説明

可燃性廃棄物の燃料化システム及び燃料化方法

【課題】廃スラッジなど、取り扱いが困難なため、これまで容器に封入され、焼却されていた可燃性廃棄物から効率よく燃料化する。
【解決手段】可燃性廃棄物を封入した容器31を破砕する第1の破砕装置7と、第1の破砕装置によって破砕された破砕物Gと液体燃料Cとを混合する混合装置8と、混合装置によって混合された混合物Mを篩い分けする篩分装置9と、篩分装置によって篩い分けられたスラリーSLを貯留する貯留装置18と、貯留装置によって貯留された貯留物STを破砕する第2の破砕装置19と、第2の破砕装置によって破砕された破砕物Fを燃料として燃焼炉に供給する供給装置とを備える可燃性廃棄物の燃料化システム1等。貯留装置は、篩分装置によって篩い分けられたスラリーを撹拌しながら貯留し、スラリーに含まれる異物を除去してもよく、貯留タンクは、並列に複数配置してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性廃棄物の燃料化システム及び燃料化方法に関し、特に、引火点が低かったり、臭気を有していたり、スラッジあるいは高粘度の物質を含有するなどの理由により、容器に封入され、これまで焼却されてきた可燃性廃棄物を燃料化するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃スラッジ、ケミカルスラッジ等、ドラム缶、一斗缶、IBC容器等に封入されたまま廃棄される可燃性廃棄物がある。これらは、(1)引火点が低いため、静電気火花により引火する危険性がある、(2)有害ガスや臭気が発生するため、作業環境が悪い、(3)スラッジあるいは高粘度の物質を含有するため、容器から排出することが難しいなどの理由により、容器ごと処理することが望ましい。また、容器から取り出したとしても、物理性状の悪さ、異物の混入、一品種の量が少ないなどの問題から、焼却するしか処分方法はなかった。
【0003】
容器に封入された可燃性廃棄物は、従来、容器ごと焼却炉に投入されたり、近年では容器ごと破砕され、容器の破片とともにポンプで焼却炉に送られ、焼却されたりしている(特許文献1、2参照)。このような装置の一例として、図5に示す装置は、ホッパ61内に一般廃棄物Gを投入し、ホッパ61の下部に連設されたダクト63内に産業廃棄物Iをドラム缶に封入したまま直接投入し、これらを破砕機62で破砕し、次に、ミキサー66で混練して高粘度廃棄物Wとしてから、圧送ポンプ67で焼却炉69へ圧送して焼却処理する。産業廃棄物Iの焼却の際、発生する熱は回収されて発電に利用されるが、焼却施設の稼動用電源程度に留まり、化石燃料の削減には貢献しないのが現状である。
【0004】
一方、近年、地球温暖化防止のため、単純焼却を止め、できるだけ効率的に可燃性廃棄物の熱量を回収する技術の開発が求められている。また、石油や石炭の価格が高騰しているため、コスト低減のためにも可燃性廃棄物の利用拡大が求められている。
【0005】
【特許文献1】特許第3846254号公報
【特許文献2】特開2005−17267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、廃スラッジなど、取り扱いが困難なため、これまで容器に封入され、焼却されていた可燃性廃棄物を効率よく燃料化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、可燃性廃棄物の燃料化システムであって、可燃性廃棄物を封入した容器を破砕する第1の破砕装置と、該第1の破砕装置によって破砕された破砕物と液体燃料とを混合する混合装置と、該混合装置によって混合された混合物を篩い分けする篩分装置と、該篩分装置によって篩い分けられたスラリーを貯留する貯留装置と、該貯留装置によって貯留された貯留物を破砕する第2の破砕装置と、該第2の破砕装置によって破砕された破砕物を燃料として燃焼炉に供給する供給装置とを備えることを特徴とする。
【0008】
そして、本発明によれば、破砕装置で可燃性廃棄物を封入した容器を破砕し、混合装置で破砕された容器の破片とともに可燃性廃棄物を撹拌し、液体燃料を途中で添加・混合して、容器に封入されていた高粘性の可燃性廃棄物の分散を促進し、その後、篩分装置によって混合物を篩い分け、最終的に、破砕装置で破砕した破砕物を燃料として燃焼炉に供給して代替燃料として利用することで、可燃性廃棄物を焼却処分することなく有効利用することができる。
【0009】
