説明

可食性フィルム

【課題】熱溶解性、ヒートシール性及び加工性いずれにも十分に優れた可食性フィルムを提供することである。
【解決手段】食品又は食品添加物として使用されている糊料が含まれた可食性フィルムであって、前記糊料には、少なくともイヌリンとその他の糊料が含まれていることを特徴とする。前記イヌリンは、前記その他の糊料100重量部に対して0.05〜100重量部含まれていることが好ましく、前記その他の糊料は、寒天、カラギナン、ゼラチン、ファーセレラン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、ガラクトマンナン、グルコマンナン、タマリンドガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム及びデンプンのうちいずれか一以上が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶解性、ヒートシール性及び加工性いずれにも十分に優れ、食品又は食品添加物として使用されている糊料を含む可食性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、可食性フィルムは、食品を包装するのに用いられており、プラスチックフィルムと異なり、調理又は喫食時に包装を取り除く必要がないという利点がある。このような可食性フィルムとしては、可溶性を有するものがあり、可溶性を有するものとして、ゼラチンやプルラン、アルギン酸ナトリウムを主成分とするものが知られている(特許文献1)。また、従来より、可食性フィルムの糊料を低分子化させることにより溶解性が改良されている(特許文献2)。
【0003】
このような可溶性を有する可食性フィルムは、例えば、即席麺や即席スープなどの調味料を包装することに用いられている。このような用途に用いられた場合に可食性フィルムに求められる要件としては、可食性フィルムがポットのお湯で溶解する熱溶解性に優れていること、ヒートシール性が良く調味料を包装できること、及びフィルム強度が高く加工性に優れていることなどが挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開平6−105660号公報
【特許文献2】特開2006−25682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の可食性フィルムは、これら熱溶解性、ヒートシール性及び加工性全てを備えていない。すなわち、フィルム強度に優れた糊料を選択すると、ヒートシール性や熱溶解性が劣ったり、逆にヒートシール性や熱溶解性に優れた糊料を選択するとフィルム強度が劣ってしまうなどの問題が生じる。例えば、糊料を低分子化させ熱溶解性を改良しても、可食性フィルムのフィルム物性が大幅に変化してフィルム強度が低下するなど所望のフィルム物性のものが得られなくなる。また、糊料を低分子化させたものより低分子である多価アルコールなどの可塑剤を添加するとフィルム強度が著しく低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、フィルム物性を変化させずに熱溶解性に優れたフィルムを取得すべく、熱溶解性、ヒートシール性及び加工性いずれにも十分に優れた可食性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、イヌリンを含ませることによって、熱溶解性、ヒートシール性及び加工性いずれにも十分な性能を確保できることを見出した。すなわち、本発明は、食品又は食品添加物として使用されている糊料が含まれた可食性フィルムであって、前記糊料には、少なくともイヌリンとその他の糊料が含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、イヌリンを含ませることによって、熱溶解性、ヒートシール性及び加工性いずれにも十分に優れた可食性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る可食性フィルムにおいて、前記イヌリンは、前記その他の糊料100重量部に対して0.05〜100重量部含まれていることが好ましく、5〜50重量部であることがさらに好ましい。
【0010】
また、本発明に係る可食性フィルムにおいて、前記その他の糊料としては、一般的に可食性フィルムに用いられている糊料が好ましく、寒天、カラギナン、ゼラチン、ファーセレラン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、ガラクトマンナン、グルコマンナン、タマリンドガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム及びデンプンのうちいずれか一以上が含まれていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る可食性フィルムは、多価アルコールであるエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン、糖アルコールであるソルビトール、マンニトール、マルチトール及びキシリトール、還元澱粉糖化物等単糖類であるグルコース、フラクトース、ガラクトース及びキシロース、並びに二糖類であるサッカロース、マルトース及びラクトース等をさらに添加させることが好ましく、これらを添加することにより可食性フィルムに柔軟性を与えることができる。
【0012】
本発明に係る可食性フィルムは、種々の既知の方法によって製造することができる。例えば、イヌリン及びその他の糊料などを共に水に溶解した水溶液を流延させ、乾燥後に剥離する方法などにより本発明に係る可食性フィルムを得ることができる。
