説明

可融性インクジェット記録媒体

インクジェット印刷システムは、支持体、ならびにa)可融性ポリマー粒子、およびb)エチレンオキサイド部分とプロピレンオキサイド部分とを有する水溶性ブロックコポリマーにおいて、25℃における、0.1重量%の水溶液でのドレーブス濡れ係数が360秒以下を示すコポリマーを含むインク受理層を含む記録素子を搭載したインクジェットプリンタを含む。インクジェット印刷法およびインクジェット記録媒体も、意図されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質インクジェット記録媒体に関するものであり、特に、可融性ポリマー粒子の多孔質層を含有するインクジェット記録素子に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なインクジェット記録システムあるいは印刷システムにおいて、インク液滴は、記録素子または記録媒体に向けてノズルから高速で噴射されて、記録素子上に画像を生成する。インク液滴または記録液体は、染料または顔料などの記録剤および大量の溶媒を一般に含む。溶媒またはキャリア流体は、水、一価アルコール、多価アルコールなどの有機材料、またはこれらの混合物で典型的には作られている。
【0003】
インクジェットプリンタからインクを画像に適用するときに写真品質画像を達成するために、近年、インクジェット画像記録素子が設計されてきた。インクジェット記録素子は、その少なくとも一表面に少なくとも1つのインク受理層を有する支持体を典型的には含んでいる。インク受理層は、典型的には、毛細管作用によりインクを吸収する多孔質層であるか、または膨潤してインクを吸収するポリマー層である。膨潤可能な多価ポリマー層は、多孔質のインク受理層に比べて、望ましくない長い乾燥時間を要する。
【0004】
多孔質インク受理層は、バインダーで共に結ばれる無機または有機粒子から通常構成されている。このタイプの塗膜における粒子の量は、臨界粒子体積濃度(CPVC)をはるかに超えていることが多く、このことが、塗膜において高い多孔率を生じる。インクジェット印刷工程の間に、毛細管作用により、インク液滴が塗膜中に急速に吸収され、また画像は、それがプリンタから出てきた後すぐにさらっとした感触になる。これらの多孔質記録素子は、相対的に迅速に乾燥するが、画像を作り出す、得られる染料または顔料堆積物は、画像の印刷の間またはその後の両方で物理的損傷を受けやすくなる。このことは、許容される印刷後の画像耐久性を達成するためには、得られる画像上で耐久性向上ポリマーの別のオーバーコート溶液またはポリマーシートの積層をしばしば必要とする。
【0005】
インクジェット記録素子上への印刷により作製されるインクジェットプリントも、環境劣化を受ける。これらは、水およびオゾンなどの大気ガスとの接触により生じる損傷を特に受けやすい。オゾンは、インクジェット染料を漂白し、密度の損失を生じる。水との画像形成後接触から生じる損傷は、トップコートの艶消しから生じる水のスポット、望んでいない染料の拡散による染料汚れ、およびさらには画像記録層全体が溶解するという形態を取り得る。これらの欠点を克服するために、インクジェットプリントは、しばしば積層される。しかし、フィルム積層体が、さらなる塗布工程により作製される接着剤層を必要とする別個のロール材料であるときには、積層が高価である。積層体が転写タイプのものであるときには、積層体が転写される排出される被塗布支持体の形態での廃棄物も添加される。
【0006】
他のアプローチにおいては、可融性の熱可塑性プラスチックポリマーを、記録素子の最上側の多孔質層として塗布できる。典型的には、熱可塑性プラスチックポリマー粒子は、層厚さ数ミクロンで塗布され、また、インクは、インクジェットプリンタから適用されるとき、ポリマー粒子間に形成される空隙を通って浸透する。インクを画像記録素子に適用した後、高温融解ローラを用いた接触などの融解工程を使用して、ポリマー粒子をそれらのガラス転移温度を超えて加熱して、連続的な、耐久性のあるポリマーフィルムを形成する。このアプローチは、着色された画像の大部分が、融解されたポリマー層により覆われるまたは取りこまれるという利点を有する。得られる画像は、物理的乱用に対して保護され、融解されたポリマー層は、得られる写真品質画像に高密度を提供することができる。可融性記録素子用の設計は、米国特許第4,785,313号、第4,832,984号、第6,140,390号、第6,695,447号、第6,777,041号、第6,789,891号、第6,815,018号、第6,866,384号、第7,198,363号および第7,264,856号に開示されている。
【0007】
可融性の熱可塑性プラスチックポリマー粒子の層で設計された画像記録素子は、限定されない。可融性ポリマー粒子層は、プリンタから適用されるインクの全流体体積を収容するために充分な厚さを有することが望ましい。可融性熱可塑性粒子は、典型的には、0.1〜10ミクロンの範囲の直径を有する。これらの粒子径は、印刷後、粒子を、連続層に完全に融解できるようにする必要がある。一般的に、可融性ポリマー粒子は、水性インクジェット印刷の技術分野で公知のインクによって容易に湿潤されない材料で作られている。可融性ポリマー粒子の厚い層の場合には、印刷されたインクを保持するために適切な容量であり得るが、インクは、記録素子の表面において凝集する代わりに、ポリマー粒子間の空隙を通って浸透可能であるべきである。このことは、顔料ベースのインクを可融性ポリマー粒子層上に印刷するときに特に問題となる。なぜなら、個々の顔料粒子が、ポリマー粒子間の空隙を塞ぐ可能性があるからである。
【0008】
可融性粒子層も、印刷操作の間に起こり得る、互いに異なる色のインク間でのにじみの問題を有する。このことは、多孔質の可融性ポリマー粒子層中へのインクの流動が低い高インクレイダウンにおいて特に当てはまる。インクの大部分が、可融性ポリマー粒子層全体を通って浸透することも望ましい。このことは、インク中に存在する成分が融解工程と干渉するのを防止し、また、プリントの画像形成された領域での高密度および高光沢を可能にする。
【0009】
可融性画像記録素子も、熱可塑性プラスチックポリマー粒子の融解後の性能に限界を示し得る。熱可塑性プラスチック粒子の不完全な融解により、記録された記録素子を曲げている間に亀裂を生じ得る弱いポリマーフィルムを生じることになる。得られたポリマー層中での欠陥により、オゾンなどの破壊性化学物質が着色剤または液体を化学的に攻撃して、印刷された画像を汚染するため、ポリマーフィルムの亀裂は、かなり望ましくない。層の不完全な融解も、光沢の無い物品を生じ得る。いくつかの場合には、可融性記録素子は、融解直後では、比較的高い光沢を示すことができるが、融解後一定の期間を超えては、いくらかの量の光沢を失う。この光沢の無い物品は、それらの元の形状を保持するためポリマーフィルム中に凹凸を生じる傾向にある不完全に融解されたビーズとして理論的に説明され得る。
【0010】
凝集またはにじみも無く迅速に多量のインクを受け入れることができ、また高性能の耐久性のある写真画像を提供する、汚染抵抗性、光沢喪失抵抗性および亀裂抵抗性などの融解後の優れた特性を示す、可融性ポリマー粒子の多孔質層を含む画像記録素子を提供する必要が依然としてある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、上記された1つ以上の問題を克服することを指向している。これは、支持体、ならびにa)可融性ポリマー粒子、およびb)エチレンオキサイド部分とプロピレンオキサイド部分とを有する水溶性ブロックコポリマーにおいて、25℃における、0.1重量%の水溶液でのドレーブス濡れ係数が360秒以下を示すコポリマーを含むインク受理層を含む記録素子を搭載したインクジェットプリンタを含むインクジェット印刷システムによって達成される。インクジェット印刷法およびインクジェット記録媒体も、意図されている。
【0012】
本発明の上記および他の目的、特徴ならびに利点は、同一の参照番号を用いて、可能であれは、図に共通する同一の特徴を指定する以下の記載および図面と合わせて考慮されるとき、さらに明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明で使用されるインクジェット印刷システムの概略図である。
