説明

可食性フィルム

【課題】
フィルム状の食品に使用される基材としては、ゼラチンが有用であるが、宗教上の理由、またアレルギーの問題、最近では狂牛病の発生により、ゼラチンに代わる素材が求められていた。ゼラチン代替の素材としては、デンプンやプルランがあげられる。しかしながら、デンプンは特有の味や臭いがあり、フィルム状に加工したものはゼラチンやプルランに比べ透明性に劣るなどの問題がある。一方、プルランは可食性フィルムへの加工適性、フィルムの透明性などは優れているが、フィルム状にしたものは口どけが悪い。本発明は、透明性が高く、また加工適性及び口どけがよく、さらに安価な可食性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 ガラクトマンナン分解物を含有させることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラクトマンナン分解物を含有する可食性フィルム、または、ガラクトマンナン分解物及び水溶性多糖類を含有する可食性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
口中の消臭を目的として、様々な薬剤や食品が市販されている。うがい薬や口腔噴霧剤に代表される薬剤の他、食品ではキャンディーやチューイングガムなどがある。近年、こういった形態とは異なり、手軽さや気軽さ、また口中で速やかに溶け即効性のあるフィルム状の口中清涼食品が販売されるようになってきた。可食性フィルムを形成する基材としては、ゼラチンが有用であるが、宗教上の理由、またアレルギーの問題、最近では狂牛病の発生により、ゼラチンに代わる素材が求められていた。
【0003】
ゼラチン代替の素材としては、デンプンやプルランがあげられる。デンプンは、各種化工により、低粘性、老化耐性を持つものが開発され、可食性フィルムへの加工適性が向上したものがある。(例えば、特許文献1参照。)また、プルランは可食性で、耐油性もあり、可食性フィルムとしての良好な性質を示す。(例えば、特許文献2参照。)
【0004】
【特許文献1】特開2003−213038号公報(第1−11頁)
【特許文献2】特開昭48−21739号公報(第1−9頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、デンプンは特有の味や臭いがあり、フィルム状にしたものはゼラチンやプルランに比べ透明性に劣るなどの問題がある。一方、プルランは可食性フィルムへの加工適性、フィルムの透明性などは優れているが、フィルム状にしたものは口どけが悪い。またプルランは発酵精製工程などの製造方法が複雑で、非常に高価であり、そのためフィルム状の食品は、プルラン以外の多糖類やデンプンなどを配合した製品が多く、その特性が十分に活かされていない。そこで本発明は、透明性が高く、また加工適性及び口どけがよく、さらに安価な可食性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、ガラクトマンナン分解物を含有する可食性フィルムは、透明性が高く、口どけがよい点で有用であるため、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
すなわち本発明は、ガラクトマンナン分解物を含有することにより、加工時の粘度を抑え、加工適性を改善すると共に、可食性フィルムの透明性、口どけを良好にし、さらに安価で提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に利用されるガラクトマンナン分解物は、特に限定されるものではないが、ガラクトマンナンを主成分とするグァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム、セスバニアガムなどの天然多糖類の分解物があげられ、入手が容易で、安価に製造できる点で、好ましくはグァーガム、ローカストビーンガム、セスバニアガム、タラガム、さらに好ましくはグァーガム、セスバニアガムを加水分解し、低分子化することにより得られるものである。加水分解の方法としては、例えば酵素分解法、酸分解法、熱分解法など特に制限されるものではないが、本発明で好ましいのは、分解物の分子量が揃いやすい点から酵素分解法である。酵素分解法に用いられる酵素は、マンノース直鎖を加水分解する酵素であれば、特に限定されるものではないが、入手が容易で、量的に安定供給が可能な点で、アスペルギルス属菌やリゾープス属菌株に由来するβ―マンナナーゼが好ましい。また、分子量を揃えるため、アルコールまたは含水アルコールを用いて洗浄し、一定以下の低分子量画分を取り除くことも可能である。
【0010】
本発明に利用されるガラクトマンナン分解物の粘度は、特に限定されるものではないが、口どけ感が良好な点で、0.5%水溶液の粘度がB型粘度計((株)東京計器製)を用いて測定した時、25℃で50mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以下であことが望ましい。
【0011】
本発明に利用される水溶性多糖類としては、特に限定されるものではないが、キサンタンガム、カラギーナン、タマリンドガム、サイリュームシードガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カードラン、ジェランガム、タラガム、カシアガム、セスバニアガム、アラビアガム、プルラン、グルコマンナン、クインスシードガム、大豆多糖類、結晶セルロース、カルボキシルメチルセルロース、化工澱粉、澱粉加水分解物などがあり、口どけが良好な点よりサイリュームシードガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム、セスバニアガム、アラビアガム、クインスシードガム、大豆多糖類、結晶セルロース、カルボキシルメチルセルロース、化工澱粉、澱粉加水分解物が好ましく、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、セスバニアガムがより好ましい。
