説明

可燃性ガス濃縮方法

【課題】可燃性ガスの濃縮を行う際に、均圧工程に要する時間を延長せずに、吸着材の劣化、粉化を抑制する事。
【解決手段】均圧路L4で接続された第一吸着塔U1における吸着工程の後で、かつ第二吸着塔U2における脱着工程の後に、均圧路L4に設けた均圧路開閉弁V4を開成した状態で均圧工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスを供給するガス流入部、排ガスを流出するガス流出部、製品ガスを回収するガス回収部を備え、内部に可燃性ガスを選択的に吸着する吸着材を充填した吸着塔を複数備え、前記吸着塔間を接続する均圧路を設けるとともに、前記均圧路に、均圧路を開閉する均圧路開閉弁を設け、
(1)ガス流入部から前記吸着塔へ原料ガスを供給し、原料ガス中の可燃性ガスを前記吸着材に吸着させるとともに、前記ガス流出部から前記吸着材に対する非吸着ガスを流出させる吸着工程、
(2)前記吸着材に吸着した可燃性ガスを前記吸着材から脱着させて、前記ガス回収部より外部に取り出す脱着工程、
を交互に実行するとともに、
(3)前記均圧路で接続された一対の吸着塔間で、一方の吸着塔における前記吸着工程の後で、かつ他方の吸着塔における前記脱着工程の後に、前記均圧路に設けた均圧路開閉弁を開成した状態で均圧工程を行う
可燃性ガス濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に可燃性ガスは爆発する可能性が存在し、原料ガス等に可燃性ガスが所定の濃度範囲で含まれている場合に爆発する可能性があるものとされている。この爆発する可能性のある濃度範囲は、可燃性ガスの種類によって異なるが、一般的には、可燃性ガスが5〜20Vol%程度含まれる範囲とされている。そして、メタンガスの場合でも、同様の濃度範囲で爆発の可能性があるものとされている。
【0003】
また、可燃性ガスの爆発の可能性は、可燃性ガスの濃度に加え、原料ガス等に酸素ガスが所定の濃度で含まれる場合に爆発する可能性があるものとされている。この濃度範囲は、酸素ガスが10Vol%以上含まれる範囲とされている。
【0004】
したがって、可燃性ガスを含有するガスを取り扱う際には、上記可燃性ガスおよび酸素ガスの濃度範囲に充分な配慮をする必要がある。特に、可燃性ガス若しくは酸素ガスが爆発する可能性がある濃度範囲付近にあるガスである場合には、当該可燃性ガス若しくは酸素ガスの濃度を調整して、上記濃度範囲に入らないようにすることが重要である。
【0005】
ここで、濃縮後のメタンガスは比較的高濃度(メタン濃度60Vol%程度)であり爆発濃度範囲外となっているものの、炭鉱ガス(メタン濃度44Vol%程度、酸素ガス濃度12Vol%程度)からメタンガスをある程度取り出した後のオフガスには、メタンガスが比較的低濃度(メタン濃度44Vol%以下)で含まれており、さらに酸素ガスも所定濃度(酸素ガス濃度12Vol%程度以上)含まれているため、メタンガス及び酸素ガスの何れもが爆発濃度範囲内に入る可能性があり、当該排ガスが爆発するおそれが生じ問題である。
【0006】
さて、可燃性ガスを選択的に吸着する吸着材が収納された吸着塔を適宜使用して濃縮を行う場合、通常、吸着工程では、ガス流入部から原料ガスを流入させ、ガス流入部とは反対側に設けられているガス流出部から吸着後の残余のガスを流出させる。この吸着工程における吸着管理は、先に説明した爆発限界との関係から、外部に放出されるオフガスにおける可燃性ガスの濃度に注目して管理することとなる。例えば、吸着塔内に収納される吸着材の量との関係から、オフガスとして放出される可燃性ガスの濃度が爆発限界以下に収まる吸着時間を予め求めておき、この吸着時間を上限として吸着を行わせることで、良好な操業を維持することとなる。ここで、吸着工程を経た吸着塔内部は、供給される原料ガスによって、加圧された状態にあるとともに、吸着材には主に可燃性ガスが吸着され、吸着塔内の残余の空間には不純物として可燃性ガス以外のガス(主に空気)を含んだガスが存在することになる。
