説明

可変画像表示体

【課題】複合細線画像とストライプ状のスクリーンとの相対的な摺動による可変画像表示体において、複合細線画像の担持体とスクリーンの担持体との間の隙間の発生を効果的に防止でき、もって画像の鮮明な表示を可能とする可変画像表示体を提供する。
【解決手段】スクリーン担持シート30上に載置する窓付シート40の窓部41の近傍のスクリーン担持シート30側の面に、該窓付シート40の一部を窓部41の輪郭線を越えて窓部41の内側に延設した延設片を該輪郭線を折れ線としてスクリーン担持シート30側の面上に折り返してなる折り返し片46等の、スクリーン担持シート30を複合細線画像担持シート20に向けて弾性的に押圧する押圧手段43を設けてなる可変画像表示体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な操作によって同一の表示部に複数種類の画像を順次切り換えて表示することができる可変画像表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数種類の原画像を細線状に分割して周期的に配列した複合細線画像の上に、細線状の透視部と隠蔽部とを交互に配列したストライプ状のスクリーンを重ね、両者を相対的に摺動させることによって、表示部に表示される画像が瞬時に全く異なる画像に変化するように表示されたり、又は連続的に遷移する動画として表示されたりする可変画像表示体は、特許文献1〜4に示される様に、夙に周知である。係る可変画像表示体は、簡単な構造で何ら特別な材料や電源・制御装置等を必要とせずに画像の変化や動画の表示が可能な表示体として、玩具や絵本、趣味・娯楽用品、宣伝販促物その他の各種の用途に使用されている。
【0003】
係る可変画像表示体における複合細線画像とストライプ状のスクリーンとの相対的な摺動は、簡易なものでは例えば特許文献1〜3に示される様に、複合細線画像の担持体とスクリーンの担持体とを人が手で持って直接の手動操作により行われるものも多い。しかしこの方法では、両者の位置合わせを精密に行ったり、両者を滑らかに摺動させたりすることが難しいために、複数種類の画像の中から所望の画像のみを綺麗に表示させたり、動画を滑らかに表示させたりすることは、慎重な手操作を必要とするのでやや難しい。特に、画像の変化のパターン数をより増したり、動画をより滑らかに表示させたりするために、原画像の枚数を増しつつ、表示される画像の精細度を低下させないために、細線画像をより細線化し、スクリーンの周期をより細かくするほど、この問題はより顕著となる。
【0004】
そこで、このような問題を解決するものとして、係る可変画像表示体における台紙の、複合細線画像とスクリーンとの相対的摺動方向の一方側の端部に、該摺動方向と直行する直線状の折曲線を介して折り曲げる様に揺動可能な操作片部を延設したヒンジ機構を設け、該操作片部における該折曲線との間に僅かな所定の間隔を隔てた位置(該折曲線よりも該操作片部の端部側である場合と、該操作片部の一部を該折曲線を越えて端部側とは反対側に延設した側である場合とがある)に、複合細線画像又はスクリーンの一方の担持体を連接させ、他方の担持体は台紙に対する位置を固定した構造として、操作片部を手で持って折曲線を中心とした揺動操作(ヒンジ操作)を行わせることによって、複合細線画像とスクリーンとを相対的に摺動させるようにした可変画像表示体も、特許文献5〜8に示される様に、既に提案されている。
【0005】
上記の様な構造の可変画像表示体は、ヒンジ操作による操作片部の揺動側端部の変位が、当該操作片部に連接された複合細線画像又はスクリーンの担持体に、大幅に縮小されて伝達されるので、同じ手動の操作でありながら、複合細線画像又はスクリーンの担持体そのものを直接手で持って動かす場合と比較すれば、複合細線画像とスクリーンとの位置合わせを遥かに精密に行うことが可能であるので、観察したい画像のみを綺麗に表示させることが容易に可能となり、また、複合細線画像とスクリーンとを低速度で相対的に摺動させる場合であっても、遥かに滑らかに摺動させることが可能であるので、動画をより滑らかに表示させることが容易に可能となるという利点がある。
【0006】
しかるに、画像の変化のパターン数をより増したり、動画をより滑らかに表示させたりするために、原画像の枚数を増しつつ、表示される画像の精細度を低下させないために、細線画像をより細線化し、スクリーンの周期をより細かくしようとすると、複合細線画像とスクリーンとの位置合わせ精度や相対的な摺動の滑らかさの他にも、表示される画像の画質に大きく影響する問題が発生して来る。それは、複合細線画像の担持体とスクリーンの担持体とが相互に密着せずに、それらの間に隙間が発生すると、たとえ両者が水平方向には正確に位置合わせがされていたとしても、スクリーンの透視部を透して、本来見えるべき細線画像の他に、それに隣接する細線画像の一部が一緒に見えてしまい、そのために、本来観察されるべき画像が鮮明に観察されずに、濁ったりぼやけたりして観察されてしまうという問題である。
【0007】
上記の様に、隣接する細線画像の一部が一緒に見えてしまう現象は、原画像の枚数が少なくスクリーンの周期が広い場合でも同様に発生してはいるのであるが、この場合は、本来見えるべき細線画像と比較して、それに隣接する細線画像の見え方は相対的に少ないので、観察される画像の見え方にはあまり大きな影響はない。しかし、スクリーンの周期が細かい場合、つまりスクリーンの透視部の幅が狭い場合には、本来見えるべき細線画像の見え方が少ないので、それに隣接する細線画像の見え方は相対的に多くなり、観察される画像の見え方への影響も大きくなり、無視できないものとなってしまう。
【0008】
上記した新たな問題は、前述したヒンジ機構を利用した可変画像表示体においては、そうでないものにおいてよりも、より顕著に発生する。それは、ヒンジ機構を利用して複合細線画像又はスクリーンの一方の担持体を台紙に対して摺動させるために、ヒンジ機構における操作片部を台紙に対して水平な位置からある角度を持った位置に傾ける様に揺動させると、これによって該操作片部に連接された前記複合細線画像又はスクリーンの一方の担持体は、台紙に対して水平方向に摺動すると同時に、鉛直方向にも持ち上げられてしまい、そのために他方の担持体との間に隙間を発生してしまうのであり、これはヒンジ機構を利用した可変画像表示体における構造的な問題とも言うことができる。勿論、ヒンジ機構を利用していない通常の可変画像表示体においても、何らかの理由により複合細線画像の担持体とスクリーンの担持体との間に隙間が発生することはあり得るのであり、その場合にも同様の問題が発生する。
【0009】
上記の様な事情により、複合細線画像の担持体とスクリーンの担持体との相対的な摺動により画像の変化や動画を表示する可変画像表示体において、両者間の滑らかな摺動を阻害することなく、両者間の隙間の発生を効果的に防止し、もって画像の鮮明な表示を可能とする技術的手段の開発が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公昭2−4093号公報
