可搬便器及びこれに用いられる汚物受け
【課題】部品点数、製造コストを削減でき、汚水受け上の清掃を容易にでき、汚水受け上の汚水が汚水受けから漏れ出すことを防止できる可搬便器及びこれにこれに用いる汚物受けを提供する。
【解決手段】便器外郭体5を備える。便器外郭体5内に形成した上方に開口する収納部に収納される汚水受け7を備える。汚水受け7に出入自在に収納される排泄物容器8を備える。汚水受け7は上方に開口する容器状の汚水受け本体31を備える。汚水受け7は汚水受け本体31の上端開口の周縁部から外方に向けて突出して便座2を載置するための便座載置部34を構成するフランジ部32を備える。フランジ部32を収納部6の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置する。汚水受け7のフランジ部32の外周縁にフランジ部32の全周に亘る堰部50を立設する。
【解決手段】便器外郭体5を備える。便器外郭体5内に形成した上方に開口する収納部に収納される汚水受け7を備える。汚水受け7に出入自在に収納される排泄物容器8を備える。汚水受け7は上方に開口する容器状の汚水受け本体31を備える。汚水受け7は汚水受け本体31の上端開口の周縁部から外方に向けて突出して便座2を載置するための便座載置部34を構成するフランジ部32を備える。フランジ部32を収納部6の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置する。汚水受け7のフランジ部32の外周縁にフランジ部32の全周に亘る堰部50を立設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に介護用に用いられる可搬便器及びこれに用いられる汚物受けに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すような可搬便器が利用されている。この可搬便器は、図11に示すように便器外郭体5と、該便器外郭体5内に収納されて便器外郭体5に固設した容器状の汚水受け7と、該汚水受け7のフランジ部32上に前後方向にスライド自在に載置したスライド部材60と、スライド部材60上に上端部を載置することで汚水受け7に出入自在に収納した排泄物容器8と、汚水受け7のフランジ部32の後端部上に固設した局部洗浄装置9と、局部洗浄装置9に回動自在に設けた便座2を備え、老人や身体障害者等は便座2に着座して排泄物容器8に用を足すことができ、また汚水受け7で排泄物容器8の外側に流れた汚水を受けられるようになっている。
【0003】
上記スライド部材60を後側に配置した状態では、排泄物容器8の後端部は汚水受け7の上端開口の後縁よりも前方に突出した局部洗浄装置9の前方突出部の下方に位置して仕舞い良く収納される。またこの状態から前方にスライドしてスライド部材60を前側に配置した状態では、排泄物容器8を可搬便器の手前側から簡単に取り出すことができ、簡単に排泄物容器8内の排泄物を捨てることができる。
【0004】
ところで上記特許文献1に示す可搬便器にあっては、排泄物容器8をスライド自在とするために汚水受け7のフランジ部32上に別体のスライド部材60を設ける必要があり、部品点数が多く、製造コストが高い。また汚水受け7のフランジ部32とスライド部材60の間に汚水が侵入する恐れもあり、この間の清掃作業は非常に面倒である。また汚水受け7は便器外郭体5に固設してあって、容易に取り外すことができず、メンテナンス性も悪い。また汚水受け7のフランジ部32上に流れた汚水が汚水受け7の外縁から流れ出す恐れもある。
【特許文献1】特開2006−87724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、汚水受けに対して排泄物容器をスライドさせるための部材を汚水受け上に別途設けることなく、排泄物容器を前方に引き出して排泄物容器を取り出し易い位置に配置でき、部品点数、製造コストを削減でき、汚水受けのフランジ部上の清掃も容易にでき、またメンテナンス性を向上でき、しかも汚水受けのフランジ部上の汚水が汚水受けの外周縁から漏れ出すことを防止できる可搬便器及びこれに用いられる汚物受けを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る可搬便器は、便器外郭体5と、該便器外郭体5内に形成した上方に開口する収納部6に収納される汚水受け7と、該汚水受け7に出入自在に収納される排泄物容器8を備え、汚水受け7は、上方に開口する容器状の汚水受け本体31と、該汚水受け本体31の上端開口の周縁部から外方に向けて突出して便座2を載置するための便座載置部34を有するフランジ部32を備え、該フランジ部32を前記便器外郭体5の収納部6の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置し、該汚水受け7のフランジ部32の外周縁にフランジ部32の全周に亘る堰部50を立設して成ることを特徴とする。このように汚水受け7を便器外郭体5に対して前後方向にスライド自在とすることで、汚水受け7と共に排泄物容器8を前方に引き出して、排泄物容器8を取り出し易い位置に配置できる。また汚水受け7のフランジ部32を収納部6の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置したので、汚水受け7に対して排泄物容器8をスライドさせるための部材を別途設ける必要がない。また汚水受け7は便器外郭体5内に形成した収納部6から容易に取り出すことができる。また上記汚水受け7のフランジ部32の周縁部に立設した堰部50により汚水受け7のフランジ部32上の汚水が汚水受け7の外周縁から漏れ出すことを防止できる。
【0007】
またフランジ部32の前端部両側に設けた堰部50で便座2に着座した人の太股を支持するための太股支持部42を構成し、該太股支持部42の上面を便座載置部34上に載置した便座2の上面と面一となる高さに配置することも好ましい。この場合、便座2に着座した人の太股は便座2の上面で支持されると共に該便座2の上面と面一となった汚水受け7の太股支持部42の上面でも支持されることとなり、太股の支持面積を増大できる。