【0007】
また、このように吸着塔で吸着された可燃性ガスは、脱着工程でガス回収路より取り出されることになるが、脱着工程初期に前記吸着材から脱着されるガスは、不純物として可燃性ガス以外のガスを含んでいるため、純度の高い可燃性ガスを得るためには、このガスを製品ガスとしては回収せず、できれば、さらに精製して、可燃性ガスを取り出することにより製品ガスの純度を高めるとともに、可燃性ガスの回収率を高めることが好ましい。
【0008】
さて、各吸着塔内の圧力変動について考えると、吸着工程を終えた吸着塔内は高圧状態にある一方、脱着工程を終えた吸着塔内は可燃性ガスを排出しきった状態なので、きわめて減圧度の高い状態になっている。また、脱着工程を経た吸着塔において次に吸着工程を行う場合には、上記減圧度の高い状態から徐々に圧力を高めつつ可燃性ガスを吸着可能な状態を整え、現ガス中の可燃性ガスを吸着する動作に移行することになる。
【0009】
そこで、吸着塔間を接続する均圧路を設けるとともに、前記均圧路に、均圧路を開閉する均圧路開閉弁を設けてあれば、前記吸着工程を終えた吸着塔(以下第一吸着塔とする)が、脱着工程をはじめる際に、吸着材から脱着するガス(以下初期脱離ガスと称する)を、吸着工程を始める吸着塔(以下第二吸着塔とする)に供給することができる。すると、前記初期脱離ガス中に含まれる可燃性ガスを、第二吸着塔に供給して、後続の吸着工程に供することができるため、前記第一吸着塔では、後続の脱着工程において回収される可燃性ガス濃度を高めることができるとともに、前記第2吸着塔では、吸着工程に移行するための昇圧も兼ねて前記初期脱離ガスから可燃性ガスを回収する(いわゆる均圧工程をする)ことができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−220004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、このような均圧工程を行うにあたって、前記第一吸着塔から第二吸着塔に供給される初期脱離ガスは、最大限加圧された第一吸着塔から、最も減圧された第二吸着塔に流入するため、均圧工程初期には加圧された初期脱離ガスが瞬間的に高速で、前記第2吸着塔に流入することになる。このような均圧工程は、可燃性ガスの精製、濃縮のプロセスとしては、製品ガスの回収が行われていない、いわば生産性を低下させる工程となるので、短時間で最大の効果をあげることが求められるため、比較的短時間で、初期脱離ガスを移送する傾向が強く、尚更前記第一吸着塔から第二吸着塔に供給される初期脱離ガスの流速を高めることとなっている。
【0012】
そのため、吸着塔に流入した初期脱離ガスの流れが、前記第二吸着塔内の吸着材に供給されることになり、前記吸着材が流動化して劣化、粉化する原因となる。
【0013】
これを防止するために、前記均圧路を細くするなどの抵抗を設けることにより、前記均圧路を通過する初期脱離ガスの流速を制限することも考えられるが、均圧路のガス流速を低下させると、均圧工程に要する時間が長くなるため、製品ガスの生産性が低下するとして、好ましくないと考えられている。
【0014】
本発明の目的は、上記実情に鑑み、可燃性ガスの濃縮を行う際に、均圧工程に要する時間を延長せずに、前記吸着材の劣化、粉化を抑制する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
〔構成〕