【特許文献2】実願昭51−116724号(実開昭53−35748号)のマイクロフィルム
【特許文献3】実公昭55−54558号公報
【特許文献4】実用新案登録第3028589号公報
【特許文献5】米国特許第944385号明細書
【特許文献6】米国特許第1211497号明細書
【特許文献7】米国特許第1259297号明細書
【特許文献8】米国特許第2367967号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、背景技術における上記の様な問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複合細線画像とストライプ状のスクリーンとの相対的な摺動による可変画像表示体において、複合細線画像の担持体とスクリーンの担持体との間の隙間の発生を効果的に防止でき、もって画像の鮮明な表示を可能とする可変画像表示体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の可変画像表示体は、複数種類の原画像のそれぞれを所定の細線画像幅に分割した細線画像から前記原画像の種類の数に等しい所定数毎に選択した細線画像を、各原画像に由来する細線画像が前記細線画像幅の前記所定数倍に等しい所定周期で繰り返し現れるように、一定の順序で相互に隣接させて配列して構成してなる複合細線画像を表面に担持した複合細線画像担持シートと、前記複合細線画像シート上に配置された、前記細線画像幅に等しい幅の透視可能な透視部と、前記細線画像幅の前記所定数倍よりも前記細線画像幅だけ狭い幅の透視不可能な隠蔽部とを、前記細線画像の配列方向と同一方向に相互に隣接させて交互に配列してなる、表示すべき画像の寸法よりも大きい寸法のスクリーンを担持したスクリーン担持シートと、前記スクリーン担持シート上に配置された、表示すべき画像の寸法と等しいか又はこれより大きい寸法の窓部を穿設した窓付シートと、を少なくとも具備してなり、前記複合細線画像担持シートと、前記スクリーン担持シートとを、前記細線画像の配列方向に相対的に摺動させることによって、前記複数枚の原画像のそれぞれに由来する画像が所定の順序で順次表示される可変画像表示体において、前記窓付シートの前記窓部の近傍の非窓部の前記スクリーン担持シート側の面上に、前記スクリーン担持シートを前記複合細線画像担持シートに向けて弾性的に押圧する押圧手段を具備することを特徴とするものである。
【0013】
また本発明の可変画像表示体は、上記の可変画像表示体において、前記押圧手段は、前記窓付シートの前記窓部の近傍の非窓部の一部を該窓部の輪郭線を越えて該窓部の内側に所定幅延設してなる延設片を、該輪郭線を折れ線として該非窓部の前記スクリーン担持シート側の面上に折返してなる折返し片であることを特徴とするものである。
【0014】
また本発明の可変画像表示体は、上記の可変画像表示体において、前記窓付シートの前記窓部は、前記複合細線画像担持シートと前記スクリーン担持シートとの相対的な摺動方向に沿って直線状の相対する2辺を有しており、前記折返し片は、該2辺のほぼ全長に亘って設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
また本発明の可変画像表示体は、上記のいずれかの可変画像表示体において、前記窓付シート上に配置された、表示すべき画像の寸法と等しいか又はこれより大きく、且つ、該窓付シートの窓部の寸法と等しいか又はこれより小さい寸法の窓部を穿設した窓付表装シートをさらに具備してなり、前記スクリーン担持シートと、前記窓付シートとは、該窓付シートの前記窓部を挟んで前記複合細線画像担持シートと前記スクリーン担持シートとの相対的な摺動方向と直交する方向の両側において、相互に固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の可変画像表示体は、複合細線画像担持シート上にスクリーン担持シートが、該スクリーン担持シート上に窓付シートが、それぞれ配置されてなるとともに、該窓付シートの窓部の近傍の非窓部のスクリーン担持シート側の面上に、該スクリーン担持シートを複合細線画像担持シートに向けて弾性的に押圧する押圧手段を具備したことによって、何らかの原因により複合細線画像担持シートとスクリーン担持シートとの間に隙間を発生させようとする力が働いた場合にも、窓付シートのスクリーン担持シート側の面上に設けられた押圧手段が、スクリーン担持シートを複合細線画像担持シートに向けて弾性的に押圧し、両者間の隙間の発生を防止して両者を相互に密着した状態に維持するので、両者が正確に位置合わせされていても両者間に発生する隙間が原因となって発生することのある表示される画像の濁りやぼけが防止され、より鮮明な画像を表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態の可変画像表示体における複合細線画像担持シートを兼ねた台紙の平面図。
【図2】本発明の第1の実施形態の可変画像表示体におけるスクリーン担持シートの平面図。
【図3】本発明の第1の実施形態の可変画像表示体における窓付シートの平面図。
【図4】本発明の第1の実施形態の可変画像表示体の平面図。
【図5】図4に示した本発明の第1の実施形態の可変画像表示体のA−A部における断面図。
【図6】図4に示した本発明の第1の実施形態の可変画像表示体の操作片部を水平に保持した状態でのB−B部における断面図。
【図7】図4に示した本発明の第1の実施形態の可変画像表示体の操作片部を上方に揺動させた状態でのB−B部における断面図。
【図8】図4に示した本発明の第1の実施形態の可変画像表示体から窓付シートの押圧手段(折り返し片)を省略した構造の従来の可変画像表示体の操作片部を上方に揺動させた状態でのB−B部における断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態の可変画像表示体における複合細線画像担持シートを兼ねた台紙の平面図。
【図10】本発明の第2の実施形態の可変画像表示体におけるスクリーン担持シートの平面図。
【図11】本発明の第2の実施形態の可変画像表示体の平面図。
【図12】図11に示した本発明の第2の実施形態の可変画像表示体の操作片部を下方に揺動させた状態でのB−B部における断面図。
【図13】図11に示した本発明の第2の実施形態の可変画像表示体から窓付シートの押圧手段(折り返し片)を省略した構造の従来の可変画像表示体の操作片部を下方に揺動させた状態でのB−B部における断面図。
【図14】本発明の第3の実施形態の可変画像表示体における台紙の平面図。
【図15】本発明の第3の実施形態の可変画像表示体における複合細線画像担持シートの平面図。
【図16】本発明の第3の実施形態の可変画像表示体におけるスクリーン担持シート(スクリーン)の平面図。
【図17】本発明の第3の実施形態の可変画像表示体の平面図。
【図18】図17に示した本発明の第3の実施形態の可変画像表示体のA−A部における断面図。
【図19】図17に示した本発明の第3の実施形態の可変画像表示体の操作片部を上方に揺動させた状態でのB−B部における断面図。
