説明

合成ラテックス組成物

非汚染性手袋、コンドーム、指サック及び風船等の非汚染性浸漬ゴム物品を製造するための合成ラテックス配合組成物であって、合成カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムまたは合成カルボキシル化ブタジエン共重合体ゴムを含み、いかなる硫黄または硫黄含有薬品または促進剤を含まない合成ラッテクス配合組成物を提供する。該ゴム物品をI型及びIV型アレルゲン類のないものとするとともに、銅汚染または他の重金属汚染のないものとする多価金属化学薬品類のみを含む単独架橋系を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は非汚染性手袋、コンドーム、指サック(finger cot)及び風船等の非汚染性浸漬ゴム物品の製造に適したものとして識別される新規な種類の合ラテックス組成物に関する。更に詳しくは、本発明は非汚染性ゴム手袋を製造するための架橋用に多価金属化学薬品 (類) のみを含有する合成カルボキシル化(carboxylated)ブタジエン共重合体ラテックスを用いる合成ラテックス組成物に関する。汚れは通常茶色であって普通の合成及び天然ゴムの手袋を僅か数分間はめただけで通常観察される。また、本明細書に記載されている組成物は該ゴム物品を一部の個人に通常アレルギー応答をもたらす公知のアレルゲン類のないものとする。 適用しうる合成エラストマーラテックス類としては、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンラテックス、カルボキシル化アクリルブタジエンラテックス、カルボキシル化スチレンブタジエンラテックス、カルボキシル化クロロブタジエンラテックス及び他のブタジエン共重合体カルボキシル化ラテックス等の合成カルボキシル化重合体ラテックス類があり、これらは硫黄、硫黄含有促進剤、ホルムアルデヒドまたは不飽和架橋性単量体類を用いず多価金属化学薬品のみを用いて架橋できる。
【0002】
背景技術
過去20年間にわたり、高度に感染性で危険な伝染病から個人を保護するための必要からゴム手袋の使用は莫大な数に増加している。しかし、このゴム手袋の使用の増加と共に、市場はこのような手袋をはめるとき或いは手袋と接触するときの生理的で審美的な不向きないくつかの反応に気づくようになった。その生理的諸反応はゴム類またゴム配合の化学薬品構成成分類に対するアレルギー反応によるものである。最も広く世間に知られたアレルギー反応は、感作した個人が天然ゴムラテックス中に存在し、反応の激しい場合には、アナフィラキシーショックに至りうるラテックス蛋白アレルゲン類と接触して起こるものである。これはI型アレルギーとして知られている。製造業者がラテックスゴム製品類及びそれらを加工する機械との交叉汚染がないことを保証する予防策を講じるという条件で、この問題は蛋白アレルゲン類のない合成手袋に対して市場が成長する結果をもたらせた。
【0003】
第二のより一般的なアレルギー反応であるIV型はゴム中の化学薬品類による接触反応で、皮膚炎等の不快な皮膚反応を起こす。他の審美的な問題である“銅汚染”は全ての従来の硫黄架橋天然及び合成ゴムに関して非常に一般的である。それは手袋上に汚されたものとみられる茶色の汚れが徐々に現れることにより明らかとなる。
【0004】
多価金属酸化物類、多価金属水酸化物類、多価金属(有機及び無機)塩類及び多価金属錯体類を用いてカルボキシル化合成重合体中に架橋を生成する能力は十分に確立されている。該架橋は該多価金属陽イオンと弾性重合体鎖の化学構造の部分として存在する2種以上のカルボキシル陰イオンとの反応によって起こる。
【0005】
合衆国特許2,662,874号はカルボキシル含有重合体類の製造を記載しており、該重合体類は、次いで亜鉛、マグネシウム、カルシウム、カドミウム、チタン、アルミニウム、バリウム、ストロンチウム、銅、コバルト、錫、鉄、鉛及び他の金属の酸化物等の多価金属酸化物類とともに固体カルボキシル化重合体を微粉砕することにより架橋させて乾式ゴム配合物類を製造している。この特許は本質的に水和酸化物である多価金属水酸化物に関して同類の結果を報告している。
