可逆性ミセル及びそれを使うための適用
本発明は、セルフクリーニング表面及び捕獲/放出物質を提供するためのコーティング表面で使う新規な(AB)ブロックコポリマーに関し、このコポリマーは、以下の成分:フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマー(A1)のホモポリマー;フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマー(A1)と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマー(A2)とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマー(A1A2);フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマー(A1)と、シリルアクリレート又はメタクリレートモノマー(A3)とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマー(A1A2);及びシリルアクリレート又はメタクリレートモノマー(A1)と、フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマー(A2)と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマー(A3)とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマー(A1A2A3)から成る群より選択されるポリマーを含む第1の疎水性ブロック(A)と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーを含む第2の親水性ブロック(B)とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中で可逆性ミセルを作り出すための新規組成物及びそれを使うための適用に関する。
【背景技術】
【0002】
表面の制御された濡れは、衣類及び織物、コンクリート又はペンキ、窓及び風防ガラスの防水などの多くの適用の可能性を有する。さらに、制御された固液界面特性は、水着、潜水服、ボート及び船、並びに微小流体素子などの分野で使うための低摩擦面を作り出すのに利益を有し得る。
「掃除しやすい」又は「セルフクリーーニング」表面コーティングの分野のさらなる適用も可能である(1、2)。このような表面は、通常、水が表面から「離れる」ときに、付着されにくいよごれ粒子を水が集めるように、よごれの付着を最小限にして撥水性を強化することによって、掃除を楽にするように設計される(3)。多くの場合、WO96/04123に記載されているような「セルフクリーニング面」は「ロータス効果(Lotus-effect)」面又はコーティングと呼ばれ、この技術は「ロータス効果」技術と呼ばれる。このような「セルフクリーニング面」は、製造中に表面構造を直接疎水性ポリマーから創造するか、又は製造後に表面構造を創造することによって、具体的には、その後のインプリンティング若しくはエッチングによるか又は疎水性ポリマー製ポリマーの付着によって、作り出される。
【0003】
表面の濡れを制御する種々の方法が報告されており(4、5)、両方とも表面化学及び表面形態学の制御に基づいている(6)。さらに最近、これらの2つのアプローチの組合せが使用された(3、7)。例えば、基本的な表面の濡れ理論から、低エネルギー面(100°を超える大きい接触角を伴う)は水をはじく傾向があることが分かる。その結果がその面を容易に離れる液滴の形成だろう。
米国特許出願第2002/0048679号(及び欧州特許出願第EP1018531号)は、非常に親水性又は疎水性のどちらかでなければならないときに水が容易に流れ去る表面について述べている。親水性の表面は水との低い接触角を有し、これが表面上の水の急速な分布をもたらし、最終的に、結果として生じた水の薄膜が表面から急速に流れ去る。対照的に、疎水性の表面は水との大きい接触角のため液滴を形成する。これらの液滴は傾斜面から容易に転がり落ち得る。
多くの化学的物質は、このような撥水性を生じさせ得ることが分かっており;一般に化学的物質は非常に低い誘電率を有し、電荷のない有機物である。これらには、ハロゲン化有機ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と誘導体のような物質がある(8)。このような表面を製造するための1つのアプローチは、例えば外観、耐久性、付着、及び問題の表面上への直接適用の要求の適切な特性を備えたいくつかの新しい物質の薄層を適用することが多い。このような表面コーティングは容易かつ均一に適用され;合理的な量の時間とプロセス制約内で確立され;それらの合成及び適用において最小限の環境への影響を有し;環境攻撃の作用に耐え;かつ良い経済価値を与えるべきである。
今日までに、このような物質に関連する主な問題として、以下のものが挙げられる。
(a)該物質は限られた数の有機溶媒にしか溶けないことが多いので、どうやって問題の表面上に該物質を沈着させるか? その結果は、例えば、スピンキャスティング法であり、通常、溶媒を気前よく使う必要があり、費用と環境の問題を伴う。
(b)「実体面」で適用及び使用するときの該コーティングの耐久性。実体面で使用するときの摩耗及び衝撃によるコーティングの損傷は、その有効性の妥協につながり得る。再コーティングは困難かつ高価だろうし、さらに環境の関心事と同じ問題を有するだろう。
(c)太陽光によって引き起こされる光分解作用も表面の完全性を譲歩し、再適用の必要をもたらし得る。
【0004】
開始剤として過酸化物又はアゾ化合物を用いる水混和性有機溶媒中の溶液中でのモノマーのラジカル共重合によって調製されたランダムフッ素化コポリマーが、種々の基材上でのその疎水性及び指紋に耐える(oleophobic)特性と共に開示されている(例えば、EP 542598、US 1106630及びUS 2004026053を参照されたい)。
米国特許第5,324,566号は、撥水面を作り出すための疎水性フッ素化シロキサンポリマーについて記述している。この特許では、表面及び/又は表面薄膜上に表面の不規則さを形成することによって、フッ素化シロキサンポリマー表面薄膜の撥水特性を改善できることが開示されている。一形態では、表面が約0.1μmから可視光の波長までの高さの不規則さを備える。同様に、米国特許第5,599,489号及びEP 0 933 388 A2は、構造化表面がフッ素含有ポリマーをどのように含むか、又はアルキルフルオロシロキサンを用いてどのように処理したかを開示している。
U.S. 2002/0048679は、滑らかな極端に疎水性のポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)薄膜を有する表面並びに液滴を形成せずに水及びよごれが流れ去り得る表面の例として、滑らかな極端に親水性のポリマー薄膜を有する表面を開示している。U.S. 2002/0048679は、表面上の疎水性コーティングの下に特定のシラン誘導体を適用することによって、長期の疎水性コーティングをどのように形成できるかについてさらに述べている。他のセルフクリーニング表面は、米国特許出願番号US 2002/0150723、US 2002/0150724、US 2002/0150725、US 2002/0150726、US 2003/0013795及びUS 2003/0147932に記載されている。
米国特許第3,354,022号は、凹凸のある微細な粗い構造とフッ素含有ポリマーに基づく疎水性物質とを有する撥水性表面を開示している。一実施形態によれば、基材をガラスビーズ(3〜12μmの直径)と、フルオロアルキルエトキシメタクリレートポリマーであるフルオロカーボンワックスとを含む懸濁液でコーティングすることによって、セルフクリーニング効果のある表面をセラミックブリック又はガラスに適用できる。不運なことに、このようなコーティングは、低い耐摩耗性と中程度のセルフクリーニング効果しか持たないという欠点を有する。
【0005】
非常に疎水性の表面を作り出すために設計された表面コーティングのさらなる開発は、コポリマー、ポリマーブレンド及びポリマーとナノ粒子(例えば、US 6800354、US 7112621B2、US 7196043及びDE 10016485.4に記載されている二酸化チタン)の混合物の使用を含む。例えば、120°までの接触角を与え得るフルオロカーボンポリマーを用いて被覆表面を作り出した。二酸化チタン(TiO2)をも表面コーティングに使用した;UV照射下では、TiO2は光触媒活性があり、水の加水分解作用の結果として超濡れ効果を生じさせ得る(9)。従って、非常に疎水性のポリマーと混合すると、UV光を用いた活性化後に濡れが切り換わり得る。
ナノ粒子を用いた該表面の調製は、有機溶媒の使用(米国特許第3,354,022号)及びその後の熱処理の使用(米国特許第6800354号)といったいくつかの重大な欠点に苦しむ。従って、水によって「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」であり、かつ透明な表面を作り出すための水性システムを含む簡単な方法が要望されている(該表面は必ずしも疎水性でなくてよいが、US 2002/0048679で例示されているように親水性でもよい)。
【0006】
最近、良く制御されたミクロンサイズの粗さを有する表面を作り出すことによって、表面の濡れの制御を改善できることも実証された(10)。このような粗い表面の特徴は、空気をふさぐこと及び水滴と表面との間の接触面積を小さくすることを含む物理的方法で「超疎水性」基材を作り出すのに役立つ。根底の下層にある面はそれ自体疎水性でなければならならず、粗さ効果と組合わせると、このことが、極端に疎水性である150°超えの接触角を有する表面を生じさせる。しかし、このような表面は製造しにくく、通常、非常にもろく、容易に損傷し、ミクロンスケールの特徴が光による回折作用を引き起こすことがあるので、ガラスに係わる用途で使うためには問題があるだろう。
これらの困難さにかかわらず、これらの技術に基づく製品(又はその誘導体)が市場に出現し始めている。これは、ランダムな粗さを用いて回折の問題を克服しているセルフクリーニングガラス表面については特に真実である。しかし、これらの表面が経時的にどれだけ有効かはまだ不明である。
【0007】
「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」表面を有することに加え、表面が審美的に美しい仕上げ、例えば、合理的な期間(例えば、数週間〜数ヶ月の間)続く、スポットがないか又は光沢のある仕上げを有することが望ましいことが多い。現在、スポットがない仕上げを与えようとするため市場にいくつかのワックス及び他の製品がある。典型的に、これらの製品は、これらの表面を疎水的に改変して、雨水及び生水が該表面上で「玉のようになる」ように設計される。それにもかかわらず、該表面上で水が玉になると、水の玉はそれが乾燥すると表面上に沈着物を残すことから、実際には水のスポットの形成を増やすと考えられる。さらに、市販されている製品は多くの場合、使用後に水ですすぐ必要がある。通常、水が表面から乾燥すると、ウォーターマーク、しみ又はスポットが後に残る。これらのウォーターマークは、表面からの水の蒸発のため、水に溶解した固体として存在していた鉱物(例えばカルシウム、マグネシウム、ナトリウムイオン及びそれらの塩)の沈着物が後に残ったか、又は水が運んだ固体の沈着物であるか、又は洗浄製品の残物(例えば石鹸かす)であるとさえ考えられる。この問題は、すすいだ後に水が流れ出る代わりに表面上に分離した液滴又は玉を形成するように、洗浄プロセス中に表面を変える何らかの洗浄組成物によって一層悪化する。これらの液滴又は玉が乾燥して、ウォーターマークとして知られる消費者が気づくスポット又はマークを残す。当該分野で既知のこの問題を解決する手段は、ウォーターマークが形成する前に布又はセーム皮(chamois)で表面から水を拭いて乾かすことである。しかし、この乾燥プロセス(洗浄してすすいだ表面を拭き取ること)は時間がかかり、洗浄/クリーニングプロセス全体に相当な身体的努力を必要とする。
【0008】
US 5759980(Blue Coral)は、車上のウォーターマークの問題を排除する組成物を開示している。そこで開示されている洗浄組成物は、フルオロ界面活性剤又はシリコーン界面活性剤及びその混合物を含む界面活性剤パッケージと、表面に結合して表面を親水性にすることができる実質的なポリマーとを含む。
DE-A-21 61も、ポリマーエチレンイミン、ポリマージメチルアミノエチルアクリレート若しくはメタクリレート又は混合ポリマー(polymerisates)等のアミノ基含有コポリマーの適用によって、表面を親水性にする洗車用組成物を開示している。
しかし、これらの2つの特許で開示されているポリマーは、表面から製品をすすいでいる間に表面から除去される傾向があると考えられる。申し立てによると表面の親水性は開示された組成物によって与えられる。これらの組成物は、最初のすすぎ後に表面から除去され;結果として、申し立ててられた親水性も除去されだろう。しかし、これらの組成物によって与えれる利益は、表面をすすぐと失われる。
US 6846512 B2(Procter及びGamble)も、表面、特に自動車の外面を洗浄及び/又は処理するためのシステムと方法を開示している。しかし、この方法は、非光活性ナノ粒子コーティング組成物を表面に適用する必要がある。このような非光活性ナノ粒子は、無機のナノ粒子(酸化物、ケイ酸塩、炭酸塩、水酸化物、層化粘土鉱物及び無機金属酸化物)でよい。
【0009】
従って、「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」特性を有し、かつすすいだ表面を物理的に拭き取って残存水を除去しなくても、水のスポット形成が生じることをも防止する表面、すなわち処理表面が水と接触した後でさえ、ウォーターマークが出現しない表面が要望されている。
ほとんどの市販の表面コーティングは、有機溶媒中のポリマーの溶液を使用するキャスティング及び/又はスピンコーティングによって製造されているが、最近、ポリマー薄膜の化学的グラフト化に基づく代替品が、可能な代替品として議論されている。このアプローチでは、表面に化合結合しているポリマーの密集したブラシ様薄膜から成るコーティングが作り出される。結合したポリマーは、所望の濡れ性を生じさせる制御された化学を有し得る。さらに、合成ポリマー化学者に利用可能な固有の化学的多様性は、刺激応答表面を含める機会といった種々多様な物理的性質を用いて該層を作り出すことができることを意味する。
刺激応答ポリマー(11)は、何らかの物理的性質の大きな変化によるその環境の小さな変化に応答し得るポリマーである。典型的な刺激として、温度、pH、イオン強度、光照射野、電場及び磁場が挙げられる。これらの刺激の2種以上の組合せに応答するポリマーもある。コーティングでは、刺激応答ポリマーは、付着、潤滑、及び濡れ等の特性の制御された変化が必要な種々多様の可能な用途で関心があり得る。
このようなポリマーを製造するため、ポリマー又はコポリマー合成を用いて、所望の分子量及び狭い分子量分布又は多分散などの特性を有する製品を得る、制御された方法が必要である。狭い分子量分布を有するポリマーは、通常手段で調製されたポリマーとは実質的に異なる挙動と特性を示し得る。リビングラジカル重合(時には、制御されたフリーラジカル重合と呼ばれる)は、予測できる明確な構造を有するポリマーの合成の最大度の制御を与える。最近、リビングラジカル重合が、かなり多様性のブロックコポリマーを調製するために実行可能な技術であることが分かった。
制御された/リビングラジカル重合(CLRP)技術の最近の進歩は、正確に誂えたナノススケール及びミクロスケールの特徴を備えた該材料の合成の未曾有の機会を提供する。原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)、可逆的付加断片化移動重合(RAFT)は、これらの最近の技術の一部であり、なおさらに最近では、「電子移動による活性化再生」(ARGET)技術がある。これらの方法は1990年代中ごろに出現し、ラジカル重合の実験的簡易さとアニオン重合のリビング特性を組み合わせるというユニークな利点を有することから、後に広範に研究された。CLRP技術は、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、星状体、星状ブロック、ミクトアーム(miktoarm)星状体又は巨大分子ブラシ状体(brushes)等の種々多様なポリマー構築の合成を可能にする、巨大分子工学のため(すなわち、合成ポリマーの分子構造を制御するため)の先例のないツールであることが実証された。
リビング重合の特徴として、全モノマーが消費されるまで進行する重合;転化率の線形関数としての数平均分子量;反応の化学量論による分子量制御;及び逐次的なモノマー添加によるブロックコポリマーの調製が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、有機溶媒を必要とせずに表面上に沈着できる可変濡れ特性を含む新規組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、表面上の可変濡れ特性を促進する新規表面コーティングを提供することである。換言すれば、表面に対する同定可能なクリーニング利益(「より掃除しやすい」、「クリーナー長持ち」等)がエンドユーザーによって観察されることを意味する「掃除しやすい」表面を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の第一局面により、以下の成分:
(i)下記成分:
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1のホモポリマー;
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA2とを含むランダム、交互、勾配(gradient)又はブロックコポリマーA1A2;
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、シリルアクリレート又はメタクリレートモノマーA3とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマーA1A2;及び
シリルアクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA2と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA3とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマーA1A2A3
から成る群より選択されるポリマーを含む第1の疎水性ブロックA;並びに
(ii)非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーを含む第2の親水性ブロックB
を含む新規なABブロックコポリマーが提供される。
【0012】
ブロックコポリマーA-Bの各ポリマーを構成するモノマーの比は、疎水性ブロックAと親水性ブロックBの体積分率がミセルのような組織化集合体(organised aggregates)の形成をもたらすような比である。好ましくは、ブロックコポリマーABを構成するモノマーの比は、10〜80単位のAと30〜200単位のB、さらに好ましくは20〜40単位のAと80〜110単位のBを含む。最も好ましくは、ブロックコポリマーABを構成するモノマーの比は、25〜35単位のAと85〜100単位のBを含む。
本発明の好ましい実施形態では、ブロックAはフッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA1と非フッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA2のランダムコポリマーA1A2又はフッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA1のホモポリマーを含む。