【図20】図17に示した本発明の第3の実施形態の可変画像表示体から窓付シートの押圧手段(折り返し片)を省略した構造の従来の可変画像表示体の操作片部を上方に揺動させた状態でのB−B部における断面図。
【図21】本発明の第4の実施形態の可変画像表示体における窓付表装シートの平面図。
【図22】本発明の第4の実施形態の可変画像表示体の平面図。
【図23】図22に示した本発明の第4の実施形態の可変画像表示体のA−A部における断面図。
【図24】本発明の第5の実施形態の可変画像表示体における台紙、複合細線画像担持シート、窓付シート及び窓付表装シートが相互に連接されたブランクシートの展開図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の可変画像表示体の具体的な実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態の可変画像表示体は、台紙10を兼ねた複合細線画像担持シート20(図1)と、スクリーン担持シート30(図2)と、窓付シート40(図3)とから構成されるものである。
【0020】
複合細線画像担持シート20の表面には、文字「A」、文字「B」及び文字「C」をそれぞれ表した3種類の原画像に基づいて、各原画像を所定の細線画像幅に分割した細線画像から、文字「A」を表した原画像に基づく細線画像については左端側から1番目、4番目、7番目、‥‥というように、文字「B」を表した原画像に基づく細線画像については左端側から2番目、5番目、8番目、‥‥というように、文字「C」を表した原画像に基づく細線画像については左端側から3番目、6番目、9番目、‥‥というように、それぞれ2本置きに選択した細線画像を、左端側から順に、「A」の1番目、「B」の2番目、「C」の3番目、「A」の4番目、「B」の5番目、「C」の6番目、‥‥というように、3種類の原画像のそれぞれに由来する細線画像がそれぞれ2本置きに現れるような順番で、相互に隣接させて配列して構成した複合細線画像21が設けられている。
【0021】
また、この複合細線画像担持シート20でもある台紙10の右側の端部には、後述するヒンジ機構50を構成するために、天地方向に直線状に形成された折曲線11を介して、該折曲線11を軸として紙面に垂直方向に揺動可能な操作片部12が延設されている。台紙10乃至複合細線画像担持シート20としては、従来周知の同種の可変画像表示体の場合と同様に、例えばカード紙又は板紙等の厚手の紙(坪量150〜400g/m程度)や、合成紙、プラスチックシート(厚み100〜300μm程度)等を使用することができる。複合細線画像21は、例えば通常の印刷法、電子写真法、インクジェット法等、従来周知の方法で形成することができる。
【0022】
スクリーン担持シート30は、前述した複合細線画像21の分割単位である細線画像幅に等しい幅を有する透視可能な透視部32と、細線画像幅の原画像数倍すなわち3倍よりも細線画像幅だけ狭い幅、つまり細線画像幅の2倍に等しい幅を有する透視不可能な隠蔽部33とが、前述した複合細線画像21を構成する細線画像の配列方向と同一方向すなわち左右方向に、相互に隣接して交互に配列されたストライプ状のスクリーン31を有している。スクリーン31は、表示すべき画像の寸法よりも大きい寸法を有していること、つまり、スクリーン31の輪郭の形状の内部に、表示すべき画像の輪郭の形状が完全に含まれ得るような寸法を有していることが必要である。この条件を満たす限り、スクリーン31の寸法には特に制限はないが、天部及び地部で接合される台紙10と窓付シート40との間に挿入されて左右方向に摺動されるものであるから、その天地方向の幅は、台紙10及び窓付シート40の天地方向の幅よりも狭く形成される必要がある。
【0023】
スクリーン31は、従来周知の同種の可変画像表示体の場合と同様に、透明なプラスチックフィルムの表面に不透明な印刷インキにより隠蔽部を印刷したもの等を使用することができる。スクリーン担持シート30は、その全体がスクリーン31によって構成されていてもよいし、スクリーン31以外のシート部分(透明であるか不透明であるかは問わない)を有していてもよい。図示した例では、スクリーン担持シート30は、スクリーン31の右端部の接合部35において、例えばカード紙等、前述した台紙10と同様の不透明な材質からなる延設部34が接続されている。この延設部34には、後述するヒンジ機構50を構成するための切込線36、折曲線37、38、操作片部39が設けられている。なお、延設部34と操作片部39とを折り曲げ可能に連接する折曲線38は、このスクリーン担持シート30を台紙10上に載置した際に、台紙10の右端部の操作片部12との連接部である折曲線11よりも複合細線画像21側とは反対側(右側)の位置に来るような位置に、該操作片部12の切込線36よりも天地側の部分(この部分は省略することも可能である)の折曲線37は、台紙10の折曲線11と同一の位置に来るような位置に、それぞれ形成されている。
【0024】
窓付シート40は、例えばカード紙等、前述した台紙10と同様の材質からなるものであり、その外形寸法には特に制限はないが、後述するヒンジ機構50の作用を阻害することのないように、台紙10上に固定したときに台紙10やスクリーン担持シート30の折曲部11、37、38を覆うことのない程度の寸法とするのがよい。この窓付シート40には、複合細線画像担持シート20に担持された複合細線画像21とスクリーン担持シート30に担持されたスクリーン31との協働により表示される画像を観察できるように、表示すべき画像の寸法と等しいか又はこれより大きい寸法の、つまり、その輪郭の形状の内部に表示すべき画像の輪郭の形状が完全に含まれ得るような寸法の、窓部41が穿設されている。なお、上記「表示すべき画像」とは、複合細線画像21とスクリーン31との協働により表示可能な画像の内、観察者に観察させることを制作者が意図した部分の画像を言い、実質的に複合細線画像21の全体である場合もあれば、その一部分である場合もある。
【0025】
そして、本発明の可変画像表示体における窓付シート40にはさらに、当該窓部41の近傍の非窓部42(窓部41以外の部分、つまりシートが存在する部分)の、後にスクリーン担持シート30と対向することとなる側の面上に、該スクリーン担持シート30を弾性的に押圧する押圧手段43が設けられている。この押圧手段43は、図示した例では、窓付シート40の窓部41の近傍の非窓部42の一部を、窓部41の輪郭線44を越えて窓部41の内側に一定の幅で延設した延設片45によって構成されており、この延設片45を前記輪郭線44を折れ線として折り返すことによって、窓付シート40の構成材料の当該折り返しに対する弾性的な反発力を利用して、当該折り返した部分(折り返し片46。図4、図5参照)を、前述したスクリーン担持シート30を弾性的に押圧する押圧手段43とするものである。
【0026】