特に、混合装置内で適度な液状燃料の添加により、容器の破片等の固体表面に付着したスラッジ等の可燃性廃棄物を緩くし、篩分装置によって固体表面のスラリーを洗い流すことで、容器内容物を効率的に回収するとともに、後段で分離される鉄の品質をマテリアルリサイクル可能な状態とすることができる。また、上記設備がセメント工場等の焼成炉施設内、又はこれに隣接して設置され、回収されたスラリーが液体燃料の添加により最終的に粘度が調整され、そのままセメント焼成炉等の炉で代替燃料として利用されることにより、液体燃料貯蔵タンクの建設費用、タンクローリーによる輸送費用などのコストがかからず、可燃性廃棄物を安価に処理することができる。
【0010】
前記可燃性廃棄物の燃料化システムにおいて、前記貯留装置は、前記篩分装置によって篩い分けられたスラリーを撹拌しながら貯留し、該スラリーに含まれる異物を除去する貯留タンクを備えることができる。これにより、回転スクリーンを通過する粒径の金属等の異物が残存していたとしても取り除くことができ、後段装置でのトラブルを回避することができる。
【0011】
前記可燃性廃棄物の燃料化システムにおいて、前記篩分装置のスクリーンの目開きを5mm以上、100mm以下とすることができる。スクリーンの目開きが5mm未満であると、スクリーンが閉塞し易いくなるため好ましくなく、目開きが100mmを超えると、後段の貯留タンクの底に多量の固体が堆積し、固体の排出が難しくなることがあるため好ましくない。
【0012】
また、前記可燃性廃棄物の燃料化システムにおいて、前記混合装置を、水平方向に延設された回転軸と、該回転軸とともに回転する複数の撹拌羽根と、前記液体燃料を該混合装置内の前記破砕物に添加するための供給口を有する液体燃料添加装置とを備えるように構成することができる。容器の破片に付着した高粘性物や、スラッジの塊に、最初は強いせん断力を与えて解砕し、供給口より液体燃料を破砕物に添加し、最終的に可燃性廃棄物を均質で篩分けし易い粘度に調整することができる。
【0013】
さらに、前記可燃性廃棄物の燃料化システムにおいて、前記篩分装置を、回転スクリーンと、前記液体燃料を該回転スクリーン上の前記混合物に添加するための供給口を有する第2の液体燃料添加装置とを備えるように構成することができる。混合装置内において段階的に粘度を低下させながら撹拌した効果と、第2の液体燃料添加装置の効果により、容器の破片等の固体にスラリー状の付着物が残る場合でも、固体のリサイクルを容易にすることができる。さらに、液体添加装置では、廃溶剤やエマルジョン燃料等の液体燃料の他、界面活性剤を含む水を添加することができる。
【0014】
前記可燃性廃棄物の燃料化システムにおいて、前記篩分装置によって篩い分けされた塊状物に含まれる金属片を除去するための磁選機を備えることができ、篩分装置からの塊状物を鉄片等と、プラスチック、ゴム等とに分離し、後処理を容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明は、可燃性廃棄物の燃料化方法であって、可燃性廃棄物を封入した容器を破砕し、該容器の破砕によって得られた破砕物と液体燃料とを混合し、該混合によって得られた混合物を篩い分けしてスラリーと塊状物とに分離し、該スラリーを貯留し、該貯留したスラリーを破砕して得られた破砕物を燃焼炉に燃料として供給することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、可燃性廃棄物から得られたスラリーをセメント焼成炉等の燃料として利用することで、可燃性廃棄物を焼却処分することなく有効利用することなどが可能となる。
【0016】
前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記スラリーを貯留する際に、該スラリーを撹拌しながら貯留し、該スラリーに含まれる小さい金属異物を沈降分離し、該異物が除去されたスラリーを破砕して燃料を生成することができ、容器の破砕や、可燃性廃棄物中に混入していた金属等の異物が残存していても取り除くことで、後段装置でのトラブルを回避することができる。
【0017】
前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記混合物を篩い分けする際に、該混合物に第2の液体燃料を添加することができる。これにより、容器の破片等の固体にスラリー状の付着物が残る場合でも、固体表面全体を洗い流すことで、固体のリサイクルを容易にすることができる。液体添加装置により、液体燃料の他、界面活性剤を含む水を添加することにより、分離された固体からのガス発生量を抑制し、固体の取り扱いを容易にすることができ、さらには、容器に水が混入している場合に、可燃性廃棄物と水との分離を防ぐことができる。