ブロックAの好ましいフッ素化モノマーA1は下記一般式を有する。
【0013】
【化1】
【0014】
式中、Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基を含み、Xは、好ましくは1〜6個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を含むフッ素化アルキル基を含む。しかし、Rが水素又はメチルであることが好ましい。
好ましくは、フッ素化モノマーA1は、トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)、トリフルオロエチルアクリレート(TFEA)、ペンタフルオロプロピルメタクリレート(PFPMA)、ペンタフルオロプロピルアクリレート(PFPA)、ヘプタフルオロブチルメタクリレート(HFBMA)及びヘプタフルオロブチルアクリレート(HFBA)から成る群より選択される。さらに好ましくは、フッ素化モノマーはTFEMAである。
ブロックAの好ましい非フッ素化アクリレートモノマーA2は、下記一般式を有する。
【0015】
【化2】
【0016】
式中、Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは水素又はメチルを含む。Yがアルキルアミノアルキル基、さらに好ましくはアルキルアミノエチル基、特にジエチルアミノエチル基を含むことが好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、ブロックA(A1xA2y)は、好ましくはフッ素化モノマーA1の繰返し単位数が0〜80の範囲のxであり、かつ非フッ素化アクリレートモノマーの繰返し単位数が0〜(80−x)の範囲のyである、フッ素化アクリレートモノマーA1と非フッ素化アクリレートモノマーA2のランダムコポリマーを含む。
さらに好ましくは、ブロックAは、好ましくは下記数の繰返し単位トリフルオロエチルメタクリレート及びジエチルアミノエチルメタクリレートのランダムコポリマーを含む:
P(TFEMAx-r-DEAEMAy)(ここで、x=0〜30、y=0〜(30−x))。
ブロックAの好ましいシリルアクリレートモノマーA3は下記一般式を有する。
【0017】
【化3】
【0018】
式中、Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルを含み、Zはシリルアルキル基を含み、該アルキル基は1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。
好ましくは、シリル基は、トリアルコキシシリル基、さらに好ましくはトリメトキシシリル基である。ブロックAの好ましいシリルモノマーは、(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(TMSPMA)及び(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート(TMSPA)である。
第2ブロックBは、好ましくは水溶性であり、かつ下記好ましい一般式を有する。
【0019】
【化4】
【0020】
式中、Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルであり、R1は水素、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル又はアミノ官能基、好ましくはアルキルアミノアルキル基である。
他の好適な親水性ブロックBは、下記式を有する四級化ジアルキルアミノアルキルアクリレート又はメタクリレートモノマーである。
【0021】
【化5】
【0022】
式中、Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルであり;zは0又は1を表し;R2は-CH2-CHOH-CH2又はCxH2x(式中、xは2〜18、好ましくはxは2である)であり;R3は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基、好ましくはメチル、エチルを表す。R4は、1〜4個の炭素原子の低級アルキル基、好ましくはメチル、エチルを表す。
X-は、Cl、Br、I、1/2SO4、HSO4及びCH3SO3の群から選択される。
さらに好ましくは、第2のブロックBは、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEAEMA)、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPAEMA)、2-(N-モルフォリノ)エチルメタクリレート(MEMA)、又はその誘導体、メタクリル酸(MAA)若しくはその誘導体及びアクリル酸若しくはその誘導体から成る群より選択されるモノマーを含む。最も好ましくは第2のブロックはDMAEMA又はMAAから選択されるモノマーを含む。
本発明の好ましい実施形態では、新規コポリマーは、上記定義の割合でP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]及びP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-MAA]を含む。
好ましくは、本発明の第1局面のブロックコポリマーは、狭い分子量分布のコポリマーを得るために制御されたリビングラジカル重合を利用して調製される。好適な合成経路として、限定するものではないが、可逆的付加-断片化連鎖移動(Reversible Addition - fragmentation chain transfer)(RAFT)、基移動重合(Group transfer polymerisation)(GTP)及び原子移動ラジカル重合(Atomic transfer radical polymerisation)(ATRP)、電子移動による活性化再生(Activated regenerated by electron transfer)(ARGET)、ニトロキシド媒介重合(nitroxide-mediated polymerization)(NMP)が挙げられる。
本発明のコポリマーは水溶液中で可逆性ミセルを形成することが分かった。
本発明のブロックコポリマーは、例えば粉末として固体又は実質的に固体形態で利用可能であり、或いは組成物として利用可能である。
【0023】
従って、本発明の第2局面により、以下の成分を含む組成物が提供される:
(a)本発明の第1局面のブロックコポリマー及び
(b)(i)又は(ii)を含む液状媒体(ここで、
(i)は水と有機溶媒の混合物を含み;かつ
(ii)は実質的に無水の有機溶媒を含む)。
本発明の第2局面の組成物では、液状媒体は好ましくは水と有機溶媒の混合物、又は無水の有機溶媒を含み、ブロックコポリマーは好ましくは液状媒体に完全に溶解している。
本発明の組成物で使うのに適した有機溶媒は、好ましくは、C1-6アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、及びsec-ブタノール;線形アミド;ケトン-アルコール、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン;水混和性エーテル;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えばアセトン又はエチレングリコールから選択される水混和性の有機溶媒を含む。
本発明の組成物で使うための実質的に無水の有機溶媒は、好ましくはテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、低級アルコール、ケトン又はジメチルスルホキシドを含む群から選択される有機溶媒を含む。
さらに、液状媒体が実質的に無水の有機溶媒を含む場合、組成物は好ましくは適切な極性溶媒をさらに含む。
さらに、本発明の組成物において、無水有機溶媒は単一の有機溶媒を含むか又は2種以上の有機溶媒の混合物を含んでよいことが当業者には明白だろう。
本発明の組成物中の成分(a)と成分(b)の相対比は、好ましくは100:1〜1:100、さらに好ましくは10:1〜1:10、特に2:1〜1:2を含む。
最も好ましくは、組成物中の成分(a)と成分(b)の相対比は1:1を含む。
本発明の第2局面の組成物は、好ましくは、例えば、限定するものではないが、分散剤、香料、殺生物剤、着色剤及び安定剤から選択される追加成分をさらに含んでよいことも分かるだろう。
本発明の組成物は、多くの用途の可能性がある。本組成物はpH-感受性なので、付着、潤滑及び濡れ等の表面特性の制御された変化が必要な種々多様の考えられる用途の可能性がある。
本発明の新規組成物は、「掃除しやすい」表面/「セルフクリーニング」表面を形成するための表面のコーティングで使うのに特に適する。この目的のため、本発明の第3局面は、本発明の第1局面のブロックコポリマー又は本発明の第2局面の組成物を含む表面コーティングを提供する。
【0024】
本発明の第4局面は、基材のコーティング方法であって、以下の工程:
溶液、好ましくは例えば水溶液中の本発明の第1局面又は第2局面のコポリマーの水溶液を調製する工程及びこの水溶液に基材をさらす工程を含む方法を提供する。
好ましくは、本方法は、分子を溶液に完全に溶かすためのコポリマー分子の穏やかな撹拌を含む。好ましくは、適用前、24時間までの間、溶液は平衡を保ったままである。
基材を溶液にさらす方法は、スピンコーティング、浸漬コーティング、ローラーコーティング、ブラッシュコーティング(brush coating)、カーテンフロー(curtain flow)又は噴霧などの、溶液からコーティングを形成するいずれの公知技術をも包含する。
本発明のコーティング剤で処理できる基材として、限定するものではないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、コンクリート、紙、木材、鉱物、塗装及び/又は被覆基材が挙げられる。任意に、基材を水などの純粋溶媒ですすいで、如何なるルーズに保持されたコポリマー分子をも除去することができる。
【0025】
本発明の利点は、水によって「掃除しやすい」/「セルフクリーニング」である表面を作り出すための方法及び組成物であって、
−組成物が安定した水性システムであり;
−消費者は、同定可能なクリーニング利益を有する(「より掃除しやすい」、「クリーナー長持ち(cleaner-longer)」等)コーティングを表面に適用することができ、
−処理表面上でスポットのない仕上げが観察され(処理後に水と接触した場合でさえ、ウォーターマークが出現しない表面)、
−該方法及び組成物によって、光沢が有意に損失せずに透明なコーティングが形成される
方法及び組成物を提供することである。
本発明の第1局面のブロックコポリマーは、その開閉特性及び向上した可溶化容量のため、取込み-放出材料としても使用され得る。
従って、本発明の第5局面は、例えば有機活性物のような、ある部位に送達すべき物質、例えば、限定するものではないが薬物と共に、本発明の第1局面のブロックコポリマー又は本発明の第2局面の組成物を含む物質-送達担体を提供する。
本発明の第6局面は、ある物質の取込み/放出(uptake/release)方法であって、該物質の水溶液を本発明の第1若しくは第2局面のコポリマーと混合する工程と、この水溶液で基材をコーティングする工程と、この被覆基材を低pHの緩衝溶液ですすいで該物質を放出させる工程とを含む方法を提供する。
好ましくは、緩衝溶液は5未満のpHを有し、好ましくはpH4である。
【0026】
ここで、本発明を以下の実施例を参照して説明する。
実施例1は、RAFT、ATRP及びGTP法によるTFEMAホモポリマー、DEAEMAホモポリマー、ポリ[TFEMA-r-DEAMA]コポリマー及びポリ[TFEMA-r-DEAMA)-ブロック-DMAEMA]コポリマーの調製を示し;
実施例2は、実施例1のブロックコポリマーによる基材のコーティングを調査し;
実施例3は、実施例1のブロックコポリマーで被覆された表面の「掃除しやすい」特性を調査し;
実施例4及び5は、実施例1のブロックコポリマーの応答性取込み/放出材料としての使用を調査する。
ここで、本発明をさらに添付図面を参照しても記載かつ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】80℃でトルエン(質量で25%)、[モノマー]/[CPDB]/[AIBN]:30/1/0.4中におけるPTFEMAとPDEAEMAの重合反応速度論を示すグラフである。
【図2】80℃でトルエン(質量で25%)、[モノマー]/[CPDB]/[AIBN]:30/1/0.4中におけるPTFEMAとPDEAEMAの2-シアノプロパ-2-イルジチオベンゾエート媒介RAFT重合について溶離剤としてTHFを用いてサイズ排除クロマトグラフィーで得られた、数平均分子量(Mn)の漸進的変化対転化率のグラフである。
【図3】80℃でトルエン(質量で25%)、[モノマー]/[CPDB]/[AIBN]:30/1/0.4中におけるPTFEMAとPDEAEMAの2-シアノプロパ-2-イルジチオベンゾエート媒介RAFT重合の多分散性指数対転化率のグラフであり、PMMA標準物質及び溶離剤としてTHFを用いたSEC測定を示す。
【図4】80℃でトルエン(質量で25%)、[モノマー]/[CPDB]/[AIBN]:30/1/0.4中におけるPTFEMAとPDEAEMAの2-シアノプロパ-2-イルジチオベンゾエート媒介RAFT重合のサイズ排除クロマトグラムの時間による漸進的変化の例であり、PMMA標準物質及び溶離剤としてTHFを用いたSEC測定を示す。
【図5】80℃でトルエン中2-シアノプロパ-2-イルジチオベンゾエート媒介RAFTランダム共重合のいくつかのポリ[TFEMA-ランダム-DEAEMA]コポリマーのSECクロマトグラムであり、PMMA標準物質及び溶離剤としてTHFを用いたSEC測定を示す。
【図6】マクロRAFT剤及びP[(TFEMA9-r-DEAEMA19)-b-DMAEMA90]として用いたP(TFEMA9-r-DEAEMA19)コポリマーのSECクロマトグラムである。
【図7】マイカ-水界面に吸着したコポリマーミセルの1μm×1μmのインサイツAFM画像であり、コポリマーサンプルは500ppm濃度のP[(TFEMA5-r-DEAMEA25)-b-DMAEMA89]であり、バックグラウンド電解液は0.01M KNO3及び溶液pH=9だった。
【図8】マイカ-水界面に吸着したコポリマーミセルの1μm×1μmのインサイツAFM画像であり、コポリマーサンプルは500ppm濃度のP[(TFEMA5-r-DEAEMA25)-b-DMAEMA89] であり、バックグラウンド電解液は0.01M KNO3及び溶液pH=4だった。
【図9】時間の関数として相対吸着質量の反射光測定データを示すグラフであり、データはシリカ水界面におけるp[(TFEMA14-r-DEAEMA14)-b-DMAEMA90]の吸着に関し、コポリマーの濃度は500ppmであり、バックグラウンド電解液は0.025Mのホウ砂及び溶液pH=9だった。
【図10】P[(TFEMA9-r-DEAEMA19)-b-DMAEMA90]コポリマーサンプルのマイカ-水界面で形成された表面吸着層のインサイツAFM画像であり、バックグラウンド電解液は0.01M KNO3であり、データはpH9-pH4-pH9すすぎサイクルについてである。
【図11】マイカ-水界面で収集された力曲線データを示すグラフである。
【図12】種々のコポリマーサンプルのゼータ(Zeta)サイザーデータであり、(●)はP(DEAEMA30-b-DMAEMA95)、(■)はP[(TFEMA5-r-DEAEMA25)-b-DMAEMA89];(▲)はP[(TFEMA9-r-DEAEMA19)-b-DMAEMA90]であり、コポリマーの濃度は500ppmで、バックグラウンド電解液は0.01M KNO3であり、静的光散乱を用いてデータを収集した。
【図13】図13A〜13Eは、未被覆固体表面と、種々のコポリマーサンプルによって与えられた被覆固体表面における水滴の画像である。
【図14】P[(TFEMA25-r-DEAEMA11)-b-DMAEMA94]コポリマーサンプルのマイカ-水界面で形成された表面吸着層の粗さを示す。
【図15】被覆及び未被覆表面をすすいだ後に除去された汚れの割合の比較を示す棒グラフを示す。
【図16】汚れたパネル、すすいだ後(10mlの水)のパネル及び2回目のすすぎ(100mlの水)後の総合色差ΔEの比較を示す。
【図17】シリカ-結晶上に吸着したポリマー層の相対吸着質量であり、異なるpHにおける水晶発振子微量天秤でデータを得た。
【図18A】本発明のコーティングを施した基材の「掃除しやすい」特性を示し、汚物溶液の適用後の基材を示す。
【図18B】本発明のコーティングを施した基材の「掃除しやすい」特性を示し、自然環境の外部条件で1週間後の基材を示す。
【図18C】本発明のコーティングを施した基材の「掃除しやすい」特性を示し、自然環境の外部条件で3ヶ月後の基材を示す。
【図18D】本発明のコーティングを施した基材の「掃除しやすい」特性を示し、自然環境の外部条件で14ヶ月後の基材を示す。
【図19A】本発明のコーティングを施した基材の「スポットのない仕上げ」特性を示す。
【図19B】本発明のコーティングを施した基材の「スポットのない仕上げ」特性を示す。
【図20】(A)未被覆シリカ粒子、(B)予めオレンジOT染料を装填した本発明のミセル-コポリマーで被覆したシリカ粒子及び(C)pH4ですすいだ後のシリカ粒子の写真画像である。
【図21】(A)未被覆シリカ粒子、(B)予めクリソイジン染料を装填した本発明のミセル-コポリマーで被覆したシリカ粒子、(C)pH4で30分すすいだ後のシリカ粒子及び(D)pH4で3時間すすいだ後のシリカ粒子の写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
制御された及び/又は可変の濡れを有する表面を作り出す現存するほとんどのアプローチは、表面の複雑なミクロ機械加工又は多くの場合有機溶媒の使用に関係する固有の環境問題がある複雑かつ高価な化学的方法のどちらかを必要とする。本発明の組成物は、刺激応答性でもあり、かつ最小限の加工要求を有する単純な水ベース自己集合経路を利用する付随した「調節可能」特性を有する(ことを暗示すると考えられる濡れ利益を有する)固有のミクロ(ナノ)スケール構造の表面を作り出す。ポリマーの水性溶液を問題の表面に適用すると、表面コーティングが自発的に生成するので、表面上にポリマーを沈着させるための有機溶媒の必要性を排除する。表面コーティングは、未被覆基材より高い接触角をも与え(水をはじく傾向がある)、基材のより良い洗い流しをもたらす。
特に、本発明は、新しいファミリーのpH-応答性ABブロックコポリマーを提供し、第1ブロックAは非フッ素化アクリレートモノマーとフッ素化アクリレートモノマーのランダムコポリマー又はフッ素化アクリレートモノマーのホモポリマーである。第2ブロックBは水溶性であり、かつアクリレート若しくはアクリル酸誘導体モノマーを含む。これらの新規コポリマーは、基材に適用すされると優れた可変の濡れ表面を与えることが分かり、このことは先行技術からは予測できなかった。
【実施例】
【0029】
実施例1:本発明のポリマー及びブロックコポリマーの調製
本発明の新規ABブロックコポリマーを、RAFT剤、2-シアノプロピルジチオベンゾエート(CPDB)を用いて良く定義されたホモポリマー及びブロックコポリマーを合成できる制御された/リビング重合である可逆的付加-断片化連鎖移動(RAFT)重合によって製造したフッ素化モノマー:トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA):ポリ(TFEMA)-ランダム-ポリ(DEAEMA)-ブロック-ポリ(DMAEMA)と混合した2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEAEMA)から調製した。
