説明

可変容量型斜板式液圧回転機

【課題】サーボピストン収納部の形状寸法を大きくすることなく、サーボピストンのフルストローク時の停止位置のずれの発生を確実に防ぐことができる。
【解決手段】サーボピストン1を中立位置に付勢するばねが、サーボピストン1の両端面の外側に配置され、径方向の内側に位置する第1ばね8と、外側に位置する第2ばね9とを含み、第1ばね8及び第2ばね9のサーボピストン1側に位置する一端を受ける第1ばね座10と、第1ばね8及び第2ばね9の蓋部6,7側に位置する他端を受けるとともに、サーボピストン1側に、このサーボピストン1の摺動方向に延設され、第1ばね8内に挿入される凸部11aを有する第2ばね座11と、サーボピストン1に締結され、第2ばね座11を相対的に摺動可能に支持するボルト12とを備え、第2ばね座11の凸部11aの端面が、サーボピストン1の摺動を規制する規制部11aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダ等の建設機械などに搭載される可変容量型斜板式液圧回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に示されるものがある。図3は、この特許文献1に示される従来の可変容量型斜板式液圧回転機を示す断面図である。
【0003】
この従来技術は、ケーシング50内に回転軸51、複数のシリンダ52を有するシリンダブロック53、各シリンダ52に挿入される複数のピストン54、図示しない複数のシュー等が設けられるとともに、各シューが摺接する可変容量部、すなわち押しのけ容積を決める斜板55が傾転可能に設けられている。
【0004】
この可変容量型斜板式液圧回転機は、回転軸51がホイールローダの原動機等で回転駆動されることにより、これと一体にシリンダブロック53が回転し、このシリンダブロック53の各シリンダ52内でピストン54のそれぞれが往復運動し、これらのピストン54の往復運動に従ってタンク等から各シリンダ52内に吸い込まれた作動油が高圧油として吐出される。
【0005】
また、シリンダブロック53の径方向の外側には、サーボピストン収納部56、このサーボピストン収納部56内に収納されるサーボピストン57、このサーボピストン57に形成されたスライダ収納部に収納されるスライダ64が設けられており、斜板55に備えられたピン65がスライダ64を介してサーボピストン57に接続されている。
【0006】
上述したサーボピストン収納部56は、左右部分のそれぞれに制御圧が導かれる傾転制御圧室66,67を備え、端部の開口のそれぞれは蓋部68,69によって閉塞されている。また、サーボピストン57の両端部を形成する摺動部60,61の内方部分のそれぞれに、サーボピストン57を中立位置に付勢するばね62,63の組み合わせが設けられている。ばね62は径方向の内側に位置し、ばね63は径方向の外側に位置している。これらのばね62,63はサーボピストン57の中央寄りに配置されるばね座70と、摺動部60,61側に配置されるばね座71とによって保持されている。
【0007】
さらに、サーボピストン収納部56の内周面には、ばね座71の端部71aが当接する段部、すなわちサーボピストン57の摺動を規制するストッパ部56aが形成されている。
【0008】
そして、サーボピストン収納部56の傾転制御圧室66あるいは67に制御圧が導かれ、この制御圧がサーボピストン57の受圧面58あるいは59に作用すると、ばね62,63の力に抗してサーボピストン57が摺動変位する。これによって、スライダ64及びピン65を介して斜板55は同図3の矢印AまたはB方向に傾転するようになっている。なお、同図3は、制御圧がサーボピストン57の受圧面58に作用したときの状態が示されている。
【0009】
この場合、同図3に示されるようにサーボピストン57は、フルストロークした際には、摺動部60の摺動に伴うばね座71の移動によって、このばね座71の端部71aがサーボピストン収納部56の段部を形成するストッパ部56aに当接する。これにより、このサーボピストン57のそれ以上の摺動が阻止されるようになっている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0014149A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように従来技術では、サーボピストン57がフルストロークした際に、このサーボピストン57の摺動が、ばね座71の端部71aがサーボピストン収納部56の段部を形成するストッパ部56aに当接することによって阻止されるようになっている。ところで、サーボピストン収納部56のストッパ部56aは、ばね62の外側に位置することから、このストッパ部56aの面積を構造上大きくすることが難しい。これにより、サーボピストン57のフルストローク時に、ばね座71の端部71aとの当接によって生じるストッパ部56aの面圧が大きくなりやすい。このために、経時的にストッパ部56aが損耗しやすくなる。このようにストッパ部56aが損耗すると、サーボピストン57のフルストローク時の停止位置が本来設定されている位置に対してずれてしまう。
