説明

可逆性感熱記録媒体

【課題】 耐傷性に優れ、油、水さらには洗浄剤などによる耐汚染性が向上した、かんばん方式に用いることのできる可逆性感熱記録媒体の提供。
【解決手段】少なくとも保護層と、可逆性感熱記録層とを有し、前記保護層が25〜1000μmの範囲にある可逆性感熱記録媒体であり、前記可逆性感熱記録媒体の厚さAμmと、当該媒体の長辺Bmmとの比(A/B)が、10/6以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、かんばん方式に好適に使用しうる可逆性感熱記録媒体に関し、より詳細には、本発明は、擦過性、耐候性に優れ、表示性に優れたかんばん方式に好適に使用しうるような可逆性感熱記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車工場などを代表とする量産工場において、かんばん方式という部品管理の方式が採用されている。この方式は、仕掛品の在庫を最小限に減らし、また必要な部品などを、必要な時期にいわゆるジャスト・イン・タイムに入手して生産する方式として知られている。このような方式を採用する職場としては、いわゆる組立職場、部品職場などが中心であるが、前記かんばん方式は、このような量産工場の組立職場以外の部品を納入する外部納入業者等にも広範囲に普及している。
【0003】ところでこのかんばん方式の運用には、1部品1葉式の伝票、あるいはこのような伝票機能を有する通称かんばんと呼ばれる厚紙カードまたは鉄板などが用いられている。これら通称のかんばんが、前記職場に備え付けられて、部品等の必要性が生じたときに、その都度、前工程および後工程などの次工程管理が適切な合理的数量が維持されて、過剰納入を防止している。またこのようなかんばんを用いたかんばん方式の採用により、工場全体の在庫数量の減少化を図るとともに、設計変更、モデルチェンジにも迅速に対応可能となっている。
【0004】このような前記通称かんばんと呼ばれるかんばん方式に用いられる厚紙カードは、これら前記工場等およびコンビニストアなどの部品を収納するコンテナ等に載置あるいは貼付られて使用されるものであり、このようなコンテナに使用されている前記したいわゆるかんばんは、運搬中にこすれたり、油、雨水等に接触したり、さらにコンテナが野積み等されるため、このかんばんに使用される厚紙カードは、使用後には再利用されることなく廃棄され、その後、かんばん方式に供される新しい厚紙カードが載置等されることになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように、かんばん方式に使用される厚紙カードは、運搬中に擦過、あるいは周囲環境下の油、雨水等による汚染、さらには載置等されるコンテナの野積等による高温下での太陽光暴露下における環境下にあって、厚紙カードの再利用が困難であり、また、仮に再利用が可能であるとしても、前記したような環境下に使用された厚紙カードが、伝票のように必要な部品の種類、数量等を明確に再表示可能であるとともに、以下のような機能を備えている必要がある。
■引き取り情報あるいは運搬情報の機能■生産指示情報の機能■品名、数量の明示などの現品票機能■在庫管理伝票機能
【0006】このようにかんばん方式では、通称かんばんに使用される厚紙カード等は、多数の機能を有しており、このようなかんばんに使用される厚紙カードがこれらの機能を維持して再利用されることは困難である。このような状況下、本発明者らは、上記したような伝票機能等の各種機能を有し、かつ、前記した環境下にあってもこれら上記各種機能を再び書込可能とする記録媒体を導入するとともに、世界的な資源の再利用状態を勘案して、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体の発明は、少なくとも保護層と、可逆性感熱記録層とを有し、前記保護層が25〜1000μmの範囲にある可逆性感熱記録媒体であり、前記可逆性感熱記録媒体の厚さAμmと、当該媒体の長辺Bmmとの比(A/B)が、10/6以上であることを特徴とする。
【0008】請求項2に記載の可逆性感熱記録媒体の発明は、請求項1において、前記保護層は、透明プラスチックフィルムであることを特徴とする。
【0009】請求項3に記載の可逆性感熱記録媒体の発明は、請求項1または2において、前記可逆性感熱記録媒体は、前記長辺Bが、128mm以上であることを特徴とする。
【0010】請求項4に記載の可逆性感熱記録媒体の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記保護層は、可視光および赤外光域の透過率が80%以上であり、前記可逆性感熱記録層は、レーザー光照射により印字されることを特徴とする。
