説明

可変容量コンデンサ

【課題】設計した容量値に対してばらつきが少なく、外部からの振動やノイズ等がある場合でも安定した容量値を実現できるとともに、電子回路に組み込んだときにも所望の容量値を実現でき、生産性高く、電子回路全体として小型化を可能とする可変容量コンデンサを提供する。
【解決手段】基板1上に下部電極2が形成され、下部電極2に対向させて上部電極4が配置され、下部電極2と上部電極4との間に、上部電極4を複数の可動領域に分けてそれぞれを下部電極2側に変位させるための絶縁性の支持部材3が配置されているとともに、下部電極2は、それぞれ少なくとも一部が可動領域に対向しており、可動領域を駆動するための制御電圧が印加される複数の第1の下部電極2aと、この第1の下部電極2aと分離されて少なくとも一部が可動領域に対向しており、可動領域との間で容量を形成する第2の下部電極2bとからなる可変容量コンデンサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量コンデンサに関するものであり、特に静電駆動式の可変容量コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電気機器,通信システム,携帯通信端末等の分野において、コンデンサとして容量値を変化させることができる可変容量コンデンサが広く用いられている。コンデンサの容量は、二つの電極(例えば上部電極と下部電極)の間の誘電体材料の誘電率,二つの電極が対向する部分の面積,二つの電極の間の距離に応じた容量値となる。したがって、可変容量コンデンサの容量値を変化させる方法としては、二つの電極の間にある誘電体材料の誘電率を変化させる方法や、例えば容量を形成する箇所の面積または二つの電極の距離などの、可変容量コンデンサを構成する部材自体の形状を変化させる方法が知られている。
【0003】
可変容量コンデンサを構成する部材自体の形状を変化させる方法として、二つの電極に電圧を印加することにより発生する静電引力を用いて二つの電極の距離を変化させる方法がある。以下、この方法により容量値を変化させる可変容量コンデンサを、静電駆動式の可変容量コンデンサという。図10(a),(b)に、それぞれ一般的な静電駆動式の可変容量コンデンサの断面図を示す(例えば、特許文献1を参照。)図10において、101は基板,102は下部電極,104は上部電極である。基板101上に下部電極102が形成されており、基板101上の下部電極102が形成されていない部位から上部電極104が、図10(a)は片持ち梁(カンチレバー)の形状に、(b)は両持ち梁(メンブレン)の形状になるよう形成されている。ここで、上部電極104は、下部電極102と対向する部位において、両者が平行となり、上部電極104が可動となるように形成されている。このような可変容量コンデンサは、上部電極104と下部電極102との間に電圧を印加することにより上部電極104と下部電極102との間に発生する静電引力で上部電極104が下部電極102側に引き寄せられ、その結果、上部電極104と下部電極102と間の距離が変化して容量が変化する。
【0004】
このような可変容量コンデンサは発振回路や変調回路等の電子回路に組み込まれ、高周波信号が印加されると、その可変容量コンデンサの容量の大きさに応じた出力電圧信号を出力するもので、可変容量コンデンサを組み込む電子回路が所望の回路出力を得ることができるように、その可変容量コンデンサの容量を可変設定して使用される。
【特許文献1】特開2000−208944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図10に示す可変容量コンデンサでは、広面積の上部電極104を用いる場合には、下部電極102と対向する部位において可動となるような薄い上部電極104を広面積にわたり均一な厚みに形成することは困難であるため、上部電極104の厚みが不均一となることから上部電極104が上方向あるいは下方向に歪んだ形状となり、下部電極102と平行な形状とすることは難しかった。このため、可変容量コンデンサ内で上部電極104と下部電極102との間の距離にばらつきがあり、可変容量コンデンサの容量値が所望の容量値に対してばらつくという問題点があった。
【0006】
また、広面積の上部電極104を下部電極102側に変位させると、上部電極104の変位が上部電極104の面内においてばらつくため同じ電圧を印加しても異なる容量値となり、精度よく所望の容量値を得ることができないという問題点があった。
【0007】
また、外部からの振動や電気的ノイズにより上部電極104が振動してしまい、可変容量コンデンサの容量値が安定しないという問題点があった。
【0008】
さらに、図10に示す可変容量コンデンサを電子部品として電子回路に組み込んだときに、上部電極104および下部電極102が、可変容量コンデンサの容量値を制御するために電圧(以下、制御電圧という)を印加する端子としての役割と、容量を形成する端子としての役割を兼ねた構成となっている。このため、制御電圧によるノイズが出力電圧信号に重畳されてしまうという問題点があった。また、逆に高周波信号の電圧(以下、信号電圧という)が高い場合には信号電圧によっても容量が変化してしまい、所望の容量値を得ることができないという問題点もあった。さらに、電子回路にチョークコイル等を用いて高周波成分(信号電圧)と直流成分(制御電圧)とを切り分ける必要が生じるため、電子回路を構成する部品数が多くなり、電子回路の生産性が低くなったり全体として大型化してしまうという問題点もあった。