【0011】
すなわち、上述した従来技術は、フルストローク時におけるサーボピストン57の停止位置のずれを生じる懸念があり、これにより斜板55の傾転制御精度が低下し、容量制御精度が悪くなって信頼性が低下してしまう虞がある。
【0012】
なお、ストッパ部56aの面積を大きく設定すれば、サーボピストン57のフルストローク時にばね座71の端部71aの当接によって生じるストッパ部56aの面圧を低くすることができる。しかし、サーボピストン収納部56の段部を形成するストッパ部56aの面積を大きくするためには、サーボピストン収納部56の形状寸法を大きくしなければならず、このために装置全体が大型になってしまう別の問題を発生してしまう。
【0013】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、サーボピストン収納部の形状寸法を大きくすることなく、サーボピストンのフルストローク時の停止位置のずれの発生を確実に防ぐことができる可変容量型斜板式液圧回転機を提供することにある。
【0014】
この目的を達成するために、本発明は、斜板を傾転させるサーボピストンと、このサーボピストンが収納されるとともに、このサーボピストンを摺動させる制御圧が導かれる傾転制御圧室を有するサーボピストン収納部と、上記サーボピストンを中立位置に付勢するばねと、上記サーボピストン収納部の両端部のそれぞれを閉塞する蓋部とを備えた可変容量型斜板式液圧回転機において、上記ばねが、上記サーボピストンの両端面の外側に位置する上記傾転制御圧室のそれぞれに配置され、径方向の内側に位置する第1ばねと、この第1ばねの径方向の外側に位置する第2ばねとを含み、上記傾転制御圧室のそれぞれに配置され、上記第1ばね及び上記第2ばねの上記サーボピストン側に位置する一端を受ける第1ばね座と、上記第1ばね及び上記第2ばねの上記蓋部側に位置する他端を受けるとともに、上記サーボピストン側に、このサーボピストンの摺動方向に延設され、上記第1ばね内に挿入される凸部を有する第2ばね座と、上記サーボピストンに一体的に設けられ、上記第2ばね座を相対的に摺動可能に支持する支持部材とを備え、上記第2ばね座の上記凸部の端面が、上記サーボピストンの摺動を規制する規制部を形成することを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、サーボピストンのフルストローク時に、サーボピストンは第2ばね座の凸部の端面を形成する規制部によってその摺動が規制され、停止する。第2ばね座の凸部は、2つのばねのうちの内側に位置する第1ばねに挿入されることから、その外径寸法を第1ばねの内径寸法よりもわずかに小さい寸法となるように設定することが可能である。すなわち、第2ばね座の凸部の外径寸法を第1ばねの内径寸法と略同等の寸法まで大きく設定することができる。したがって、サーボピストンが当接する第2ばねの凸部の端面、つまり規制部の面積を大きくすることができ、サーボピストンが当接した際の凸部の規制部の面圧を小さくすることができる。これにより、この第2ばね座の凸部の規制部の経時的な損耗を抑えることができ、サーボピストンのフルストローク時の停止位置のずれを確実に防ぐことができる。また、この場合、サーボピストン収納部の形状を変更することなく実現できることから、このサーボピストン収納部の形状寸法を大きくしないで済む。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、上記第2ばね座の上記凸部の外周面が、上記第1ばねの内径側部分を案内する第1ガイド部を形成するとともに、上記サーボピストン収納部の内周面が、上記第2ばねの外径側部分を案内する第2ガイド部を形成することを特徴としている。
【0017】
このように構成した本発明は、内側の第1ばねが第1ガイド部によって案内され、外側の第2ばねが第2ガイド部によって案内されることから、これらの第1ばね、第2ばねの円滑な撓み変形を実現させることができる。これにより、サーボピストンの摺動に際し、第1ばねと第2ばねとの干渉を防ぐことができ、このような干渉に伴う第1ばね、第2ばねの損耗を発生させることがない。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、上記支持部材が、上記サーボピストンに締結されるボルトから成ることを特徴としている。このように構成した本発明は、構造を簡単にすることができる。
【0019】
