説明

台車の搬送設備

【課題】1個の前記移送手段上または3個以上の奇数個の前記移送手段上を、選択して移送されるようにした台車の搬送設備を提案する。
【解決手段】複数の鋳枠Fを直線状に連ねて移送可能でありかつ互いに平行して並設された少なくとも3個以上の奇数個の移送手段7から9と、移送手段の両端の外側位置に設置されこれら移送手段の間を台車を搬送する2個の搬送手段10,11と、移送手段の両端のそれぞれの近傍位置に搬送手段を挟んで設置され、搬送手段上の台車を対向する移送手段に押し出す押出し手段12から17と、移送手段上に押し出された台車を緩和に受け止める緩衝機能とを有する緩衝手段12から17と、を具備した台車の搬送設備において、押進手段および緩衝手段を油圧シリンダによって構成し、さらに各油圧シリンダには、押出し機能を付与する押出し回路23と、緩衝機能を付与する緩衝回路24とを備えた油圧回路22を接続したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車の搬送設備に係り、より詳しくは、複数の台車を直線状に連ねて移送可能でありかつ互いに平行して並設された少なくとも3個以上の奇数個の移送手段と、これら移送手段の両端の外側位置に設置されこれら移送手段の間を前記台車を搬送する2個の自走式の搬送手段と、前記移送手段の両端のそれぞれの近傍位置に前記搬送手段を挟んで設置され、この搬送手段上の前記台車を対向する前記移送手段に押し出す押進手段と、前記移送手段上に押し出された前記台車を緩和に受け止める緩衝手段と;を具備した台車の搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、注湯済み生型の冷却ラインの一つとして、注湯済みの生型を内蔵した複数の台車を直線状に連ねて成る台車群を、プッシャシリンダによって1台車のピッチで押し出すとともに、押し出された台車群をクッションシリンダによって減速・停止させるように構成された冷却ラインを、複数並設し、かつ冷却ラインのクッションシリンダ側の外側位置にトラバーサラインを設置して、溶湯が冷却した生型内臓の台車をトラバーサラインを介して所定方向へ送り出すように構成したものがある。
【特許文献1】特開2001−198668号公報 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般に、生型への鋳込み重量や鋳物素材の材質が多岐にわたる多品種少量の鋳物生産においては注湯後の生型の冷却時間が生型毎に相違しており、したがって、上述のように構成された従来の注湯済み生型の冷却ラインでは、多品種少量の鋳物生産に適確に対応させることができない問題があった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、台車が1個の前記移送手段上または3個以上の奇数個の移送手段上を、選択して移送されるようにした台車の搬送設備を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため本発明の台車の搬送設備は、複数の台車を直線状に連ねて移送可能でありかつ互いに平行して並設された少なくとも3個以上の奇数個の移送手段と、これら移送手段の両端の外側位置に設置されこれら移送手段の間を前記台車を搬送する2個の自走式の搬送手段と、前記移送手段の両端のそれぞれの近傍位置に前記搬送手段を挟んで設置され、この搬送手段上の前記台車を対向する前記移送手段に押し出す押進手段と、前記移送手段上に押し出された前記台車を緩和に受け止める緩衝手段と、を具備した台車の搬送設備において、前記押進手段および緩衝手段を油圧シリンダによって構成し、さらに各油圧シリンダには、押出し機能を付与する押出し回路と、緩衝機能を付与する緩衝回路とを備えた油圧回路を接続したことを特徴とする。
【0006】
このように構成されたものは、油圧シリンダを適宜押進手段または緩衝手段として使用することにより、台車が1個の移送手段上または3個以上の奇数個の移送手段上を、選択して移送される。
【発明の効果】
【0007】
