説明

可逆性感熱記録材料

【課題】本発明の目的は、発色性、高温高湿環境下における耐光性に優れ、高温高湿環境下における消去と印字の繰り返しを行った直後でも剥離強度を維持した可逆性感熱記録材料を提供することである。
【解決手段】支持体上に、染料前駆体と、加熱により前記染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる可逆性顕色剤とを含む可逆性感熱記録層と、ポリアクリロニトリルおよび無機層状化合物を含む酸素バリア層と、前記酸素バリア層を保護する保護層とを順次積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度によって色調が可逆的に変化する可逆性感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
温度によって色調が可逆的に変化する可逆性感熱記録材料は、画像記録・消去を複数回繰り返して行うことができるものである。磁気記録層や非接触ICチップと組み合わせて、プリペイドカード、ポイントカード、定期券、回数券、入退室管理カード、診察券、物流用タグ、製造工程管理表、ラベル等に使用されている他、デジタルペーパー、電子掲示板等のディスプレイ材料としても使用されている。
【0003】
可逆性感熱記録材料では、染料前駆体とこの染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる可逆性顕色剤とを含有する可逆性感熱記録層が支持体上に設けられている。明瞭な画像コントラストが得られ、高濃度で画像記録が行え、ほぼ完全に消去することができ、日常生活を送る環境下では記録された画像が保持でき、百回以上の画像記録・消去が可能な可逆性顕色剤として、フェノール化合物が提案されている。
【0004】
可逆性顕色剤として使用されるフェノール化合物の多くは、分子末端に脂肪族炭化水素基を持っている。この脂肪族炭化水素基が存在することにより、染料前駆体と可逆性顕色剤は相溶性が低く、凝固した状態では、殆ど溶け合わず、消色状態となる。加温して、加熱溶融状態となると、染料前駆体と可逆性顕色剤が溶け合い、発色状態となる。この発色状態から、ゆっくり冷却すると、染料前駆体と可逆性顕色剤が相分離して、殆ど溶け合わない状態に戻って固化し、消色状態となり、画像の消去を行うことができる。一方、発色状態から急速に冷却すると、染料前駆体と可逆性顕色剤が相分離する前に固化し、発色状態を保持することが可能となり、画像の記録を行うことができる。
【0005】
近年では上記物流用タグ、製造工程管理表、ラベル等の他、デジタルペーパー、電子掲示板等のディスプレイ材料への適用が多く、光に暴露される時間が長くなるため、光暴露による染料前駆体の劣化が進行し、発色性の低下、消去性の悪化を引き起こすため、これを改善する方法として、光により活性化された状態において酸素とのラジカル反応を起こさせないように酸素バリア層を設ける耐光性向上技術が提案されている(例えば、特許文献1〜11)。より高い酸素バリア性能を有するポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体と無機層状化合物とを併用することで高湿度環境下においても酸素バリア性能をある程度維持したものが提案されている(例えば、特許文献12〜14)。
【0006】
しかし、特に、物流タグ、製造工程管理表用途においては、可逆性感熱記録材料の記録面に、粘着性の付箋やラベルを貼る機会が多く、使用初期だけではなく、印字と消去を繰り返し行っている運用中における可逆性感熱記録材料自体の剥離強度を強くする必要があり、十分な性能は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−150784号公報
【特許文献2】特開平8−282109号公報
【特許文献3】特開平9−39398号公報
【特許文献4】特開平9−175024号公報
【特許文献5】特開平10−16398号公報
【特許文献6】特開2004−262153号公報
【特許文献7】特開2006−7558号公報
【特許文献8】特開2006−88644号公報
【特許文献9】特開2006−88645号公報
【特許文献10】特開2010−173266号公報
【特許文献11】特開2010−173268号公報
【特許文献12】特開2009−28911号公報
【特許文献13】特開2010−125839号公報
【特許文献14】特開2010−125840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、発色性、耐光性に優れ、高温高湿環境下における消去と印字の繰り返しを行った直後でもセロハンテープ剥離強度を維持した可逆性感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、支持体上に、染料前駆体と加熱により前記染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる可逆性顕色剤とを含む可逆性感熱記録層と、ポリアクリロニトリルおよび無機層状化合物を含む酸素バリア層と、前記酸素バリア層を保護する保護層とを順次積層することにより、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発色性、耐光性に優れ、高温高湿環境下における消去と印字の繰り返しを行った直後でもセロハンテープ剥離強度を維持した可逆性感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
可逆性感熱記録材料において、可逆性感熱記録層に用いられる染料前駆体および可逆顕色剤は、光の影響を受けやすく、特に光により活性化された状態で酸素とのラジカル反応を起こしやすい。ラジカル反応を起こすと、発色していた可逆性感熱記録層が消色したり褪色したりし、不可逆的な発色体となって再発色や消去が不能となり、特に消去不能による消え残りが可逆性感熱記録材料として問題となる。また、消色していた可逆性感熱記録層が黄変化することがある。酸素バリア層は、可逆性感熱記録層を被覆して外気中の酸素が可逆性感熱記録層に侵入することを防ぐことにより、可逆性感熱記録材料は耐光性に優れ長期間褪色や変色することがなくなる。特に、可逆性感熱記録材料の使用期間の長期化に対応して、酸素バリア層の酸素バリア性をさらに向上させる必要がある。なお、一般に支持体は厚手のシートなどであるので、酸素遮断機能は十分に備わっている。支持体に酸素遮断機能が備わっていないときには、支持体側も酸素バリア層で被覆してもよい。
【0012】
本発明の酸素バリア層に用いられるポリアクリロニトリルは、アクリロニトリルを原料として、ラジカル重合、アニオン重合などにより製造でき、工業的には、重合速度の点で有利なラジカル重合が広く採用されているが、いずれの製法においても得られたものを選択することができる。
【0013】
酸素バリア層の厚さは、酸素バリア層の酸素バリア性能によって異なるが、0.1〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜5μmである。これより薄いと酸素バリア性が不完全となることが多く、厚いと可逆性感熱記録材料としての加熱ヘッドなどに対する感度が低下することがあるので好ましくない。
【0014】
本発明に用いられる無機層状化合物としては、無機の層状化合物であれば特に制限はないが、分散媒に膨潤・劈開する無機層状化合物が好ましく用いられ、主に粘土鉱物、具体的には、層状構造を持つケイ酸塩鉱物等で、多数のシート(例えば、ケイ酸で構成される四面体シート、AlやMg等を含む八面体シート等)が積層された層状構造を有する平板の物質である。このようなものとしては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、パイデライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、カオリナイト、ナクライト、デッカイト、アンチゴライト、クリソタイト、バイデライト、ソーコナイト、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライト、マーガライト、タルク、ザンソフィライト、白雲母、金雲母、ロスコー雲母、ソーダ雲母、鉄雲母、白水雲母、フッ素化マイカ、パイロフィライト、緑泥石等が挙げられ、これらは天然品であっても、合成品であってもよいが、純度や着色の面から合成品が好ましい。これは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの無機層状化合物のうち、フッ素化マイカが好ましく、その中でも特にフッ素金雲母、カリウム四珪素雲母、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライトが好ましい。酸素バリア層には、平板状の微粒子、即ち、分散媒に膨潤・劈開し得る数シートから構成される最少単位にできる限り近い積層体で存在することが好ましい。
