説明

台車連結装置、台車連結構造及び台車制御方法

【課題】停止時の位置決めを容易にしながら、走行中の台車のがたつきを防止することができる台車連結装置、台車連結構造、及び台車制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】台車連結装置31を、隣接する搬送用台車を相対変位可能にして連結する連結機構32と、連結される搬送用台車の相対変位を規制する変位規制装置33とを有する構成とする。連結機構32を、隣接する搬送用台車に設けられる基部36と、基部36同士を接続する連結部材37とを有し、一方の基部36aは、搬送用台車の連結方向に離間して設けられる一対のストッパー38と、これら一対のストッパー38間に搬送用台車の連結方向に変位可能にして設けられる支持部材39と、支持部材39を一対のストッパー37のうちのいずれか一方に選択的に押し付けて固定する押圧機構41とを有する構成とする。連結部材37を、一方の基部36aに対して、支持部材39を介して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール軌道上を走行する台車同士の連結に用いられる台車連結装置、台車連結構造、及び台車制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台車連結装置としては、例えば後記の特許文献1に記載の伸縮調整用連結装置が知られている。
この伸縮調整用連結装置は、台車の走行方向に伸縮自在とされており、これによって、台車を無端ループ状に連結した際にも、連結装置に生じた熱膨張や熱収縮を吸収することができるようになっている。
また、この伸縮調整用連結装置は、縮小方向に弾性付勢されており、これによって台車の走行駆動力が伸縮調整用連結装置を介して隣接する走行台車に途切れることなく伝達されて、走行時の負荷がこれら台車にほぼ均等にかかるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−263217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この伸縮調整用連結装置は、台車の走行方向に伸縮自在であるため、各台車の速度に差が生じやすい。このため、走行中に隣接する台車がぶつかってしまう可能性がある。また、各台車の速度に差が生じることで、台車を駆動する駆動装置に大きな負荷が加わったり、台車が隣接する台車に押されたり引っ張られたりして、台車の車輪が空転してしまう可能性がある。このように走行中に車輪が空転すると、車輪の回転の様子に基づいて動作を制御されるタイプの台車では、台車を正確に制御することができなくなってしまう。
これらの問題は、台車及び積載物の重量が大きければ大きいほど深刻となる。
このため、この伸縮調整用連結装置を用いた場合には、各台車の速度に差が生じないように、台車の動作制御を厳密に行う必要があった。
【0005】
一方、台車同士の相対変位を規制して台車の連結構造をあそびのない構成とした場合には、連結装置に熱膨張や熱収縮が生じることによって台車間の間隔が変化することになるので、台車を停止させて荷役を行うにあたって、台車を荷役位置に正確に位置決めすることが困難となってしまう。また、仮に、連結装置に熱膨張や熱収縮が生じない条件下で運用しても、各台車がそれぞれ対応する荷役位置に停止するように、台車の停止位置を厳密に制御する必要がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、停止時の位置決めを容易にしながら、走行中の台車のがたつきを防止することができる台車連結装置、台車連結構造、及び台車制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、レール軌道上を走行する台車を連結する台車連結装置であって、隣接する前記台車を相対変位可能にして連結する連結機構と、該連結機構によって連結される前記台車の相対変位を規制する変位規制装置とを有している台車連結装置を提供する。
【0008】
このように構成される台車連結装置を用いて台車を連結した場合には、変位規制装置によって隣接する台車同士の相対変位を規制することで、台車の走行中に、各台車の速度に差が生じなくなる。すなわち、この台車連結装置では、走行時の台車のがたつきを防止することができるので、隣接する台車がぶつかってしまったり、台車が隣接する台車に押されたり引っ張られたりすることがない。