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術における問題点を解決すべく案出されたものであり、その目的は、静電駆動式の可変容量コンデンサにおいて、所望の容量値に対してばらつきが少なく、外部からの振動や電気的ノイズ等のある場合でも安定した容量値を実現できる可変容量コンデンサを提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の別の目的は、電子回路に組み込まれたときに制御電圧による高周波信号への影響を少なくすることができ、かつ高周波信号による容量変化を抑制して所望の容量値を得ることができる可変容量コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の可変容量コンデンサは、基板上に下部電極が形成され、この下部電極に対向させて上部電極が配置され、前記基板または前記下部電極と前記上部電極との間に、前記上部電極を複数の可動領域に分けてそれぞれを前記下部電極側に変位させるための絶縁性の支持部材が配置されているとともに、前記下部電極は、それぞれ少なくとも一部が前記可動領域に対向しており、前記可動領域を駆動するための制御電圧が印加される複数の第1の下部電極と、この第1の下部電極と分離されて少なくとも一部が前記可動領域に対向しており、前記可動領域との間で容量を形成する第2の下部電極とからなることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の可変容量コンデンサは、上記構成において、前記上部電極の前記可動領域に孔が開いていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の可変容量コンデンサは、上記構成において、前記可動領域の前記上部電極と前記第2の下部電極との間に誘電体が配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の可変容量コンデンサによれば、基板上に下部電極が形成され、この下部電極に対向させて上部電極が配置され、基板または下部電極と上部電極との間に、上部電極を複数の可動領域に分けてそれぞれを下部電極側に変位させるための絶縁性の支持部材が配置されているとともに、下部電極は、それぞれ少なくとも一部が可動領域に対向しており、可動領域を駆動するための制御電圧が印加される複数の第1の下部電極と、この第1の下部電極と分離されて少なくとも一部が可動領域に対向しており、可動領域との間で容量を形成する第2の下部電極とからなることから、電圧を印加しない状態での上部電極と下部電極との距離を支持部材により可動領域毎に一定に保つため、全体として広面積の上部電極と広面積の下部電極とを全面にわたって平行に配置することができ、設計した容量値に対する容量のばらつきを抑制することができるものとなる。また、上部電極を複数の可動領域に分けて、それぞれの可動領域を支持部材で支えていることから、各可動領域において上部電極を下部電極側にそれぞれ安定して変位させることができるため、全体として広面積の上部電極を用いた場合においても、可動領域毎に上部電極を精度よく変位させて所望の容量値を得ることができる可変容量コンデンサとなる。さらに、上部電極を複数の可動領域に分けて、それぞれの可動領域を支持部材で支えていることから、外部の振動や電気的ノイズ等が加わっても全体として広面積の上部電極について可動領域毎に上部電極が振動することを効果的に抑制することができるため、全体として広面積であっても外部の振動や電気的ノイズ等に左右されない安定した容量値が得られる可変容量コンデンサとなる。さらに、下部電極は、それぞれ少なくとも一部が可動領域に対向しており、可動領域を駆動するための制御電圧が印加される複数の第1の下部電極と、この第1の下部電極と分離されて少なくとも一部が可動領域に対向しており、可動領域との間で容量を形成する第2の下部電極とからなることから、制御電圧と信号電圧とを独立して印加することのできるものとなるため、信号電圧により可変容量コンデンサの容量値が所望の値からばらつくのを抑えて所望の容量値を得ることができるとともに、制御電圧により高周波信号にノイズが重畳することを防ぐことのできる可変容量コンデンサとなる。また、下部電極は、制御電圧が印加される第1の下部電極と容量を形成する第2の下部電極とからなることから、制御電圧と信号電圧とを独立して印加することができるので、高周波成分と直流成分とを切り分ける必要がなく、その結果、本発明の可変容量コンデンサを電子回路に組み込むときに電子回路を構成する部品数を削減することができ、電子回路の生産性を高くし、全体として小型化を可能とする可変容量コンデンサとなる。
【0015】
また、本発明の可変容量コンデンサによれば、上記構成において、上部電極の可動領域に孔が開いているときには、その孔が通風孔として機能するので上部電極を動かすための空気抵抗が小さくなり、より高速な動作が可能となる。
【0016】
また、本発明の可変容量コンデンサによれば、上記構成において、可動領域の上部電極と第2の下部電極との間に誘電体が配置されているときには、その誘電体は大気に比べ誘電率が高いため、より容量の大きいものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の可変容量コンデンサについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の可変容量コンデンサの実施の形態の一例を示す断面図である。
【0019】
図1において、1は基板,2は下部電極であり、2aは第1の下部電極,2bは第2の下部電極,3は上部電極4を複数の可動領域に分けてそれぞれ下部電極2の側に変位させるための支持部材,4は上部電極である。
【0020】
図1に示すように、本発明の可変容量コンデンサは、基板1上に第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bからなる下部電極2が形成され、下部電極2と上部電極4との間に、上部電極4を複数の可動領域に分けてそれぞれを下部電極2側に変位させるための絶縁性の支持部材3が配置されているとともに、下部電極2は、それぞれ少なくとも一部が可動領域に対向しており、可動領域を駆動するための制御電圧が印加される複数の第1の下部電極2aと、第1の下部電極2aと分離されて少なくとも一部が可動領域に対向しており可動領域との間で容量を形成する第2の下部電極2bとからなる。
【0021】
基板1は、その上に形成または配置される第1の下部電極2a,第2の下部電極2b,支持部材3および上部電極4を支持できる強度を有する絶縁性の材料からなる平板であれば特に限定されず、例えばシリコン,ガラス,石英,アルミナその他のセラミックス,樹脂等が用いられる。
【0022】