【0018】
また、前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記第1及び第2の液体燃料は、廃溶剤、廃油、廃塗料、エマルジョン燃料、有機物含有廃液及び再生油からなる群から選択される少なくとも一種以上とすることができる。これにより、可燃性廃棄物のみならず、廃溶剤等の廃棄物からも同時に燃料化することができる。
【0019】
前記可燃性廃棄物の燃料化方法において、前記燃料を、セメントキルンの窯前部、窯尻部及び仮焼炉よりなる群から選択される一以上の箇所に供給することができる。可燃性廃棄物に含まれている灰分は、セメント原料としてリサイクルされ、焼却灰等の二次廃棄物が発生しない。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、廃スラッジなど、取り扱いが困難なため、これまで容器に封入され、焼却されていた可燃性廃棄物を効率よく燃料化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システム(以下、適宜「燃料化システム」と略称する)の第1の実施形態を示し、この燃料化システム1は、大別して、ドラム缶(又はIBC容器)搬送装置2〜4と、破砕装置7と、混合装置8と、篩分装置9と、液体燃料タンク17と、液体燃料供給装置21と、スラリータンク18と、破砕機19等で構成される。尚、図1ではIBC容器を搬送する例を描いており、本発明では、IBC容器をそのまま取り扱うことも可能であるが、以下の説明においては、単にドラム缶を投入するものとして説明する。また、ドラム缶には、可燃性廃棄物の一例として廃塗料スラッジが封入されているものとする。一方、液体燃料タンク17には廃溶剤Cが貯留され、液体燃料供給装置21からは液体燃料として廃溶剤Cが供給されるものとする。
【0023】
ドラム缶搬送装置2〜4は、ローラコンベア2と、エレベータ3と、供給機4とで構成され、リフト30等で供給された、廃塗料スラッジを封入したドラム缶31をそのままの状態で供給室5に投入するために備えられる。また、供給室5に隣接して、廃塗料スラッジ等を収容したフレコン32等を投入するための供給室6も設けられる。図示を省略するが、フレコン32等もドラム缶31と同様の搬送装置を用いて供給室6の上方まで搬送される。供給室5、6は、防爆のため窒素置換される。
【0024】
破砕装置7は、供給室5及び供給室6の下方に位置し、破砕装置7の内部には、爆発防止のために窒素ガスが供給される。この破砕装置7は、投入されたドラム缶31を破砕するための2軸の回転破砕機7bと、その上方に位置し、ドラム缶31を斜め上方から回転破砕機7bに押し付けるプッシャ7aと、回転破砕機7b等を駆動するためのモータ7cと、破砕不可能な物を外部に排出するための排出部7dが設けられる。尚、排出部7dから破砕不可能な物を排出する際には、破砕装置7の内壁を一部解放することができる。
【0025】
混合装置8は、破砕装置7からの破砕物Gと、液体燃料タンク17からポンプ20を介して供給された廃溶剤Cとを混合するために備えられ、モータ8cによって回転する回転軸8aに複数の撹拌羽根8bを備える。また、この混合装置8には、ポンプ22を介して供給された廃溶剤Cを混合装置8内の破砕物Gに添加するため、第1の液体燃料添加装置23が付設される。混合装置8によって混合された混合物Mは、シュート10を介して篩分装置9に供給される。
【0026】
上記混合装置8は、図2に示すように、円筒状の本体8d内に回転軸8aが水平方向に延設され、この回転軸8aに複数の撹拌羽根8bが取り付けられて矢印方向に回転する。本体8d内の内容物の粘度等に応じて内容物の滞留時間を調節可能なように、排出口に設けた堰(不図示)の高さを任意に変更することができ、滞留時間を長くしたい場合には、堰の頂部を回転軸8aと同レベルに配置することもできる。
【0027】
また、混合装置8には、振動粘度計8eが設けられ、振動粘度計8eによって混合装置8の内容物の粘度を測定し、測定された粘度に応じて液体燃料タンク17から廃溶剤C等を混合装置8に添加することにより、容器の破片や異物へのスラッジの付着量を少なく抑えることができる。