一方、この台車連結装置の連結機構は、隣接する台車を相対変位可能にして連結するので、変位規制装置による台車の相対変位の規制を解除した状態では、各台車を独立して変位させることができる。このため、台車を停止させるにあたって、各台車について個別に停止位置の調整を行うことができ、各台車の位置決めが容易である。
【0009】
ここで、台車を停止させるにあたって、各台車を一旦停止させた後に変位規制装置による台車同士の相対変位の規制を解除して、各台車について個別に停止位置の調整を行ってもよい。
また、台車を停止させるにあたって、停止直前に(すなわち台車が十分に減速された状態で)、変位規制装置による台車の相対変位の規制を解除して、各台車についてそれぞれ停止位置の制御を行ってもよい。この場合には、台車の停止後に各台車を目標停止位置に対して位置決めする際の位置調整量が少なくて済むか、もしくは不要となるので、位置決め作業が容易となる。
【0010】
この台車連結装置において、前記連結機構が、前記隣接する台車のそれぞれに設けられる基部と、該基部同士を接続する連結部材とを有し、前記一方の基部は、前記台車の連結方向に離間して設けられる一対のストッパーと、これら一対のストッパー間に前記台車の連結方向に変位可能にして設けられる支持部材とを有しており、前記連結部材は、前記一方の基部に対して、前記支持部材を介して接続されており、前記変位規制装置は、前記支持部材を前記一対のストッパーのうちのいずれか一方に選択的に押し付けて固定する押圧機構を有していてもよい。
【0011】
この場合には、隣接する台車に設けられる基部同士を接続する連結部材は、一方の基部に対して、台車の連結方向に変位可能な支持部材を介して接続されている。
このため、支持部材の変位が許容された状態では、隣接する台車の相対変位が許容され、変位規制装置によって支持部材の変位を規制することで、隣接する台車の相対変位が規制される。
具体的には、押圧機構によって支持部材をいずれか一方のストッパーに押し付けることで、支持部材の変位が規制されて、隣接する台車の相対変位が規制される。また、押圧機構による支持部材の押圧を解除することで、支持部材の変位の規制が解除されて、隣接する台車の相対変位が許容される。
【0012】
ここで、この台車連結装置では、押圧機構による支持部材の押圧方向によって、相対変位を規制した状態での台車間の間隔が変わる。
具体的には、押圧機構によって支持部材を他方の基部側(すなわち隣接する台車側)のストッパーに押し付けた状態では、支持部材が隣接する台車側に変位した状態で固定されるので、台車間の間隔が最大となった状態で台車の相対変位が規制される。
一方、押圧機構によって支持部材を他方の基部から離間する方向(すなわち隣接する台車から離間する方向)のストッパーに押し付けた状態では、支持部材が隣接する台車から離間する側に変位した状態で固定されるので、台車間の間隔が最小となった状態で台車の相対変位が規制される。
【0013】
このため、この台車連結装置を用いて台車を連結する場合には、台車間の間隔が全体的にみて均一となるように(各台車をそれぞれ荷役位置に対して位置決めする際の各台車の移動量が小さくなるように)、隣接する台車連結装置のうちの一方では隣接する台車間の間隔を大きくした状態で台車の相対変位を規制し、他方では隣接する台車間の間隔を小さくした状態で台車の相対変位を規制することが好ましい。
【0014】
また、前記支持部材が、前記一方の基部に対して、前記台車の連結方向に平行な面上で一軸回りに揺動可能にして設けられており、前記押圧機構は、前記支持部材のうち、前記連結部材との接続部よりも前記支持部材の揺動中心から離間した位置を押圧する構成とされていてもよい。
この場合には、支持部材は、押圧機構の押圧力を拡大して連結部材に伝達する「てこ」として機能する。
このため、押圧機構が支持部材を固定するのに要する力が少なくて済み、押圧機構の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、前記連結機構が衝撃緩衝装置を有していてもよい。
この場合には、連結機構に設けられた衝撃緩衝装置によって台車間に加わる衝撃が緩衝されるので、台車が急停止した場合など、台車間に強い力が加わっても、台車や連結機構に損傷が生じにくい。