このような基板1上に第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bを形成する。第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bは、導電性のある材料であれば特に限定されず、例えば銅(Cu),金(Au),クロム(Cr),チタン(Ti),白金(Pt),アルミニウム(Al),銀(Ag),ニッケル(Ni)等の金属材料を用いて、スパッタリング法,蒸着法,CVD法,メッキ法,印刷法等の成膜方法により、単一の膜を成膜して形成してもよいし、異なる材料から成る複数の膜を積層して形成してもよい。また、第1の下部電極2aと第2の下部電極2bとは同一材料で形成してもよいし、異なる材料で形成してもよいが、同一材料で形成すれば第1の下部電極2aと第2の下部電極2bとを同一工程にてパターニング形状を変えるだけで同時に形成することができるので好ましい。ここで、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの厚みは、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0023】
また、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの形状は、特に限定されず、多角形状,円形状,楕円形状,ドーナツ型状等、任意に形成することができる。
【0024】
また、第1の下部電極2aと第2の下部電極2bとを分離する分離部の面積を両者を確実に分離することのできる最小限のものとして、第1の下部電極2aが上部電極4と対向する面積を広くすれば、小さな制御電圧で大きな容量変化を得ることができる可変容量コンデンサを得ることができ、第2の下部電極2bが上部電極4と対向する面積を広くすれば、大容量の可変容量コンデンサを得ることができる。
【0025】
基板1または下部電極2上、この例では基板1上には、上部電極4との間に、上部電極4を複数の可動領域に分けるための支持部材3が配置されている。支持部材3は、絶縁性の材料であれば特に限定されず、例えば窒化ケイ素(Si),酸化ケイ素(SiO),樹脂等の材料を用いて、スパッタリング法,各種CVD法,印刷法,スピンコート法等の方法により成膜し、所望の形状に加工して形成すればよい。あるいはこれらの材料から成るシートを所望の形状に加工して基板1または下部電極2上に配置してもよい。
【0026】
次に、図2(a)〜(c)にそれぞれ支持部材3の形状および配置の例を示す透視状態の模式的な平面図を示す。ここで、図2(a)〜(c)において、支持部材3の形状および配置を分かりやすくするために、支持部材3を斜線を施して示し、下部電極2を構成する第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bをまとめて下部電極2として示す。
【0027】
支持部材3の形状および配置は、上部電極4を複数の可動領域に分けるために、支部部材3の真上からみた形状を格子状(図2(a)の例)としたり、多数個の細長い長方形状の支持部材3を縦方向と横方向との二方向に間を開けて格子状の配置に並べたり(図2(b)の例)、多数個の円形状の支持部材3を規則的に並べたり(図2(c)の例)、これらの各形状・配置を組み合わせたりする。支持部材3の真上からみた形状は、格子状や、長方形状,多角形状,これらの角の鈍った形状,円形状,楕円形状等とすればよい。また、支持部材3を格子状とするときの格子の間隔や、複数の支持部材3を配置するときの隣り合う支持部材3の間隔は、狭すぎると上部電極4の各可動領域の変位が小さくなって容量変化率が小さくなり、広すぎると支持部材3により分けられた上部電極4の各可動領域を下部電極2側に安定して変位させることができなくなるため、両方を考慮して決定される。支持部材3の高さは、下部電極2と上部電極4とが接触せずに所望の容量値が得られ、かつ上部電極4の可動領域を下部電極2側に変位させることができる静電引力を得られるように第1の下部電極2aおよび上部電極4間に印加する制御電圧の大きさに応じて決定される。また、高さ方向の断面形状は図1に示す長方形状のみに限定されず台形状や円形状等でもよい。
【0028】
このように支持部材3により上部電極4を複数の可動領域に分けて支持することにより、電圧を印加しない状態での上部電極4と下部電極2との距離を一定に保ち、上部電極4と下部電極2とを平行に配置することができるため、設計した容量値に対するばらつきを抑制することができる。
【0029】
また、支持部材3により上部電極4を複数の可動領域に分けて支えることにより、各可動領域において上部電極4を下部電極2側へそれぞれ安定して変位させることができるため、全体として広面積の上部電極4を用いた場合においても、精度よく所望の変化率で変化する容量値を得ることができる。また、全体として広面積の上部電極4を用いることができるので、上部電極4と対向する面積を広くして第2の下部電極2bを形成することにより、大容量の可変容量コンデンサを得ることができる。
【0030】
なお、支持部材3は基板1上に形成してもよいし、第1の下部電極2a上に形成してもよいし、第2の下部電極2b上に形成してもよいし、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの両方の上に形成してもよい。
【0031】
ここで、支持部材3により分けられた上部電極4の各可動領域に対向する領域における第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの形状および配置例について説明する。図3(a)〜(f)はそれぞれ、図2(a)に示す支持部材3を用いた場合に得られる各可動領域に対向する領域における第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの形状および配置の例を示す要部拡大平面図である。なお、図3(a)〜(f)において、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの形状および配置を分かり易くするために、第1の下部電極2aに細い斜線を、第2の下部電極2bに太い斜線を施して示した。また、支持部材3により分けられた各可動領域を一単位として表していることが明確となるように、支持部材3を破線にて表わしている。
【0032】