なお、本発明においては、この押圧手段43としては、上記した折り返し片46に限定されるものではなく、その他にも例えば弦巻バネ、板バネ、ゴム、スポンジ、空気袋(気泡緩衝材)等を適用することも可能である。しかし、押圧手段43を上記した折り返し片46によって形成すると、特別な材料や特別な工程を付加する必要なく、簡便且つ安価に製造可能である利点がある。この折り返し片46によって本発明の目的のために十分な押圧効果を得るためには、窓付シート40の材質としては折り曲げ加工が可能であって且つある程度腰のあるシート材料を使用することが望ましく、例えば坪量150〜400g/m程度のカード紙又は板紙等の紙類や、厚み100〜300μm程度の合成紙又はプラスチックシート等を使用することが望ましい。
【0027】
上述した台紙10(複合細線画像担持シート20)の上に、スクリーン担持シート30と、窓付シート40とをこの順で配置し、台紙10と窓付シート40とが互いに分離しないように、且つその間でスクリーン担持シート30のスクリーン31部分を左右方向に摺動することができるように、台紙10と窓付シート40とを天地部分で接合(図示せず)するとともに、台紙10の右側の端部に折曲線11を介して延設された操作片部12と、スクリーン担持シート30における延設部34の右側に折曲線38を介して連接された操作片部39とを接合することにより、本発明の第1の実施形態の可変画像表示体が完成する(図4)。
【0028】
この可変画像表示体には、前述した台紙10及びスクリーン担持シート30に設けられた折曲線11、37、38、操作片部12、39、延設部34によってヒンジ機構50が形成されている。このヒンジ機構50における操作片部52を、台紙10に対して水平な状態(図6)から、折曲線51を軸として該操作片部52の右端部を上方に持ち上げる様に揺動させると(図7)、そのヒンジ作用により台紙10上のスクリーン担持シート30は僅かに左方向に移動し、これによって、スクリーン担持シート30に担持されたスクリーン31は、台紙10(複合細線画像担持シート20)上に形成された複合細線画像21に対して、僅かに左方向に摺動することとなる。
【0029】
この摺動の距離が、複合細線画像21を構成する個々の細線画像の幅(細線画像幅)に等しくなると、当初の状態で表示されていた文字「A」の画像に代わって、文字「A」の画像を構成する各細線画像の左側に隣接する各細線画像によって構成される文字「C」の画像が表示されるようになる。更に細線画像幅に相当する距離だけ摺動させると、文字「C」の画像に変わって文字「B」の画像が表示され、更に細線画像幅に相当する距離だけ摺動させると、再び文字「A」の画像が表示され、以後この繰り返しとなる。一方、操作片部52の右端部を上方に持ち上げた状態から元に戻す方向に揺動させると、今度は逆に文字「A」の画像から文字「B」の画像へ、文字「B」の画像から文字「C」の画像へ、文字「C」の画像から文字「A」の画像へ、という順で表示される画像が順次切り替わる。
【0030】
ところで、操作片部52の右端部を上方へ持ち上げるように揺動させたとき、押圧手段43(折り返し片46)が設けられていない従来の可変画像表示体の場合には、スクリーン担持シート30は左方向への移動と同時に、そのヒンジ機構50側の部分が上方へ持ち上げられることにより、スクリーン担持シート30のスクリーン31の部分と複合細線画像担持シート20(台紙10)の複合細線画像21が形成された部分との間に隙間60が発生してしまう(図8)。これに対して、本発明の可変画像表示体には、窓付シート40の窓部41の近傍の非窓部42のスクリーン担持シート30側の面に押圧手段43(折り返し片46)が設けられており、この押圧手段43(折り返し片46)がスクリーン担持シート30を複合細線画像担持シート20に向けて弾性的に押圧する(図5)ので、可変画像表示部である窓部41においては、複合細線画像担持シート20とスクリーン担持シート30との間に隙間60が発生することがなく、両者が密着した良好な状態を維持し(図7)、以て鮮明な画像を表示することができる。
【0031】
可変画像表示部である窓部41における複合細線画像担持シート20とスクリーン担持シート30との間の隙間60の発生を最も効果的に防止するためには、窓付シート40の窓部41の全周に亘って押圧手段43を設けることが最も望ましい。しかしながら、複合細線画像担持シート20とスクリーン担持シート30との間の隙間60は、両者の相対的な摺動に伴う摺動方向の波打ちや、前述したヒンジ機構50の作用によるヒンジ機構50側の持ち上がり等に起因して、摺動方向に不均一に発生する場合は多いが、摺動方向と直交する方向には不均一に発生する場合はあまりない。従って、押圧手段46は少なくとも可変画像表示部の摺動方向のほぼ全長に亘るように天地の両側に設けておけば、本発明の目的はほぼ達成することができる。つまり、押圧手段43として前述した折り返し片46を利用する場合、窓付シート40の窓部41が例えば矩形状又はそれに近い形状など、複合細線画像担持シート20とスクリーン担持シート30との相対的な摺動方向に沿って直線状の相対する2辺を有している場合には、その2辺のほぼ全長に亘って折り返し片46を設けておけば、本発明の目的はほぼ達成することができる。
【0032】
この本発明の第1の実施形態の可変画像表示体は、図示したもののほか、その態様を種々変更して実施することができる。例えば、図示したものでは操作片部52は台紙10(折曲線51より左側の部分)より幅の狭い寸法に形成されているが、この操作片部52と台紙10とを略同大同形状として、開閉操作により画像が変化して表示される2つ折りカードとすることができる。また、この2つ折りカード状の構造が見開き頁となるように冊子体に綴じ込むことによって、頁の開閉操作により画像が変化して表示される書籍又は雑誌等の冊子体とすることができる。更に、この2つ折りカード状の構造の可変画像表示体を複数用意しておき、隣接する可変画像表示体の台紙10の裏面と操作片部52の裏面とを接合しつつ順次綴じ合わせることによって、各見開き頁に頁の開閉操作により画像が変化して表示される可変画像表示体が設けられた絵本とすることもできる。
【0033】
一方、操作片部52は幅の狭い寸法のままで、台紙10の操作片部52側とは反対側の端部(左端部)を綴じ部側として冊子体に綴じ込むことによって、頁の小口側の端部の揺動操作により画像が変化して表示される冊子体とすることもできる。この場合は、図示したもののように向かって右側に操作片部52を有する可変画像表示体を見開き頁の右側の頁に、図示したものと左右対称の構造として左側に操作片部52を配置した可変画像表示体を見開き頁の左側の頁に、それぞれ配置するように冊子体に綴じ込むことによって、見開き頁の左右両側の頁に可変画像表示体を有する冊子体とすることもできる。またこの場合、可変画像表示体の背面に左右対象構造の別の可変画像表示体を背中合わせに貼り合わせても、それぞれを独立した可変画像表示体として機能させることが可能であるから、頁の表裏両面に可変画像表示体を有する冊子体とすることもできる。
【0034】
また、この本発明の第1の実施形態の可変画像表示体において、複合細線画像担持シート20を台紙10で兼ねさせる、つまり複合細線画像21を台紙10上に直接形成する代わりに、台紙10とは別体の複合細線画像担持シート20上に複合細線画像21を形成しておき、これを台紙10とスクリーン担持シート30との間に挿入して台紙10上に固定した構造とすることもできる。この様にすると、複数種類の複合細線画像担持シート20を用意しておき、これを必要に応じて差し替えることによって、1つの可変画像表示体を用いてより多くの種類の画像を表示可能としたり、表示可能な画像変化パターン又は動画の種類を増やしたりすることが可能となる。