【0015】
無機層状化合物が天然物であると、遷移金属や重金属等の不純物を多く含む場合があり、着色したものとなりやすく、画像品質を損ねてしまうことがある。
【0016】
無機層状化合物が膨潤性粘土鉱物の合成品である場合、特に熔融合成で得られた合成物は、上述の不純物が殆ど混在していないため、着色がなく、合成時の冷却速度を制御することで単結晶の大きさを制御できる。
【0017】
無機層状化合物の含有量は、ポリアクリロニトリル100質量部に対して、5〜300質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。含有量が少なすぎると、十分な酸素バリア性能が得られないばかりか、耐熱性が低くなり、繰り返し印字と消去を行った直後の剥離強度が低下する。含有量が多くなりすぎると塗工適性が悪くなるばかりか、透明性の低下や感度の低下に繋がる。
【0018】
無機層状化合物は平板状の微粒子に分散された形状で酸素バリア層に含有させることが好ましい。分散された無機層状化合物の形状は、平板面の平均径が5〜50000nm、特に10〜30000nmで、平均厚さが平均径の1/10〜1/100000程度、好ましくは1/50〜1/50000程度の板状のものが好ましくい。無機層状化合物の形状が大きすぎると、酸素バリア層での混合むらが起こりやすく、均一に混合することが難しく、薄膜が形成し難い。無機層状化合物が小さすぎたり平均厚さの比率が大きすぎたりすると、無機層状化合物が酸素バリア層中で層面に対し平行に並びにくくなり、酸素バリア性が劣ってくる。無機層状化合物の微粒子形状は便宜上、塗工液の希釈物を乾燥させ電子顕微鏡観察により、平板面の平均径は観察される粒子の平板面を等しい面積の円に投影した直径の平均値として、平均厚さは観察される粒子の厚さの平均値として算出できる。
【0019】
無機層状化合物の表面は、元来親水性であり、ポリアクリロニトリルへの相溶性を高めるため、親油性にするための表面処理剤として、シランカップリング剤、アジリジン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物等を1種または2種以上加えることができる。
【0020】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メタクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−N−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−N−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基および/またはイミノ基を有するアルコキシシラン、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート等のイソシアネートアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するアルコキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するアルコキシシランを挙げることができる。
【0021】
アジリジン化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン−トリス(3−アジリジニルプロピオネート)、トリメチロールプロパン−トリス[3−(2−メチル−アジリジニル)−プロピオネート]、トリメチロールプロパン−トリス(2−アジリジニルブチレート)、トリス(1−アジリジニル)ホスフィンオキシド、ペンタエリスリトール−トリス−3−(1−アジリジニルプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス−3−(1−アジリジニルプロピオネート)、1,6−ビス(1−アジリジノカルバモイル)ヘキサメチレンジアミン等を挙げることができる。
【0022】
イソシアネート化合物としては、例えば、水添TDI、水添XDI、水添MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の脂肪族もしくは脂環族ジイソシアネート、およびこれらの誘導体であるビュレット型、イソシアヌレート型、アダクト型などの3官能以上のポリイソシアネートの他、イソシアネートを含む各種のオリゴマー、ポリマー等の脂肪族系イソシアネート化合物、フェニレンジイソシアネート(PDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4′−ジイソシアネートジフェニルメタン(MDI)等の芳香族ジイソシアネート、およびこれらの誘導体であるビュレット型、イソシアヌレート型、アダクト型などの3官能以上のポリイソシアネートの他、イソシアネートを含む各種のオリゴマー、ポリマー等の芳香族系イソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0023】
カルボジイミド化合物としては、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、1,3−ビス(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミドなどを挙げることができる。
【0024】
無機層状化合物の分散剤として、無機層状化合物表面と親和性のある官能基を有する化合物、スルホン酸の金属塩、ホスホン酸の金属塩、カルボン酸の金属塩、オニウム塩等の中から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これら分散剤は、無機層状化合物の層間を広げることで微細に分散することができる。
【0025】
前記無機層状化合物表面と親和性のある官能基を有する化合物における官能基の例としては、ハロゲン原子、酸無水物基、カルボン酸基、水酸基、チオール基、エポキシ基、エステル基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ニトロ基、アミノ基、オキサゾリン基、イミド基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。また、ベンゼン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環等の芳香環が挙げられる。
【0026】
前記スルホン酸の金属塩、ホスホン酸の金属塩、カルボン酸の金属塩の具体例としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアリールスルホン酸塩、ドデシルホスホン酸ナトリウム等のアルキルホスホン酸塩、アルキルベンゼンホスホン酸ナトリウム等のアルキルアリールホスホン酸塩、ベンゼンホスホン酸ナトリウム等のアリールホスホン酸塩、ドデシルカルボン酸ナトリウム等のアルキルカルボン酸塩、アルキルベンゼンカルボン酸ナトリウム等のアルキルアリールカルボン酸塩、ベンゼンカルボン酸ナトリウム等のアリールカルボン酸塩等が挙げられる。また、金属塩における金属としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等が好ましい。
【0027】
前記オニウム塩の具体例としては、オクチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、アミノドデカン酸塩等のアンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0028】
無機層状化合物の分散時に使用される溶媒は、特に限定されないが、プロトン供与体を含む溶媒や極性溶媒が使用できる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノアセチレート、エチレングリコールジアセチレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性溶媒を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、ポリアクリロニトリルの析出を抑えるため、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0029】