第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの形状および配置は、図3(a)に示すように、長方形状のものを並列に配置してもよいし、図3(b)に示すように、複数個の長方形状のものを縦方向・横方向ともに交互に配置してもよいし、図3(c)に示すように、複数個の三角形状のものを交互に、向きを互い違いにして配置してもよいし、これらの角の鈍った形状としてもよい。さらに、図3(d)に示すように、第1の下部電極2aが矩形状の第2の下部電極2bを囲む形状としてもよいし、図3(e)に示すように、第1の下部電極2aが多角形状の第2の下部電極2bを囲む形状としてもよいし、図3(f)に示すように、第1の下部電極2aが円形状の第2の下部電極2bを囲む形状としてもよい。
【0033】
なお、図3(d)〜(f)において、第1の下部電極2aは、第2の下部電極2bを帯状に囲んだものについて示したが、可動領域に対向する領域のうち第2の下部電極2bおよび分離部を除く全面に設けてもよい。また、図3(d)〜(f)において、第1の下部電極2aが第2の下部電極2bを囲む形状について示したが、第2の下部電極2bが第1の下部電極2aを囲む形状としてもよい。ここで、第1の下部電極2aを可動領域に対向する領域の中央に形成し、第2の下部電極2bを可動領域に対向する領域のうち第1の下部電極2aおよび分離部を除く全面に第1の下部電極2aを囲うように形成すれば、可動領域の中央において静電引力を発生させることができるので、小さい電圧で可動領域を下部電極2側に駆動させて容量を変化させることができるとともに、上部電極4と対向する第2の下部電極2bの面積を全体として大きくとることができるので、大容量の可変容量コンデンサとすることができる。
【0034】
なお、図3(a)〜(f)において、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bに制御電圧および信号電圧を印加するための配線を省略して示したが、これらの配線は適宜設けるものとする。例えば、図3(d)〜(f)に示す例では、第2の下部電極2bを囲う第1の下部電極2aの一部を除去し切れ目を形成し、そこを介し第2の下部電極2bに導通するとともに、第1の下部電極2aと電気的に分離された配線を設けてもよい。さらに、図3(a)〜(f)に示す例では、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの形状は同じであるが、異なった形状の組み合わせでもよく、また図3(a)〜(f)に示す構成を繰り返し配置したものとしてもよい。
【0035】
また、図3(a)〜(f)においては可動領域毎に第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bをそれぞれ少なくとも一個以上設けた例について示したが、図4(a)〜(d)に示すように、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bを複数の可動領域で共用してもよい。図4(a)〜(d)はそれぞれ、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bと支持部材3との配置例を示す平面図である。ここで、図4(a)〜(d)においては、円柱状の支持部材3を縦方向と横方向との二方向に間を開けて規則的に配置した場合の例を用いて説明するが、支持部材3は図2(a),(b)に示すような配置としてもよい。
【0036】
また、図4(a)〜(d)において、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの形状および配置を分かり易くするために、第1の下部電極2aに細い斜線を、第2の下部電極2bに太い斜線を施して示し、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bに制御電圧および信号電圧を印加するための配線を省略して示す。
【0037】
図4(a)に示すように、長方形状の広面積の第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bを交互に左右に並べ、左右に隣り合う支持部材3が第1の下部電極2aと第2の下部電極2bとの上に交互に形成されていてもよいし、図4(b)に示すように、互いに幅の異なる長方形状の広面積の第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bを交互に左右に並べ、左右に隣り合う支持部材3が第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bのどちらか一方のみに形成されていてもよいし、図4(c)に示すように、複数の第1の下部電極2aが各可動領域の中央に対向するように形成され、第2の下部電極2bが第1の下部電極2aと分離部を除く全面に形成されていてもよいし、図4(d)に示すように、支持部材3の周辺のみに第1の下部電極2aが形成され、第2の下部電極2bが第1の下部電極2aと分離部を除く全面に形成されていてもよい。
【0038】
特に、図4(c)に示す構成とすれば、可動領域の中央において静電引力を発生させることができるので、小さい電圧で可動領域を下部電極2側に駆動させて容量を変化させることができるとともに、上部電極4と対向する第2の下部電極2bの面積を全体として多くとることができるので、大容量の可変容量コンデンサとすることができる。
【0039】
上部電極4は、支持部材3と接して、下部電極2と平行となるように配置される。上部電極4は、導電性の材料であれば特に限定されず、例えばCu,Au,Cr,Ti,Pt,Al,Ag,Ni等の金属材料を用いて、スパッタリング法,蒸着法,各種CVD法,メッキ法,印刷法等の成膜方法により、単一膜を成膜して形成してもよいし、異なる材料から成る複数の膜を積層して形成してもよい。また、これら金属材料から成るシートを用いて支持部材3上に配置してもよい。
【0040】
ここで、図5に示すように、上部電極4の可動領域に孔5を形成してもよい。図5(a)〜(c)はそれぞれ本発明の可変容量コンデンサの実施の形態の他の例を示す断面図であり、図5(d),(e)はそれぞれ透視状態の平面図である。ここで図5(d),(e)において、支持部材3の形状および配置を分かりやすくするために、支持部材3を斜線を施して示し、下部電極2を構成する第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bをまとめて下部電極2として示す。