【0008】
また汚水受け7のフランジ部32の上面に汚水受け本体31の上端開口に向かって下り傾斜した勾配を設けることも好ましい。この場合、フランジ部32上の汚水をスムーズに汚水受け本体31側に流すことができ、汚水受け7の外周から汚水が漏れ出すことをより一層防止できる。
【0009】
また汚水受け7のフランジ部32の上面に防汚処理を施すことも好ましい。フランジ部32の上面を清潔に保つことができる。
【0010】
また本発明の可搬便器に用いられる汚物受けは、上記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の可搬便器1が有する汚水受け7及び排泄物容器8で構成した汚物受けである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、汚水受けを便器外郭体に対して前後方向にスライド自在とすることで、汚水受けと共に排泄物容器を前方に引き出して、排泄物容器を取り出し易い位置に配置できる。また汚水受けのフランジ部を収納部の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置したので、汚水受けに対して排泄物容器をスライドさせるための部材を汚水受け上に別途設ける必要がなく、部品点数、製造コストを削減でき、また汚水受け上の清掃も容易になる。また汚水受けを便器外郭体内に形成した収納部から容易に取り出すことができ、メンテナンス性を向上できる。また堰部により汚水受けのフランジ部上の汚水が汚水受けの外周縁から漏れ出すことを防止できる。
【0012】
また請求項2に係る発明では、請求項1に係る発明の効果に加えて、便座に着座した人の太股の支持面積を増大でき、使用者はより安定した姿勢で便座に着座でき、また便座や汚水受けが着座時に破損し難くなる。
【0013】
また請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、フランジ部上の汚水をスムーズに汚水受け本体側に流すことができ、汚水受けの外周から汚水が漏れ出すことをより一層防止できる。
【0014】
また請求項4に係る発明では、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に係る発明の効果に加えて、防汚処理によりフランジ部の上面を一層清潔にできる。
【0015】
また請求項5に係る発明では上記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の可搬便器が有する汚水受け及び排泄物容器で構成した汚物受けを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の可搬便器を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。なお以下では、用を足す時に可搬便器1の便座2に着座した人を基準とし、該着座者から見て前側を前方、後側を後方として説明する。
【0017】
本実施形態の一例の可搬便器1は椅子型で、図1乃至4に示すように便器外郭体5、脚体11、肘掛け体12を有する椅子構造体4と、便器外郭体5内に形成した上方に開口する収納部6に収納される汚水受け7と、汚水受け7に収納される排泄物容器8と、局部洗浄装置9と、便座2と、タンク受け10を備え、汚水受け7と排泄物容器8とで汚物受け3を構成している。
【0018】
椅子構造体4は木製であり、汚水受け7、排泄物容器8、タンク受け10はポリプロピレン樹脂よりなる。なお汚水受け7、排泄物容器8、タンク受け10は、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン等の熱可塑性の合成樹脂で成形しても良い。
【0019】
便器の外郭を構成する便器外郭体5は、左右両側の側板13、13と、両側板13、13の前端間に架設した前板14と、両側板13、13と前板14とで囲まれた空間の上方を覆う天板15を備えている。両側板13、13の後部の下部には後板16を架設してあり、後板16よりも後方に位置する両側板13、13の後端部の下端部間には桟17を架設してあり、便器外郭体5は略箱状に形成されている。
【0020】
便器外郭体5の内側には両側板13、13、前板14、後板16、天板15で囲まれた空間からなる収納部6を形成してあり、天板15には収納部6の上端開口として開口部15a(図8参照)を形成している。便器外郭体5の両側板13、13の夫々には脚体11を設けてあり、便器外郭体5は両側の脚体11を介して床上に配置される。便器外郭体5は各脚体11に対して高さ調節自在に取り付けてある。図4に示すように各脚体11の下端部に設けた接地板19の後端にはキャスター20を設けてあり、各キャスター20のローラー20aを床面上で転動させることで可搬便器1を簡単に移動できる。
【0021】
便器外郭体5の後端部には背枠21を立設してあり、背枠21の上部前側には背当て22を取り付けている。便器外郭体5の両側には便座3に着座した人の肘を掛けるための肘掛け体12を配設してあり、各肘掛け体12の後端部は背枠21に連結し、また各肘掛け体12の前部は支柱25を介して便器外郭体5の側板13に連結してある。
【0022】
図4に示すように便器外郭体5の後方部にはタンク受け10を設けている。タンク受け10は、受け部26と、前側上端部に設けた引掛け部27を備え、受け部26には局部洗浄装置9に供給される水を貯めるタンク28が収納され、引掛け部27を天板15の開口部15aの後方部に引っ掛けることで便器外郭体5に支持してある。
【0023】
