説明

可搬便器

【課題】折り畳んだ状態で収納及び携帯等をすることができ、組み立てが容易であり、簡単な構成で強度、安定感及び安心感が得られ、製造コストも低い可搬便器を提供する。
【解決手段】可搬便器1は厚紙からなり、筒状をなし、平面視で、対向する二長辺と、該二長辺の両端部夫々に連なって鋭角をなす二短辺とを有する六角形状をなす台座2に、便器穴31が形成された便座3を、台座2の開口縁部に便座3の外縁部が繋がるように設けてなる。可搬便器1は、長手方向の両端部を台座2の軸に平行な折り目で折って、畳むように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内等に置いて、又は外出時に主として幼児が使用する可搬便器に関する。
【背景技術】
【0002】
可搬便器として、便器穴を有する便座の外側周縁に脚部が一体で繋がるとともに、便座の前側に金隠しが一体で繋がり、さらに、前記便器穴の下側に配置される便受皿が前記脚部と一体で繋がるように合成樹脂材料で成形されたもの、便器穴を有する便座の外側周縁に脚部が一体で繋がるとともに、便座の前部に金隠しが一体で繋がるように合成樹脂材料で成形され、さらに、前記便口の下側位置に対して出し入れが可能な便受皿が別個に成形されたもの等がある。
【0003】
ところが、従来のものは可搬便器の全体が一体に成形された構成となっているか、又は、便座及び脚部が一体に成形された構成となっているため、工場から出荷する際の嵩、及び家庭等で格納する際の嵩が比較的高くなるという問題があり、また、外出時に携帯するのは難しいという問題があった。さらに、特別の便受皿が必要であるため、この便受皿がコスト高の要因となっており、改善策が要望されていた。
【0004】
この問題を解決する可搬便器として、特許文献1の可搬便器が挙げられる。
この可搬便器は、便器穴を有する便座と、該便座の前記便器穴に対する左右の側部にその上端部が離脱可能に取付けられた脚体とを備えている。この可搬便器においては、荷造り、収納時の嵩を低くすることができ、携帯することも可能であり、便受皿としてビニール袋を使用することができるので、コストの低減化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4511017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の可搬便器は、分解した場合、従来の可搬便器と比較して相当量嵩を低くすることができるが、それでも4、5点の部品からなるため、ある程度の収納スペースを要し、また、多数の嵌合部を有しており、組み立てが煩雑であるという問題があった。そして、合成樹脂製であるので、多少重量があり、さらなる軽量化が望まれていた。また、合成樹脂製であり、幼児が腰掛けた場合に冷たく感じられるので、幼児が腰掛けやすい、暖かみのある材料で作製することも望まれていた。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、折り畳んだ状態で収納及び携帯等をすることができ、組み立てが容易であり、簡単な構成で強度、安定感及び安心感が得られ、製造コストも低い可搬便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る可搬便器は、開口縁部が略長円状をなす筒状の台座に、便器穴が形成された便座を設けてなる可搬便器において、前記台座は、長手方向の両端側が中央側より高く、前記便座は、外縁部の一部が前記台座の開口縁部と繋がっており、前記台座の側面を折って畳むことができるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、平たく折り畳むことにより、嵩を低くした状態で荷造りしたり、収納したり、携帯したりすることができる。また、折り畳んであるものを立体状に展開することにより、容易に便器を組み立てることができる。
そして、長手方向の両端側が中央側より高いので、端部が金隠し状をなし、幼児が腰掛けたときに、該端部を掴むことができ、良好な安定感及び安心感が得られる。
さらに、使用する場合は、便器穴の下側位置にビニール袋等の袋を配置し、該袋の開口縁側部分を前記便座に回し掛けることで、袋の開放状態を良好に維持することができ、便受け皿が不要になる。
【0010】
第2発明に係る可搬便器は、第1発明において、前記台座は、平面視で、対向する二長辺と、該二長辺の両端部夫々に連なり、鋭角をなす二短辺とを有する六角形状をなし、前記短辺に対応する部分の上縁が傾斜していることを特徴とする。
【0011】
本発明の可搬便器によれば、簡単な形で良好な強度が得られる。また、縁部が曲線ではなく、直線からなるので、折り畳んだ状態から、直線状の縁部を山折りにして立体をなすように組み立てればよく、容易に作製することができる。
【0012】
第3発明に係る可搬便器は、第1又は第2発明において、前記台座の一方側部分と、前記便座の対応する部分とが繋がっており、前記台座の他方側部分を分離可能に結合してあることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、可搬便器を一体化された展開図で表すことができ、シートに該展開図を作図して裁断し、分離している部分を糊付けして、便座と台座との境界部分を折り、台座の側面を台座の軸に平行な折り目で折ることで、容易に可搬便器を作製することができる。可搬便器が一体化されているので、製造コストも低減化することができる。
【0014】
第4発明に係る可搬便器は、第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記台座の側面には、前記便器穴の下側に配置されるべき袋の開口縁側部分を掛止することが可能な掛止片が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、便器穴の下側位置にビニール袋等の提手付の袋を配置し、該袋の開口縁側部分を前記便座に回し掛けたとき、前記開口縁側部分に設けられた提手を掛止片に掛止することができ、袋の開口縁側部分が便座と台座との間から抜け出ることを確実に防止することができる。
