説明

可撓性無機電解質燃料電池構造

【課題】非常に高度の加熱サイクルおよび/または熱サイクルに耐えることができる固体電解質燃料電池を提供する。
【解決手段】自動車の動力発生装置、例えば自動車の動力装置および断続性の高温燃料電池作動のみを必要とするその他の動力システムのために液体燃料(ディーゼルおよびガソリン)と空気を使用する高温燃料電池応用に対し、進歩性のある機械的および熱的な衝撃の抵抗性を与える非平面無機電解質膜を有する燃料電池構造25。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に輸送に使用する動力の発生に有効な無機電解質膜を使用した燃料電池、特に自動車動力装置および間欠作動の動力装置用の液体燃料(ディーゼルおよびガソリン)を使用する高温の燃料電池である。特に、本発明の燃料電池は機械的衝撃および熱衝撃に耐える非平面型電解質/電極構造を有するように設計されている。
【背景技術】
【0002】
水素を使用するポリマー電解質燃料電池は公知であり、且つ自動車のエネルギーソースとして使用することが提案されてきた。これらの燃料電池は水素しか消費できないので、液体燃料を使用するためには燃料を水素と一酸化炭素/二酸化炭素に作りかえ且つ非常に低いレベルでもこの系に悪影響を与えてしまう、一酸化炭素を酸化またはスクラビングすることが必要である。
【0003】
固体酸化物燃料電池は公知であるが、これは繰り返し熱サイクルされない動力源に限定されてきた。燃料電池は、自動車の動力装置に対し有効ならしめるには、非常に迅速に、なるべく5分以下、さらに2分以下、なおさらに30秒以下で操作できることが必要である。高温度固体酸化物型燃料電池を自動車の中で終始高温に保つことは禁じられている。したがって、自動車の使用中は殆どいつでも燃料電池を加熱する必要を生じるので、この燃料電池はおそらく10、000ないし20、000回程度の加熱サイクルに耐える必要がある。無機電解質固体酸化物型燃料電池は現在まで、本明細書で考えられているほど十分な熱衝撃抵抗性および熱サイクル抵抗性を有するように設計されていなかった。
【0004】
例えば共に譲渡された特許文献1には可撓性の薄いセラミックについて記載されているが、その中のある組成物は燃料電池の有効な電解質であろう。最近、特許文献1はこのような組成物を使用して熱衝撃抵抗性の燃料電池を作ることを説明している。これらの文献には、これらの組成物とこれらの燃料電池の自動車動力装置への適用はどこにも言及されていない。特許文献2に薄い波形セラミック構造が流体加熱器として開示されている。
【0005】
上記の議論は、電解質としてジルコニアを使用すること、((LaSr)MnO3 )およびその他の膨張の合致した導電性ペロブスカイト構造が空気側電極として使用されること、並びにジルコニア/ニッケル複合材が燃料側電極として使用されることが公知であることを紹介するためのものである。さらに、金属、金属間化合物およびLaCrO3 が相互接続構造に使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,089,455号
【特許文献2】米国特許第5,519,191号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それにもかかわらず、進歩した固体酸化物燃料電池、特に非常に高度の加熱サイクルおよび/または熱サイクルに耐えることができる燃料電池の開発が引き続き要望されている。これが本発明の目的である。簡単に言えば、本発明は酸化剤貯槽と、燃料貯槽と、該酸化剤貯槽と燃料貯槽との間に介在する非平面板構造の電解質と、を有する固体電解質燃料電池に関する。
【0008】
ある態様において、本発明は電解質が薄く、可撓性があり、予備燒結された多結晶セラミックシートである固体電解質燃料電池に関する。曲状電解質シートの境界形状は限定されるものでなく、円形、卵形、楕円形、五角形、六角形、七角形、八角形などのいずれでもよい。
【0009】
別の態様によれば、この固体電解質燃料電池は中心供給構造のものである。