便器外郭体5の上面を構成する天板15の開口部15aの後方部上には引掛け部27を介して局部洗浄装置9を載置固定してあり、局部洗浄装置9と便器外郭体5の天板15とで引掛け部27を挟持している。局部洗浄装置9の前部は天板15の開口部15aの後縁よりも前方に突出した前方突出部9aとなっている。前方突出部9aの下部は収納部6内に位置し、同部には便座2に着座した人の局部を洗浄するための局部洗浄ノズル30を内装している。図1中29は局部洗浄装置9の操作器である。なお図2及び図9では図面の簡素化のため操作器29の図示を省略している。
【0024】
局部洗浄装置9には便座2の後端部を回動自在に取り付けている。便座2上には図9に示すように必要に応じて座体24が便座2の開口を閉塞するよう載置され、この座体24は使用者が着座するための座部として利用される。
【0025】
図6に示す汚水受け7は便器外郭体5の収納部6に開口部15aを介して出入自在に収納される。汚水受け7は、上方に開口する容器状の汚水受け本体31と、汚水受け本体31の上端開口の周縁部から外方に向けて一体に突出するフランジ部32とで構成してある。汚水受け7はフランジ部32が便器外郭体5の収納部6の上端開口の両側の縁部(即ち天板15の開口部15aの両側縁部)上に前後方向にスライド自在に載置して支持され、汚水受け7を便器外郭体5に対して前後方向に移動することで、図4に示す収納位置と図5に示す引出位置に配置できるようになっている。
【0026】
図6に示すようにフランジ部32は汚水受け本体31の上端開口の周縁部の全周に亘って設けてあり、内周縁部(即ち汚水受け本体31の上端開口の周縁部を構成する部分)を構成する平面視環状の容器載置部33と、容器載置部33の後端部を除く外周縁から外方に突出した平面視略U字状の便座載置部34と、便座載置部34の前縁に設けた上方突出部40を備えている。
【0027】
容器載置部33の内周縁には係止リブ35を立設してあり、係止リブ35の後縁部にはリブ切欠36を形成している。容器載置部33の後端部及びこれに連続する両側の後部は他部よりも幅広に形成してあり、同部の外周部は取手載置部37となっている。取手載置部37を含む容器載置部33の外周縁には全周に亘って立上壁部38を立設し、立上壁部38の後縁部には壁部切欠39を形成している。
【0028】
便座載置部34は立上壁部38の後部を除く外周縁部の上端から外方に突出し、容器載置部33よりも一段高くなっている。便座載置部34の前縁に接続した上方突出部40は便座載置部34よりも上方に突出している。また便座載置部34の上方突出部40を設けた前縁を除く外周縁には全長に亘って上向きリブ41を立設している。即ち本例ではフランジ部32の外周縁部に立設した立上壁部38と上向きリブ41と上方突出部40とで汚水受け7のフランジ部32の全周に亘る堰部50を構成している。
【0029】
上方突出部40の左右方向の両側部分は中央部よりも一段高くなった太股支持部42を構成している。各太股支持部42の上面は便座載置部34に載置した便座2の前部の上面と同レベルに位置し、便座載置部34に便座2を載置した場合、便座2の上面と各太股支持部42の上面が面一となる。これにより便座2に着座した人の太股は便座2の上面で支持されると共に該便座2の上面と面一となった汚水受け7の太股支持部42の上面でも支持されることとなり、太股の支持面積が増大する。従って使用者はより安定した姿勢で便座2に着座でき、また便座2や汚水受け7は着座時に破損し難くなる。また各太股支持部42には上方に開口する嵌込凹所43を形成してあり、前述の座体24から下方に突設した嵌込部(図示せず)を嵌込凹所43に嵌め込んで座体24を位置決めできるようになっている。
【0030】
上方突出部40の左右方向の中央部は便座載置部34に載置した便座2の前端部よりも背が低く、その上方に手指挿通用凹所44を形成している。これにより汚水受け7の前方から手指挿通用凹所44に手指を入れ、便座載置部34に載置した便座2の前端部下面に手指を掛けて便座2を起立させることが可能となっている。また上方突出部40の前面の左右方向の中央部には前方にやや突出した手指掛け部45を形成してあり、手指掛け部45の下端に手指を掛けて汚水受け7を前方に引き出せるようになっている。
【0031】
また図10に示すようにフランジ部32の両側縁には下向きリブ51を垂設してあり、該下向きリブ51とフランジ部32の両側に位置する立上壁部38との間に下方に開口するガイド溝52を形成している。汚水受け7のガイド溝52の上底部を構成する便座載置部34は便器外郭体5の天板15上に載置している。また該汚水受け7の両側のガイド溝52内には天板15の両側部分が前後方向にスライド自在に収納してあり、これにより汚水受け7は便器外郭体5に対してスライド自在となっている。
【0032】
図7に示す排泄物容器8はその上端周縁部に外方に向けて突出する断面L字状の鍔部46を設けてあり、鍔部46の外周縁には下方に向けて突出する被係止突部47を設けている。排泄物容器8の両側の後部上端部間には取手48を回動自在に架設している。図4に示すように排泄物容器8は汚水受け7の容器載置部33に鍔部46を載置すると共に被係止突部47を汚水受け7の係止リブ35に係止することで汚水受け7上に支持され、汚水受け本体31に収納される。またこのように汚水受け7に排泄物容器8を収納支持した状態では、図4のように排泄物容器8の後方に取手48を倒して汚水受け7の取手載置部37上に載置し、立上壁部38と係止リブ35との間に収納できるようになっている。また排泄物容器8の後面部の上端部には容器切欠49を形成してあり、容器切欠49は、汚水受け7に排泄物容器8を収納支持した状態で、汚水受け7のリブ切欠36と重複して壁部切欠39と対向する。
【0033】
図4等に示すように上記排泄物容器8の上端部には必要に応じて排泄物容器8の上端開口を閉塞する蓋体53が着脱自在に嵌め込まれるものであり、この蓋体53の後面部の上端部には蓋体切欠54を形成している。
【0034】