無機層状化合物100質量部に対し、分散剤0.1〜100質量部、溶媒10〜1000質量部をそれぞれ混合し、湿式分散することが好ましい。
【0030】
酸素バリア性樹脂の溶媒としては、ポリアクリロニトリルを溶解し得る溶媒であればいずれも使用できる。
【0031】
ポリアクリロニトリルを溶解し得る溶媒としては、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性溶媒を選択することができる。
【0032】
酸素バリア性樹脂混合液を形成する攪拌装置や分散装置としては、通常の攪拌装置や分散装置であれば特に限定されず、これらを用いて分散液中で無機層状化合物を均一に分散することができるが、透明で安定な無機層状化合物分散液が得られる点から、高圧分散機、超音波分散機等を使用することが好ましい。高圧分散機としては、例えば、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー(株)製)、マイクロフルイタイザー(商品名、マイクロフライデックス社製)、アルチマイザー(商品名、(株)スギノマシン製)、DeBee(商品名、Bee社製)、ニロ・ソアビホモジナイザー(商品名、ニロ・ソアビ社製)等が挙げられ、これら高圧分散機の圧力条件として1〜100MPaで分散処理を行うことが好ましい。圧力条件が100MPaを超えると、無機層状化合物の破砕が起こりやすくなり、微粉化しすぎてしまい、ガス通過路長が短くなってしまうため目的である酸素バリア性が低下する場合がある。逆に圧力条件が1MPa未満であると、無機層状化合物の分散が進まず、または分散に膨大な時間を要してしまうという不具合が生じることがある。
【0033】
本発明における酸素バリア層の形成方法は、可逆性感熱記録層等に塗工できればどのような方法でも良いが、可逆性感熱記録層上に、酸素バリア性樹脂混合液を塗工し、加熱乾燥する。酸素バリア性樹脂混合液の塗工方法としては、グラビアシリンダー等を用いたロールコーティング法、ドクターナイフ法やエアーナイフ・ノズルコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法等の通常の塗工方法を用いることができ、これらの方法を組み合わせてもよい。酸素バリア層においては、無機層状化合物の平板面が酸素バリア層の層面に対して平行に並んで配置していることが好ましい。その点、上記の塗工法によって酸素バリア層を形成すると、無機層状化合物の平板面が酸素バリア層の層面に対して平行に並んで配置しやすい。無機層状化合物は、溶媒や樹脂等の中に分散させて、その分散液を酸素バリア層となるよう層状に形成すると層方向に沿って平らに並びやすい性質がある。特に、上述の酸素バリア性樹脂中では層状に並びやすい。このように酸素バリア層中で層状に並ぶと、酸素ガスは、酸素バリア層の一方から他方へ透過しようとする場合、無機層状化合物を避けて透過していくことになる。そうすると、気体分子の酸素バリア層を透過する経路は、酸素バリア層の断面に比べ非常に長くなる。酸素バリア層を形成する樹脂は、本来、酸素バリア性を有しているので、透過経路が長くなれば、これに比例して酸素バリア層の酸素バリア性能が向上する。
【0034】
酸素バリア層を上述のコーティング法によって形成する場合、コーティング用の酸素バリア性樹脂混合液を製造する方法としては、例えば、ポリアクリロニトリルを溶媒に溶解させた溶液に、無機層状化合物(分散媒に予め膨潤・劈開させておいてもよい。)を添加混合し、攪拌装置や分散装置を利用して無機層状化合物を分散させる方法、無機層状化合物を、溶媒に膨潤・劈開させた後、攪拌装置や分散装置を利用し、さらに、無機層状化合物を劈開、分散した分散液(分散溶液)に、ポリアクリロニトリルを溶媒に溶解させた溶液を添加混合する方法等を挙げることができる。また、無機層状化合物が天然物である場合には、これら混合液中に、例えば水酸化マグネシウムや水酸化カルシウム等のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを含有する化合物を添加しておくことが好ましい。
【0035】
本発明に用いられる支持体は、紙、各種不織布、織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、ガラス等、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができ、透明、半透明あるいは不透明のいずれであっても良い。また、内部に空洞を持たない構造、あるいは内部に空洞を含有する構造のいずれであっても良い。合成樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルムが耐熱性の点で好ましい。支持体の酸素バリア性が低い場合には、可逆性感熱記録層と反対面に酸素バリア層を設けることが好ましい。
【0036】
本発明に用いられるポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリキシリレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等のフィルムが挙げられる。好ましいポリエステルフィルムとしては、強靱性、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性、透明性、電気絶縁性に優れるPETフィルムまたはPENフィルムが挙げられる。また、これらの樹脂フィルム内に空洞を含有しても良く、表面にコロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理等により易接着加工が施されていても良い。また、形状、構造、大きさ等については、特に制限はない。形状としては、例えば、平板状、ロール状等が挙げられる。構造としては、単層構造でも積層構造でもよく、大きさは、可逆性感熱記録材料の用途に応じて適宜選択することができる。
【0037】
本発明に係わる支持体の厚みは、可逆性感熱記録材料の用途に応じて適宜選択することができるが、10〜2000μmが好ましく、20〜1000μmがより好ましい。
【0038】
本発明に係わる可逆性感熱記録層には、通常無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いにより染料前駆体に可逆的な色調変化を生じさせる可逆性顕色剤とを少なくとも含有する可逆性感熱記録層等が用いられる。また、可逆性感熱記録層は支持体の両面に設けても良いし、発色色調の異なる可逆性感熱記録層を複数層重ねても良い。
【0039】
本発明に係わる通常無色ないし淡色の染料前駆体に可逆的な色調変化を与える可逆性顕色剤は、加熱による画像形成だけでなく、記録画像の消去も考慮された顕色剤であり、可逆性顕色剤を使用した感熱記録層は繰り返し表示内容を書き換えることが可能である。可逆性顕色剤としては下記一般式1で示される化合物が好ましく使用されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
【化1】

【0041】
一般式1において、XおよびXはそれぞれ同じであっても、異なっても良い酸素原子、硫黄原子または両末端に炭化水素原子団を含まない−CONH−結合を最小構成単位とする二価の基を表す。Rは単結合または炭素数1から12の二価の炭化水素基を表す。Rは炭素数1から18の二価の炭化水素基を表す。好ましくは炭素数1から4の二価の炭化水素基である。Rは炭素数1から50の一価の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数6から36の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数8から24の炭化水素基である。RおよびRは主として、アルキレン基またはアルケニレン基を表し、Rは主としてアルキル基またはアルケニル基を表す。Rは、炭素数が1から18の範囲内であれば芳香環を含んでいても良い。fは0から4の整数を表し、fが2以上のとき繰り返されるRおよびXは同一であっても異なっていても良い。
【0042】
一般式1中のX、Xは両末端に炭化水素原子団を含まない−CONH−結合を最小構成単位とする二価の基を含むが、その具体例としては、ジアシルアミン(−CONHCO−)、ジアシルヒドラジン(−CONHNHCO−)、しゅう酸ジアミド(−NHCOCONH−)、アシル尿素(−CONHCONH−、−NHCONHCO−)、セミカルバジド(−NHCONHNH−、−NHNHCONH−)、アシルセミカルバジド(−CONHNHCONH−、−NHCONHNHCO−)、ジアシルアミノメタン(−CONHCHNHCO−)、1−アシルアミノ−1−ウレイドメタン(−CONHCHNHCONH−、−NHCONHCHNHCO−)、マロンアミド(−NHCOCHCONH−)、3−アシルカルバジン酸エステル(−CONHNHCOO−、−OCONHNHCO−)等の基が挙げられるが、好ましくはジアシルヒドラジン、しゅう酸ジアミド、アシルセミカルバジドである。