【0041】
孔5は上部電極4の各可動領域に1箇所以上形成することができ、例えば図5(a)に示すよう各可動領域の中央部に形成したり、図5(b)に示すように各可動領域の中央部以外に形成したり、図5(c)に示すように可動領域によっては複数個形成するようにしてもよい。
【0042】
また孔5の真上からみた形状は任意の形状とすることができ、例えば図5(d)に示すような四角形状,図5(e)に示すような円形状等とすることができる。
【0043】
孔5は、上部電極4に電圧を印加しない状態において可動領域の上部電極4が下部電極2と平行に維持できる大きさとなるように、個々の可動領域の大きさに合わせて形成する。なお、孔5は全ての可動領域に設ける必要はなく、可変容量コンデンサの特性や仕様に応じて選択的に形成してもよい。
【0044】
このような孔5を上部電極4の可動領域に形成することにより、この孔5が通風孔として機能して上部電極4を高速で変位させる際の空気抵抗が小さくなるため、高速な動作が可能な可変容量コンデンサとすることができる。また、孔5により、上部電極4の可動領域内における強度を位置によって異ならせることができるので、可動領域の下部電極2側への変位の仕方を制御することができる。例えば、孔5の形状をアスペクト比の大きい矩形状として可動領域の端から中央に向かうように、図2(a)の例では可動領域の四隅から中央に向かうようにそれぞれ形成したり、径の小さな孔5を可動領域の端から中央に向かうように複数個ミシン目のように形成したりすれば、孔5で上部電極4が曲がりやすくなり、小さな静電引力で上部電極4を変位させることができる可変容量コンデンサとすることができる。
【0045】
また、図6に示すように、第2の下部電極2bと上部電極4との間に、この例では第2の下部電極2bの上に誘電体6を形成して配置してもよい。図6(a)〜(c)はそれぞれ本発明の可変容量コンデンサの実施の形態のさらに他の例を示す断面図である。
【0046】
誘電体6には、窒化ケイ素,酸化ケイ素,樹脂,酸化タリウム(TaO),酸化亜鉛(ZnO),チタン酸バリウム(BaTiO),チタン酸ストロンチウム(SrTiO),チタン酸ストロンチウムバリウム((Ba,Sr)TiO)等を用いる。誘電体6は、図6(a)に示すように上部電極4の各可動領域と対向するように第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2b上の支持部材3非形成部のみに形成してもよいし、図6(b)に示すように支持部材3の形成部を含む第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの上に形成してもよいし、図6(c)に示すように、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bのほぼ全面に形成してもよい。なお、誘電体6は第2の下部電極2b上のみに形成してもよいし、第1の下部電極2aをまたがるように形成されていてもよく、後者の場合には、図6(b),(c)のように第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの分離部において誘電体6が基板1と接するように形成されていてもよい。
【0047】
ここで図6(b),(c)のように、支持部材3の形成部にも誘電体6を形成する場合には、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2b上に誘電体6を形成し、誘電体6の上に支持部材3を形成すればよい。また、誘電体6と支持部材3とを同一材料,同一工程で形成してもよい。
【0048】
誘電体6の厚みは、所望の容量値を得るために上部電極4の可動領域が下部電極2側に変位できるように、上部電極4と下部電極2との距離に合わせて設定する。
【0049】
このような誘電体6を可動領域の下部電極2と上部電極4との間に配置することより、誘電体6は大気に比べ誘電率が高いため、より容量の大きい可変容量コンデンサとすることができる。
【0050】
以上のようにして作製した本発明の可変容量コンデンサの各例によれば、いずれも上部電極4と第1の下部電極2aとの間に可変容量コンデンサの容量を制御する制御電圧を印加し、上部電極4と第2の下部電極2bとの間に信号電圧を印加することで、静電引力により上部電極4の各可動領域を下部電極2側に変位させることにより、安定して精度よく所望の容量値に変化させることができるとともに、高周波信号による容量値の変動のない精度の高いものとすることができる。また、制御電圧と信号電圧とを別々に印加することができるので、制御電圧により信号電圧にノイズが重畳されることがなくノイズの少ない高性能な可変容量コンデンサになるとともに、電子回路に直流成分と高周波成分とを分離するための電子部品が不要となるため、生産性が高く、かつ電子回路の小型化を可能とすることができる可変容量コンデンサとなる。
【0051】
次に、本発明の可変容量コンデンサの作製方法の例について図面を参照しつつ説明する。
【0052】
図7(a)〜(e)はそれぞれ図1に示す本発明の可変容量コンデンサの作製方法の例の各工程を示す断面図である。
【0053】
まず、図7(a)に示すように、基板1上に第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bを形成する材料を成膜し、通常のフォトリソグラフィプロセスおよびエッチングプロセスにより、成膜した膜を所望のパターンに加工して第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bを形成する。
【0054】
次に、図7(b)に示すように、例えばPE−CVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法によりシリコンからなる犠牲層7を基板1,第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bの上に、電圧を印加しない状態での上部電極4と下部電極2との距離と同じ厚みとなるように形成し、通常のフォトリソグラフィプロセスおよびエッチングプロセスにより、支持部材3を配置する部位の犠牲層7を除去して犠牲層7の非形成部を設ける。