上記課題を解決するための本発明の特徴構成は、原料ガスを供給するガス流入部、排ガスを流出するガス流出部、製品ガスを回収するガス回収部を備え、内部に可燃性ガスを選択的に吸着する吸着材を充填した吸着塔を複数備え、前記吸着塔間を接続する均圧路を設けるとともに、前記均圧路に、均圧路を開閉する均圧路開閉弁を設け、
(1)ガス流入部から前記吸着塔へ原料ガスを供給し、原料ガス中の可燃性ガスを前記吸着材に吸着させるとともに、前記ガス流出部から前記吸着材に対する非吸着ガスを流出させる吸着工程、
(2)前記吸着材に吸着した可燃性ガスを前記吸着材から脱着させて、前記ガス回収部より外部に取り出す脱着工程、
を交互に実行するとともに、
(3)前記均圧路で接続された一対の吸着塔間で、一方の吸着塔(以下第一吸着塔という)における前記吸着工程の後で、かつ他方の吸着塔(以下第二吸着塔という)における前記脱着工程の後に、前記均圧路に設けた均圧路開閉弁を開成した状態で均圧工程を行う
可燃性ガス濃縮方法であって、
前記第二吸着塔における均圧工程の開始時に、前記第二吸着塔に前記均圧路の接続位置とは異なる位置から前記第二吸着塔にガス(以下緩衝ガスと称する)を供給する予備均圧工程を行う点にある。
尚、前記均圧路と別の流路は、前記第二吸着塔の前記均圧路の接続位置に対向する位置に設けることが好ましい。
【0016】
〔作用効果〕
つまり、上記構成によれば、吸着前記均圧路で接続された第一、第二吸着塔間で、第一吸着塔における前記吸着工程の後で、かつ第二吸着塔における前記脱着工程の後に、前記均圧路に設けた均圧路開閉弁を開成した状態で均圧工程を行う(第一吸着塔における均圧工程にあわせて第二吸着塔で均圧工程の初期に予備均圧工程を行う)ことができ、効率よく可燃性ガス濃縮を行うことができる。
【0017】
また、第二吸着塔では、均圧工程の開始時の初期脱離ガスの急激な流入が抑制されると、その後第二吸着塔に流入する初期脱離ガスは、比較的整流された状態で前記第二吸着塔に流入することになり、前記吸着材を流動化される要因は少なく、均圧工程の期間中にわたって前記緩衝ガスを供給し続けなければならない状況とはならない。また、本願では予備均圧工程の実行により、前記緩衝ガスの流入は、均圧工程の開始時に限って行われるので、緩衝ガスの第二吸着塔への投入は少量ですみ、その後の吸着工程を阻害することがない。
【0018】
ここで、前記第二吸着塔の前記均圧路の接続位置に対向する位置から前記第二吸着塔にガス供給する予備均圧工程を行うと、供給されるガスは、前記均圧工程で第二吸着塔に流入するガス(以下初期脱離ガスという)とは逆方向から前記第二吸着塔に流入することになる。
即ち、前記均圧工程で前記第一吸着塔における初期脱離ガスは、前記第二吸着塔に流入する際に、前記緩衝ガスと対向する方向で前記第二吸着塔に流入することになる。すると、前記初期脱離ガスの流れと、前記緩衝ガスとの流れは、互いに打ち消しあって、前記第二吸着塔に流入する初期脱離ガスの流速は、減速される。そのため、前記初期脱離ガスの流れが、前記吸着材に高速で衝突し、乱流を起こしつつ、前記吸着材を流動化して劣化、粉化を促進するという現象が緩和される。
【0019】
したがって、吸着材が劣化、粉化する要因を抑制することができたので、前記吸着材の長寿命化、可燃性ガス濃縮装置の安定運転に寄与することができた。
【0020】
〔構成〕
尚、前記均圧路を、前記吸着塔下部に接続するとともに、前記ガス流出部を前記吸着塔上部に設け、前記ガス流出部から前記吸着塔内へガスを供給するガス供給部を設けることが好ましい。
【0021】
〔作用効果〕
すなわち、均圧路と、前記ガス供給部とは、対向する位置に設けることにより互いの流れが相殺されて、吸着材を流動化して劣化、粉化を促進するという現象を緩和するのであるが、均圧路とガス供給路とを、吸着塔の上下両側に分配配置すると、前記初期脱離ガスと前記緩衝ガスとが直接的に衝突して、前記吸着塔内に乱流を形成するような状況は発生しにくく、尚一層前記吸着材を流動化する要因を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】可燃性ガス濃縮装置の概略図