ここで図4に示すように汚水受け7を後方に移動して汚水受け本体31が収納部6において最も後側に配置される収納位置に配置した場合には、排泄物容器8の上端後縁部及び取手載置部37上に載置した取手48が局部洗浄装置9の前方突出部9aの前縁よりも後方に位置し、局部洗浄装置9の前方突出部9aの下方に汚水受け本体31の後端部が位置する。またこの時、局部洗浄装置9の前方突出部9aの下部が排泄物容器8内に臨む。これにより排泄物容器8は排泄物や局部洗浄ノズル30から噴射した水を確実に受ける便座2の開口の下方の位置に配置される。
【0035】
また図5に示すように収納位置から汚水受け7を前方に移動して汚水受け本体31が収納部6の最も前側に配置される引出位置に配置した場合には、排泄物容器8及び取手載置部37上に載置した取手48が局部洗浄装置9の前縁よりも前方に位置する。従って便座2を起立させて汚水受け7を引出位置に配置することで、汚水受け7に収納した排泄物容器8の取手48を把持でき、また排泄物容器8の上端後縁部が局部洗浄装置9の前方突出部9aに引っ掛かることなく排泄物容器8を汚水受け7から取り出すことが可能となり、排泄物容器8の取り出しが容易になる。また、排泄物容器8に嵌め込んだ蓋体53も容易に取り外すことができる。さらにはこの場合、汚水受け7の上端後縁部は局部洗浄装置9の前方突出部9aの下方に位置するが、前記収納位置よりも前方に位置しているため、汚水受け7も便器外郭体5の収納部6から容易に取り出すことができる。
【0036】
なお、上記汚水受け7を図4に示す収納位置から図5に示す引出位置に引き出した場合は、局部洗浄装置9の前方突出部9aの下部は、蓋体切欠54、容器切欠49を通過して壁部切欠39の内側に位置するものであり、このように汚水受け7は局部洗浄装置9の前方突出部9aの下部に干渉することなくスライド可能となっている。
【0037】
上記可搬便器1を利用するには、便座2上の座体2を取り外し、汚水受け7を図4に示す収納位置に配置して汚水受け7上に載置した便座2に着座して排泄物容器8内に用を足す。また排泄物容器8内の排泄物を捨てるには、前述のように汚水受け7を引出位置に配置して排泄物容器8を汚水受け7から取り出す。
【0038】
以上説明した本発明の可搬便器1にあっては、汚水受け7を前後方向にスライドすることで、汚水受け7と共に排泄物容器8を前方に引き出して、排泄物容器8を取り出し易い位置に配置できる。また汚水受け7のフランジ部32を収納部6の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置したので、汚水受け7に対して排泄物容器8をスライドさせるための部材を別途設ける必要がなく、部品点数、製造コストを削減でき、また汚水受け7上の清掃も容易になる。また図8に示すように汚水受け7を便器外郭体5内に形成した収納部6から取り出すことでメンテナンス性を向上でき、またこの汚水受け7の取り出しも汚水受け7を前後方向にスライド自在としたことで容易になる。また上記汚水受け7のフランジ部32の周縁部に該フランジ部32の全周に亘る堰部50を立設してあるので、汚水受け7のフランジ部32上の汚水が汚水受け7の外周縁から漏れ出すことを防止できる。
【0039】
ここで上記汚水受け7のフランジ部32の上面には汚水受け本体31の上端開口に向かって下り傾斜した勾配を設けることが好ましく、この場合、フランジ部32上の汚水をスムーズに汚水受け本体31側に流すことができ、汚水受け7の外周から汚水が漏れ出すことをより一層防止できる。また上記汚水受け7の上面に撥水処理を施したり、光触媒を塗布して防汚処理を施すことが好ましく、この場合、フランジ部32の上面を清潔に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態の一例の可搬便器を示す全体斜視図である。
【図2】同上の可搬便器を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。
【図3】図2(a)のA−A′断面図である。
【図4】図2(a)のB−B′断面図である。
【図5】同上の可搬便器の汚水受けを引出位置に配置した状態を示す図2(a)のB−B′断面図である。
【図6】同上の汚水受けの斜視図である。
【図7】同上の排泄物容器の斜視図である。
【図8】同上の可搬便器から汚水受けを取り外した状態を示す図2(a)のB−B′断面図である。
【図9】同上の可搬便器の便座に座体を載置した状態を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図10】図3の要部拡大図である。
【図11】従来の可搬便器の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 可搬便器
2 便座
5 便器外郭体
7 汚水受け
8 排泄物容器
31 汚水受け本体
32 フランジ部
34 便座載置部
42 太股支持部
50 堰部
【技術分野】
【0001】
本発明は主に介護用に用いられる可搬便器及びこれに用いられる汚物受けに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すような可搬便器が利用されている。この可搬便器は、図11に示すように便器外郭体5と、該便器外郭体5内に収納されて便器外郭体5に固設した容器状の汚水受け7と、該汚水受け7のフランジ部32上に前後方向にスライド自在に載置したスライド部材60と、スライド部材60上に上端部を載置することで汚水受け7に出入自在に収納した排泄物容器8と、汚水受け7のフランジ部32の後端部上に固設した局部洗浄装置9と、局部洗浄装置9に回動自在に設けた便座2を備え、老人や身体障害者等は便座2に着座して排泄物容器8に用を足すことができ、また汚水受け7で排泄物容器8の外側に流れた汚水を受けられるようになっている。
【0003】
上記スライド部材60を後側に配置した状態では、排泄物容器8の後端部は汚水受け7の上端開口の後縁よりも前方に突出した局部洗浄装置9の前方突出部の下方に位置して仕舞い良く収納される。またこの状態から前方にスライドしてスライド部材60を前側に配置した状態では、排泄物容器8を可搬便器の手前側から簡単に取り出すことができ、簡単に排泄物容器8内の排泄物を捨てることができる。
