説明

可搬式温水システム

【課題】温水装置を洗いやすくする。また、可搬式ケースに対して温水装置を出し入れしやすくする。
【解決手段】側面10sに取り付けられた取っ手17を備える温水装置10と、温水装置10を収容する上下2分割式の可搬式ケース20と、を備える。可搬式ケース20は、箱体状の下ケース40と、下ケース40の上方側に配置される箱体状の上ケース30と、を備える。可搬式ケース20は、下ケース40に上ケース30を取り付けたときに温水装置10を内部に収容可能な空間が形成されるものである。また、下ケース40の上端40tの位置を、下ケース40内に配置された温水装置10の取っ手17の取り付け位置よりも下方側に設定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水装置および可搬式ケースを備える可搬式温水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1等に記載されているように、従来より温水装置(湯沸かし器)がある。また、温水装置には、災害現場等で使用しやすくするために、持ち運びができるように(可搬式に)したものがある(非特許文献1)。
【0003】
例えば、NBC災害(核、生物、及び化学物質による災害)の現場で、被災者の体をシャワーなどで洗う必要がある場合がある。また、地震等の天災が起こったときに、被災者がシャワーを浴びるための仮設のシャワー施設を設置する必要がある場合がある。このような場合に、温水装置を現場まで運び、温水装置へ水を供給し、温水装置から湯を出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−255753
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】"シンフォニアテクノロジー:可搬式電気温水装置(災害緊急時に持ち運び可能)"、[online]、[平成22年9月29日検索]、インターネット<URL:http://www.sinfo-t.jp/aerospace/hotwater.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載の温水装置には、温水装置の搬送を容易にするために車輪が設けられている。このような温水装置には、洗いにくいという問題が生じる可能性がある。すなわち、温水装置の使用後に、温水装置を清潔に保つために洗浄(水洗い)する場合がある。特にNBC災害の現場で温水装置を使用して、温水装置が汚染された場合、使用後には温水装置の全面を洗浄する必要がある場合がある。しかし、車輪が温水装置に設けられている場合、車輪の隙間(車輪本体と車輪本体の支持部との隙間など)を十分に洗えない(洗い残しが生じる)問題が生じる可能性がある。また、これらの部材の温水装置への取り付け部から温水装置内部に水が入り、温水装置が故障する可能性もある。このとき、汚染された水が温水装置内部に入ると、温水装置内部が汚染されてしまう可能性もある。
【0007】
また、温水装置の搬送を容易にするために、可搬式の箱等に温水装置を収容することも考えられる。しかしながら、単に可搬式の箱等に温水装置を収容するのみでは、この温水装置を出し入れしにくいという問題が生じる場合がある。災害現場では被災者の洗浄を一刻も早く行う必要がある場合があり、この場合に温水装置の出し入れに手間取ることが人命にかかわる問題となる場合もあるので、温水装置の出し入れのしにくさは極めて重大な問題となる可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、温水装置を洗いやすく、可搬式ケースに対して温水装置を出し入れしやすい、可搬式温水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
第1の発明の可搬式温水システムは、側面に取り付けられた取っ手を備える温水装置と、前記温水装置を収容する上下2分割式の可搬式ケースと、を備える。前記可搬式ケースは、箱体状の下ケースと、前記下ケースの上に取り付けられる箱体状の上ケースと、を備える。さらに、前記可搬式ケースは、前記下ケースに前記上ケースを取り付けたときに前記温水装置を内部に収容可能な空間が形成されるものである。前記可搬式ケースでは、前記下ケースの上端位置を、当該下ケース内に配置された前記温水装置の前記取っ手の取り付け位置よりも下方側に設定している。
