説明

可変分周回路

【目的】 データ処理装置の高速化に寄与できるようにする。
【構成】 動作モード信号MCがロウレベルのときは1/2分周が行なわれ、ハイレベルのときは1/3分周が行なわれる。1/3分周の場合、シフトレジスタ2の出力からの第2の帰還信号S2が第1のゲート回路3及び第2のゲート回路4を通して半分周回路1のクロック入力C1に帰還される。クロック入力C1には、セットアップタイムがないので、シフトレジスタ2並びに第1のゲート回路3及び第2のゲート回路4の遅延時間のみを考慮してクロック信号CKの周期を決定すればよい。つまり、従来は半分周回路1のセットアップタイムをも考慮してクロック信号CKの周期を決定していたので、それと比較してクロック信号CKの周期を短縮する余裕時間が長くなり、クロック信号CKの周期を従来より短くしても正常な分周を行なえる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体集積回路等における可変分周回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】計算機等のプロセッサ用の半導体集積回路には、分周回路が備えられ、クロックパルスを数分の1の周期のパルスに分周して各種のタイミング制御に使用している。従来、この種の分周回路として、分周率を1/4分周と1/5分周等に変えられるようにした可変分周回路がある(電子通信学会総合全国大会講演論文集S7−4(昭和56年)、山下・加地・叶多・関根著「1GHz 直接帰還型2モジュラスプリスケーラ」p3-264〜3-265 )。
【0003】図2に、この回路を構成を変えずに1/2分周と1/3分周とに切り換えるように変更したものを示す。図示の回路は、2段の遅延型のフリップフロップ(以下、「FF」と記す)21、22を備え、その後段のFF22の出力端子Q22から出力される帰還信号S22と動作モード信号MCが2入力のANDゲート23の各入力に接続されている。FF21、22は、クロック信号CKの立上がりに同期して入力データを取り込み、クロック信号CKの立ち下がりで取り込んだデータを出力する機能を有する。
【0004】ANDゲート23の出力信号S23とFF21の出力端子Q21′から出力される帰還信号S21は、2入力のORゲート24の各入力に接続される。そして、そのORゲート24の出力信号S24がFF21の入力D21に接続されている。各FF21、22のクロック入力C21、C22には、クロック信号CKが入力される。尚、図2中のQ21、Q22は、FF21、22の出力であり、D22はFF22の入力であり、OUTは可変分周回路の出力端子である。この可変分周回路は、次のような動作を行なう。
【0005】図3は、図2の回路の動作を説明するタイミングチャートである。動作モード信号MCがロウレベル(低レベル)の場合、ANDゲート23の出力信号S23はロウレベルになる。このとき、ORゲート24は、FF21の出力端子Q21′からの信号S21をそのまま出力信号S24の形でFF21の入力端子D21へ帰還する。従って、FF21は1/2分周回路を構成する。この1/2分周回路の出力はFF22によりシフトされ、クロック信号CKが1/2分周された出力信号OUTが出力される。一方、動作モード信号MCがハイレベル(高レベル)に変化すると、ANDゲート23はFF22の出力端子Q22からの信号S22をそのまま出力信号S23として出力する。また、出力信号S23と出力端子Q21′からの信号S21がOR演算された結果の出力信号S24がFF21の入力端子D21へ入力される。その結果、FF21、22及びORゲート24は1/3分周回路を構成し、クロック信号CKが1/3分周された出力信号OUTが出力される。
【0006】即ち、図3の右半分に示すように、D21はQ21′とQ22との論理和となっている。また、Q21はD21より1クロック遅れた信号となる。従って、Q21の反転出力Q21′は図3に示すとおりとなる。このとき、Q22はQ21′より1クロック遅れた信号となる。そして、このQ22が1/3分周パルスとなる。以上のように、動作モード信号MCをロウレベルとするとき、1/2分周を行ない、ハイレベルとするとき、1/3分周を行なう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の技術には、次のような問題があった。即ち、従来の可変分周回路では、1/3分周動作において、FF22の出力端子Q22からの信号S22がANDゲート23とORゲート24を通ってFF21の入力D21に帰還されるまでの時間に対する余裕が小さい。
【0008】図4は、従来の回路による信号遅延を説明するタイミングチャートである。図2のFF21が正常にデータを取り込むためには、入力D21に加えられる出力信号S24は図4に示すようにクロック信号CKが立上がる時刻より一定時間ts1前に出力レベルを決定しておかなければならない。この時間ts1をセットアップタイムという。従って、図2に示すように、FF21及びFF22のC21及びC22にクロック信号CKを同時に入力する場合は、クロック信号CKが変化してから信号S24が変化するまでの遅延時間がクロックの半周期T/2から時間ts1を引いた時間よりも短くなければ正常な動作ができない。この関係は、次式(1)により表わされる。