【0010】
さらに別の態様によれば、本発明は反復式および間欠式にオン・オフ使用され、室温から1000℃までの作動温度で5分未満ないし1時間の範囲で100回乃至4000回の熱サイクルに耐えることができる耐熱衝撃性を有する固体電解質燃料電池に関する。
【0011】
なお別の態様では、本発明は室温から1000℃までの作動温度までの4000回の熱サイクルに耐えることができる固体電解質燃料電池に関する。
【0012】
次に、この明細書に記載されている用語について説明する。
【0013】
加熱サイクル(heating cycle )とは燃料電池が室温その他の任意の開始温度から800℃、1000℃またはそれ以上の作動温度まで繰り返しおよび/または間欠的に加熱され、次に室温または開始温度まで冷却されることを意味している。
【0014】
非平面(non-planar)とは電解質構造が一平面上に存在しないことを意味している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は特に自動車、トラック、バス、機関車や船などの電気動力用の無機電解質燃料電池である。燃料電池は、急速に作動温度まで加熱されることができ且つ数千回の加熱サイクルに耐えることができる耐熱衝撃性および熱サイクル抵抗性を有する無機電解質燃料電池である。さらに、本発明の燃料電池はディーゼル、ガソリン、エタノールやメタノールなどの液体燃料を使用することができる。他の態様によれば、本発明は燃料電池構造、特に燃料電池のための非平面の電解質構造に関する。このような輸送動力用燃料電池の利点としては、良好な燃料効率(良好なマイル当たりのガス料金)、低公害発生、軽量、無振動、低摩擦および低摩耗、および低廉原料および可撓性セラミック箔構造による製造の容易性が挙げられる。
【0016】
本発明の燃料電池は電池部品に作用する熱応力を減少または制限させることができるマニホルド構造で作られている。これらの構造の重要な部品は、(1)可撓性非平面電解質の半組立体(sub-assembly)、(2)或るものは多孔質および/または有孔質である、燃料と酸化剤のマニホルド管、(3)金属、サーメット、金属被覆セラミックまたは導電性セラミックからなる随意の導電性集電グリッド、メッシュ、フェルトまたは繊維マットである。
【0017】
本発明の燃料電池の重要点は、マニホルド管の横断面を、その応力を減少させることができ且つクラックの発生や伝播などを制限できるように、選ぶことである。マニホルド管は性質上円筒形、または円形や楕円形の横断面を有している。なるべくは、マニホルド管は円形であり、および/または尖ったエッジすなわち縁のない丸み形状を有する。例えば、マニホルド管は丸い角を有する四角形断面であってもよい。尖った角を持ったマニホルド管は、この尖った角が熱サイクル中に応力集中を起こし易いので問題となる。
【0018】
本発明の別の重要な点は、非平面、例えば円錐形や滑らかな曲面を有する電解質シート構造を使用していることである。電解質シートそのものは、シートベース面上に隆起した少なくとも1個の応力除去区域を有する非平面形を備えている。この記載を説明するために、このシートベース面(sheet base plane)とは、シートにほぼ平行で且つシートの最大直線寸法(largest linear dimension)の直線ベースライン(straight baseline) を有する基準面として定義する。適当に応力を除去する区画として、シートベース面上にシートを隆起させ、このシート隆起の高さがシートの最大寸法に対し少なくとも約1:600 であり、但し約1:3 以上にならないようにすべきである。好ましくは、この比率は約1:6 以下である。米国特許第5,089,455号に記載されているような、適当な曲率を付加されている親密に結合された陽極/電解質/陰極の積層体からなる可撓性の半組立体が好まれている。また、この半組立体は格子またはひも状または多孔性導電層の形状をした集電器を有する。
【0019】