【0043】
本発明に係わる可逆性顕色剤の具体的な例としては以下の構造式(1−1)から構造式(1−16)に挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
【化2】

【0045】
【化3】

【0046】
可逆性顕色剤の具体例の中で、特に好ましい化合物は(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、(1−7)、(1−9)および(1−16)である。
【0047】
本発明に係わる可逆性顕色剤はそれぞれ1種または2種以上を混合して使用しても良く、通常無色ないし淡色の染料前駆体に対する使用量は、5〜5000質量%、好ましくは10〜3000質量%である。
【0048】
本発明に用いられる通常無色ないし淡色の染料前駆体としては、一般に感圧記録紙や感熱記録紙等に用いられるものを用いることができる。具体例としては、例えば下記に挙げるもの等があるが、本発明はこれに限定されるものではない。また、これら染料前駆体は、それぞれ1種または2種以上を混合して使用しても良い。
【0049】
(1)トリアリールメタン系化合物
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−n−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジメチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等が挙げられる。
【0050】
(2)ジフェニルメタン系化合物
4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等が挙げられる。
【0051】
(3)キサンテン系化合物
ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−メチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル)トリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル)トリルアミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−メチルアニリノ)フルオラン、3−(ジ−n−ブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル)プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル)イソアミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル)シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル)テトラヒドロフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。
【0052】
(4)チアジン系化合物
ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等が挙
げられる。
【0053】
(5)スピロ系化合物
3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等が挙げられる。
【0054】
本発明に係わる可逆性感熱記録層は、支持体の少なくとも一方の面に、少なくとも染料前駆体、可逆性顕色剤を含有する可逆性感熱記録層塗液を塗布・製膜することによって形成される。染料前駆体および可逆性顕色剤を可逆性感熱記録層塗液に含有させるための方法としては、各々の化合物を単独で溶媒に溶解もしくは分散媒に分散してから混合する方法、各々の化合物を混ぜ合わせてから溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法、各々の化合物を加熱溶解し均一化した後冷却し、溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。分散時には必要なら分散剤を用いてもよい。
【0055】
溶媒または分散媒としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、n−ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、エチレンカーボネート等のエステル類、ジエチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、グリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、スチレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が使用できる。
【0056】
本発明で用いられる可逆性感熱記録層の強度を得るためにバインダー樹脂を用いることが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、ゼラチン、カゼイン、澱粉、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル類、ポリスチレン、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のラテックス類、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等およびこれらの水酸基、カルボキシル基がイソシアネート類、アミン類、フェノール類、エポキシ類等の硬化剤と反応し、硬化するポリウレタン等の熱硬化性樹脂が挙げられ、さらに電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などの活性エネルギー線硬化性の樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリオール樹脂をイソシアネート化合物で硬化して得られる熱硬化性樹脂が好ましい。
【0057】
熱硬化性樹脂を適用する場合は硬化剤を含む液を塗布、製膜した後に熱により硬化させて用いる。熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびポリオール樹脂等が挙げられる。またこれらの熱硬化性樹脂に使用される硬化剤は、有機酸類、アミン類、イソシアネート類、エポキシ類、フェノール類等が挙げられるが、熱硬化性樹脂の種類により好適な反応性のものを選定すれば良い。特にこれらの中で、特開平10−230680号公報や同11−58963号公報に記載の、ポリオール化合物をイソシアネート化合物で熱硬化して得られる硬化樹脂であることが好ましい。
【0058】
電子線硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂に用いられるオリゴマー・モノマーとしては、種類も多く優れた放射線硬化特性を有するアクリル系オリゴマー・モノマーの他、ポリエン−チオール系オリゴマー・モノマー、光カチオン重合型エポキシオリゴマー・モノマー等が挙げられる。アクリル系モノマーは単官能性モノマー、二官能モノマー、多官能モノマー等が挙げられるが、特に紫外線硬化の際には光重合開始剤、光重合促進剤を用いる。
【0059】
アクリル系オリゴマー・モノマーの例としては、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、シリコーンアクリレート、メラミンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート等が挙げられる。
【0060】
可逆性感熱記録層に硬化性樹脂が含有されている場合、加熱、紫外線照射、電子線照射を行う。紫外線照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。光源の波長は、光重合開始剤および光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。紫外線照射の出力や搬送速度は、紫外線硬化性樹脂を硬化するために必要な照射エネルギーに応じて決定される。
【0061】