【0004】
ところで上記特許文献1に示す可搬便器にあっては、排泄物容器8をスライド自在とするために汚水受け7のフランジ部32上に別体のスライド部材60を設ける必要があり、部品点数が多く、製造コストが高い。また汚水受け7のフランジ部32とスライド部材60の間に汚水が侵入する恐れもあり、この間の清掃作業は非常に面倒である。また汚水受け7は便器外郭体5に固設してあって、容易に取り外すことができず、メンテナンス性も悪い。また汚水受け7のフランジ部32上に流れた汚水が汚水受け7の外縁から流れ出す恐れもある。
【特許文献1】特開2006−87724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、汚水受けに対して排泄物容器をスライドさせるための部材を汚水受け上に別途設けることなく、排泄物容器を前方に引き出して排泄物容器を取り出し易い位置に配置でき、部品点数、製造コストを削減でき、汚水受けのフランジ部上の清掃も容易にでき、またメンテナンス性を向上でき、しかも汚水受けのフランジ部上の汚水が汚水受けの外周縁から漏れ出すことを防止できる可搬便器及びこれに用いられる汚物受けを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る可搬便器は、便器外郭体5と、該便器外郭体5内に形成した上方に開口する収納部6に収納される汚水受け7と、該汚水受け7に出入自在に収納される排泄物容器8を備え、汚水受け7は、上方に開口する容器状の汚水受け本体31と、該汚水受け本体31の上端開口の周縁部から外方に向けて突出して便座2を載置するための便座載置部34を有するフランジ部32を備え、該フランジ部32を前記便器外郭体5の収納部6の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置し、該汚水受け7のフランジ部32の外周縁にフランジ部32の全周に亘る堰部50を立設して成ることを特徴とする。このように汚水受け7を便器外郭体5に対して前後方向にスライド自在とすることで、汚水受け7と共に排泄物容器8を前方に引き出して、排泄物容器8を取り出し易い位置に配置できる。また汚水受け7のフランジ部32を収納部6の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置したので、汚水受け7に対して排泄物容器8をスライドさせるための部材を別途設ける必要がない。また汚水受け7は便器外郭体5内に形成した収納部6から容易に取り出すことができる。また上記汚水受け7のフランジ部32の周縁部に立設した堰部50により汚水受け7のフランジ部32上の汚水が汚水受け7の外周縁から漏れ出すことを防止できる。
【0007】
またフランジ部32の前端部両側に設けた堰部50で便座2に着座した人の太股を支持するための太股支持部42を構成し、該太股支持部42の上面を便座載置部34上に載置した便座2の上面と面一となる高さに配置することも好ましい。この場合、便座2に着座した人の太股は便座2の上面で支持されると共に該便座2の上面と面一となった汚水受け7の太股支持部42の上面でも支持されることとなり、太股の支持面積を増大できる。
【0008】
また汚水受け7のフランジ部32の上面に汚水受け本体31の上端開口に向かって下り傾斜した勾配を設けることも好ましい。この場合、フランジ部32上の汚水をスムーズに汚水受け本体31側に流すことができ、汚水受け7の外周から汚水が漏れ出すことをより一層防止できる。
【0009】
また汚水受け7のフランジ部32の上面に防汚処理を施すことも好ましい。フランジ部32の上面を清潔に保つことができる。
【0010】
また本発明の可搬便器に用いられる汚物受けは、上記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の可搬便器1が有する汚水受け7及び排泄物容器8で構成した汚物受けである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、汚水受けを便器外郭体に対して前後方向にスライド自在とすることで、汚水受けと共に排泄物容器を前方に引き出して、排泄物容器を取り出し易い位置に配置できる。また汚水受けのフランジ部を収納部の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置したので、汚水受けに対して排泄物容器をスライドさせるための部材を汚水受け上に別途設ける必要がなく、部品点数、製造コストを削減でき、また汚水受け上の清掃も容易になる。また汚水受けを便器外郭体内に形成した収納部から容易に取り出すことができ、メンテナンス性を向上できる。また堰部により汚水受けのフランジ部上の汚水が汚水受けの外周縁から漏れ出すことを防止できる。
【0012】
また請求項2に係る発明では、請求項1に係る発明の効果に加えて、便座に着座した人の太股の支持面積を増大でき、使用者はより安定した姿勢で便座に着座でき、また便座や汚水受けが着座時に破損し難くなる。
【0013】
また請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、フランジ部上の汚水をスムーズに汚水受け本体側に流すことができ、汚水受けの外周から汚水が漏れ出すことをより一層防止できる。
【0014】
また請求項4に係る発明では、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に係る発明の効果に加えて、防汚処理によりフランジ部の上面を一層清潔にできる。
【0015】
また請求項5に係る発明では上記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の可搬便器が有する汚水受け及び排泄物容器で構成した汚物受けを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の可搬便器を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。なお以下では、用を足す時に可搬便器1の便座2に着座した人を基準とし、該着座者から見て前側を前方、後側を後方として説明する。