好ましくは、電解質は、イットリアドープトジルコニア、カルシアドープトジルコニア;イットリアおよび/またはガドリニアおよび/またはイッテルビアおよび/またはエルビアおよび他の三価金属の、特に希土類の酸化物がドープされたセリアのようなアリオバリエント(aliovalient)酸化物がドープされた希土類酸化物;マグネシア、カルシア、ストロンチアおよび他の二価金属酸化物のようなアリオバリエント酸化物がドープされた、イットリア、ガドリニア、ネオジミア、イッテルビアのような三価希土類酸化物;マグネシア、カルシアおよび他の二価金属酸化物のようなアリオバリエント酸化物がドープされた、アルミン酸ランタンおよび没食子酸ランタンまたはネオジムのアルミン酸塩および没食子酸塩のような混合された希土類の没食子酸塩およびアルミン酸塩等のイオン導電体から選択される。陽極と陰極の一体層は適当な電気化学反応を起こすため電解質の表面に電気接触と3相境界(ガス/電解質/触媒粒子)を提供する。
【0020】
特に有益な実施の形態において、円形の可撓性半組立体を使用することにより作動時に熱的または機械的応力に対し優秀な抵抗性を有するマニホルド式燃料電池が製作される。陽極/電解質/陰極からなる半組立体の曲りを制限しようとするその他のマニホルド構造と違って、本発明の構造は半組立体が曲がるか、または撓むことにより内部応力を除くことができるようにしてある。このことは特に温度勾配に起因する応力の場合に顕著である。このような応力は半組立体の座屈作用により緩和されることができる。座屈作用は半組立体の全内部応力を減少させ、これにより破壊の可能性が減少する。
【0021】
マニホルド管すなわち電解質に接触している管は、その膨張性が電解質とぴたりと緊密に整合するおよび/またはマニホルド管が有する多孔性または有孔性構造のために順応性である材料のものであることが好まれる。融通性を一層良くするため、電解質がマニホルドやその他の管に接触している部分に波形が作られている。ジルコニア系の電解質に関して、このようなマニホルド材料としては、以下に制限されないが、ジルコニア、ジルコニアチタニア合金、アルカリ稀土類シリケート系のガラスセラミック、ニッケルおよびニッケルジルコニアサーメット、ステンレススチール(特にANSI400シリーズ)、ニッケル合金などが挙げられる。これらの材料を多孔性にする一つの方法として、これらの材料の粉末を固めたものを部分的に燒結する方法がある。
【0022】
陽極または陰極から電流を集める手段(集電器)は半組立体の一体部分である。また、集電器は分離状の非一体的導電性ウール、フェルト、または繊維マットを使用してもよい。相当厚い(100μm以上)の集電器を使用する場合、半組立体が湾曲することにより応力を逃がすことができるよう柔順な材料にすべきである。
【0023】
集電器は燃料電池の環境の酸化作用または還元作用に適合できるように選ばれるべきである。陰極に接触している集電器の部品は酸化環境において安定な導電体を含むべきである。このような導電体の例として、銀、金、白金、パラジウムおよびこれらの合金やサーメットを含む貴金属がある。集電器のその他の有益な材料として、ある種のニッケル合金のような酸化耐性金属と、クロム、マンガン、コバルト、ニッケルなどのドープト稀土類酸化物のような導電性セラミックと、銅およびチタンのドープトジルコニウム酸化物のようなドープトジルコニアがある。
【0024】
燃料と接触している集電器の部品は還元性環境において安定な導電体、例えばニッケルを含む導電性金属、ニッケルジルコニアサーメット、鉄合金、クロム合金などのようなニッケルサーメットと、クロム、マンガン、コバルト、ニッケルなどのドープト稀土類酸化物のような導電性セラミックと、銅およびチタンのドープトジルコニウム酸化物のようなドープトジルコニアから選ばれる。
【0025】