【0011】請求項5に記載の発明は、少なくとも保護層と、可逆性感熱記録層とを有するかんばん方式用の可逆性感熱記録媒体である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、可逆性感熱記録媒体の発明は、少なくとも保護層と、可逆性感熱記録層とを有し、前記保護層が25〜1000μmの範囲にある可逆性感熱記録媒体であり、前記可逆性感熱記録媒体の厚さAμmと、当該媒体の長辺の長さBmmとの比(A/B)が、10/6以上であることを特徴とする。このような本発明に使用される保護層を、基材として用いることもできる。また本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、前記長辺Bが、128mm以上の大型のものである。すなわち本発明に係る感熱記録媒体の大きさは、たとえばB7版以上の大きさのものである。たとえば下記表1のような特定のものが選択される。
【0013】
【表1】


【0014】また本発明に係る可逆性感熱記録媒体に使用される保護層は、可視光および赤外光域の透過率が80%以上であることが好ましく、ヘーズ値が20%以下である。このような可逆性感熱記録媒体は、従来のかんばんと同等の取扱い適性を持たせるには、たわみ量が、40mm未満であることが好ましい。
【0015】このような本発明に係る可逆性感熱記録媒体で印字する際に用いられる熱源としては、レーザー光が用いられる。このようなレーザー光としては、半導体レーザー、CO2 レーザーなどのガスレーザー、YAGレーザーなどの固体レーザーなどが制限なく挙げられる。好ましくは、このようなレ−ザーでも、赤外線の波長域を有するレーザーが好ましく用いられる。また、印字された情報を消去するには熱板、熱ロール、熱バー、オーブンなどの手段を用いても良く、また前記したようなレーザー光を用いて消去することができる。なおレーザー光を用いて消去する場合には、印字する際のフォーカス状態から、デフォーカス状態で処理すればよい。
【0016】このような本発明に係る可逆性感熱記録媒体としては、図1に示すように、基材4上に可逆性感熱記録層3および中間層5を塗工により積層し、透明プラスチックフィルムからなる保護層2で挟み込んだ例を挙げることができる。また図2に示すように、基材4上に可逆性感熱記録層3と中間層5をそれぞれ塗工により積層し、さらに透明プラスチックフィルムからなる保護層2を、接着層6を介して積層した可逆性感熱記録媒体の例を挙げることができる。さらに図3に示すように、透明プラスチックフィルムからなる保護層2に可逆性感熱記録層3および隠蔽層7を塗工により積層した可逆性感熱記録媒体の例を挙げることができる。
【0017】以下、本発明に係る可逆性感熱記録媒体を構成する保護層等について説明する。
【0018】保護層本発明に係る可逆性感熱記録媒体に使用される保護層は、特定の厚みを有し、透明性を有するものである。このように保護層に使用される材料としては、前記した厚みにおいて透明性を有するものであれば前記レーザー光による印字が可能であり、このような特性を有するものであれば、限定されず使用される。特に本発明では、このような透明性を有する保護層が、耐傷性に優れるものを用いることが好ましい。本発明に使用される保護層の厚さとしては、通常、25〜1000μmのものが使用される。使用される保護層の厚みが25μm未満であれば保護層としての効果に劣ることがあり、また1000μmを越すとレーザーでの印字が困難になることが有る。また保護層中に、後述する紫外線吸収層に適宜使用される紫外線吸収剤を適宜配合することもできる。また本発明に係る可逆性感熱記録媒体に使用される保護層は、基材と、保護層とを兼ねることもできる。
【0019】このような保護層は、塗工により形成したものを用いても良いが、一般に塗工により厚く形成することは困難なことがあり、このため、保護層として、透明プラスチックフィルムを、接着層を介して貼り合わせ等することにより設けることが好ましい。このような透明プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、およびポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、さらにポリ塩化ビニル等の材料の中から選択される1種以上の材料から適宜選択される透明プラスチックフィルムが挙げられる。上記図1に示すように、保護層2で挟み込む形態の場合には、保護層として、一方の面に予めシーラント層を形成した透明プラスチックフィルムを用いることができ、このような例においては、シーラント層が内面側になるように、挟み込んでヒートシールを行って形成する。また上記図3に示すような保護層に基材としての機能も持たせる場合には、保護層に用いる透明プラスチックフィルムは、JIS P 8125に準じて測定した曲げこわさが10g・cm以上、好ましくは15g・cm以上であり、JIS P 8115に準じて測定した耐折強さが500回以上、好ましくは1000回以上であるものを使用するのが望ましい。
