説明

可変波長分散補償装置及び方法

【課題】信号光に対し損失を与えることなく、また各波長のWDM信号光に対し任意の分散補償量を付加することのできる可変波長分散補償装置および方法を提供する。
【解決手段】光信号が伝搬する光ファイバ(14)に、光分波器(または光サーキュレータ(13)を介して光信号の伝播方向と反対方向に伝搬する光(ポンプ光)を入射させ、これにより光ファイバ中で発生する誘導ブリルアン散乱の効果によって生じる群屈折率変化を利用して、光信号の波長分散を補償する。さらに、光分波器(または光サーキュレータ)を介して入射する光(ポンプ光)の周波数、強度の少なくとも一方を変化させることにより、光信号の波長分散補償量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムにおける可変波長分散補償装置及び可変波長分散補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送ネットワークにおいて、40Gbps伝送の実用化などの高速化が進んでおり、波長分散影響が大きくなっている。従来では、波長分散補償を行うため、伝送路とは反対の波長分散特性を持つDCF(Dispersion Compensating Fiber:分散補償光ファイバ)を伝送路中に設置することで、トータルの波長分散を補償する手法が行われてきた。しかし、補償量はDCFの分散特性とファイバ長により決定されるため、柔軟な補償量の変更を行うことができない。そこで、近年、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)と呼ばれる可変分散補償装置が提案されている(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】Hiroki Ooi et al, “40-Gb/s WDM Transmission With Virtually Imaged Phased Array (VIPA) Variable Dispersion Compensators”, Journal of Lightwave Technology, Vol.20, No. 12, pp.2196-2203 Dec. 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、WDM(波長分割多重)信号の一括波長分散を仮定した場合、VIPAにおいても、信号光の周波数ごとに分散量を柔軟に変更することができず、かつVIPA内ではレンズ、ミラー等の空間系のシステムが構築されているため、信号光が受ける損失が大きくなる傾向がある。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するため、信号光に対し、損失を与えることなく、かつWDM信号を仮定したとき、各波長のWDM信号光に対し、任意の分散補償量を付加することのできる可変波長分散補償装置および可変波長分散補償方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の可変波長分散補償装置は、光信号を伝搬する光ファイバと、光を発生する光源と、前記光源から出力された光を前記光信号とは反対の伝播方向から前記光ファイバへ入射する光分波器又は光サーキュレータとを具備し、これにより前記光信号と該光信号の伝搬方向とは反対方向に伝搬する前記光とにより前記光ファイバ中で発生する誘導ブリルアン散乱の効果によって生じる群屈折率変化を利用して、前記光信号の波長分散を補償することを特徴とする。
【0007】
ここで、前記光ファイバによって決まるブリルアンシフト周波数、前記光源から発生される前記光のスペクトル幅、前記信号光の帯域と周波数、および必要な波長分散補償量を基に必要となる前記群屈折率変化を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された前記群屈折率変化の最大値を示す周波数と最小値を示す周波数との間の変化に基づいて、前記光源から出力する前記光のスペクトル幅、周波数、強度の少なくともいずれか一つを調整することで前記光信号光の波長分散補償量を制御する制御手段とをさらに具備することを特徴とすることができる。
【0008】
また、前記光源はN個(Nは2以上の整数)の光源であり、前記N個の光源から出力された光と接続する前記光分波器又は光サーキュレータは1×Nのポートを有することを特徴とすることができる。