【0035】
また、図示した複合細線画像21及びスクリーン31は飽くまでも模式的な例であって、本発明はこれに限定されるものではない。複合細線画像21を構成する原画像の種類は特に限定されず、文字や記号等のほか例えば人物や動植物、コミック又はアニメ等のキャラクター、乗り物、ロボットその他の機械類、風景、抽象絵画等、或いはそれらの複数種類の組み合わせ等、任意の対象物を表した画像を使用することができ、また、対象物が経時的に順次遷移する状況を表した複数の原画像を使用することによって動画を表現することもできる。使用する原画像の数にも特に制限はなく、技術的には10枚前後までは十分に可能であるが、あまり多すぎると、表示される画像の面積に占めるスクリーン31の隠蔽部33によって隠蔽される部分の面積の比率が高くなって、表示される画像が不鮮明になり観察しづらくなるので、原画像の数は2〜6枚程度の範囲内とすることが望ましい。また、細線画像幅が狭すぎても表示される画像が不鮮明になる一方で、細線画像幅を拡げすぎて繰り返し周期を長くしすぎても表示される画像が粗すぎて画像として認識しにくくなるので、本発明の可変画像表示体を観察者が手で持って操作しながら観察する場合を想定すると、細線画像幅が概ね0.2〜1mm程度、より好ましくは0.3〜0.6mm程度、繰り返し周期が概ね0.5〜5mm程度、より好ましくは1〜3mm程度の範囲内となる様に設計することが望ましい。
【0036】
また、スクリーン31における隠蔽部33は、このスクリーン31を透して複合細線画像21を観察したときに、スクリーン31の透視部32を透して観察される細線画像と隠蔽部33を透して観察される細線画像とが十分なコントラストを持って観察され、これによって実質的に前者の細線画像のみによって構成される画像が観察者に認識される程度の隠蔽性を有していればよく、この限りにおいて必ずしも完全な光不透過性である必要はない。つまり、本発明において隠蔽部33が「透視不可能」であるとは、光学的に完全な透視不可能を意味するものでは必ずしもなく、透視部32との比較において実質的に透視不可能と言えるだけの透視困難性を備えていることを意味するものであり、一般的には、隠蔽部33の光透過率が透視部32の光透過率の概ね5分の1以下、より好ましくは10分の1以下程度であればよい。隠蔽部33の色彩にも特に制限はなく、一般的には例えば黒色、白色又は灰色等の無彩色であることが望ましいが、画像の種類によっては例えば赤色、青色、緑色等の有彩色も使用できる場合もある。また、隠蔽部33を有彩色透明、すなわち特定の波長域の光のみを隠蔽し他の波長域の光は透過する色彩とすることによって、複合細線画像21を構成する色彩中の特定の色彩成分についてのみ可変画像表示効果を有し、他の色彩成分については常時表示するような可変画像表示体とすることもできる。
【0037】
更にまた、図示した例では、複合細線画像21を構成する細線画像や、スクリーン31を構成する透視部32、隠蔽部33等の細線の形状は、複合細線画像担持シート20とスクリーン担持シート30との相対的な摺動方向に直交する方向に延在する直線状とされているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば当該摺動方向に平行でも垂直でもない一定の角度で交差する斜線状や、円弧状、「く」の字状、ジグザグ状、正弦曲線状その他の波線状等、要するに一定方向への繰り返し配置により相互に重複することなく平面を隙間なく埋め尽くすことが可能な形状であれば如何なる形状であってもよい。但し、複合細線画像21とスクリーン31との協働により表示される画像の画質の均一性や、複合細線画像21及びスクリーン31の製造の容易性、可変画像表示体の組立時における複合細線画像担持シート20とスクリーン担持シート30との位置合わせの容易性等を考慮すると、係る細線の形状は直線状(斜線状を含む)とすることが最も望ましい。
【0038】
<第2の実施形態>
上記した本発明の第1の実施形態の可変画像表示体は、ヒンジ機構50における操作片部52を、その台紙10側とは反対側の端部を台紙10に対して水平な位置から上方に持ち上げる様な方向に揺動させるものであるが、このヒンジ機構50における、台紙10と操作片部52との間の折曲線51(11、37)と、スクリーン担持シート30の延設部34と操作片部39との間の折曲線38との摺動方向(左右方向)の位置関係を逆転させることによって、操作片部52を逆に下方に押し下げる様な方向に揺動させる構造とすることもできる。つまり、図9に示す様に、図1に示したものよりも折曲線11を右方に移動した台紙10(複合細線画像担持シート20)と、図10に示す様に、図2に示したものよりも折曲線37を右方に、折曲線38を左方にそれぞれ移動したスクリーン担持シート30と、上記した本発明の第1の実施形態におけるものと同様の、すなわち例えば図3に示したものと同様の窓付シート40とを使用して、図11に示す様な本発明の第2の実施形態の可変画像表示体とすることができる。
【0039】
このような構造のヒンジ機構50を有する可変画像表示体にあっては、ヒンジ機構50の操作片部52を下方へ押し下げる様に揺動させると、スクリーン担持シート30に担持されたスクリーン31は、台紙10(複合細線画像担持シート20)に対して僅かに右方向に摺動することとなるから、窓部41に表示される画像は、当初の文字「A」の画像から文字「B」の画像へ、更に文字「C」の画像へ、そして再び文字「A」の画像へ、という順で繰り返し切り替わることとなる。そして、操作片部52を下方へ押し下げた状態から元の水平な位置に戻す様な方向に揺動させると、表示される画像は上記と逆の順序で順次切り替わることとなる。
【0040】
このような構造のヒンジ機構50を有する可変画像表示体にあっても、押圧手段43(折り返し片46)が設けられていない従来の可変画像表示体の場合には、操作片部52の右端部を下方へ押し下げるように揺動させたときに、スクリーン担持シート30は右方向への摺動と同時に、そのヒンジ機構50側の部分が上方へ持ち上げられることにより、スクリーン担持シート30のスクリーン31の部分と複合細線画像担持シート20(台紙10)の複合細線画像21が形成された部分との間に隙間60が発生してしまう(図13)。これに対して、本発明の可変画像表示体には、窓付シート40の窓部41の近傍の非窓部42のスクリーン担持シート30側の面に押圧手段43(折り返し片46)が設けられており、この押圧手段43(折り返し片46)がスクリーン担持シート30を複合細線画像担持シート20に向けて弾性的に押圧するので、可変画像表示部である窓部41においては、複合細線画像担持シート20とスクリーン担持シート30との間に隙間60が発生することがなく、両者が密着した良好な状態を維持し(図12)、以て鮮明な画像を表示することができる。
【0041】