td2+td3+td4 < T/2−ts1 (1)
ここに、td2、td3、td4は、それぞれFF22、ANDゲート23、ORゲート24の遅延時間である。
【0009】従って、データ処理装置の動作の高速化のためにクロックの周期を短くしようとしても、クロック信号CKの半周期T/2は、td2+td3+td4+ts1以下の時間にすることはできない。即ち、FF21にFF22の出力信号S22が帰還されるまでの余裕時間は図4の斜線に示す部分となる。このため、このような可変分周回路を使用したデータ処理装置の高速化が妨げられるという問題があった。本発明は、以上の点に着目してなされたもので、上述した余裕時間を長くとることができ、データ処理装置の高速化に寄与できるようにした可変分周回路を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の可変分周回路は、第1の帰還信号を入力し、半分の周波数に分周して出力する半分周回路と、当該半分周回路の出力を入力し、クロック信号により1周期分シフトして出力するシフトレジスタと、当該シフトレジスタの出力を入力し、制御信号により開閉して第2の帰還信号を出力する第1のゲート回路と、クロック信号を入力し、当該第1のゲート回路が出力する第2の帰還信号により開閉して前記第1の帰還信号を出力する第2のゲート回路とから成ることを特徴とするものである。
【0011】
【作用】本発明の可変分周回路においては、シフトレジスタの出力からの第2の帰還信号が第1及び第2のゲート回路を通して半分周回路のクロック入力に帰還される。クロック入力には、セットアップタイムがないので、シフトレジスタ及び第1、第2のゲート回路の遅延時間のみを考慮してクロック周期を決定すればよい。つまり、従来はセットアップタイムをも考慮してクロック周期を決定していたので、それと比較して余裕時間が長くなり、クロック周期を従来より短くしても正常な分周を行なえる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の可変分周回路の一実施例のブロック図である。図示の回路は、半分周回路1、シフトレジスタ2、第1のゲート回路3、第2のゲート回路4から成る。半分周回路1は、FF(フリップフロップ)11において、その出力Q1′を、入力D1に接続したものにより構成されている。また、シフトレジスタ2は、FFにより構成されている。第1のゲート回路3は、NANDゲートにより構成されている。そして、第2のゲート回路4は、ANDゲートにより構成されている。
【0013】半分周回路1の出力Q1、即ちFF11の出力Q1は、シフトレジスタ2の入力D2に接続されている。一方、シフトレジスタ2の出力Q2からの帰還信号S2(第1の帰還信号)と動作モード信号MCは第1のゲート回路3の入力に接続されている。また、第1のゲート回路3の出力信号S3とクロック信号CKは第2のゲート回路4の入力に接続されている。クロック信号CKは第2のゲート回路4の入力に接続されるとともに、シフトレジスタ2のクロック入力C2にも接続されている。第2のゲート回路4の出力信号S4は、半分周回路1のクロック入力C1に接続されている。また、シフトレジスタ2の出力Q2は、出力端子OUTに接続されている。
【0014】次に、上述したの可変分周回路の動作を説明する。図5は、図1の回路の動作を説明するタイミングチャートである。動作モード信号MCがロウレベルのとき、第1のゲート回路3の出力信号S3は常にハイレベルとなる。このとき、第2のゲート回路4はクロック信号CKをそのまま出力信号S4の形で半分周回路1のクロック入力C1へ入力する。すると、半分周回路1の出力Q1からの出力信号S1がシフトレジスタ2でシフトされ、出力端子OUTからクロック信号CKが1/2分周された信号(図5のQ2)が出力される。
【0015】一方、動作モード信号MCがハイレベルのとき、第1のゲート回路3はシフトレジスタ2の出力Q2からの帰還信号S2を反転して出力信号S3として出力する。第2のゲート回路4は出力信号S3がハイレベルのときのみクロック信号CKを半分周回路1のクロック入力C1に入力する。即ち、シフトレジスタ2の出力Q2からの帰還信号S2がハイレベルのとき、信号S3はロウレベルとなるので、半分周回路1のクロック入力C1にクロック信号CKが伝わらない。そのため、図5のタイミングチャートの右半分に示すように半分周回路1のクロック入力C1にはクロック信号CKの3クロックのうち2クロックが入力される。これが半分周回路1で1/2分周され、シフトレジスタ2でシフトされる。この結果、出力端子OUTにクロック信号CKが1/3分周された信号(図5のQ2)が出力される。
【0016】以上のように、この可変分周回路は、動作モード信号MCがロウレベルのとき1/2分周を行ない、ハイレベルのとき1/3分周を行なう。図6は、本発明の回路による信号遅延を説明するタイミングチャートである。
【0017】図1の回路では、半分周回路1のクロック入力C1にクロック信号CKが入力されるのでなく、帰還信号S4が入力されるので、半分周回路1のクロック入力C1に加えられる信号は図6に示すようにクロック信号CKの立上がりよりずっと後に立上がる。そして、この時にデータ入力D1が取り込まれる。従って、半分周回路1のセットアップタイムを考慮する必要はなくなり、帰還信号S4はクロック信号CKが立上がる時までに半分周回路1に入力されればよい。この結果、シフトレジスタ2のクロック信号CKに対する遅延をtd2、第1のゲート回路3と第2のゲート回路4のゲート遅延時間をそれぞれtd3、td4、クロック信号CKの周期をTとすると、可変分周回路が正常に動作するためには、次式(2)を満たせばよい。