さらに、前記光源と前記光分波器又は光サーキュレータと間に接続して該光源から出力された光を増幅する光増幅器をさらに有し、前記制御手段は、前記算出手段により算出された前記群屈折率変化の最大値を示す周波数と最小値を示す周波数との間の変化に基づいて、前記光源から出力する前記光のスペクトル幅、周波数、前記光増幅器の増幅率の少なくともいずれか一つを調整することで前記光信号光の波長分散補償量を制御することを特徴とすることができる。
【0009】
また、前記光源はN個(Nは2以上の整数)の光源であり、前記N個の光源から出力された光と接続する前記光分波器又は光サーキュレータは1×Nのポートを有し、前記光増幅器はN個の光増幅器であることを特徴とすることができる。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の可変波長分散補償方法は、光信号を伝搬する光ファイバと、光を発生する光源とを含む光学系において、分波器又は光サーキュレータを介して、前記光源から出力された光を前記光信号とは反対の伝播方向から前記光ファイバへ入射することにより、前記光信号と該光信号の伝搬方向とは反対方向に伝搬する前記光とにより前記光ファイバ中で発生する誘導ブリルアン散乱の効果によって生じる群屈折率変化を利用して、前記光信号の波長分散を補償することを特徴とする。
【0011】
ここで、前記光ファイバによって決まるブリルアンシフト周波数、前記光源から発生される前記光のスペクトル幅、前記信号光の帯域と周波数、および必要な波長分散補償量を基に必要となる前記群屈折率変化を算出する算出手順と、前記算出手順により算出された前記群屈折率変化の最大値を示す周波数と最小値を示す周波数との間の変化に基づいて、前記光源から出力する前記光のスペクトル幅、周波数、強度の少なくともいずれか一つを調整することで前記光信号光の波長分散補償量を制御する制御手順とをさらに含むことを特徴とすることができる。
【0012】
また、前記光源はN個(Nは2以上の整数)の光源であり、前記N個の光源から出力された光と接続する前記光分波器又は光サーキュレータは1×Nのポートを有することを特徴とすることができる。
【0013】
さらに、前記光学系は前記光源と前記光分波器又は光サーキュレータ間に接続して該光源から出力された光を増幅する光増幅器をさらに含み、前記制御手順は、前記算出手順により算出された前記群屈折率変化の最大値を示す周波数と最小値を示す周波数との間の変化に基づいて、前記光源から出力する前記光のスペクトル幅、周波数、前記光増幅器の増幅率の少なくともいずれか一つを調整することで前記光信号光の波長分散補償量を制御することを特徴とすることができる。
【0014】
また、前記光源はN個(Nは2以上の整数)の光源であり、前記N個の光源から出力された光と接続する前記光分波器又は光サーキュレータは1×Nのポートを有し、前記光増幅器はN個の光増幅器であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のような構成であるので、本発明によれば、通常の伝送路光ファイバを分散補償媒体として用いることができ、ひいては既存の伝送路への影響を抑え、経済性を高める効果を奏する。
【0016】
また、本発明によれば、光ファイバ中の誘導ブリルアン散乱により信号光は増幅されるため、信号光は損失を受けることなく、信号光を波長補償すると同時に増幅することができ、ひいては伝送特性の向上につながる効果を奏する。
【0017】
また、本発明によれば、任意の光周波数の光信号がWDM多重された伝播光におけるそれぞれの光周波数の光信号に対して、個別に任意の波長分散補償量を与えることができ、ひいては柔軟性が高まる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態における可変波長分散補償装置の構成を示す。この可変波長分散補償装置は、送信機10から出力された光信号を伝搬する光ファイバ14と、光を発生する光源11と、光源11から出力された光を光信号とは反対の伝播方向から光ファイバ14へ入射する光分波器又は光サーキュレータ13と、光ファイバ14を伝搬してきた光信号を受信して電気信号に変換する受信機12と、光信号光の波長分散補償量を制御するために、群屈折率変化に基づいて、光源11から出力される光を調整する制御装置17とを有する。
【0019】
光ファイバ14へ光信号光とは反対の伝播方向から光(ホンプ光)を入射すると、その光は光信号とは反対の伝播方向に伝搬し、その結果として後述のように、光ファイバ14中で誘導ブリルアン散乱が起きるので、群屈折率変化が生じる。この時、光源11から出力される光のペクトル幅、周波数、強度を後述するような適切な値に設定、あるいは調整してあれば、群屈折率の増加と共に増幅作用が働くため、損失を受けずに波長分散を行うことが可能となる。そのような適切な値の設定状態で、信号光の帯域や周波数、光ファイバの条件が不変であるとすれば、リアルタイムの制御は必要ない。