【図2】図2は、供給トレイから収集トレイへの記録素子または媒体の流れを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において有用なインクジェット記録素子は、支持体と、少なくとも1つの可融性ポリマー粒子層とを含む。本発明で使用されるインクジェット記録素子において使用される支持体は、不透明、半透明または、透明であってもよい。例えば、普通紙、樹脂を塗布した紙、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)およびポリ(エステルジアセテート)などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(テトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂を含む種々のプラスチック、金属ホイル、ビニル、繊維、積層されたまたは共押し出された支持体、種々のガラス材料などであってもよい。好ましい実施態様においては、支持体は、樹脂を塗布した紙である。本発明で使用される支持体の厚さは、12〜500ミクロン、望ましくは75〜300ミクロンである。所望により、支持体に隣接する任意の層の接着性を改良するために、支持体の表面は、任意の追加の層の適用の前にコロナ放電処理されてもよい。支持体の裏側(可融性ポリマー粒子層の反対側)は、アンチカール層および/または撥水層を含むこともできる。
【0015】
本発明で有用なインクジェット記録素子は、少なくとも1つの可融性ポリマー粒子層を含む。望ましくは、記録素子の最外側は、可融性ポリマー粒子を含む。本明細書において、「可融性ポリマー粒子」は、熱および/または圧力の印加により、個々の粒子から実質的に連続な層に変換可能な任意のポリマーとして定義される。可融性ポリマー粒子は、縮合ポリマー、スチレンポリマー、ビニルポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、ポリアクリレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)または酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマーから形成されてもよい。1つの有用な実施態様においては、可融性ポリマー粒子は、ポリエステルまたはポリウレタンであってよい縮合ポリマーである。本発明の他の望ましい実施態様においては、可融性ポリマー粒子は、セルロースアセテートエステルを含む。さらに他の実施態様においては、可融性ポリマー粒子のガラス転移温度は、20℃以上であり、望ましくは、50℃を超え、1つの有用な実施形態においては、70℃を超える。
【0016】
可融性ポリマー粒子は、融解工程の間、互いに反応性であって連続的な融解されたポリマー粒子層を架橋する官能基を含んでいてもよい。本発明の可融性層において有用な反応性可融性ポリマー粒子は、米国特許公報第2006/0205870号、第2006/0204686号、第2006/0204684号、第2006/0204685号、第2006/0003115号および第2006/0003112号に記載されている。
【0017】
本発明で有用な可融性ポリマー粒子の重量平均径は、一般的には、少なくとも0.05、望ましくは少なくとも0.1および典型的には、少なくとも0.2ミクロンであり、また一般的には、5以下、望ましくは、2以下および典型的には1ミクロン以下である。単分散が、連続層に粒子の改良された融解をもたらすので、可融性ポリマー粒子は、サイズが相対的に単分散であることも望ましい。可融性ポリマー粒子の単分散指数は、典型的には、1.5未満、望ましくは1.3未満、1つの特に有用な実施態様においては1.1未満である。可融性ポリマー粒子の形状は、特に限定されるものではないが、望ましくは、ポリマー粒子は、実質的に球状であり、有用な多孔率を有する。
【0018】
可融性ポリマー粒子を含む層は、0.1重量%の水溶液でのドレーブス濡れ係数が360秒以下である少なくとも1種のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコポリマーも含む。コポリマー湿潤剤のドレーブス濡れ係数は、望ましくは、200未満であり、1つの特に有用な実施態様においては、100未満である。水中での湿潤剤に対するドレーブス濡れテストは、ASTM D2281−68(1997)「Standard Test Method for Evaluation of Wetting Agents by the Skein Test」中に記載されている。簡単に記述すると、ドレーブス濡れテストは、所定の濃度および25℃の温度における湿潤剤の溶液中で綿かせを湿潤させるに必要な時間を測定する。一般的な湿潤剤のドレーブス湿潤の数に対する文献値は、多くの市販されている界面活性剤および湿潤剤の製造により引用される。
【0019】
ドレーブス濡れ係数が360秒以下である少なくとも1種のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコポリマーは、以下の構造I〜IVから選択される。

【0020】
ブロックポリマー中の全x−タイプ(エトキシ)および全y−タイプ(プロポキシ)の有用な量は、5重量%、望ましくは、10重量%、好適には、20重量%〜40重量%のエトキシを提供する。
【0021】
ドレーブス濡れ係数が360秒以下である有用な市販のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコポリマーは、BASF社から入手可能なPLURONIC(登録商標)、PLURONIC(登録商標)RおよびTETRONIC(登録商標)湿潤剤として販売されているこれらの材料のいずれかを包含する。本発明において有用なエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマーとして有用な化合物の例は、25℃における、0.1%の水溶液のドレーブス濡れ係数(秒で)に関する各文献値に沿って、表1中に示されている。
【0022】
親水性−親油性バランス(HLB)および湿潤剤の平均分子量に関する文献値も提供されている。このパラメータ値を求める方法は、界面活性剤科学シリーズ42巻221頁、J.Pirmaによる「Polymeric Surfactants」に記述されている。本発明において有用であるエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマーの分子量は、一般的には、少なくとも1,000、好適には、少なくとも4000であるが、上限値は、一般的には、30,000、望ましくは、15,000、1つの特に有用な実施態様においては10,000である。構造(I)および(II)に関しては、プロポキシの重量は、典型的には、1500、望ましくは、少なくとも1700から最大で3500、望ましくは、最大で3100である。構造(III)および(IV)に関しては、プロポキシの重量は、典型的には、1000〜7000、望ましくは、2000〜5000である。本発明のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマーに関するHLB値は、典型的には、限定されない。望ましくは、HLBは、7と24との間である。本発明の水溶性エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマーは、典型的には、12と24との間、望ましくは、12と18との間のHLBである。
【0023】
【表1】

【0024】
可融性ポリマー粒子層において有用なエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマーの量は、ポリマー粒子の重量%で表されてよい。典型的には、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコポリマーは、0.5〜10重量%の可融性ポリマー粒子で、望ましくは、1〜10重量%、1つの特に有用な実施態様においては、2〜6重量%で存在する。
【0025】
さらなる成分が、本発明に使用される画像素子の可融性ブロックポリマー粒子中に存在し得る。可融性ポリマー粒子を含む層の塗膜における助けとなるために、またインク液滴の印刷前および印刷後に、ポリマー粒子層の完全性を維持するために、バインダーが存在し得る。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジノン、メチルセルロースアセテート、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン、アクリレート、およびスチレン−ブタジエンポリマーのポリマーおよびコポリマーなどの適当なバインダーを使用できる。これらのバインダーの内、スチレン−ブタジエンラテックスポリマーは、融解後の特性に影響を与え得るインク組成物中の成分に感受性が最も少ないので、特に有用である。バインダーは、可融性ポリマー粒子層中での全成分に対して、0〜10重量%、望ましくは、1〜10重量%、1つの特に有用な実施態様においては、2〜5重量%で存在し得る。
【0026】
