき、異常な使用状態であることを使用者等に通知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の可変光減衰ユニットの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の可変光減衰ユニット1の好ましい実施形態を示す模式図である。可変光減衰ユニット1は、可変光減衰器10、強度検出手段20、減衰制御手段30、エラー判定手段40を備えている。
【0017】
可変光減衰器10は、電圧を印加することにより偏光特性を変化させて減衰量を調整するタイプのものである。具体的には、図2に示すように、可変光減衰器10は、入射光L1の入射側から順に、偏光分離素子11、電気光学素子(ピエゾ素子)12、偏光合波素子13を備えている。偏光分離素子11は、複屈折素子のような一軸異方性を備えた媒質からなっており、入射光L1を2つの偏光成分L1a、L1bに分離するものである。偏光分離素子11における偏光分離角度は材料や入射光L1の入射角度等により定まる。たとえば偏光分離素子11の入射面11aにおいて第1偏光成分L1a(たとえばP波)が直進し第2偏光成分L1b(たとえばS波)が屈折する。そして、偏光分離素子11の出射面11bにおいて第1偏光成分L1aは直進し第2偏光成分L1bは屈折することにより、2つの偏光成分L1a、L1bは略平行に分離した状態で射出される。
【0018】
電気光学素子12は、たとえばピエゾ素子(PZT、PLZT)からなるものであって、偏光分離素子11により各偏光成分に分離された2つの偏光成分のうちいずれか一方(図2においては第2偏光成分L1b)の偏光角度をφだけ回転させるものである。この回転角度φは減衰制御手段30から印加される電圧Vにより変化する。
【0019】
偏光合波素子13は、たとえば複屈折素子のような一軸異方性を備えた媒質からなっており、電気光学素子12を透過した2つの偏光成分L1a、L1bを再び合波して出射するものである。ここで、偏光合波素子13は、偏光分離素子11と同様に、たとえばP波成分が直進しS波成分が屈折する性能を有している。したがって、入射面13aにおいて第1偏光成分L1aは直進する。一方、第2偏光成分L1bは、電気光学素子12において回転角度φだけ回転しているため、第2偏光成分L1bのうちP波成分は直進しS波成分は屈折する。そして、出射面13bにおいて、第1偏光成分L1aと第2偏光成分L1bのS波成分とが合波され出射光L2として出射される。この出射光L2は入射光L1が第2偏光成分のP波成分だけ減衰している状態になる。この減衰量は電気光学素子12における角度φにより決定するものであり、角度φは電圧Vにより決定される。
【0020】
図1の強度検出手段20は出射光L2の光強度を検出するものであって、光分割手段21、光電変換素子22、A/D変換器23を備えている。光分割手段21は、たとえば光ファイバカプラやビームスプリッタ等からなるものであり、可変光減衰器10から出射された出射光L2の一部を参照光L3として分割するものである。なお、光分割手段21は、出射光L2と参照光L3との比率がたとえばL2:L3=99:1に設定されるような出射光L2の光強度の低下を最小限に抑えられていることが好ましい。
【0021】
光電変換素子22は、たとえばフォトダイオード等からなり、光分割手段21により分割された参照光L3を光電変換して光強度(光量)を光強度Iとして検出するものである。A/D変換器23は、光電変換素子22により光電変換されたアナログ信号からなる光強度IをA/D変換するものである。ここで、光電変換素子22およびA/D変換器23は所定のサンプリングレートで参照光L3から光強度Iを生成していく。
【0022】
減衰制御手段30は、強度検出手段20により検出された光強度Iに基づいて可変光減衰器10における減衰量(減衰率)を制御するものである。図3は減衰制御手段30およびエラー判定手段40の一例を示すブロック図である。図3の減衰制御手段30は、設定値比較手段31、電圧制御手段32を備えている。設定値比較手段31は、強度検出手段20により検出された参照光L3の光強度Iが予め設定された設定光強度Irefであるか否かを判定するものである。そして、設定値比較手段31は、光強度Iと設定光強度Irefとの比較結果(大小もしくは等しい)を出力する。
【0023】