【図2】可燃性ガス濃縮方法の各工程(a)〜(d)を示す構成図
【図3】可燃性ガス濃縮方法の各工程(e)〜(h)を示す構成図
【図4】可燃性ガス濃縮方法のタイムサイクルを示す工程図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の可燃性ガス濃縮方法に用いる可燃性ガス濃縮装置(以下PSA装置と略称する)を説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0024】
本発明のPSA装置は、図1に示すように、内部にメタン吸着材a1,a2が夫々充填された第一、第二吸着塔U1、U2と、吸着塔U1、U2に繋がる各ガス路L1〜L5に設けられる開閉弁V1〜V5等を開閉制御する制御装置Cを備えて構成されている。そして、吸着塔U1、U2には、ガス路として、吸着塔U1、U2に原料ガスを供給する原料ガス供給路L1と、前記原料ガス供給路L1からガスが供給される状態で吸着材a1,a2での可燃性ガスの吸着を終えた後、残余のガス(オフガス)を外部に放出するオフガス放出路L2とを備えている。さらに、第一、第二吸着塔U1、U2から回収される濃縮ガスである製品ガスを製品タンクT3に回収するための製品ガス回収路L3が備えられている。また、第一、第二吸着塔U1,U2間には後述の均圧工程を行うための均圧路L4を設け、前記オフガス放出路L2には、緩衝ガスとしての空気を前記第一、第二吸着塔U1,U2に供給するためのエア供給路L5を合流接続して設けてある。
【0025】
製品ガスは回収路L3に備えられる真空ポンプP3が働くことにより、第一、第二吸着塔U1、U2から吸着材a1,a2に吸着された可燃性ガスを加圧状態(製品タンクT3内は正圧となる)で製品タンクT3に回収可能となっている。そして、この製品タンクT3から製品ガス供給路L4を介して第一、第二吸着塔U1、U2へ供給する場合、供給される製品ガスの可燃性ガスの濃度は高いものとなる。
【0026】
<原料ガス>
本願における原料ガスは、可燃性ガスと空気とを含むガスであるが、例えばメタンガスと空気とを含む炭鉱ガスとすることもできる。また、可燃性ガスとしては、可燃性の気体であれば特に制限されないが、例えば炭鉱ガスに含まれるメタンガスとすることもできる。なお、炭鉱ガスとは炭鉱から発生するガスであり、条件により異なるが、炭鉱ガス中には、メタンガス20〜40Vol%程度、空気(主として窒素ガス、酸素ガスが含まれる)60〜80Vol%程度が含まれている。
【0027】
前記原料ガスは、例えば鉱山から回収される鉱山ガスをその圧力状態で、吸着塔U1、U2内に送り込み可能となっている。
【0028】
<吸着塔>
前記第一、第二吸着塔U1、U2は、筒状容器内部に吸着材a1,a2を充填して構成されている。この第一、第二吸着塔U1、U2には、それぞれ、ガス流入部1、ガス流出部2、ガス回収部3、均圧部4を設けて、それぞれにガス流入、流出させるガス路L1〜L5等を接続して構成される。
【0029】
さらに具体的には、前記ガス流入部1には、原料ガス供給路L1、ガス流出部2にはオフガス放出路L2およびエア供給路L5、ガス回収部3には製品ガス回収路L3が接続され、前記均圧部4には均圧路L4が接続される。
【0030】
また、原料ガス供給路L1には、原料ガスの供給ポンプP1および開閉弁V1,V10,V11,V12が設けられ、オフガス放出路L2には、開閉弁V2,V20,V21,V22およびオフガスタンクT2にオフガスを貯留するための圧入ポンプP2が設けられ、製品ガス回収路L3には、開閉弁V31,V32および真空ポンプP3が設けられる。また、前記均圧路L4には、均圧路開閉弁V4を設けてある。さらに、エア供給路L5には、開閉弁V5を設けてあるとともに緩衝ガス供給ポンプP5を設けてある。