【0020】可逆性感熱記録層可逆性感熱記録層2は、ロイコ染料、顕減色剤及びバインダー樹脂を含有して構成され、熱によって可逆的に発色/消色を繰り返す。ロイコ染料は、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体といわれるものである。また、顕減色剤は、電子受容性化合物といわれるものであり、加熱後の冷却速度の違いにより染料前駆体に可逆的な色調変化を生じさせるものであり、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有するフェノール性化合物、ナフトール性化合物又はフタル酸化合物、あるいはフェノール性水酸基とアミノ基とを有する両性化合物が用いられる。
【0021】上述の、発色型の可逆性感熱記録層2に含有されるロイコ染料としては、クリスタルバイオレットラクトン、3−インドリノ−3−p−ジメチルアミノフェニル−6−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、2−(2−クロルフェニルアミン)−ジエチルアミノフルオラン、2−(2−フルオロフェニルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2−フルオロフェニルアミノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−t−ブチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−ブチルアニリノフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)−フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−N−メチルシクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチルペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等を挙げることができる。
【0022】本発明では、前記ロイコ染料の発色後の色は限定されないが、たとえば発色後に黒となる染料を用いることもできる。このような黒となる染料としては、黒色等の発色性化合物のうち、1種のみで黒色系に発色しうるものとしては、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−7−クロロアニリノフルオランなどを挙げることができる。このような黒色系の発色性化合物は、一種のみで用いてもよく、また二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0023】さらに、以下のような赤色系発色性化合物および青色系発色性化合物を単独で用いることもでき、またこれらの赤色系発色性化合物と、青色系発色性化合物とを、少なくとも各1種以上混合して、黒色系発色性化合物として用いることもできる。
【0024】赤色系発色性化合物としては、以下に示す一般式 [1−1] 、 [2−1] または[ 3 ]で表される化合物が挙げられる。
【0025】
【化1】


【0026】
【化2】


【0027】
【化3】


【0028】
【化4】


【0029】青色系発色性化合物としては、以下の一般式 [1−2] または [2−2] で表される化合物が挙げられる。
【0030】
【化5】


【0031】
【化6】


【0032】
【化7】


【0033】上記したような通常無色ないし淡色のロイコ染料は、それぞれ1種のみで使用してもよく、また、2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】また、発色型の可逆性感熱記録層2に含有される顕減色剤としては、N−(p−ヒドロキシフェニル)−N' −n−オクタデシルチオ尿素、N−(p−ヒドロキシフェニル)−N' −n−オクタデシル尿素、N−(p−ヒドロキシフェニル)−N' −n−オクタデシルチオアミド、4' −オクタデカンアニリド、2−オクタデシルテレフタル酸、N−オクタデシル(p−ヒドロキシフェニル)アミド、N−(p−ヒドロキシベンゾイル)−N−オクタデカノイルアミン、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N' −オクタデカノヒドテジド、N−[(p−ヒドロキシフェニル)メチル]−n−オクタデシルアミド、N−[(p−ヒドロキシフェニル)メチル]−n−オクタデシル尿素、N−[(p−ヒドロキシフェニル)メチル]−N' −n−オクタデシルオキサミド等が挙げられる。