【0010】
この可搬式温水システムは、温水装置を収容する可搬式ケースを備える。よって、温水装置に車輪を設けなくても、可搬式温水システムを容易に搬送できる。そして、温水装置に車輪を設けない場合、温水装置を洗いやすい。
また、この可搬式温水システムでは、下ケースの上端位置を、下ケース内に配置された温水装置の取っ手の取り付け位置よりも下方側に設定している。よって、下ケースに対して上ケースが取り外された状態で、温水装置の取っ手が下ケースで覆われることがない。よって、可搬式温水システムの使用者は、下ケースから温水装置を取り出すときに温水装置の取っ手を持ちやすく、また、下ケースに温水装置を収容するときに取っ手を持ったまま温水装置を収容できる。したがって、可搬式ケースに対して温水装置を出し入れしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】可搬式温水システムの斜視図である。
【図2】図1に示す可搬式温水システムを上から見た図である。
【図3】図1に示す可搬式温水システムを正面から見た図である。
【図4】図1に示す可搬式温水システムを横から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜図4を参照して可搬式温水システム1の実施形態を説明する。なお、図1では上ケース30を取り外した状態を示す。図2は、図1、3及び4に示す矢印F2の向きに可搬式温水システム1を見た図である。図3は、図1、2及び4に示す矢印F3の向きに可搬式温水システム1を見た図である。図4は、図1〜3に示す矢印F4の向きに可搬式温水システム1を見た図である。
【0013】
可搬式温水システム1は、災害(NBC災害や、地震等の天災など)の現場に運んで臨時のシャワー装置として用いるのに適している。可搬式温水システム1は、図1に示すように、温水装置10と、温水装置10を収容する可搬式ケース20とを備える。
【0014】
(温水装置)
温水装置10は、図1に示すように、供給された水を温めて温水を排出する電気温水装置(いわゆる瞬間湯沸かし器)である。温水装置10の重量は例えば約20kgであり、例えば2人で運搬される。温水装置10は防水構造となっており、全面を洗浄(水洗い)できる。温水装置10は車輪を備えていない。温水装置10は全体として直方体状である。なお、温水装置10の、上面10aおよび下面10b(図3参照)以外の面を側面10sという。側面10sは、前面10t、背面10u(図2参照)、右横面10v(同図参照)及び左横面10wで構成される。また、説明の便宜上、上面10aの長手方向(右横面10vと左横面10wとが対向する方向)を「横方向」といい、上面10aの長手方向に直交する方向(前面10tと背面10uとが対向する方向)を「前後方向」という。
温水装置10は、直方体状の温水装置本体11、温水装置本体11の前面10t及び背面10u(図2参照)に設けられた突起部15、温水装置本体11の前面10tに設けられたスイッチ類16、および、温水装置本体11の右横面10v(図2参照)及び左横面10wに取り付けられた取っ手17を備える。
【0015】
突起部15は、温水装置本体11の前面10t及び背面10u(図2参照)から突出する部分である。突起部15は、具体的には例えば、前面10tから突出するホースジョイント部15a及びダイヤル15b、および、図2及び図4に示す背面10uから突出するブレーカーのスイッチ15cである。
【0016】
ホースジョイント部15aは、図1に示すように、ホースを接続する部分であり、給水口及び排水口の2つを備える。ホースジョイント部15aは、前面10tの下端近傍(すなわち後述する下ケース40の前面20tにぶつけやすい位置)に取り付けられる。
【0017】
ダイヤル15bは、具体的には例えば、ホースジョイント部15a(の排水口)から排出される湯の温度を調整する温度調整ダイヤル、および、排出される湯の流量を調整する湯量(流量)調整ダイヤルである。
【0018】
ブレーカーのスイッチ15cは(図2及び図4参照)、防水性を有し、回して操作するスイッチである。ブレーカーのスイッチ15cは、温水装置10を後ろから見たとき、背面10uの例えば右上部分(前から見たとき、左上部分)に取り付けられる。なお、温水装置10は、図示しない電源コネクタを例えば背面10uに備える。