【0031】
<吸着材>
吸着材a1,a2は、可燃性ガスを選択的に吸着できれば、特に制限されないが、吸着材a1,a2として、MP法による平均細孔直径が0.45〜1.5nmで、かつ大気圧および298K下におけるメタンガス吸着量が20Nml/g以上である活性炭、ゼオライト、シリカゲルおよび有機金属錯体(フマル酸銅、テレフタル酸銅、シクロヘキサンジカルボン酸銅など)からなる群から選択される少なくとも一つであるメタン吸着材a1,a2を用いるとよい。なお、上記平均細孔直径として好ましくは、0.45〜1.0nm、より好ましくは、0.5〜0.95nmがよく、また、上記メタン吸着量が好ましくは、25Nml/g以上がよい。例えば、このような活性炭は、椰子殻または椰子殻炭を窒素ガス中において600℃で完全に炭化した炭化物を粒径1〜3mmの大きさに破砕したものを炭素質材料とし、内径50mmのバッチ式流動賦活炉を用いて、水蒸気10〜15Vol%、二酸化炭素15〜20Vol%および残余が窒素である雰囲気下において、860℃で賦活することにより得られる。
【0032】
このように、吸着材a1,a2として大気圧及び298K下においてメタンガスを選択的に吸着できるメタン吸着材a1,a2を用いることで、当該メタン吸着材a1,a2に大気圧及び298K下でも充分にメタンガスを吸着することができる。
【0033】
すなわち、大気圧および298K下におけるメタン吸着量が20Nml/gより低いと、低圧(特に大気圧程度)でのメタン吸着性能が低下して、濃縮後のメタンガスのメタン濃度が低下するとともに、吸着性能を維持するには、メタン吸着材a1,a2の増量が必要となり装置が大型化する。なお、上記メタン吸着量の上限は特に制限されないが、現状で得られるメタン吸着材a1,a2のメタン吸着量は40Nml/g以下程度である。
【0034】
また、MP法における平均細孔直径が0.45nmより小さいと、酸素ガス、窒素ガスの吸着量が増え、濃縮後におけるメタンガス中のメタン濃度が低下したり、平均細孔直径がメタン分子径に近くなり吸着速度が遅くなってメタン吸着性能が低下したり、吸着しなくなる。一方、MP法における平均細孔直径が1.5nmより大きいと、低圧(特に大気圧程度)でのメタン吸着性能が低下して、濃縮後のメタンガスのメタン濃度が低下するとともに、吸着性能を維持するには、メタン吸着材a1,a2の増量が必要となり装置が大型化する。
【0035】
したがって、MP法による平均細孔直径が0.45〜1.5nmで、かつ大気圧および298K下におけるメタンガス吸着量が20Nml/g以上である活性炭、ゼオライト、シリカゲルおよび有機金属錯体からなる群から選択される少なくとも一つであるメタン吸着材a1,a2が良い。
【0036】
さらに、上記メタン吸着材a1,a2が、HK法における平均細孔直径の1.0nm以下の細孔容積が、全細孔容積の50%以上であるとよく、好ましくは、70%以上、より好ましくは、80%以上がよい。この場合、メタンガスを選択的に吸着することができる平均細孔直径が1.0nm以下である細孔容積が全細孔容積の50%以上を占めているため、大気圧下(0.1MPa程度)におけるメタンガスの吸着可能量を増大させて、大気圧下であっても充分にメタンガスを吸着することができる。なお、実質的には、計測できる範囲である平均細孔直径が0.4nm以上1.0nm以下の細孔容積が、全細孔容積の50%以上であればよい。また、より好ましくは、平均細孔直径が0.45nm以上1.0nm以下の細孔容積が、全細孔容積の50%以上であることがメタン吸着材a1,a2として好ましい。