【0055】
次に、図7(c)に示すように、基板1または下部電極2上、この例では基板1上の犠牲層7の非形成部に支持部材3を形成する。例えば、PE−CVD法にて支持部材3を形成する材料を犠牲層7の非形成部を埋めるように成膜し、犠牲層7の上に形成された部位および犠牲層7の厚みを超えて形成された部位を通常のフォトリソグラフィプロセスおよびエッチングプロセスを用いて除去して、基板1または下部電極2上の犠牲層7の非形成部に支持部材3を形成すればよい。
【0056】
次に、図7(d)に示すように、犠牲層7および支持部材3を覆うように、上部電極4を形成する材料をスパッタリング法等により成膜し、通常のフォトリソグラフィプロセスおよびエッチングプロセスを用い、所望のパターンに加工して上部電極4を形成する。
【0057】
ここで、従来の静電駆動式の可変容量コンデンサは、上部電極の厚みが不均一なため、静電引力による上部電極の下部電極側へ引き寄せられる力の働き方が上部電極の面内で不均一となり、動作が安定しないという問題点があった。しかしながら、上部電極4を犠牲層7および支持部材3上に成膜して形成することにより、全体として広面積にわたり均一な厚みの上部電極4を得ることができる。このため、本発明の可変容量コンデンサの動作を安定したものとすることができる。
【0058】
最後に、図7(e)に示すように、犠牲層7を選択的にエッチング除去して、本発明の可変容量コンデンサを得る。例えば、シリコンからなる犠牲層7を選択的にエッチング除去するにはXeFガスを用いてドライエッチングすればよい。
【0059】
なお、本発明の可変容量コンデンサは上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更・改良を加えることができる。
【0060】
例えば、支持部材3の形状および大きさは、一定でもなくてよく、形成上または特性上、大きさおよび形状を変化させて形成してもよい。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の第1の実施例を、図7に示す各工程により作製した図1(a),図2(b)および図3(a)に示す可変容量コンデンサにより説明する。
【0062】
まず、図7(a)に示すように、ガラスからなる基板1上に、第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2bを形成する材料としてCrおよびAuをスパッタリング法によりCr/Auの層構造(各層の厚み:0.01μm/0.1μm)にて形成した。ここで上記電極材料は下層/上層の順に表している(以下も同様である)。次に、通常のフォトリソグラフィプロセスにより、この層を図3(a)に示すパターンに加工して第1の下部電極2aおよび第2の下部電極3aを形成した。
【0063】
次に、図7(b)に示すように、PE−CVD法によりシリコンからなる犠牲層7を3μmの厚みに成膜し、通常のエッチングプロセスにより支持部材3を配置する部位の犠牲層7を除去して犠牲層7の非形成部を設けた。支持部材3を配置する部位は図2(b)に示すパターンとした。
【0064】
次に、図7(c)に示すように、PE−CVD法にてSiOを犠牲層7の非形成部を埋めるように、3μmの厚みに成膜し、犠牲層7の上に形成された部位および犠牲層7の厚みを超えて形成された部位を通常のフォトリソグラフィプロセスにより除去し、基板1上の犠牲層7の非形成部にSiOから成る支持部材3を形成した。
【0065】
次に、図7(d)に示すように、犠牲層7および支持部材3を覆うように、上部電極4の形成材料としてCrおよびAuをスパッタリング法によりCr/Auの層構造(各層の厚み:0.01μm/0.1μm)にて形成し、通常のフォトリソグラフィプロセスを用いて所望のパターンに加工して上部電極4を形成した。
【0066】
次に、図7(e)に示すように、犠牲層7をXeFガスにより選択的にエッチング除去して可変容量コンデンサを得た。
【0067】
この第1の実施例の可変容量コンデンサを複数個作製し、上部電極4および第1の下部電極2aに印加する電圧の値を変化させて容量値を測定した結果、各可変容量コンデンサの設計した容量値に対する測定結果のばらつきは約0.5%であった。
【0068】
また、第1の実施例の可変容量コンデンサについて、第1の実施例の可変容量コンデンサの共振周波数と同じ周波数で振動する振動環境で容量値を測定したところ、振動していない場合の容量値と比べた振動環境における容量変化は約0.5%であった。
【0069】
また、第1の実施例の可変容量コンデンサを電源ラインおよび高周波信号線が配線されている実装基板に実装して、電源ラインおよび高周波信号線からの電気的ノイズのある環境で容量値を測定したところ、電気的ノイズがない場合の容量値に比べた電気的ノイズのある環境における容量変化は約0.1%であった。
【0070】
さらに、第1の実施例の可変容量コンデンサを電子回路に組み込み、第1の下部電極2aと上部電極4との間に制御電圧を、第2の下部電極2bと上部電極4との間に高周波信号を印加して電子回路の出力電圧信号を測定した結果、制御電圧を変化させても出力電圧信号にノイズは確認されず、また、高周波信号の信号電圧を高くしても、所望の容量の大きさに応じた出力電圧信号が出力されることから、制御電圧による高周波信号へのノイズの重畳がなく、高周波信号が印加されたときにも所望の容量値が得られることを確認した。
【0071】
次に本発明の第2の実施例について、図2(b)および図5(a),(d)に示す可変容量コンデンサにより説明する。図8(a)〜(f)はそれぞれ本発明の図5(a),(d)に示す可変容量コンデンサの作製方法の各工程を示す断面図である。
【0072】
第1の実施例と同様に、図8(a)〜(d)に示すように、基板1上に第1の下部電極2a,第2の下部電極2b,犠牲層7,支持部材3を形成し、犠牲層7および支持部材3を覆うように上部電極4を形成した。
【0073】
次に、図8(e)に示すように、通常のフォトリソグラフィにより上部電極4の各可動領域の中央において上部電極4の一部を除去して、孔5を形成した。