上記の説明から明らかなように本発明は、複数の台車を直線状に連ねて移送可能でありかつ互いに平行して並設された少なくとも3個以上の奇数個の移送手段と、これら移送手段の両端の外側位置に設置されこれら移送手段の間を前記台車を搬送する2個の自走式の搬送手段と、前記移送手段の両端のそれぞれの近傍位置に前記搬送手段を挟んで設置され、この搬送手段上の前記台車を対向する前記移送手段に押し出す押進手段と、前記移送手段上に押し出された前記台車を緩和に受け止める緩衝手段と、を具備した台車の搬送設備において、前記押進手段および緩衝手段を油圧シリンダによって構成し、さらに各油圧シリンダには、押出し機能を付与する押出し回路と、緩衝機能を付与する緩衝回路とを備えた油圧回路を接続したから、油圧シリンダを適宜押進手段または緩衝手段として使用することにより、台車が1個の移送手段上または3個以上の奇数個の移送手段上を、選択して移送されることが可能になるなどの優れた実用的効果を奏する。
【発明の実施の形態】
【0008】
以下、本発明の台車の搬送設備を適用した生型の造型・冷却ラインの実施例について図1から図5に基づき詳細に説明する。本生型の造型・冷却ラインは、図1に示すように、生型造型機1を備えて生型を造型する生型造型ライン2と、注湯機3を備えて生型に注湯する注湯ライン4と、注湯された生型を冷却する注湯済み生型の冷却ライン5と、で構成してある。
【0009】
そして、前記注湯済み生型の冷却ライン5は、図1および図2に示すように、前記生型を内蔵した複数の鋳枠Fを直線状に連ねて移送可能でありかつ互いに平行して並設された3個の移送手段7から9と、これら移送手段7から9の両端の外側位置に設置されてこれら移送手段7から9の間を前記鋳枠Fを搬送する第1搬送手段10および第2搬送手段11と、3個の前記移送手段7から9のそれぞれの両端の近傍位置に前記第1搬送手段10、第2搬送手段11をそれぞれ挟んで設置され、第1搬送手段10または第2搬送手段11上の前記鋳枠Fを、前記移送手段7から9のうち対向するものに押し出す押出し機能と、前記搬送手段に押し出された前記鋳枠Fを緩和に受け止める緩衝機能とを有する押進・緩衝手段としての油圧シリンダ12から17と、で構成してある。
なお、油圧シリンダ12から17のそれぞれは、図2に示すように、油圧シリンダの先端と鋳枠Fとの隙間を、鋳枠Fの長さに加算した寸法を、ストロークとして有している。
【0010】
また、前記移送手段7から9のそれぞれは、図2に示すように、前記鋳枠Fを載せる定盤台車18と、複数の定盤台車18を移動自在に装架させる一対の第1レール19とで構成してある。また、前記第1搬送手段10は、前記定盤台車18を移動自在に載せる自走式の台車20と、この台車20を移動自在に装架させる一対の第2レール21とで構成してある。また、前記第2搬送手段11は、前記第1搬送手段10と同様に、前記定盤台車18を移動自在に載せる自走式の台車40と、この台車40を移動自在に装架させる一対の第3レール41とで構成してある。さらに、前記油圧シリンダ12から17のそれぞれには、図3に示す油圧回路22を有する油圧ユニットが接続してあり、この油圧回路22は、油圧シリンダ12から17のそれぞれに押出し機能を付与する押出し回路23と、油圧シリンダ12から17のそれぞれに緩衝機能を付与する緩衝回路24を備えている。
【0011】
そして、前記押出し回路23においては、図示しない油圧ポンプが、油圧シリンダの作動方向と速度を切り換える比例制御弁25、比例制御弁25が中立の位置の時に油圧シリンダの伸長作動を防止するロジック弁26、および配管27を順に介して油圧シリンダの伸長作動用ポートに接続してあり、また、前記比例制御弁25は作動油の流れの方向を切り換える2位置4方口電磁式の第1方向切換弁28を介して油圧シリンの収縮作動用ポートに接続してある。さらに、第1方向切換弁28には、前記緩衝回路24における緩衝機能に必要な高圧油と低圧油を切り換える2位置4方口電磁式の第2方向切換弁29が付設してある。また、前記比例制御弁25にはコントローラ30が接続してある。
なお、図中、符号31から33はリリーフ弁、34はチェック弁である。
【0012】