【0006】
英国特許第785,631号は反応性基を有する弾性重合体からの成形品の製造方法を開示している。この反応性重合体の群には、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸鉄 (II)、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、酢酸クロム、クロムミョウバン、酢酸銅及びアルミニウム塩類等の多価金属の水溶性塩類または水酸化物類と反応することができるカルボキシル基、カルボニル基、スルホン酸基、アミドまたは塩基性基を含む重合体類が含まれる。該方法は該反応性重合体を多価金属の水溶性塩または水酸化物を含む凝固剤浴に導入し、その後、凝固生成物から物品を成形することまたは押し出すことを含む。
【0007】
英国特許第862,372号はホルムアルデヒドの存在下で亜鉛、マグネシウム及びカドミウムの酸化物類、水酸化物類および炭酸塩類の架橋剤を利用できるカルボキシル含有エラストマーの水性分散液類の発明を開示している。このような組成物は手袋等の物品用の亀裂の入らないフィルム類の製造に適していると言われており、ホルムアルデヒドの存在が必要であった。
【0008】
合衆国特許3,403,136号は多価金属酸化物類をその対応する過酸化物類と組み合わせて含む固体カルボキシル弾性体用の重合体の前架橋を防ぐ架橋系の使用を記載している。好ましい過酸化物類及び酸化物類は周期律表の第II族のもので、特に亜鉛、カルシウム及びマグネシウムのものである。この特許は乾性ゴム配合物類に関する。
【0009】
合衆国特許第3,976,723号はカルボキシル含有アクリル重合体を固体の形で架橋前に粉砕機または密閉式ミキサー中で多価金属酸化物と混合する方法を記載している。該多価金属酸化物類は亜鉛、マグネシウム、カドミウム、カルシウム、チタン、アルミニウム、バリウム、ストロンチウム、銅、コバルト、錫及び他の金属の酸化物類を、多価金属水酸化物類と同様に含む。
【0010】
特開昭61-278546号は発泡ゴム用のカルボキシル化クロロプレンゴムラテックスの架橋に亜鉛またはマグネシウム金属酸化物類または水酸化物類を用いることを記載している。
合衆国特許第4,525,517号は改良されたスコーチ耐性を有する加硫性乾性ゴム組成物を製造するために、一種以上の多価金属酸化物類と一種以上の炭素数12乃至18のアルカン酸のアルカリ金属塩 (リチウム、ナトリウムまたはカリウム塩) を用いて固体カルボキシル化ニトリルゴムと微粉砕することを記載している。
【0011】
合衆国特許第5,014,362号は手に与える圧力を減少するような初期延伸後に緩和することのできる手袋を製造するための弾性材料を記載している。カルボキシル化ニトリルブタジエンゴムを含み、また金属化合物、好ましくは鉛、マグネシウム及び亜鉛の酸化物類を含むその好ましい材料を記載している。好ましい酸化物はニトリルブタジエンゴム100部 (phr) につき 0.1乃至 0.5部の濃度で請求されている酸化亜鉛である。本特許の例示配合はまたより高い濃度の硫黄 (1.0 phr) 及びジブチルジチオカルバミン酸亜鉛 (1.0 phr) を含んでいる。
【0012】
商業的に入手可能なカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンラテックス(ニトリルラテックス)の全ての製造業者はこれらの材料で機能すると言われている二つの架橋機作を記載している。一つの機作は硫黄による該重合体の分子のジエン部分間の架橋で、他の架橋は該ニトリル重合体中のカルボキシル基と金属酸化物との反応で形成されたイオン結合によるものである。結果として、ニトリルラテックスの全ての製造業者は酸化亜鉛とともに硫黄とチオ促進剤の双方を含む指針配合物を提供している。
【0013】
発明の概要