本発明に係わる可逆性感熱記録層において、好ましいバインダー樹脂であるポリオール化合物とイソシアネート化合物との硬化により形成されるバインダー樹脂について説明する。ポリオール化合物としては、ポリ(メタ)アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アルキドポリオール、カプロラクトンポリオール、シリコーンポリオール等が挙げられる。
【0062】
ポリ(メタ)アクリルポリオールとは、アクリル酸、メタアクリル酸およびそれらのエステルの共重合体であって、水酸基を含むものをいい、水酸基を含む共重合成分としては、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール等が用いられる。アクリル酸、メタアクリル酸およびそれらのエステル以外の共重合成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリルアミド、メタアクリルアミドおよびその誘導体、酢酸ビニル、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0063】
また、ポリエステルポリオールとは、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物のうち水酸基を有するものをいい、これらに使用される多塩基酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多塩基酸、しゅう酸、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルこはく酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、ダイマ酸等の脂肪族多塩基酸があり、これらの多塩基酸から得られる酸無水物も同様に用いられる。
【0064】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジアセトングリコール、ヘキサントリオール等の低分子量ポリオールの他、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の高分子量ポリオールも用いられる。これらから得られるポリエステルポリオールの他、ヒドロキシカルボン酸、もしくはその環状ラクトンの縮合物もしくは開環重合、例えばポリブチロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンポリオールや、前記多塩基酸と多価アルコールに加え高級脂肪酸の3種を縮合して得られるアルキドポリオール等がある。ポリエーテルポリオールとは、主鎖がエーテル結合からなる高分子であって、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリチレングリコールの他これらの分岐状エステル等がある。
【0065】
ポリエーテルポリオールとしては、上記多価アルコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。シリコーンポリオールとしては、分子中にシロキサン結合を有し、かつ末端が水酸基を有するシリコーンオイル類等が挙げられる。
【0066】
その他にも、水酸基含有のフルオロオレフィンのようなフッ素含有ポリオール、ポリオール水酸基末端のポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、ポリウレタン等が利用できる。さらには、低分子量のポリオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサジオール、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の脂肪族、脂環族、芳香族多価アルコールもしくは多価フェノールまたはこれらの縮合物を反応性希釈剤として用いられる。
【0067】
本発明に係わるポリオール化合物としては、添加物分散性、塗工性、接着性、耐熱性および皮膜強度等の総合評価から、ポリ(メタ)アクリルポリオールおよびポリエステルポリオールが好ましい。本発明に係るポリオール化合物は単1種、またはポリオール部分やそれ以外の部分の構造の異なる、もしくは分子量等の異なる他の1種以上のポリオール化合物と併用してもよい。
【0068】
本発明に係わるイソシアネート化合物としては、公知のものが使用できる。例えば、フェニレンジイソシアネート(PDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族脂肪族ジイソシアネート、水添TDI、水添XDI、水添MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族もしくは脂環族ジイソシアネートおよびこれらの誘導体であるポリオール付加物、ビュレット体、3量体である3官能以上のポリイソシアネートの他、イソシアネートを含む各種のオリゴマー、ポリマーが挙げられる。本発明においては、イソシアネート化合物としてキシリレンジイソシアネートやトルエンイソシアネートを用いると発色濃度の向上により好ましく、さらには、地肌の白色度の高いキシリレンジイソシアネートを使用するとより好ましい。
【0069】
本発明に係わるイソシアネート化合物は、1種以上のポリオール化合物に対して、単1種または2種以上のイソシアネートと併用してもよい。イソシアネート化合物およびポリオール化合物をともに複数種用いる場合は、その組み合わせは任意でよい。
【0070】
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物の混合物は、それぞれが液状の場合はそのままの混合物で用いてもよいが、さらにポリイソシアネート化合物と非反応性の溶媒で希釈して使用することもできる。ポリイソシアネート化合物と反応性のある活性水素を有しない有機溶媒を用いることが好ましい。また、上記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物の硬化反応は、反応温度30〜160℃、反応時間1分〜120時間で行えばよい。なお、反応温度が低い場合は長時間を要し、高温では短時間で済むことは言うまでもない。
【0071】
本発明に係わる可逆性感熱記録層におけるバインダー樹脂の使用量としては、該可逆性感熱記録層全質量に対して、35〜65質量%の範囲内であることが好ましく、40〜60質量%がより好ましく、45〜55質量%が特に好ましい。65質量%より大きくなると著しく発色濃度が低下する場合がある。逆に、35質量%より小さくなると、可逆性感熱記録層の耐熱性や機械的強度の低下、層の変形、発色濃度の低下が起きる場合がある。
【0072】
また、可逆性感熱記録層の発色感度および消色温度を調節するための添加剤として、熱可融性物質を可逆性感熱記録層中に含有させることができる。60〜200℃の融点を有するものが好ましく、特に80〜180℃の融点を有するものが好ましい。一般の感熱記録紙に用いられている増感剤を使用することもできる。例えば、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等のワックス類、2−ベンジルオキシナフタレン等のナフトール誘導体、p−ベンジルビフェニル、4−アリルオキシビフェニル等のビフェニル誘導体、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル等のポリエーテル化合物、炭酸ジフェニル、しゅう酸ジベンジル、しゅう酸ビス(p−メチルベンジル)エステル等の炭酸またはしゅう酸ジエステル誘導体等を併用して添加することができる。
【0073】
本発明に係わる可逆性感熱記録層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、3〜15μmがより好ましい。
【0074】
可逆性感熱記録層に添加することができる顔料等としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、チタン等の炭酸塩、酸化物、水酸化物、硫酸塩等、およびゼオライト、シリカ、カオリン、焼成カオリン、タルク等の粘土類を含む無機系顔料、澱粉、スチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、パラフィン、天然ワックス、合成ワックス等が使用可能である。また、滑剤としてステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩を使用することができる。
【0075】