また、本発明は、上記発明において、上記サーボピストン収納部の内周面に、上記第1ばね座の移動を規制する段部を設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、段部の位置を適宜に設定することにより、サーボピストンが摺動した際に、第1ばね座と第2ばね座によって保持される第1ばねと第2ばねを縮めることができ、これらの第1ばね及び第2ばねによるサーボピストンの中立位置への強い復帰力を確保できる。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、上記第2ばね座の上記蓋部側に位置する端部が、上記蓋部に当接可能な当接部を形成することを特徴としている。このように構成した本発明は、サーボピストンのフルストローク時には、第2ばね座の蓋部側に位置する端部を形成する当接部が、蓋部に当接することによってこの第2ばね座の移動が阻止される。このとき同時に、第2ばね座の凸部の端面を形成する規制部にサーボピストンが当接し、このサーボピストンが停止する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、サーボピストンのフルストローク時に、このサーボピストンの摺動を、面積を大きく設定可能な第2ばね座の凸部の端面を形成する規制部によって規制する構成にしてあることから、サーボピストン収納部の形状寸法に影響を受けることなく、サーボピストンのフルストローク時に生じる第2ばね座の凸部の規制部の面圧を小さくして、この規制部の経時的な損耗を抑えることができる。したがって、サーボピストン収納部の形状寸法を大きくすることなく、サーボピストンのフルストローク時の停止位置のずれを確実に防ぐことができる。これにより、従来に比べて斜板の傾転制御精度を向上させることができ、精度の高い容量制御を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下,本発明に係る可変容量型斜板式液圧回転機を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明に係る可変容量型斜板式液圧回転機の一実施形態の要部を構成するサーボピストン部分を示す断面図、図2は本実施形態のサーボピストン摺動時の状態を示す断面図である。
【0024】
図1,2は本実施形態の要部を示しているが、本実施形態においても要部を除く構成は、図3に示したものと同様である。すなわち、図示しないが本実施形態も、外殻を形成するケーシング内に回転軸、及び複数のシリンダを有するシリンダブロックを備え、シリンダブロックの各シリンダ内にはピストンを往復運動可能に収容させてある。各ピストンの端部にはシューを備え、このシューがケーシング内に収納した斜板上を摺接する。斜板には傾転制御のための制御部材を構成するピンが備えられている。
【0025】
本実施形態は、図1,2に示すように、上述の斜板を傾転させるサーボピストン1と、このサーボピストン1が収納されるとともに、このサーボピストン1を摺動させる制御圧が導かれる傾転制御圧室2aを左右部分のそれぞれに有するサーボピストン収納部2とを備えている。このサーボピストン収納部2の左右の端部には、これらの端部を閉塞する蓋部6,7を備えている。
【0026】
また、サーボピストン1を中立位置に付勢するばねを備え、このばねは、サーボピストン1の左右の端面1aのそれぞれ外側に位置するサーボピストン収納部2の傾転制御圧室2aに配置され、径方向の内側に位置する第1ばね8と、この第1ばね8の径方向の外側に位置する第2ばね9とを含んでいる。
【0027】
また、サーボピストン収納部2の左右の傾転制御圧室2aのそれぞれに配置され、第1ばね8及び第2ばね9のサーボピストン1側に位置する一端を受ける第1ばね座10と、第1ばね8及び第2ばね9の上述した蓋部6,7側に位置する他端を受けるとともに、サーボピストン1側に、このサーボピストン1の摺動方向に延設され、第1ばね8内に挿入される例えば円柱状の凸部11aを有する第2ばね座11とを備えている。第1ばね8及び第2ばね9は、図1に示す中立状態において、予め圧縮された状態でこれらの第1ばね座10と第2ばね座11間に保持されている。
【0028】
第2ばね座11の凸部11aの端面は、サーボピストン1の摺動を規制する規制部11a1を形成している。また、この第2ばね座11の蓋部6,7側に位置する端部は、蓋部6,7に当接可能な当接部11bを形成している。
【0029】
第2ばね座11の凸部11aの外周面は、第1ばね8の内径側部分を案内する第1ガイド部11a2を形成しており、サーボピストン収納部2の内周面は、第2ばね9の外径側部分を案内する第2ガイド部2cを形成している。
【0030】
また、サーボピストン収納部2の内周面には、第1ばね座10の移動を規制する段部、すなわち第1ばね座10の端部10aが当接可能な段部2bを形成してある。
【0031】
さらに本実施形態は、サーボピストン1に一体的に設けられ、第2ばね座11を相対的に摺動可能に支持する支持部材をサーボピストン1の左右に備えている。この支持部材は、例えばサーボピストン1に締結されるボルト12から成っている。