【0016】
本発明は、上記本発明に係る台車連結装置を用いた台車連結構造を提供する。
このように構成される台車連結構造では、走行時の台車のがたつきを防止することができるので、隣接する台車がぶつかってしまったり、台車が隣接する台車に押されたり引っ張られたりすることがない。
また、この台車連結構造では、変位規制装置による台車の相対変位の規制を解除した状態では、各台車を独立して変位させることができるので、台車を停止させる際の各台車の位置決めが容易である。
【0017】
本発明は、レール軌道上を走行する複数台の台車を台車連結装置によって連結し、該台車連結装置を、隣接する前記台車を相対変位可能にして連結する連結機構と、該連結機構によって連結される前記台車の相対変位を規制する変位規制装置とを有する構成とし、前記台車の走行時には前記変位規制装置によって前記台車の相対変位を規制し、前記台車の停止時には、前記変位規制装置による前記台車の相対変位の規制を解除して、各台車ごとに停止位置の制御を行う台車制御方法を提供する。
【0018】
この台車制御方法では、台車の走行時には、変位規制装置によって台車同士の相対変位を規制するので、台車の走行中に、各台車の速度に差が生じなくなる。すなわち、この台車連結装置では、走行時の台車のがたつきが防止されるので、隣接する台車がぶつかってしまったり、台車が隣接する台車に押されたり引っ張られたりすることがない。
そして、この台車制御方法では、台車を停止させるにあたって、変位規制装置による台車の相対変位の規制を解除して、各台車についてそれぞれ停止位置の制御を行うので、各台車の位置決めを容易に行うことができる。
【0019】
ここで、台車を停止させるにあたって、各台車を一旦停止させた後に変位規制装置による台車同士の相対変位の規制を解除して、各台車について個別に停止位置の調整を行ってもよい。
また、台車を停止させるにあたって、停止直前に(すなわち台車が十分に減速された状態で)、変位規制装置による台車の相対変位の規制を解除して、各台車についてそれぞれ停止位置の制御を行ってもよい。この場合には、台車の停止後に各台車を目標停止位置に対して位置決めする際の位置調整量が少なくて済むか、もしくは不要となるので、位置決め作業が容易となる。
【0020】
ここで、上記の台車制御方法において、台車間の間隔を荷役時の間隔(すなわち各台車をそれぞれ荷役位置に対して位置決めした状態での各台車間の間隔)よりも大きくした状態または小さくした状態で、変位規制装置による台車の相対変位の規制を行うと、各台車をそれぞれ荷役位置に対して位置決めする際に各台車を移動させる距離が大きくなる。
そこで、台車の走行時には、台車間の間隔が荷役時の間隔よりも大きく取られた連結構造と台車間の間隔が荷役時の間隔よりも小さくされた連結構造とを交互に配置することで、全体的にみて、台車間の間隔が平均化されて荷役時の間隔に近くなるので、各台車をそれぞれ荷役位置に対して位置決めする際に各台車を移動させる距離が小さくなり、台車の位置決め作業が容易となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る台車連結装置、台車連結構造、及び台車制御方法によれば、走行時の台車のがたつきを防止することができるので、隣接する台車がぶつかってしまったり、台車が隣接する台車に押されたり引っ張られたりすることがない。
また、本発明に係る台車連結装置、台車連結構造、及び台車制御方法によれば、変位規制装置による台車の相対変位の規制を解除した状態では、各台車を独立して変位させることができるので、台車を停止させる際の各台車の位置決めが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、本発明を、図1及び図2に示す搬送用台車1の連結構造に適用した例を示す。
搬送用台車1は、鋼板コイル等の重量物の搬送に用いられる台車であって、複数台連結された状態で、平行配置された一対のレール2aを有するレール軌道2上を走行するものである。本実施形態では、搬送用台車1を5台連結した例について説明する。
【0023】
図2に示すように、レール軌道2上において、搬送用台車1の荷積みまたは荷降ろしが行われる荷役位置には、スキッド4が隣接配置されている。