マニホルドは隣接の半組立体が二つの可能な相対的配向の中の一方を有するように準備される。その配向の中の一方において、一方の半組立体の陽極が次の最も近い半組立体の陰極に接近するよう同様に配向させられている(陽極/電解質/陰極−陽極/電解質/陰極)。この最初の配向は「A/E/C−A/E/C」繰り返しマニホルドと称することができ、隣接の半組立体では陽極/電解質/陰極が同じ配向でマニホルドを繰り返している。この配向で隣接の電池は、一方の半組立体の陰極を隣の半組立体の陽極に接続することにより、容易に直列に電気接続される。このような構成は、全組立体の電圧がすべての半組立体の電圧の合計値になる点で、電池と同じである。A/E/C−A/E/Cの繰り返し配向において、陽極に接触している電池を陰極に接触している酸化剤から分離するため、それぞれの半組立体の間に非多孔性金属やセラミックの相互接続が必要となる。このような燃料電池発電機の繰り返し装置はセパレータ/マニホルド管区画を有する集電器/陽極/電解質/陰極/マニホルド管区画を有する集電器となる。この基本装置が繰り返されてマニホルドを形成する。
【0026】
集電器がウールや繊維のマットで構成されていれば、マニホルド管区画からガスを各電極に拡散させる。セパレータが導電性を有すれば、作動時に、1個の電池の陽極から、電解質と陰極と1個の集電器とセパレータと別の集電器とを通じて、隣接の電池の陽極に至る完全回路が作られる。セパレータが導電性を持っていなけれれば、電気回路を完成させるために分離装置を設けなければならない。電気回路を完成させるため分離装置が設けられていれば、組立体は直列または並列に接続される。
【0027】
第2の配向において、近接の半組立体は向かい合うように配置され、すなわち一方の半組立体の陽極が次に最も近い半組立体の陽極に接近したA/E/C−C/E/A(陽極/電解質/陰極−陰極/電解質/陽極)となる。A/E/C−C/E/Aマニホルドにおいて、この構造は近接の半組立体の間で燃料と酸化剤を分離する必要がないので、セパレータは随意のものである。A/E/C−C/E/A構造は近接の陽極間または近接の陰極間を絶縁する必要がある。このことは非導電性セパレータまたは非導電性の柔軟な多孔性層、マットまたはフェルトにより行われる。このマニホルド構造において電流移動の分離装置が必要である。集電器および導電用相互接続器を通じて連結されている間、ある外部装置を通じて電気接続が行われる。個々の電池は並列にも直列にも接続されることができる。
【0028】
電池を並列に接続する場合、電送用母線を設け、これにすべての陽極やすべての陰極を接続することができる。電池を直列に接続する場合、一方の電池の陽極と別の電池(通常は隣接の電池)の陰極との間に相互接続器を設けなければならない。上記の電気接続法を組み合わせることにより多種類のマニホルド構造を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】側部供給、放射流動型燃料電池構造の略図
【図2】単一積層素電池を示す中心供給・放射流動型燃料電池構造の斜視図
【図3】単一積層素電池を示す中心供給・放射流動型燃料電池構造の断面図
【図4】電極へガスを配送するための有孔セラミックリングと、燃料と空気の混合を防止するバッフルを有する入れ子式マニホルド管の使用状態を示す中央内部マニホルド型固体酸化物燃料電池(SOFC)積層体リピートユニット「repeat unit 」の斜視図
【図5】燃料および空気の配送と、集電器としての繊維マットの使用を示す図4のリピートユニットの断面図
【図6】層を分離し且つ燃料および空気を配送する多孔性スペーサおよび非多孔性スペーサの使用を示すリピートユニットの分解図
【図7】層を分離し且つ燃料および空気を配送する多孔性スペーサおよび非多孔性スペーサの使用を示し且つ集電器としての繊維マットの使用を示す図6のリピートユニットの断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を、特に図面を参照して以下に説明する。
【0031】
図1は側部供給型燃料電池10の構造の略図である。電池の相互接続器15の間に配置された柔軟な導電体12、14は薄い電極/電解質/電極の3層20を機械的負荷および熱的負荷により破壊させずに撓ませる。燃料管16より燃料が供給される燃料側で、導電体12は螺旋形に曲げられた薄い金属箔またはニッケルフェルトである。空気管18より空気が供給される空気側で、導電体14は色々な幾何学的形状をした耐酸化性金属または導電性酸化物のどちらでもよく、フェルトまたは可撓性の薄い螺旋形体のいずれも可能である。