【0032】
なお、サーボピストン1の中央部分には、サーボピストン1の摺動方向すなわち図1の左右方向に対して直交する方向、すなわち図1の紙面の表面と裏面を貫く方向に延設されるスライダ収納部3を形成してある。このスライダ収納部3にスライダ4を移動可能に収容させてあり、このスライダ4に貫通穴から成るピン収納部5を形成してある。このピン収納部5に、上述した図示しない斜板に備えられるピンが収納されるようになっている。
【0033】
このように構成した本実施形態も、図示しない回転軸の駆動によりシリンダブロックが回転し、斜板に摺接するシューを介して各ピストンが各シリンダ内を往復運動する。これによって、タンク等から各シリンダ内に吸い込まれた作動油が高圧油として吐出される。この動作については、上述した図3に示すものと同じである。
【0034】
また、図2に示すようにサーボピストン1が摺動すると、サーボピストン1に形成されたスライダ収納部3のスライダ4、及びこのスライダ4に形成されたピン収納部5の図示しないピンを介して図示しない斜板が傾転し、押しのけ容積が制御される。この点についても上述した図3に示すものと同じである。
【0035】
本実施形態は特に、例えば図2に示すように、サーボピストン収納部2の傾転制御圧室2aに導かれた制御圧によってサーボピストン1が同図2の右方向へフルストロークしたとき、サーボピストン1は、第2ばね座11の凸部11aの端面を規制する規制部11a1によってその摺動が規制され、停止する。すなわち、サーボピストン1の移動によって同図2の右側に位置する第2ばね座11の端部11bが蓋部7に当接し、同時にこの第2ばね座11の凸部11aの規制部11a1にサーボピストン1の同図2の右側に位置する端面1aが当接して、このサーボピストン1は停止する。
【0036】
この間、サーボピストン1の摺動に伴って同図2の右側に位置する第1ばね座10が右方向に移動するとともに、同図2の右側に位置するボルト12上を第2ばね座11が相対的に摺動し、これによって同図2の右側に位置する第1ばね8及び第2ばね9が縮められる。
【0037】
また、同図2に示すように、左側に位置する第1ばね座の端部10aがサーボピストン収納部2の段部2bに当接するとともに、サーボピストン1の摺動に伴って左側に位置するボルト12を介して左側に位置する第2ばね座11が移動する。これによって同図2の左側に位置する第1ばね8及び第2ばね9も縮められる。
【0038】
ここで、サーボピストン収納部2の同図2の左側の傾転制御圧室2aに供給されていた制御圧が除かれると、左右のそれぞれに位置する第1ばね8及び第2ばね9のばね力により、サーボピストン1は同図2に示す状態から左方に摺動し、図1に示す中立位置に復帰する。
【0039】
このように構成した本実施形態は、第2ばね座11の凸部11aは、2つのばねのうちの内側に位置する第1ばね8に挿入されることから、その外径寸法を第1ばね8の内径寸法よりもわずかに小さい寸法となるように設定することが可能である。すなわち、第2ばね座11の凸部11aの外径寸法を第1ばね8の内径寸法と略同等の寸法まで大きく設定することができる。したがって、サーボピストン1が当接する第2ばね座11の凸部11aの端面、つまり規制部11a1の面積を大きくすることができ、サーボピストン1が当接した際の凸部11aの規制部11a1の面圧を小さくすることができる。
【0040】
これにより、第2ばね座11の凸部11aの規制部11a1の経時的な損耗を抑えることができ、サーボピストン1のフルストローク時の停止位置のずれを確実に防ぐことができ、図示しない斜板の傾転制御精度を向上させることができ、精度の高い容量制御を実現させることができる。また、この場合、サーボピストン収納部2の形状寸法を変更することなく実現できることから、このサーボピストン収納部2の形状寸法を大きくしないで済む。
【0041】
また、サーボピストン1の摺動に伴う第1ばね8及び第2ばね9の撓み変形に際して、内側の第1ばね8が、第2ばね座11の凸部11aの外周面を形成する第1ガイド部11a2によって案内され、外側の第2ばね9が、サーボピストン収納部2の内周面を形成する第2ガイド部2cによって案内されることから、これらの第1ばね8、第2ばね9の円滑な撓み変形を実現させることができる。
【0042】
これにより、サーボピストン1の摺動に際し、第1ばね8と第2ばね9との干渉を防ぐことができ、このような干渉に伴う第1ばね8、第2ばね9の損耗を発生させることがなく、信頼性の高いばね配設構造とすることができる。
【0043】
また、第2ばね座11を支持する支持部材がサーボピストン1に締結されるボルト12から成ることから、構造が簡単であり、実用性に富む。
【0044】
また、サーボピストン収納部2の内周面に、第1ばね座10の移動を規制する段部2bを設けたことにより、サーボピストン1が摺動した際に、第1ばね座10と第2ばね座11によって保持される第1ばね8と第2ばね9を縮めることができ、これらの第1ばね8と第2ばね9によるサーボピストン1の中立位置への強い復帰力を確保でき、この点でも信頼性の高い装置とすることができる。