【0074】
次に、第1の実施例と同様に、図8(f)に示すように犠牲層7を除去して可変容量コンデンサを得た。
【0075】
ここで可動領域に形成された孔5は、犠牲層7をドライエッチングするためのガスを導入する導入口としても機能する。このため、支持部材3を図2(a)に示すように配置し、犠牲層7を可動領域毎に基板1と支持部材3と上部電極4とで密閉するような構成であっても、孔5を介して犠牲層7をドライエッチングするためのガスを導入することにより犠牲層7をエッチング除去することができる。
【0076】
この第2の実施例の可変容量コンデンサを複数個作製し、上部電極4および第1の下部電極2aに印加する電圧の値を変化させて容量値を測定した結果、各可変容量コンデンサの設計した容量値に対する測定結果のばらつきは約0.5%であった。
【0077】
また、第2の実施例の可変容量コンデンサについて、第2の実施例の可変容量コンデンサの共振周波数と同じ周波数で振動する振動環境で容量値を測定したところ、振動していない場合の容量値と比べた振動環境における容量変化は約0.5%であった。
【0078】
また、第2の実施例の可変容量コンデンサを電源ラインおよび高周波信号線が配線されている実装基板に実装して、電源ラインおよび高周波信号線からの電気的ノイズのある環境で容量値を測定したところ、電気的ノイズがない場合の容量値に比べた電気的ノイズのある環境における容量変化は約0.1%であった。
【0079】
また、第1の実施例に比べ、第2の実施例の可変容量コンデンサの応答速度が速くなっていた。
【0080】
さらに、第2の実施例の可変容量コンデンサを電子回路に組み込み、第1の下部電極2aと上部電極4との間に制御電圧を、第2の下部電極2bと上部電極4との間に高周波信号を印加して電子回路の出力電圧信号を測定した結果、制御電圧を変化させても出力電圧信号にノイズは確認されず、また、高周波信号の信号電圧を高くしても、所望の容量の大きさに応じた出力電圧信号が出力されることから、制御電圧による高周波信号へのノイズの重畳がなく、高周波信号が印加されたときにも所望の容量値が得られることを確認した。
【0081】
次に、本発明の第3の実施例について、図2(b)および図6(a)に示す可変容量コンデンサにより説明する。図9(a)〜(f)はそれぞれ本発明の図5に示す可変容量コンデンサの作製方法の各工程を示す断面図である。なお、支持部材3の真上からみた形状は図5(a)と同様の形状とした。
【0082】
第1の実施例と同様に、図9(a)に示すように、基板1上に第1の下部電極2a,第2の下部電極2bを形成した。
【0083】
次に、図9(b)に示すように、第2の下部電極2bの上にスパッタリング法により、ZnOからなる膜を2.0μmの厚みに成膜し、通常のフォトリソグラフィプロセスにより、成膜したZnO膜を所望のパターンに加工して、ZnOからなる誘電体6を形成した。
【0084】
次に、第1の実施例と同様に、図9(c)〜(f)に示すように、基板1,誘電体6,第1の下部電極2aおよび第2の下部電極2b上に犠牲層7,支持部材3を形成し、犠牲層7および支持部材3を覆うように上部電極4を形成した後に、犠牲層7を除去して可変容量コンデンサを得た。
【0085】
この第3の実施例の可変容量コンデンサを複数個作製し、上部電極4および第1の下部電極2aに印加する電圧の値を変化させて容量値を測定した結果、各可変容量コンデンサの設計した容量値に対する測定結果のばらつきは約0.5%であった。
【0086】
また、第3の実施例の可変容量コンデンサについて、第3の実施例の可変容量コンデンサの共振周波数と同じ周波数で振動する振動環境で容量値を測定したところ、振動していない場合の容量値と比べた振動環境における容量変化は約0.5%であった。
【0087】
また、第3の実施例の可変容量コンデンサを電源ラインおよび高周波信号線が配線されている実装基板に実装して、電源ラインおよび高周波信号線からの電気的ノイズのある環境で容量値を測定したところ、電気的ノイズがない場合の容量値に比べた電気的ノイズのある環境における容量変化は約0.1%であった。
【0088】
また、第1の実施例に比べ、第3の実施例の可変容量コンデンサは、容量の大きいものとなっていた。
【0089】
さらに、第3の実施例の可変容量コンデンサを電子回路に組み込み、第1の下部電極2aと上部電極4との間に制御電圧を、第2の下部電極2bと上部電極4との間に高周波信号を印加して電子回路の出力電圧信号を測定した結果、制御電圧を変化させても出力電圧信号にノイズは確認されず、また、高周波信号の信号電圧を高くしても、所望の容量の大きさに応じた出力電圧信号が出力されることから、制御電圧による高周波信号へのノイズの重畳がなく、高周波信号が印加されたときにも所望の容量値が得られることを確認した。
【0090】
次に、比較例として、第1の実施例と同様の材料、製造方法を用いて、基板1上の全面に下部電極を形成し、犠牲層7を下部電極上の全面に形成し、下部電極を囲う外枠状となるように基板1上に支持部材3を形成し、犠牲層7および支持部材3を覆うように上部電極4を形成した後、犠牲層7を除去して、下部電極および上部電極4の対向部分に支持部材3のない可変容量コンデンサを形成した。
【0091】
ここで、上部電極4と下部電極とが対向する面積および支持部材3の高さは実施例1〜3に示す可変容量コンデンサと一致するように設定した。
【0092】
この比較例の可変容量コンデンサを複数個作製し、上部電極4および下部電極に印加する電圧の値を変化させて容量値を測定した結果、各可変容量コンデンサの設計した容量値に対する測定結果のばらつきは約5%であった。
【0093】
また、比較例の可変容量コンデンサについて、比較例の可変容量コンデンサの共振周波数と同じ周波数で振動する振動環境で容量値を測定したところ、振動していない場合の容量値と比べた振動環境における容量変化は約20%であった。
【0094】
また、比較例の可変容量コンデンサを電源ラインおよび高周波信号線が配線されている実装基板に実装して、電源ラインおよび高周波信号線からの電気的ノイズのある環境で容量値を測定したところ、電気的ノイズがない場合の容量値に比べた電気的ノイズのある環境における容量変化は約5%であった。
【0095】