【0013】
さらに、このような方法で得られた可食性フィルムは、食品の包装など様々な用途に使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、即席麺や即席スープなどの調味料を包装することに用いることができる。
【実施例】
【0014】
実施例1
次に、本発明に係る可食性フィルムの実施例1について説明する。先ず、カラギナン(伊那食品工業(株)製)4%、砂糖由来イヌリン(フジ日本精糖(株)製、分子量約3000)2%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を85℃に加熱することによってカラギナンを溶解した。この水溶液を支持体上に流延し、乾燥して水分15%、厚さ約40μmにすることによって実施例1に係る可食性フィルムを得た。また、カラギナン6%、グリセリン4%が含まれた水溶液を比較例1として、カラギナン4%、デキストリン(分子量約8500)2%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を比較例2とし、カラギナン4%、スクロース(分子量342)2%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を比較例3として、用意し、実施例1と同様に可食性フィルムを作製した。
【0015】
次に、これら実施例1並びに比較例1乃至3に係る可食性フィルムについて、フィルム20%応力及びフィルム破断強度を測定し、ヒートシール性及びお湯への溶解性の評価を行なった。フィルムの20%応力及びフィルム破断強度の測定は、レオメーター(株式会社サン科学)を用いて行ない、引張速度は、20mm/minとした。ヒートシール性の評価は、電動式インパスルシーラー(富士インパルス株式会社製)を用いて行い、カラギナン6%及びグリセリン4%のフィルムをコントロールとして、このコントロールと比べたシール性の優劣を評価した。お湯への溶解性の評価は、調味料3gを封入した可食性フィルムをポットのお湯180mlへ投入し、カラギナン6%、グリセリン4%のフィルムをコントロールとしてこのコントロールと比して溶解性の優劣を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
表1に示すように、比較例1に係る可食性フィルムは、強度が十分で加工性に優れているが、ヒートシール性及び熱溶解性に優れておらず、比較例2及び3に係る可食性フィルムは、逆にヒートシール性及び熱溶解性に優れているが、加工性に優れていないことが分かる。これに対して、実施例1に係る可食性フィルムは、熱溶解性、ヒートシール性及び加工性いずれにも十分に優れていることが分かる。
【0018】
実施例2
次に、本発明に係る可食性フィルムの実施例2について説明する。先ず、寒天(伊那食品工業(株)製)4%、砂糖由来イヌリン(フジ日本精糖(株)製、分子量約3000)2%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を100℃に加熱して寒天を溶解した。この溶液を支持体上に流延し、乾燥して水分15%、厚さ40μmにすることによって実施例2に係る可食性フィルムを得た。また、寒天6%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を比較例4とし、寒天4%、デキストリン(分子量約8500)2%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を比較例5とし、寒天4%、スクロース2%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を比較例6として、用意し、実施例2と同様に可食性フィルムを作製した。
【0019】
次に、これら実施例2並びに比較例4乃至6に係る可食性フィルムについて、実施例1と同様にフィルム20%応力及びフィルム破断強度を測定し、ヒートシール性及びお湯への溶解性の評価を行なった。これらの結果を表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】
表2に示すように、比較4に係る可食性フィルムは、強度が十分で加工性に優れているが、ヒートシール性及び熱溶解性に優れておらず、比較例5及び6に係る可食性フィルムは、逆にヒートシール性及び熱溶解性に優れているが、加工性に優れていないことが分かる。これに対して、実施例2に係る可食性フィルムは、熱溶解性、ヒートシール性及び加工性いずれにも十分に優れていることが分かる。
【0022】
実施例3
次に、本発明に係る可食性フィルムの実施例3について説明する。先ず、ゼラチン(新田ゼラチン(株)製)4%、砂糖由来イヌリン(フジ日本精糖(株)製、分子量約3000)2%及びグリセリン3%が含まれた水溶液を60℃に加熱してゼラチンを溶解した。この溶液を支持体上に流延し、乾燥して水分15%、厚さ40μmにすることによって実施例3に係る可食性フィルムを得た。また、ゼラチン6%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を比較例7とし、ゼラチン4%、デキストリン(分子量約8500)2%及びグリセリン3%が含まれた水溶液を比較例8とし、ゼラチン4%、スクロース2%及びグリセリン3%が含まれた水溶液を比較例9として、用意し、実施例3と同様に可食性フィルムを作製した。
【0023】
次に、これら実施例3並びに比較例7乃至9に係る可食性フィルムについて、実施例1と同様にフィルム20%応力及びフィルム破断強度を測定し、ヒートシール性及びお湯への溶解性の評価を行なった。これらの結果を表3に示す。
【0024】
【表3】