スキッド4は、レール軌道2の敷設位置よりも上方に突出して設けられるプラットホームであって、その上面には、レール軌道2に略直交する方向に沿って、地上レール6が設けられている。本実施形態では、地上レール6は、一対の平行レールによって構成されている。なお、レール軌道2上を走行する搬送用台車1とスキッド4との間には、搬送用台車1とスキッド4とが干渉しないように、クリアランスが確保されている。
【0024】
本実施形態では、搬送用台車1は、図1に示すように鋼板コイルCの搬送に用いられる台車とされている。
搬送用台車1は、レール軌道2上を走行する親台車11と、親台車11上にその走行方向と交差する方向に沿って設けられる台車レール12と、鋼板コイルCを受けて台車レール12上を移動する子台車13とを有している。図2に示すように、台車レール12は、地上レール6と同じ間隔で配置される一対の平行レールによって構成されている。
図1に示すように、親台車11には、レール軌道2の各レール2aに対応させて、レール2a上を転動する車輪14が設けられている。本実施形態では、親台車11の底部の四隅のそれぞれに、それぞれ軸線回りに回転可能にして車輪14が設けられている。
【0025】
これら車輪14には、それぞれ独立した駆動装置が設けられていて、各車輪14が独立して駆動されるようになっている。言い換えれば、各車輪14は、それぞれ駆動装置によって非同期で駆動されていて、一方のレール2aに対応する車輪14の回転速度と他方のレール2aに対応する車輪14の回転速度との間に差を生じさせることができるようになっている。これにより、この搬送用台車1は、レール軌道2において、直線部のみならず、曲線部についても、スムーズな走行が可能となっている。
【0026】
図2に示すように、親台車11には、親台車11をレール軌道2上の所定位置に位置決め固定する固定装置16が設けられている。
図3に示すように、固定装置16は、親台車11において走行方向に配列される一対のクランプ爪17と、これらクランプ爪17を駆動する駆動装置18とを有している。スキッド4においてレール軌道2側を向く側面には、各搬送用台車1の停止位置に対応させて、アンカー19が設けられている。
【0027】
本実施形態では、各クランプ爪17は、親台車11に保持される基部Bと、基部Bから突出して設けられる爪Tとを有している。
基部Bは、親台車11によって略垂直軸線回りに揺動可能にして支持されており、駆動装置18によって基部Bを略垂直軸線回りに揺動させることで、一対のクランプ爪17の爪Tの先端同士が近接または離間するようになっている。
一対のクランプ爪17のうち、一方のクランプ爪17aの爪Tの先端は、他方のクランプ爪17bに向けて屈曲されており、他方のクランプ爪17bの爪Tの先端は、一方のクランプ爪17aに向けて屈曲されている。
アンカー19は、レール軌道2側に向けて突出する突部19aを有しており、この突部19aが一対のクランプ爪17によって挟み込まれるようになっている。
【0028】
一対のクランプ爪17のうち、一方のクランプ爪17aの基部Bには、径方向に突出する突出部Pが設けられている。一方のクランプ爪17aは、この突出部Pを基部Bの揺動軸線回りに押圧または牽引されることで、揺動軸線回りに揺動するようになっている。
駆動装置18は、この突出部Pを押圧または牽引する油圧シリンダによって構成されている。
【0029】
一方のクランプ爪17aの基部Bは、他方のクランプ爪17bに対向する部位に歯車Gが形成されている。また、他方のクランプ爪17bの基部Bは、一方のクランプ爪17aに対向する部位に、一方のクランプ爪17aの歯車Gと噛み合う歯車Gが設けられている。これにより、一方のクランプ爪17aを揺動させると、他方のクランプ爪17bが同期して逆方向に揺動するようになっている。
【0030】
例えば、一方のクランプ爪17aが爪Tを他方のクランプ爪17bに近接させる向きに揺動した際には、他方のクランプ爪17bが、その爪Tを一方のクランプ爪17aに近接する向きに揺動させられる。すなわち、これらクランプ爪17の爪Tが一対のクランプ爪17の中間位置に向けて移動させられて、クランプ爪17が閉じられる。また、一方のクランプ爪17aが爪Tを他方のクランプ爪17bから離間する向きに揺動した際には、他方のクランプ爪17bが、その爪Tを一方のクランプ爪17aから離間する向きに揺動させられて、これらクランプ爪17が開かれる。