よって、合成ラテックスの製造方法が提供され、該製造方法は、(a) 多価金属化学薬品またはその混合物を表面活性剤で安定化された合成カルボキシル化ラテックスまたは他の合成ラテックスとのブレンドへ添加して合成ラテックス配合物を形成する工程、(b) 該合成ラテックス配合物を攪拌する工程、(c) 工程 (b) で得た該合成ラテックス配合物を希釈して所定の全固形分 (TSC) とする工程及び (d) 工程 (c) で得た該合成ラテックス配合物を0乃至80℃の温度に維持する工程を含む。
【0014】
また、(a) 多価金属化学薬品またはその混合物を表面活性剤で安定化された合成カルボキシル化ラテックスまたは他の非カルボキシル化ラテックスまたはラテックス類とのブレンドへ添加して合成ラテックス配合物を形成する工程、(b) 該合成ラテックス配合物を攪拌する工程、(c) 工程 (b) で得た該合成ラテックス配合物を希釈して所定の全固形分 (TSC) とする工程及び (d) 工程 (c) で得た該合成ラテックス配合物を0乃至80℃の温度に維持する工程を含む方法から得た合成ラテックス配合物も提供される。
【0015】
また、有効量の合成カルボキシル化ブタジエン共重合体ラテックス及びその単独の架橋剤として有効量の多価金属化学薬品またはその混合物を含む組成物から作製された非汚染性手袋、コンドーム、指サックまたは風船等の非汚染性浸漬ゴム製品類が提供される。
【0016】
そして、有効量の合成重合体ラテックスまたはラテックス類、有効量の合成カルボキシル化ブタジエン共重合体ラテックス及び単独の架橋剤として有効量の多価金属化学薬品を含む組成物から作製された手袋、コンドーム、指サックまたは風船等の非汚染性ゴム製品等の非汚染性の浸漬ゴム製品類も提供される。
【0017】
本発明はいくつかの新規な特徴と以下に十分に記載され、添付図面に示され、特に添付された特許請求の範囲で指摘された部分との組み合わせからなり、本発明の範囲から外れることなく或いは本発明のいかなる利点をも犠牲にすることなく詳細における種々の変更がなされ得ることが理解されるであろう。
【0018】
本発明の理解を容易にするために、その好ましい態様を添付の図面に示し、それをみれば、以下の記載と関連させて考慮した場合、本発明、その構成、操作及びその多くの利点は容易に理解され評価されるであろう。
【0019】
好ましい態様の詳細な記述
本発明は非汚染性手袋、コンドーム、指サック及び風船等の非汚染性浸漬ゴム物品を合成ラテックスから製造する方法及びそれらを製造するためのラテックス組成物に関する。
更に詳しくは、本発明は、合成弾性体組成物類から作製された、典型的な合成及び天然ゴム手袋を数分という短い時間はめただけで通常見られる共通の問題である見苦しい茶色の汚れのない非汚染性手袋を製造する方法及び非汚染性手袋、コンドーム、指サック及び風船等の非汚染性ゴム物品を製造するための新規な合成ラテックス組成物に関する。
【0020】
以下で、本明細書は好ましい態様により、そして添付図面を参照して、非汚染性手袋を合成カルボキシル化ラテックス配合物から製造する方法及び該ラテックス配合物を記載する。しかし、該記載を手袋と本発明の好ましい態様へ限定し、そして添付図面に示したものは単に本発明の論述を容易にするためであると理解されるべきであり、そして当業者であれば添付特許請求の範囲から離れないで種々の改造及び相当物が工夫できると予想される。
【0021】
以下に記載されている本発明は上記の問題点の全てとはいかないまでもいくつかは含まない非汚染性手袋の製造工程を記載する。該手袋は、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンラテックス、カルボキシル化アクリルブタジエンラテックス、カルボキシル化クロロプレンラテックス及び他のカルボキシル化合成重合体類を含むブタジエンのカルボキシル化合成共重合体から製造することができる。好ましい合成ラテックスはカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンラテックスであり、本発明者等は商業的に入手可能な殆どのニトリルラテックス類を評価した。本技術が全てに適用可能なことを本発明者等は確立したがその評価は、全てのニトリルラテックス類はたとえアクリロニトリル/ブタジエン/カルボン酸濃度が類似の濃度を有するものであっても、同一の配合で著しく異なる物理的性質を示しうることを示した。