機械的耐久性をインクキャリア−液体受容層に付与するために、上記で議論したバインダーに対して作用する架橋剤を少量で添加してもよい。そのような添加剤は、該層の結合強度を向上させる。カルボジイミド、多官能性アジリジン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、多価金属カチオン、ビニルスルホン、ピリジニウム、ピリジリウムジカチオンエーテル、メトキシアルキルメラミン、トリアジン、ジオキサン誘導体、クロムミョウバン、硫酸ジルコニウムなどの架橋剤を使用してもよい。好ましくは、架橋剤は、アルデヒド、アセタールまたは2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンなどのケタールである。
【0027】
望ましい画像品質を達成するために、可融性ポリマー粒子層中に他の成分が存在していてよく、製造を容易にするために、例えば、殺生物剤、pH調節剤、レオロジー改質剤、表面張力調節剤、媒染剤および他の無機または有機充填粒子を包含する。
【0028】
インクジェット記録素子は、他の画像記録物品、または画像記録装置の駆動もしくは移送メカニズムと接触する場合があるため、界面活性剤、潤滑剤および艶消し粒子などの添加剤を、目的とする特性を劣化させない程度に該素子に添加してもよい。
【0029】
可融性ポリマー粒子層の、乾燥塗布厚さは、典型的には、1ミクロン〜50ミクロン、望ましくは、5ミクロン〜20ミクロン、1つの特に有用な実施態様においては、5ミクロン〜10ミクロンである。50ミクロンよりも厚い可融性ポリマー粒子層が意図され得るが、一般的には、この厚みの層は、連続ポリマーフィルムに融解することは困難である。1ミクロンよりもかなり低い可融性ポリマー粒子層は、印刷された画像をオゾン攻撃から保護する能力に欠けている可能性があり、また物理的耐久性に関して不十分である可能性がある。
【0030】
素子への印刷後、可融性の多孔質インク受理層は、熱および/または圧力融解され、表面において実質的に連続のオーバーコート層を形成する。さらなる場合による可融性層が同時に融解される。融解に当たり、これらの層は、非光散乱でレンダリングされる。意図された目的のために有効である方法で、融解を達成してもよい。融解ベルトを用いた融解方法の記載は、米国特許第5,258,256号中に見出すことができ、融解ローラを用いた融解方法の記載は、米国特許第4,913,991号中に見出すことができる。
【0031】
好ましい実施態様においては、素子の表面を融解ローラまたは融解ベルトなどの熱融解部材と接触させることによって、融解が達成される。したがって、例えば、5〜15MPaの圧力を用い、0.005m/秒〜0.5m/秒の移送速度で、60℃〜160℃の温度に加熱された一対の加熱されたローラに素子を通過させることによって、融解が達成され得る。
【0032】
本発明のインクジェット画像形成素子は、可融性ポリマー粒子層のそれよりより先に、1つ以上の追加の層を含んでいてもよい。1つの実施態様においては、可融性ポリマー粒子と支持体との間に多孔質層が配置されていてもよい。この下層の多孔質層は、印刷されたインク液滴から液体を迅速に除去しながら染料および顔料などの着色剤が可融性層および下層の交点内でまたは交点に保持され得るように設計され得る。下層は、多孔質層構造を提供するために、インクジェット記録素子の技術で一般に使用される無機粒子およびバインダーを含むことができる。1つの有用な実施態様においては、下層の無機粒子は、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、粘土およびカルシウムメタシリケートから選択される。アルミナの例は、燻蒸アルミナおよび例えば、ベーマイトまたは擬べーマイトなどの水酸化アルミナを含む。シリカの例は、燻蒸シリカ、コロイドシリカおよびシリカゲルを含む。炭酸カルシウムを沈殿させてもよくまたは粉砕させてもよい。これらの粒子の混合物も意図される。他の有用な実施態様においては、排水だめ層は、例えば、中空ポリマービーズなどの可融性ポリマー粒子を含むことができる。排水だめ層の有用な乾燥塗布厚さは、5〜50ミクロン、望ましくは、5〜25ミクロンであってよい。
【0033】
別の有用な実施態様において、インクジェット画像形成素子は、複数の可融性層を含むことができる。1つのそのような実施態様においては、可融性ポリマー粒子の層は、媒染剤を含むことができ、第2の最外側の可融性ポリマー粒子層は、支持体から最も遠いところに存在していてよく、その結果、媒染剤を含む可融性層は、支持体と最外側の可融性層との間に配置される。1つの有用な実施態様においては、媒染剤は、カチオン性電荷を有する。そのような媒染剤の例は、米国特許第6,297,296号およびそこに引用されている参照文献などに開示されているカチオン性格子、ならびに米国特許第5,342,688号に開示されているカチオン性ポリマー、ならびに米国特許第5,916,673号に開示されている多価イオンを包含する。これらの媒染剤の例は、ポリ(ジメチルアミノエチル)−メタクリレート、ポリアルキレンポリアミンなどのポリマー性の四級アンモニウム化合物または塩基性ポリマー、およびそれらとジシアノジアミドとの縮合生成物、アミノピクロルヒドリン重縮合物を包含する。さらに、レシチンおよびリン脂質化合物も使用できる。そのような媒染剤の具体的な例は、以下のもの、ビニルベンゼントリメチルアンモニウムクロライド/エチレングリコールジメチルアクリレート;ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2−N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートメソ硫酸塩;ポリ(3−N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロライド;ビニルピロリジノンとビニル(N−メチルイミダゾリウム)クロライドとのコポリマー;および(3−N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルクロライドを用いて誘導されるヒドロキエチルセルロースを包含する。好ましい実施態様において、好ましいカチオン性媒染剤は、四級アンモニウム化合物である。
【0034】
この配置は、媒染剤を含む中間の可融性層が、印刷操作の間に染料を取り込むことができるため、染料ベースのインクの印刷に関して特に有益である。融解に際して、最外側の可融性ポリマー粒子層は、染料ベースの画像全体に亘り連続ポリマーを提供する。多重可融性層の場合には、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコポリマーは、少なくとも、最外層中に、望ましくは、両可融性層中に存在している。
【0035】
上記した層を、この技術で一般的に使用される支持体上に従来の塗布手段により塗布してもよい。塗布方法は、限定されるものではないが、エアーナイフ塗布、スロット塗布、スライドホッパー塗布、グラビア印刷、カーテン塗布などを包含してもよい。これらの方法の幾つかは、1を超える層の同時塗布を可能にし、それは、製造の経済性の観点から好ましい。
【0036】
本発明において有用なインクジェット印刷システムは、プリンタと、少なくとも1つのインクと、画像記録素子、典型的には、インクジェットプリンタからインクを受理するために適したシート(本明細書では、「媒体」または「媒介物」とする)とを含む。インクジェット印刷は、デジタルデータ信号に対応して、画像記録素子に対して画素−画素方法でインク液滴を堆積させることにより、印刷された画像を生成するための非衝撃方法である。所望の印刷された画像を生み出すために、画像記録素子へのインク液滴の堆積を制御するのに利用することができる種々の方法がある。ドロップ−オン−デマンドのインクジェットとして公知である1つのプロセスにおいて、所望の印刷された画像を形成するために、画像記録素子に要求に応じて個々のインク液滴が発射される。ドロップ−オン−デマンド印刷においてインク液滴の発射を制御する一般的な方法は、圧電変換器、サーマルバブル形成または移動できるようになっているアクチュエータを包含する。
【0037】
ドロップ−オン−デマンド(DOD)液体発射装置は、長年、インクジェット印刷システムにおけるインク印刷装置として知られてきた。初期の装置は、米国特許第3,946,398号および第3,747,120号に開示されているように、圧電変換器に基づいていた。インクジェット印刷の現在の一般形式、サーマルインクジェット(または「サーマルバブルジェット」)は、米国特許第4,296,421号中で議論されているように、液滴放射を生じる蒸気バブルを発生させるために、電気抵抗式加熱器を使用する。連続インクジェットとして公知の他のプロセスにおいては、液滴の連続流れが発生され、その一部が、画像記録素子表面上に、画像様の方法で偏向され、一方、画像形成されない液滴は、捉えられて、インクだめに戻される。連続式インクジェットプリンタは、米国特許第6,588,888号、第6,554,410号、第6,682,182号、第6,793,328号、第6,866,370号、第6,575,566号および第6,517,197号中に開示されている。