上述の油圧回路22により、例えば、図3に示すように、緩衝機能を生成するようにした油圧シリンダ15を伸長作動したのち、押出し機能を生成するようにした油圧シリンダ14を伸長作動して台車40上の定盤台車18を第1レール19上に矢印35で示す方向へ押し出すとともに油圧シリンダ15で受け止める場合、油圧ポンプからの加圧油の圧力が比例制御弁25によって制御されて、油圧シリンダ14の伸長作動は最初低速で、続いて、高速で、その後伸長状態が維持される。他方、油圧シリンダ15の収縮作動は、最初低圧の作動油で加速されたのち一定速度になり、続いて、高圧の作動油の下に減速状態となり、その後収縮状態が維持される。この結果、油圧シリンダ14は定盤台車18を高速で押し出すとともに、油圧シリンダ15は押し出された定盤台車18を緩和に受け止めることになる
【0013】
また、図2に示すように、前記移送手段7から9のそれぞれの両端付近には、移送手段上の前記台車群6の両端部の鋳枠Fをそれぞれ位置決めする位置決め手段36および37が別途配設してあり、これら位置決め手段36および37のそれぞれは、上下回動可能に構成されたフック38と、このフック38を上下回動させる横向きの油圧シリンダ39と、を備えている。
なお、前記位置決め手段36および37を用いることにより、定盤台車18、18間の隙間分送り足らずとなる定盤台車18を若干量送り込みながら位置決めして、この定盤台車18の前後の定盤台車18、18との間に隙間を設けることができる。
【0014】
このように構成したものは、注湯後の生型の滞留時間が比較的短い場合には、図1に示すように、その生型を内蔵した鋳枠Fを載せた定盤台車18を第1搬送手段10の台車20上に載せたのち、この台車20を第2レール21を介して矢印51で示す方向へ間歇的に移動させる。次いで、緩衝機能を生成するようにした油圧シリンダ12を伸長作動したのち、押出し機能を生成するようにした油圧シリンダ13を伸長作動して台車20上の定盤台車18を移送手段7の第1レール19上に矢印52で示す方向へ押し出すとともに油圧シリンダ12で受け止める。以上の動作を繰り返して注湯後の生型を内蔵した鋳枠Fを複数、移送手段7の第1レール19上に並べる。同様にして他の移送手段8および9の第1レール19上にも注湯後の生型を内蔵した鋳枠Fを並べて注湯後の生型を冷却する。そして、生型内の溶湯が冷却する所要時間が経過したのち第2搬送手段11の台車40により第3レール41を介して冷却した生型を内蔵の鋳枠Fを生型ばらしステーションに搬送する。
【0015】
また、注湯後の生型の滞留時間が長く必要な場合には、図4に示すように、まず図1に示す場合と同様に、緩衝機能を生成するようにした油圧シリンダ12を伸長作動したのち、押出し機能を生成するようにした油圧シリンダ13を伸長作動して台車20上の定盤台車18を移送手段7の第1レール19上に矢印53で示す方向へ押し出すとともに油圧シリンダ12で受け止め、注湯済み生型内蔵の鋳枠Fを複数移送手段7の第1レール19上に並べて台車群6を形成したのち、この台車群6の先端の鋳枠Fを第2搬送手段11の台車40上に載せ、続いて、この台車40を第3レール41を介して矢印54で示す方向へ1レーン移動させる。次いで、緩衝機能を生成するようにした油圧シリンダ15を伸長作動したのち、押出し機能を生成するようにした油圧シリンダ14を伸長作動して台車40上の定盤台車18を、移送手段8の第1レール19上に矢印55で示す方向へ押し出すとともに、油圧シリンダ15で受け止める。以上の動作を繰り返して注湯済み生型を内蔵の鋳枠Fを複数、移送手段8の第1レール19上に並べる(図5参照)。
同様にして、注湯済み生型を内蔵の鋳枠Fを複数、移送手段9の第1レール19上にも並べる。生型内の溶湯が冷却する所要時間が経過した後、移送手段9の台車群6の先端の鋳枠Fを搬送手段11の台車40上に載せ、続いて、この台車40を第3レール41を介して矢印56で示す方向へ移動させ、生型ばらしステーションに搬送する。
【0016】
またなお、上記の実施例では移送手段は3個設けてあるが、これに限定されるものではなく、3個以上の奇数個であればいくつでもよい。
【0017】