各モノマーの反応速度論はユニークなので、PTFEMAとPDEAEMAの重合反応速度論の知識が、望ましい特性を有するポリマーの合成を容易にする。ポリ(TFEMA)-ランダム-ポリ(DEAEMA)コポリマーのジブロックコポリマー、及びコポリマーポリ(TFEMA)-ランダム-ポリ(DEAEMA)-ブロック-ポリ(DMAEMA)の合成も最初に実証されている。
現在の実施例はRAFT剤、CPDBを用いてブロックコポリマーを調製するが、他のRAFT剤を使用できることを理解すべきである。同様に、他の制御されたリビング重合技術、例えば基移動重合(GTP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)及び電子移動による活性化再生(ARGET)又は電子移動による活性化生成(Activated generated by electron transfer)(AGET)を利用してブロックコポリマーを調製することができる。
【0030】
(TFEMAホモポリマーのRAFT合成)
目標重合度30のPTFEMAの合成では以下の条件を用いた。マグネチックスターラーを含むシュレンク管に、TFEMA(2.53g,15.05mmol)、CPDB(0.119g,0.537mmol)、AIBN(34mg,0.207mmol)及びトルエン(溶媒、0.675g,質量で25%)を導入した。混合物を数サンプルに分けた。窒素を泡立たせて全サンプルを脱気し、窒素雰囲気下、恒温油浴内で80℃にて加熱した。重合のx時間後、バイアルを氷内に浸漬して重合を停止した(反応時間に対応する「x」の値については図1参照)。400MHzにて1H NMR分光法で、三重項ピーク(4.2ppm、モノマーCH2由来)+大きいピーク(4.1ppm、CH2ポリマー由来)と比較して、1つのビニル性プロトン(6.11ppm)について積分して転化率を決定した。PMMA標準物質校正及び溶離剤としてTHFを用いてSECで分子量と多分散指数を決定した(図2及び3参照)。実験分子量を、下記方程式(1)に従って計算した理論値と比較した。
Mnth,NMR=MCPDB+MTFEMA×{[TFEMA]0×CTFEMA}/[CPDB]0 (1)
式中、
MCPDB及びMTFEMAは、それぞれCPDB及びTFEMAの分子量であり、[CPDB]0及び[TFEMA]0は、それぞれCPDB及びTFEMAの初期濃度であり、CTFEMAは部分転化率である。AIBNによって惹起される連鎖の分子量の寄与は無視した。
(DEAEMAホモポリマーのRAFT合成)
PTFEMA重合と同様の手順をPDEAEMA合成で使用した。DEAEMA(2.78g,15.05mmol)、CPDB(0.113g,0.51mmol)、AIBN(34mg,0.207mmol)及びトルエン(溶媒、0.73g,質量で25%)を一緒に混合した。窒素を泡立たせて脱気後、窒素下80℃で重合を行った。添付図面の図1は、TFEMA及びDEAEMAホモ重合のRAFT重合反応速度論を示す。結果として生じたサンプルをSEC及びNMR分光法で分析した(図2及び3参照)。
(ポリ[TFEMA-ランダム-DEAEMA]コポリマー:P(TFEMA-r-DEAEMA)のRAFT合成)
下表1に示すように、連鎖移動剤としてCPDB、開始剤としてAIBNを用いて一連のポリ[TFEMAx-ランダム-DEAEMAy]コポリマーをRAFT重合で調製した。比[CPDB]/[AIBN]:1/0.4のため、いくつかの比のモノマーを使用した:[TFEMA]=x=0〜30、[DEAEMA]=y=30-x。
【0031】
表1:窒素下80℃で3時間にわたるTFEMAとDEAEMAのRAFTランダム共重合で使用した反応条件
【0032】
トルエン(質量で25%)中80℃で3時間にわたって重合を行った。3時間後にサンプルを取出し、得られたポリマーをTHF中のSEC及びNMRで分析した(図4参照)。
P(TFEMAx-r-DEAEMAy)コポリマーの式(x=0〜30、y=30-x)を以下に示す。
【0033】
【化6】
式(1)
【0034】
下表2はポリ[TFEMA-ランダム-DEAEMA]コポリマーの特徴づけの結果を示す。
【0035】
表2
【0036】
(ポリ[(TFEMA-ランダム-DEAEMA)-ブロック-DMAEMA]コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]のRAFT合成)
ジブロックP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]コポリマーの合成のため、RAFT合成したP(TFEMA-r-DEAEMA)をマクロRAFT剤として用いた。鎖伸長実験を行ってP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]コポリマーを得た。これにより、CPDB媒介RAFT重合で得られたP(TFEMA-r-DEAEMA)鎖の「リビングネス(livingness)」の程度を正しく評価することができた。
P[(TFEMAx-r-DEAEMAy)-b-DMAEMAz]コポリマーの式(x=0〜30;y=30-x;z=90)は以下のとおりである。
【0037】
【化7】
式2
【0038】
典型的に、重合の一般的条件はトルエン(質量で25%)中80℃で、下記比:[DMAEMA]/[マクロRAFT剤]/[AIBN]:100/1/0.4を用いた。3時間後にサンプルを取出し(DMAEMAの転化率90%)、得られたポリマーをTHF中のSEC及びNMRで分析した(図5参照)。観察されるクロマトグラムのシフトは鎖の伸長と一致する。
(マクロ開始剤としてのポリ[TFEMA-ランダム-DEAEMA]-Clコポリマー:P(TFEMA-r-DEAEMA)-ClのATRP合成)
使用前にDEAEMA、TFEMA及びDMAEMAの全成分をアルミナカラムに通して精製してインヒビターを除去した。
磁気撹拌棒を備えた25-mLの乾燥シュレンクフラスコに、塩化銅、CuCl(0.0336g,0.3mmol)を加え、シュレンクフラスコを排気して窒素を流した。脱気した注射器を用いてDEAEMA(0.77g,4.26mmol)、TFEMA(3.46g,20.6mmol)、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチル-トリエチレンテトラミン(HMTETA)(0.088g,0.4mmol)、及び脱気したメタノール(2.5mL)と蒸留水(0.5mL)をシュレンクフラスコに加えた。混合物を10分間撹拌した。次に、25±0.2℃に維持した水浴内にフラスコを置いた。最後に、p-トルエンスフホニルクロリド(p-TsCl)(0.0636g,0.3mmol)を加えた。絶えず撹拌しながら3時間反応を進行させた。反応容器を空気にさらし、氷浴内で冷却することによって重合を終わらせた。次に、10mlのCH2Cl2を加えた。溶液を塩基性のアルミニウムカラムに通してさらに100mlのCH2Cl2で溶出した。回転式エバポレーターで濃縮した後、溶液を冷ヘキサン中に注いでポリマーを沈殿させた。回収されたポリマーを真空乾燥機内で40℃にて一晩乾燥させた。ポリマーP(TFEMA24-r-DEAEMA5)-Clを得、NMR及びSECで特徴づけた。
【0039】
(ポリ[(TFEMA-ランダム-DEAEMA)-ブロック-DMAEMA]コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]のATRP合成)
前述したようにp-TsCl/CuCl開始剤系を用いてP(TFEMA-r-DEAEMA)-Clを合成した。ブロックコポリマーP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]の合成の代表的実験手順は以下のとおりである。
磁気撹拌棒を備えた25-mlのシュレンクフラスコにP(TFEMA24-r-DEAEMA5)-Cl(Mn,SEC=9200;Mw/Mn=1.09)(0.36g)及びCuCl(0.007g,0.07mmol)を加えた。次に、窒素パージした注射器を介してDMAEMA(1.38g,8.79mmol)及び脱気したメタノール/水混合溶媒(メタノール4.0ml、水0.4ml)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌した後、窒素を流して混合物を脱気した。最後に、窒素パージした注射器を介してHMTETA(0.019ml,0.08mmol)を加えた。次に、25℃に維持した水浴内にフラスコを置き、反応時間は3時間だった。冷ヘキサン中で沈殿後、回収されたポリマーP(TFEMA24-r-DEAEMA5)-b-DMAEMA30を真空乾燥機内で40℃にて乾燥させ、NMR及びSECで分析した。
【0040】
(ポリ[(TFEMA-ランダム-DEAEMA)-ブロック-DMAEMA]コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]のGTP合成)
GTPでポリマーを合成するために、まず、文献[Dicker IB, Cohen GM, Farnham WB, Hertler WR, Laganis ED, Sogah DY, Macromolecules, 23, 4034-4041 (1990)](参照によってここに援用する)に記載されているDickerらの方法によって、テトラ-n-ブチルアンモニウムビベンゾエート(TBABB)のような触媒を調製する必要がある。50mlの三つ口丸底フラスコ内で窒素パージ下にて側枝から触媒TBABB(23.6mg,0.065mmol)を加えた。次に、無水テトラヒドロフラン(100ml)をカニューレでフラスコ内に移した後、1-メトキシ-1-トリメチルシロキシ-2-メチル-1-プロパン(MTS,0.6ml,2.96mmol)を添加した。この溶液を20分間撹拌してからモノマーDMAEMA(15.68,99mmol)をカニューレで滴加した。この間に、反応容器の側面に温度計を取り付けて、モノマーの添加中の発熱をモニターした。反応温度が7〜18℃だけ上昇することが観察された。溶液の温度が室温に戻るまで(約60分)、反応混合物を撹拌した。次に、NMR及びSEC分析のため一定分量の反応混合物を注射器で抽出した。引き続き、モノマーTFEMA(2.51g,14.9mmol)とDEAEMA(2.77g,14.9mmol)の混合物をカニューレで滴加し、二番目の発熱を記録した。発熱が減じるまで(約60分)、反応混合物を室温で撹拌した。NMR及びSEC分析のためさらに一定分量を抽出した後、メタノール(3ml)でブロックコポリマーを終結させた。次に、回転式エバポレーターを用いて溶媒を除去した。最後に、冷ヘキサンでポリマーを沈殿させ、ろ過で回収してから真空乾燥機内で50℃にて一晩乾燥させた。
【0041】
(ポリ[(TFEMA-ランダム-DEAEMA)-ブロック-MAA]コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-MAA]のRAFT合成)
ジブロックP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-MAA]コポリマーの合成では、表2に示したように、RAFT合成したP(TFEMA14-r-DEAEMA14)をマクロRAFT剤として用いた。開始剤としてAIBNを用い、下記比([MAA]/[マクロRAFT剤]/[開始剤]=90/1/0.5)を利用して60℃でプロパン-2-オール中で鎖伸長実験を行ってP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-MAA]コポリマーを得た。3時間重合を進行させ、DMSO中の1H NMRで87%という転化率を得た。結果の生成物、P[(TFEMAx-r-DEAEMAy)-b-MAAz]コポリマー(x=14;y=14;z=78)をNMRで定量した。
【0042】
(マクロRAFT剤としてのポリ(TFEMA-ランダム-DEAEMA-ランダム-TMSPMS)コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA-r-TMSPMS)のRAFT合成)
マグネチックスターラーを含むシュレンク管にTFEMA(0.619g,3.68mmol)、DEAEMA(3g,16.5mmol)、TMSPMS(0.36g,1.47mmol)、CPDB(0.111g,0.5mmol)、AIBN(35mg,0.2mmol)及びトルエン(溶媒、1g)を導入した。窒素を泡立たせて混合物を脱気し、窒素雰囲気下、恒温油浴内で80℃にて加熱した。70分後、反応を0℃に冷却して重合を終わらせた。冷ヘキサン中の沈殿後、回収されたポリマーを真空乾燥内で一晩40℃にて乾燥させた。得られたポリマーP(TFEMA6-r-DEAEMA26-r-TMSPMS2)をNMR及びSECで分析した。
【0043】
(ポリ[(TFEMA-ランダム-DEAEMA-ランダム-TMSPMS)-ブロック-DMAEMA]コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA-r-TMSPMS)-b-DMAEMA]のRAFT合成)
マグネチックスターラーを含むシュレンク管に、前記マクロRAFT剤P(TFEMA6-r-DEAEMA26-r-TMSPMS2)(2.76g)、DMAEMA(8.69g,55mmol)、AIBN(36mg,0.22mmol)及びトルエン(2.85g)を導入した。窒素を泡立たせて混合物を脱気し、窒素雰囲気下、恒温油浴内で80℃にて加熱した。2時間後、反応を0℃に冷却して重合を終わらせた。冷ヘキサン中の沈殿後、回収されたポリマーを真空乾燥内で一晩40℃にて乾燥させた。得られたポリマーP(TFEMA6-r-DEAEMA26-r-TMSPMS2)-b-DMAEMA100をNMR及びSECで分析した。
【0044】
(実施例2:本発明のコポリマーによる基材のコーティング)
穏やかに撹拌しながら所望のpH及び塩条件でコポリマー分子を水に溶かした。通常、系を24時間平衡にさせて、系が完全に平衡することを確実にするが、より短いタイムスケール内で十分に平衡が達成し得ることは当業者には分かるだろう。撹拌は重要でなく、簡単な緩徐の撹拌で十分である。
次に、問題の基材を溶液にさらした。数分後に吸着が完了することが分かった。適切な適用方法として、限定するものではないが、浸漬、噴霧、スピンコーティング、ローラーコーティング、ブラッシュコーティング及び表面のすすぎが挙げられる。
次に、基材を純粋な溶媒(水)ですすいで、表面にルーズに保持されたコポリマー分子を除去した。しかし、この工程は、実際の条件下で適用するために必須でないことも理解すべきである。
添付図面の図7及び8は、吸着したミセル集合体が固液界面に見えることを示す。これらの表面吸着薄膜が自発的に生じて、連続した表面コーティングを与える。吸着薄膜は、固体表面に局所的なミクロ(ナノ)スケール構造をも与え、この構造はpH-依存性である。図7はpH9における集合体を示し、図8はpH4における集合体を示す。吸着の反応速度論データは、水性分散液から吸着が迅速に(数秒〜数分)起こることを示唆する(添付図面の図9参照)。ウォッシュオン(wash-on)及びウォッシュオフ(wash-off)データは、ルーズに結合している材料を除去する最初のすすぎ期後に吸着薄膜が頑丈であることを示唆した。これらのデータでは層の刺激応答も見られ;この応答の可逆性も見られる。
異なるpH条件下の表面のAFM画像は、図10で見られるように、構造変化が可視(かつ可逆性)であることを示している。可逆性表面挙動は、バルク溶液中のpHの関数としての可逆性ミセル形成を示すバルク挙動に関係がある。
図11は、マイカ-水界面(バックグラウンド電解液はKNO3 0.01M)で収集した力曲線データを示し、図12は、コポリマーサンプルのゼータサイザーデータを示す。さらに、pH9溶液からシリカへの沈着後に洗浄及び乾燥によって調製したコポリマーミセルの乾燥薄膜上に固着した液滴の画像を取り、図14に示すように、接触角を測定した。
図13Aは、測定した接触角が27°である未被覆シリカ表面上の水滴の画像である。
図13B〜13Eは、以下に示す異なるコポリマーサンプルで被覆した固体表面における水滴の画像である。
13B−P(DEAEMA30-b-DMAEMA95)コポリマーで被覆したシリカ。測定接触角は42°である。
13C−P[(TFEMA5-r-DEAEMA25)-b-DMAEMA89]コポリマーで被覆したシリカ。測定接触角は66°である。
13D−P[(TFEMA14-r-DEAEMA14)-b-DMAEMA89]コポリマーで被覆したシリカ。測定接触角は79°である。
13E−P[(TFEMA14-r-DEAEMA14)-b-DMAEMA89]コポリマーで被覆したアルミニウムシート。測定接触角は89°である。
空気中タッピングモードでモニターしたAFM画像からナノスコープ(Nanoscope)ソフトウェアを用いて被覆スライドガラスの粗さを計算した。スライドガラスをポリマーP[(TFEMA25-r-DEAEMA11)-b-DMAEMA94]で被覆した。水すすぎ前、最初の10mlの水によるすすぎ後、2回目及び3回目の(それぞれ10mlの水で)すすぎ後並びに続いて最後のすすぎ(500mlの水)後にAFM画像及び粗さをモニターした。各すすぎ後、スライドガラスを窒素内で乾燥させた。粗さは各すすぎ後にほぼ一定していることが観察され、図14に示すように、すすぎ後に材料の損失がないことに対応している。層内の引っかき傷のプロファイルをも測定し、すすぎ後、その厚さは一定のままだった。
【0045】
(実施例3:本発明のコーティングの「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」特性)
図15は、すすぎ後に除去された汚れの割合の比較を示す。16枚のパネルからの白色光の反射率(R)から、この割合を計算した。8枚のパネルはポリマーP[(TFEMA37-b-MAA105]で被覆し、8枚のパネルは被覆しなかった。
除去された汚れ%={(Rr−Rs)/(Rp−Rs)}×100 式(2)
式中、
Rr=すすいだパネルのR、Rs=汚れたパネルのR及びRpは、汚れる前のパネルのRである。
最初のすすぎ(20mlの水)後、未被覆パネルからはたった78.5%だけ除去されたのに比し、被覆パネルからは95.4%の汚れが除去された。2回目のすすぎ(100mlの水)後、除去された割合は被覆パネルで96%に増え、未被覆パネルでは81.1%に増えた。最初のすすぎ中にほとんどの汚れが除去され、かつ未被覆パネルよりも被覆パネルから多くの汚れが除去される。従って、本発明の新規コポリマーは優れた「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」成果をもたらすことが明白である。
【0046】
さらに分光測定試験を行って、処理した塗装アルミニウム表面と未処理の塗装アルミニウム表面との間の色差を評価した。図16は、汚れたパネル、すすぎ(10mlの水)後のパネル及び2回目のすすぎ(100mlの水)後のパネルの総合色差ΔEの比較を示す。8枚のパネルはポリマーP[(TFEMA37-b-MAA105)で被覆し、8枚のパネルは未被覆だった。CIE1964表色系から色差を計算した。この系は明度L*、赤-緑値a*及び黄-青値b*を考慮する。
ΔE=(ΔL2+Δa2+Δb2)1/2 式(3)
式中、
ΔL=L1−L2、Δa=a1−a2、Δb=b1−b2
かつ
ΔL、Δa、Δbは、CIE L*a*b*色空間の色差である。
L1、a1、b1は、サンプル1(汚れる前のきれいなパネル)のL*a*b*値である。
L2、a2、b2は、サンプル2(汚れ又はすすいだ後のパネル)のL*a*b*値である。
汚れた後、色差ΔEは、被覆パネル(13.7)では未被覆パネル(16.6)より少ない。これは、被覆パネル上でより少ない初期汚れ付着に相当する。最初のすすぎ後、ΔEは被覆パネルでは0.6に減少し、未被覆パネルでは3.4に減少する。従って、被覆パネルからより多くの汚れが除去された。2回目のすすぎ後、ΔEは再び被覆パネルでは0.5に減少し、未被覆パネルでは3.0に減少する。2回目のすすぎ後により多くの汚れが除去されるが、最初のすすぎ後にほとんどの汚れが除去されることが明白でり、過剰のすすぎだけがさらなる除去を促すであろう。このことは、本発明の新規コポリマーが一度表面上に被覆されると、未被覆表面に比べて容易に汚れを除去できることを明白に示している。被覆パネルは、初期汚れ付着が少ないことによっても良く機能する。