【0017】
本実施形態の一例の可搬便器1は椅子型で、図1乃至4に示すように便器外郭体5、脚体11、肘掛け体12を有する椅子構造体4と、便器外郭体5内に形成した上方に開口する収納部6に収納される汚水受け7と、汚水受け7に収納される排泄物容器8と、局部洗浄装置9と、便座2と、タンク受け10を備え、汚水受け7と排泄物容器8とで汚物受け3を構成している。
【0018】
椅子構造体4は木製であり、汚水受け7、排泄物容器8、タンク受け10はポリプロピレン樹脂よりなる。なお汚水受け7、排泄物容器8、タンク受け10は、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン等の熱可塑性の合成樹脂で成形しても良い。
【0019】
便器の外郭を構成する便器外郭体5は、左右両側の側板13、13と、両側板13、13の前端間に架設した前板14と、両側板13、13と前板14とで囲まれた空間の上方を覆う天板15を備えている。両側板13、13の後部の下部には後板16を架設してあり、後板16よりも後方に位置する両側板13、13の後端部の下端部間には桟17を架設してあり、便器外郭体5は略箱状に形成されている。
【0020】
便器外郭体5の内側には両側板13、13、前板14、後板16、天板15で囲まれた空間からなる収納部6を形成してあり、天板15には収納部6の上端開口として開口部15a(図8参照)を形成している。便器外郭体5の両側板13、13の夫々には脚体11を設けてあり、便器外郭体5は両側の脚体11を介して床上に配置される。便器外郭体5は各脚体11に対して高さ調節自在に取り付けてある。図4に示すように各脚体11の下端部に設けた接地板19の後端にはキャスター20を設けてあり、各キャスター20のローラー20aを床面上で転動させることで可搬便器1を簡単に移動できる。
【0021】
便器外郭体5の後端部には背枠21を立設してあり、背枠21の上部前側には背当て22を取り付けている。便器外郭体5の両側には便座3に着座した人の肘を掛けるための肘掛け体12を配設してあり、各肘掛け体12の後端部は背枠21に連結し、また各肘掛け体12の前部は支柱25を介して便器外郭体5の側板13に連結してある。
【0022】
図4に示すように便器外郭体5の後方部にはタンク受け10を設けている。タンク受け10は、受け部26と、前側上端部に設けた引掛け部27を備え、受け部26には局部洗浄装置9に供給される水を貯めるタンク28が収納され、引掛け部27を天板15の開口部15aの後方部に引っ掛けることで便器外郭体5に支持してある。
【0023】
便器外郭体5の上面を構成する天板15の開口部15aの後方部上には引掛け部27を介して局部洗浄装置9を載置固定してあり、局部洗浄装置9と便器外郭体5の天板15とで引掛け部27を挟持している。局部洗浄装置9の前部は天板15の開口部15aの後縁よりも前方に突出した前方突出部9aとなっている。前方突出部9aの下部は収納部6内に位置し、同部には便座2に着座した人の局部を洗浄するための局部洗浄ノズル30を内装している。図1中29は局部洗浄装置9の操作器である。なお図2及び図9では図面の簡素化のため操作器29の図示を省略している。
【0024】
局部洗浄装置9には便座2の後端部を回動自在に取り付けている。便座2上には図9に示すように必要に応じて座体24が便座2の開口を閉塞するよう載置され、この座体24は使用者が着座するための座部として利用される。
【0025】
図6に示す汚水受け7は便器外郭体5の収納部6に開口部15aを介して出入自在に収納される。汚水受け7は、上方に開口する容器状の汚水受け本体31と、汚水受け本体31の上端開口の周縁部から外方に向けて一体に突出するフランジ部32とで構成してある。汚水受け7はフランジ部32が便器外郭体5の収納部6の上端開口の両側の縁部(即ち天板15の開口部15aの両側縁部)上に前後方向にスライド自在に載置して支持され、汚水受け7を便器外郭体5に対して前後方向に移動することで、図4に示す収納位置と図5に示す引出位置に配置できるようになっている。
【0026】
図6に示すようにフランジ部32は汚水受け本体31の上端開口の周縁部の全周に亘って設けてあり、内周縁部(即ち汚水受け本体31の上端開口の周縁部を構成する部分)を構成する平面視環状の容器載置部33と、容器載置部33の後端部を除く外周縁から外方に突出した平面視略U字状の便座載置部34と、便座載置部34の前縁に設けた上方突出部40を備えている。
【0027】
容器載置部33の内周縁には係止リブ35を立設してあり、係止リブ35の後縁部にはリブ切欠36を形成している。容器載置部33の後端部及びこれに連続する両側の後部は他部よりも幅広に形成してあり、同部の外周部は取手載置部37となっている。取手載置部37を含む容器載置部33の外周縁には全周に亘って立上壁部38を立設し、立上壁部38の後縁部には壁部切欠39を形成している。
【0028】
便座載置部34は立上壁部38の後部を除く外周縁部の上端から外方に突出し、容器載置部33よりも一段高くなっている。便座載置部34の前縁に接続した上方突出部40は便座載置部34よりも上方に突出している。また便座載置部34の上方突出部40を設けた前縁を除く外周縁には全長に亘って上向きリブ41を立設している。即ち本例ではフランジ部32の外周縁部に立設した立上壁部38と上向きリブ41と上方突出部40とで汚水受け7のフランジ部32の全周に亘る堰部50を構成している。
【0029】