【0016】
第5発明に係る可搬便器は、第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記便器穴の縁部には、該便器穴の下側に配置されるべき袋を係止するための係止片が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、便器穴の下側位置にビニール袋等の提手付の袋を配置し、該袋の開口縁側部分を前記便座に回し掛けたとき、袋の側部を係止片に係止することができ、袋の開口縁側部分が便座と台座との間から抜け出ることを確実に防止することができる。
【0018】
第6発明に係る可搬便器は、第1乃至第5発明のいずれかにおいて、紙からなることを特徴とする。
【0019】
本発明の可搬便器によれば、軽量であり、製造コストが低い。また、紙は暖かみのある材料であるので、幼児がいやがらずに腰掛けることができる。そして、燃えるゴミとして廃棄することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、折り畳んだ状態で、嵩低く、収納及び携帯等をすることができ、組み立てが容易であり、簡単な構成で良好な安定感及び安心感が得られる。また、製造コストも低減化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る可搬便器を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る可搬便器を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る可搬便器を折り畳んだ状態を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る可搬便器を折り畳んだ状態を示す裏面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る可搬便器を折り畳んだ状態を示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る可搬便器の便器穴の下側に袋の底部を配置し、袋の側部を便器穴から引き出して便座及び台座に回し掛けたときの状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る可搬便器1を示す斜視図、図2は可搬便器1を示す分解斜視図、図3は可搬便器1を折り畳んだ状態を示す平面図、図4は可搬便器1を折り畳んだ状態を示す裏面図、図5は可搬便器1を折り畳んだ状態を示す側面図である。
【0023】
本実施の形態に係る可搬便器1は厚紙からなり、筒状をなし、平面視で、対向する二長辺と、該二長辺の両端部夫々に連なって鋭角をなす二短辺とを有する六角形状をなす台座2に、便器穴31が形成された便座3を、台座2の開口縁部に便座3の外縁部が繋がるように設けてなる。可搬便器1は、長手方向の両端部を台座2の軸に平行な折り目で折って、畳むように構成されている。
【0024】
台座2は、長手方向の両端側が中央側より高くなっている。すなわち、台座2の長手方向の一方側部分を側方から見た場合、矩形状をなす中央部21と、該中央部21に連設され、内側から外側に向かうに従って漸次的に高さが高くなる側部22,22とからなる(図3参照)。台座2の一方側部分の側部22と、これに隣り合う他方側部分の側部22とは繋がっている。
台座2の長手方向の両端部の下部には、略ハート型状に切り欠き23,23が設けられており、該切り欠き23,23の略ハート型の中央の垂下部分である掛止片24,24に、便器穴31の下側に、後述するビニール袋等の提手付の袋の底部を配置し、袋の側部を便器穴31から引き出して便座3及び台座2に回し掛けたときの前記提手が掛止されるように構成されている。
【0025】
便座3は、平面視で、外縁部が台座2の六角形に対応する形状をなし、内側に、長円形状をなす前記便器穴31が設けられている。便座3は、長手方向の中央側は同一幅を有する状態で長手方向に延び、端部の略三角形状の面は台座2の側部22の上縁部に沿って設けられているので、傾斜しており、金隠しを形成している。すなわち、便座3は一方側部分を側方から見た場合、中央部は台座2の中央部21の上縁部に沿うように同一幅で水平方向に延びており、便器穴31が形成されていない先端部は、折り目が台座2の側部22の下辺と平行になるように延びている(図3参照)。
そして、便座穴31の縁部の中央部には、舌片状をなし、前記提手付の袋の側部を係止するための係止片32,32が突設されている。
図4の裏面図に示すように、可搬便器1の裏側の中央部21と便座3との境界部分の両端部には、穴34,34が設けられており、該境界部分を折り込むときに、力を逃すようにし、しわ等の変形が生じるのが抑制されている。
【0026】
図2に示すように、可搬便器1は、台座2の長手方向の一方側部分の開口縁部と、便座3の対応する長手方向の一方側部分の外縁部とが繋がり、台座2の他方側部分の側面が周方向に分離し、すなわち、台座2の中央部21と側部22とが境界部分で分離している。可搬便器1は、この一体化された状態の展開図で表すことができる。側部22の中央部21から分離した部分には矩形状をなす糊代25が突設され、側部22,22の開口縁部には、舌片状の糊代26,26が突設されている。便座3の、中央部21の長辺と合わせる部分には、矩形状をなす糊代33が突設されている。
厚紙にこの展開図を作図して裁断し、糊代25、26、26、33に糊を付けて、分離している部分を貼り合わせ、台座2の両端部、中央部21と側部22との境界部分、及び便座3の台座2との境界部分を山折りにし、便座3の端部と水平部分との境界部分を谷折りにし、組み立てることにより容易に可搬便器1が作製され得る。山折り部分は曲線ではなく、直線からなるので、容易に確実に可搬便器1を立体状に形成することができる。ユーザが裁断からの組み立てを行うことも可能である。