電圧制御手段32は、設定値比較手段31における比較結果に基づいて可変光減衰器10に供給する電圧Vを制御するものである。ここで、図4は可変光減衰器10における電圧−減衰量特性の一例を示すグラフである。図4において、可変光減衰器10は、0Vから電圧が上昇させたときに、減衰量が大きくなる領域TR1、減衰量が小さくなる領域TR2、減衰量が大きくなる領域TR3を有している。このうち、電圧制御手段32は領域TR1およびTR3を使用せず、電圧が増加したときに減衰量が減少する領域TR2を使用することを想定して減衰量の調整を自動的に行う。
【0024】
具体的には、設定値比較手段31において所定のサンプリングタイミングnで検出された光強度Iが設定光強度Irefと略等しいと判定されたとき(I=Iref)、電圧制御手段32は電圧を増減することなく電圧Vを可変光減衰器10に供給する。一方、設定値比較手段31において光強度Iが設定光強度Irefよりも大きいと判定されたとき(I>Iref)、電圧制御手段32は電圧Vに所定量ΔVだけ減少させた電圧V−ΔVを可変光減衰器10に供給する。これにより、可変光減衰器10における減衰量を大きくし、出射光L2の光強度を小さくすることができる。また、設定値比較手段31において光強度Iが設定光強度Irefよりも小さいと判定されたとき(I<Iref)、電圧制御手段32は電圧Vに所定量ΔVだけ増加させた電圧V+ΔVを可変光減衰器10に供給する。これにより、可変光減衰器10における減衰量を大きくし、出射光L2の光強度を小さくすることができる。
【0025】
図3のエラー判定手段40は電圧Vの増減方向と出射光の光強度の増減方向とが一致していなか否かを判定するものである。換言すれば、エラー判定手段40は可変光減衰器10が使用領域TR2内において動作しているか否かを判定するものであって、光強度比較手段41と制御判定手段42とを備えている。
【0026】
光強度比較手段41は、所定のサンプリングタイミングnで検出された光強度Iと、光強度Iに基づいて電圧制御された後に検出された光強度In+1との大きさを比較するものである。このとき、光強度比較手段41はたとえば内蔵されているメモリに2つの光強度I、In+1を記憶しておく。制御判定手段42は、光強度比較手段41における比較結果と減衰制御手段30における電圧Vの増減とに基づいて、可変光減衰器10が使用領域TR2で使用されているか否かを判定するものである。
【0027】
図5は制御判定手段42における判定結果の一例を示す表である。まず、光強度Iが設定光強度Irefよりも大きい場合について説明する(Iref<I)。このとき、上述したように減衰制御手段30は減衰量を増加させてIn+1を小さくすることにより設定光強度Irefになるように制御する。使用領域TR2内において減衰量を増加させるためには電圧Vを減少する必要があるため、減衰制御手段30は所定量ΔVだけ電圧Vを減少させる(Vn+1=V−ΔV)。
そして、電圧制御後に検出された光強度In+1とIとを比較した結果、光強度In+1の方がIよりも大きい場合(In+1>I)、可変光減衰器10は領域TR1もしくはTR3で使用されていると判定し警告を出力する。一方、光強度In+1の方がIよりも小さい場合(In+1<I)、可変光減衰器10は領域TR2で使用されていると判定し、LEDランプ等からなる表示装置に対し警告を出力する。
【0028】
次に、光強度Iが設定光強度Irefよりも小さい場合について説明する(Iref>I)。このとき、上述したように減衰制御手段30は減衰量を減少させて光強度In+1を大きくすることにより設定光強度Irefになるように制御する。使用領域TR2内において減衰量を減少させるためには電圧Vを増加する必要があるため、減衰制御手段30は所定量ΔVだけ電圧を増加させる(Vn+1=V+ΔV)。
そして、電圧制御後に検出された光強度In+1とIとを比較した結果、光強度In+1が増加してIよりも大きくなった場合(In+1<I)、可変光減衰器10は領域TR2で正常に使用されていると判定する。一方、光強度In+1が減少してIよりも小さくなった場合(In+1<I)、可変光減衰器10は領域TR1もしくはTR3で使用されていると判定し、LEDランプ等からなる表示装置に対し警告を出力する。
【0029】