【0047】
ポリエステルベース樹脂で粉末被覆したアルミニウムシートについてセルフクリーニング試験を行った。適用時にどれだけのコポリマーがどこに適用されたかについての指標として黄色染料を使用した。上記で参照した添付図面の図13A及び13Bに示すように、試験図は、コポリマーの適用後に親水性表面から疎水性表面への変化を明白に示した。
添付図面の図18A〜18Dは、本発明のコポリマーで被覆されたシートAの「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」特性を示す。図18Dで分かるように、水ですすいだ後、被覆シートAから汚れが洗い流されるが、未被覆シートB上には、14ヶ月後でさえ汚れが残っている。
如何なる特定の理論によっても拘泥されたくないが、最初には汚れがコーティングにくっつき、雨が降ると、汚れを洗い落とすシートに似た様式で表面を水が流れ落ちると考えられる。対照的に、未被覆シートでは、シートの表面に沿って水がしたたり落ちると考えられる。乾燥プロセスに及ぼすミセルの疎水性内部コアの効果も驚くべきことだった。内部コアは非常に疎水性であり、如何なる残存水をもボールみたいに丸めて表面から流し落として、非常に速く乾燥させると考えられる。また、内部コアは、未被覆パネル上で見られる汚れの「筋がつく」のも排除するようである。従って、本発明の新規コポリマーは優れた「掃除しやすいか又はセルフクリーニング」成果をもたらす。
さらに、本発明の新規コポリマーコーティングは速い乾燥を可能し、結果として表面上に液滴を残さない。実際に、処理表面の親水性のため、存在するいずれの水も、処理表面上の個別の液滴ではなく、薄い、連続又は半連続層を形成することが観察された。この形態の水が蒸発すると、その中の鉱物は、目に見える位置という観点から十分には濃縮されない。従って、スポットが形成されない。水の薄膜又はシートの多くは、細流を形成し、筋をつけ、又は追跡することなく、重力の作用によって滑り落ちる。換言すれば、水は、洗浄表面上の特定経路に沿って丸く固まった個別の液滴又は細流ではなく、シートとして滑り落ちる。滑り落ちないすすぎ水は、洗浄表面上に薄いシート又は薄膜の形態のまま留まる。このシート又は薄膜が蒸発したとき、図19A及び19Bに明白に示されるように、水のスポットは生じない。
【0048】
(実施例4:応答性取込み/放出物質としての本発明のコーティングの使用)
コポリマーミセルは、薬物及び染料のような疎水性活性物質の装填に適した局所的環境を提供できるので、水溶性ブロックコポリマーが興味深い。本発明の刺激応答性コポリマー(特にP[TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA])は、水性溶液中で可逆性ミセルの自己集合を受けるので、応答性取込み/放出物質として使う機会を提供する。
疎水性オレンジ染料(Orange OT)を予め装填したミセルを用いて一連の実験を行った。以下の手順によってコポリマーミセル層をシリカコロイド(AngstromSphere)上で調製した。P[(TFEMA14-r-DEAEMA14)-b-DMAEMA90]のpH9の水溶液(10ml,KNO3(10mM)中500ppm)をpH9でOrange OTと混合した。次に、この混合物をシリカゾル(白色,0.1g)の分散系に加え、12時間タンブルさせて完全な平衡を保証した。次に、サンプルを遠心分離機にかけて(4000rpm,20分)、未吸着コポリマーからコロイド粒子を分離した。ほとんど全ての上澄みを除去し、オレンジ被覆シリカ粒子を回収した(図20の写真B参照)。沈降した粒子をpH4の電解溶液(KNO3)内で12時間再分散させた。次に、サンプルを遠心分離機にかけてコロイド粒子を分離し(図20の写真C参照)、上澄みを除去した。
写真A及びBは、シリカ粒子のコーティング前後の色の変化を明白に示す。ミセル-コポリマーは染料を捕獲できることが明白である。この点で、この染料はその低い水溶性のためコポリマーミセルの疎水性コア内に吸着している。染料装填コポリマーミセル溶液の最初の調製後、シリカコロイドをこの溶液で被覆した。ある層の沈着後、シリカコロイドはカラフルになり、染料の捕獲を示唆している。次に、被覆シリカ粒子を低pHの緩衝溶液ですすぐことによって染料色が除去され、この系の放出メカニズムを示している。
【0049】
(実施例5:本発明のコーティングの応答性取込み/放出物質としての使用)
黄色染料、クリソイジンを予め装填したミセルを用いて一連の実験を行った。
以下の手順でシリカコロイド(AngstromSphere)上でコポリマーミセルを調製した。P[(TFEMA5-r-DEAEMA25)-b-DMAEMA89]のpH9の水溶液(10ml,KNO3(10mM)中500ppm)をクリソイジン(Orange OTより疎水性が低い黄色染料)とpH9で混合した。次に、この混合物をシリカゾル(白色,0.1g)の分散系に加え、12時間タンブルさせて完全な平衡を保証した。次に、サンプルを遠心分離機にかけて(4000rpm,20分)、未吸着コポリマーからコロイド粒子を分離した。ほとんど全ての上澄みを除去し、黄色被覆シリカ粒子を回収した(図21の写真B参照)。沈降した粒子をpH4の電解溶液(KNO3)内で12時間再分散させた。次に、遠心分離(4000rpm,10分)後、上澄みを除去し、わずかに黄色のコロイド粒子を分離した(図21の写真C参照)。pH4での長時間のすすぎ(3時間)及び遠心分離後、白色コロイド粒子を得、染料の全放出を証明した(図21の写真D参照)。
【0050】
(参考文献)
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中で可逆性ミセルを作り出すための新規組成物及びそれを使うための適用に関する。
【背景技術】
【0002】
表面の制御された濡れは、衣類及び織物、コンクリート又はペンキ、窓及び風防ガラスの防水などの多くの適用の可能性を有する。さらに、制御された固液界面特性は、水着、潜水服、ボート及び船、並びに微小流体素子などの分野で使うための低摩擦面を作り出すのに利益を有し得る。
「掃除しやすい」又は「セルフクリーーニング」表面コーティングの分野のさらなる適用も可能である(1、2)。このような表面は、通常、水が表面から「離れる」ときに、付着されにくいよごれ粒子を水が集めるように、よごれの付着を最小限にして撥水性を強化することによって、掃除を楽にするように設計される(3)。多くの場合、WO96/04123に記載されているような「セルフクリーニング面」は「ロータス効果(Lotus-effect)」面又はコーティングと呼ばれ、この技術は「ロータス効果」技術と呼ばれる。このような「セルフクリーニング面」は、製造中に表面構造を直接疎水性ポリマーから創造するか、又は製造後に表面構造を創造することによって、具体的には、その後のインプリンティング若しくはエッチングによるか又は疎水性ポリマー製ポリマーの付着によって、作り出される。
【0003】
表面の濡れを制御する種々の方法が報告されており(4、5)、両方とも表面化学及び表面形態学の制御に基づいている(6)。さらに最近、これらの2つのアプローチの組合せが使用された(3、7)。例えば、基本的な表面の濡れ理論から、低エネルギー面(100°を超える大きい接触角を伴う)は水をはじく傾向があることが分かる。その結果がその面を容易に離れる液滴の形成だろう。
米国特許出願第2002/0048679号(及び欧州特許出願第EP1018531号)は、非常に親水性又は疎水性のどちらかでなければならないときに水が容易に流れ去る表面について述べている。親水性の表面は水との低い接触角を有し、これが表面上の水の急速な分布をもたらし、最終的に、結果として生じた水の薄膜が表面から急速に流れ去る。対照的に、疎水性の表面は水との大きい接触角のため液滴を形成する。これらの液滴は傾斜面から容易に転がり落ち得る。
多くの化学的物質は、このような撥水性を生じさせ得ることが分かっており;一般に化学的物質は非常に低い誘電率を有し、電荷のない有機物である。これらには、ハロゲン化有機ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と誘導体のような物質がある(8)。このような表面を製造するための1つのアプローチは、例えば外観、耐久性、付着、及び問題の表面上への直接適用の要求の適切な特性を備えたいくつかの新しい物質の薄層を適用することが多い。このような表面コーティングは容易かつ均一に適用され;合理的な量の時間とプロセス制約内で確立され;それらの合成及び適用において最小限の環境への影響を有し;環境攻撃の作用に耐え;かつ良い経済価値を与えるべきである。
今日までに、このような物質に関連する主な問題として、以下のものが挙げられる。
(a)該物質は限られた数の有機溶媒にしか溶けないことが多いので、どうやって問題の表面上に該物質を沈着させるか? その結果は、例えば、スピンキャスティング法であり、通常、溶媒を気前よく使う必要があり、費用と環境の問題を伴う。
(b)「実体面」で適用及び使用するときの該コーティングの耐久性。実体面で使用するときの摩耗及び衝撃によるコーティングの損傷は、その有効性の妥協につながり得る。再コーティングは困難かつ高価だろうし、さらに環境の関心事と同じ問題を有するだろう。
(c)太陽光によって引き起こされる光分解作用も表面の完全性を譲歩し、再適用の必要をもたらし得る。
【0004】
開始剤として過酸化物又はアゾ化合物を用いる水混和性有機溶媒中の溶液中でのモノマーのラジカル共重合によって調製されたランダムフッ素化コポリマーが、種々の基材上でのその疎水性及び指紋に耐える(oleophobic)特性と共に開示されている(例えば、EP 542598、US 1106630及びUS 2004026053を参照されたい)。
米国特許第5,324,566号は、撥水面を作り出すための疎水性フッ素化シロキサンポリマーについて記述している。この特許では、表面及び/又は表面薄膜上に表面の不規則さを形成することによって、フッ素化シロキサンポリマー表面薄膜の撥水特性を改善できることが開示されている。一形態では、表面が約0.1μmから可視光の波長までの高さの不規則さを備える。同様に、米国特許第5,599,489号及びEP 0 933 388 A2は、構造化表面がフッ素含有ポリマーをどのように含むか、又はアルキルフルオロシロキサンを用いてどのように処理したかを開示している。
U.S. 2002/0048679は、滑らかな極端に疎水性のポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)薄膜を有する表面並びに液滴を形成せずに水及びよごれが流れ去り得る表面の例として、滑らかな極端に親水性のポリマー薄膜を有する表面を開示している。U.S. 2002/0048679は、表面上の疎水性コーティングの下に特定のシラン誘導体を適用することによって、長期の疎水性コーティングをどのように形成できるかについてさらに述べている。他のセルフクリーニング表面は、米国特許出願番号US 2002/0150723、US 2002/0150724、US 2002/0150725、US 2002/0150726、US 2003/0013795及びUS 2003/0147932に記載されている。
米国特許第3,354,022号は、凹凸のある微細な粗い構造とフッ素含有ポリマーに基づく疎水性物質とを有する撥水性表面を開示している。一実施形態によれば、基材をガラスビーズ(3〜12μmの直径)と、フルオロアルキルエトキシメタクリレートポリマーであるフルオロカーボンワックスとを含む懸濁液でコーティングすることによって、セルフクリーニング効果のある表面をセラミックブリック又はガラスに適用できる。不運なことに、このようなコーティングは、低い耐摩耗性と中程度のセルフクリーニング効果しか持たないという欠点を有する。
【0005】
非常に疎水性の表面を作り出すために設計された表面コーティングのさらなる開発は、コポリマー、ポリマーブレンド及びポリマーとナノ粒子(例えば、US 6800354、US 7112621B2、US 7196043及びDE 10016485.4に記載されている二酸化チタン)の混合物の使用を含む。例えば、120°までの接触角を与え得るフルオロカーボンポリマーを用いて被覆表面を作り出した。二酸化チタン(TiO2)をも表面コーティングに使用した;UV照射下では、TiO2は光触媒活性があり、水の加水分解作用の結果として超濡れ効果を生じさせ得る(9)。従って、非常に疎水性のポリマーと混合すると、UV光を用いた活性化後に濡れが切り換わり得る。
ナノ粒子を用いた該表面の調製は、有機溶媒の使用(米国特許第3,354,022号)及びその後の熱処理の使用(米国特許第6800354号)といったいくつかの重大な欠点に苦しむ。従って、水によって「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」であり、かつ透明な表面を作り出すための水性システムを含む簡単な方法が要望されている(該表面は必ずしも疎水性でなくてよいが、US 2002/0048679で例示されているように親水性でもよい)。
【0006】
最近、良く制御されたミクロンサイズの粗さを有する表面を作り出すことによって、表面の濡れの制御を改善できることも実証された(10)。このような粗い表面の特徴は、空気をふさぐこと及び水滴と表面との間の接触面積を小さくすることを含む物理的方法で「超疎水性」基材を作り出すのに役立つ。根底の下層にある面はそれ自体疎水性でなければならならず、粗さ効果と組合わせると、このことが、極端に疎水性である150°超えの接触角を有する表面を生じさせる。しかし、このような表面は製造しにくく、通常、非常にもろく、容易に損傷し、ミクロンスケールの特徴が光による回折作用を引き起こすことがあるので、ガラスに係わる用途で使うためには問題があるだろう。
これらの困難さにかかわらず、これらの技術に基づく製品(又はその誘導体)が市場に出現し始めている。これは、ランダムな粗さを用いて回折の問題を克服しているセルフクリーニングガラス表面については特に真実である。しかし、これらの表面が経時的にどれだけ有効かはまだ不明である。
【0007】
「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」表面を有することに加え、表面が審美的に美しい仕上げ、例えば、合理的な期間(例えば、数週間〜数ヶ月の間)続く、スポットがないか又は光沢のある仕上げを有することが望ましいことが多い。現在、スポットがない仕上げを与えようとするため市場にいくつかのワックス及び他の製品がある。典型的に、これらの製品は、これらの表面を疎水的に改変して、雨水及び生水が該表面上で「玉のようになる」ように設計される。それにもかかわらず、該表面上で水が玉になると、水の玉はそれが乾燥すると表面上に沈着物を残すことから、実際には水のスポットの形成を増やすと考えられる。さらに、市販されている製品は多くの場合、使用後に水ですすぐ必要がある。通常、水が表面から乾燥すると、ウォーターマーク、しみ又はスポットが後に残る。これらのウォーターマークは、表面からの水の蒸発のため、水に溶解した固体として存在していた鉱物(例えばカルシウム、マグネシウム、ナトリウムイオン及びそれらの塩)の沈着物が後に残ったか、又は水が運んだ固体の沈着物であるか、又は洗浄製品の残物(例えば石鹸かす)であるとさえ考えられる。この問題は、すすいだ後に水が流れ出る代わりに表面上に分離した液滴又は玉を形成するように、洗浄プロセス中に表面を変える何らかの洗浄組成物によって一層悪化する。これらの液滴又は玉が乾燥して、ウォーターマークとして知られる消費者が気づくスポット又はマークを残す。当該分野で既知のこの問題を解決する手段は、ウォーターマークが形成する前に布又はセーム皮(chamois)で表面から水を拭いて乾かすことである。しかし、この乾燥プロセス(洗浄してすすいだ表面を拭き取ること)は時間がかかり、洗浄/クリーニングプロセス全体に相当な身体的努力を必要とする。
【0008】
US 5759980(Blue Coral)は、車上のウォーターマークの問題を排除する組成物を開示している。そこで開示されている洗浄組成物は、フルオロ界面活性剤又はシリコーン界面活性剤及びその混合物を含む界面活性剤パッケージと、表面に結合して表面を親水性にすることができる実質的なポリマーとを含む。
DE-A-21 61も、ポリマーエチレンイミン、ポリマージメチルアミノエチルアクリレート若しくはメタクリレート又は混合ポリマー(polymerisates)等のアミノ基含有コポリマーの適用によって、表面を親水性にする洗車用組成物を開示している。
しかし、これらの2つの特許で開示されているポリマーは、表面から製品をすすいでいる間に表面から除去される傾向があると考えられる。申し立てによると表面の親水性は開示された組成物によって与えられる。これらの組成物は、最初のすすぎ後に表面から除去され;結果として、申し立ててられた親水性も除去されだろう。しかし、これらの組成物によって与えれる利益は、表面をすすぐと失われる。
US 6846512 B2(Procter及びGamble)も、表面、特に自動車の外面を洗浄及び/又は処理するためのシステムと方法を開示している。しかし、この方法は、非光活性ナノ粒子コーティング組成物を表面に適用する必要がある。このような非光活性ナノ粒子は、無機のナノ粒子(酸化物、ケイ酸塩、炭酸塩、水酸化物、層化粘土鉱物及び無機金属酸化物)でよい。
【0009】
従って、「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」特性を有し、かつすすいだ表面を物理的に拭き取って残存水を除去しなくても、水のスポット形成が生じることをも防止する表面、すなわち処理表面が水と接触した後でさえ、ウォーターマークが出現しない表面が要望されている。
ほとんどの市販の表面コーティングは、有機溶媒中のポリマーの溶液を使用するキャスティング及び/又はスピンコーティングによって製造されているが、最近、ポリマー薄膜の化学的グラフト化に基づく代替品が、可能な代替品として議論されている。このアプローチでは、表面に化合結合しているポリマーの密集したブラシ様薄膜から成るコーティングが作り出される。結合したポリマーは、所望の濡れ性を生じさせる制御された化学を有し得る。さらに、合成ポリマー化学者に利用可能な固有の化学的多様性は、刺激応答表面を含める機会といった種々多様な物理的性質を用いて該層を作り出すことができることを意味する。
刺激応答ポリマー(11)は、何らかの物理的性質の大きな変化によるその環境の小さな変化に応答し得るポリマーである。典型的な刺激として、温度、pH、イオン強度、光照射野、電場及び磁場が挙げられる。これらの刺激の2種以上の組合せに応答するポリマーもある。コーティングでは、刺激応答ポリマーは、付着、潤滑、及び濡れ等の特性の制御された変化が必要な種々多様の可能な用途で関心があり得る。
このようなポリマーを製造するため、ポリマー又はコポリマー合成を用いて、所望の分子量及び狭い分子量分布又は多分散などの特性を有する製品を得る、制御された方法が必要である。狭い分子量分布を有するポリマーは、通常手段で調製されたポリマーとは実質的に異なる挙動と特性を示し得る。リビングラジカル重合(時には、制御されたフリーラジカル重合と呼ばれる)は、予測できる明確な構造を有するポリマーの合成の最大度の制御を与える。最近、リビングラジカル重合が、かなり多様性のブロックコポリマーを調製するために実行可能な技術であることが分かった。
制御された/リビングラジカル重合(CLRP)技術の最近の進歩は、正確に誂えたナノススケール及びミクロスケールの特徴を備えた該材料の合成の未曾有の機会を提供する。原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)、可逆的付加断片化移動重合(RAFT)は、これらの最近の技術の一部であり、なおさらに最近では、「電子移動による活性化再生」(ARGET)技術がある。これらの方法は1990年代中ごろに出現し、ラジカル重合の実験的簡易さとアニオン重合のリビング特性を組み合わせるというユニークな利点を有することから、後に広範に研究された。CLRP技術は、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、星状体、星状ブロック、ミクトアーム(miktoarm)星状体又は巨大分子ブラシ状体(brushes)等の種々多様なポリマー構築の合成を可能にする、巨大分子工学のため(すなわち、合成ポリマーの分子構造を制御するため)の先例のないツールであることが実証された。