【0019】
スイッチ類16は、図1に示すように、温水装置10の電源類の入および切を指示する電源スイッチ、および、温水装置の状態等を表示する液晶表示部などを備える。なお、温水装置本体11から突出しているスイッチ等の部材があれば、そのスイッチ等の部材は「突起部」に含まれる。
【0020】
取っ手17は、温水装置10を持ち運びするときに手を掛けるための部材である。取っ手17は、温水装置10(温水装置本体11)の側面10sに取り付けられる。さらに詳しくは、取っ手17は、上面10aの長手方向に対向する面(右横面10v(図2参照)及び左横面10w)それぞれに1つずつ取り付けられる。これにより、上面10aの長手方向に直交する方向に対向する面(前面10t及び背面10u(図2参照))に取っ手17を取り付けた場合に比べ、温水装置10が揺れにくいので、温水装置10を持ち運びやすい。取っ手17は例えば、温水装置本体11の右横面10v(図2参照)及び左横面10wから温水装置本体11の内側へ凹む形状である。
【0021】
(可搬式ケース)
可搬式ケース20は、温水装置10を収容し、運ぶことができる容器(ケーシング)である。可搬式ケース20は、可搬式温水システム1の搬送時に温水装置10が受ける衝撃を緩和する、また、温水装置10の保管時に温水装置10への埃等の付着を妨げて温水装置10を清潔に保つ。可搬式ケース20の材質は、例えばアルミニウム合金、さらに詳しくは例えばジュラルミンである。なお、可搬式ケース20は全体として直方体状であり、上面20a及び下面20b(図3参照)以外の面を側面20sという。側面20sは、前面20t、背面20u(図2参照)、右横面20v(同図参照)、及び左横面20wで構成される。また、説明の便宜上、可搬式ケース20の「前後方向」および「横方向」は、可搬式ケース20に収容された温水装置10の「前後方向」および「横方向」と一致するものとする。
【0022】
また、可搬式ケース20は、上下2分割式のケースである。可搬式ケース20は、下ケース40と、下ケース40の上方側に配置される上ケース30と、下ケース40に取り付けられた取っ手51と、下ケース40および上ケース30に取り付けられた留め具52とを備える。また、可搬式ケース20は、下ケース40に上ケース30を取り付けたときに温水装置10を内部に収容可能な空間が形成されるものである。
【0023】
上ケース30は、箱体状であり、下ケース40の上に取り付けられる。上ケース30は、下ケース40に対して上方に取り外し可能(詳細は留め具52についての説明中で述べる)である。上ケース30は、可搬式ケース20におけるいわば蓋である。
【0024】
下ケース40は、箱体状であり、温水装置10およびホース等60(図1において二点鎖線で示す)を収容する容器である。下ケース40は、下ケース本体41と、下ケース本体41の内部に配置された仕切り部材42と、下ケース本体41の内部に配置された緩衝材43とを備える。
【0025】
下ケース本体41は、下ケース40のうち、直方体状の箱から上面(蓋)を取り外したような形状の部分である。
【0026】
仕切り部材42は、図4に示すように、下ケース本体41の内部を、温水装置収容部40aとホース等収容部40bとに仕切る部材(例えば板)である。図1に示すように、仕切り部材42により、ホース等60(温水装置10の周辺物)を可搬式ケース20内に収容でき、ホース等60を温水装置10と共に搬送及び保管できる。図4に示すように、仕切り部材42は、下ケース本体41の背面20uから所定の間隔(ホース等60(図1参照)が収容可能となる間隔)をあけて、背面20uと対向して配置される。仕切り部材42は、下ケース本体41の下面20b、右横面20v(図2参照)、及び左横面20w(同図参照)それぞれの内面に取り付け(固定)される。図1に示すように、仕切り部材42は例えば、仕切り部材42の上端が下ケース40の上端40tと揃うような高さに形成される。なお、ホース等60は、具体的には例えば、ホースジョイント部15aに接続する給水ホース及びシャワーホース、または、温水装置10と電源(図示なし)とを電気接続する電源ケーブル等である。
【0027】