本発明の可逆性感熱記録材料の層構成は、少なくとも支持体上の可逆性感熱記録層とバリア層、および保護層からなるが、必要に応じて、各層の間に中間層を設けることや、支持体と可逆性感熱記録層の間に発色感度向上等を目的に下引き層を設けたり、光反射層や空気層を設けてもよい。中間層は紫外線吸収剤を含有してもよい。下引き層は、中空粒子を含有してもよい。これらの層は、単層でも、2層または3層以上の複数の層から構成されていてもよい。また、これらの層は熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を含有していることが好ましい。さらに、可逆性感熱記録層が設けられている面および/または反対側の面に、電気的、磁気的、光学的に情報が記録可能な材料を含んでも良い。また、可逆性感熱記録層が設けられている面と反対側の面にカール防止を目的としてバックコート層を設けることもできる。
【0076】
可逆性感熱記録材料の記録層に対して反対面に、必要に応じて接着剤や粘着剤を用いて、ラミネートや加熱プレス等の手法により、別な基材と貼り合わせて厚手のシートやカードの形態に成型して使用することができる。このような場合は、可逆性感熱記録材料に貼り合わせる基材の最表層に本発明の帯電防止層を設け、記録層に対して反対側の最表層が帯電防止層となるように成型することができる。このとき帯電防止層を設ける基材には特に制限はないが、成型品のカール防止の観点から、可逆性感熱記録層を設けた基材と同一の基材とし、双方の基材の配向を揃えて貼り合わせるのがより好ましい。
【0077】
可逆性感熱記録層、保護層、必要に応じて用いる中間層や下引き層のいずれの層においても、ブロッキング防止のために、ケイソウ土、クレー、焼成クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、澱粉粒、尿素−ホルマリン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン粒子等の顔料や、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、カスターワックス等のワックス類を、単独もしくは2種以上含有させることができる。また、レベリング剤、分散剤、界面活性剤、蛍光染料等を1種以上含有させることもできる。
【0078】
本発明に係わる保護層としては、硬化性樹脂を主成分とし、顔料等を含有していても良い。硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、水酸基やカルボキシル基等の硬化剤と反応する基を持つ樹脂、または水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂等が挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。この際の硬化剤としては、例えば、イソシアネート類、アミン類、フェノール類、エポキシ類等が挙げられる。
【0079】
電子線および紫外線硬化性樹脂に用いられるモノマーとしては、アクリル系に代表される単官能性モノマー、二官能モノマー、多官能モノマー等が挙げられるが、特に紫外線硬化の際には光重合開始剤、光重合促進剤を用いても良い。
【0080】
アクリル系モノマーの例としては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート等が挙げられる。
【0081】
保護層の厚みは0.5〜10μmが好ましい。これより薄いと記録画像の形成と消去を多数回にわたって繰り返すことができない場合があり、また厚いと記録感度が低下することがある。保護層は2層以上の多層構成であっても良く、その最表層を帯電防止層とすることもできる。
【0082】
また、支持体上に設けられた可逆性感熱記録層、保護層、必要に応じて用いる中間層や下引き層のいずれの層においても各種添加剤を添加することができる。添加剤の例としては、レベリング剤、分散剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、硬膜剤、防腐剤、フィラー、着色染顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、pH調節剤、消泡剤、顔料、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤などが挙げられる。
【0083】
紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のアクリレート系紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、または2種類以上を併用しても良い。
【0084】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリル−β,β′−チオジブチレート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等の硫黄系酸化防止剤、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、または2種類以上を併用しても良い。
【0085】
老化防止剤としては、例えば、p,p′−ジアミノジフェニルメタン、アルドール−α−ナフチルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン化合物、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のフェノール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾフェノン化合物、安息香酸エステル類等が挙げられる。その他、o−フェニレンチオ尿素、2−アミノベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジブチルチオカルバミン酸ニッケル、酸化亜鉛、パラフィン等が挙げられる。また、これらの老化防止剤構造を有するモノマーを重合の一成分として含むポリマーや、ポリマー主鎖に老化防止剤構造をグラフト化したものも用いることができる。2種類以上の老化防止剤を組み合わせて用いることもできる。
【0086】
本発明の可逆性感熱記録材料を構成する前記の各層を支持体上に形成する方法は酸素バリア層と同様に特に制限されるものではなく、公知の方法により形成することができる。例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアロールおよびトランスファロールコーター、ロールコーター、コンマコーター、スムージングコーター、マイクログラビアコーター、リバースロールコーター、4本あるいは5本ロールコーター、ディップコーター、ロッドコーター、キスコーター、ゲートロールコーター、スクイズコーター、スライドコーター、ダイコーター等の塗工装置や、平板、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン、ホットメルト等の方式による各種印刷機等を用いることができる。さらにこれらの方法には乾燥工程の他、加熱エージング工程や、紫外線照射・電子線などの活性エネルギー線照射工程により各層を硬化させることもできる。これらの方法により、1層ずつあるいは多層同時に塗工、印刷することができる。
【0087】
可逆性感熱記録材料の支持体を複層として、その層間にICチップを封入することもできる。このような場合は、例えば、プラスチックフィルムの層間または紙基材とプラスチックフィルムの層間に封入することができる。好ましくは、可逆性感熱記録層から離れた層間に封入することが印字品質の点で好ましい。非接触のICチップを封入する場合は、アンテナと共に封入することができる。封入する際の圧力によりICチップが破損することを防ぐ目的で、クッション層を設けることができる。クッション層の厚みとしては、10μmに満たないとクッション性が不十分であるため10μm以上が好ましい。また、ICチップとアンテナとの接合部に負荷がかかるため、クッション層の面積はICチップとアンテナ接合部を十分覆い隠せる大きさが好ましい。クッション層は、片面もしくは両面に設けることができる。両面にクッション層を設けることがより好ましい。クッション層としては、熱可塑性の樹脂が好ましく、発泡樹脂であれば、よりクッション性が良いため、ICチップの破損を防ぐことができる。
【0088】