【0038】
インクジェット印刷の技術分野で公知のインク組成物は、水性または溶媒ベースであってもよく、また室温および圧力で液体、固体またはゲル状態であってもよい。水性ベースのインク組成物は、溶媒ベースのインクに比べて環境によりやさしく、またさらに、大抵のプリントヘッドが、水性ベースのインクによる使用のために設計されているので、好ましい。
【0039】
顔料、染料、ポリマー染料、染料充填/ラテックス粒子、または他のタイプの着色剤もしくはそれらの組み合わせで、インク組成物を着色してもよい。顔料ベースのインク組成物が使用される、なぜなら、他のタイプの着色剤から作られる印刷された画像と比較して、光およびオゾンに対して良好な耐性を持った同等の光学密度を与える印刷画像を提供するためである。インク組成物中の着色剤は、黄色、マジェンタ、シアン、黒、灰色、赤、紫、青、緑、オレンジ、茶色などであってもよい。
【0040】
インクジェット印刷の課題は、種々のタイプのインクジェット受器上で作り出される画像の安定性および耐久性である。インク着色剤として顔料を採用したインクは、特に、ミクロ多孔質の写真光沢のある受器上に印刷されたとき、光退色および環境汚染による退色に対する染料ベースのインクに比べて、優れた画像安定性を提供することは、一般的に知られている。良好な物理的耐久性(例えば、耐摩耗性)のためには、インク組成物へのバインダーポリマーの添加により、顔料ベースインクを向上できる。
【0041】
本発明において有用なインク組成物は、水性ベースである。本明細書において、水性ベースとは、インク組成物中の液体成分の大部分が、水、好ましくは、50%を超える水、より好ましくは、60%を超える水であるという意味である。
【0042】
本発明で有用な水組成物は、インク組成物がプリントヘッドのノズル中で乾燥すること、または外皮で覆われることを防止するために、インク組成物中での成分の溶解性を上げるために、または印刷後の画像記録素子中へのインク組成物の浸透を容易にするために、保湿剤および/または共溶媒を含んでいてもよい。本発明で使用される保湿剤および/または共溶媒の代表的な例は:(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、フルフリルアルコールおよびテトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類;(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチルプロパンジオール、糖類および糖アルコールならびにチオグリコールなどの多価アルコール類;(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの、多価アルコール類から由来する低級モノおよびジアルキルエーテル類;(4)尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの窒素含有化合物;ならびに(5)2,2’−チオジエタノール、ジメチルスルホキサイドおよびテトラメチレンスルホンなどの硫黄含有化合物を包含する。
【0043】
顔料ベースインクは、他のタイプの着色剤から作られた印刷画像に比べて、高い光学密度を有する印刷された画像と光およびオゾンに対する良好な抵抗とを与えるため、本発明で有用なインク組成物は、顔料ベースである。本発明で有用なインクにおいて使用してもよい顔料は、米国特許第5,026,427号、第5,085,698号、第5,141,556号、第5,160,370号および第5,169,436号中に開示されているものを包含する。顔料の正確な選択は、色の再現性および画像の安定性などの具体的な応用および性能要求に依存している。
【0044】
本発明における使用に適した顔料は、限定されるものではないが、アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、b−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジスアゾ縮合顔料、金属錯体顔料、イソインドリノンおよびイソインドリン顔料、多環式顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバスロン顔料、アントアントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、酸化チタン、酸化鉄およびカーボンブラックを包含する。
【0045】
使用され得る顔料の典型的な例は、色指数(C.I.)黄顔料、1、2、3、5、6、10、12、13、14、16、17、62、65、73、74、75、81、83、87、90、93、94、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、111、113、114、116、117、120、121、123、124、126、127、128、129、130、133、136、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、183、184、185、187、188、190、191、192、193、194;C.I.赤顔料、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、21、22、23、31、32、38、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、49:3、50:1、51、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、68、81、95、112、114、119、122、136、144、146、147、148、149、150、151、164、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、192、194、200、202、204、206、207、210、211、212、213、214、216、220、222、237、238、239、240、242、243、245、247、248、251、252、253、254、255、256、258、261、264;C.I.青顔料、1、2、9、10、14、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15、16、18、19、24:1、25、56、60、61、62、63、64、66、橋かけされたアルミニウムフタロシアニン顔料;C.I.黒顔料、1、7、20、31、32;C.I.オレンジ顔料、1、2、5、6、13、15、16、17、17:1、19、22、24、31、34、36、38、40、43、44、46、48、49、51、59、60、61、62、64、65、66、67、68、69;C.I.緑顔料、1、2、4、7、8、10、36、45;C.I.紫顔料、1、2、3、5:1、13、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、50;およびそれらの混合物を包含する
【0046】
分散剤または界面活性剤を使用しない自己分散型顔料も、本発明において有用であり得る。このタイプの顔料は、酸化/還元、酸/塩基処理、またはカップリング化学を経由した官能化などの表面処理を受けたものであって、その結果、別の分散剤が必要ではない。該表面処理は、アニオン性、カチオン性または非イオン性基を用いて、顔料の表面を与えることができる。例えば、米国特許第6,494,943号および第5,837,045号を参照のこと。自己分散型顔料の例は、CAB−O−JET(登録商標)200およびCAB−O−JET(登録商標)300(キャボット・スペッシャルテイ・ケミカルズ社)およびBONJET(登録商標)CW−1、CW−2およびCW−3(オリエント化学工業株式会社)を包含する。特に、自己分散型カーボンブラック顔料インクを、本発明に有用なインクセットにおいて用いてもよく、そこでは、インクは、無機塩基により中和された酸基を含む水溶性ポリマーを含み、また、カーボンブラック顔料は、同一出願人による米国特許公報第2008/0206465中で開示されているように、11重量%以上の揮発性表面官能基を含む。
【0047】
本発明において有用な顔料ベースのインク組成物は、インクジェット印刷の技術分野で公知の如何なる方法によっても製造してもよい。有用な方法は、一般に、2つの工程:(a)顔料を一次粒子に粉砕し、ここで、一次粒子が、微粒子システム中で最小の同定可能な一区画として定義される分散または粉砕工程、および(b)工程(a)からの顔料分散が残りのインク成分で希釈され作業強度のインクを与える希釈工程を含む。
【0048】