【0035】さらに、下記一般式[4]で表される顕減色剤を用いることができる。
【0036】
【化8】


【0037】前記、一般式[4]において、pは、1〜3の整数であり、Xは、−CONH−、−NHCO−、−CONHCO−、−CONHNHCO−および−NHCOCONH−から選択されるいずれかの基であり、mは10以上の整数である。このような前記一般式[4]で表される顕減色剤として、具体的には、下記一般式[5]で表されるような化合物が表される。
【0038】
【化9】


【0039】前記式[5]中、pは0〜10の整数、たとえばp=0、1、2、3であり、より良好な発色性能と消色性能を得る点から、p=1〜3が好ましい。また、mは、10以上の整数、たとえばm=10〜100までの整数、好ましくはm=10〜50の整数である。より具体的には、p=0、1、2または3のいずれかであり、かつ、m=10〜100までの整数であることが好ましく、さらに好ましくはp=1、2または3のいずれかであり、かつ、m=10〜50である。より具体的には前記式[5]においてpが2であり、mが20である化合物が挙げられる。なお、式[5]で表される顕減色剤は、1種のみであってもよく、2種以上を混合した混合物であってもよい。これら顕減色剤は、上記したような顕減色剤から選択される1種または2種以上を使用することができる。
【0040】また、本発明に使用される可逆性感熱記録層2に含有されるバインダー樹脂としては、以下のものが挙げられる。
【0041】デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のラテックスなど。上記した中でも、電子供与性染料前駆体(ロイコ染料)および電子受容性化合物(顕減色剤)の分散性にすぐれ、書き換え耐久性にすぐれた可逆性感熱記録層2が得られるため、熱可塑性樹脂の分子内に二重結合を導入して、紫外線または電子線硬化性とした樹脂として、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体にアクリル酸またはメタクリル酸をエステル重合させた樹脂が使用できる。
【0042】このような発色型の可逆性感熱記録層2において、発色を行うには加熱に引き続き急速な冷却が起これば良く、消色を行うには加熱後の冷却速度が遅ければ良い。例えば、適当な熱源(サーマルヘッド、レーザー光、熱ロール、熱スタンプ、高周波加熱、電熱ヒーターからの輻射熱、熱風等)で比較的長い時間加熱すると、可逆性感熱記録層2だけでなく基材等も加熱される為に冷却速度が遅く、相分離状態(消色状態)になる。一方、適当な方法で加熱した後、低温の金属ブロックなどを押し当てる等して急速に冷却することにより、発色状態を発現させることができる。
【0043】また、サーマルヘッド、レーザー光等を用いて極めて短い時間だけ加熱すると、加熱終了後に直ちに冷却(固化)が始まる為、発色状態を発現させることができる。従って、同じ加熱温度および/または同じ熱源を用いても、冷却速度を制御することにより発色状態および消色状態を任意に発現させることができる。
【0044】基材本発明に使用される基材として、以下に示すような材料などが用いられる。
【0045】塩素含有重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体など、ポリエステル樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、あるいはテレフタール酸またはイソフタール酸などの酸成分と、エチレングリコールまたはシクロヘキサンジメタノールなどのアルコール成分との縮合エステル樹脂(たとえばPETG:イーストマンケミカル社の商標)など、生分解性プラスチック樹脂;ポリ乳酸系樹脂、デンプンと変性ポリビニールアルコール等とからなる天然高分子系樹脂、β―ヒドロキシ酪酸とβ―ヒドロキシ吉草酸とからなる微生物産生の樹脂等。
さらにポリアセテート、ポリスチレン(PS)、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリカーボネート(PC)、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂シートまたは合成紙等が挙げられ、これら上記材料を適宜組合せてもよく、これら上記の材料を積層したものでもよい。これら基体シートの厚さは特に制限されない。なお例示した樹脂中において、透明な樹脂は、保護層として用いることもできる。