【0020】
制御装置17は、光ファイバ14によって決まるブリルアンシフト周波数fb、光源11から発生される光のスペクトル幅Δf、信号光の帯域と周波数、および必要な波長分散補償量を基に必要となる群屈折率変化を算出し、算出された群屈折率変化の最大値を示す周波数と最小値を示す周波数との間の変化に基づいて、光源11から出力する光のスペクトル幅、周波数、強度の少なくともいずれか一つを調整することで光信号光の波長分散補償量を制御する。
【0021】
制御装置17に含まれるスペクトル幅、周波数、強度を制御する具体的手段について例示すると、光源11から出力される光のスペクトル幅の制御は、ノイズを発生させる電気信号発生器(図示しない)を用い、発生させたノイズを基に光源11を直接変調することで、スペクトル幅を広げる。このときのノイズのスペクトル幅を変化させることで、光源のスペクトル幅を制御する。また、周波数制御は、特定の周波数を発する光源11のレーザに対し、ペルチェ素子(図示しない)を用い、そのレーザの発振周波数の温度依存性を用いて周波数を制御する。強度の制御は、光源11のレーザに注入する電流を変化させて、出力光の強度を制御する。これら手段を統括して制御するものとしてコンピュータデバイスがある。このようなコンピュータデバイスとしては、CPUやメモリ、データ入力機構等を有する一般的なコンピュータデバイスが利用できる。また、図1では、制御装置17は光源11と別体に図示してあるが、光源11のハウジング内に一体的に組み込んでもよい。
【0022】
なお、上記のブリルアンシフト周波数fb、光源11から発生される光のスペクトル幅Δfは、温度や光ファイバ14に加わる歪で変動するが、分散補償装置で光ファイバの温度、歪管理を行うことで、fbやΔfといったパラメータが変動することはない。一方、信号光の周波数や強度が揺らぐと、光源11の出力光の周波数や強度を制御する必要がある。この場合、信号光の周波数、強度の検知が必要となり、フィードバックが必要である。ただし、群屈折率変化の帯域に対して、その揺らぎが無視できる程度であれば、そのフィードバックは必要ない。
【0023】
次に、誘導ブリルアン散乱による群屈折率変化が生じる仕組みと群屈折率変化特性を説明する。
【0024】
誘導ブリルアン散乱とは、入射光と音響フォノンとの相互作用によって生じる散乱現象であって、スペクトル線幅の狭い光を光ファイバに入射すると、入射光の伝搬方向と反対の伝播方向に向かって、ブリルアンシフト周波数と呼ばれる周波数だけ低い周波数を持つストークス光を発生する。このとき、ストークス光を発生させる入射光をポンプ光と呼ぶことにする。つまり、ポンプ光の周波数をfp、ブリルアンシフト周波数をfbとすると、ストークス光の周波数はfp−fbとなる。
【0025】
ここで、中心周波数がfp−fbである信号光を、ポンプ光に対向して光ファイバに入射すると、光ファイバ中でポンプ光から信号光へ光パワーが移り、信号光がゲイン(増幅)される。このゲインgは、図2(a)に示すとおり、fp−fbを中心にローレンツ型のスペクトル特性を持っており、このゲインにはクラマース・クローニッヒの関係と呼ばれる法則から、同じくfp−fbを中心に図2(b)に示す屈折率nの変化が生じる。
【0026】
群屈折率ngは、
【0027】
【数1】

【0028】
の関係から求められ、図2(c)に示すスペクトル特性の群屈折率変化が生じ、群屈折率はfp−fbを中心に増加する。ただし、fは周波数である。
【0029】
ゲイン量や群屈折率変化量のピーク値は、ポンプ光強度に比例し、かつ、ポンプ光のスペクトル幅Δfが40MHzよりも十分大きい場合には、ゲインの半値幅はポンプ光のスペクトルの半値幅Δfとほぼ等しくなり、群屈折率変化量が最小となる周波数fminは、群屈折率変化量がピーク値を示す周波数fp−fbから以下のスペクトル幅だけ異なる周波数を示す。
【0030】
【数2】

【0031】
この時、群屈折率変化のピーク値は以下の式(3)で求められる。
【0032】
【数3】

【0033】
ただし、cは真空中の光の速度、g0はブリルアン利得係数、Pはポンプ光の強度、Δfはポンプ光のスペクトル線幅(すなわち、半値幅)、Aeffは、光ファイバの実効断面積である。
【0034】
ここで、波長分散補償を行う場合、図3に示すように変化量が最大を示す周波数と、変化量が最小を示す周波数の間の変化を用いる。つまり、群屈折率変化が周波数領域においてほぼ線形に減少する領域又は線形に増加する領域を用いることにより、信号光の波長分散を補償する。