上方突出部40の左右方向の両側部分は中央部よりも一段高くなった太股支持部42を構成している。各太股支持部42の上面は便座載置部34に載置した便座2の前部の上面と同レベルに位置し、便座載置部34に便座2を載置した場合、便座2の上面と各太股支持部42の上面が面一となる。これにより便座2に着座した人の太股は便座2の上面で支持されると共に該便座2の上面と面一となった汚水受け7の太股支持部42の上面でも支持されることとなり、太股の支持面積が増大する。従って使用者はより安定した姿勢で便座2に着座でき、また便座2や汚水受け7は着座時に破損し難くなる。また各太股支持部42には上方に開口する嵌込凹所43を形成してあり、前述の座体24から下方に突設した嵌込部(図示せず)を嵌込凹所43に嵌め込んで座体24を位置決めできるようになっている。
【0030】
上方突出部40の左右方向の中央部は便座載置部34に載置した便座2の前端部よりも背が低く、その上方に手指挿通用凹所44を形成している。これにより汚水受け7の前方から手指挿通用凹所44に手指を入れ、便座載置部34に載置した便座2の前端部下面に手指を掛けて便座2を起立させることが可能となっている。また上方突出部40の前面の左右方向の中央部には前方にやや突出した手指掛け部45を形成してあり、手指掛け部45の下端に手指を掛けて汚水受け7を前方に引き出せるようになっている。
【0031】
また図10に示すようにフランジ部32の両側縁には下向きリブ51を垂設してあり、該下向きリブ51とフランジ部32の両側に位置する立上壁部38との間に下方に開口するガイド溝52を形成している。汚水受け7のガイド溝52の上底部を構成する便座載置部34は便器外郭体5の天板15上に載置している。また該汚水受け7の両側のガイド溝52内には天板15の両側部分が前後方向にスライド自在に収納してあり、これにより汚水受け7は便器外郭体5に対してスライド自在となっている。
【0032】
図7に示す排泄物容器8はその上端周縁部に外方に向けて突出する断面L字状の鍔部46を設けてあり、鍔部46の外周縁には下方に向けて突出する被係止突部47を設けている。排泄物容器8の両側の後部上端部間には取手48を回動自在に架設している。図4に示すように排泄物容器8は汚水受け7の容器載置部33に鍔部46を載置すると共に被係止突部47を汚水受け7の係止リブ35に係止することで汚水受け7上に支持され、汚水受け本体31に収納される。またこのように汚水受け7に排泄物容器8を収納支持した状態では、図4のように排泄物容器8の後方に取手48を倒して汚水受け7の取手載置部37上に載置し、立上壁部38と係止リブ35との間に収納できるようになっている。また排泄物容器8の後面部の上端部には容器切欠49を形成してあり、容器切欠49は、汚水受け7に排泄物容器8を収納支持した状態で、汚水受け7のリブ切欠36と重複して壁部切欠39と対向する。
【0033】
図4等に示すように上記排泄物容器8の上端部には必要に応じて排泄物容器8の上端開口を閉塞する蓋体53が着脱自在に嵌め込まれるものであり、この蓋体53の後面部の上端部には蓋体切欠54を形成している。
【0034】
ここで図4に示すように汚水受け7を後方に移動して汚水受け本体31が収納部6において最も後側に配置される収納位置に配置した場合には、排泄物容器8の上端後縁部及び取手載置部37上に載置した取手48が局部洗浄装置9の前方突出部9aの前縁よりも後方に位置し、局部洗浄装置9の前方突出部9aの下方に汚水受け本体31の後端部が位置する。またこの時、局部洗浄装置9の前方突出部9aの下部が排泄物容器8内に臨む。これにより排泄物容器8は排泄物や局部洗浄ノズル30から噴射した水を確実に受ける便座2の開口の下方の位置に配置される。
【0035】
また図5に示すように収納位置から汚水受け7を前方に移動して汚水受け本体31が収納部6の最も前側に配置される引出位置に配置した場合には、排泄物容器8及び取手載置部37上に載置した取手48が局部洗浄装置9の前縁よりも前方に位置する。従って便座2を起立させて汚水受け7を引出位置に配置することで、汚水受け7に収納した排泄物容器8の取手48を把持でき、また排泄物容器8の上端後縁部が局部洗浄装置9の前方突出部9aに引っ掛かることなく排泄物容器8を汚水受け7から取り出すことが可能となり、排泄物容器8の取り出しが容易になる。また、排泄物容器8に嵌め込んだ蓋体53も容易に取り外すことができる。さらにはこの場合、汚水受け7の上端後縁部は局部洗浄装置9の前方突出部9aの下方に位置するが、前記収納位置よりも前方に位置しているため、汚水受け7も便器外郭体5の収納部6から容易に取り出すことができる。
【0036】
なお、上記汚水受け7を図4に示す収納位置から図5に示す引出位置に引き出した場合は、局部洗浄装置9の前方突出部9aの下部は、蓋体切欠54、容器切欠49を通過して壁部切欠39の内側に位置するものであり、このように汚水受け7は局部洗浄装置9の前方突出部9aの下部に干渉することなくスライド可能となっている。
【0037】
上記可搬便器1を利用するには、便座2上の座体2を取り外し、汚水受け7を図4に示す収納位置に配置して汚水受け7上に載置した便座2に着座して排泄物容器8内に用を足す。また排泄物容器8内の排泄物を捨てるには、前述のように汚水受け7を引出位置に配置して排泄物容器8を汚水受け7から取り出す。
【0038】
以上説明した本発明の可搬便器1にあっては、汚水受け7を前後方向にスライドすることで、汚水受け7と共に排泄物容器8を前方に引き出して、排泄物容器8を取り出し易い位置に配置できる。また汚水受け7のフランジ部32を収納部6の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置したので、汚水受け7に対して排泄物容器8をスライドさせるための部材を別途設ける必要がなく、部品点数、製造コストを削減でき、また汚水受け7上の清掃も容易になる。また図8に示すように汚水受け7を便器外郭体5内に形成した収納部6から取り出すことでメンテナンス性を向上でき、またこの汚水受け7の取り出しも汚水受け7を前後方向にスライド自在としたことで容易になる。また上記汚水受け7のフランジ部32の周縁部に該フランジ部32の全周に亘る堰部50を立設してあるので、汚水受け7のフランジ部32上の汚水が汚水受け7の外周縁から漏れ出すことを防止できる。