【0046】隠蔽層本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、保護層が基材を兼ねる場合、可逆性感熱記録層に対して保護層を前記可逆性感熱記録層の片側面に設け、その保護層に可逆性感熱記録層に対して対称的な他の面(裏面)に、隠蔽層(裏面隠蔽層)を設けることができる。このような隠蔽層として、前記したような樹脂に、隠蔽性を付与できる銀色、灰色、白色または淡黄色の顔料を添加したものを用いることができる。このような隠蔽層は、他の層との密着性を有し、かつ得られたカードを周囲の環境変化から保護するために、耐水性に優れるものを使用するのが好ましい。このような樹脂として前記した他に、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、またはエポキシ系、メラミン系、アクリル系、ポリエステル系、フェノール系等の熱硬化型樹脂、あるいはアクリル系、アクリルウレタン系等の紫外線硬化型樹脂が挙げられる。この中でも熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂が耐久性に優れるので好ましい。なお保護層に使用される顔料として、Al,Sn,Zn,Cu,Ag,Cu−Zn等の金属やAl2O3,TiO2等の金属酸化物等を用いることができる。
【0047】アンカー層アンカー層は、各層間の密着性を上げるために設けられる層であり、各層間にアンカー層を適宜設けることができる。アンカー層に用いられる樹脂として、極性基、たとえばヒドロキシル基、カルボキシル基および炭素・炭素二重結合などの不飽和基を有する化合物を挙げることができ、これらの化合物を一種以上有する。このようなアンカー層は、可逆性感熱記録層と、基材との層間剥離を防止するため、50%程度の伸縮性を有し、耐溶剤性を有することが好ましい。このようなアンカー層を構成する樹脂としては、具体的には、ポリエステル樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステルアクリレート系樹脂などが挙げられる。なお前記したアクリレート系樹脂は、紫外線硬化性樹脂であっても良い。
【0048】光熱変換層本発明に係る可逆性感熱記録媒体には、光熱変換層を用いてもよい。このような光熱変換層は、レーザー光などの光を吸収して、熱に変換し、隣接する可逆性感熱記録層を発色させたり、あるいは消色させたりするために設けられるものである。一般的に、このような光熱変換層は、レーザー光波長近傍での光吸収係数の大な色素等を、樹脂等に混合あるいは分散等させて用いることが好ましい。このような色素としては、シアニン系色素、ポリメチン系色素、銅フタロシアニン系色素などのフタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ジチオール金属錯塩系色素、トリフェニルメタン系色素、アミニウム系色素、ジインモニウム系色素等の近赤外線吸収色素等を用いることができる。これらの色素は、樹脂と併用して用いることが好ましく、たとえば、上記したような基材に使用される樹脂を挙げることができる。
【0049】その他の層本発明に係る可逆性感熱記録媒体には、前述した保護層と、可逆性感熱記録層との間に、紫外線吸収層を設けることができる。このような紫外線吸収層は、紫外線を吸収する透明プラスチックスを用いても良く、また、保護層等に用いることのできる透明性を有する脂環式ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、PET樹脂、PBT樹脂などに、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収剤を配合した材料をフィルム状に形成したものを用いることもできる。また、保護層として透明プラスチックフィルムが採用された場合、透明プラスチックフィルムを接着する接着剤あるいは接着層と、可逆性感熱記録層との間に、中間層を設けることもできる。この中間層を設けることにより、前記した接着剤あるいは接着層と可逆性感熱記録層との接触による不可逆性の発色を防止することができる。なおこの中間層に、前記保護層同様に紫外線吸収剤を有するようにしても良い。