緩衝材43は、図1に示すように、可搬式温水システム1の搬送時に温水装置10が受ける衝撃を緩和するクッションである。また、緩衝材43は、温水装置10の下ケース40に対する出し入れ時や搬送時に突起部15が下ケース40にぶつかることを防ぐ部材である。緩衝材43は、具体的には例えばウレタン材などである。
【0028】
この緩衝材43は、下ケース40の内面に4つ取り付けられる。さらに詳しくは、図2に示すように、緩衝材43は、温水装置収容部40aの四隅(可搬式温水システム1を上から見た四隅)に固定される。4つの緩衝材43は、前面20t及び左横面20wに取り付けられる緩衝材43a、前面20t及び右横面20vに取り付けられる緩衝材43b、仕切り部材42の前面42t及び右横面20vに取り付けられる緩衝材43c、および、仕切り部材42の前面42t及び左横面20wに取り付けられる緩衝材43dを備える。なお、下ケース40が仕切り部材42を備えない場合は、緩衝材43c及び緩衝材43dは、仕切り部材42の前面42tに取り付けられることに代えて、下ケース40の背面20uに取り付けられる。
【0029】
また、緩衝材43は、下ケース40内に配置された温水装置10の周囲に位置するように配置される。さらに詳しくは、4つの緩衝材43は、温水装置10の4つの角(温水装置10を上から見た4つの角。以下同じ)を支えるように、温水装置10の周囲に配置される。4つの緩衝材43は、温水装置10の4つの角に沿うように、上から見てL字状の切り欠きがそれぞれ形成される。このように4つの緩衝材43が温水装置10の周囲に配置されるので、搬送時に温水装置10が受ける衝撃を抑制できる。なお、このように衝撃を抑制しなければ、温水装置10の防水性を損なう、または、温水装置10が故障する等の問題が生じ得る。
【0030】
また、緩衝材43は、温水装置10の4つの角の周辺部のみを支える。すなわち、4つの緩衝材43どうしの間に隙間がある。特に、緩衝材43aと緩衝材43dとの間、および、緩衝材43bと緩衝材43cとの間に隙間がある。すなわち、緩衝材43は、温水装置10の右横面10vや左横面10wの一部にのみ接触し、全体には接触しない。このように、緩衝材43は温水装置10の4つの角の周辺部のみを支えるので、下ケース40に対し温水装置10を出し入れする時に生じる、温水装置10と緩衝材43との摩擦抵抗が抑制される。したがって、可搬式ケース20に対して温水装置10を出し入れしやすい。
【0031】
また、緩衝材43は、図3及び図4に示すように、下ケース本体41の下面20bから上端40tにわたって(下ケース本体41の高さ方向全体にわたって)配置される。これにより、緩衝材43は温水装置10を確実に支持できる。
【0032】
また、緩衝材43は、図1に示すように、温水装置10の突起部15と下ケース40の内面との間に隙間ができるように配置および形成される(具体的な構成は上述)(「下ケース40の内面」には仕切り部材42の前面42t(図2参照)を含む)。したがって、可搬式温水システム1の保管時および搬送時に、温水装置10の突起部15を保護できる。
また、上記隙間があるので、下ケース40に対して温水装置10を出し入れする時に、突起部15が下ケース40の内面にぶつからない。すなわち、同出し入れする時に、温水装置10は上下方向には移動可能であるが、前後方向にはほとんど移動できない(突起部15が下ケース40にぶつかるほど大きく前後方向に移動することはない)。したがって、突起部15が下ケース40にぶつかることを恐れて注意深く温水装置10を出し入れする必要がない。その結果、可搬式ケース20に対して温水装置10を出し入れしやすい。なお、突起部15を下ケース40にぶつけた場合、温水装置10が故障するおそれがあり、特にホースジョイント部15aを破損するとホースジョイント部15aから水が漏れる問題が生じる。
【0033】
車輪44は、図3に示すように、可搬式ケース20の(可搬式温水システム1の)搬送を容易にするための部材(キャリー)である。車輪44は、下ケース40の下面20bに取り付けられる。車輪44は、下面20bの例えば四隅(下から見た四隅)周辺に取り付けられる。
【0034】
取っ手51は、図1に示すように、可搬式ケース20を手で持つために可搬式ケース20の周囲(側面20s)に取り付けられた部材である。取っ手51は、温水装置10の上面10aの長手方向(すなわち横方向)に対向する側面20s(具体的には右横面20v(図2参照)および左横面20w)に取り付けられる。これにより、温水装置10の上面10aの長手方向に直交する方向に対向する側面20s(具体的には前面20tおよび背面20u(図2参照))に取っ手51が取り付けられた場合に比べ、可搬式温水システム1が揺れにくいので、可搬式温水システム1を運びやすい。