【0035】
例えば、一般的なDSF(Dispersion Shifted fiber:分散シフトファイバ)10kmを用い、
c=3×108(m/s)、g0=5×10-11、Aeff=50μm2
とすると、20GHzのスペクトル幅を持つ1mWの光源11の光を、信号光とは反対の伝播方向で、入射すると、群屈折率変化のピーク値は約2.4×10-6となり、約10GHzの領域で、群屈折率変化がほぼ線形に0から2.4×10-6へと変化する。
【0036】
群屈折率変化が0である周波数と、2.4×10-6である周波数では、光ファイバ14を伝搬後に、以下の式(4)で示す伝搬時間差ΔTが生じる。
【0037】
【数4】

【0038】
ただし、Lは光ファイバの長さ、cは真空中の光の速度、Δngは群屈折率変化量であり、c=3×108、Δng=±2.4×10-6を代入して(符号は、群屈折率が線形に増加する領域か、減少する領域かで決まる)、ΔT=±0.8ns/10GHzを得る。信号光の波長を1.5μm帯であると仮定すると、1nm=125GHzであることから、ΔT=±1000ps/nmを得る。つまり、±1000ps/nmの波長分散を補償することが可能である。
【0039】
例えば、5Gbps、周波数fsの信号光が、+1000ps/nmの分散を受けた場合に、上記で述べたポンプ光を入射すると、発生する群屈折率変化の約10GHzの領域で群屈折率変化がほぼ線形に変化し、−1000ps/nmを実現する領域が、信号光のスペクトルを含むように、ポンプ光の周波数を調整すると、信号光の分散が補償されることになる。
【0040】
また、この補償量はポンプ光強度を変化させると変更できる。分散量の符号は、信号光に対し、群屈折率変化が最小から最大へと周波数増加に伴って増加する特性のスロープを用いるか、群屈折率変化が最大から最小へと周波数減少に伴って減少する特性のスロープを用いるかで決定される。つまり、分散量の符号は、ポンプ光の周波数によって決まる。従って、光源11の光(ポンプ光)の周波数、強度の調整において、その両方を制御してもよい。すなわち、周波数を変化させることで分散補償量の符号を変えることが可能であり(例えば、+100ps/nmから−100ps/nmへの変化)、強度の変化で分散補償量を変える(例えば、+100ps/nmからプラス200ps/nmへの変化)という使い方ができる。限定的に考えると、ポンプ光の周波数は、群屈折率変化が線形に増加する領域か、あるいは減少する領域の2パターンのみを使うことになる。
【0041】
次に、損失(ロス)について説明する。上記のように、分散量の符号は、ポンプ光の周波数によって決まるため、ポンプ光の周波数fpは、信号光の周波数fsに対し、fs+fb±aとなる。ここでaは、信号光のスペクトルが、群屈折率変化のスロープに重なるようにするための周波数差である。
【0042】
この時、群屈折率の増加と共に増幅作用が働くため、損失を受けずに波長分散を行うことが可能となる。
【0043】
かつ、この群屈折率変化は、fp−fbを中心に、光源11のスペクトル幅の領域にのみ影響を及ぼすため、WDM信号の各信号に対し、個別にポンプ光を入射することにより、個別に任意の波長分散補償を施すことが可能となる。
【0044】
一方、信号光の周波数fsがfp+fbである場合には、先に説明したゲインとは逆に、光パルスにロスが生じる。このロスのスペクトル特性は、図2に示した特性の正負反転の特性となり、このロスや群屈折率変化量のピークを示す周波数はfp+fbとなり、群屈折率はfp+fbにおいて減少する。この現象に関しても、光パルスのロスや群屈折率変化のピーク値は、ポンプ光強度に比例する。つまり、この場合は、信号光の周波数fsに対し、fs−fb±aの周波数のポンプ光を入射することで、上記で述べた方法により、同様に分散を補償できる。ただし、この場合の分散補償には、増幅ではなく損失が伴うのが特徴である。
【0045】
(第2の実施形態)
図4は本発明の第2の実施形態における可変波長分散補償装置の構成を示す。図4に示すように、図1の実施形態の光分波器又は光サーキュレータ13と光源11の間に光増幅器(光アンプ)15を配置し、光源11において上記のように出力光の強度を変更する替わりに、光増幅器15の増幅率を制御装置17からの制御信号により変えることにより、光ファイバ14に入射するポンプ光の強度を制御し、分散補償量を変更してもよい。分散を補償する仕組みについては、第1の実施形態と同じである。
【0046】
(第3の実施形態)