【0031】
固定装置16は、駆動装置18によってクランプ爪17を駆動して、クランプ爪17にアンカー19をクランプさせることで、搬送用台車1の親台車11を停止位置に位置決め固定するものである。
具体的には、固定装置16による搬送用台車1の固定を行うにあたって、アンカー19が一対のクランプ爪17の中間位置に対向している場合には、クランプ爪17を閉じる(クランプ爪17の先端同士を近接させる)際に、一方のクランプ爪17aの爪Tの先端と他方のクランプ爪17bの爪Tの先端とがほぼ同時にアンカー19に当接することになり、搬送用台車1はこの位置で固定される。
【0032】
一方、アンカー19の突部19aが一対のクランプ爪17の中間位置に対向していない場合には、クランプ爪17を閉じる過程で、これらクランプ爪17のうちのいずれか一方の爪Tの先端が先にアンカー19に当接する。
この状態からさらにクランプ爪17が閉じられることで、クランプ爪17を閉じる力(駆動装置18の駆動力)によって、一対のクランプ爪17の中間部がアンカー19に対向するように、搬送用台車1が移動させられる。そして、両方のクランプ爪17の先端によってアンカー19が挟み込まれた時点で、搬送用台車1が固定される。
【0033】
以下、上記の搬送用台車1の連結構造について、図4から図6を用いて説明する。
図4に示すように、隣接する搬送用台車1は、台車連結装置31によって連結されている。
台車連結装置31は、隣接する搬送用台車1を相対変位可能にして連結する連結機構32と、連結機構32によって連結される搬送用台車1の相対変位を規制する変位規制装置33とを有している。
【0034】
連結機構32は、隣接する搬送用台車1の親台車11のそれぞれに設けられる基部36と、これら基部36同士を接続する連結部材37とを有している。
基部36は、親台車11の連結方向に突出して設けられている。
図5及び図6に示すように、基部36のうちの一方の基部36aは、搬送用台車1の連結方向に離間して設けられる一対のストッパー38と、これら一対のストッパー38間に搬送用台車1の連結方向に変位可能にして設けられる支持部材39とを有している。
連結部材37は、一方の基部36aに対して、支持部材39を介して接続されている。
このため、支持部材37の変位が許容された状態では、隣接する搬送用台車1の相対変位が許容され、支持部材39の変位を規制することで、隣接する搬送用台車1の相対変位が規制される。
【0035】
変位規制装置33は、支持部材39を一対のストッパー38のうちのいずれか一方に選択的に押し付けて固定する押圧機構41を有している。本実施形態では、押圧機構41は、一方の基部36aよりも他方の基部36bから離間した位置に設けられる油圧シリンダによって構成されている。
油圧シリンダは、シリンダ41aが親台車11に接続され、プランジャ41bが支持部材39に接続されている。シリンダ41aは、親台車11に対してピン結合によって接続されている。これにより、油圧シリンダは、一方の基部36aとの接続部を支点として略水平面上で揺動可能とされている。
【0036】
支持部材39は、一方の基部36aに対して、搬送用台車1の連結方向に平行な面上で一軸回りに揺動可能にして設けられている。
本実施形態では、支持部材39は、平面視略長方形をなす板形状をなしている。支持部材39は、ストッパー38間を横断するように配置された状態で、一端を一方の基部36aに対してピン39aを介して接続されている。これにより、支持部材39は、ピン39aを揺動中心として、他方の基部36bから離間する側のストッパー38aから他方の基部36b側のストッパー38bまでの範囲内で、略水平面上を揺動可能とされている。
【0037】
連結部材37は、略棒状の部材であって、その一端を、支持部材39の一端と他端との中間位置に対してピン37aを介して接続されている。これにより、連結部材37は、ピン37aを揺動中心として、支持部材39に対して略水平面上で相対的に揺動可能とされている。また、連結部材37は、その他端を、他方の基部36bに対してピン37bを介して接続されている。これにより、連結部材37は、ピン37bを揺動中心として、他方の基部36bに対して略水平面上で相対的に揺動可能とされている。
【0038】