【0027】
図6は、可搬便器1の便器穴31の下側に袋4の底部を配置し、袋4の側部を便器穴31から引き出して便座3及び台座2に回し掛けたときの状態を示す斜視図である。
図6に示すように、袋4の提手の端部41を台座2の掛止片24に掛止している。また、袋4の側部は便座3の係止片32の裏側に回し込んだ状態で係止片32に係止することができ、該係止片32で摩擦が生じることもあって、袋4は可搬便器1から抜け出るのが確実に防止されている。
【0028】
この状態で、幼児は可搬便器1に腰掛けて用を足すことになる。
本実施の形態の可搬便器1は、長手方向の両端側が中央側より高いので、端部が金隠し状をなし、幼児が腰掛けたときに前後にずれたり、倒れたりするのが防止され、安定感及び強度が良好である。紙は暖かみのある材料であるので、幼児がいやがらずに腰掛けることができる。
また、幼児が前記端部を掴むことができ、良好な安心感が付与される。
そして、便受け皿の代わりに袋4を用いるので、可搬便器1の製造コストを低減化することができ、便の始末が簡単である。
【0029】
本実施の形態の可搬便器1は、平たく折り畳むことができ、また、軽量であり、嵩を非常に低くした状態で荷造りしたり、収納したり、携帯したりすることができる。そして、折り畳んであるものを立体状に展開することにより、容易に便器を組み立てることができる。
立体状に展開した場合においてもコンパクトであるので、車中でも使用することができる。そして、便受け皿の代わりに使い捨ての袋4を用いるので、本実施の形態の可搬便器1は洗う必要がなく、いずれの場所でも使用することができる。
従って、災害時で、水が使用できない場合等においても、使用することができ、トイレに行くのがこわくなった幼児にも安心して使用され得る。
【0030】
なお、本実施の形態においては、可搬便器1が厚紙からなる場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、可搬便器1は段ボール製であってもよく、合成樹脂製であってもよい。可搬便器1が紙からなる場合、軽量であり、組み立てが容易である。可搬便器1が合成樹脂からなる場合、強度がより強くなり、水に濡れた場合にも拭き取って何度も使用することができる。
【0031】
また、本実施の形態においては、可搬便器1が一体化されている場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、例えば2部品からなり、この2部品を一体化した上で立体状に折って作製することにしてもよい。
そして、本実施の形態においては、可搬便器1が平面視で六角形状をなす場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、八角形状等の多角形状、又は長円状であってもよい。但し、長円状より多角形状に構成した方が直線状の折り目を折ることになるので折りやすい。そして、多角形状になす場合、六角形の方が、可搬便器の幅が狭くなるのでコンパクトにすることができ、好ましい。
さらに、本実施の形態においては、可搬便器1が、長手方向の両端部を台座2の軸に平行な折り目で折って、畳むように構成されている場合につき説明しているが、これに限定されず、可搬便器1の短手方向に折り畳むものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 可搬便器
2 台座
21 中央部
22 側部
23 切り欠き
24 掛止片
25、26、33 糊代
3 便座
31 便器穴
32 係止片
34 穴
4 袋
41 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口縁部が略長円状をなす筒状の台座に、便器穴が形成された便座を設けてなる可搬便器において、
前記台座は、長手方向の両端側が中央側より高く、
前記便座は、外縁部の一部が前記台座の開口縁部と繋がっており、
前記台座の側面を折って畳むことができるように構成されていることを特徴とする可搬便器。
【請求項2】
前記台座は、平面視で、対向する二長辺と、該二長辺の両端部夫々に連なり、鋭角をなす二短辺とを有する六角形状をなし、
前記短辺に対応する部分の上縁が傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の可搬便器。
【請求項3】
前記台座の一方側部分と、前記便座の対応する部分とが繋がっており、前記台座の他方側部分を分離可能に結合してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬便器。
【請求項4】
前記台座の側面には、前記便器穴の下側に配置されるべき袋の開口縁側部分を掛止することが可能な掛止片が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可搬便器。
【請求項5】
前記便器穴の縁部には、該便器穴の下側に配置されるべき袋を係止するための係止片が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の可搬便器。
【請求項6】
紙からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可搬便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−34729(P2013−34729A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174371(P2011−174371)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(596060594)株式会社サンコー (65)
【Fターム(参考)】