【0028】
尚、特許文献2においても、図5に示すように、ミキサー66の負荷と、ミキサー66の内容物(高粘度廃棄物W)の重量とに基づいてミキサー66の内容物の粘度を検出し、検出された粘度に応じて、粘度調整剤タンク68から廃液L又はスラッジSをミキサー66内に供給するが、この文献に記載の技術は、高粘度廃棄物Wを取り扱うため、ミキサー66の負荷に対して容器の破片による影響が小さい。そのため、ミキサー66の負荷等に基づいて検出される内容物の粘度についても、破片による影響が小さい。しかし、本発明は、燃料としてそのまま利用することを目的とするため、混合装置8の内容物の粘度が低く、容器の破片の影響で負荷が安定せず、混合装置8の負荷等に基づいて混合装置8内の内容物の粘度を精度よく検出することができない。そこで、図2に示すように、振動粘度計8eを用いるとともに、振動粘度計8eは、固体衝突の衝撃に弱く、破片等の固体は、混合装置8内において撹拌羽根8bが上昇する側8fに集まるため、撹拌羽根8bが下降する側8gに外側に突出する突出部8hを形成し、突出部8h内に振動粘度計8eのセンサ部を配置する。
【0029】
図1に示す篩分装置9は、シュート10を介して供給された、混合装置8からの混合物Mを篩い分けるために備えられ、モータ9bによって回転する回転スクリーン9aを備えるトロンメル等が用いられる。この篩分装置9には、液体燃料供給装置21を介して供給された廃溶剤Cを回転スクリーン9a上の混合物Mに添加するため、第2の液体燃料添加装置24が付設される。篩分装置9によって篩い分けられたスラリーSLは、スラリータンク18に搬送され、塊状物Sはコンベア12へ排出される。尚、篩分装置9として、トロンメルに代えて、ロールスクリーン装置又は振動篩分装置を使用することもできる。篩分装置9には、スラリーSLをスラリータンク18に搬送するためのポンプ25が付設される。
【0030】
スラリータンク18は、篩分装置9からのスラリーSLをバッチ混合して品質を調整して安定させるために備えられ、混合したスラリーSLの抽出をタンクの側面から行い、比重の大きい金属製異物を沈降させ、下部から異物を抜き取ることができるように構成される。スラリータンク18には、貯留物STを破砕装置19を介してセメント焼成炉のバーナー等に搬送するためのポンプ26が付設される。
【0031】
破砕装置19は、スラリータンク18からの貯留物STを破砕するために設けられる。この破砕装置19として、インライン式湿式メディアレス微粉砕機としてのトリゴナル(三井鉱山株式会社製)、シルバーソン社製のローター/ステーター式のハイシアーミキサー等を用いることができる。
【0032】
磁選機13は、コンベア12によって搬送される塊状物Sに含まれる鉄片I等を除去するために備えられる。
【0033】
置場15は、磁選機13によって除去された鉄片I等を貯留するために備えられ、置場16は、磁選機13を通過したプラスチック、ゴム等の塊状物S’を貯留するために備えられる。
【0034】
次に、上記構成を有する燃料化システム1の動作について、図1を参照しながら説明する。尚、以下の説明においては、廃塗料スラッジを封入したドラム缶31を処理する場合を例にとって説明する。
【0035】
受け入れた廃塗料スラッジ入りドラム缶31をリフト30でローラコンベア2に供給すると、ドラム缶31は、ローラコンベア2、エレベータ3及び供給機4によって搬送され、そのまま供給室5に投入される。ドラム缶31は、窒素置換される供給室5を経由して破砕装置7に落下して破砕される。
【0036】
破砕装置7の内部で、プッシャ7a及び回転破砕機7bによって破砕されることにより、ドラム缶31が裂けて、内部の廃塗料スラッジが放出される。尚、プッシャ7a及び回転破砕機7bによっても細かく破砕されずに破砕装置7の出口を通過できない物が存在する場合には、回転破砕機7bを逆転させてさらに破砕する。これによっても破砕装置7の出口を通過しない物については、破砕装置7の内壁を一部解放し、排出部7dを介して外部に排出する。破砕装置7の内部には、窒素ガスが供給され、酸素濃度を低く抑えているため、ドラム缶31から廃塗料スラッジが放出されても爆発を防止することができる。
【0037】