押圧機構41は、支持部材39のうち、連結部材37との接続部よりも支持部材39の揺動中心から離間した位置(すなわち他端近傍)を押圧する構成とされている。
これにより、押圧機構41が支持部材39を固定するのに要する力が少なくて済み、押圧機構41の小型化、低コスト化を図ることができる。
本実施形態では、押圧機構41を構成する油圧シリンダのプランジャ41bは、その先端がピン39bを介して支持部材39の他端に接続されている。これにより、押圧機構41を構成する油圧シリンダを伸張させることで、図6に一点鎖線で示すように、支持部材39が他方の基部36b側のストッパー38に押し付けられて固定される。また、油圧シリンダを収縮させることで、図6に二点差線で示すように、支持部材39が一方の基部36a側のストッパー38に押し付けられて固定される。
【0039】
支持部材39の他端には、支持部材39の長手方向に略直交する長穴39cが形成されている。この長穴39cは、ピン39aを中心とする円弧状に形成されている。
ピン39bは、この長穴39cに対して、長穴39cに沿って移動可能にして係合させられている。これにより、支持部材39とプランジャ41bとの間には、長穴39cの長さ分のあそびが確保されている。
【0040】
図4及び図5に示すように、連結部材37は、一方の基部36aに接続される側を構成する第一連結部材42と、他方の基部36bに接続される第二連結部材43とを有している。
第一連結部材42は、他方の基部36b側の端部が中空円筒形状をなしており、この端部内に第二連結部材43の一方の基部36a側の端部が挿入されるようになっている。
第一連結部材42の他方の基部36b側の端部には、この端部より離間した位置に外フランジ42aが設けられている。
第二連結部材43の一方の基部36a側の端部には、この端部より離間した位置に外フランジ43aが設けられている。
【0041】
これら外フランジ42a,43aの間には、連結部材37と略同軸にして圧縮コイルばね44が設けられている。また、これら外フランジ42a,43aは、連結部材37と略平行にして、かつ外フランジ42a,43aに対して摺動可能にして、ガイドロッド45が挿通されている。ガイドロッド45の両端には外フランジ42a,43aを受ける抜け止め45aが設けられている。
すなわち、第一連結部材42と第二連結部材43とは、ガイドロッド45の長さの範囲内でガイドロッド45に沿って(連結部材37の長手方向に沿って)相対変位可能とされている。
【0042】
このように構成される連結部材37に対して、長手方向に沿った向きに衝撃が加わると、第一連結部材42と第二連結部材43とが近接する。すると、第一連結部材42の外フランジ42aと第二連結部材43の外フランジ43aとの間に配置される圧縮コイルばね44が圧縮されて、圧縮コイルばね44によってこの衝撃のエネルギーが吸収される。
すなわち、第一連結部材42、第二連結部材43、及び圧縮コイルばね44は、連結機構32に加わる衝撃を緩衝する衝撃緩衝装置46を構成している。これにより、搬送用台車1が急停止した場合など、搬送用台車1間に強い力が加わっても、搬送用台車1や連結機構32に損傷が生じにくい。
【0043】
ここで、各搬送用台車1に対する上記の台車連結装置31の設置位置は、レール軌道2の描く軌道に応じて、適宜決定される。
例えば、レール軌道2が蛇行する軌道を描いている場合には、台車連結装置31は、隣接する搬送用台車1のそれぞれの連結方向の端部に対して、連結方向に直交する方向の中央部(幅方向の中央部)に設けられる。これにより、隣接する搬送用台車1同士が左右いずれの方向にも相対的に揺動可能となり、蛇行するレール軌道2上をスムーズに走行することができる。
【0044】
ただし、この場合には、隣接する搬送用台車1は、連結方向の端部のうち、連結方向の中央部を支点として揺動するので、隣接する搬送用台車1が相対的に揺動すると、これら搬送用台車1の連結方向の端部のうち、揺動方向の端部同士が近接することになる。
このため、この場合には、隣接する搬送用台車1が左右いずれの方向に相対的に揺動した場合にも、隣接する搬送用台車1同士が干渉しないように、連結部材37の長さを十分に確保して、隣接する搬送用台車1間の距離を十分に開けておく必要がある。
【0045】