粉砕工程(a)は、メディアミル、ボールミル、2ロールミル、3ロールミル、ビーズミルおよびエアージェットミルなどの如何なるタイプの粉砕機を用いて行われる。粉砕工程(a)では、顔料は、工程(b)中で顔料分散体を希釈するために使用したのと典型的には同一または類似の媒体中に場合により懸濁される。不活性な粉砕媒体が、顔料を一次粒子に粉砕するのに役立てるために、場合により、粉砕工程(a)中に存在する。不活性な粉砕媒体は、例えば米国特許第5,891,231号中で記載されているように、ポリマービーズ、ガラス、セラミックス、金属およびプラスチックなどの材料を包含する。粉砕媒体は、工程(a)において得られた顔料分散体から、または工程(b)中で得られたインク組成物から除去される。
【0049】
顔料を一次粒子に粉砕するのに役立せるために、粉砕工程(a)中に、場合により分散剤が存在する。工程(a)中で得られた顔料分散体または工程(b)中で得られたインク組成物に関して、粒子安定性を維持するために、また、沈降を避けるために、分散剤が場合により存在する。本発明の使用に適した分散剤は、限定されるものではないが、インクジェット印刷の技術分野において一般的に使用されるものを含む。水性顔料ベースのインク組成物に有用な分散剤は、例えば、米国特許第5,679,138号、第5,651,813号または第5,985,017号中に記載されているように、ドデシル硫酸ナトリウム、またはオレイルメチルタウリン酸ナトリウムもしくはカリウムなどの、アニオン性、カチオン性または非イオン性界面活性剤を包含する。
【0050】
ポリマー型分散剤は、水性顔料ベースのインク組成物においても公知でありまた有用である。粉砕工程(a)の前または間に、顔料分散体に対してポリマー型分散剤を添加してもよく、またポリマー型分散剤は、アニオン性、カチオン性もしくは非イオン性ポリマー;またはランダム、ブロック、分枝もしくはグラフトポリマーなどのホモポリマーおよびコポリマーなどのポリマーを含む。粉砕操作で有用なポリマー型分散剤は、親水性および疎水性部分を有するランダムおよびブロックコポリマー;例えば、米国特許第4,597,794号、第5,085,698号、第5,519,085号、第5,272,201号、第5,172,133号または第6,043,297号を参照のこと;およびグラフトコポリマー;例えば米国特許第5,231,131号、第6,087,416号、第5,719,204号または第5,714,538号を参照のこと;を包含する。
【0051】
着色剤相およびポリマー相を有する複合着色剤粒子は、本発明に有用な水性顔料ベースのインクにも有用である。複合着色剤粒子は、顔料の存在下にモノマーを重合することによって形成される;例えば、米国特許公報第2003/0199614号、第2003/0203988号または第2004/0127639号を参照のこと。マイクロカプセルに包まれたタイプの顔料粒子も有用であり、また樹脂フィルムが塗布された顔料粒子から構成されている;米国特許第6,074,467号を参照のこと。
【0052】
本発明で有用なインク組成物中に使用される顔料は、有効量、一般的には、0.1〜10重量%好ましくは、0.5〜6重量%で存在していてもよい。
【0053】
インクジェット組成物は、無機粒子またはポリマー粒子などの非着色粒子も含んでいてもよい。そのような粒子状追加物の使用は、特に、写真品質の画像形成用に意図されたインクジェットインク組成物において、過去数年間に亘り増加してきた。例えば、米国特許第5925178号は、画像記録素子における顔料粒子の光学密度および耐摩擦性の向上のために、顔料ベースのインク中での無機粒子の使用を記載している。他の例においては、米国特許第6508548号は、印刷画像の光およびオゾン抵抗性を向上させるために、色素ベースのインク中への水分散性のポリマーラテックスの使用を記載している。
【0054】
インク組成物は、印刷画像の光沢差、光およびオゾン抵抗性、水堅牢性、耐摩擦性および他の種々の特性を向上させるために、無機粒子またはポリマー粒子などの非着色粒子を含んでいてもよい;例えば、米国特許第6,598,967号および第6,508,548号を参照のこと。着色されていない粒子を含み、着色剤を含まない無色のインク組成物を使用してもよい。例えば、米国特許公報第2006/0100307号は、水性媒体とミクロゲル粒子とを含むインクジェットインクを記載している。無色のインク組成物は、当該技術分野において、“定着剤”として、または普通紙において色間のにじみおよび水堅牢性を減少させるために、着色されたインク組成物の下、上または共に印刷される不溶化流体として、しばしば使用されている;例えば、米国特許第5,866,638号または第6,450,632号を参照のこと。無色インクはまた、通常は引っ掻き抵抗および水堅牢性の改良のために、印刷画像へのオーバーコートを提供するために使用されている;例えば、米国特許公報第2002/0009547号または欧州特許公報第1,022,151号を参照のこと。無色インクはまた、印刷された画像中での光沢差を減少するために使用されている;例えば、米国特許第6,604,819号または米国特許公報第2003/0085974号、第2003/0193553号または第2003/0189626号を参照のこと。
【0055】
本発明中に使用されるインクに有用な無機粒子の例は、限定されるものではないが、アルミナ、べーマイト、粘土、炭酸カルシウム、二酸化チタン、か焼粘土、アルミノシリケート、シリカまたは硫酸バリウムを含む。
【0056】
水性ベースのインク用には、本発明に有用なポリマーバインダーが、付加ポリマーまたは縮合ポリマーのいずれかとして、一般的に分類される水分散ポリマーを包含し、その両者は、ポリマー化学技術における当業者によく知られている。このポリマークラスは、アクリル系、スチレン系、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ酸無水物およびそれらの組み合わせからなるコポリマーを包含する。そのようなポリマー粒子は、アイオノマー、フィルム形成性、非フィルム形成性、可融性または重架橋性であってもよく、また幅広い分子量およびガラス転移点を有していてよい。
【0057】
有用なポリマーバインダーの例は、JONCRYL(登録商標)(S.C.ジョンソン社)、UCAR(商標)(ダウケミカル社)、JONREZ(登録商標)(MeadWestvaco Corp.)およびVANCRYL(登録商標)(Air Products and Chemicals社)という商品名の下に販売されているスチレンーアクリルコポリマー;EASTMANAQ(商標)(イーストマンケミカル社)という商品名の下に販売されているスルホン化ポリエステル;およびポリエチレンまたはポリプロピレン樹脂エマルジョンおよびポリウレタン(Witco社からのWITCOBONDS(商標)など)を包含している。これらのポリマーは、典型的な水性ベースインク組成物中で相溶性であるため、また物理的摩耗、光およびオゾンに対する高度な耐性がある印刷画像を与えるため、好ましい。
【0058】
本発明中で使用されるインク組成物に有用な無色粒子およびバインダーは、有効量、一般には0.01〜20重量%、好ましくは、0.01〜6重量%で存在してもよい。材料の正確な選択は、印刷された画像の具体的な応用および性能要求に依存している。
【0059】
インク組成物はまた、水溶性ポリマーバインダーを含んでいてもよい。インク組成物において有用な水溶性ポリマーは、それらが、インクの水相中または水/水溶性溶媒相の組み合わせ中で溶解するポリマー粒子から区別される。本明細書において、「水溶性」という用語は、ポリマーが、水中に溶解されるとき、また、ポリマーが、少なくとも部分的に中和されるときに、生成した溶液が、視覚的に透明であることを意味する。このクラスのポリマー中には、非イオン性、アニオン性、両性およびカチオン性のポリマーが含まれる。水溶性ポリマーの代表的な例は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンイミン、ポリアミドおよびアルカリ可溶性樹脂、ポリウレタン(米国特許第6,268,101号中に見出されるものなど)、ポリアクリル酸およびスチレン−アクリル酸メタクリル酸コポリマー(JONCRYL(登録商標)70(S.C.ジョンソン社)、TRUDOT(商標)IJ−4655(MeadWestvaco Corp.)およびVANCRYL(登録商標)68S(Air Products and Chemicals社)など)を包含する。
【0060】
本発明中で有用なインクセットのインクにおいて使用され得る水溶性アクリルタイプポリマー添加剤および水分散性ポリカーボネートタイプまたはポリエーテルタイプポリウレタンの例は、同一出願人による米国特許公報第2008/0206465号および第2008/0207811号中に記載されている。本発明中で使用されるインクにおいて有用なポリマーバインダー添加剤は、例えば、米国特許公報第2006/0100307号および第2006/0100308号中にも記載されている。