リビング重合の特徴として、全モノマーが消費されるまで進行する重合;転化率の線形関数としての数平均分子量;反応の化学量論による分子量制御;及び逐次的なモノマー添加によるブロックコポリマーの調製が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、有機溶媒を必要とせずに表面上に沈着できる可変濡れ特性を含む新規組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、表面上の可変濡れ特性を促進する新規表面コーティングを提供することである。換言すれば、表面に対する同定可能なクリーニング利益(「より掃除しやすい」、「クリーナー長持ち」等)がエンドユーザーによって観察されることを意味する「掃除しやすい」表面を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の第一局面により、以下の成分:
(i)下記成分:
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1のホモポリマー;
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA2とを含むランダム、交互、勾配(gradient)又はブロックコポリマーA1A2;
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、シリルアクリレート又はメタクリレートモノマーA3とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマーA1A2;及び
シリルアクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA2と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA3とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマーA1A2A3
から成る群より選択されるポリマーを含む第1の疎水性ブロックA;並びに
(ii)非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーを含む第2の親水性ブロックB
を含む新規なABブロックコポリマーが提供される。
【0012】
ブロックコポリマーA-Bの各ポリマーを構成するモノマーの比は、疎水性ブロックAと親水性ブロックBの体積分率がミセルのような組織化集合体(organised aggregates)の形成をもたらすような比である。好ましくは、ブロックコポリマーABを構成するモノマーの比は、10〜80単位のAと30〜200単位のB、さらに好ましくは20〜40単位のAと80〜110単位のBを含む。最も好ましくは、ブロックコポリマーABを構成するモノマーの比は、25〜35単位のAと85〜100単位のBを含む。
本発明の好ましい実施形態では、ブロックAはフッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA1と非フッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA2のランダムコポリマーA1A2又はフッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA1のホモポリマーを含む。
ブロックAの好ましいフッ素化モノマーA1は下記一般式を有する。
【0013】
【化1】
【0014】
式中、Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基を含み、Xは、好ましくは1〜6個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を含むフッ素化アルキル基を含む。しかし、Rが水素又はメチルであることが好ましい。
好ましくは、フッ素化モノマーA1は、トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)、トリフルオロエチルアクリレート(TFEA)、ペンタフルオロプロピルメタクリレート(PFPMA)、ペンタフルオロプロピルアクリレート(PFPA)、ヘプタフルオロブチルメタクリレート(HFBMA)及びヘプタフルオロブチルアクリレート(HFBA)から成る群より選択される。さらに好ましくは、フッ素化モノマーはTFEMAである。
ブロックAの好ましい非フッ素化アクリレートモノマーA2は、下記一般式を有する。
【0015】
【化2】
【0016】
式中、Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは水素又はメチルを含む。Yがアルキルアミノアルキル基、さらに好ましくはアルキルアミノエチル基、特にジエチルアミノエチル基を含むことが好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、ブロックA(A1xA2y)は、好ましくはフッ素化モノマーA1の繰返し単位数が0〜80の範囲のxであり、かつ非フッ素化アクリレートモノマーの繰返し単位数が0〜(80−x)の範囲のyである、フッ素化アクリレートモノマーA1と非フッ素化アクリレートモノマーA2のランダムコポリマーを含む。
さらに好ましくは、ブロックAは、好ましくは下記数の繰返し単位トリフルオロエチルメタクリレート及びジエチルアミノエチルメタクリレートのランダムコポリマーを含む:
P(TFEMAx-r-DEAEMAy)(ここで、x=0〜30、y=0〜(30−x))。
ブロックAの好ましいシリルアクリレートモノマーA3は下記一般式を有する。
【0017】
【化3】
【0018】
式中、Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルを含み、Zはシリルアルキル基を含み、該アルキル基は1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。
好ましくは、シリル基は、トリアルコキシシリル基、さらに好ましくはトリメトキシシリル基である。ブロックAの好ましいシリルモノマーは、(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(TMSPMA)及び(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート(TMSPA)である。
第2ブロックBは、好ましくは水溶性であり、かつ下記好ましい一般式を有する。
【0019】
【化4】
【0020】
式中、Rは水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルであり、R1は水素、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル又はアミノ官能基、好ましくはアルキルアミノアルキル基である。
他の好適な親水性ブロックBは、下記式を有する四級化ジアルキルアミノアルキルアクリレート又はメタクリレートモノマーである。
【0021】
【化5】
【0022】
式中、Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルであり;zは0又は1を表し;R2は-CH2-CHOH-CH2又はCxH2x(式中、xは2〜18、好ましくはxは2である)であり;R3は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基、好ましくはメチル、エチルを表す。R4は、1〜4個の炭素原子の低級アルキル基、好ましくはメチル、エチルを表す。
X-は、Cl、Br、I、1/2SO4、HSO4及びCH3SO3の群から選択される。
さらに好ましくは、第2のブロックBは、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEAEMA)、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPAEMA)、2-(N-モルフォリノ)エチルメタクリレート(MEMA)、又はその誘導体、メタクリル酸(MAA)若しくはその誘導体及びアクリル酸若しくはその誘導体から成る群より選択されるモノマーを含む。最も好ましくは第2のブロックはDMAEMA又はMAAから選択されるモノマーを含む。
本発明の好ましい実施形態では、新規コポリマーは、上記定義の割合でP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]及びP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-MAA]を含む。
好ましくは、本発明の第1局面のブロックコポリマーは、狭い分子量分布のコポリマーを得るために制御されたリビングラジカル重合を利用して調製される。好適な合成経路として、限定するものではないが、可逆的付加-断片化連鎖移動(Reversible Addition - fragmentation chain transfer)(RAFT)、基移動重合(Group transfer polymerisation)(GTP)及び原子移動ラジカル重合(Atomic transfer radical polymerisation)(ATRP)、電子移動による活性化再生(Activated regenerated by electron transfer)(ARGET)、ニトロキシド媒介重合(nitroxide-mediated polymerization)(NMP)が挙げられる。
本発明のコポリマーは水溶液中で可逆性ミセルを形成することが分かった。
本発明のブロックコポリマーは、例えば粉末として固体又は実質的に固体形態で利用可能であり、或いは組成物として利用可能である。
【0023】
従って、本発明の第2局面により、以下の成分を含む組成物が提供される:
(a)本発明の第1局面のブロックコポリマー及び
(b)(i)又は(ii)を含む液状媒体(ここで、
(i)は水と有機溶媒の混合物を含み;かつ
(ii)は実質的に無水の有機溶媒を含む)。
本発明の第2局面の組成物では、液状媒体は好ましくは水と有機溶媒の混合物、又は無水の有機溶媒を含み、ブロックコポリマーは好ましくは液状媒体に完全に溶解している。
本発明の組成物で使うのに適した有機溶媒は、好ましくは、C1-6アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、及びsec-ブタノール;線形アミド;ケトン-アルコール、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン;水混和性エーテル;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えばアセトン又はエチレングリコールから選択される水混和性の有機溶媒を含む。
本発明の組成物で使うための実質的に無水の有機溶媒は、好ましくはテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、低級アルコール、ケトン又はジメチルスルホキシドを含む群から選択される有機溶媒を含む。
さらに、液状媒体が実質的に無水の有機溶媒を含む場合、組成物は好ましくは適切な極性溶媒をさらに含む。
さらに、本発明の組成物において、無水有機溶媒は単一の有機溶媒を含むか又は2種以上の有機溶媒の混合物を含んでよいことが当業者には明白だろう。
本発明の組成物中の成分(a)と成分(b)の相対比は、好ましくは100:1〜1:100、さらに好ましくは10:1〜1:10、特に2:1〜1:2を含む。
最も好ましくは、組成物中の成分(a)と成分(b)の相対比は1:1を含む。
本発明の第2局面の組成物は、好ましくは、例えば、限定するものではないが、分散剤、香料、殺生物剤、着色剤及び安定剤から選択される追加成分をさらに含んでよいことも分かるだろう。
本発明の組成物は、多くの用途の可能性がある。本組成物はpH-感受性なので、付着、潤滑及び濡れ等の表面特性の制御された変化が必要な種々多様の考えられる用途の可能性がある。
本発明の新規組成物は、「掃除しやすい」表面/「セルフクリーニング」表面を形成するための表面のコーティングで使うのに特に適する。この目的のため、本発明の第3局面は、本発明の第1局面のブロックコポリマー又は本発明の第2局面の組成物を含む表面コーティングを提供する。
【0024】
本発明の第4局面は、基材のコーティング方法であって、以下の工程:
溶液、好ましくは例えば水溶液中の本発明の第1局面又は第2局面のコポリマーの水溶液を調製する工程及びこの水溶液に基材をさらす工程を含む方法を提供する。
好ましくは、本方法は、分子を溶液に完全に溶かすためのコポリマー分子の穏やかな撹拌を含む。好ましくは、適用前、24時間までの間、溶液は平衡を保ったままである。
基材を溶液にさらす方法は、スピンコーティング、浸漬コーティング、ローラーコーティング、ブラッシュコーティング(brush coating)、カーテンフロー(curtain flow)又は噴霧などの、溶液からコーティングを形成するいずれの公知技術をも包含する。
本発明のコーティング剤で処理できる基材として、限定するものではないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、コンクリート、紙、木材、鉱物、塗装及び/又は被覆基材が挙げられる。任意に、基材を水などの純粋溶媒ですすいで、如何なるルーズに保持されたコポリマー分子をも除去することができる。
【0025】
本発明の利点は、水によって「掃除しやすい」/「セルフクリーニング」である表面を作り出すための方法及び組成物であって、
−組成物が安定した水性システムであり;
−消費者は、同定可能なクリーニング利益を有する(「より掃除しやすい」、「クリーナー長持ち(cleaner-longer)」等)コーティングを表面に適用することができ、
−処理表面上でスポットのない仕上げが観察され(処理後に水と接触した場合でさえ、ウォーターマークが出現しない表面)、
−該方法及び組成物によって、光沢が有意に損失せずに透明なコーティングが形成される
方法及び組成物を提供することである。
本発明の第1局面のブロックコポリマーは、その開閉特性及び向上した可溶化容量のため、取込み-放出材料としても使用され得る。
従って、本発明の第5局面は、例えば有機活性物のような、ある部位に送達すべき物質、例えば、限定するものではないが薬物と共に、本発明の第1局面のブロックコポリマー又は本発明の第2局面の組成物を含む物質-送達担体を提供する。
本発明の第6局面は、ある物質の取込み/放出(uptake/release)方法であって、該物質の水溶液を本発明の第1若しくは第2局面のコポリマーと混合する工程と、この水溶液で基材をコーティングする工程と、この被覆基材を低pHの緩衝溶液ですすいで該物質を放出させる工程とを含む方法を提供する。
好ましくは、緩衝溶液は5未満のpHを有し、好ましくはpH4である。
【0026】
ここで、本発明を以下の実施例を参照して説明する。
実施例1は、RAFT、ATRP及びGTP法によるTFEMAホモポリマー、DEAEMAホモポリマー、ポリ[TFEMA-r-DEAMA]コポリマー及びポリ[TFEMA-r-DEAMA)-ブロック-DMAEMA]コポリマーの調製を示し;
実施例2は、実施例1のブロックコポリマーによる基材のコーティングを調査し;
実施例3は、実施例1のブロックコポリマーで被覆された表面の「掃除しやすい」特性を調査し;
実施例4及び5は、実施例1のブロックコポリマーの応答性取込み/放出材料としての使用を調査する。
ここで、本発明をさらに添付図面を参照しても記載かつ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】80℃でトルエン(質量で25%)、[モノマー]/[CPDB]/[AIBN]:30/1/0.4中におけるPTFEMAとPDEAEMAの重合反応速度論を示すグラフである。
【図2】80℃でトルエン(質量で25%)、[モノマー]/[CPDB]/[AIBN]:30/1/0.4中におけるPTFEMAとPDEAEMAの2-シアノプロパ-2-イルジチオベンゾエート媒介RAFT重合について溶離剤としてTHFを用いてサイズ排除クロマトグラフィーで得られた、数平均分子量(Mn)の漸進的変化対転化率のグラフである。
【図3】80℃でトルエン(質量で25%)、[モノマー]/[CPDB]/[AIBN]:30/1/0.4中におけるPTFEMAとPDEAEMAの2-シアノプロパ-2-イルジチオベンゾエート媒介RAFT重合の多分散性指数対転化率のグラフであり、PMMA標準物質及び溶離剤としてTHFを用いたSEC測定を示す。
【図4】80℃でトルエン(質量で25%)、[モノマー]/[CPDB]/[AIBN]:30/1/0.4中におけるPTFEMAとPDEAEMAの2-シアノプロパ-2-イルジチオベンゾエート媒介RAFT重合のサイズ排除クロマトグラムの時間による漸進的変化の例であり、PMMA標準物質及び溶離剤としてTHFを用いたSEC測定を示す。
【図5】80℃でトルエン中2-シアノプロパ-2-イルジチオベンゾエート媒介RAFTランダム共重合のいくつかのポリ[TFEMA-ランダム-DEAEMA]コポリマーのSECクロマトグラムであり、PMMA標準物質及び溶離剤としてTHFを用いたSEC測定を示す。
【図6】マクロRAFT剤及びP[(TFEMA9-r-DEAEMA19)-b-DMAEMA90]として用いたP(TFEMA9-r-DEAEMA19)コポリマーのSECクロマトグラムである。
【図7】マイカ-水界面に吸着したコポリマーミセルの1μm×1μmのインサイツAFM画像であり、コポリマーサンプルは500ppm濃度のP[(TFEMA5-r-DEAMEA25)-b-DMAEMA89]であり、バックグラウンド電解液は0.01M KNO3及び溶液pH=9だった。
【図8】マイカ-水界面に吸着したコポリマーミセルの1μm×1μmのインサイツAFM画像であり、コポリマーサンプルは500ppm濃度のP[(TFEMA5-r-DEAEMA25)-b-DMAEMA89] であり、バックグラウンド電解液は0.01M KNO3及び溶液pH=4だった。
【図9】時間の関数として相対吸着質量の反射光測定データを示すグラフであり、データはシリカ水界面におけるp[(TFEMA14-r-DEAEMA14)-b-DMAEMA90]の吸着に関し、コポリマーの濃度は500ppmであり、バックグラウンド電解液は0.025Mのホウ砂及び溶液pH=9だった。
【図10】P[(TFEMA9-r-DEAEMA19)-b-DMAEMA90]コポリマーサンプルのマイカ-水界面で形成された表面吸着層のインサイツAFM画像であり、バックグラウンド電解液は0.01M KNO3であり、データはpH9-pH4-pH9すすぎサイクルについてである。
【図11】マイカ-水界面で収集された力曲線データを示すグラフである。
【図12】種々のコポリマーサンプルのゼータ(Zeta)サイザーデータであり、(●)はP(DEAEMA30-b-DMAEMA95)、(■)はP[(TFEMA5-r-DEAEMA25)-b-DMAEMA89];(▲)はP[(TFEMA9-r-DEAEMA19)-b-DMAEMA90]であり、コポリマーの濃度は500ppmで、バックグラウンド電解液は0.01M KNO3であり、静的光散乱を用いてデータを収集した。
【図13】図13A〜13Eは、未被覆固体表面と、種々のコポリマーサンプルによって与えられた被覆固体表面における水滴の画像である。
【図14】P[(TFEMA25-r-DEAEMA11)-b-DMAEMA94]コポリマーサンプルのマイカ-水界面で形成された表面吸着層の粗さを示す。
【図15】被覆及び未被覆表面をすすいだ後に除去された汚れの割合の比較を示す棒グラフを示す。
【図16】汚れたパネル、すすいだ後(10mlの水)のパネル及び2回目のすすぎ(100mlの水)後の総合色差ΔEの比較を示す。