本発明の可逆性感熱記録材料において、発色記録画像を形成するためには加熱に引き続き急速な冷却が起これば良く、記録画像の消去を行うためには加熱後の冷却速度が遅ければ良い。例えば、適当な方法で加熱した後、低温の金属ブロックなどを押し当てる等して急速に冷却することにより、発色状態を発現させることができる。また、サーマルヘッド、レーザー光等を用いて極めて短い時間だけ加熱すると、加熱終了後に直ちに冷却するため、発色状態を保持させることができる。一方、適当な熱源(サーマルヘッド、レーザー光、熱ロール、熱スタンプ、高周波加熱、電熱ヒーター、およびタングステンランプやハロゲンランプ等の光源等からの輻射熱、熱風等)で比較的長い時間加熱すると、記録層だけでなく支持体等も加熱されるために熱源を除いても冷却する速度が遅いため消色状態になる。従って、同じ加熱温度、同じ熱源を用いても、冷却速度を制御することにより発色状態および消色状態を任意に発現させることができる。
【0089】
加熱に使用するレーザーとしては、半導体レーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザーを挙げることができるが、これらに限定されない。半導体レーザー、YAGレーザーによる加熱を効率よく行うためには、可逆性感熱記録層中に近赤外部に吸収を有する光熱変換材料を含有させるか、あるいは、光熱変換材料を含有する光熱変換層を可逆性感熱記録層に直接隣接して設けることが好ましい。近赤外部に吸収を有する光熱変換材料としては、例えば白金、チタン、シリコン、クロム、ニッケル、ゲルマニウム、アルミニウム等の金属または半金属の層、インモニウム化合物、金属錯体化合物、シアニン色素、スクワリリウム色素、ナフトキノン色素、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0090】
本発明の可逆性感熱記録材料には、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷;インクジェット記録層、熱転写受像層、昇華型熱転写受像層等の印字記録層を設けてもよい。これらの印刷、印字記録層は、可逆性感熱記録層と積層して設けてもよいし、可逆性感熱記録層と同一面の一部に設けてもよい。また、可逆性感熱記録層を設けた面と反対側の面の一部または全面に設けてもよい。印字記録層上に部分的にまたは全面的に硬化性樹脂を主成分とするオーバープリントニス(OPニス)層等を設けてもよい。
【0091】
本発明の可逆性感熱記録材料において、可逆性感熱記録層中、他の層、可逆性感熱記録層が設けられている面や反対側の面等に、電気的、磁気的、光学的に情報が記録可能な材料が含まれていても良い。また、支持体を複層とし、その間にICチップを挟んでも良い。また、帯電防止を目的として帯電防止層を片面または両面に設けることもできる。本発明の可逆性感熱記録材料は、粘着層等を介して、または、支持体として熱融着性樹脂を用いて、他の媒体へ貼り付けることもできる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例で説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数および百分率は、特に断りがない場合、質量基準である。
【0093】
(1)可逆性感熱記録層塗工液の調製
染料前駆体として3−(ジ−n−ブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン20部、可逆性顕色剤として例示化合物(1−3)を100部、消去促進剤としてベヘン酸アミド10部、ポリエステルポリオール(商品名「タケラックU−21」、不揮発分70%、酸価<4.2、樹脂OH価350mgKOH/g、三井化学(株)製)100部、溶媒としてメチルエチルケトン950部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで24時間粉砕し分散液を得た。この分散液にイソシアネート化合物(商品名「タケネートD−110N」、不揮発分75%、三井化学(株)製)144部を加えてよく混合し、可逆性感熱記録層塗工液を調製した。
【0094】
(2)酸素バリア層塗工液Aの調製
無機層状化合物としてモンモリロナイト100部、N,N−ジメチルホルムアミド200部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで5時間粉砕し、不揮発分20%のポリアクロニトリルのアセトニトリル溶液500部を加え、さらにペイントシェーカーで5時間分散し、300メッシュのフィルターにて濾過し、酸素バリア層塗工液Aを調整した。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は8μm、平均厚みは0.04μmだった。
【0095】
(3)中間層塗工液の調製
紫外線吸収剤(商品名「チヌビン328」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50部、ポリエステルポリオール(商品名「バーノック11−408」、不揮発分70%、DIC(株)製)100部、メチルエチルケトン800部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで5時間粉砕し分散液を得た。こうして得た分散液にイソシアネート化合物(商品名「タケネートD−110N」、不揮発分75%、三井化学(株)製)140部、メチルエチルケトン50部を加えてよく混合し、中間層塗工液を調製した。
【0096】
(4)保護層塗工液の調製
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(商品名「ユニディックV−4205」、DIC(株)製)100部、平均粒子径1.2μmのシリカ粒子(商品名「ニップシールSS−50F」、東ソー・シリカ(株)製)10部、イソプロピルアルコール90部をホモジナイザーで攪拌混合し、塗工液Aを調製した。
【0097】
実施例1
可逆性感熱記録材料の作製
(1)で調製した可逆性感熱記録層塗工液を、厚さ188μmの白色ポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、乾燥膜厚が10μmとなるように塗工し、120℃で1分乾燥後、さらに50℃にて48時間加温し、可逆性感熱記録層を形成した。可逆性感熱記録層上に、(2)で調製した酸素バリア層塗工液Aを、乾燥膜厚が1μmとなるように塗工し、120℃で10分間乾燥し、酸素バリア層を形成し、その上に(3)で調整した中間層塗工液を、乾燥膜厚が1μmとなるように塗工し、120℃で1分間乾燥後、さらに50℃にて48時間加温し、中間層を形成した。中間層上に、(4)で調製した保護層塗工液を乾燥硬化後の膜厚が3μmになるように塗工し、80℃で1分間乾燥後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を10m/分の搬送速度で通して硬化させて保護層を設け、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【0098】
実施例2
実施例1において、酸素バリア層塗工液Aの無機層状化合物として、モンモリロナイトの代わりにサポナイトを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は8μm、平均厚みは0.04μmだった。
【0099】
実施例3
実施例1において、酸素バリア層塗工液Aの無機層状化合物として、モンモリロナイトの代わりにフッ素金雲母を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は10μm、平均厚みは0.04μmだった。
【0100】
(5)酸素バリア層塗工液Bの調製
無機層状化合物としてフッ素金雲母100部、N,N−ジメチルホルムアミド200部、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド50部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで5時間粉砕し、不揮発分20%のポリアクロニトリルのアセトニトリル溶液500部を加え、さらにペイントシェーカーで5時間分散し、酸素バリア層塗工液Bを調整した。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は10μm、平均厚みは0.02μmだった。
【0101】
実施例4
実施例1において、酸素バリア層塗工液Aの代わりに、酸素バリア層塗工液Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【0102】
実施例5