【0037】
一方、上記メタン吸着材a1,a2が、77K下での窒素吸着量において、HK法による1.0nmの平均細孔直径に対応する相対圧0.013下での窒素吸着量が、全細孔容積に対応する相対圧0.99下での窒素吸着量の50%以上であるとよく、好ましくは、70%以上、より好ましくは、80%以上がよい。この場合、相対圧0.99における吸着量は全細孔容積を、相対圧0.013における吸着量は1.0nm以下の細孔容積を示し、それぞれの値の比は上記と同じように1.0nm以下の細孔の割合が多いことを示している。その結果として、メタンガスと空気との混合ガスを原料ガスとする場合も、大気圧付近でのメタンガスの濃縮を容易にかつ、効率よく行なうことができる。
【0038】
<可燃性ガス濃縮方法>
以下、各吸着塔U1、U2における可燃性ガス濃縮方法について、図2〜3を用いて説明する。尚、吸着塔U1,U2としては、第一吸着塔U1を例に説明し、第二吸着塔U2についても対応するガス路L1〜L5、開閉弁V1〜V5が用いられ、同様の動作が行えることは明らかであるものとして省略する。尚、各図中、開状態の弁V1〜V5およびガス流通状態のガス路L1〜L5を黒塗り、太線で示し、閉状態または工程に無関係な弁V1〜V5およびガス流通状態のガス路L1〜L5を白抜き、細線で示している。
【0039】
<吸着工程>
この吸着工程では、図2(a)に示すように、原料ガスを第一吸着塔U1に導き、可燃性ガスを吸着材a1に吸着させた状態で、残余のガスを外部に放出する。このとき、原料ガス供給路L1における開閉弁V1、V11、オフガス放出路L2における開閉弁V2,V21を開とし、原料ガス供給路L1における開閉弁V10、オフガス放出路L2における開閉弁V20、製品ガス回収路L3における開閉弁V31、均圧路L4における均圧路開閉弁V4を閉とする。
【0040】
これにより、第一吸着塔U1内には、吸着材a1に可燃性ガスが吸着され、残余の不純物ガスをオフガスとして排出することができる。この吸着工程は120秒間行われる。
【0041】
尚、このとき、第二吸着塔U2では、脱着工程を行っている。
【0042】
<均圧工程>
吸着状態の第一吸着塔U1内は、吸着材a1に可燃性ガスが吸着され、残余の空間に不純物ガスが濃縮されて存在する状態になっている。この状態で脱着工程を行うと、前記不純物ガスが製品ガスに混入するとともに、吸着材a1に吸着してしまった不純物ガスは、可燃性ガスよりも優先的に脱離する傾向にあるから、吸着材a1から初期に脱着されるガス中に含まれる不純物ガスも製品ガス中に混入してしまうことになる。
【0043】
そこで、この均圧工程では、図2(b)、(c)に示すように、第一、第二吸着塔U1,U2を連通状態として、両吸着塔U1,U2間でガスの流通を許容し、両者間の均圧を実施する。つまり、均圧工程では、均圧路L4の均圧路開閉弁V4を開とし、他の開閉弁V11,V21,V31を全て閉とすることで実行できる。
【0044】
これにより、第一吸着塔U1の内部は吸着材a1に吸着された不純物ガスがほとんど脱着されて、残余の空間に存在していた不純物ガスとともに、初期脱離ガスとして第二吸着塔U2に排出されることになる。また、前記第一吸着塔U1の内圧は、ある程度減少されて、脱着工程に適したものとなる。この均圧工程は20秒間行われる。
【0045】
尚、このとき第二吸着塔U2では、均圧工程として予備均圧工程と主均圧工程が行われる。第二吸着塔における均圧工程は図2(b)に示すように、主均圧工程に先立ち、ガス流出路L2より緩衝ガスとしての空気を流入させながら均圧を行う予備均圧工程を行ったのち、前記緩衝ガスの流入を止めて均圧を行う主均圧工程を行う(図2(c)参照)。
【0046】
<脱着工程>