次に、他の実施例について図6に基づき説明する。すなわち、上述の実施例を基に共通の部品はその符号を流用して説明すると、搬送手段10の台車20上に油圧シリンダ13を、また、搬送手段11の台車40上に油圧シリンダ12をそれぞれ装着する。
そして、例えば、移送手段7の左右両端の外側位置に、台車20、40を介して油圧シリンダ13、12をそれぞれ移動させ、その後、油圧シリンダ13を伸長作動して移送手段7上の定盤台車18群を矢印で示す方向へ押し出すとともに、押し出された定盤台車18群を油圧シリンダ12で受け止める。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、鋳枠Fの代わりに他の物体を定盤台車18に載せて、物質が移送手段7から9に滞留する時間を適宜選択することが可能になる他の産業分野にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した注湯済み生型の冷却ラインの一実施例の平面図である。
【図2】図1の場合におけるA−A矢視図である。
【図3】図1の油圧シリンダの油圧回路図である。
【図4】図1に示す注湯済み生型の冷却ラインの作動説明図である。
【図5】図4の場合におけるA−A矢視図である。
【図6】本発明を適用した注湯済み生型の冷却ラインの他の実施例の平面図である。
【符号の説明】
【0020】
7;8;9 移送手段
10 第1搬送手段
11 第2搬送手段
12;13;14;15;16;17 油圧シリンダ
22 油圧回路
23 押出し回路
24 緩衝回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の台車を直線状に連ねて移送可能でありかつ互いに平行して並設された少なくとも3個以上の奇数個の移送手段と、これら移送手段の両端の外側位置に設置されこれら移送手段の間を前記台車を搬送する2個の自走式の搬送手段と、前記移送手段の両端のそれぞれの近傍位置に前記搬送手段を挟んで設置され、この搬送手段上の前記台車を対向する前記移送手段に押し出す押進手段と、前記移送手段上に押し出された前記台車を緩和に受け止める緩衝手段と、を具備した台車の搬送設備において、
前記押進手段および緩衝手段を油圧シリンダによって構成し、さらに各油圧シリンダには、押出し機能を付与する押出し回路と、緩衝機能を付与する緩衝回路とを備えた油圧回路を接続したことを特徴とする台車の搬送設備。
【請求項2】
複数の台車を直線状に連ねて移送可能な複数個の移送手段と、これら移送手段の両端の外側位置に設置されこれら移送手段の間を前記台車を搬送する2個の自走式の搬送手段と、この搬送手段上に装着され前記移送手段上の前記台車を対向する前記搬送手段に向けて押し出す押進手段と、前記搬送手段上に装着され前記押進手段によって押し出された前記移送手段上の前記台車を緩和に受け止める緩衝手段と、を具備した台車の搬送設備において、
前記押進手段および緩衝手段を油圧シリンダによって構成し、さらに各油圧シリンダには、押出し機能を付与する押出し回路と、緩衝機能を付与する緩衝回路とを備えた油圧回路を接続したことを特徴とする台車の搬送設備。
【請求項3】
請求項1または2に記載の台車の搬送設備において、
前記油圧回路においては、
油圧ポンプに、前記油圧シリンダの作動方向と速度を切り換える比例制御弁と、この比例制御弁が中立の位置の時に前記油圧シリンダの伸長作動を防止するロジック弁と、配管とを順に介して前記油圧シリンの伸長作動用ポートを接続し、
また、前記比例制御弁には、作動油の流れの方向を切り換える2位置4方口電磁式の第1方向切換弁を介して前記油圧シリンの収縮作動用ポートを接続し、
さらに、前記第1方向切換弁には、前記緩衝回路における緩衝機能に必要な高圧油と低圧油を切り換える2位置4方口電磁式の第2方向切換弁を付設し、
前記比例制御弁にはコントローラを接続したことを特徴とする台車の搬送設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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