実施例4において、酸素バリア層塗工液Bの無機層状化合物として、フッ素金雲母の代わりにカリウム四珪素雲母を用いた以外は、実施例4と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は8μm、平均厚みは0.02μmだった。
【0103】
実施例6
実施例4において、酸素バリア層塗工液Bの無機層状化合物として、フッ素金雲母の代わりにナトリウム四珪素雲母を用いた以外は、実施例4と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は6μm、平均厚みは0.02μmだった。
【0104】
実施例7
実施例4において、酸素バリア層塗工液Bの無機層状化合物として、フッ素金雲母の代わりにナトリウムテニオライトを用いた以外は、実施例4と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は8μm、平均厚みは0.02μmだった。
【0105】
実施例8
実施例4において、酸素バリア層塗工液Bの無機層状化合物として、フッ素金雲母の代わりにリチウムテニオライトを用いた以外は、実施例4と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は7μm、平均厚みは0.02μmだった。
【0106】
実施例9
実施例4において、可逆性感熱記録層塗工液の例示化合物(1−3)の代わりに、例示化合物(1−5)を用いた以外は、実施例4と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。
【0107】
実施例10
実施例3において、酸素バリア層塗工液Aのフッ素金雲母100部を、5部に変更した以外は、実施例4と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は10μm、平均厚みは0.02μmだった。
【0108】
実施例11
実施例3において、酸素バリア層塗工液Aのフッ素金雲母100部を、300部に変更した以外は、実施例4と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は10μm、平均厚みは0.02μmだった。
【0109】
実施例12
実施例3において、酸素バリア層塗工液Aのフッ素金雲母100部を、20部に変更した以外は、実施例4と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は10μm、平均厚みは0.02μmだった。
【0110】
実施例13
実施例3において、酸素バリア層塗工液Aのフッ素金雲母100部を、150部に変更した以外は、実施例4と同様にして、本発明の可逆性感熱記録材料を得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は10μm、平均厚みは0.02μmだった。
【0111】
比較例1
実施例1において、酸素バリア層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録材料を得た。
【0112】
比較例2
実施例1において、酸素バリア層塗工液Aの代わりに、無機層状化合物が含有されていないポリアクロニトリル溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録材料を得た。
【0113】
(6)酸素バリア層塗工液Cの調製
シリカ粒子(商品名:ニップシールE200A、東ソー・シリカ(株)製)100部、N,N−ジメチルホルムアミド200部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで5時間粉砕し、不揮発分20%のポリアクロニトリルのアセトニトリル溶液500部を加え、さらにペイントシェーカーで5時間分散し、300メッシュのフィルターにて濾過し、酸素バリア層塗工液Cを調整した。得られた塗工液におけるシリカ粒子の形状は塊状であった。
【0114】
比較例3
実施例1において、酸素バリア層塗工液Aの代わりに、酸素バリア層塗工液Cを使用した以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録材料を得た。
【0115】
(7)酸素バリア層塗工液Dの調製
精製水50%、イソプロピルアルコール50%を含む混合溶剤95部に、エチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名:ソアノールD−2908、日本合成化学工業(株)製)5部を加え、攪拌下で80℃に加温し、エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液を得た。このエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液に、この溶液を高速で攪拌しながら、天然品モンモリロナイト5部を精製水95部中に攪拌しながら添加し、高速攪拌機にて十分に分散した分散液を添加した。この混合分散液200部に対して、6部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。以上の操作から得られた混合分散液を、さらに高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、300メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の酸素バリア層塗工液Dを得た。得られた塗工液における無機層状化合物微粒子の平板面平均径は10μm、平均厚みは0.06μmだった。
【0116】
比較例4
実施例1において、酸素バリア層塗工液Aの代わりに、酸素バリア層塗工液Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録材料を得た。
【0117】
評価1:可逆性感熱記録材料の印字消去試験
実施例1〜13および比較例1〜4で得た可逆性感熱記録材料に対して、京セラ(株)製印字ヘッドKJT−256−8MGF1付き大倉電気(株)製感熱ファクシミリ印字試験機TH−PMDを用いて、これを常温常湿(20℃、50%RH)環境下において、印加パルス1.1ミリ秒で印加電圧を1ボルト刻みで電圧を変化させて印字し、最大濃度を発色濃度とした。前記最大濃度を得た印字条件にて印字し、(株)東洋精機製作所製熱傾斜試験機で温度を5℃刻みで変化させて、1秒間、98kPaの条件で消色し、最小消去濃度を消去濃度とした。この発色濃度、消去濃度および地肌部の光学濃度をマクベス濃度計RD−918により測定した。消去性は消去濃度から地肌部濃度を引いた値を消え残りとした。結果を表1に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
評価2:可逆性感熱記録材料の耐光性試験
実施例1〜13および比較例1〜4で得た可逆性感熱記録材料に対して、評価1と同様に作製した最大濃度発色試料を、高温高湿(40℃、80%RH)環境下、蛍光灯にて、照度2万lux、時間720時間、光暴露を行った後、評価1と同様にマクベス濃度計にて発色部の光暴露後の濃度を測定し、光暴露後に熱傾斜試験機にて消去して消去濃度を測定し、消去濃度から地肌部濃度を引いた値を消え残りとした。結果を表1に示す。
【0120】
評価3:可逆性感熱記録材料の記録面の剥離強度試験
実施例1〜13および比較例1〜4で得た可逆性感熱記録材料に対して、カードプリンター(パナソニックコミュニケーションズ(株)製R3000)を用いて、高温高湿(40℃、80%RH)環境下において、印字および消去を100回繰り返した直後に、記録面の剥離強度をJIS K 5400付着性(碁盤目法)に準拠して測定し、3回の平均値をXとして表記した。2.0点以下を×、2.1点以上6.0点未満を○、6.0点以上を◎として、評価した。結果を表1に示す。
【0121】
評価2においては、比較例1,3は消え残りが著しく、比較例2,4は消え残りがやや大きかった。評価3においては、比較例2,4の剥離強度が低い結果となり、本発明の可逆性感熱記録材料とすることで、発色濃度が高く、高温高湿環境下での耐光性も高く、高温高湿環境下で繰り返し印字と消去を行った直後でも剥離強度が高いものとすることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、染料前駆体と、加熱により前記染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる可逆性顕色剤とを含む可逆性感熱記録層と、ポリアクリロニトリルおよび無機層状化合物を含む酸素バリア層と、前記酸素バリア層を保護する保護層とを順次積層したことを特徴とする可逆性感熱記録材料。