【0045】
なお、サーボピストン1がフルストロークした際に、例えば図2の左側の第1ばね座10のように、第1ばね8及び第2ばね9のばね力によって第1ばね座10の端部10aがサーボピストン収納部2の段部2bに強く当接し、経時的にサーボピストン収納部2の段部2bの当接面が損耗する懸念があるが、本実施形態にあっては、この段部2の損耗はサーボピストン1を停止させる動作に直接に影響を与えるものではない。すなわち、仮に段部2bに損耗を生じたとしても、その損耗に拘わらずサーボピストン1は第2ばね座11の凸部11aの規制部11a1に当接する。これによりサーボピストン1を精度良く本来設定される位置に停止させることができる。
【0046】
また、本実施形態は、例えば図2に示すように、サーボピストン1のフルストローク時に、第2ばね座11の端部11bが蓋部7に当接することによりサーボピストン1を停止させることができるが、上述の端部11bは、第1ばね8の内径に相応する円と、第2ばね9の外径に相応する円との間に形成される円環状の領域よりも大きな領域として形成することができ、大きな面積を確保することができる。したがって、繰り返し行なわれるサーボピストン1の摺動に際して、第2ばね座11の端部11bと、蓋部7、あるいは蓋部6との間の損耗を押さえることができる。これにより、上述したようにサーボピストン1の停止位置のずれを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る可変容量型斜板式液圧回転機の一実施形態の要部を構成するサーボピストン部分を示す断面図である。
【図2】本実施形態のサーボピストン摺動時の状態を示す断面図である。
【図3】従来の可変容量型斜板式液圧回転機を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 サーボピストン
1a 端面
2 サーボピストン収納部
2a 傾転制御圧室
2b 段部
2c 第2ガイド部
3 スライダ収納部
4 スライダ
5 ピン収納部
6 蓋部
7 蓋部
8 第1ばね
9 第2ばね
10 第1ばね座
10a 端部
11 第2ばね座
11a 凸部
11a1 規制部
11a2 第1ガイド部
11b 当接部
12 ボルト(支持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜板を傾転させるサーボピストンと、このサーボピストンが収納されるとともに、このサーボピストンを摺動させる制御圧が導かれる傾転制御圧室を有するサーボピストン収納部と、上記サーボピストンを中立位置に付勢するばねと、上記サーボピストン収納部の両端部のそれぞれを閉塞する蓋部とを備えた可変容量型斜板式液圧回転機において、
上記ばねが、上記サーボピストンの両端面の外側に位置する上記傾転制御圧室のそれぞれに配置され、径方向の内側に位置する第1ばねと、この第1ばねの径方向の外側に位置する第2ばねとを含み、
上記傾転制御圧室のそれぞれに配置され、上記第1ばね及び上記第2ばねの上記サーボピストン側に位置する一端を受ける第1ばね座と、上記第1ばね及び上記第2ばねの上記蓋部側に位置する他端を受けるとともに、上記サーボピストン側に、このサーボピストンの摺動方向に延設され、上記第1ばね内に挿入される凸部を有する第2ばね座と、
上記サーボピストンに一体的に設けられ、上記第2ばね座を相対的に摺動可能に支持する支持部材とを備え、
上記第2ばね座の上記凸部の端面が、上記サーボピストンの摺動を規制する規制部を形成することを特徴とする可変容量型斜板式液圧回転機。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記第2ばね座の上記凸部の外周面が、上記第1ばねの内径側部分を案内する第1ガイド部を形成するとともに、上記サーボピストン収納部の内周面が、上記第2ばねの外径側部分を案内する第2ガイド部を形成することを特徴とする可変容量型斜板式液圧回転機。
【請求項3】
上記請求項1記載の発明において、
上記支持部材が、上記サーボピストンに締結されるボルトから成ることを特徴とする可変容量型斜板式液圧回転機。
【請求項4】
上記請求項1記載の発明において、
上記サーボピストン収納部の内周面に、上記第1ばね座の移動を規制する段部を設けたことを特徴とする可変容量型斜板式液圧回転機。
【請求項5】
上記請求項1記載の発明において、
上記第2ばね座の上記蓋部側に位置する端部が、上記蓋部に当接可能な当接部を形成することを特徴とする可変容量型斜板式液圧回転機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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