【0061】
実際、インクセットのインクが、プリントに所望のインターカラーにじみを提供できるように、インクの静的および動的表面張力が制御される。特に、シアン、マジェンタ、黄色および黒の顔料ベースのインクおよび無色の保護インクを含むインクセットの全てのインクに対する10ミリ秒の表面寿命における動的表面張力が、35mN/m以上であるべきであり、一方、黄色インクおよび無色保護インクの静的表面張力は、インクセットのシアン、マジェンタおよび黒のインクの静的表面張力より少なくとも2.0mN/m小さくするべきであり、またミクロ多孔質の写真光沢紙および普通紙の両方へのインターカラーにじみに対する許容できる性能を与えるために、無色保護インクの静的表面張力は、黄色インクの静的表面張力より少なくとも1.0mN/m小さくするべきである。黄色インクの静的表面張力は、透明保護インクを除いたインクセットの全ての他のインクより少なくとも2.0mN/m小さくし、また透明保護インクの静的表面張力は、黄色インクを除いたインクセットの全ての他のインクより少なくとも2.0mN/m小さくすることが一般的に好ましい。
【0062】
インクの表面張力を適当なレベルに調節するために、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性であってもよく、またインク組成物の0.01〜5%のレベルで使用される。適当な非イオン性界面活性剤の例は、線状または2級アルコールエトキシレート類(ユニオンカーバイド社から入手可能なTERGITOL(商標)15−SおよびTERGITOL(商標)TMNシリーズおよびUniquemaからのBRIJ(登録商標)シリーズなど)、エトキシル化されたアルキルフェノール類(ユニオンカーバイド社からのTRITON(商標)シリーズなど)、フルオロ界面活性剤(デユポン社からのZONYLS(登録商標)および3MからのFLUORADS(商標)など)、脂肪酸エトキシレート類、脂肪酸アミドエトキシレート類、エトキシル化およびプロポキシル化ブロックコポリマー(BASF社からのPLURONIC(登録商標)およびTETRONIC(登録商標)など)、エトキシル化およびプロポキシル化シリコーンベース界面活性剤(CK Witco社からのSILWET(商標)など)、アルキルポリグリコシド類(Cognis社からのGLUCOPONS(登録商標)など)およびアセチレンポリエチレンオキサイド界面活性剤(Air Products and Chemicals社からのSURFYNOL(登録商標)など)を包含している。
【0063】
アニオン性界面活性剤の例は、カルボキシル化界面活性剤(エーテルカルボキシレートおよびスルホサクシネートなど)、硫酸化界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウムなど)、スルホン化界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルジフェニルオキサイドジスルホン酸塩、脂肪酸タウリル酸塩およびアルキルナフタレンスルホン酸塩など)、リン酸化界面活性剤(Dexter ChemicalからのSTRODEX(商標)を含めたアルキルおよびアリールアルコールのリン酸化エステル)、ホスホン化アミンオキサイド界面活性剤およびアニオン性フッ素化界面活性剤を含む。両性界面活性剤の例は、ベタイン、サルテインおよびアミノプロピオネートを含む。カチオン性界面活性剤の例は、四級アンモニウム化合物、カチオン性アミンオキサイド、エトキシル化脂肪族アミンおよびイミダゾリン界面活性剤を含む。上記界面活性剤の追加の例は、「McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents」2003年北米版中に記述されている。
【0064】
殺生物剤は、水性インクにおいてカビ、糸状菌などの微生物の成長を抑制するために、インクジェットインク組成物に添加されてもよい。インク組成物用の好ましい殺生物剤は、0.0001〜0.5重量%の最終濃度でのPROXEL(商標)GXL(Avecia Specialities)である。インクジェットインク組成物中に場合により存在してもよい追加の添加剤は、増粘剤、伝導度向上剤、抗コゲーション剤、乾燥剤、水堅牢剤、染料溶解剤、キレート剤、バインダー、光安定化剤、粘度向上剤、緩衝剤、抗カビ剤、アンチカール剤、安定化剤および消泡剤を包含する。
【0065】
本発明で有用な水性インク組成物のpHを、有機または無機の酸または塩基の添加により調節してもよい。有用なインクは、使用される染料または顔料のタイプにもよるが、好ましくは2〜10のpHを有し得る。典型的な無機酸は、塩酸、リン酸および硫酸を包含する。典型的な有機酸は、メタンスルホン酸、酢酸および乳酸を包含する。典型的な無機酸は、アルカリ金属水酸化物および炭酸塩を包含する。典型的な有機塩基は、アンモニア、トリエタノールアミンおよびテトラメチルエチレンジアミンを包含する。
【0066】
インク組成物の正確な選択は、インク組成物が噴出されるプリントヘッドの具体的な応用および性能要求に依存している。熱および圧電によるドロップ−オン−デマンド・プリントヘッドおよび連続プリントヘッドは、インクジェット印刷の技術分野でよく知られているように、信頼性がありまた正確なインクの噴出を達成するために、各々、一連の異なる物理的特性を有するインク組成物を必要とする。許容される粘度は、20cp以下であり、好ましくは、1.0〜6.0cPの範囲である。
【0067】
カラーインクジェット印刷に関して、減法混色系として機能することを意図しているインクジェットインクセットには、シアン、マジェンタおよび黄色インクが必要とされる。画像中に暗い領域を与えるように要求されているインクを減少させるために、またテキストのような黒白の文書を印刷するために、黒インクがインクセットに添加されていることが非常に多い。ミクロ多孔質の写真光沢および普通紙への印刷の要求は、インクセット中に複数の黒インクを提供することにより満たされ得る。この場合、黒インクの1つは、ミクロ多孔質の写真光沢受器への印刷により良好に適応し得る一方で、他の黒インクは、普通紙への印刷により良好に適応し得る。この目的のための別の黒インク処方の使用は、望みの印刷密度、印刷された光沢および受器のタイプに対する汚れ抵抗性に基づいて正当化され得る。
【0068】
他のインクをインクセット中に添加できる。これらのインクは、薄いまたは淡いシアン、薄いまたは淡いマジェンタ、薄いまたは淡い黒、赤、青、緑、オレンジ、灰などを包含する。さらなるインクは、画像品質には有益であり得るが、システムの複雑さおよびコストを追加する。最後に、それ以外には、ほとんどまたは全くインクを受理しない印刷された画像中の領域に対して、光沢均一性、耐久性および汚染抵抗性を与える目的で、無色インク組成物をインクジェットインクに添加してもよい。最後に、かなりのレベルの着色剤を含むインクを用いて印刷された画像領域に対しても、さらなる利点を有して、これらの領域に無色インク組成物を添加できる。上記の目的に対する保護インクの例は、米国特許公報第2006/0100306号および第2006/0100308号中に記述されている。
【0069】
図1は、プリンタの内部部品用の保護カバー40を含むインクジェットプリンタ10の一概略例を示している。プリンタは、トレイ中に媒体供給20を含んでいる。プリンタは、プリントヘッド30にインクを供給する1つ以上のインクタンク18(ここでは、4種のインクを有するとして示している)を含んでいる。プリントヘッド30およびインクタンク18は、台車100上に搭載されている。プリンタは、プリントヘッド30からインクの液滴を発射するコマンドであるとして制御器(示されていない)により解釈される信号を提供する画像データ源12を含んでいる。プリントヘッドは、インクタンクと統合されているかまたは分離されていてもよい。例示するプリントヘッドは、米国特許第7,350,902号中に記述されている。典型的な印刷操作においては、媒体シートは、媒体供給トレイ中の記録媒体供給20から、プリントヘッド30がインクの液滴を媒体シート上に堆積させる領域まで移動する。印刷された媒体収集物22は、出口トレイ中に蓄積される。
【0070】