【0032】
燃料電池の好適な構造が図2(斜視図)と図3(断面図)に単一電池の積層体で示されている。両図は非平面の電極/電解質/電極箔(電解質半組立体)30および柔軟な可撓性の導電体32、34(図3)を有する中心供給型燃料電池25構造の略図である。図2は中心供給式および/または内部供給式のマニホルド型固体電解質燃料電池(SOFC)積層体リピートユニット「repeat unit 」の拡大略図であり、電極へガスを配送するため有孔セラミック管38の中に有孔金属マニホルド管35、36を使用し、燃料と空気の混合を防止するバッフルリング(buffle ring )40を示している。図3は図2のリピートユニットの断面図であり、燃料と空気の供給を示し且つ集電器としての繊維状マット32、34を示す。この実施の形態の燃料電池は酸化剤と燃料がそれぞれ内部を通過する中心マニホルド管区画を有している。電解質半組立体30はマニホルド管区画に積層されている。最も外側のセラミック管区画38はガス分散体として作動する多孔性リングまたは有孔リング55を有する。このセラミック管の中に2本のガス配送マニホルド管35、36があり、1本は酸化剤(空気)用であり、他の1本は燃料用であり、それぞれ適当な間隔で孔58、59を持っている。
【0033】
酸化剤と燃料は配送マニホルド管から出て、有孔リング55の孔を通り、セパレータフェルト、ウール、繊維マット32、34を通り、陽極62または陰極64と接触する。酸化剤と燃料は環体(マニホルド管とセラミック管の間)内で混合しないよう金属またはセラミックのガス密封用バッフル円板67により防止されている。バッフル円板67は電解質半組立体および金属相互接続器74と同じ間隔で配置されている。セラミック管38の中でガス配送管35、36はなるべくセパレータ円板に使用されているような耐酸化性金属で作られる。最終的に、薄くて可撓性のある電解質半組立体(30)は、好ましくはガス通過中心孔のある、部分的または全体的にイットリアで安定化されたジルコニア(TZPまたはYSZ)の燒結シートから作られた、陽極/電解質/陰極のサンドイッチ構造、62/63/64からなる。
【0034】
薄い燒結電解質層は米国特許第5,089,455号に開示されているように作ることができる。電極は十分に緻密な電解質円板の両側にスラリー塗布されるかまたはスクリーン印刷される。次に両電極は空気中で焼成され、多孔性であるが粘着性のある電子導通層になる。陰極は例えばランタンマンガナイトのような導電性ペロブスカイト・セラミックであり、また陽極層はイットリア安定化ジルコニアとニッケルの酸化物粉末から作られる。陽極は燃料内で作動しているとき多孔性で導電性のNiジルコニアのサーメットに還元される。
【0035】
燃料電池の作動は、燃料と空気をマニホルドに供給することにより行なわれ、燃料電池は、電解質が必要な電力を引き出すのに必要な速度で電極での反応を続けさせるのに十分に導電性であるように、十分に高温にされる。電流は、最初と最後の金属板にリード線を取り付けることにより、燃料電池から引き出される。
【0036】
燃料電池の別の実施の形態はセラミック管38の中に空気と燃料の同中心のマニホルド管82、84を使用している。図4に空気と燃料の同中心マニホルド管の斜視図、図5に同断面図を示す。両図に示すように環状スペースの中の有孔セラミックリング55とガス密封用バッフル円板67は図2、3に示すものと類似である。しかしながら、同中心の構造において、陰極72と近接の金属相互接続器74の間は内部空気管82が燃料管84から空気側管82aを経て供給しなければならない。したがって、燃料マニホルド管の中で空気と燃料が混合しないようにするためガス密封用溶接シール85が必要となる。
【0037】