【0050】本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、前記基材上に前記したような可逆性感熱記録媒体を構成する各層を設けることによって得られるが、各層を形成する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用することができる。たとえば、たとえば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、カーテンコーター等の塗工装置を用いて塗工することもでき、さらに、平版、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン、ホットメルト等の各種印刷方式を採用して作製することができる。なお使用する材料によって、放射線照射、たとえばUV照射、EB照射などにより、各層を形成することもできる。また各層は、場合に応じて別々に形成したり、あるいは1層ずつ、または同時に形成して、本発明に係る可逆性感熱記録媒体を形成することもできる。なお基材上に形成される各層は、基材全面に設けられても良く、また、基材の一部に設けられていても良く、適宜選択される。
【0051】[実施例]以下に、本発明を実施例に基いてさらに詳説するが、本発明は、これら実施例に拘泥され限定されて解釈されるものではない。
【0052】[実施例1]以下のようにして、図1に示す可逆性感熱記録媒体を作製した。
基材基材として188μmの厚みの白色PET(ポリエチレンテレフタレート:東レ(株)製、商品名:ルミラーE−22)を用いた。
【0053】可逆性感熱記録層の形成基材上に、以下の組成の材料を容器に入れ、直径2mmのジルコニアビーズを加えてペイントシェーカーにより1時間分散した後に、♯26のワイヤバーにより塗工し、120℃下に1分乾燥した後、160W/cmの紫外線照射強度下に、30m/分の速度で1パスさせて紫外線硬化させ、乾燥膜厚8μmの可逆性感熱記録層を形成した。
・ロイコ染料:3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山 本(株)製、商品名:ODB) 20重量部・顕減色剤 :N−(4−ヒドロキシフェニル)N' −n−オクタデシル尿素 60重量部・樹脂 :アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、商品名:ダイヤナ−ルBR−80) 60重量部 紫外線硬化型樹脂(BASF(株)製、商品名:Laromer8864) 20重量部・光重合開始剤:2 −ヒドロキシ−2 −メチル−1 −フェニル−プロパン−1 − オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:ダロキュア1173) 1重量部・溶剤;MEK(メチルエチルケトン) :トルエン=1:1重量比 500重量部
【0054】中間層可逆性感熱記録層上に、以下の組成の塗料を、♯4のワイヤバーにより塗工し、120℃下に1分乾燥した後、160W/cmの紫外線照射強度下に、30m/分の速度で1パスさせて紫外線硬化させ、乾燥膜厚2μmの中間層を形成した。
・紫外線硬化型塗料(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:ユニディック17−806, 固形分80重量%) 1重量部・溶剤;MEK:トルエン=1:1重量比 2重量部
【0055】保護層A5版の大きさで厚さ100μmのポリエチレンにEVA(エチレン−ビニルアルコール共重合体)のシーラント層を有する透明プラスチックフィルムを用いて、上記可逆性感熱記録層が設けられた基材を両面から包むようにして、温度100℃でヒートシールして、保護層を両面全面に形成した可逆性感熱記録媒体(大きさA5版)を作製した。作製した可逆性感熱記録媒体を用いて、以下に示すような耐傷性試験等により評価を行った。結果を表2に示す。
【0056】耐傷性試験JIS K 5400の規定による鉛筆硬度により試験を行い、鉛筆硬度3H以上を○、鉛筆硬度2H以下を×として評価した。
耐汚染性試験JIS K 5400の規定により、食用植物油を用いて耐汚染性について試験した。
カール作製した可逆性感熱記録媒体のエッジの反り量が、5mm未満のときを○、5mm以上のときを×として評価した。
たわみ量得られた可逆性感熱記録媒体またはサンプルの短辺の一端から10mmの部分を固定して、他端のたわみ量を測定した。
【0057】[実施例2]以下に示すようにして、図2に示す可逆性感熱記録媒体を作製した。実施例1において、中間層上に以下に示す接着層を設け、保護層を後述する保護層に代えた以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録媒体を作製した。作製した可逆性感熱記録媒体を用いて、評価を行った。結果を表2に示す。