さらに比較例の可変容量コンデンサを電子回路に組み込み、下部電極2と上部電極4との間に制御電圧および高周波信号を印加して電子回路の出力電圧信号を測定した結果、制御電圧を変化させると出力電圧信号にノイズが確認され、また、高周波信号の信号電圧を高くすると、所望の容量の大きさと異なる出力電圧信号が出力されることから、制御電圧による高周波信号へのノイズの重畳があり、高周波信号が印加されたときには信号電圧によっても容量値が変動してしまい所望の容量値が得られないことを確認した。
【0096】
以上の結果より、本発明の第1の実施例〜第3の実施例の可変容量コンデンサは比較例の可変容量コンデンサに比べ、設計した容量値に対するばらつきが抑制された可変容量コンデンサとなっていることが分かった。
【0097】
また、上部電極4を複数の可動領域に分けて、それぞれの可動領域を支持部材3で支持していることにより、各可動領域の上部電極4が安定して下部電極2側に変位するため、上部電極4および第1の下部電極2aに電圧を印加することにより、所望の容量値を精度よく変化させて得ることができた。
【0098】
さらに、上部電極4を複数の可動領域に分けて、それぞれの可動領域を支持部材3で支持していることにより、外部の振動,電気的ノイズ等により可動領域の上部電極4が不要に振動することを抑制することができるため、外部の振動や電気的ノイズ等に左右されない安定した容量値が得られる可変容量コンデンサとなることが分かった。
【0099】
さらに、下部電極2は、それぞれ少なくとも一部が可動領域に対向しており、可動領域を駆動するための制御電圧が印加される複数の第1の下部電極2aと、第1の下部電極2aと分離されて少なくとも一部が可動領域に対向しており、可動領域との間で容量を形成する第2の下部電極2bとからなることから、上部電極4と第1の下部電極2aとの間に制御電圧を、第2の下部電極2bとの間に高周波信号を印加することにより、制御電圧と高周波信号とを独立して印加することのできるものとなるため、高周波信号により可変容量コンデンサの容量値が所望の値からばらついたり、逆に制御電圧により高周波信号にノイズが重畳されることがなくなり、その結果、電子回路に組み込んだときに所望の容量を精度良く得ることができ、かつ電子回路の生産性を高くし、全体として小型化を可能とする可変容量コンデンサとなることが分かった。
【0100】
また、本発明の第2の実施例の可変容量コンデンサによれば、上部電極4の可動領域に孔5が開いているため、第1の実施例の可変容量コンデンサに比べ高速な動作をすることができる可変容量コンデンサとなることが分かった。
【0101】
さらに、本発明の第3の実施例の可変容量コンデンサによれば、可動領域の第1の下部電極2a,第2の下部電極2bと上部電極4との間に誘電体6が配置されているため、第1の実施例の可変容量コンデンサに比べ、より大容量の可変容量コンデンサとなることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の可変容量コンデンサの実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)はそれぞれ図1に示す可変容量コンデンサにおける支持部材の形状・配置の例を示す透視状態の平面図である。
【図3】(a)〜(f)はそれぞれ図2(a)に示す支持部材を用いた場合に得られる各可動領域に対向する領域における下部電極の形状・配置の例を示す要部拡大平面図である。
【図4】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の可変容量コンデンサにおける下部電極の形状・配置と支持部材との配置例を示す平面図である。
【図5】(a)〜(c)はそれぞれ本発明の可変容量コンデンサの実施の形態の他の例を示す断面図であり、(d),(e)はそれぞれ透視状態の平面図である。
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ本発明の可変容量コンデンサの実施の形態のさらに他の例を示す断面図である。
【図7】(a)〜(e)はそれぞれ本発明の可変容量コンデンサの実施の形態の一例の作製方法の各工程を示す断面図である。
【図8】(a)〜(f)はそれぞれ本発明の可変容量コンデンサの実施の形態の他の例の作製方法の各工程を示す断面図である。
【図9】(a)〜(f)はそれぞれ本発明の可変容量コンデンサの実施の形態のさらに他の例の作製方法の各工程を示す断面図である。
【図10】(a),(b)はそれぞれ従来の可変容量コンデンサの例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 :基板
2 :下部電極
2a:第1の下部電極
2b:第2の下部電極
3 :支持部材
4 :上部電極
5 :孔
6 :誘電体
7 :犠牲層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に下部電極が形成され、該下部電極に対向させて上部電極が配置され、前記基板または前記下部電極と前記上部電極との間に、前記上部電極を複数の可動領域に分けてそれぞれを前記下部電極側に変位させるための絶縁性の支持部材が配置されているとともに、前記下部電極は、それぞれ少なくとも一部が前記可動領域に対向しており、前記可動領域を駆動するための制御電圧が印加される複数の第1の下部電極と、該第1の下部電極と分離されて少なくとも一部が前記可動領域に対向しており、前記可動領域との間で容量を形成する第2の下部電極とからなることを特徴とする可変容量コンデンサ。
【請求項2】
前記上部電極の前記可動領域に孔が開いていることを特徴とする請求項1記載の可変容量コンデンサ。
【請求項3】
前記可動領域の前記上部電極と前記第2の下部電極との間に誘電体が配置されていることを特徴とする請求項1記載の可変容量コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−165380(P2006−165380A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356707(P2004−356707)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)