図5は本発明の第3の実施形態における可変波長分散補償装置の構成を示す。本可変波長分散補償装置の構成は、光源11を複数N個有しており(Nは2以上の整数、以下同様)、光分波器又は光サーキュレータ16が1×Nのポートを有している。制御装置17からの制御信号はN個の光源11にそれぞれ供給される。
【0047】
その他の構成は、なお、図1における第1の実施形態と同様なので、その重複する説明は省略する。
【0048】
分散を補償する仕組みについては、第1の実施形態と同じである。前述のように、群屈折率変化は、fp−fbを中心に、光源11のスペクトル幅の領域にのみ影響を及ぼすため、WDM信号の各信号に対し、個別にポンプ光を入射することにより、個別に任意の波長分散補償を施すことが可能となるので、N個の光源11の周波数、出力を個別に制御することによって、任意の信号がWDM多重された信号光に対し、個別に任意の波長分散補償量を、実現できる。
【0049】
(第4の実施形態)
図6は本発明の第4の実施形態における可変波長分散補償装置の構成を示す。本可変波長分散補償装置の構成は、光源11を複数N個有しており、光分波器又は光サーキュレータ16が1×Nのポートを有していることは、第3の実施形態と同様であるが、N個の光源11と1×Nのポートを有する光分波器又は光サーキュレータ16の間に、N個の光増幅器15を接続し、制御装置17からの制御信号はN個の増幅器11にそれぞれ供給される。
【0050】
本可変波長分散補償装置では、N個の光源11において出力光の強度を変更する替わりに、N個の光増幅器15の増幅率を変えることにより、光ファイバ14に入射するポンプ光の強度を制御し、分散補償量を変更する。
【0051】
分散を補償する仕組みについては、第1の実施形態と同じである。前述のように、群屈折率変化は、fp−fbを中心に、光源11のスペクトル幅の領域にのみ影響を及ぼすため、WDM信号の各信号に対し、個別にポンプ光を入射することにより、個別に任意の波長分散補償を施すことが可能となるので、任意の信号がWDM多重された信号光に対し、個別に任意の波長分散補償量を、実現できる。
【0052】
(他の実施形態)
上記では、本発明の好適な実施形態を例示して説明したが、本発明の実施形態は上記例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内であれば、その構成部材等の置換、変更、追加、個数の増減、形状の設計変更等の各種変形は、全て本発明の実施形態に含まれる。また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、1つの機器からなる装置に適用してもよい。また、上記実施形態例に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種種の発明を形成できる。例えば、必要に応じて実施形態例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、可変量の波長分散を補償する機能を持ち、かつWDM信号に対し、それぞれの信号に任意の波長分散を施すことができる大容量伝送システムの波長分散補償装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態における可変波長分散補償装置の構成を示すブロック図である。
【図2】誘導ブリルアン散乱によって引き起こされるゲイン(a)、屈折率変化(b)、群屈折率変化(c)のスペクトル特性を示す特性図である。
【図3】誘導ブリルアン散乱によって引き起こされる群屈折率変化の、分散補償に用いる周波数帯域を示す特性図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における可変波長分散補償装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態における可変波長分散補償装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施形態における可変波長分散補償装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
10 送信機
11 光源
12 受信機
13 光カプラ又は光サーキュレータ
14 光ファイバ
15 光増幅器
16 1×Nポートを有する光カプラ
17 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を伝搬する光ファイバと、
光を発生する光源と、
前記光源から出力された光を前記光信号とは反対の伝播方向から前記光ファイバへ入射する光分波器又は光サーキュレータと