次に、破砕装置7から排出された破砕物Gは、混合装置8に供給され、液体燃料タンク17からポンプ22及び第1の液体燃料添加装置23を介して供給された廃溶剤Cと混合される。ここで、図2に示すように、混合装置8の内容物の表面のレベルを回転軸8aと同レベルに維持しているため、混合装置8内における内容物(破砕物G及び廃溶剤C)の滞留時間を長く維持し、振動粘度計8eによって混合装置8の内容物の粘度を測定し、測定された粘度に応じて液体燃料タンク17から廃溶剤Cを混合装置8に添加することにより、ドラム缶31の破片に付着した高粘性物や、廃塗料スラッジの塊に、最初は強いせん断力を与えて解砕し、最終的に廃塗料スラッジを均質で篩分けし易い粘度に調整することができる。廃溶剤Cとの混合により液状となった廃塗料スラッジは、破砕されたドラム缶31の破片等とともに、シュート10を介して篩分装置9に供給される。
【0038】
篩分装置9に供給された混合物Mは、篩分装置9内の回転スクリーン9aによって出口側に搬送されながら、スラリーSLと、塊状物Sとに篩い分けられる。このとき、回転スクリーン9aの目開きが粗すぎると、スラリータンク18の底に多量の固体が堆積し、固体の排出が難しくなることがある。また、回転スクリーン9aの目開きが細かすぎると、スクリーンが閉塞し易い。回転スクリーン9aは、目開きが5〜100mm、好ましくは10〜60mmが用いられる。スラリーSLは、篩分装置9の底部よりスラリータンク18に搬送され、塊状物Sは、篩分装置9の出口部からコンベア12上へ落下する。ここで、ドラム缶31の破片等の塊状物Sに廃塗料スラッジの高粘度の付着物が残る場合でも、混合機8内で廃溶剤Cとともに撹拌・混合されることにより、塊状物Sの付着物は、第2の液体燃料添加装置23により洗い流され易く、処分費用のかからないリサイクル容易な性状の塊状物S(金属片等)を得ることができる。
【0039】
次に、スラリータンク18において、篩分装置9から搬送されたスラリーSLを撹拌しながらバッチ混合し、品質を調整して安定させる。また、スラリータンク18でスラリーSLに含まれる異物Aを除去した後、貯留物STを破砕装置19に供給する。この際、貯留物STの性状に応じて適宜液体燃料タンク17から廃溶剤Cを貯留物STに添加する。貯留物ST、又は貯留物STに廃溶剤Cを添加した物は、破砕装置19で最終的な均質化、塊状物の破砕を行い、所定の品質を有する燃料Fとしてセメント焼成炉のバーナー等に供給される。
【0040】
ここで、混合装置8において粘度に応じて廃溶剤Cを添加しているため、スラリータンク18に供給されるスラリーSLは一定以下の粘度となる。従って、インライン混合機19に供給されるスラリーSL、及び液体燃料タンク17からの廃溶剤Cの流量を、各々一定に維持するだけで、一定以下の粘度の液体燃料が調製され、各々の供給圧によりセメント焼成炉に供給される。スラリーSLと廃溶剤Cとの混合割合は、セメント焼成炉に必要量を供給できる粘度になるよう、任意に設定される。
【0041】
一方、篩分装置9からコンベア12に排出された塊状物Sは、コンベア12での搬送中に、磁選機13によって鉄片I等が除去され、除去された鉄片I等は、置場15に貯留され、再利用される。また、磁選機13を通過したプラスチック、ゴム等の塊状物S’は、置場16に貯留し、液だれを防止するため木屑等と混合し、例えばセメントキルンの窯尻部等に投入して燃料として利用することができる。
【0042】
次に、本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システムの第2の実施の形態について、図3を参照しながら説明する。
【0043】
この燃料化システム41は、上記燃料化システム1の構成において、液体燃料タンク17及びスラリータンク18を各々3基並列に配置したものである。スラリータンク18(18A〜18C)には、篩分装置9によって篩い分けられたスラリーSLを各々貯留し、液体燃料タンク17(17A〜17C)には、異なる種類の液体燃料が貯留される。例えば、液体燃料タンク17Aには廃溶剤C、液体燃料タンク17Bには廃油O、液体燃料タンク17Cには廃塗料Pが貯留される。各々の液体燃料タンク17には、ポンプ20(20A〜20C)及びポンプ22(22A〜22C)が付設され、各々の貯留タンク18には、ポンプ26(26A〜26C)が付設される。これら以外の構成については、上記燃料化システム1の構成と同一である。尚、図3には、液体燃料タンク17Aからスラリータンク18及び液体燃料添加装置23への管路のみを描いているが、液体燃料タンク17B、17Cについても、液体燃料タンク17Aと同様の管路が設置される。
【0044】