一方、レール軌道2が一方向にのみ曲がる軌道を描いている場合には、隣接する搬送用台車1同士は、レール軌道2の曲がる方向にのみ、相対的に揺動可能であればよいので、台車連結装置31は、隣接する搬送用台車1のそれぞれの連結方向の端部のうち、レール軌道2の曲がる側の端部に設けることが好ましい。
この場合には、隣接する搬送用台車1は、連結方向の端部のうち、レール軌道2の曲がる方向の端部を支点として揺動するので、隣接する搬送用台車1がレール軌道2の曲がる方向に相対的に揺動しても、これら搬送用台車1の連結方向の端部のうち、揺動方向の端部同士の距離はほぼ一定に保たれる。
すなわち、この場合には、隣接する搬送用台車1同士が干渉する恐れがないので、連結部材37の長さを最小限にすることができる。
【0046】
なお、この場合には、万一隣接する搬送用台車1がレール軌道2の曲がる方向とは反対方向に相対的に揺動した際にも、搬送用台車1同士が直接ぶつかることがないように、隣接する搬送用台車1のそれぞれの連結方向の端部のうち、レール軌道2の曲がる側とは反対側の端部に、隣接する搬送用台車1を受ける当接部材47(いわゆるタイコ)を設けることが好ましい。
本実施形態では、レール軌道2は、スキッド4が設けられる側とは反対側に曲がる曲線部を有している。このため、本実施形態では、台車連結装置31は、隣接する搬送用台車1のそれぞれの連結方向の端部のうち、スキッド4に対向する側とは反対側の端部に設けられている。また、図2及び図4に示すように、隣接する搬送用台車1には、それぞれスキッド4に対向する側に、当接部材47が、間隔をあけて対向配置されている。
【0047】
上記のような台車連結装置31を用いて連結される搬送用台車1は、走行中は、変位規制装置33によって隣接する搬送用台車1同士の相対変位を規制することで、搬送用台車1の走行中に、各搬送用台車1の速度に差が生じなくなる。すなわち、これら搬送用台車1は、変位規制装置33によって走行時のがたつきが防止されるので、隣接する搬送用台車1がぶつかってしまったり、搬送用台車1が隣接する搬送用台車1に押されたり引っ張られたりすることがなく、搬送用台車1に負荷が加わりにくい。
また、搬送用台車1の車輪14が空転しにくいので、搬送用台車1が車輪14の回転の様子に基づいて動作を制御されるタイプの台車であっても、搬送用台車1の走行制御を正確に行うことができる。
【0048】
一方、この台車連結装置31の連結機構32は、隣接する搬送用台車1を相対変位可能にして連結するので、変位規制装置33による搬送用台車1の相対変位の規制を解除した状態では、各搬送用台車1を独立して変位させることができる。このため、搬送用台車1を停止させるにあたって、各搬送用台車1について個別に停止位置の調整を行うことができ、各搬送用台車1の位置決めが容易である。
【0049】
ここで、搬送用台車1を停止させるにあたって、各搬送用台車1を一旦停止させた後に変位規制装置33による搬送用台車1同士の相対変位の規制を解除して、各搬送用台車1について個別に停止位置の調整を行ってもよい。この位置決め作業は、各搬送用台車1を自走させて行ってもよく、また、前記の固定装置16を用いて行ってもよい。
また、搬送用台車1を停止させるにあたって、停止直前に(すなわち搬送用台車1が十分に減速された状態で)、変位規制装置33による搬送用台車1の相対変位の規制を解除して、各搬送用台車1についてそれぞれ停止位置の制御を行ってもよい。この場合には、搬送用台車1の停止後に各搬送用台車1を目標停止位置に対して位置決めする際の位置調整量が少なくて済むか、もしくは不要となるので、位置決め作業が容易となる。
【0050】
ここで、この台車連結装置31では、押圧機構41による支持部材39の押圧方向によって、相対変位を規制した状態での搬送用台車1間の間隔が変わる。
具体的には、押圧機構41によって支持部材39を他方の基部36b側(すなわち隣接する搬送用台車1側)のストッパー38bに押し付けた状態では、支持部材39が隣接する搬送用台車1側に変位した状態で固定されるので、搬送用台車1間の間隔が最大となった状態で搬送用台車1の相対変位が規制される。
一方、押圧機構41によって支持部材39を他方の基部36bから離間する側(すなわち隣接する搬送用台車1から離間する側)のストッパー38aに押し付けた状態では、支持部材39が隣接する搬送用台車1から離間する側に変位した状態で固定されるので、搬送用台車1間の間隔が最小となった状態で搬送用台車1の相対変位が規制される。
【0051】