この本発明の第2の実施形態の可変画像表示体も、図示したもののほか、その態様を種々変更して実施することができる。但し、前述した第1の実施形態の可変画像表示体の場合と異なり、台紙10と操作片部52とを可変画像表示部を内側にして折り重ねることは不可能であり、また、反対側に折り重ねて閉じた場合にも、台紙10の折曲線51側の端部からスクリーン担持シート30の延設部34の一部が突出することとなるので、開閉操作により画像が変化して表示される2つ折りカードや、頁の開閉操作により画像が変化して表示される冊子体としての使用には不向きである。また、左右対称構造の可変画像表示体を背中合わせに貼り合わせると、表裏の可変画像表示体の操作片部52が邪魔し合ってその揺動操作を行うことができないので、この様な形で表裏両面に可変画像表示体を有する構造体としての使用にも不向きである。しかし、この第2の実施形態の可変画像表示体を、その台紙10の操作片部52とは反対側の端部を綴じ部側として冊子体に綴じ込むことは可能であるし、また、左右対称でない同一構造の可変画像表示体を、それぞれの操作片部52が他方の台紙10と重ならない位置関係で背中合わせに貼り合わせて、表裏両面に可変画像表示体を有する1枚の構造体として使用することも可能である。
【0042】
<第3の実施形態>
本発明の可変画像表示体において、複合細線画像担持シート20とスクリーン担持シート30とを相対的に摺動させるためには、上記した第1及び第2の実施形態におけるように、複合細線画像担持シート20の位置を固定し、スクリーン担持シート30を移動させる代わりに、これとは逆に、スクリーン担持シート30の位置を固定し、複合細線画像担持シート20を移動させる構造とすることも可能である。そのような構造の可変画像表示体の一例である本発明の第3の実施形態の可変画像表示体は、台紙10(図14)と、これとは別体の複合細線画像担持シート20(図15)と、スクリーン担持シート(図16)と、窓付シート40(図3)とから構成されるものである。
【0043】
この第3の実施形態の可変画像表示体における台紙10(図14)は、前述した第1の実施形態の可変画像表示体における台紙10(図1)と同一の構造を有しているが、その表面に複合細線画像21は形成されていない。その代わりに、この台紙10とは別体の、前述した第1の実施形態の可変画像表示体におけるスクリーン担持シート30(図2)と類似の構造を有する複合細線画像担持シート20(図15)の表面に、複合細線画像21が形成されている。一方、スクリーン担持シート30(図16)には、後にヒンジ構造50を形成するための延設部34、切込線36、折曲線37、38、操作片部39は設けられておらず、その全体が窓付シート40の外形寸法の範囲内に収まる様な外形寸法に形成されている。このスクリーン担持シート30は、その全体がスクリーン31によって構成されているが、この実施形態においてはスクリーン担持シート30は窓付シート40に対して摺動することはないので、窓枠41から外れる部分はスクリーン31以外のシート材料によって構成されていても差し支えない。窓付シート40(図3)は、前述した第1の実施形態の可変画像表示体におけるそれと同一のものである。
【0044】
そして、上述した台紙10の上に、複合細線画像担持シート20と、スクリーン担持シート30と、窓付シート40とをこの順で配置して、以降は上述した第1の実施形態の可変画像表示体の場合と同様の要領にて、但し、台紙10に連接した操作片部12には、スクリーン担持シート30に連接した操作片部39の代わりに、複合細線画像担持シート20に折曲線24を介して連接した操作片部25を接合することにより、本発明の第3の実施形態の可変画像表示体が完成する(図17)。
【0045】
この本発明の第3の実施形態の可変画像表示体は、前述した本発明の第1の実施形態の可変画像表示体の場合と同様に、ヒンジ機構50の操作片部52を上方へ持ち上げる様な方向に揺動させることによって、窓部41に表示される画像を変化させることができる。但し、この場合は、当該揺動操作によって左方向に摺動するのは、スクリーン担持シート30ではなくて複合細線画像担持シート20であるので、表示される画像が変化する順序は、前述した本発明の第1の実施形態の可変画像表示体の場合とは逆になる。すなわち、操作片部52を上方へ持ち上げる様な方向に揺動させると、窓部41に表示される画像は、当初の文字「A」の画像から文字「B」の画像へ、更に文字「C」の画像へ、そして再び文字「A」の画像へ、という順序で順次切り替わり、操作片部52を上方へ持ち上げた状態から元の水平な位置に戻す様な方向に揺動させると、表示される画像は上記と逆の順序で順次切り替わることとなる。
【0046】
このような構造のヒンジ機構50を有する可変画像表示体にあっても、押圧手段43(折り返し片46)が設けられていない従来の可変画像表示体の場合には、操作片部52の右端部を上方へ持ち上げる様に揺動させたときに、複合細線画像担持シート20は左方向への摺動と同時に、そのヒンジ機構50側の部分が上方へ持ち上げられ、これに伴って全体的に僅かながら下方に凸に湾曲する様に変形するのに対して、スクリーン担持シート30は、全体的に湾曲させる様な力を受けることなくほぼ平面的な状態を保持したまま、その操作片部52側の端部が複合細線画像担持シート20によって上方へ持ち上げられるため、スクリーン担持シート30が全体として複合細線画像担持シート20の表面上から浮き上がるか、又はスクリーン担持シート30と複合画像担持シート20との湾曲状態に差が発生するために、両者間に隙間60が発生してしまう(図20)。
【0047】
これに対して、本発明の第3の実施形態の可変画像表示体には、窓付シート40の窓部41の近傍の非窓部42のスクリーン担持シート30側の面に、スクリーン担持シート30を複合細線画像担持シート20に向けて弾性的に押圧する押圧手段43(折り返し片46)が設けられており、この押圧手段43がスクリーン担持シート30及び複合細線画像担持シート20を共に台紙10に向けて弾性的に押圧する(図18)ので、可変画像表示部である窓部41においては、複合細線画像担持シート20とスクリーン担持シート30との間に隙間60が発生することがなく、両者が密着した良好な状態を維持し(図19)、以て鮮明な画像を表示することができる。
【0048】
この本発明の第3の実施形態の可変画像表示体も、複合細線画像担持シート20に担持した複合細線画像21の差し替えは技術的には不可能ではないにしてもあまり実用的でないことを除けば、前述した第1の実施形態の可変画像表示体の場合と同様に、その態様を種々変更して実施することができる。また、この本発明の第3の実施形態の可変画像表示体におけるヒンジ機構50を、前述した第2の実施形態の可変画像表示体におけるそれに類似した機構で置き換えて実施することも可能であり、この場合の実施の態様を変更可能な範囲は、前述した第2の実施形態の可変画像表示体の場合とほぼ同様である。
【0049】