この燃料化システム41によれば、篩分装置9によって篩い分けられたスラリーSLを各々の貯留タンク18A〜18Cに貯留し、各貯留タンク18に液体燃料タンク17から異なる種類の液体燃料を供給して混合することにより、貯留、品質確認と調製、使用を平行して実施することができる。また、スラリータンク18でバッチ混合することにより、品質を調整して安定させることができる。このような使用方法であるため、スラリータンク18は小型のものでよく、設置コストを多大に掛ける必要はない。スラリーSLと液体燃料の混合燃料を使用するときは、複数のスラリータンク18から抽出したものを破砕装置19に通して、十分混合・均質化するとともに、残存する塊状物を破砕し、バーナーへと導入する。尚、液体燃料添加装置23へもポンプ22(22A〜22C)から異なる種類の液体燃料を混合装置8に供給し、破砕物Gに添加することができる。
【0045】
次に、本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システムの第3の実施の形態について、図4を参照しながら説明する。
【0046】
図4は、本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システムの第3の実施の形態を示し、この燃料化システム51は、第1の実施形態における燃料化システム1の構成に加え、破砕装置19の後段に製品タンク28を備える。この製品タンク28は、スラリータンク18に貯留された貯留物STを破砕装置19によって破砕して得られた製品(燃料)Fを貯留するために備えられる。製品タンク28以外の構成については、上記燃料化システム1の構成と同一である。
【0047】
この燃料化システム51によれば、可燃性廃棄物より生成した燃料Fをそのままセメント焼成炉等の燃料として利用することができるとともに、生成した燃料Fを、この燃料化システム51の設置場所から離れた場所にある燃焼炉等の燃料として製品タンク28を介して出荷することもできる。
【0048】
尚、本実施の形態においては、可燃性廃棄物の一例として、廃塗料スラッジを燃料化する場合について説明したが、廃塗料スラッジと同様に、粘度の高い廃溶剤蒸留残渣、廃グリス、オイルスラッジ、廃インク、廃白土等の廃スラッジについても同様に燃料化することができる。また、本発明によって、廃スラッジ以外にも、廃溶剤等の液状廃棄物についても同様に処理することができ、粘度の高い可燃性廃棄物を処理する場合には、上述のように廃溶剤を添加して燃料化したが、廃溶剤等、粘度の低い可燃性廃棄物をドラム缶に封入した場合には、廃溶剤を添加する必要はない。
【0049】
また、上記実施の形態においては、取り扱いの困難な各種可燃性廃棄物をドラム缶に封入したものを処理して燃料化したが、ドラム缶に限らず、一斗缶、ペイント缶に封入したものであってもよく、取り扱いの困難な各種可燃性廃棄物を密閉容器に封入したものであれば同様に処理することができ、可燃性廃棄物を封入したペイント缶等をさらにドラム缶に収容して上記システムで処理して燃料化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システムの第1の実施の形態を示すフローチャートである。
【図2】図1の可燃性廃棄物燃料化システムの混合装置を示す概略断面図である。
【図3】本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システムの第2の実施の形態を示すフローチャートである。
【図4】本発明にかかる可燃性廃棄物の燃料化システムの第3の実施の形態を示すフローチャートである。
【図5】従来の廃棄物焼却装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1 可燃性廃棄物の燃料化システム
2 ローラコンベア
3 エレベータ
4 供給機
5 供給室
6 供給室
7 破砕装置
7a プッシャ
7b 回転破砕機
7c モータ
7d 排出部
8 混合装置
8a 回転軸
8b 撹拌羽根
8c モータ
8d 本体
8e 振動粘度計
8f 撹拌羽根上昇側
8g 撹拌羽根下降側
8h 突出部
9 篩分装置
9a 回転スクリーン
9b モータ
10 シュート
12 コンベア
13 磁選機
15 置場
16 置場
17 液体燃料タンク
18(18A〜18C) スラリータンク
19 破砕装置
20 ポンプ
21 液体燃料供給装置
22(22A〜22C) ポンプ
23 第1の液体燃料添加装置
24 第2の液体燃料添加装置