【0022】
用いる単独の架橋機作は多価金属イオンと該エラストマーのカルボキシル基との間のイオン結合を利用するものである。好ましい多価金属イオン源は酸化亜鉛、炭酸亜鉛及び炭酸カルシウムまたはこれらの任意の組み合わせであるが、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、カルシウム、マグネシウムまたはアルミニウムの水酸化物及びアルミン酸塩類等の他のイオン源が十分な架橋を与えるために効果があることを本発明者等は確立した。酸化亜鉛の場合、0.6乃至2.5 phrの濃度が十分な架橋を与えることができ、医療用手袋に使用するための物理的要件を満たす。酸化亜鉛と超微粒の炭酸カルシウム等の多価金属炭酸塩との相乗的組み合わせを利用する配合が現在の厳しい基準を容易に満たす手袋の製造を可能とすることを更に確立した。
【0023】
この技術を利用する手袋の製造に採用される方法は、普通0.1乃至0.2 mmの厚さの裏なし (独立)手袋の現在の製造に用いられる典型的な方法である。ラテックス配合物は、従来のラテックス配合混合槽中で予備分散した酸化亜鉛または他の多価金属源を表面活性剤で安定化されたニトリルラテックス等の合成カルボキシル化ラテックスへ添加することにより製造される。該ラテックスは通常数時間攪拌され、次いで特定の手袋浸漬ラインに必要な通常の全固形分へ希釈される。この通常の全固形分は25乃至35%の範囲にあり、そして該ラテックスは約25℃の温度に維持される。
【0024】
用いる浸漬工程は凝固剤浸漬法のそれであり、通常用いられる凝固剤は10%乃至30%の濃度の硝酸カルシウム、塩化カルシウムまたは両者の混合物の水溶液または水/アルコール溶液である。工程要件にもよるが、(粉末不含凝固剤の場合)適当な離型添加剤と適当な湿潤剤が使用されるが、粉末ふりかけ(powdered)手袋には粉末凝固剤を用いる。凝固剤中に浸漬後、手袋型を70乃至100℃の範囲の温度で乾燥させ、次いで約50℃へ冷却する。次に該型をラテックス配合物中に浸漬し、そして部分乾燥後にラテックス被覆手袋型を約45℃の水中で浸出(leached)する。得られた手袋は次に異なる方法で更に加工することができ、そして三つの実施例を記載する。
【0025】
生産ライン (オンライン) 重合体を被覆した手袋の場合、型上の手袋を次に選択された重合体分散液中に浸漬し、そしてビードを付ける (beading)。次に該型を硬化/乾燥オーブンに入れ、そこで被膜を40分間まで100乃至120℃の温度に付す。続いて約70℃で水中で浸出し、約100℃で乾燥させ、最後に型から該重合体被覆手袋を剥ぎ取る前に冷却する。オンラインで塩素化する場合、該前硬化浸出後に手袋にビードを付け、次いで上記にように硬化させる。これにオンラインでの塩素化工程が続き、浸出、乾燥及び剥ぎ取りの前の最終冷却が続く。
【0026】
第3の選択は粉末凝固剤方式を利用するもので、硬化後の粉末スラリーが続き、次いで粉末不含手袋用の塩素化によるか或いは適当な粘着防止工程により生産ライン外 (オフライン) で手袋を処理する。粉末ふりかけ手袋が要求されるならば、いかなるオフラインの加工も必要としない。
【0027】
以下に記載されているように、本発明は非汚染性で医療用手袋に要求される引張特性を所有する手袋等の物品を製造するための、合成カルボキシル化ブタジエン共重合体系エラストマー類の架橋用の単一系として多価金属化学薬品のみを用いる簡単な配合類の開発に関する。アメリカ試験材料規格 (ASTM) 及びドイツ規格 (EN) 等の種々の世界的な規格機構の引張物性を満足させる手袋等のゴム製品類を製造するために、硫黄及び硫黄含有促進剤を多価金属化学薬品と組み合わせて合成カルボキシル化ブタジエン共重合体系エラストマー類と配合することが必須であると普通に考えられている。
【0028】
