説明

可搬式瞬間電気湯沸給湯装置

【課題】天災や人災等の災害時に、家屋等に電気温水器が据え付けられていない場合や大型車両が進入できない場合であっても瞬時に温水を供給することが可能であり、より効果的な救命救護活動及び避難住民の支援活動を効率良く行うことができる瞬間電気湯沸給湯装置を提供する。
【解決手段】人間が一人で引っ張る、押す、持ち上げるといった動作で持ち運ぶことが可能な可搬型のケースCと、ケースC内に収容された且つ外部から供給された水を、外部から電力の供給を受けて加熱可能な瞬間電気湯沸給湯装置本体3とを備えた可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害現場や医療現場等で活用可能な瞬間電気湯沸給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天災や人災(核物質、生物剤、化学剤に起因するNBC災害を含む)等の災害が発生した現場において、治療活動や避難生活(被災生活)のために水ではなく温水(湯)が必要とされる場面が多々ある。
【0003】
そこで、各家庭に据え付けている電気温水器を利用して、災害時にも温水を確保できるようにすべく、ヒートポンプ給湯器等の貯湯式温水器を用いて、感震器等の災害検知手段で地震や火事などの災害の発生を検知した場合には、貯湯式温水器における貯湯タンク内の湯温を低温且つ均一になるように制御する給湯システムが考えられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−255753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の給湯システムは、各家庭にこの給湯システムに適用可能な貯湯温水器を据え付けていることが大前提となり、また、貯湯タンク内の温水を、当該貯湯温水器を据え付けている家庭以外の避難場所や救助場所に搬送する場合には多大な手間と時間が掛かり、緊急時の使用が困難である。そもそも、このような災害時用給湯システムに用いられる貯湯温水器自体が災害によって破損・故障した場合には、役に立たない。なお、特開2006−153378号公報等には、大型地震に対しても充分な支持強度が得られるよう案出された電気温水器の設置構造及び設置方法が開示されているものの、構造の複雑化及び設置作業の煩雑化を招来し、実用性に欠ける。また、貯湯タンクを備えた貯湯温水器であれば、貯湯タンク内の湯が冷めた場合には再度沸かし直す作業が必要となり、使用せずにタンク内で放置し続けた水は菌の発生等により使用に耐え得ない状態になり、廃棄せざるを得ない。
【0006】
また、災害発生後に災害現場に貯湯温水器を搬入して設置する態様も考えられるが、貯湯温水器自体が大型且つ重量であるため、一刻も早い温水の供給が要求される災害現場にこのような貯湯温水器を搬入して設置することは現実的ではない。
【0007】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、ライフライン崩壊等の災害時に、家屋等に電気温水器が据え付けられていない場合であっても早急に温水を供給することが可能であり、より効果的な救命救護活動及び避難住民の支援活動を迅速且つ効率良く行うことが可能な可搬式瞬間電気湯沸給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置は、可搬型のケースと、ケース内に収容され且つ外部から供給された水を、外部から電力の供給を受けて電気的に加熱し、外部に温水を吐出可能な瞬間電気湯沸給湯装置本体とを備えていることを特徴としている。ここで、「可搬型のケース」とは、人間が一人で引っ張る、押す、持ち上げるといった動作で持ち運ぶことができる重量、大きさのケースを意味する。
【0009】
このように、瞬間電気湯沸給湯装置本体を人手で持ち運び可能な可搬型のケース内に収容することにより、装置全体のコンパクト化を実現し、家屋等に電気温水器が据え付けられていない災害現場や、消防車両や救急車両、特に大型車両が進入し難い災害現場にも容易に持ち込むことができ、救命救護活動及び被災住民の支援活動を迅速且つ効率良く行うことができる。また、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置では、外部から供給された水を瞬間電気湯沸給湯装置本体によって瞬間加熱するように構成しているため、貯湯タンクが不要となり、装置全体のコンパクト化及び軽量化を図ることができるとともに、貯湯タンクを備えた態様であれば生じ得る不具合、すなわち、貯湯タンク内の湯が冷めた場合の再加熱処理、或いは使用せずにタンク内で放置し続けた水の廃棄処理が要求されるという不具合を解消することができる。また、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置はコンパクトであるため、消防、警察、自衛隊、公共施設等の各施設や家庭においても好適に保管・収納しておくことが可能である。また、災害時のみならず、例えば病院や介護施設等でも、患者や介護対象者のベッド脇などで温水を使うことができれば非常に便利であるが、現状では、給湯室から温水を運んだり、患者等をシャワー室や風呂へ運ぶというような多大な手間が掛かる。このような問題も、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置を利用すれば、解決することができる。なお、本発明の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置は、給水車や給水栓、水道の蛇口等から水の供給を受けたり、電気工作車や発電機、建物の電気コンセント等から電気の供給を受ければ使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明は、使用者自身の手で直接持ち運び可能な瞬間電気湯沸給湯装置を提供するという斬新且つ有用な着想に基づくものものであり、家屋等に電気温水器が据え付けられていない災害現場や大型車両の進入が困難な災害現場であっても瞬時に温水を作って被災者等に供給することができ、より効果的な救命救護活動及び避難住民に対する支援活動を迅速且つ効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る使用可能状態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置の全体外観図。