25 ポンプ
26(26A〜26C) ポンプ
28 製品タンク
30 リフト
31 ドラム缶
32 フレコン
41 可燃性廃棄物の燃料化システム
51 可燃性廃棄物の燃料化システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性廃棄物を封入した容器を破砕する第1の破砕装置と、
該第1の破砕装置によって破砕された破砕物と液体燃料とを混合する混合装置と、
該混合装置によって混合された混合物を篩い分けする篩分装置と、
該篩分装置によって篩い分けられたスラリーを貯留する貯留装置と、
該貯留装置によって貯留された貯留物を破砕する第2の破砕装置と、
該第2の破砕装置によって破砕された破砕物を燃料として燃焼炉に供給する供給装置とを備えることを特徴とする可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項2】
前記貯留装置は、前記篩分装置によって篩い分けられたスラリーを撹拌しながら貯留し、該スラリーに含まれる異物を除去する貯留タンクを備えることを特徴とする請求項1に記載の可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項3】
前記篩分装置のスクリーンの目開きが5mm以上、100mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項4】
前記混合装置は、水平方向に延設された回転軸と、該回転軸とともに回転する複数の撹拌羽根と、前記液体燃料を該混合装置内の前記破砕物に添加するための供給口を有する液体燃料添加装置とを備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項5】
前記篩分装置は、回転スクリーンと、前記液体燃料を該回転スクリーン上の前記混合物に添加するための供給口を有する第2の液体燃料添加装置とを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項6】
前記篩分装置によって篩い分けされた塊状物に含まれる金属片を除去するための磁選機を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化システム。
【請求項7】
可燃性廃棄物を封入した容器を破砕し、
該容器の破砕によって得られた破砕物と液体燃料とを混合し、
該混合によって得られた混合物を篩い分けしてスラリーと塊状物とに分離し、
該スラリーを貯留し、
該貯留したスラリーを破砕して得られた破砕物を燃焼炉に燃料として供給することを特徴とする可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項8】
前記スラリーを貯留する際に、該スラリーを撹拌しながら貯留し、該スラリーに含まれる異物を除去し、
該異物が除去されたスラリーを破砕して得られた破砕物を燃焼炉に燃料として供給することを特徴とする請求項7に記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項9】
前記混合物を篩い分けする際に、該混合物に第2の液体燃料を添加することを特徴とする請求項7又は8に記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の液体燃料は、廃溶剤、廃油、廃塗料、エマルジョン燃料、有機物含有廃液及び再生油からなる群から選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項7、8又は9に記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。
【請求項11】
前記燃料を、セメントキルンの窯前部、窯尻部及び仮焼炉よりなる群から選択される一以上の箇所に供給することを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の可燃性廃棄物の燃料化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−236390(P2009−236390A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82300(P2008−82300)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】