なお、この本発明の第3の実施形態の可変画像表示体においては、ヒンジ機構50の操作片部52の揺動操作によって、複合細線画像担持シート20は窓付シート40に対しても相対的に摺動することになるので、操作片部52の揺動操作によって複合細線画像担持シート20が摺動可能な距離がスクリーン31の周期を越える場合には、複合細線画像21とスクリーン31との協働により現れる画像は、操作片部52の揺動位置によって異なる2箇所以上の位置に現れ得ることになる。更には、複合細線画像担持シート20が摺動可能な距離がスクリーン31の周期の数倍以上に達する様に構成すると、同一の原画像に基づいて複合細線画像21とスクリーン31との協働により現れる画像の内の一部が、操作片部52の揺動位置により、ある時は窓付シート40の窓部41の外にあって表示されず、ある時は窓付シート40の内部にあって表示される、というように、同一の原画像に基づく画像の窓部41内に表示される部分を複合細線画像担持シート20の摺動方向に沿って順次変化させることもできる。この場合の窓部41の寸法は、複合細線画像21とスクリーン31との協働により表示可能な画像の内、操作片部52がある一つの揺動位置にある時に、つまり複合細線画像担持シート20がある一つの摺動位置にある時に、観察者に観察させることを制作者が意図した部分の画像の形状を少なくとも含み得るような寸法とすればよい。
【0050】
<第4の実施形態>
本発明の可変画像表示体においては、窓付シート40をそのまま可変画像表示部を縁取る表装用の部材として使用することも可能であり、この場合、窓付シート40の非窓部42の表面には、可変画像表示部である窓部41に表示される画像と関連した又は関連のない任意の絵柄を形成することもできる。しかし、本発明の可変画像表示体はそのような構造に限定されるものではなく、この窓付シート40の上に、これとは別体の表装用の部材として、窓付シート40と同様に可変画像表示部を観察可能とするための窓部71が穿設されたシート体からなる窓付表装シート70を設けることもできる。この場合は、表装用の絵柄が必要であれば窓付表装シート70に設ければよく、窓付シート40には絵柄を設ける必要はない。
【0051】
図22に示したものは、図17に示した本発明の第3の実施形態の可変画像表示体の窓付シート40上に、図21に示した窓付表装シート70を設けてなる、本発明の第4の実施形態の可変画像表示体の一例である。勿論、本発明の第4の実施形態の可変画像表示体はこれに限定されるものではなく、図4に示した本発明の第1の実施形態の可変画像表示体や、図11に示した本発明の第2の実施形態の可変画像表示体、又はそれらを更に適宜変形した実施形態の可変画像表示体などを基礎として、その窓付シート40上に適宜の窓付表装シート70を設けることによって構成することができる。
【0052】
窓付表装シート70は、窓付シート40と同様の材質から形成することができ、その窓部71の寸法は、窓付シート40の窓部41の寸法の場合と同様に、複合細線画像担持シート20に担持された複合細線画像21とスクリーン担持シート30に担持されたスクリーン31との協働により表示される画像を観察できるように、少なくとも表示すべき画像の寸法と等しいか又はこれより大きい寸法とする必要があり、また一方で、該窓部71の輪郭付近にその下の窓付シート40の非窓部42の一部が見えて見苦しくなることのないように、窓付シート40の窓部41の寸法と等しいか又はこれより小さい寸法、つまり、窓付表装シート70の窓部71の輪郭の形状が窓付シート40の窓部41の輪郭の形状の内部に完全に含まれ得るような寸法とすることが望ましい。この窓付表装シート70には、前述した窓付シート40の場合のような折り返し片46等の押圧手段43を設ける必要はない。
【0053】
このように窓付シート40上に窓付表装シート70を設ける技術的理由としては、種々の場合が考えられる。例えば、本発明の可変画像表示体における押圧手段43を窓付シート40の折り返し片46によって構成する場合、その押圧力の基になる弾性的反発力は、窓付シート40を構成する材料の厚みや弾性率(剛性率)等によって決定され、一般にその厚みが厚いほど押圧力は強くなる。一方、本発明の可変画像表示体の表装用の部材には、使用中の摩擦等に対する十分な耐久性が要求されるので、或る程度の厚みを有するシートを使用することが望ましいのであるが、そのために十分な厚みを有するシートを採用すると、押圧手段43としての押圧力、つまり折り返し片46の弾性的反発力が強くなりすぎて、複合細線画像担持シート20とスクリーン担持シート30との相対的な摺動を阻害する場合がある。この様な場合には、表装用の部材としての機能を窓付シート40とは別体の窓付表装シート70に担わせ、これには十分な厚みを有するシートを採用する一方で、窓付シート40には、押圧手段43として適度な押圧力を発生する適度な厚みを有するシートを採用することによって、表装用の部材の強度や耐久性と、押圧手段43の適度な押圧力とを、両立させることが容易に可能となる利点がある。
【0054】
また、図22に示した本発明の第4の実施形態の可変画像表示体のように、スクリーン担持シート30を固定し、複合細線画像担持シート20を摺動させる構造を採用した場合、摺動する複合細線画像担持シート20につられてスクリーン担持シート30が移動してしまうことのないように、スクリーン担持シート30は台紙10又は窓付シート40に固定することになり、可変画像表示体を簡便に組立可能とするとともに台紙10上での複合細線画像担持シート20の摺動の妨げとならないためには、後者の構造を採用することが望ましいのであるが、この場合、窓付シート40の窓部41の近傍では、窓付シート40に設けられた押圧手段43(折り返し片46)が、スクリーン担持シート30を窓付シート40から遠ざける様に作用するために、窓付シート40の表面が平坦にならずに、ある方向に傾斜したり(特に、スクリーン担持シート30を窓付シート40の窓部41の片側でのみ窓付シート40に固定した場合に発生し易い)、或いは太鼓状に膨らむ様に湾曲したり(特に、スクリーン担持シート30を窓付シート40の窓部41の両側で窓付シート40に固定した場合に発生し易い。図23参照)する場合がある。この様な場合にあっても、窓付シート40の上に、それとは別体の窓付表装シート70を設けることによって、窓付シート40の傾斜または湾曲した状態が平坦な窓付表装シート70によって隠蔽され、良好な外観を維持することが可能となる利点がある。
【0055】
この本発明の第4の実施形態の可変画像表示体も、それから窓付表装シート70を省略した構造の前述した各実施形態の可変画像表示体の場合と同様に、その態様を種々変更して実施することができる。
【0056】
<第5の実施形態>
以上に説明した本発明の各実施形態の可変画像表示体においてはいずれも、台紙10、複合細線画像担持シート20、スクリーン担持シート30、窓付シート40及び窓付表装シート50は、本発明の第1及び第2の実施形態において台紙10が複合細線画像担持シートを兼ねていたことを除けば、それぞれ別体のシートによって構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらのシートの中から選ばれる任意の数のシートが互いに連接した1枚のブランクシートから構成されていてもよい。
【0057】