このように、実際に出射された出射光L2から光強度Iを検出し、検出した光強度Iに基づいて可変光減衰器10に印加する電圧Vのフィードバック制御を行うことにより、可変光減衰器10に温度による特性変化や製品間の性能ばらつきにより、予め取得した電圧−減衰特性通りの性能を発揮することが難しい場合であっても、所望の光強度の出射光L2が出射されるように自動的に制御することができる。
【0030】
すなわち、可変光減衰器10が温度による変動が少なく、製品間の性能ばらつきが小さいものであれば、予め特性を調べてメモリに記憶しておき、このメモリを参照しながら電圧Vを決定するような自動制御を行うことができる。しかし、図6は温度変動に対する電圧−減衰特性の変化を示すグラフである。図6に示すように使用環境下において温度変化が生じたときには電圧−減衰特性Tmp1〜Tmp3のように大幅に変化し、予め記憶されているメモリを用いた場合には所望の減衰量に自動制御することができず、出射光L2の光強度にばらつきが生じてしまう。
【0031】
さらに、図7は各製品の電圧−減衰特性のばらつきを示すグラフである。図7に示すように、各製品間において電圧−減衰特性10A〜10Cのように大幅に変化し、各製品に共通した電圧−減衰特性を用いた場合には所望の減衰量に設定できず、出射光L2の光強度にばらつきが生じてしまう。特に、上述した可変光減衰器10のようなPZTやPLZTのような電気光学素子12を用いる場合、電圧−減衰特性は製造時の結晶構造に依存するものであるため、図6および図7に示すようなばらつきを小さくすることが非常に難しい。
【0032】
一方、温度特性のばらつきおよび製品間の性能ばらつきがあっても、可変光減衰器10には電圧が大きくなればなるほど減衰量が小さくなる領域TR2が存在する。これを利用して、メモリやLUTを用いた減衰量の設定を行うのではなく、いわゆるフィードバック制御により所定量ΔVずつ電圧Vを調整することにより、温度特性のばらつきは製品間のばらつきが生じている可変光減衰器10を用いて精度良く減衰量の制御を自動的に行うことができる。また、入射光の光強度は、強度検出手段20における光強度Iのサンプリング間隔の間では大幅に変化することは少なく、特に電気光学素子12を用いた電圧入力に対する角度φの変化の応答性が高い。よって、上述のようなフィートバック制御を行ったとしても、迅速な減衰制御を行うことができる。
【0033】
ただし、上述した減衰制御手段30によるフィードバック制御は可変光減衰器10が領域TR2で使用されることを前提として行われるものである。つまり、領域TR1、TR3内での使用を考慮しておらず、さらに電圧―減衰特性の変化によって領域TR2も変化する。そこで、領域TR2内で使用されているかを監視するエラー判定手段40を設けることにより、可変光減衰器10が異常な状態で使用されるのを確実に防止することができる。
【0034】
図8は本発明の可変光減衰器の制御方法の好ましい実施形態を示すフローチャートであり、図1から図8を参照して可変光減衰ユニット1の制御方法について説明する。なお、既に所定の電圧Vが可変光減衰器10に印加されており、所定の減衰量に設定された状態になっているものとする。
【0035】
可変光減衰器10に入射光L1が入力されたとき、可変光減衰器10において入射光L1を所定の減衰量で減衰した出射光L2が出射される。そして、強度検出手段20により光強度Iが検出される(ステップST1)。そして、エラー判定手段40において、電圧Vの増減方向と光強度Iの減衰方向とが一致するか否かが判定される(ステップST2)。説明の便宜上、光強度Iを検出したときには使用領域TR2内において減衰されたものであるとする。
【0036】
その後、減衰制御手段30において光強度Iが設定光強度Irefであるか否かが判定される(ステップST3)。出射光L2の光強度Iが設定光強度Irefに一致する場合(I=Iref)、電圧Vが変化することなく可変光減衰器10に電圧が印加され、光強度In+1以降の検出判定(ステップST1〜ST3)が繰り返し行われる。
【0037】
一方、光強度Iが設定光強度Irefに一致しない場合(I≠Iref)、減衰制御手段30から供給される電圧Vが所定量ΔVだけ増減する(ステップST4)。具体的には、光強度Iが設定光強度Irefよりも大きいとき(I>Iref)、電圧Vに対し所定量ΔVだけ減少した電圧Vn+1(=V−ΔV)が印加され、光強度Iが設定光強度Irefよりも小さいとき(I<Iref)、電圧Vに対し所定量ΔVだけ増加した電圧Vn+1(=V+ΔV)が印加される。そして、電圧Vn+1の増減はエラー判定手段40のメモリに記憶される。