【0035】
(留め具)
留め具52は、図3に示すように、下ケース40及び上ケース30の外側側面20s(可搬式ケース20の周囲。図2参照)に取り付けられる。留め具52は、具体的にはラッチ(掛け金、留め金)であり、いわゆるパッチン錠(パチン錠)である。図2に示すように、留め具52は、可搬式ケース20の側面20sのうち、取っ手51が取り付けられていない面、具体的には前面20t及び背面20uに、例えば2つずつ(合計4つ)取り付けられる。
また、図1に示すように、留め具52は、下ケース40に対して上ケース30を留めること及び上方に取り外すことを可能にする。すなわち、上ケース30と下ケース40とを留め具52のみで留めること(固定すること)ができ、可搬式ケース20は例えばヒンジ等を備えない。ここで、上ケース30と下ケース40とがヒンジ等で接続されている場合等のように、下ケース40に対して上ケース30を上方に取り外せない場合は、温水装置10の出し入れのときに上ケース30が邪魔になる場合がある。具体的には、上ケース30をヒンジ等を中心として回動させて可搬式ケース20を開くと、上ケース30の重みで可搬式ケース20が不安定となり、倒れやすくなる。または、可搬式ケース20が倒れないように、注意深く温水装置10を出し入れする必要が生じる場合がある。一方で、下ケース40に対して上ケース30を上方に取り外せる場合は、温水装置10の出し入れのときに上ケース30が邪魔になることが抑制される。したがって、可搬式ケース20に対して温水装置10を出し入れしやすい。
【0036】
(下ケースの上端)
ここで、下ケース40の上端40tの位置(上端位置)について説明する。可搬式温水システム1は、上ケース30を下ケース40から取り外せば、温水装置10の取っ手17が出てくる(露出する)ように構成されている。すなわち、下ケース40の上端40tの位置は、下ケース40内に配置された温水装置10の取っ手17の取り付け位置よりも下方側に設定される。
さらに詳しくは、取っ手17の取り付け位置のうち少なくとも一部よりも、下ケース40の上端40tの位置が下方側に設定される(言い換えれば、温水装置10の取っ手17が下ケース40から一部でも露出すればよい)。下ケース40の上端40tの位置が、取っ手17の取り付け位置の下端よりも下方側の場合(取っ手17が下ケース40から完全に露出する場合)は、可搬式温水システム1の使用者は取っ手17を持ちやすい。
また、下ケース40内に配置された温水装置10の取っ手の近傍で、下ケース本体41の右横面20v(図2参照)及び左横面20wの上端40tの位置は、温水装置10の取っ手17の取り付け位置よりも下方側に設定される。なお、温水装置10の取っ手17の近傍以外の部分(例えば前面20tや背面20u(図2参照)など)では、下ケース40の上端が温水装置10の取っ手17よりも下方側に設定する必要はない。
【0037】
また、下ケース40の上端40tは、具体的には、可搬式ケース20の上下方向中央付近に位置する。すなわち、上ケース30の高さと下ケース40の高さはほぼ同じである。なお、下ケース40の上端40tが可搬式ケース20の下端付近にある場合、すなわち、下ケース40よりも上ケース30の高さが高い場合、上ケース30が大きく重くなる。この場合、下ケース40から上ケース30を引き上げるときに、上ケース30をまっすぐに上げにくい。その結果、温水装置10の出し入れの迅速性を損なう。よって、下ケース40の上端40tは、可搬式ケース20の上下方向中央付近に位置することが好ましい。
【0038】
(可搬式温水システムの使用方法)
可搬式温水システム1は、例えば次のように使用される。
通常時には、温水装置10およびホース等60を可搬式ケース20に収容し、可搬式温水システム1を保管する。
【0039】
災害時には、可搬式温水システム1は次のように使用される。