本発明のなお別の実施の形態において、中心マニホルド管が2本以上のマニホルド管と取り替えられている。この実施の形態の分解図を図6に示し、同断面図を図7に示す。これら両図に示すように、多孔性スペーサ95および非多孔性スペーサ96が半組立体に取り付けられ、且つ金属相互接続板102、104に接続され、この両者から電解質93の陽極90側と陰極97側に接続されている。多孔性スペーサ95が各半組立体の陰極側の中央空気通路に使用され、また、燃料通路94が非多孔性スペーサ96を有し、空気のみがこのレベルに沿って拡散されるようになっている。半組立体の陽極側において、燃料通路が多孔性スペーサを有し、空気通路が非多孔性スペーサを有している。電解質半組立体100と金属相互接続板102、104との間の分離距離はスペーサの高さにより決定される。図7の断面図は燃料電池発電機の基本リピートユニット(金属円板/スペーサ/半組立体/スペーサ)を示し、これは次にマニホルドを形成するように繰り返し連結される。金属円板/半組立体/金属円板はそれぞれマニホルド層を作り上げる。
【0038】
上述の各実施の形態は別の配列を有することができる。例えば、近接する半組立体の陽極が互いに対面するように配列することができる。電流は多孔性集電器を使用して集められるが、この配列では追加の母線が設けられる。
【0039】
半組立体と各金属相互接続板との間の導電性ウールやフェルトにより、該半組立体と金属相互接続板層との分離を低応力手段で可能にすることができる。同時にフェルトはガスの各電極への拡散を可能にし、また、電気を集めるため各電極を金属相互接続板に接続することや半組立体電池を電気的に接続することを可能にする。陽極フェルト106はNiで作るが、陰極側フェルト108はAg−Pt被覆の繊維マットで作る。
【0040】
比較例において、厚さ30μm、直径3インチ(76.2mm)の平板型電解質膜で、直径1/2インチ(12.7mm)の中心孔を有し、外縁で800℃、内縁で25℃(厚さ10μm空気極、厚さ10μm燃料極)において、室温の稠密ジルコニア−3モル%イットリアの弾性率(200GPa)、および稠密ジルコニアの熱膨張係数(25〜1000℃で110×10-7/℃)を有する限定エレメント熱−応力モデルを調製した。図2に示すような中心供給型燃料電池構造の急速加熱(始動)時に起こる温度勾配および応力の両方を擬装するため、中心に1.27cm(0.5インチ)の孔を有する直径7.62cm(3インチ)の円板の縁から中心に向かって800℃の安定した熱勾配を加えた。このモデルにおける応力は完全に対称であり、曲りは発生しなかった。この熱勾配はこのモデルに曲りを発生せずに、その0.5インチの中心孔の内面に240Kpsi(1.65GPa)の応力を発生する。この応力はセラミック材料の殆どすべてを粉砕し且つこの形式の応力は急速加熱状態で曲がることができない扁平なセラミック電解質の使用を不可能にする。この応力は厚い平板型固体電解質燃料電池が経験することを示している。
【0041】
本発明の燃料電池構造の効果を別の実施形態で示すために、コーン高さ0.254cm(0.1インチ)、厚さ30μm、直径7.62cm(3インチ)、中心孔の直径1.27cm(0.5インチ)、外縁で800℃、内縁で25℃、の同じ30μm厚さの膜の非平板型構造(非常に浅いコーン形状)の限定エレメント熱−応力モデルを準備した。最大応力は平面型モデルで得られたものより40倍低い、すなわち6Kps(41MPa)以下であった。殆どのセラミック電解質材料はこのような応力に耐えることができる。この応力モデルは薄くて可撓性のある電解質で達成できる応力が著しく低下したことを示している。
【0042】
表1はコーン高さの関数としての最高応力を記載している。コーン高さ1.27cm(0.5インチ)において最高の引っ張り応力は6.89MPa(1000psi)以下である。このようなコーン形状の電極/電解質/電極の3層を高温度で塑性変形するか、またはコーン形状に燒結することにより作ることができる。
【表1】

【0043】