接着層以下の組成からなる組成液を♯10のワイヤバーにより中間層上に塗工し、120℃下に1分乾燥し、乾燥膜厚3μmの接着層を形成した。
・変成エーテル型ポリエステル接着剤(富士フィルム(株)製、商品名:スタフィクスSOC−30−M) 1重量部・溶剤 ;MEK(メチルエチルケトン):トルエン(1:1重量比)
2重量部保護層前記した接着層が設けられた基材上に、厚さ188μmの透明PET(ダイヤホイル(株)製、商品名:T100)を載置し、135℃、50kg/cm2、10分間熱プレスを行って保護層を接着し、A5版の大きさの可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0058】[実施例3]以下のようにして、図3に示すような可逆性感熱記録媒体を作製した。
基材厚さ350μmの透明PET(ダイヤホイル(株)製、商品名:S100,JIS P 8125による曲げこわさ16g・cm以上、JIS P 8115による耐折強さ6000回以上の透明PET)を基材兼保護層として用いた。
アンカー層基材兼保護層上に以下の組成からなる組成液を♯4のワイヤバーにより塗工し、120℃で1分間乾燥し、乾燥膜厚0.5μmのアンカー層を形成した。
・樹脂:ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、商品名:バイロンRV200)
1重量部・溶剤 ;MEK:トルエン(1:1重量比) 9重量部可逆性感熱記録層アンカー層が設けられた基材兼保護層上に、実施例1 と同様の可逆性感熱記録層を設けた。
裏面隠蔽層以下の組成の材料を容器に入れ、直径2mmのジルコニアビーズを加えてペイントシェーカーにより5分間分散した後に、♯4のワイヤバーにより塗工し、120℃下に1分乾燥した後、160W/cmの紫外線照射強度下に、30m/分の速度で1パスさせて紫外線硬化させ、乾燥膜厚2μmの隠蔽層を形成した。
・紫外線硬化型塗料(大日本インキ化学工業(株) 製、商品名:ユニディック17−806: 固形分80%) 3重量部・酸化チタン(チタン工業(株) 製、商品名:ECT−52) 1重量部・溶剤 ;MEK:トルエン(1:1重量比) 6重量部上記したような構成を有する図3に示す可逆性感熱記録媒体を作製した。作製した可逆性感熱記録媒体(大きさA5版)を用いて、評価を行った。結果を表2に示す。なお曲げこわさを測定したところ、20g・cm以上であった。
【0059】[実施例4]以下のようにして、図2に示すような可逆性感熱記録媒体を作製した。
基材基材として250μmの厚みの白色PET(ポリエチレンテレフタレート:東レ(株)製、商品名:ルミラーE−22)を用いた。
中間層可逆性感熱記録層上に、以下の組成の塗料を、♯4のワイヤバーにより塗工し、120℃下に1分乾燥した後、160W/cmの紫外線照射強度下に、30m/分の速度で1パスさせて紫外線硬化させ、乾燥膜厚2μmの中間層を形成した。
・紫外線硬化型塗料(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:ユニディック17−806,固形分80重量%)
1重量部・溶剤 ;MEK:トルエン=1:1重量比 2重量部
【0060】可逆性感熱記録層の形成基材上に、以下の組成の材料を容器に入れ、直径2mmのジルコニアビーズを加えてペイントシェーカーにより1時間分散した後に、♯26のワイヤバーにより塗工し、120℃下に1分乾燥した後、160W/cmの紫外線照射強度下に、30m/分の速度で1パスさせて紫外線硬化させ、乾燥膜厚8μmの可逆性感熱記録層を形成した。
・ロイコ染料:3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本(株)製、商品名:ODB) 20重量部・顕減色剤 :N−(4−ヒドロキシフェニル)N' −n−オクタデシル尿素 60重量部・樹脂 :アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、商品名:ダイヤナ−ルBR−80) 60重量部 紫外線硬化型樹脂(BASF(株)製、商品名:Laromer8864)
20重量部・光重合開始剤:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:ダロキュア1173) 1重量部・溶剤 ;MEK:トルエン=1:1重量比 500重量部
【0061】接着層以下の組成からなる組成液を♯10のワイヤバーにより中間層上に塗工し、120℃下に1分乾燥し、乾燥膜厚3μmの接着層を形成した。