【図17】シリカ-結晶上に吸着したポリマー層の相対吸着質量であり、異なるpHにおける水晶発振子微量天秤でデータを得た。
【図18A】本発明のコーティングを施した基材の「掃除しやすい」特性を示し、汚物溶液の適用後の基材を示す。
【図18B】本発明のコーティングを施した基材の「掃除しやすい」特性を示し、自然環境の外部条件で1週間後の基材を示す。
【図18C】本発明のコーティングを施した基材の「掃除しやすい」特性を示し、自然環境の外部条件で3ヶ月後の基材を示す。
【図18D】本発明のコーティングを施した基材の「掃除しやすい」特性を示し、自然環境の外部条件で14ヶ月後の基材を示す。
【図19A】本発明のコーティングを施した基材の「スポットのない仕上げ」特性を示す。
【図19B】本発明のコーティングを施した基材の「スポットのない仕上げ」特性を示す。
【図20】(A)未被覆シリカ粒子、(B)予めオレンジOT染料を装填した本発明のミセル-コポリマーで被覆したシリカ粒子及び(C)pH4ですすいだ後のシリカ粒子の写真画像である。
【図21】(A)未被覆シリカ粒子、(B)予めクリソイジン染料を装填した本発明のミセル-コポリマーで被覆したシリカ粒子、(C)pH4で30分すすいだ後のシリカ粒子及び(D)pH4で3時間すすいだ後のシリカ粒子の写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
制御された及び/又は可変の濡れを有する表面を作り出す現存するほとんどのアプローチは、表面の複雑なミクロ機械加工又は多くの場合有機溶媒の使用に関係する固有の環境問題がある複雑かつ高価な化学的方法のどちらかを必要とする。本発明の組成物は、刺激応答性でもあり、かつ最小限の加工要求を有する単純な水ベース自己集合経路を利用する付随した「調節可能」特性を有する(ことを暗示すると考えられる濡れ利益を有する)固有のミクロ(ナノ)スケール構造の表面を作り出す。ポリマーの水性溶液を問題の表面に適用すると、表面コーティングが自発的に生成するので、表面上にポリマーを沈着させるための有機溶媒の必要性を排除する。表面コーティングは、未被覆基材より高い接触角をも与え(水をはじく傾向がある)、基材のより良い洗い流しをもたらす。
特に、本発明は、新しいファミリーのpH-応答性ABブロックコポリマーを提供し、第1ブロックAは非フッ素化アクリレートモノマーとフッ素化アクリレートモノマーのランダムコポリマー又はフッ素化アクリレートモノマーのホモポリマーである。第2ブロックBは水溶性であり、かつアクリレート若しくはアクリル酸誘導体モノマーを含む。これらの新規コポリマーは、基材に適用すされると優れた可変の濡れ表面を与えることが分かり、このことは先行技術からは予測できなかった。
【実施例】
【0029】
実施例1:本発明のポリマー及びブロックコポリマーの調製
本発明の新規ABブロックコポリマーを、RAFT剤、2-シアノプロピルジチオベンゾエート(CPDB)を用いて良く定義されたホモポリマー及びブロックコポリマーを合成できる制御された/リビング重合である可逆的付加-断片化連鎖移動(RAFT)重合によって製造したフッ素化モノマー:トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA):ポリ(TFEMA)-ランダム-ポリ(DEAEMA)-ブロック-ポリ(DMAEMA)と混合した2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEAEMA)から調製した。
各モノマーの反応速度論はユニークなので、PTFEMAとPDEAEMAの重合反応速度論の知識が、望ましい特性を有するポリマーの合成を容易にする。ポリ(TFEMA)-ランダム-ポリ(DEAEMA)コポリマーのジブロックコポリマー、及びコポリマーポリ(TFEMA)-ランダム-ポリ(DEAEMA)-ブロック-ポリ(DMAEMA)の合成も最初に実証されている。
現在の実施例はRAFT剤、CPDBを用いてブロックコポリマーを調製するが、他のRAFT剤を使用できることを理解すべきである。同様に、他の制御されたリビング重合技術、例えば基移動重合(GTP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)及び電子移動による活性化再生(ARGET)又は電子移動による活性化生成(Activated generated by electron transfer)(AGET)を利用してブロックコポリマーを調製することができる。
【0030】
(TFEMAホモポリマーのRAFT合成)
目標重合度30のPTFEMAの合成では以下の条件を用いた。マグネチックスターラーを含むシュレンク管に、TFEMA(2.53g,15.05mmol)、CPDB(0.119g,0.537mmol)、AIBN(34mg,0.207mmol)及びトルエン(溶媒、0.675g,質量で25%)を導入した。混合物を数サンプルに分けた。窒素を泡立たせて全サンプルを脱気し、窒素雰囲気下、恒温油浴内で80℃にて加熱した。重合のx時間後、バイアルを氷内に浸漬して重合を停止した(反応時間に対応する「x」の値については図1参照)。400MHzにて1H NMR分光法で、三重項ピーク(4.2ppm、モノマーCH2由来)+大きいピーク(4.1ppm、CH2ポリマー由来)と比較して、1つのビニル性プロトン(6.11ppm)について積分して転化率を決定した。PMMA標準物質校正及び溶離剤としてTHFを用いてSECで分子量と多分散指数を決定した(図2及び3参照)。実験分子量を、下記方程式(1)に従って計算した理論値と比較した。
Mnth,NMR=MCPDB+MTFEMA×{[TFEMA]0×CTFEMA}/[CPDB]0 (1)
式中、
MCPDB及びMTFEMAは、それぞれCPDB及びTFEMAの分子量であり、[CPDB]0及び[TFEMA]0は、それぞれCPDB及びTFEMAの初期濃度であり、CTFEMAは部分転化率である。AIBNによって惹起される連鎖の分子量の寄与は無視した。
(DEAEMAホモポリマーのRAFT合成)
PTFEMA重合と同様の手順をPDEAEMA合成で使用した。DEAEMA(2.78g,15.05mmol)、CPDB(0.113g,0.51mmol)、AIBN(34mg,0.207mmol)及びトルエン(溶媒、0.73g,質量で25%)を一緒に混合した。窒素を泡立たせて脱気後、窒素下80℃で重合を行った。添付図面の図1は、TFEMA及びDEAEMAホモ重合のRAFT重合反応速度論を示す。結果として生じたサンプルをSEC及びNMR分光法で分析した(図2及び3参照)。
(ポリ[TFEMA-ランダム-DEAEMA]コポリマー:P(TFEMA-r-DEAEMA)のRAFT合成)
下表1に示すように、連鎖移動剤としてCPDB、開始剤としてAIBNを用いて一連のポリ[TFEMAx-ランダム-DEAEMAy]コポリマーをRAFT重合で調製した。比[CPDB]/[AIBN]:1/0.4のため、いくつかの比のモノマーを使用した:[TFEMA]=x=0〜30、[DEAEMA]=y=30-x。
【0031】
表1:窒素下80℃で3時間にわたるTFEMAとDEAEMAのRAFTランダム共重合で使用した反応条件
【0032】
トルエン(質量で25%)中80℃で3時間にわたって重合を行った。3時間後にサンプルを取出し、得られたポリマーをTHF中のSEC及びNMRで分析した(図4参照)。
P(TFEMAx-r-DEAEMAy)コポリマーの式(x=0〜30、y=30-x)を以下に示す。
【0033】
【化6】
式(1)
【0034】
下表2はポリ[TFEMA-ランダム-DEAEMA]コポリマーの特徴づけの結果を示す。
【0035】
表2
【0036】
(ポリ[(TFEMA-ランダム-DEAEMA)-ブロック-DMAEMA]コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]のRAFT合成)
ジブロックP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]コポリマーの合成のため、RAFT合成したP(TFEMA-r-DEAEMA)をマクロRAFT剤として用いた。鎖伸長実験を行ってP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]コポリマーを得た。これにより、CPDB媒介RAFT重合で得られたP(TFEMA-r-DEAEMA)鎖の「リビングネス(livingness)」の程度を正しく評価することができた。
P[(TFEMAx-r-DEAEMAy)-b-DMAEMAz]コポリマーの式(x=0〜30;y=30-x;z=90)は以下のとおりである。
【0037】
【化7】
式2
【0038】
典型的に、重合の一般的条件はトルエン(質量で25%)中80℃で、下記比:[DMAEMA]/[マクロRAFT剤]/[AIBN]:100/1/0.4を用いた。3時間後にサンプルを取出し(DMAEMAの転化率90%)、得られたポリマーをTHF中のSEC及びNMRで分析した(図5参照)。観察されるクロマトグラムのシフトは鎖の伸長と一致する。
(マクロ開始剤としてのポリ[TFEMA-ランダム-DEAEMA]-Clコポリマー:P(TFEMA-r-DEAEMA)-ClのATRP合成)
使用前にDEAEMA、TFEMA及びDMAEMAの全成分をアルミナカラムに通して精製してインヒビターを除去した。
磁気撹拌棒を備えた25-mLの乾燥シュレンクフラスコに、塩化銅、CuCl(0.0336g,0.3mmol)を加え、シュレンクフラスコを排気して窒素を流した。脱気した注射器を用いてDEAEMA(0.77g,4.26mmol)、TFEMA(3.46g,20.6mmol)、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチル-トリエチレンテトラミン(HMTETA)(0.088g,0.4mmol)、及び脱気したメタノール(2.5mL)と蒸留水(0.5mL)をシュレンクフラスコに加えた。混合物を10分間撹拌した。次に、25±0.2℃に維持した水浴内にフラスコを置いた。最後に、p-トルエンスフホニルクロリド(p-TsCl)(0.0636g,0.3mmol)を加えた。絶えず撹拌しながら3時間反応を進行させた。反応容器を空気にさらし、氷浴内で冷却することによって重合を終わらせた。次に、10mlのCH2Cl2を加えた。溶液を塩基性のアルミニウムカラムに通してさらに100mlのCH2Cl2で溶出した。回転式エバポレーターで濃縮した後、溶液を冷ヘキサン中に注いでポリマーを沈殿させた。回収されたポリマーを真空乾燥機内で40℃にて一晩乾燥させた。ポリマーP(TFEMA24-r-DEAEMA5)-Clを得、NMR及びSECで特徴づけた。
【0039】
(ポリ[(TFEMA-ランダム-DEAEMA)-ブロック-DMAEMA]コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]のATRP合成)
前述したようにp-TsCl/CuCl開始剤系を用いてP(TFEMA-r-DEAEMA)-Clを合成した。ブロックコポリマーP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]の合成の代表的実験手順は以下のとおりである。
磁気撹拌棒を備えた25-mlのシュレンクフラスコにP(TFEMA24-r-DEAEMA5)-Cl(Mn,SEC=9200;Mw/Mn=1.09)(0.36g)及びCuCl(0.007g,0.07mmol)を加えた。次に、窒素パージした注射器を介してDMAEMA(1.38g,8.79mmol)及び脱気したメタノール/水混合溶媒(メタノール4.0ml、水0.4ml)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌した後、窒素を流して混合物を脱気した。最後に、窒素パージした注射器を介してHMTETA(0.019ml,0.08mmol)を加えた。次に、25℃に維持した水浴内にフラスコを置き、反応時間は3時間だった。冷ヘキサン中で沈殿後、回収されたポリマーP(TFEMA24-r-DEAEMA5)-b-DMAEMA30を真空乾燥機内で40℃にて乾燥させ、NMR及びSECで分析した。
【0040】
(ポリ[(TFEMA-ランダム-DEAEMA)-ブロック-DMAEMA]コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA]のGTP合成)
GTPでポリマーを合成するために、まず、文献[Dicker IB, Cohen GM, Farnham WB, Hertler WR, Laganis ED, Sogah DY, Macromolecules, 23, 4034-4041 (1990)](参照によってここに援用する)に記載されているDickerらの方法によって、テトラ-n-ブチルアンモニウムビベンゾエート(TBABB)のような触媒を調製する必要がある。50mlの三つ口丸底フラスコ内で窒素パージ下にて側枝から触媒TBABB(23.6mg,0.065mmol)を加えた。次に、無水テトラヒドロフラン(100ml)をカニューレでフラスコ内に移した後、1-メトキシ-1-トリメチルシロキシ-2-メチル-1-プロパン(MTS,0.6ml,2.96mmol)を添加した。この溶液を20分間撹拌してからモノマーDMAEMA(15.68,99mmol)をカニューレで滴加した。この間に、反応容器の側面に温度計を取り付けて、モノマーの添加中の発熱をモニターした。反応温度が7〜18℃だけ上昇することが観察された。溶液の温度が室温に戻るまで(約60分)、反応混合物を撹拌した。次に、NMR及びSEC分析のため一定分量の反応混合物を注射器で抽出した。引き続き、モノマーTFEMA(2.51g,14.9mmol)とDEAEMA(2.77g,14.9mmol)の混合物をカニューレで滴加し、二番目の発熱を記録した。発熱が減じるまで(約60分)、反応混合物を室温で撹拌した。NMR及びSEC分析のためさらに一定分量を抽出した後、メタノール(3ml)でブロックコポリマーを終結させた。次に、回転式エバポレーターを用いて溶媒を除去した。最後に、冷ヘキサンでポリマーを沈殿させ、ろ過で回収してから真空乾燥機内で50℃にて一晩乾燥させた。
【0041】
(ポリ[(TFEMA-ランダム-DEAEMA)-ブロック-MAA]コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-MAA]のRAFT合成)
ジブロックP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-MAA]コポリマーの合成では、表2に示したように、RAFT合成したP(TFEMA14-r-DEAEMA14)をマクロRAFT剤として用いた。開始剤としてAIBNを用い、下記比([MAA]/[マクロRAFT剤]/[開始剤]=90/1/0.5)を利用して60℃でプロパン-2-オール中で鎖伸長実験を行ってP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-MAA]コポリマーを得た。3時間重合を進行させ、DMSO中の1H NMRで87%という転化率を得た。結果の生成物、P[(TFEMAx-r-DEAEMAy)-b-MAAz]コポリマー(x=14;y=14;z=78)をNMRで定量した。
【0042】
(マクロRAFT剤としてのポリ(TFEMA-ランダム-DEAEMA-ランダム-TMSPMS)コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA-r-TMSPMS)のRAFT合成)
マグネチックスターラーを含むシュレンク管にTFEMA(0.619g,3.68mmol)、DEAEMA(3g,16.5mmol)、TMSPMS(0.36g,1.47mmol)、CPDB(0.111g,0.5mmol)、AIBN(35mg,0.2mmol)及びトルエン(溶媒、1g)を導入した。窒素を泡立たせて混合物を脱気し、窒素雰囲気下、恒温油浴内で80℃にて加熱した。70分後、反応を0℃に冷却して重合を終わらせた。冷ヘキサン中の沈殿後、回収されたポリマーを真空乾燥内で一晩40℃にて乾燥させた。得られたポリマーP(TFEMA6-r-DEAEMA26-r-TMSPMS2)をNMR及びSECで分析した。
【0043】
(ポリ[(TFEMA-ランダム-DEAEMA-ランダム-TMSPMS)-ブロック-DMAEMA]コポリマー:P[(TFEMA-r-DEAEMA-r-TMSPMS)-b-DMAEMA]のRAFT合成)
マグネチックスターラーを含むシュレンク管に、前記マクロRAFT剤P(TFEMA6-r-DEAEMA26-r-TMSPMS2)(2.76g)、DMAEMA(8.69g,55mmol)、AIBN(36mg,0.22mmol)及びトルエン(2.85g)を導入した。窒素を泡立たせて混合物を脱気し、窒素雰囲気下、恒温油浴内で80℃にて加熱した。2時間後、反応を0℃に冷却して重合を終わらせた。冷ヘキサン中の沈殿後、回収されたポリマーを真空乾燥内で一晩40℃にて乾燥させた。得られたポリマーP(TFEMA6-r-DEAEMA26-r-TMSPMS2)-b-DMAEMA100をNMR及びSECで分析した。
【0044】
(実施例2:本発明のコポリマーによる基材のコーティング)
穏やかに撹拌しながら所望のpH及び塩条件でコポリマー分子を水に溶かした。通常、系を24時間平衡にさせて、系が完全に平衡することを確実にするが、より短いタイムスケール内で十分に平衡が達成し得ることは当業者には分かるだろう。撹拌は重要でなく、簡単な緩徐の撹拌で十分である。
次に、問題の基材を溶液にさらした。数分後に吸着が完了することが分かった。適切な適用方法として、限定するものではないが、浸漬、噴霧、スピンコーティング、ローラーコーティング、ブラッシュコーティング及び表面のすすぎが挙げられる。
次に、基材を純粋な溶媒(水)ですすいで、表面にルーズに保持されたコポリマー分子を除去した。しかし、この工程は、実際の条件下で適用するために必須でないことも理解すべきである。
添付図面の図7及び8は、吸着したミセル集合体が固液界面に見えることを示す。これらの表面吸着薄膜が自発的に生じて、連続した表面コーティングを与える。吸着薄膜は、固体表面に局所的なミクロ(ナノ)スケール構造をも与え、この構造はpH-依存性である。図7はpH9における集合体を示し、図8はpH4における集合体を示す。吸着の反応速度論データは、水性分散液から吸着が迅速に(数秒〜数分)起こることを示唆する(添付図面の図9参照)。ウォッシュオン(wash-on)及びウォッシュオフ(wash-off)データは、ルーズに結合している材料を除去する最初のすすぎ期後に吸着薄膜が頑丈であることを示唆した。これらのデータでは層の刺激応答も見られ;この応答の可逆性も見られる。
異なるpH条件下の表面のAFM画像は、図10で見られるように、構造変化が可視(かつ可逆性)であることを示している。可逆性表面挙動は、バルク溶液中のpHの関数としての可逆性ミセル形成を示すバルク挙動に関係がある。
図11は、マイカ-水界面(バックグラウンド電解液はKNO3 0.01M)で収集した力曲線データを示し、図12は、コポリマーサンプルのゼータサイザーデータを示す。さらに、pH9溶液からシリカへの沈着後に洗浄及び乾燥によって調製したコポリマーミセルの乾燥薄膜上に固着した液滴の画像を取り、図14に示すように、接触角を測定した。
図13Aは、測定した接触角が27°である未被覆シリカ表面上の水滴の画像である。
図13B〜13Eは、以下に示す異なるコポリマーサンプルで被覆した固体表面における水滴の画像である。
13B−P(DEAEMA30-b-DMAEMA95)コポリマーで被覆したシリカ。測定接触角は42°である。
13C−P[(TFEMA5-r-DEAEMA25)-b-DMAEMA89]コポリマーで被覆したシリカ。測定接触角は66°である。
13D−P[(TFEMA14-r-DEAEMA14)-b-DMAEMA89]コポリマーで被覆したシリカ。測定接触角は79°である。
13E−P[(TFEMA14-r-DEAEMA14)-b-DMAEMA89]コポリマーで被覆したアルミニウムシート。測定接触角は89°である。