この脱着工程では、図2(d)、図3(e)に示すように、吸着塔U1内に収納される吸着材a1から、吸着された可燃性ガスを回収路L3を経て真空引きして回収する。このとき、前記製品ガス回収路L3に備えられる真空ポンプP3を働かせて、製品ガス回収路L3における開閉弁V31のみを開とし、残余の開閉弁V11,V21、V4を閉とすることで、この脱着工程を実施できる。このような真空引きを実行することで、吸着材aに吸着されたメタンを製品タンクT3内に回収できる。この脱着工程は140秒間行われる。
【0047】
尚、このとき、第二吸着塔U2では、昇圧工程(図2(d))、吸着工程(図3(e))が順に行われる。
【0048】
<予備均圧工程>
脱着工程を経た第一吸着塔内U1は高い減圧状態にあるが、次に吸着工程を行わせるのに適した圧力状態に戻す必要がある。そこで、第一、第二吸着塔U1,U2を連通状態として、両吸着塔U1,U2間でガスの流通を許容し、両者間の均圧を実施し、第二吸着塔U2内の不純物ガスと可燃性ガスとの混合ガスを前記第一吸着塔U1に流入させ、第二吸着塔U2由来の可燃性ガスの再回収と、第一吸着塔U1の昇圧を行う。
【0049】
しかし、脱着工程を終えた直後の第一吸着塔U1の内圧と、吸着工程を終えた直後の第二吸着塔U1の内圧との差は高く、そのまま均圧工程を行えば、前記初期脱離ガスが、第一吸着塔U1に高速で流入することになり、そのガスの流れの速度、乱れにより、吸着材a1が流動化し、劣化、粉化するおそれがある。そこで、均圧工程に先行して、均圧工程の開始時に予備均圧工程を行う。
【0050】
予備均圧工程においては、図3(f)に示すように、均圧路を介して第二吸着塔U2からの初期脱離ガスを受け入れつつ、ガス流出部2から緩衝ガスとしての空気を大気圧にて同時に流入させる。即ち、ガス流出部2における開閉弁V20,V21、エア供給路L5の開閉弁V5を開状態、原料ガス供給路L1の開閉弁V11、オフガス放出路L2の開閉弁V2、製品ガス回収路L3の開閉弁V31を閉にして、エア供給ポンプP5からエア供給路L5を介して空気を供給するとともに、均圧路L4の均圧路開閉弁V4を開とし、第二吸着塔U2からの初期脱離ガスを受け入れ、均圧を行う。
【0051】
ここで、前記均圧路から前記第一吸着塔U1に初期脱離ガスを供給し、前記ガス流出部2から緩衝ガスを供給すると、第一吸着塔U1の上下圧力差が、緩衝ガスを供給しない場合40kPaであったものが、15kPa以下とすることができ、前記第一吸着塔に充填された吸着材は流動化していないことが目視確認できた。
【0052】
尚、第二吸着塔U2では、予備均圧工程に並行して均圧工程が開始される。
【0053】
<主均圧工程>
予備均圧工程を経ると、前記第一吸着塔U1に流入する初期脱離ガスは整流されるので、緩衝ガスの流入を止めても、吸着材の流動化が抑制された状態になる。そこで、前記予備均圧工程を経た第一吸着塔U1は、主均圧工程に移行させられる。
【0054】
この主均圧工程では、図3(g)に示すように、第一、第二吸着塔U1,U2を連通状態として、両吸着塔U1,U2間でのガスの流通のみを許容し、両者間の均圧を実施する。つまり、主均圧工程は、均圧路L4の均圧路開閉弁V4を開とし、他の開閉弁V11,V21,V31を全て閉とすることで実行できる。また、このとき、第二吸着塔U2においても均圧工程が実施される。
【0055】
尚、第一吸着塔U1における予備均圧工程および主均圧工程は、第二吸着塔U2における均圧工程が約20秒行われるのに対して、予備均圧工程2秒、主均圧工程18秒として行う。
【0056】
<昇圧工程>
脱着工程後の第一吸着塔U1で次に吸着工程を行った際に、前記吸着材が有効に可燃性ガスを吸着し始める圧力は、大気圧程度であるが、初期脱離ガス中の可燃性ガス濃度が十分高くなるまでの期間だけの前記均圧工程では、十分な圧力上昇を見こめない。そこで、均圧工程による昇圧とは別途、第一吸着塔U1にガス供給して圧力を上昇させる昇圧工程を行う。