図24に示したのはそのブランクシートの展開図の一例であって、台紙10、複合細線画像担持シート20、窓付シート40(窓部41の天地両辺に沿って設けられた折り返し片46は、既に紙面に向かって上面側に折り返されている)及び窓付表装シート70が、互いに連接した1枚のブランクシートから構成されている。そして、その窓付シート40の上面側にスクリーン31(図24上では一部が切り欠かれて表示されている)を載置し、窓付シート40の窓部41の天地側の両端部においてスクリーン31を窓付シート40に貼着、嵌合その他の適宜の方法によって固定した後、このスクリーン31が固定された窓付シート40を、窓付表装シート70との間の折曲線73によって窓付表装シート70の裏面側に折り返し、一方、複合細線画像担持シート20を台紙10との間の折曲線13によって台紙10の裏面側に折り返すと共に、台紙10に連接した操作片部12と複合細線画像担持シート20に連接した操作片部25とをそれらの裏面同士で接合し、しかる後に、台紙10及び複合細線画像展示シート20を、台紙10と窓付表装シート70との間の折曲線14によって窓付表装シート70の裏面側に折り返し、台紙10及び窓付表装シート70の折曲線14とは反対側の開放側の端部同士を接着、嵌合その他の適宜の方法によって固定すると、本発明の第5の実施形態の可変画像表示体が完成する。
【0058】
この展開図の構造によると、窓付表装シート70の表面への表装用絵柄の印刷と、複合細線画像担持シート20の表面への複合細線画像21の印刷とを、同一のシート材料の同一面に行うことができ、また、可変画像表示体を構成する各シート(スクリーン担持シート30を除く)が1枚のシート材料の打ち抜き・折り曲げ加工によって形成されるので、製造が簡便であると共に、各シートの組み立て時に位置合わせに特別な工夫を要することなく、本発明の可変画像表示体を容易に製造することができるという利点がある。
【0059】
この本発明の第5の実施形態の可変画像表示体も、前述した各実施形態の可変画像表示体の場合と同様に、その態様を種々変更して実施することができる。例えば、図24に示した展開図における窓付表装シート70の左側もしくは下側、又は台紙10の左側もしくは上側に、該窓付表装シート70ないし台紙10と同大、もしくは当該窓付表装シート70ないし台紙10に操作片部12を合わせた形状と同大の表紙片を折り曲げ可能に連接することによって、表紙の開閉操作により可変画像表示部を表紙で覆ったり露出させたりすることが可能な2つ折りカード状の可変画像表示体を得ることができる。また、該表紙片の代わりに、この可変画像表示体の全体と左右対称構造のもう一つの可変画像表示体における窓付表装シートないし台紙の右端辺を、この可変画像表示体における窓付表装シート70ないし台紙10の左端辺に折り曲げ可能に連接することによって、開いた状態での左右両側に可変画像表示体を有する開閉可能な2つ折りカード状の可変画像表示体を得ることもできる。さらには、係る可変画像表示体を冊子体の一部の頁として綴じ込んだり、前述した2つ折りカード状の可変画像表示体を複数用意しておき、隣接する可変画像表示体の裏面同士を接合しつつ順次綴じ合わせることによって、各見開き頁に可変画像表示体が設けられた絵本とすることもできる。
【符号の説明】
【0060】
10 台紙
11 折曲線
12 操作片部
13 折曲線
14 折曲線
20 複合細線画像担持シート
21 複合細線画像
22 切込線
23 折曲線
24 折曲線
25 操作片部
30 スクリーン担持シート
31 スクリーン
32 透視部
33 隠蔽部
34 延設部
35 接合部
36 切込線
37 折曲線
38 折曲線
39 操作片部
40 窓付シート
41 窓部
42 非窓部
43 押圧手段
44 輪郭線(折れ線)
45 延設片
46 折り返し片
50 ヒンジ機構
51 折曲線
52 操作片部
60 隙間
70 窓付表装シート
71 窓部
72 非窓部
73 折曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の原画像のそれぞれを所定の細線画像幅に分割した細線画像から前記原画像の種類の数に等しい所定数毎に選択した細線画像を、各原画像に由来する細線画像が前記細線画像幅の前記所定数倍に等しい所定周期で繰り返し現れるように、一定の順序で相互に隣接させて配列して構成してなる複合細線画像を表面に担持した複合細線画像担持シートと、
前記複合細線画像シート上に配置された、前記細線画像幅に等しい幅の透視可能な透視部と、前記細線画像幅の前記所定数倍よりも前記細線画像幅だけ狭い幅の透視不可能な隠蔽部とを、前記細線画像の配列方向と同一方向に相互に隣接させて交互に配列してなる、表示すべき画像の寸法よりも大きい寸法のスクリーンを担持したスクリーン担持シートと、
前記スクリーン担持シート上に配置された、表示すべき画像の寸法と等しいか又はこれより大きい寸法の窓部を穿設した窓付シートと、
を少なくとも具備してなり、
前記複合細線画像担持シートと、前記スクリーン担持シートとを、前記細線画像の配列方向に相対的に摺動させることによって、前記複数枚の原画像のそれぞれに由来する画像が所定の順序で順次表示される可変画像表示体において、
前記窓付シートの前記窓部の近傍の非窓部の前記スクリーン担持シート側の面上に、前記スクリーン担持シートを前記複合細線画像担持シートに向けて弾性的に押圧する押圧手段を具備することを特徴とする可変画像表示体。
【請求項2】
前記押圧手段は、前記窓付シートの前記窓部の近傍の非窓部の一部を該窓部の輪郭線を越えて該窓部の内側に所定幅延設してなる延設片を、該輪郭線を折れ線として該非窓部の前記スクリーン担持シート側の面上に折返してなる折返し片であることを特徴とする請求項1に記載の可変画像表示体。
【請求項3】
前記窓付シートの前記窓部は、前記複合細線画像担持シートと前記スクリーン担持シートとの相対的な摺動方向に沿って直線状の相対する2辺を有しており、前記折返し片は、該2辺のほぼ全長に亘って設けられていることを特徴とする請求項2に記載の可変画像表示体。
【請求項4】
前記窓付シート上に配置された、表示すべき画像の寸法と等しいか又はこれより大きく、且つ、該窓付シートの窓部の寸法と等しいか又はこれより小さい寸法の窓部を穿設した窓付表装シートをさらに具備してなり、
前記スクリーン担持シートと、前記窓付シートとは、該窓付シートの前記窓部を挟んで前記複合細線画像担持シートと前記スクリーン担持シートとの相対的な摺動方向と直交する方向の両側において、相互に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の可変画像表示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−181771(P2010−181771A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27115(P2009−27115)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(509039057)
【Fターム(参考)】