【0038】
次に、電圧Vn+1にした後の出射光L2の光強度In+1が検出されたとき(ステップST1)、エラー判定手段40において電圧Vn+1の増減方向と光強度In+1の減衰方向とが一致するか否かが判定される(ステップST2)。ここで、エラーの条件として、Vn+1(=V−ΔV)を供給したときに光強度In+1が光強度Iに比べて大きくなっているか(In+1>I)、もしくはVn+1(=V+ΔV)を印加したときに光強度In+1が光強度Iに比べて小さくなっているか(In+1<I)が判定される(図5参照)。電圧Vn+1の増減方向と光強度In+1の減衰方向とが一致している場合には使用領域TR2での使用であって正常である判定し、光強度In+1に基づき電圧Vn+2を決定する(ステップST3、ST4)。一方、電圧Vn+1の増減方向と光強度In+1とが一致していない場合、不使用領域TR1もしくはTR3での使用であって可変光減衰器10による正常な減衰を行われていないと判定し、警告を出力する(ステップST5)。
【0039】
上記実施の形態によれば、入射光L1の光強度を減衰した出射光L2を出射する、減衰量が印加される電圧Vにより変化する可変光減衰器10から出射された出射光L2の光強度Iを検出し、検出した出射光L2の光強度Iと予め設定された設定光強度Irefとを比較し、比較結果に応じて可変光減衰器10に印加する電圧Vを所定量ΔVだけ増減して可変光減衰器10の減衰量を制御し、減衰量の増減の制御と可変光減衰器10における減衰量の増減とが一致しているか否かを判定することにより、可変光減衰器10が温度変化等により電圧−減衰特性に大幅な変化がある場合や製品間の性能ばらつきがある場合においても、確実に所望の光強度Iの出射光L2が出射されるように自動的に制御できるとともに、異常な光強度の出射光が出射されるのを防止することができる。
【0040】
また、図2に示すように、可変光減衰器10が電圧Vを印加することにより偏光角度が変化するピエゾ素子12を有するものであるとき、ピエゾ素子12を用いた可変光減衰器10は温度変化等により電圧−減衰特性に大幅な変化がある場合や製品間の性能ばらつきが顕著なものであっても、確実に所望の光強度Iの出射光L2が出射されるように自動的に制御できるとともに、異常な光強度Iの出射光L2が出射されるのを防止することができる。
【0041】
また、減衰制御手段30が、出射光L2の光強度Iが設定光強度Irefよりも大きいとき電圧Vを所定量ΔVだけ減少し、出射光L2の光強度Iが設定光強度Irefよりも小さいとき電圧Vを所定量ΔVだけ増加するものであり、エラー判定手段が、電圧を増加させた後に出射光L2の光強度Iが減少しているか、もしくは電圧Vを減少させた後に出射光L2の光強度Iが増加しているかを判定するものであれば、可変光減衰器10の電圧−減衰特性に合わせた減衰量の自動制御およびエラーの判定を行うことができる。
【0042】
さらに、図5に示すように、エラー判定手段40が、減衰制御手段30による減衰量の増減の制御と可変光減衰器10における減衰量の増減とが一致していないとき、警告を出力するもしくは可変光減衰器10の動作を停止させる機能を有するものであるとき、異常な使用状態であることを使用者等に通知することができる。
【0043】
本発明の実施形態は上記実施の形態に限定されない。たとえば、図2において、2つの偏光成分L1a、L1bのうちいずれか一方の偏光成分L1bのみの偏光角度を回転する場合について例示しているが、2つの偏光成分L1a、L1bの双方の偏光角度を回転させるような構成を有するものであってもよいし、偏光分離素子11および偏光合波素子13として偏光ビームスプリッタを用いたもの等のその他公知の技術を採用したものであってもよい。
さらに、ピエゾ素子12を用いる場合に限らず、たとえばMEMS型の可変光減衰器10を用いた可変光減衰ユニットについても適用することができる。この場合、可変光減衰器10は電圧Vが増加すればするほど減衰量が増加する特性を有するため、減衰制御手段30はその特性に合わせた制御を行うことになる。