図2は、その側面図において概略的に示されているように、どのようにして、インクジェットプリンタが、プリンタを経由して媒体シート、例えば、紙を進めるための種々のローラを含むかを概略的に示している。この例において、ピックアップローラ320は、媒体供給トレイ360に置かれる記録媒体供給20の一番上の媒体シート371を矢印302の方向に移動させる。回転ローラ322は、プリンタにおいて矢印方向304に沿って媒体シートが進み続けるように、媒体シート371をC−形状の経路350の周り(図示されていない湾曲した面と共同して)に移動させるように行動する。その後、媒体シート371は、フィードローラ312およびアイドラローラ323により動かされて、プリント領域303を横切りまたプリンタ台車100の下に方向304沿って進む。放出ローラ324およびスターホイール325は、印刷された媒体シート390を、方向304に沿って出口トレイ380へ移送する。正常なピックアップとフィーディングのために、全ての駆動されたローラが、前方向313に回転することが望ましい。媒体シートまたはそこに含まれる証印の特性を検出可能な任意のセンサ215を台車100上に搭載できる。媒体シートまたはそこに含まれている証印の特性を検出可能なさらなる任意のセンサ375を、媒体シート371の前面または背面に面して位置づけてもよいし、また媒体供給トレイ360を含めた媒体移送経路350に沿って有利な位置に置いてもよい。代わりに、インクジェット印刷システムは、印刷に続いて個々のプリントに切断されてよいインク記録媒体の連続ロールが供給されているプリンタを含んでいる。
【0071】
異なるタイプの画像記録素子(媒体)は、インクを吸収する能力において幅広く変動する。インクジェット印刷システムは、特定の媒体タイプ用に設計された多数の異なるプリントモードを提供する。プリントモードは、印刷操作の間のインク液滴の噴出の量、配列、およびタイミングを決定するための一連のルールである。インクジェット印刷における最適な画像再生のために、印刷システムは、供給された媒体タイプを正しいプリントモードに合わすべきである。印刷システムは、供給された媒体の属性を受け取るために、ユーザインターフェースに依存してもよく、または自動媒体検出システムを用いてもよい。媒体検出システムは、媒体の属性を検出するために、媒体検出器と、信号調節手段と、アルゴリズムまたは参照テーブルとを含んでいる。媒体検出器は、媒体タイプに対応してロゴ、パターンなどを含む媒体上に存在する証印を感知するように構成されてよく、または固有の媒体特性、典型的には光反射を検出するように構成されてよい。媒体検出器は、検出される特性に依存して、媒体シートの前または後ろを見るための位置に置かれてもよい。図2中に例示されたように、媒体検出器375は、媒体供給トレイ360中のまたは媒体移送経路350に沿って、媒体シート371を見るために置かれてもよい。または、プリント領域303に光学センサ215を置いてもよい。媒体は、米国特許第7,120,272号中に記載されている方法により検出可能な反復パターンを含んでいることが有用である。代わりに、多数の媒体検出法が、米国特許第6,585,341号中に記述されている。
【0072】
本発明中で使用されるインクジェット記録素子の実施態様は、他の特質の内でも、改良された色密度、光沢、インク容量、画像性能、支持体または下層への接着性および水堅牢性を提供する。さらに、該素子は、バンド固定、光沢差、凝集、にじみ、光、熱、または外気ガス、例えば、オゾンへの暴露による色あせ、高湿度にじみ、摩耗、亀裂、剥離および黄ばみに対する改良された抵抗性を提供する。
【実施例】
【0073】
可融性ポリマー粒子の調製
以下の手法により、反応性ポリ(メタクリル酸ブチル−メタクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル−メタクリル酸)コポリマー粒子を調製した。
【0074】
ヘッダーフラスコ:120gの脱イオン脱ガス水と、39.0gのメタクリル酸ブチルと、17.4gのメタクリル酸エチルと、5.4gのメタクリル酸グリシジルと、3.3gのメタクリル酸と、0.75gのメルカプトプロピオン酸との混合物を、ヘッダーフラスコ中に置いた。その後、0.8gの過硫酸カリウムを添加し、混合物を撹拌し、窒素でパージした。その後、0.25gのドデシル硫酸ナトリウムをフラスコに添加した。
【0075】
反応器:機械的撹拌機と還流凝縮器と窒素入口とが固定された1リットルの3つ口丸底フラスコに、100gの脱イオン脱ガス水を投入し、窒素で散布した。フラスコを、僅かに陽圧の窒素下で35℃の水浴中に置き、撹拌を開始した。その後、0.15gの過硫酸カリウムと0.9gのメタ重亜硫酸ナトリウムとを水に加えた。
【0076】
ヘッダーフラスコの内容物を、2時間かけて反応器中にポンプで入れた。ヘッダーの内容物の添加の終了に引き続き、反応混合物を35℃で30分間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。得られた可融性反応性ポリマー粒子の粒子サイズ径は、510nmであり、ポリマー粒子分布の単分散指数は、1.03であった。ポリマーの重量平均分子量は、97,000ダルトンであった。
画像記録素子の調製
【0077】
モデル塗布構造体を使用して、上記のように調製した可融性ポリマー粒子の層を含むインクジェット画像記録素子を調製した。記録素子用支持体は、普通紙であり、その上には、25ミクロンの乾燥厚さを有する多孔質の水だめ層が塗布されていた。水だめ層は、中空のポリマービーズHS3000NA(商標)(ダウケミカル)と、タルクと、ポリビニルアルコールGH17(商標)(日本合成)と、炭酸ジルコニウムアンモニウムとの、重量比が64/27/8/1である混合物を含んだ。その後、可融性ポリマー粒子層を、6456mg/mの湿潤レイダウンで水だめ層上に塗布した。塗布溶液は、上記で調製した可融性ビーズと、改質されたスチレン−ブタジエンラテックスバインダー(CP692NA(商標)ダウケミカル社)と湿潤剤との16%固体混合物から構成された。PLURONIC(登録商標)P103は、30重量%のEO基と4950ダルトンの分子量と7〜12のHLBとを有するEO/POブロックコポリマーである。TETRONIC(登録商標)T904は、40重量%のEO基と6700の分子量と12〜18のHLBとを有する。可融性ポリマー粒子対SB692NAラテックス対湿潤剤の重量比は、特に断らない限り、94/4/2であった。バインダーと湿潤剤とを含む可融性ポリマー粒子層の得られた乾燥厚さは、6ミクロンであった。追加の画像記録素子は、異なるタイプおよび/またはポリマー粒子対湿潤剤の比を用いて調製された。得られた画像記録素子を表2にまとめる。
【0078】
【表2】

注:a、b、cおよびdは、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマーではない
は、23秒のドレーブス係数を有するアルキルポリグリコシドである
は、エトキシル化フルオロ界面活性剤である
は、ソルビタンモノオレエートである
は、3秒のドレーブス係数を有するエトキシル化アルコールである
【0079】
印刷および評価
画像記録素子の発明−1〜発明−7および比較−1〜比較−11を、顔料ベースインクが備えられたKodak Easy shareシリーズ5000オールインワンプリンタ中に搭載した。カラーパッチシリーズの中で、純粋なシアン、マジェンタ、黄色および黒ならびに2次色の赤、青および緑からなる各画像記録素子上に標的画像を印刷した。パッチは、10%被覆率から400%被覆率の範囲で10%増でのインクレイダウンに対応した。にじみなどの特性が評価できるように、各パッチは、標的中で、非画像形成領域の薄い部分により分けられた。標的のさらなる領域は、パッチ間に非画像形成領域が無く互いに隣接して直接印刷されるシアン、マジェンタ、黄色、赤、緑および青の固体パッチを含んでいた。得られた印刷画像は、1時間の間乾燥され、またゾルゲル塗布されたポリイミドベルトに対して76cm/分で、4.2kg/cmの圧力および120〜180℃で、加熱されたニップにおいて融解された。
【0080】
印刷されかつ融解された画像はを以下の画像品質性能特性について評価した。
【0081】
凝集
印刷された画像を、色の固体パッチの画像素子表面中のインクの凝集またはパドリングに関して目視で評価し、凝集度を1〜4のスケールで評定した。4という値は、インクの重度の凝集を示しており、1という値は、観察できる凝集が無いことを示している。2以下の評定は、典型的な消費者の写真画像に対して許容される凝集レベルであるとみなされた。
【0082】
にじみ
印刷された標的において互いに隣接して置かれた、異なる色または密度の色パッチを検査することにより、印刷された画像を評価し、またにじみの度合いを1〜4のスケールで評定した。4という値は、1つの色パッチから他の色パッチへのインクの重度のにじみを示しており、1という値は、色パッチの間に非画像領域中への観察できるにじみが無いことを示している。2以下の評定は、典型的な消費者の写真画像に対して許容されるにじみのレベルであるとみなされた。
【0083】
耐水性および汚染耐性