空気中タッピングモードでモニターしたAFM画像からナノスコープ(Nanoscope)ソフトウェアを用いて被覆スライドガラスの粗さを計算した。スライドガラスをポリマーP[(TFEMA25-r-DEAEMA11)-b-DMAEMA94]で被覆した。水すすぎ前、最初の10mlの水によるすすぎ後、2回目及び3回目の(それぞれ10mlの水で)すすぎ後並びに続いて最後のすすぎ(500mlの水)後にAFM画像及び粗さをモニターした。各すすぎ後、スライドガラスを窒素内で乾燥させた。粗さは各すすぎ後にほぼ一定していることが観察され、図14に示すように、すすぎ後に材料の損失がないことに対応している。層内の引っかき傷のプロファイルをも測定し、すすぎ後、その厚さは一定のままだった。
【0045】
(実施例3:本発明のコーティングの「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」特性)
図15は、すすぎ後に除去された汚れの割合の比較を示す。16枚のパネルからの白色光の反射率(R)から、この割合を計算した。8枚のパネルはポリマーP[(TFEMA37-b-MAA105]で被覆し、8枚のパネルは被覆しなかった。
除去された汚れ%={(Rr−Rs)/(Rp−Rs)}×100 式(2)
式中、
Rr=すすいだパネルのR、Rs=汚れたパネルのR及びRpは、汚れる前のパネルのRである。
最初のすすぎ(20mlの水)後、未被覆パネルからはたった78.5%だけ除去されたのに比し、被覆パネルからは95.4%の汚れが除去された。2回目のすすぎ(100mlの水)後、除去された割合は被覆パネルで96%に増え、未被覆パネルでは81.1%に増えた。最初のすすぎ中にほとんどの汚れが除去され、かつ未被覆パネルよりも被覆パネルから多くの汚れが除去される。従って、本発明の新規コポリマーは優れた「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」成果をもたらすことが明白である。
【0046】
さらに分光測定試験を行って、処理した塗装アルミニウム表面と未処理の塗装アルミニウム表面との間の色差を評価した。図16は、汚れたパネル、すすぎ(10mlの水)後のパネル及び2回目のすすぎ(100mlの水)後のパネルの総合色差ΔEの比較を示す。8枚のパネルはポリマーP[(TFEMA37-b-MAA105)で被覆し、8枚のパネルは未被覆だった。CIE1964表色系から色差を計算した。この系は明度L*、赤-緑値a*及び黄-青値b*を考慮する。
ΔE=(ΔL2+Δa2+Δb2)1/2 式(3)
式中、
ΔL=L1−L2、Δa=a1−a2、Δb=b1−b2
かつ
ΔL、Δa、Δbは、CIE L*a*b*色空間の色差である。
L1、a1、b1は、サンプル1(汚れる前のきれいなパネル)のL*a*b*値である。
L2、a2、b2は、サンプル2(汚れ又はすすいだ後のパネル)のL*a*b*値である。
汚れた後、色差ΔEは、被覆パネル(13.7)では未被覆パネル(16.6)より少ない。これは、被覆パネル上でより少ない初期汚れ付着に相当する。最初のすすぎ後、ΔEは被覆パネルでは0.6に減少し、未被覆パネルでは3.4に減少する。従って、被覆パネルからより多くの汚れが除去された。2回目のすすぎ後、ΔEは再び被覆パネルでは0.5に減少し、未被覆パネルでは3.0に減少する。2回目のすすぎ後により多くの汚れが除去されるが、最初のすすぎ後にほとんどの汚れが除去されることが明白でり、過剰のすすぎだけがさらなる除去を促すであろう。このことは、本発明の新規コポリマーが一度表面上に被覆されると、未被覆表面に比べて容易に汚れを除去できることを明白に示している。被覆パネルは、初期汚れ付着が少ないことによっても良く機能する。
【0047】
ポリエステルベース樹脂で粉末被覆したアルミニウムシートについてセルフクリーニング試験を行った。適用時にどれだけのコポリマーがどこに適用されたかについての指標として黄色染料を使用した。上記で参照した添付図面の図13A及び13Bに示すように、試験図は、コポリマーの適用後に親水性表面から疎水性表面への変化を明白に示した。
添付図面の図18A〜18Dは、本発明のコポリマーで被覆されたシートAの「掃除しやすい」又は「セルフクリーニング」特性を示す。図18Dで分かるように、水ですすいだ後、被覆シートAから汚れが洗い流されるが、未被覆シートB上には、14ヶ月後でさえ汚れが残っている。
如何なる特定の理論によっても拘泥されたくないが、最初には汚れがコーティングにくっつき、雨が降ると、汚れを洗い落とすシートに似た様式で表面を水が流れ落ちると考えられる。対照的に、未被覆シートでは、シートの表面に沿って水がしたたり落ちると考えられる。乾燥プロセスに及ぼすミセルの疎水性内部コアの効果も驚くべきことだった。内部コアは非常に疎水性であり、如何なる残存水をもボールみたいに丸めて表面から流し落として、非常に速く乾燥させると考えられる。また、内部コアは、未被覆パネル上で見られる汚れの「筋がつく」のも排除するようである。従って、本発明の新規コポリマーは優れた「掃除しやすいか又はセルフクリーニング」成果をもたらす。
さらに、本発明の新規コポリマーコーティングは速い乾燥を可能し、結果として表面上に液滴を残さない。実際に、処理表面の親水性のため、存在するいずれの水も、処理表面上の個別の液滴ではなく、薄い、連続又は半連続層を形成することが観察された。この形態の水が蒸発すると、その中の鉱物は、目に見える位置という観点から十分には濃縮されない。従って、スポットが形成されない。水の薄膜又はシートの多くは、細流を形成し、筋をつけ、又は追跡することなく、重力の作用によって滑り落ちる。換言すれば、水は、洗浄表面上の特定経路に沿って丸く固まった個別の液滴又は細流ではなく、シートとして滑り落ちる。滑り落ちないすすぎ水は、洗浄表面上に薄いシート又は薄膜の形態のまま留まる。このシート又は薄膜が蒸発したとき、図19A及び19Bに明白に示されるように、水のスポットは生じない。
【0048】
(実施例4:応答性取込み/放出物質としての本発明のコーティングの使用)
コポリマーミセルは、薬物及び染料のような疎水性活性物質の装填に適した局所的環境を提供できるので、水溶性ブロックコポリマーが興味深い。本発明の刺激応答性コポリマー(特にP[TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA])は、水性溶液中で可逆性ミセルの自己集合を受けるので、応答性取込み/放出物質として使う機会を提供する。
疎水性オレンジ染料(Orange OT)を予め装填したミセルを用いて一連の実験を行った。以下の手順によってコポリマーミセル層をシリカコロイド(AngstromSphere)上で調製した。P[(TFEMA14-r-DEAEMA14)-b-DMAEMA90]のpH9の水溶液(10ml,KNO3(10mM)中500ppm)をpH9でOrange OTと混合した。次に、この混合物をシリカゾル(白色,0.1g)の分散系に加え、12時間タンブルさせて完全な平衡を保証した。次に、サンプルを遠心分離機にかけて(4000rpm,20分)、未吸着コポリマーからコロイド粒子を分離した。ほとんど全ての上澄みを除去し、オレンジ被覆シリカ粒子を回収した(図20の写真B参照)。沈降した粒子をpH4の電解溶液(KNO3)内で12時間再分散させた。次に、サンプルを遠心分離機にかけてコロイド粒子を分離し(図20の写真C参照)、上澄みを除去した。
写真A及びBは、シリカ粒子のコーティング前後の色の変化を明白に示す。ミセル-コポリマーは染料を捕獲できることが明白である。この点で、この染料はその低い水溶性のためコポリマーミセルの疎水性コア内に吸着している。染料装填コポリマーミセル溶液の最初の調製後、シリカコロイドをこの溶液で被覆した。ある層の沈着後、シリカコロイドはカラフルになり、染料の捕獲を示唆している。次に、被覆シリカ粒子を低pHの緩衝溶液ですすぐことによって染料色が除去され、この系の放出メカニズムを示している。
【0049】
(実施例5:本発明のコーティングの応答性取込み/放出物質としての使用)
黄色染料、クリソイジンを予め装填したミセルを用いて一連の実験を行った。
以下の手順でシリカコロイド(AngstromSphere)上でコポリマーミセルを調製した。P[(TFEMA5-r-DEAEMA25)-b-DMAEMA89]のpH9の水溶液(10ml,KNO3(10mM)中500ppm)をクリソイジン(Orange OTより疎水性が低い黄色染料)とpH9で混合した。次に、この混合物をシリカゾル(白色,0.1g)の分散系に加え、12時間タンブルさせて完全な平衡を保証した。次に、サンプルを遠心分離機にかけて(4000rpm,20分)、未吸着コポリマーからコロイド粒子を分離した。ほとんど全ての上澄みを除去し、黄色被覆シリカ粒子を回収した(図21の写真B参照)。沈降した粒子をpH4の電解溶液(KNO3)内で12時間再分散させた。次に、遠心分離(4000rpm,10分)後、上澄みを除去し、わずかに黄色のコロイド粒子を分離した(図21の写真C参照)。pH4での長時間のすすぎ(3時間)及び遠心分離後、白色コロイド粒子を得、染料の全放出を証明した(図21の写真D参照)。
【0050】
(参考文献)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(i)下記成分:
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1のホモポリマー;
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA2とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマーA1A2;
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、シリルアクリレート又はメタクリレートモノマーA3とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマーA1A2;及び
シリルアクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA2と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA3とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマーA1A2A3
から成る群より選択されるポリマーを含む第1の疎水性ブロックA;並びに
(ii)非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーを含む第2の親水性ブロックB
を含む、ABブロックコポリマー。
【請求項2】
前記ABブロックコポリマーを含むポリマーがモノマーから構成され、前記ABブロックコポリマーが誘導される前記親水性ブロックAと前記親水性ブロックBを構成するモノマーの比が、組織化集合体の形成をもたらす、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項3】
前記ブロックコポリマーABを構成するモノマーの比が、
10〜80単位のA;及び
30〜200単位のB
を含む、請求項1又は2に記載のブロックコポリマー。
【請求項4】
前記ブロックコポリマーABを構成するモノマーの比が、
20〜40単位のA;及び
80〜110単位のB
を含む、請求項1、2又は3に記載のブロックコポリマー。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーABを構成するモノマーの比が、
25〜35単位のA;及び
85〜100単位のB
を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
【請求項6】
ブロックAが、好ましくは、
フッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA1と非フッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA2とを含むランダムコポリマーA1A2、又は
フッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA1のホモポリマー
を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
【請求項7】
ブロックAを構成するフッ素化モノマーA1が下記一般式を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
-[CH2-CRCOOX]-
(式中、
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基であり;かつ
Xは、1〜6個の炭素原子を含むフッ素化アルキル基である。)
【請求項8】
Rが水素又はメチルである、請求項7に記載のブロックコポリマー。
【請求項9】
Xが、1〜4個の炭素原子を含むフッ素化アルキル基を含む、請求項7又は8に記載のブロックコポリマー。
【請求項10】
前記フッ素化モノマーA1が、
トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)、トリフルオロエチルアクリレート(TFEA)、ペンタフルオロプロピルメタクリレート(PFPMA)、ペンタフルオロプロピルアクリレート(PFPA)、へプタフルオロブチルメタクリレート(HFBMA)及びへプタフルオロブチルアクリレート(HFBA)から成る群より選択される、請求項7、8又は9に記載のブロックコポリマー。
【請求項11】
前記フッ素化モノマーが、好ましくはトリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)から構成される、請求項10に記載のブロックコポリマー。
【請求項12】
ブロックAの非フッ素化アクリレートモノマーA2が下記一般式を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
-[CH2-CRCOOY]-
(式中、
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基であり;かつ
Yは、アルキルアミノアルキル基である。)
【請求項13】
Rが水素又はメチルである、請求項12に記載のブロックコポリマー。
【請求項14】
Yがアルキルアミノエチル基を含む、請求項12又は13に記載のブロックコポリマー。
【請求項15】
Yがジエチルアミノエチル基を含む、請求項12又は13に記載のブロックコポリマー。
【請求項16】
ブロックAが式A1xA2yのポリマーを含み、
式中、
A1が、フッ素化アクリレートポリマーA1のランダムコポリマーを含み:かつ
A2が、非フッ素化アクリレートモノマーを含み、かつ
xがA1の繰返し単位数であり、;かつ
yがA2の繰返し単位数である、
請求項1〜15のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
【請求項17】
フッ素化モノマーA1の繰返し単位数、xが0〜80を含み;かつ
非フッ素化モノマーA2の繰返し単位数、yが0〜80−xを含む、
請求項16に記載のブロックコポリマー。
【請求項18】
式A1xA2yのブロックAが、トリフルオロエチルメタクリレート及びジエチルアミノエチルメタクリレートの繰返し単位を含むランダムコポリマーを含む、請求項16又は17に記載のブロックコポリマー。
【請求項19】
ブロックAを構成するシリルアクリレートモノマーが下記一般式を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
-[CH2-CR-COOZ]-
(式中、
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;かつ
Zは、シリルアルキル基であり、該アルキル基は1〜10個の炭素原子を有する。)
【請求項20】
Rが水素又はメチルである、請求項19に記載のブロックコポリマー。
【請求項21】
前記シリルアルキル基が1〜4個の炭素原子を含む、請求項20又は21に記載のブロックコポリマー。
【請求項22】
前記シリル基がトリアルコキシシリル基である、請求項19、20又は21に記載のブロックコポリマー。
【請求項23】
前記シリル基がトリメトキシシリル基である、請求項22に記載のブロックコポリマー。
【請求項24】
Zが(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(TMSPMA)又は(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート(TMSPA)を含む、請求項19に記載のブロックコポリマー。
【請求項25】
前記第2の親水性ブロックBが水溶性であり、かつ下記一般式を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載のコポリマー。
-[CH2-CRCOOR2-]-
(式中、
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;かつ
R2は、水素、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、又はアミノ官能基である。)
【請求項26】
Rが水素又はメチルである、請求項25に記載のブロックコポリマー。
【請求項27】
R2がメチル又は水素である、請求項25又は26に記載のブロックコポリマー。
【請求項28】
R2がアルキルアミノアルキル基である、請求項25、26又は27に記載のブロックコポリマー。
【請求項29】
前記第2の親水性ブロックBが、下記一般式の四級化ジアルキルアミノアルキルアクリレート又はメタクリレートモノマーを含む、請求項1〜28のいずれか1項に記載のコポリマー。
【化1】
(式中、
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルであり;
zは、0又は1であり;
R2は、-CH2-CHOH-CH2又はCxH2x(ここで、xは2〜18、好ましくは2である)であり;
R3は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル、エチルを含み;
R4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル、エチルを含み;かつ
X-は、Cl、Br、I、1/2SO4、HSO4及びCH3SO3から選択される。)
【請求項30】
前記第2のブロックBが、
2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEAEMA)、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPAEMA)、2-(N-モルフォリノ)エチルメタクリレート(MEMA)、又はその誘導体、メタクリル酸(MAA)若しくはその誘導体及びアクリル酸若しくはその誘導体
から成る群より選択されるモノマーを含む、請求項29に記載のブロックコポリマー。
【請求項31】
前記第2のブロックBが、好ましくはジメチルアミノエチルメタクリレートモノマー(DMAEMA)又はメタクリル酸(MAA)を含む、請求項30に記載のブロックコポリマー。
【請求項32】
P(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA)とP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-MAA]を含む、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項33】
制御されたリビングラジカル重合反応によって調製された、請求項1〜32のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか1項に記載のブロックコポリマーを含む表面コーティング。
【請求項35】
ある部位に送達すべき物質と共に、請求項1〜33のいずれか1項に記載のブロックコポリマーを含む、物質送達担体。