【0012】
また、本発明に利用される可食性フィルムの基材原料としては、特に限定されるものではないが、フィルムの柔軟性と可塑性を上げる目的で、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビトールなどの糖アルコール、ショ糖などの糖類を加えることも可能である。さらに、機能を付加するため、甘味料、乳化剤、タンパク質、着色料、香料、生理活性機能を持った有効成分などを添加することも可能である。
【0013】
本発明でいう可食性フィルムの製造法は、種々の既知の方法が適用でき、特に限定されるものではないが、例えば、ガラクトマンナン分解物、水溶性多糖類及び可塑剤などを共に水に溶解した水溶液を流延させ、乾燥後に剥離する方法などにより可食性フィルムを得ることができる。
【0014】
さらに、このような方法で得られた可食性フィルムは、種々の用途に使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、口中の消臭を目的とした食品や薬剤にも用いることができる。また、皮膚などに付着して使用する保湿剤、美白化粧料、抗菌や殺菌などを目的とした消臭剤や傷への殺菌剤としても利用できる。
【0015】
本発明の可食性フィルムは、従来のフィルムと比較して種々の優れた特性を有するものであり、その優れた特性については特に限定されるものではないが、特に口どけ、透明性があげられる。
ここでいう口どけとは、人間の感覚による評価のため、特に限定されるものではないが、口の中に可食性フィルムを入れたときに舌の上で速やかに溶ける状態を言う。また、ここでいう透明性とは、一般に言われる透き通った状態で、特に限定されるものではないが、光をよく通し、白濁していない状態を言い、目視により確認することができる。
次に本発明の効果を実施例に基づき詳しく説明するが、これは、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0016】
試料の調製
実施例1
グァーガム酵素分解物(太陽化学(株)製)2.0gとグラニュー糖0.5gを混合し、グリセリン0.5gと水97.0gの混合溶液に撹拌しながら分散させた。この懸濁液を撹拌しながら90℃で5分間加熱した後、室温まで冷却してから薄く引き延ばし、風乾した。
【0017】
実施例2
グァーガム(太陽化学(株)製)0.5g、グァーガム酵素分解物(太陽化学(株)製)1.5gとグラニュー糖0.5gを混合した後、グリセリン0.5gと水97.0gの混合溶液に撹拌しながら分散させた。この懸濁液を撹拌しながら90℃で5分間加熱した後、室温まで冷却してから薄く引き延ばし、風乾した。
【0018】
実施例3
ローカストビーンガム(太陽化学(株)製)0.5g、グァーガム酵素分解物(太陽化学(株)製)1.5gとグラニュー糖0.5gを混合した後、グリセリン0.5gと水97.0gの混合溶液に撹拌しながら分散させた。この懸濁液を撹拌しながら90℃で5分間加熱した後、室温まで冷却してからフィルム化し、風乾した。
【0019】
実施例4
タラガム(太陽化学(株)製)0.5g、グァーガム酵素分解物(太陽化学(株)製)1.5gとグラニュー糖0.5gを混合した後、グリセリン0.5gと水97.0gの混合溶液に撹拌しながら分散させた。この懸濁液を撹拌しながら90℃で5分間加熱した後、室温まで冷却してからフィルム化、風乾した。
【0020】
比較例1
プルラン(林原商事(株)製)2.0gとグラニュー糖0.5gを混合した後、グリセリン0.5gと水97.0gの混合溶液に撹拌しながら分散させた。この懸濁液を撹拌しながら90℃で5分間加熱した後、室温まで冷却してからフィルム化し、風乾した。
【0021】
比較例2
デンプン(太陽化学(株)製)2.0gとグラニュー糖0.5gをを混合した後、グリセリン0.5gと水97.0gの混合溶液に撹拌しながら分散させた。この懸濁液を撹拌しながら90℃で5分間加熱した後、室温まで冷却してからフィルム化し、風乾した。
【0022】
試験例1
実施例1〜4および比較例1、2で得られた可食性フィルムの口どけ感について10名のパネラーにより比較試験を行った。最も口どけ感の良いものを10点とし、最も口どけ感の悪いものを0点とし、パネラー10名の平均値を表1に示した。また、試作した可食性フィルムの透明性について評価した。
【0023】
【表1】

【0024】
表1の結果から、本発明の可食性フィルムは比較品に対して口どけ感、透明性ともに優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトマンナン分解物を含有することを特徴とする可食性フィルム。
【請求項2】
ガラクトマンナン分解物及び水溶性多糖類を含有することを特徴とする請求項1に記載の可食性フィルム。
【請求項3】
ガラクトマンナン分解物の粘度が0.5重量%水溶液の粘度が25℃で50mPa・s以下である請求項1または2記載の可食性フィルム。

【公開番号】特開2006−25682(P2006−25682A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208498(P2004−208498)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】