【図2】同実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置の携行方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、図1及び図2に示すように、ケース本体1及び蓋2を有する可搬型のケースCと、ケースC内に収容された瞬間電気湯沸給湯装置本体3とを備えたものである。なお、図1は使用可能状態(A)にある可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの全体外観図であり、図2は可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの携行方法を模式的に示す図である。以下の説明では、使用可能状態(A)において瞬間電気湯沸給湯装置本体3が露出する側を前方とする。
【0014】
ケース本体1は、前面に形成した開口部1Kを通じて前方に開放可能な内部空間を有する概略直方体状をなし、底面部(下向き面)にキャスタ11を設けている。本実施形態では、底面部のうち奥行き方向中央部よりも背面部側に寄った位置に左右一対のキャスタ11を設けている。各キャスタ11の回動を規制するロック状態と回動を許容するアンロック状態との間で切替可能なロック機構を各キャスタ11に付帯させてもよい。また、可搬式瞬間電気湯沸給湯装置X全体が後方に所定角度傾斜した場合に他の部分よりも優先して地面等に接し、可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの転倒を防止する転動防止部を起立姿勢(垂直ないし略垂直姿勢)における各キャスタ11の回動を規制しない位置に設けることもできる(図示省略)。ケース本体1の背面部には、上方に引き出し自在な取手部12を装着している。また、ケース本体1の側面部に使用者が握ることが可能なグリップ部13を設けている。
【0015】
本実施形態では、ケース本体1の開口部1Kを開閉可能に被覆する蓋2を、ケース本体1の側面部における前縁部にヒンジHで連結した扉21(いわゆる片開きタイプの扉21)によって構成している。本実施形態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、扉21によってケース本体1の前方開口部1Kを閉じた不使用状態(B)において、扉21の前面部とケース本体1の前面(次に説明する瞬間電気湯沸給湯装置本体3の前面部3F)とに間に、例えばシャワー34やその他の備品等を収容できる備品収容空間が形成されるように扉21の形状を設定している。また、扉21の底面部(下向き面)に、他の領域よりも下方に突出した接地部22を設けている。本実施形態では、扉21の底面部に左右一対の接地部22を設けている。
【0016】
本実施形態では、蓋2(扉21)の高さ寸法をケース本体1の高さ寸法と同一ないし略同一に設定し、蓋2(扉21)の奥行き寸法をケース本体1の奥行き寸法よりも小さく設定している。なお、不使用状態(B)において蓋2(扉21)が不意に開くことを防止するロック手段を構成するロック部材L1、L2をケース本体1や蓋2に設けている。また、ケース本体1や蓋2(扉21)の素材としては、軽量性や強度に優れた軽合金が好適であるが、他の素材から形成したケース本体1や蓋2を適用してもよい。
【0017】
瞬間電気湯沸給湯装置本体3は、ケース本体1の内部空間に緊密ないし略緊密に収容可能な外形寸法を有し、内部に、ヒータ及び給水経路を設け(図示省略)、前面部3Fに、給水経路の始端となる給水用コネクタ31、電源コネクタ32及び給水経路の終端となる吐出口33を設け、給水用コネクタ31から給水経路内に送られる水を、ヒータの加熱作用によって瞬間的に加熱し、使用者が設定した適宜温度の温水を吐出口33から吐出可能なものである。本実施形態では給水用コネクタ31及び電源コネクタ32を前面部3Fの下方側領域に所定距離離間させて設け、吐出口33を前面部3Fの上方側領域に設けている。この瞬間電気湯沸給湯装置本体3は、適宜の固定手段によりケース本体1内に一体的に取り付けられている。本実施形態では、先端部にシャワー34を取り付けたホース35を吐出口33に接続しており、前面部3Fにシャワー34を保持するシャワーホルダ36を設けている。さらに、瞬間電気湯沸給湯装置本体3の前面部3Fには、電源スイッチ37と、温度調節部(摘み部)38とを設けている。
【0018】
次に、この可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの使用方法及び作用について説明する。
【0019】
不使用時は、扉21によってケース本体1の前面開口部1Kを閉じた不使用状態(B)にしておく。そして、可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを起立姿勢にすると、扉21に設けた接地部22が地面等に接触することによりキャスタ11の転動を規制し、これらキャスタ11と接地部22とによって支持され垂直ないし略垂直に自立した姿勢となる。
【0020】
このような可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを被災現場等へ携行する際は、図2に示すように、取手部12を上方へ引き出し、この取手部12を握って可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを後方へ傾斜させる。すると、接地部22が地面や床等から離間して、この状態で取手部12を引っ張ることによってキャスタ11が回転可能な状態になり、使用者は可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを被災現場等へ携行することができる。