【請求項36】
基材のコーティング方法であって、請求項1〜33のいずれか1項に記載のコポリマーを水溶液に溶かす工程と、この水溶液に前記基材をさらす工程とを含む方法。
【請求項37】
前記コポリマー分子を穏やかに撹拌して、該分子を溶液に完全に溶かす工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記基材を前記溶液にさらす方法が、浸漬、噴霧、スピンコーティング、ローラーコーティング、カーテンフローイング及びブラッシュコーティングから成る群より選択される、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記基材が、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、コンクリート、紙、木材、鉱物、塗装及び/又は被覆基材から成る群より選択される、請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記基材が、前記ブロックコポリマーの適用前に被覆又は塗装される、請求項36〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
物質の取込み/放出方法であって、前記物質の水溶液を請求項1〜33のいずれか1項に記載のブロックコポリマーと混合する工程と、前記水溶液で基材を被覆する工程と、被覆基材を低いpHですすいで前記物質を放出させる工程を含む方法。
【請求項42】
すすぎを5以下のpHで行う、請求項41に記載の取込み/放出方法。
【請求項43】
(a)請求項1〜33のいずれか1項に記載のブロックコポリマーと、
(b)(i)又は(ii)を含む液状媒体(ここで、
(i)は、水と有機溶媒の混合物を含み;かつ
(ii)は、実質的に無水の有機溶媒を含む)
とを含む組成物。
【請求項44】
前記液状媒体が、水と有機溶媒の混合物、又は無水有機溶媒を含む場合、前記ブロックコポリマーが、好ましくは前記液状媒体に完全に溶解している、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記有機溶媒が、好ましくは、
C1-4アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、及びsec-ブタノール;線形アミド;ケトン及びケトン-アルコール、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン;水混和性エーテル;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えばアセトン又はエチレングリコール
を含む群から選択される水混和性有機溶媒を含む、請求項43又は44に記載の組成物。
【請求項46】
前記有機溶媒が、好ましくは実質的に無水の有機溶媒を含み、この有機溶媒は、好ましくはテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、低級アルコール、ケトン又はジメチルスルホキシド
を含む群から選択される有機溶媒を含む、請求項43又は44に記載の組成物。
【請求項47】
前記液状媒体が、実質的に無水の有機溶媒を含み、該組成物がさらに極性溶媒を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記無水の有機溶媒が、単一の有機溶媒又は2種以上の有機溶媒の混合物を含む、請求項46又は47に記載の組成物。
【請求項49】
該組成物中の成分(a)と成分(b)の相対比が、100:1〜1:100、さらに好ましくは10:1〜1:10、特に2:1〜1:2を含む、請求項43〜48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
該組成物中の成分(a)と成分(b)の相対比が1:1を含む、請求項43〜49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
該組成物が、例えば分散剤、香料及び安定剤から選択される追加成分をさらに含む、請求項43〜50のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項1】
以下の成分:
(i)下記成分:
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1のホモポリマー;
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA2とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマーA1A2;
フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、シリルアクリレート又はメタクリレートモノマーA3とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマーA1A2;及び
シリルアクリレート又はメタクリレートモノマーA1と、フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA2と、非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーA3とを含むランダム、交互、勾配又はブロックコポリマーA1A2A3
から成る群より選択されるポリマーを含む第1の疎水性ブロックA;並びに
(ii)非フッ素化アクリレート又はメタクリレートモノマーを含む第2の親水性ブロックB
を含む、ABブロックコポリマー。
【請求項2】
前記ABブロックコポリマーを含むポリマーがモノマーから構成され、前記ABブロックコポリマーが誘導される前記親水性ブロックAと前記親水性ブロックBを構成するモノマーの比が、組織化集合体の形成をもたらす、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項3】
前記ブロックコポリマーABを構成するモノマーの比が、
10〜80単位のA;及び
30〜200単位のB
を含む、請求項1又は2に記載のブロックコポリマー。
【請求項4】
前記ブロックコポリマーABを構成するモノマーの比が、
20〜40単位のA;及び
80〜110単位のB
を含む、請求項1、2又は3に記載のブロックコポリマー。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーABを構成するモノマーの比が、
25〜35単位のA;及び
85〜100単位のB
を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
【請求項6】
ブロックAが、好ましくは、
フッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA1と非フッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA2とを含むランダムコポリマーA1A2、又は
フッ素化アクリレート若しくはメタクリレートモノマーA1のホモポリマー
を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
【請求項7】
ブロックAを構成するフッ素化モノマーA1が下記一般式を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
-[CH2-CRCOOX]-
(式中、
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基であり;かつ
Xは、1〜6個の炭素原子を含むフッ素化アルキル基である。)
【請求項8】
Rが水素又はメチルである、請求項7に記載のブロックコポリマー。
【請求項9】
Xが、1〜4個の炭素原子を含むフッ素化アルキル基を含む、請求項7又は8に記載のブロックコポリマー。
【請求項10】
前記フッ素化モノマーA1が、
トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)、トリフルオロエチルアクリレート(TFEA)、ペンタフルオロプロピルメタクリレート(PFPMA)、ペンタフルオロプロピルアクリレート(PFPA)、へプタフルオロブチルメタクリレート(HFBMA)及びへプタフルオロブチルアクリレート(HFBA)から成る群より選択される、請求項7、8又は9に記載のブロックコポリマー。
【請求項11】
前記フッ素化モノマーが、好ましくはトリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)から構成される、請求項10に記載のブロックコポリマー。
【請求項12】
ブロックAの非フッ素化アクリレートモノマーA2が下記一般式を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
-[CH2-CRCOOY]-
(式中、
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基であり;かつ
Yは、アルキルアミノアルキル基である。)
【請求項13】
Rが水素又はメチルである、請求項12に記載のブロックコポリマー。
【請求項14】
Yがアルキルアミノエチル基を含む、請求項12又は13に記載のブロックコポリマー。
【請求項15】
Yがジエチルアミノエチル基を含む、請求項12又は13に記載のブロックコポリマー。
【請求項16】
ブロックAが式A1xA2yのポリマーを含み、
式中、
A1が、フッ素化アクリレートポリマーA1のランダムコポリマーを含み:かつ
A2が、非フッ素化アクリレートモノマーを含み、かつ
xがA1の繰返し単位数であり、;かつ
yがA2の繰返し単位数である、
請求項1〜15のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
【請求項17】
フッ素化モノマーA1の繰返し単位数、xが0〜80を含み;かつ
非フッ素化モノマーA2の繰返し単位数、yが0〜80−xを含む、
請求項16に記載のブロックコポリマー。
【請求項18】
式A1xA2yのブロックAが、トリフルオロエチルメタクリレート及びジエチルアミノエチルメタクリレートの繰返し単位を含むランダムコポリマーを含む、請求項16又は17に記載のブロックコポリマー。
【請求項19】
ブロックAを構成するシリルアクリレートモノマーが下記一般式を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
-[CH2-CR-COOZ]-
(式中、
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;かつ
Zは、シリルアルキル基であり、該アルキル基は1〜10個の炭素原子を有する。)
【請求項20】
Rが水素又はメチルである、請求項19に記載のブロックコポリマー。
【請求項21】
前記シリルアルキル基が1〜4個の炭素原子を含む、請求項20又は21に記載のブロックコポリマー。
【請求項22】
前記シリル基がトリアルコキシシリル基である、請求項19、20又は21に記載のブロックコポリマー。
【請求項23】
前記シリル基がトリメトキシシリル基である、請求項22に記載のブロックコポリマー。
【請求項24】
Zが(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(TMSPMA)又は(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート(TMSPA)を含む、請求項19に記載のブロックコポリマー。
【請求項25】
前記第2の親水性ブロックBが水溶性であり、かつ下記一般式を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載のコポリマー。
-[CH2-CRCOOR2-]-
(式中、
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;かつ
R2は、水素、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、又はアミノ官能基である。)
【請求項26】
Rが水素又はメチルである、請求項25に記載のブロックコポリマー。
【請求項27】
R2がメチル又は水素である、請求項25又は26に記載のブロックコポリマー。
【請求項28】
R2がアルキルアミノアルキル基である、請求項25、26又は27に記載のブロックコポリマー。
【請求項29】
前記第2の親水性ブロックBが、下記一般式の四級化ジアルキルアミノアルキルアクリレート又はメタクリレートモノマーを含む、請求項1〜28のいずれか1項に記載のコポリマー。
【化1】
(式中、
Rは、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルであり;
zは、0又は1であり;
R2は、-CH2-CHOH-CH2又はCxH2x(ここで、xは2〜18、好ましくは2である)であり;
R3は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル、エチルを含み;
R4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル、エチルを含み;かつ
X-は、Cl、Br、I、1/2SO4、HSO4及びCH3SO3から選択される。)
【請求項30】
前記第2のブロックBが、
2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEAEMA)、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPAEMA)、2-(N-モルフォリノ)エチルメタクリレート(MEMA)、又はその誘導体、メタクリル酸(MAA)若しくはその誘導体及びアクリル酸若しくはその誘導体
から成る群より選択されるモノマーを含む、請求項29に記載のブロックコポリマー。
【請求項31】
前記第2のブロックBが、好ましくはジメチルアミノエチルメタクリレートモノマー(DMAEMA)又はメタクリル酸(MAA)を含む、請求項30に記載のブロックコポリマー。
【請求項32】
P(TFEMA-r-DEAEMA)-b-DMAEMA)とP[(TFEMA-r-DEAEMA)-b-MAA]を含む、請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項33】
制御されたリビングラジカル重合反応によって調製された、請求項1〜32のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか1項に記載のブロックコポリマーを含む表面コーティング。
【請求項35】
ある部位に送達すべき物質と共に、請求項1〜33のいずれか1項に記載のブロックコポリマーを含む、物質送達担体。
【請求項36】
基材のコーティング方法であって、請求項1〜33のいずれか1項に記載のコポリマーを水溶液に溶かす工程と、この水溶液に前記基材をさらす工程とを含む方法。
【請求項37】
前記コポリマー分子を穏やかに撹拌して、該分子を溶液に完全に溶かす工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記基材を前記溶液にさらす方法が、浸漬、噴霧、スピンコーティング、ローラーコーティング、カーテンフローイング及びブラッシュコーティングから成る群より選択される、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記基材が、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、コンクリート、紙、木材、鉱物、塗装及び/又は被覆基材から成る群より選択される、請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記基材が、前記ブロックコポリマーの適用前に被覆又は塗装される、請求項36〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
物質の取込み/放出方法であって、前記物質の水溶液を請求項1〜33のいずれか1項に記載のブロックコポリマーと混合する工程と、前記水溶液で基材を被覆する工程と、被覆基材を低いpHですすいで前記物質を放出させる工程を含む方法。
【請求項42】
すすぎを5以下のpHで行う、請求項41に記載の取込み/放出方法。
【請求項43】
(a)請求項1〜33のいずれか1項に記載のブロックコポリマーと、
(b)(i)又は(ii)を含む液状媒体(ここで、
(i)は、水と有機溶媒の混合物を含み;かつ
(ii)は、実質的に無水の有機溶媒を含む)
とを含む組成物。
【請求項44】
前記液状媒体が、水と有機溶媒の混合物、又は無水有機溶媒を含む場合、前記ブロックコポリマーが、好ましくは前記液状媒体に完全に溶解している、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記有機溶媒が、好ましくは、
C1-4アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、及びsec-ブタノール;線形アミド;ケトン及びケトン-アルコール、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン;水混和性エーテル;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えばアセトン又はエチレングリコール
を含む群から選択される水混和性有機溶媒を含む、請求項43又は44に記載の組成物。
【請求項46】
前記有機溶媒が、好ましくは実質的に無水の有機溶媒を含み、この有機溶媒は、好ましくはテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、低級アルコール、ケトン又はジメチルスルホキシド
を含む群から選択される有機溶媒を含む、請求項43又は44に記載の組成物。
【請求項47】
前記液状媒体が、実質的に無水の有機溶媒を含み、該組成物がさらに極性溶媒を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記無水の有機溶媒が、単一の有機溶媒又は2種以上の有機溶媒の混合物を含む、請求項46又は47に記載の組成物。
【請求項49】
該組成物中の成分(a)と成分(b)の相対比が、100:1〜1:100、さらに好ましくは10:1〜1:10、特に2:1〜1:2を含む、請求項43〜48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
該組成物中の成分(a)と成分(b)の相対比が1:1を含む、請求項43〜49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
該組成物が、例えば分散剤、香料及び安定剤から選択される追加成分をさらに含む、請求項43〜50のいずれか1項に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2010−512444(P2010−512444A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540853(P2009−540853)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004762
【国際公開番号】WO2008/071957
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509166098)ユニヴァーシティー オブ リーズ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004762
【国際公開番号】WO2008/071957
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509166098)ユニヴァーシティー オブ リーズ (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]