まず、可搬式温水システム1を災害現場の近くまで運ぶ。次に、留め具52を外す。次に、下ケース40に対して上ケース30を上方に完全に取り外し、上ケース30は下ケース40の例えば近傍などに置く。このとき、温水装置10の取っ手17が下ケース40内に隠れることなく露出される。次に、取っ手17を用いて温水装置10を上方に持ち上げ、温水装置10を下ケース40から取り出す。次に、災害現場の温水装置10の使用場所まで、温水装置10を持ち上げつつ運ぶ。このとき、可搬式ケース20は運ばなくてもよい。
そして、温水装置10の使用後、温水装置10を洗浄(水洗い)する。このとき、可搬式ケース20は汚れて(汚染されて)いなければ洗浄しなくてもよい。次に、温水装置10を下ケース40に収容する。このとき、温水装置10の取っ手17を持ったまま、温水装置10を下ケース40に収容できる。次に、上ケース30を下ケース40の上方に配置し、留め具52で留める。次に、可搬式温水システム1を、次の現場や保管場所などに運ぶ。
【0040】
(本実施形態の可搬式温水システム1の特徴)
この可搬式温水システム1は、図1に示すように、温水装置10を収容する可搬式ケース20を備える。よって、温水装置10に車輪を設けなくても(取り付けなくても)、可搬式温水システム1を容易に搬送できる。そして、温水装置10に車輪を設けない場合、温水装置10を洗いやすい。
さらに詳しくは、車輪が温水装置10に設けられて(取り付けられて)いる場合、車輪の隙間(車輪本体と車輪本体の支持部との隙間など)を十分に洗えない(洗い残しが生じる)問題が生じる可能性がある。また、車輪の温水装置10への取り付け部から温水装置10内部に水が入り、温水装置10が故障する可能性もある。このとき、汚染された水が温水装置10内部に入ると、温水装置10内部が汚染されてしまう可能性もある。一方で本発明では、車輪を温水装置10に取り付けない場合、上記問題を解決できる。
【0041】
また、この可搬式温水システム1では、下ケース40の上端40tの位置を、下ケース40内に配置された温水装置10の取っ手17の取り付け位置よりも下方側に設定している。よって、下ケース40に対して上ケース30が取り外された状態で、温水装置10の取っ手17が下ケース40で覆われることがない。よって、可搬式温水システム1の使用者(オペレータ等)は、下ケース40から温水装置10を取り出すときに温水装置10の取っ手17を持ちやすく、また、下ケース40に温水装置10を収容するときに取っ手17を持ったまま温水装置10を収容できる。したがって、可搬式ケース20に対して温水装置10を出し入れしやすい。
【0042】
(変形例)
上記の可搬式温水システム1は様々に変形できる。例えば、上記の温水装置10は電気式であるが、ガス式などに変形してもよい。また例えば、可搬式ケース20は仕切り部材42を1つ備えるが、仕切り部材42を備えなくてもよく、仕切り部材42を2以上備えてもよい。また例えば、可搬式ケース20には車輪44を取り付けたが、搬送を容易にするために車輪以外の部材を取り付けてもよい。また例えば、可搬式ケース20は、留め具52を備えヒンジを備えないが、ヒンジを備える構成としてもよい。その他実施形態に記載の部材の数や形状は適宜変更や変形できる。
【符号の説明】
【0043】
1 可搬式温水システム
10 温水装置
10s 側面
17 取っ手
20 可搬式ケース
20s 側面
30 上ケース
40 下ケース
40t 上端
44 車輪
52 留め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に取り付けられた取っ手を備える温水装置と、
前記温水装置を収容する上下2分割式の可搬式ケースと、を備え、
前記可搬式ケースは、
箱体状の下ケースと、
前記下ケースの上に取り付けられる箱体状の上ケースと、を備え、
前記下ケースに前記上ケースを取り付けたときに前記温水装置を内部に収容可能な空間が形成されるものであり、
前記下ケースの上端位置を、当該下ケース内に配置された前記温水装置の前記取っ手の取り付け位置よりも下方側に設定している、可搬式温水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−78064(P2012−78064A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226085(P2010−226085)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】