【0039】
ここで上記汚水受け7のフランジ部32の上面には汚水受け本体31の上端開口に向かって下り傾斜した勾配を設けることが好ましく、この場合、フランジ部32上の汚水をスムーズに汚水受け本体31側に流すことができ、汚水受け7の外周から汚水が漏れ出すことをより一層防止できる。また上記汚水受け7の上面に撥水処理を施したり、光触媒を塗布して防汚処理を施すことが好ましく、この場合、フランジ部32の上面を清潔に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態の一例の可搬便器を示す全体斜視図である。
【図2】同上の可搬便器を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。
【図3】図2(a)のA−A′断面図である。
【図4】図2(a)のB−B′断面図である。
【図5】同上の可搬便器の汚水受けを引出位置に配置した状態を示す図2(a)のB−B′断面図である。
【図6】同上の汚水受けの斜視図である。
【図7】同上の排泄物容器の斜視図である。
【図8】同上の可搬便器から汚水受けを取り外した状態を示す図2(a)のB−B′断面図である。
【図9】同上の可搬便器の便座に座体を載置した状態を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図10】図3の要部拡大図である。
【図11】従来の可搬便器の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 可搬便器
2 便座
5 便器外郭体
7 汚水受け
8 排泄物容器
31 汚水受け本体
32 フランジ部
34 便座載置部
42 太股支持部
50 堰部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器外郭体と、該便器外郭体内に形成した上方に開口する収納部に収納される汚水受けと、該汚水受けに出入自在に収納される排泄物容器を備え、汚水受けは、上方に開口する容器状の汚水受け本体と、該汚水受け本体の上端開口の周縁部から外方に向けて突出して便座を載置するための便座載置部を有するフランジ部を備え、該フランジ部を前記便器外郭体の収納部の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置し、該汚水受けのフランジ部の外周縁にフランジ部の全周に亘る堰部を立設して成ることを特徴とする可搬便器。
【請求項2】
フランジ部の前端部両側に設けた堰部で便座に着座した人の太股を支持するための太股支持部を構成し、該太股支持部の上面をフランジ部の便座載置部上に載置した便座の上面と面一となる高さに配置することを特徴とする請求項1に記載の可搬便器。
【請求項3】
汚水受けのフランジ部の上面に汚水受け本体の上端開口に向かって下り傾斜した勾配を設けて成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可搬便器。
【請求項4】
汚水受けのフランジ部の上面に防汚処理を施して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の可搬便器。
【請求項5】
上記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の可搬便器が有する汚水受け及び排泄物容器で構成した汚物受け。
【請求項1】
便器外郭体と、該便器外郭体内に形成した上方に開口する収納部に収納される汚水受けと、該汚水受けに出入自在に収納される排泄物容器を備え、汚水受けは、上方に開口する容器状の汚水受け本体と、該汚水受け本体の上端開口の周縁部から外方に向けて突出して便座を載置するための便座載置部を有するフランジ部を備え、該フランジ部を前記便器外郭体の収納部の上端開口の周縁部上に前後方向にスライド自在に載置し、該汚水受けのフランジ部の外周縁にフランジ部の全周に亘る堰部を立設して成ることを特徴とする可搬便器。
【請求項2】
フランジ部の前端部両側に設けた堰部で便座に着座した人の太股を支持するための太股支持部を構成し、該太股支持部の上面をフランジ部の便座載置部上に載置した便座の上面と面一となる高さに配置することを特徴とする請求項1に記載の可搬便器。
【請求項3】
汚水受けのフランジ部の上面に汚水受け本体の上端開口に向かって下り傾斜した勾配を設けて成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可搬便器。
【請求項4】
汚水受けのフランジ部の上面に防汚処理を施して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の可搬便器。
【請求項5】
上記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の可搬便器が有する汚水受け及び排泄物容器で構成した汚物受け。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−206695(P2008−206695A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45977(P2007−45977)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(506218756)松下電工エイジフリー・ライフテック株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(506218756)松下電工エイジフリー・ライフテック株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
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