表2は中心に0.508cm(0.2インチ)の孔を有する直径20.32cm(8インチ)の波形円板の限定エレメントモデルを縁から中心へ800℃ないし25℃の安定した熱勾配を加えたときの最大応力を記載している。円板は室温で稠密ジルコニア3モル%イットリアの弾性率を有する30μm厚さであった。波形の高さは2.54mm(0.1インチ)または5.08cm(0.2インチ)であり、波形は中心孔の周囲に同心円になり且つ均等に中心から縁へ隔置されていた。
【表2】

【0044】
これらの限定エレメントモデルは、柔軟な電流接続器を通じて自由に曲がり且つ撓むことができる薄い可撓性の非平面型電解質が熱衝撃状態において非常に小さな応力を受けることができ且つ厚い平板型電解質では不可能な急速加熱にも生き耐えられることを証明している。
【0045】
次の実施例で引用する円板、電解質および特に電解質/電極の箔は扁平でなく、すべての実施例の円板が高さ200μm以上のこぶや波型を有する、すなわち直径対高さの比率が600:1以上である。
【0046】
1) ジルコニア3モル%イットリアの凡そ15μm厚さの円板の縁をプロパンガストーチの火炎の中に置いた。試料の縁は1000℃以上、なるべくは1400℃に、約3秒以下の時間で加熱された。この試料は破壊も割れもなかった。この処理が15回以上繰り返された。この簡単な実験は、十分な強度を有する薄いセラミック電解質は可撓性があれば熱衝撃に対して非常に抵抗性であることを証明している。ジルコニア3モル%イットリア、ジルコニア4モル%イットリアおよびジルコニア3モル%イットリア+20重量%アルミナの約5μm乃至約35μm厚さの100本の試料が類似の処理に耐えた。
【0047】
2) 両側におよそ10μmの厚さの多孔質白金電極を有するジルコニア3モル%イットリアのおよそ15μm厚さの円板の縁が実施例1と同じプロパンガストーチの中に置かれた。この燃料電池の電極/電解質/電極の3層は12回以上の厳しい熱サイクルの後でも破壊や割れを生じなかった。このことは、3層は弾力的に曲がり且つ変形できれば厳しい熱衝撃に耐えることができることを証明している。
【0048】
3) 約13ないし15μmの厚さと1インチ+9/16インチ(39.7mm)の直径のジルコニア3モル%イットリア円板が電熱器の上に置かれ且つ約150〜200℃乃至約700℃に4000回以上の熱サイクルを受けた。この実験に、ヒータとして曲がりくねった電気回路を有する金属ハニカム状電熱触媒(コーニング社のEHC)を使用した。これは、全サイクル時間約4分に対し、加熱に約1分を要し、1分間約700℃に保ち、次に2分間以上冷却した。試料は破壊も割れもなかった。光学顕微鏡は水蒸気/応力の下落の兆候を示さなかった。
【0049】
4) 厚さ約30μmのジルコニア3モル%イットリアの長さ7/16インチ(11.1mm)×幅3/8インチ(9.5mm)の矩形片が、0.3μmのダイヤモンドペースト仕上げに鏡面研磨された。この試料は実施例3と同一の熱サイクルを受けたが、ニューヨーク州のコーニングでの11月末の湿度で3700サイクルより僅かに多くの熱サイクルを受けた。この試料はNormaskyの干渉顕微鏡(Nikon Microphot-FX)を含む光学顕微鏡により検査され、且つ表面粗さを検査された。表面粗さは発見されず、このことはこれらの材料がこれらの条件下で水蒸気腐食が存在しないことを示している。
【0050】
5) 約3mm幅、約25μm厚さの5個のアルミニウム箔が、約3〜4mmの直径で約3cmの長さに螺旋形に巻かれた。この螺旋は金属コイルの上に近接ターンの間が0.5〜1mmの間隔になるように広げられた。これら5個の螺旋は2個の3cm×3cmジルコニア膜の間に約25μm厚さで接着された。両シートは屈曲され且つ螺旋も僅かに曲げられる。室温で曲げ実験を行うと、この電解質箔はアルミニウム箔の螺旋が付着されていても破砕せずに変形して数mm以上曲げられることが分かった。
【0051】
6) カンタール(Kanthal)A−1耐熱性合金の幅約2mm、厚さ50μmの3片が、直径約3〜4mmで長さ約3cmの螺旋形に巻かれていた。螺旋は伸ばされて、そのコイルの近接ターンの間に0.5乃至1mmの隙間ができた。3本のコイルは2枚の約25μm厚さの3cm×3cmジルコニア膜の間に二重接着テープで接着された。2個のジルコニア箔は屈曲されることができ且つカンタール金属箔も屈曲する。試料は熱テストがされなかった。しかしながら、室温で曲げ実験を行うと、この電解質箔はカンタール箔螺旋が付着されていても破砕せずに変形して数mm以上曲げられることが分かった。