【0057】
昇圧工程では、図3(h)に示すように、空気を前記エア供給部5から前記第一吸着塔U1に圧入して、前記第一吸着塔U1内を大気圧程度にまで昇圧する。つまり、開閉弁V21,V20,V5を開状態とし、他の開閉弁V11,V31,V4を閉状態として第一吸着塔U1内を昇圧する。この昇圧工程は、20秒行われる。
【0058】
昇圧工程を経た第一吸着塔U1では、再度吸着工程が行われ、各工程が図4に示されるタイムサイクルが行われる。即ち、吸着工程120秒、均圧工程20秒、脱着工程140秒、均圧工程としての予備均圧工程2秒、主均圧工程18秒、昇圧工程20秒の320秒のタイムサイクルが繰り返される構成とする。
【0059】
〔別実施例〕
前の実施例では2塔で交互にタイムサイクルを行ったが、さらに多数塔で交互あるいは順次各工程を行うことができる。また、昇圧工程は吸着工程の予備的な工程として行ったが、本発明では必須ではなく、吸着工程、脱着工程が交互に行われる間に均圧工程の行われる装置系であれば、適用することができる。
【0060】
また、予備均圧工程、昇圧工程で用いられるガスは、製品ガスとすれば、製品純度の向上に寄与するし、空気等とすれば、製品収率の向上に寄与するのでいずれを用いても良く、他に、オフガスタンクT2に貯留されるオフガスや、半製品ガス、原料ガス等によって行うこともできる。尚、製品タンクT3やオフガスタンクT2からガスを供給する場合、タンクT2,T3の内圧を利用してガス供給ができる利点もあり、ポンプP2の動力軽減につながる。
【符号の説明】
【0061】
U1 第一吸着塔
U2 第二吸着塔
a1,a2 メタン吸着材
L1 原料ガス供給路
L2 オフガス放出路
L3 製品ガス回収路
L4 均圧路
V4 均圧路開閉弁
L5 エア供給路
T3 製品タンク
P3 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを供給するガス流入部、排ガスを流出するガス流出部、製品ガスを回収するガス回収部を備え、内部に可燃性ガスを選択的に吸着する吸着材を充填した吸着塔を複数備え、前記吸着塔間を接続する均圧路を設けるとともに、前記均圧路に、均圧路を開閉する均圧路開閉弁を設け、
ガス流入部から前記吸着塔へ原料ガスを供給し、原料ガス中の可燃性ガスを前記吸着材に吸着させるとともに、前記ガス流出部から前記吸着材に対する非吸着ガスを流出させる吸着工程、
前記吸着材に吸着した可燃性ガスを前記吸着材から脱着させて、前記ガス回収部より外部に取り出す脱着工程、
を交互に実行するとともに、
前記均圧路で接続された一対の吸着塔間で、一方の吸着塔における前記吸着工程の後で、かつ他方の吸着塔における前記脱着工程の後に、前記均圧路に設けた均圧路開閉弁を開成した状態で均圧工程を行う
可燃性ガス濃縮方法であって、
前記他方の吸着塔における均圧工程の開始時に、前記他方の吸着塔に前記均圧路の接続位置とは異なる位置から前記他方の吸着塔にガスを供給する予備均圧工程を行う可燃性ガス濃縮方法。
【請求項2】
前記均圧路を、前記吸着塔下部に接続するとともに、前記ガス流出部を前記吸着塔上部に設け、前記ガス流出部から前記吸着塔内へガスを供給するガス供給部を設けた請求項1に記載の可燃性ガス濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−201969(P2011−201969A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68744(P2010−68744)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】