・変成エーテル型ポリエステル接着剤(富士フィルム(株)製、商品名:スタフィクスSOC−30−M) 1重量部・溶剤 ;MEK:トルエン(1:1重量混合物) 2重量部保護層前記した接着層が設けられた基材上に、厚さ38μmの透明PETを載置し、135℃、50kg/cm2、10分間熱プレスを行って保護層を接着し、A6版の大きさの可逆性感熱記録媒体を作製した。作製した可逆性感熱記録媒体を用いて、以下に示す評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】[実施例5]実施例4において、保護層を厚さ25μmの透明PETを用いて保護層を形成した以外は実施例4と同様にして、A6版の大きさの可逆性感熱記録媒体を作製した。作製した可逆性感熱記録媒体を用いて、以下に示す評価を行った。結果を表2に示す。
【0063】[比較例1]実施例1において、保護層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、A5版の大きさのサンプルを作製した。作製したサンプルを用いて、評価を行った。結果を表2に示す。
【0064】[比較例2]実施例1において、透明プラスチックフィルムによる保護層を形成せず、中間層の膜厚を25μmとして保護層とした以外は実施例1と同様にして、A5版の大きさのサンプルを作製した。作製したサンプルを用いて、評価を行った。結果を表2に示す。
【0065】[比較例3]実施例2において、保護層を、厚さ25μmの透明PETを用いて保護層を形成した以外は実施例2と同様にして、A5版の大きさのサンプルを作製した。作製したサンプルを用いて、評価を行った。結果を表2に示す。
【0066】
【表2】


【0067】
【表3】


【0068】
【発明の効果】本発明に係る可逆性感熱記録媒体は、保護層として25μm以上の厚さを有する透明性のプラスチック性フィルムを用いることにより、耐傷性に優れ、油、水さらには洗浄剤などによる耐汚染性が向上しているので、安定した可逆性感熱記録媒体として用いることができる。
【0069】このような可逆性感熱記録媒体は、可視光および赤外光域での透過率が80%以上であり、非接触式のレーザー光照射により書き込み可能である。このためサーマルヘッドなどの接触式の加熱手段を用いて書き込みを行わなくともよいため、可逆性感熱記録媒体に前記したような油、ごみ等の付着によりサーマルヘッドの汚れの発生、およびサーマルヘッドによる加熱印加時に傷の発生が生じる虞がない。このような可逆性感熱記録媒体は、たわみ量が少ないなど剛性に富み、折れ曲がる虞が少ないため、取り扱い性に優れ、好適にかんばん方式用として利用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る可逆性感熱記録媒体の第1の構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る可逆性感熱記録媒体の第2の構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る可逆性感熱記録媒体の第3の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 可逆性感熱記録媒体
2 保護層
3 可逆性感熱記録層
4 基材
5 中間層
6 接着層
7 (裏面)隠蔽層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも保護層と、可逆性感熱記録層とを有し、前記保護層が25〜1000μmの範囲にある可逆性感熱記録媒体であり、前記可逆性感熱記録媒体の厚さAμmと、当該媒体の長辺Bmmとの比(A/B)が、10/6以上であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項2】 前記保護層は、透明プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項3】 前記可逆性感熱記録媒体は、前記長辺Bが、128mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項4】 前記保護層は、可視光および赤外光域の透過率が80%以上であり、前記可逆性感熱記録層は、レーザー光照射により印字されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項5】 少なくとも保護層と、可逆性感熱記録層とを有するかんばん方式用の可逆性感熱記録材料。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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