【0052】
7) この実施形態において、電解質と電極の結合体は各電解質と電極の結合体シート上に高さ約3mmのドームを有する細いドーム形を形成した。(La,Sr)MnO3電極は片側に、2枚の厚さ約25μmのジルコニア3モル%イットリア電解質箔のそれぞれを、扁平な8角形側部から扁平な8角形側部まで約7cmの大きさの8角形に、テープキャスト(tape cast )された。7個のカンタールA−1螺旋が上記のように作られた。螺旋は(La,Sr)MnO3の中に浸され且つ被覆された2個の電解質の間に置かれた。電解質と電極の結合体の上に小さな重錘が乗せられ且つ電極構造は空気中1200℃で2時間焼成された。電極構造は焼成後は多孔性、厚さ25μm以下の導電性となった。電解質/電極の箔の縁は僅かに曲がっているので、熱膨張試験は完全でなかった。電流接続コイル構造は電極層に接着した。この2層の燃料電池構造は僅かに曲がって接着故障が無かった。この構造は一方の8角形電極層から第二の8角形電極層に導電性があった。この構造は250℃から700℃まで700回、3分加熱と、3分強制空気(ファン)冷却の熱サイクルを行った。電解質/電極の箔は損傷のないことがわかった。しかし、導電コイルと箔との間の燒結接着剤の或るものは破壊した。1400回の熱サイクルの後で、大多数の螺旋接着剤は破壊したが、電解質/電極の箔は損傷しなかった。テスト後の検査により、ごく微量の(La,Sr)MnO3が螺旋の上面に残留し、一方箔の底部は非常に沢山の材料を有し且つ厚く接着されていた。コイルが8角形の上に乗せられたとき材料が流動した。
【0053】
上記実施形態は可撓性の電流接続が完成していれば、薄い可撓性の電極/電解質の2層または3層は厳しい熱衝撃状態に耐えることができる。このような厳しい熱衝撃状態は固体酸化物燃料電池を自動車に使用するときに起こる。
【0054】
本発明は特定の実施例について説明されてきたが、本発明の範囲および思想から逸脱することなく多くの訂正および変更を導入できることは当業者に明らかであるから上記の実施例を限定する意図がない。
【符号の説明】
【0055】
10 側部供給型燃料電池
12、14 導電体
15 相互接続器
16 燃料管
18 空気管
25 燃料電池
30 電解質半組立体
32、34 導電体または繊維マット
35、36 金属マニホルド管
38 有孔セラミック管
40 バッフルリング
55 有孔リング
58、59 孔
62 陽極
64 陰極
67 ガス密封用バッフル円板
74 金属相互接続器
82 内部空気管
82a 空気側管
84 燃料管
85 ガス密封用溶接シール
95 多孔性スペーサ
96 非多孔性スペーサ
100 電解質半組立体
102、104 金属相互接続板陽極フェルト
106 陽極側フェルト
108 陰極側フェルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤貯槽と、燃料貯槽と、該酸化剤貯槽と燃料貯槽の間に介在する電解質とを含み、前記電解質が非平面で、可撓性で、滑らかな曲面を有し、非円柱状であることを特徴とする固体電解質燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−103304(P2011−103304A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72(P2011−72)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【分割の表示】特願2000−533919(P2000−533919)の分割
【原出願日】平成11年2月9日(1999.2.9)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】