また、減衰制御手段30において、所定量ΔVだけ増減する場合について例示しているが、たとえば差分|In+1−I|の値が大きい場合には所定量ΔVの値を大きくし、差分|In+1−I|の値が小さい場合には所定量ΔVの値を小さくする、というように光強度In+1、Iの増減方向のみならず大きさをも考慮した電圧制御を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の可変光減衰ユニットの好ましい実施形態を示す模式図
【図2】図1の可変光減衰ユニットにおける可変光減衰器の一例を示す模式図
【図3】図1の可変光減衰ユニットにおける減衰制御手段およびエラー判定手段の一例を示すブロック図
【図4】図2の可変光減衰器の電圧−光減衰特性の一例を示すグラフ
【図5】図3のエラー判定手段のエラー判定結果の一例を示す表
【図6】図2の可変光減衰ユニットの温度変化に対して特性が変化する様子を示すグラフ
【図7】図2の可変光減衰ユニットの製品間の特性がばらついている様子を示すグラフ
【図8】本発明の可変光減衰ユニットの制御方法の好ましい実施形態を示すフローチャート
【符号の説明】
【0045】
1 可変光減衰ユニット
10 可変光減衰器
11 偏光分離素子
12 電気光学素子(ピエゾ素子)
13 偏光合波素子
20 強度検出手段
30 減衰制御手段
40 エラー判定手段
41 光強度比較手段
42 制御判定手段
Iref 設定光強度
L1 入射光
L2 出射光
L3 参照光
TR1 不使用領域
TR2 使用領域
TR3 不使用領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光の光強度を減衰した出射光を出射する、減衰量が印加される電圧により変化する可変光減衰器と、
該可変光減衰器から出射された前記出射光の光強度を検出する強度検出手段と、
該強度検出手段において検出された前記出射光の光強度と予め設定された設定光強度とを比較し、比較結果に応じて前記可変光減衰器に印加する前記電圧を所定量だけ増減して前記可変光減衰器の前記減衰量を制御する減衰制御手段と、
該減衰制御手段による前記減衰量の増減の制御と前記可変光減衰器における前記減衰量の増減とが一致しているか否かを判定するエラー判定手段と
を備えたことを特徴とする可変光減衰ユニット。
【請求項2】
前記可変光減衰器が前記電圧を印加することにより偏光角度が変化するピエゾ素子を有するものであることを特徴とする請求項1記載の可変光減衰ユニット。
【請求項3】
前記減衰制御手段が、前記出射光の光強度が前記設定光強度よりも大きいとき前記電圧を所定量だけ減少し、前記出射光の光強度が前記設定光強度よりも小さいとき前記電圧を所定量だけ増加するものであり、
前記エラー判定手段が、前記電圧を増加させた後に前記出射光の光強度が減少しているか、もしくは前記電圧を減少させた後に前記出射光の光強度が増加しているかを判定するものであることを特徴とする請求項2記載の可変光減衰ユニット。
【請求項4】
前記エラー判定手段が、該減衰制御手段による前記減衰量の増減の制御と前記可変光減衰器における減衰量の増減とが一致していないとき、警告を出力するもしくは前記可変光減衰器の動作を停止させる機能を有するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の可変光減衰ユニット。
【請求項5】
入射光の光強度を減衰した出射光を出射する、減衰量が印加される電圧により変化する可変光減衰器から出射された前記出射光の光強度を検出し、
検出した前記出射光の光強度と予め設定された設定光強度とを比較し、比較結果に応じて前記可変光減衰器に印加する前記電圧を所定量だけ増減して前記可変光減衰器の前記減衰量を制御し、
前記減衰量の増減の制御と前記可変光減衰器における減衰量の増減とが一致しているか否かを判定する
ことを特徴とする可変光減衰ユニットの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−66361(P2010−66361A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230703(P2008−230703)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【復代理人】
【識別番号】100134245
【弁理士】
【氏名又は名称】本澤 大樹
【Fターム(参考)】