【0021】
このように、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、使用者が取手部12を握って進行方向へ引っ張ることにより、キャスタ11を回転させながら所望の場所へ携行することが可能であるため、車両等が進入できない狭い場所にも携行者自身の比較的軽い操作力(引っ張る力)で携行することができる。なお、上述したグリップ部13を掴んだ状態で可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを持ち運んだり、可搬式瞬間電気湯沸給湯装置X全体を抱き抱えるようにして携行することもできる。
【0022】
そして、この可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを必要とする被災現場等に持ち運んだ後は、扉21を開けてケース本体1の前面開口部1Kを開放した使用可能状態(A)にする(図1参照)。この使用可能状態(A)において、瞬間電気湯沸給湯装置本体3の前面3Fが露出するとともに、扉21に設けた接地部22が地面等に接して、これら接地部22とキャスタ11とにより安定した支持状態を維持することができる。本実施形態の可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xでは、不使用状態(B)と使用可能状態(A)との切り替え時に、扉21をヒンジHの軸回りに最大180度ないし略180度回転可能に構成している。
【0023】
引き続き、給水用コネクタ31に、例えば水槽付ポンプ車又はタンク車のホース4を接続するとともに、電源コネクタ32に、例えば救助工作車又は電源車からの電源コード5を接続する。次いで、電源スイッチ37をオフ状態からオン状態に切り替える操作を行い、温度調節部38を操作して適宜の温度に設定する。以上の操作によって、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、給水用コネクタ31から給水経路内に供給された水を瞬間電気湯沸給湯装置本体3内においてヒータにより瞬間加熱するとともに、この加熱した熱水と、直接或いは給水源から送られてきた水とを吐出口33近傍に設けた混合栓39で混合することにより設定温度に調節し、この温度調節した温水をシャワー34(具体的にはシャワー34の噴射口)から放出する。
【0024】
このように、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、専用の搬送車等を利用することなく、携行者(使用者)自身の手によって一人で簡単に移動させることが可能であるため、搬送車両、特に大型車両が進入不可能な場所にも容易に持ち運ぶことができ、吐出口33(シャワー34)から放出する温水を使用して要救護者や被災者に対する迅速な処置を行うことができる。また、本実施形態では、蓋2(扉21)によってケース2の前面開口部1Kを閉止した不使用状態(B)のまま使用者自身の手によって可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xを被災現場等の所望の場所まで移動させた後、蓋2(扉21)によるケース本体1の前面開口部1Kの被覆状態を解除する(蓋2を開けて使用可能状態(A)にする)と、蓋2の接地部22がケース本体1のキャスタ11と共に地面等に接することで、この可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xの安定した自立姿勢を維持できるように構成しているため、例えば災害現場等において適宜の貯湯温水器を建物や地面等に固定する作業が不要になり、緊急を要する救命救護活動及び被災住民に対する支援活動を迅速に開始することができる。
【0025】
また、本実施形態に係る可搬式瞬間電気湯沸給湯装置Xは、外部から供給された水を瞬間電気湯沸給湯装置本体3の内部に設けたヒータによって瞬間加熱するように構成しているため、貯湯タンクが不要であり、装置全体のコンパクト化及び軽量化を図ることができるとともに、貯湯タンクを備えた態様であれば生じ得る不具合、すなわち、貯湯タンク内の湯が冷めた場合の再加熱処理、或いは使用せずにタンク内で放置し続けた水の廃棄処理が要求されるという不具合を解消することができる。
【0026】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本装置は被災現場に限らず、病院施設や介護施設、養護施設等においても好適に用いることができる。
【0027】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…ケース本体
2(21)…蓋(扉)
3…瞬間電気湯沸給湯装置本体
C…ケース
X…可搬式瞬間電気湯沸給湯装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型のケースと、
当該ケース内に収容され且つ外部から供給された水を、外部から電力の供給を受けて電気的に加熱し、外部に温水を吐出可能な瞬間電気湯沸給湯装置本体とを具備していることを特徴とする可搬式瞬間電気湯沸給湯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−75233(P2011−75233A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228957(P2009−228957)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【出願人】(507228220)あーるえす株式会社 (2)
【Fターム(参考)】