このため、この台車連結装置31によって連結された搬送用台車1では、搬送用台車1間の間隔が全体的にみて均一となるように(各搬送用台車1をそれぞれ荷役位置に対して位置決めする際の各搬送用台車1の移動量が小さくなるように)、隣接する台車連結装置31のうちの一方では隣接する搬送用台車1間の間隔を大きくした状態で搬送用台車1の相対変位を規制し、他方では隣接する搬送用台車1間の間隔を小さくした状態で搬送用台車1の相対変位を規制することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る台車連結構造が適用される搬送用台車の構成を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る台車連結構造が適用される搬送用台車の構成を示す平断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る台車連結構造が適用される搬送用台車の位置決め機構を概略的に示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る台車連結構造を示す平面図である。
【図5】図4の拡大図である。
【図6】図5の拡大図である。
【符号の説明】
【0053】
1 搬送用台車
2 レール軌道
31 台車連結装置
32 連結機構
33 変位規制装置
36 基部
37 連結部材
38 ストッパー
39 支持部材
41 押圧機構
46 衝撃緩衝装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール軌道上を走行する台車を連結する台車連結装置であって、
隣接する前記台車を相対変位可能にして連結する連結機構と、
該連結機構によって連結される前記台車の相対変位を規制する変位規制装置とを有している台車連結装置。
【請求項2】
前記連結機構が、前記隣接する台車のそれぞれに設けられる基部と、
該基部同士を接続する連結部材とを有し、
前記一方の基部は、前記台車の連結方向に離間して設けられる一対のストッパーと、
これら一対のストッパー間に前記台車の連結方向に変位可能にして設けられる支持部材とを有しており、
前記連結部材は、前記一方の基部に対して、前記支持部材を介して接続されており、
前記変位規制装置は、前記支持部材を前記一対のストッパーのうちのいずれか一方に選択的に押し付けて固定する押圧機構を有している請求項1記載の台車連結装置。
【請求項3】
前記支持部材が、前記一方の基部に対して、前記台車の連結方向に平行な面上で一軸回りに揺動可能にして設けられており、
前記押圧機構は、前記支持部材のうち、前記連結部材との接続部よりも前記支持部材の揺動中心から離間した位置を押圧する構成とされている請求項2記載の台車連結装置。
【請求項4】
前記連結機構が衝撃緩衝装置を有している請求項1から3のいずれかに記載の台車連結装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の台車連結装置を用いた台車連結構造。
【請求項6】
レール軌道上を走行する複数台の台車を台車連結装置によって連結し、
該台車連結装置を、隣接する前記台車を相対変位可能にして連結する連結機構と、該連結機構によって連結される前記台車の相対変位を規制する変位規制装置とを有する構成とし、
前記台車の走行時には前記変位規制装置によって前記台車の相対変位を規制し、
前記台車の停止時には、前記変位規制装置による前記台車の相対変位の規制を解除して、各台車ごとに停止位置の制御を行う台車制御方法。
【請求項7】
前記台車の走行時には、隣接する台車連結装置のうちの一方では隣接する前記台車間の間隔を荷役時の間隔よりも大きくとった状態で前記台車の相対変位を規制し、他方では隣接する前記台車間の間隔を前記荷役時の間隔よりも小さくした状態で前記台車の相対変位を規制する請求項6記載の台車制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−94223(P2008−94223A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277486(P2006−277486)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)