td2+td3+td4 < T/2 (2)
これを前記式(1)と比べると、左辺は同じであり、右辺は時間ts1の分だけ大きくなっている。従って、余裕時間は時間ts1長くなり、図1の回路はこの分だけ高速に動作することが可能となる。
【0018】図7は、本発明の可変分周回路の他の実施例の回路図である。図示の回路は、半分周回路31、シフトレジスタ32、第1のゲート回路33、第2のゲート回路34から成る。半分周回路31は、FF36において、その出力Q31′を入力D31に接続したものにより構成されている。FF36は、マスタスレーブ型のフリップフロップであり、これは両相のクロック入力C31とC31′を持っている。また、シフトレジスタ32は、マスタスレーブ型のフリップフロップにより構成されており、これは両相のクロック入力C32とC32′を持っている。第1のゲート回路33は、ANDゲートにより構成されている。第2のゲート回路34は、NORゲートにより構成されている。
【0019】半分周回路31の出力Q31はシフトレジスタ32の入力D32に接続されており、シフトレジスタ32の出力Q32は第1のゲート回路33の入力に接続されている。また、動作モード信号MCは、第1のゲート回路33の入力に接続されており、第1のゲート回路33の出力は第2のゲート回路34の入力に接続されている。一方、クロック信号CK′はクロック信号CKの反転信号であり、第2のゲート回路34の入力、半分周回路31のクロック入力C31′、インバータ35の入力、シフトレジスタ32のクロック入力C32′に接続されている。そして、第2のゲート回路34の出力S34は半分周回路31のクロック入力C31に接続されており、インバータ35の出力S35はシフトレジスタ32のクロック入力C32に接続されている。そして、シフトレジスタ32の出力Q32は、出力端子OUTに接続されている。
【0020】この回路は、第1の実施例の回路と同様に、図5及び図6に示す動作をする。従って、この第2の実施例によっても、第1の実施例と同様の効果が得られる。尚、上述した実施例においては、半分周回路とシフトレジスタにそれぞれD−FFを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、JK−FF等を用いることもできる。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の可変分周回路によれば、シフトレジスタの出力からの第2の帰還信号を第1及び第2のゲート回路を通して半分周回路のクロック入力に帰還させるようにしたので、半分周回路のセットアップタイムを考慮することが不要となり、シフトレジスタの出力信号を半分周回路に帰還させるまでの余裕時間を長くすることができる。従って、従来よりも高速なクロックを入力した場合にも正常な分周動作を行なうことができ、このような可変分周回路を使用したデータ処理装置の高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可変分周回路の一実施例のブロック図である。
【図2】従来の可変分周回路の一例を示すブロック図である。
【図3】従来の回路の動作を説明するタイムチャートである。
【図4】従来の回路による信号遅延を説明するタイムチャートである。
【図5】本発明の回路の動作を説明するタイムチャートである。
【図6】本発明の回路による信号遅延を説明するタイムチャートである。
【図7】本発明の可変分周回路の他の実施例のブロック図である。
【符号の説明】
1 半分周回路
2 シフトレジスタ(Dフリップフロップ)
3 第1のゲート回路(NANDゲート)
4 第2のゲート回路(ANDゲート)
11 Dフリップフロップ
31 半分周回路
32 シフトレジスタ(マスタスレーブ型Dフリップフロップ)
33 第1のゲート回路(ANDゲート)
34 第2のゲート回路(NORゲート)
36 マスタスレーブ型Dフリップフロップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の帰還信号を入力し、半分の周波数に分周して出力する半分周回路と、当該半分周回路の出力を入力し、クロック信号により1周期分シフトして出力するシフトレジスタと、当該シフトレジスタの出力を入力し、制御信号により開閉して第2の帰還信号を出力する第1のゲート回路と、クロック信号を入力し、当該第1のゲート回路が出力する第2の帰還信号により開閉して前記第1の帰還信号を出力する第2のゲート回路とから成ることを特徴とする可変分周回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開平7−170173
【公開日】平成7年(1995)7月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−342861
【出願日】平成5年(1993)12月15日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)