各融解されたプリントは、液体に対するプリントの抵抗性を含めた物理的耐性テストを受けた。該テストは、融解されたプリントの非画像形成面に3ml容積の液体を置くことと、該液体を10分間置くこととからなる。この時間の期間の後に、該液体を、紙タオルを用いて除去し、そしてプリントにおけるなんらかの残留汚染または表面の乱れについてプリントを検査した。3つの液体、水、コーヒーおよびフルーツポンチ(赤色素#40および青色素#1を含むHawaiian Punch(登録商標))をテストに使用した。観察可能な汚れまたは乱れが無いことが明らかであれば、該プリントは、「なし」と記録され、液体に汚れまたは乱れが生じていれば、水に対して“w”、コーヒーに対して“c”またフルーツポンチに対しては、“p”を与えた。
【0084】
亀裂
各融解されたプリントは、プリントの物理的曲げに対するプリントの亀裂抵抗性を含めた物理的耐性テストを受けた。このテストは、印刷された融解された標的の部分を1インチの回転軸の周りに包むことを含んでいた。その後、印刷された標的の巻きを解き、その後、プリントの表面を亀裂の有無について検査した。亀裂は、裸眼に容易に見える3つの代表的な亀裂の場合に、1〜3のスケールで評定され、1は、可視できる亀裂が無いことを表している。
【0085】
艶消し
印刷後すぐに、各融解されたプリントの20度光沢を測定し、記録した。融解されたプリントを70℃および50%の相対湿度で24時間培養したことにより、加速された艶消しテストを行った。20度光沢を再び記録した。光沢残留に対する低い値は、融解されたプリント中の光沢の望ましくない損失を示している。
【0086】
融解されたプリントの画像品質性能のまとめを上記された各特性について表3に示している。
【0087】
【表3】

【0088】
表3中の比較例11は、インク滴がインクジェットプリンタによりその表面に適用されて、融解されたポリマー層の亀裂に適用されるとき、特に、にじみおよび凝集に関して、可融性ポリマー粒子層を有する典型的な画像記録素子が、性能制限を受けやすいということを示している。エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマーを含まない湿潤剤の存在(比較例8〜10)は、インクの堆積の間に、にじみおよび凝集をほんの僅かに改良しているように見える。しかし、汚れ抵抗性、艶消しおよび/または亀裂抵抗性が低下している。360秒以上のドレーブス係数を有するエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマーの存在(比較例1〜7)も、融解されたプリントの1つ以上の画像品質特質を含み、また、にじみおよび凝集をほんの僅かに改良している。
【0089】
表3は、本発明の画像記録素子の可融性ポリマー粒子層での、360秒以下のドレーブス係数を有するエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマー湿潤剤の存在が、得られる融解されたプリントの画像品質を大いに向上させることを明らかに示している。凝集、にじみ、および亀裂は、大いに減少されるが、汚れ抵抗性および光沢は、可融性ポリマー粒子層中に湿潤剤を含まない記録素子に比べて維持される。
【0090】
部品リスト
10 インクジェットプリンタ
12 画像データ源
18 インクタンク
20 記録媒体供給
22 印刷された媒体収集物
30 プリントヘッド
40 保護カバー
100 台車
215 光学センサ
302 媒体方向
303 プリント領域
304 媒体方向
312 フィードローラ
313 順方向
320 ピックアップローラ
322 ターンローラ
323 アイドラローラ
324 放出ローラ
325 星型車輪
350 媒体移送経路
360 媒体供給トレイ
371 媒体シート
375 さらなる光学センサ
380 媒体出力トレイ
390 印刷された媒体シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、ならびにa)可融性ポリマー粒子、およびb)エチレンオキサイド部分とプロピレンオキサイド部分とを有する水溶性ブロックコポリマーにおいて、25℃における、0.1重量%の水溶液でのドレーブス濡れ係数が360秒以下を示すコポリマーを含むインク受理層を含む記録素子を搭載したインクジェットプリンタを含むインクジェット印刷システム。
【請求項2】
コポリマーが、200未満のドレーブス濡れ係数を有する、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項3】
コポリマーが、100未満のドレーブス濡れ係数を有する、請求項2記載のインクジェット記録素子。
【請求項4】
コポリマーが、7から24のHLB値を有する、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項5】
コポリマーが、12から18のHLB値を有する、請求項4記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項6】
インク受理層が、ポリマーバインダーをさらに含む、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項7】
ポリマーバインダーが、縮合ポリマーまたはスチレン−ブタジエンポリマーである、請求項6記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項8】
可融性ポリマー粒子が、縮合ポリマー、スチレンポリマー、ビニルポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマーおよびセルロースアセテートエステルポリマーを含む、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項9】
可融性ポリマー粒子が、20℃を超えるガラス転移温度を有する、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項10】
可融性ポリマー粒子が、融解工程の間、互いに反応性である官能基を含む、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項11】
可融性ポリマー粒子が、0.05ミクロンから5ミクロンの範囲の重量平均径を有する、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項12】
エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコポリマーが、可融性ポリマー粒子の重量の0.5から10%でインク受理層中に存在する、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項13】
インク受理層が、1ミクロンから50ミクロンの乾燥塗布厚さを有する、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項14】
インク受理層と支持体の間に配置された第2の多孔質層をさらに含む、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項15】
第2の多孔質層が、中空ポリマー粒子を含む、請求項14記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項16】
インク受理層と支持体との間に配置された第2層をさらに含み、第2層が、可融性ポリマー粒子および媒染剤を含む、請求項1記載のインクジェットプリンタシステム。
【請求項17】
支持体、ならびにa)可融性ポリマー粒子、およびb)エチレンオキサイド部分とプロピレンオキサイド部分とを有する水溶性ブロックコポリマーにおいて、25℃における、0.1重量%の水溶液でのドレーブス濡れ係数が360秒以下を示すコポリマーを含む層を含むインクジェット記録媒体。
【請求項18】
I)水性インクジェットインクを用意することと;
II)支持体、ならびにa)可融性ポリマー粒子、およびb)エチレンオキサイド部分とプロピレンオキサイド部分とを有する水溶性ブロックコポリマーにおいて、25℃における0.1重量%の水溶液でのドレーブス濡れ係数が360秒以下を示すコポリマーを含む可融性層を含むインクジェット記録素子を用意することと;
III)インクジェットインクをインク滴の形態で可融性層上に噴出させて、印刷された画像を形成することと;
IV)印刷されたインクジェット記録素子を融解することと
を含む、インクジェット画像を印刷する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−504071(P2012−504071A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530039(P2011−530039)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/005260
【国際公開番号】WO2010/039181
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】