【0025】
表3に示すように、比較例7に係る可食性フィルムは、強度が十分で加工性に優れているが、ヒートシール性及び熱溶解性に優れておらず、比較例8及び9に係る可食性フィルムは、逆にヒートシール性及び熱溶解性に優れているが、加工性に優れていないことが分かる。これに対して、実施例3に係る可食性フィルムは、熱溶解性、ヒートシール性及び加工性いずれにも十分に優れていることが分かる。
【0026】
実施例4乃至11
次に、本発明に係る可食性フィルムの実施例4乃至11について説明する。先ず、表4に示す糊料それぞれ4%、砂糖由来イヌリン(フジ日本精糖(株)製、分子量約3000)2%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を100℃に加熱して糊料を溶解した。この溶液を支持体上に流延し、乾燥して水分15%、厚さ40μmにすることによって実施例4乃至11に係る可食性フィルムを得た。これら実施例4乃至11に係る可食性フィルムについて、実施例1と同様にフィルム20%応力及びフィルム破断強度を測定し、ヒートシール性及びお湯への溶解性の評価を行なった。これらの結果を表4に示す。
【0027】
【表4】

【0028】
また、表5に示す糊料6%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を比較例10乃至17とし、表6に示す糊料4%、デキストリン(分子量約8500)2%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を比較例18乃至25とし、表7に示す糊料4%、スクロース2%及びグリセリン4%が含まれた水溶液を比較例26乃至33として、用意し、実施例4乃至11と同様に可食性フィルムを作製した。これら比較例10乃至33に係る可食性フィルムについて、実施例1と同様にフィルム20%応力及びフィルム破断強度を測定し、ヒートシール性及びお湯への溶解性の評価を行なった。これらの結果を表5乃至7に示す。
【0029】
【表5】

【0030】
【表6】

【0031】
【表7】

【0032】
比較例10乃至17に係る可食性フィルムは、表5に示すように、強度が十分で加工性に優れているが、ヒートシール性及び熱溶解性に優れておらず、比較例18乃至33に係る可食性フィルムは、表6及び7に示すように、逆にヒートシール性及び熱溶解性に優れているが、加工性に優れていないことが分かる。これに対して、実施例4乃至11に係る可食性フィルムは、表4に示すように、熱溶解性、ヒートシール性及び加工性いずれにも十分に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品又は食品添加物として使用されている糊料が含まれた可食性フィルムであって、
前記糊料には、少なくともイヌリンとその他の糊料が含まれていることを特徴とする可食性フィルム。
【請求項2】
前記イヌリンは、前記その他の糊料100重量部に対して0.05〜100重量部含まれていることを特徴とする請求項1記載の可食性フィルム。
【請求項3】
前記その他の糊料は、寒天、カラギナン、ゼラチン、ファーセレラン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、ガラクトマンナン、グルコマンナン、タマリンドガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム及びデンプンのうちいずれか一以上が含まれていることを特徴とする請求項1又は2記載の可食性フィルム。