を具備し、これにより前記光信号と該光信号の伝搬方向とは反対方向に伝搬する前記光とにより前記光ファイバ中で発生する誘導ブリルアン散乱の効果によって生じる群屈折率変化を利用して、前記光信号の波長分散を補償することを特徴とする可変波長分散補償装置。
【請求項2】
前記光ファイバによって決まるブリルアンシフト周波数、前記光源から発生される前記光のスペクトル幅、前記信号光の帯域と周波数、および必要な波長分散補償量を基に必要となる前記群屈折率変化を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記群屈折率変化の最大値を示す周波数と最小値を示す周波数との間の変化に基づいて、前記光源から出力する前記光のスペクトル幅、周波数、強度の少なくともいずれか一つを調整することで前記光信号光の波長分散補償量を制御する制御手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の可変波長分散補償装置。
【請求項3】
前記光源と前記光分波器又は光サーキュレータと間に接続して該光源から出力された光を増幅する光増幅器をさらに有し、
前記制御手段は、前記算出手段により算出された前記群屈折率変化の最大値を示す周波数と最小値を示す周波数との間の変化に基づいて、前記光源から出力する前記光のスペクトル幅、周波数、前記光増幅器の増幅率の少なくともいずれか一つを調整することで前記光信号光の波長分散補償量を制御することを特徴とする請求項2に記載の可変波長分散補償装置。
【請求項4】
前記光源はN個(Nは2以上の整数)の光源であり、前記N個の光源から出力された光と接続する前記光分波器又は光サーキュレータは1×Nのポートを有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の可変波長分散補償装置。
【請求項5】
前記光源はN個(Nは2以上の整数)の光源であり、前記N個の光源から出力された光と接続する前記光分波器又は光サーキュレータは1×Nのポートを有し、前記光増幅器はN個の光増幅器であることを特徴とする請求項3に記載の可変波長分散補償装置。
【請求項6】
光信号を伝搬する光ファイバと、光を発生する光源とを含む光学系において、
分波器又は光サーキュレータを介して、前記光源から出力された光を前記光信号とは反対の伝播方向から前記光ファイバへ入射することにより、前記光信号と該光信号の伝搬方向とは反対方向に伝搬する前記光とにより前記光ファイバ中で発生する誘導ブリルアン散乱の効果によって生じる群屈折率変化を利用して、前記光信号の波長分散を補償することを特徴とする可変波長分散補償方法。
【請求項7】
前記光ファイバによって決まるブリルアンシフト周波数、前記光源から発生される前記光のスペクトル幅、前記信号光の帯域と周波数、および必要な波長分散補償量を基に必要となる前記群屈折率変化を算出する算出手順と、
前記算出手順により算出された前記群屈折率変化の最大値を示す周波数と最小値を示す周波数との間の変化に基づいて、前記光源から出力する前記光のスペクトル幅、周波数、強度の少なくともいずれか一つを調整することで前記光信号光の波長分散補償量を制御する制御手順と
をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の可変波長分散補償方法。
【請求項8】
前記光学系は前記光源と前記光分波器又は光サーキュレータ間に接続して該光源から出力された光を増幅する光増幅器をさらに含み、
前記制御手順は、前記算出手順により算出された前記群屈折率変化の最大値を示す周波数と最小値を示す周波数との間の変化に基づいて、前記光源から出力する前記光のスペクトル幅、周波数、前記光増幅器の増幅率の少なくともいずれか一つを調整することで前記光信号光の波長分散補償量を制御することを特徴とする請求項7に記載の可変波長分散補償方法。
【請求項9】
前記光源はN個(Nは2以上の整数)の光源であり、前記N個の光源から出力された光と接続する前記光分波器又は光サーキュレータは1×Nのポートを有することを特徴とする請求項6または7に記載の可変波長分散補償方法。
【請求項10】
前記光源はN個(Nは2以上の整数)の光源であり、前記N個の光源から出力された光と接続する前記光分波器又は光サーキュレータは1×Nのポートを有し、前記光増幅器はN個の光増幅器であることを特徴とする請求項9に記載の可変波長分散補償方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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