また、本発明に記載する配合は、非汚染性ゴム製品を作製するために利用されるいかなる架橋性単量体類をも含んでいない。言及されている汚れは典型的な合成及び天然ゴム手袋を数分という短い時間はめていると通常容易に観察される。これは、身に着けた人の手が硬貨、鍵、取っ手等の物体に触れるとき、促進剤として用いられている硫黄含有化学薬品と銅、銀、鉛及びニッケル等の金属または他の反応性金属との間の反応によるものである。
【0029】
前記ラテックス配合物は従来のラテックス配合混合槽中で製造される。該多価金属化学薬品または化学薬品類は水性分散溶液または水溶液として通常液体の形で攪拌混合槽中の界面活性剤で安定化された合成カルボキシル化ラテックスへ添加される。pH調節のためのアルカリ及び所望の色のための顔料等の他の材料が通常添加される。次いで該ラテックス配合物は通常脱塩水で希釈されて所望の全固形分 (TSC) に達し、そして該攪拌された配合物は80℃までの温度或いは0℃の低温も用いることができるが、通常20乃至30℃の範囲の温度に維持される。完全な脱気を容易にするために低速度での攪拌後、該ラテックス配合物は浸漬ゴム製品用の従来の浸漬機の上のラテックス浸漬槽へ移される。
【0030】
第1図は商業的に入手可能なカルボキシル化ニトリルラテックスを用いる手袋の引張特性に対する酸化亜鉛の濃度の影響を示す。酸化亜鉛の濃度が増すにつれて、300%モジュラスの増加及び切断時伸びの着実な減少(各曲線の端部として示されている)とともに引張強さが着実に増加していることを第1図は明らかに示している。
【0031】
第2図は数種の同一基本配合を使用する異なる製造業者から商業的に入手可能なカルボキシル化ニトリルラテックスを用いたときに得られた異なる物理的特性を示す。しかし、先に述べたように、各種の合成カルボキシル化ラテックス用の配合を調節することにより所要の物理的特性を得ることが可能である。
【0032】
第3図は浸漬ゴム物品、特にゴム手袋の製造用の典型的な製造工程を示す。この方法は:
(a) ゴム型を機械的ブラシ掛けと組み合わせて清浄用流体中に浸漬して清浄する“型清浄”段階から始める工程;
(b) 該清浄型を70乃至100℃の範囲の温度でオーブン乾燥させる工程;
(c) 該型を50乃至70℃の範囲の温度へ冷却する工程;
(d) 該型を粉末凝固剤(経路1)また粉末不含凝固剤(経路2)に浸漬する工程であって、該凝固剤はカルシウム塩及び湿潤剤の水溶液または水/アルコール溶液と“離型剤”として粉末または粉末不含材料を含み;
(e) 該凝固剤被覆型を70乃至100℃の範囲の温度でオーブン乾燥させる工程;
(f) 該凝固剤被覆型を40乃至60℃の範囲の温度へ冷却する工程;
(g) 該凝固剤被覆型を20乃至30℃の範囲の温度に維持されたラテックス配合物中に浸漬する工程;
(h) 次いで該型上のラテックス配合物被覆を30乃至70℃の範囲の温度で部分的に乾燥させる工程;
(i) 該型上の部分的に乾燥した被膜を30乃至50℃の範囲の温度で水中または水溶液中で浸出する工程;
(j) 次いで該型上の浸出被膜を重合体分散液に浸漬する工程 (経路3) 或いは該重合体槽を迂回させる工程 (経路4);
(k) ゴム物品にビードを付ける (beaded) 工程;
(l) 次いで該型上のゴム物品を80乃至120℃の範囲の温度でオーブン硬化させる工程;
(m) 次いで該型上の硬化ゴム物品を水または水溶液を含む50乃至80℃の範囲の温度の後硬化浸出工程を通過させる工程(経路5)或いは;
(n) 生産ライン (オンライン) の塩素化工程を通過させる工程 (経路6);
(o) 後硬化浸出ゴム製品に対しては、それらを粉末スラリー中に浸漬させる工程 (経路7) 或いは経路3 として重合体被覆した工程 (j) からの手袋用のスラリーを迂回させる工程 (経路8);
(p) 次いで工程 (n) または工程 (o) からの該型上のゴム製品を80乃至100℃の範囲の温度で乾燥させる工程;及び
(q) 乾燥したゴム製品を該型から剥ぎ取る工程
を含む。
【0033】
上記の種々の流れ経路からのゴム物品類はゴム物品類の種々の相当物を作製するために用いることができる。ゴム手袋の場合、選択肢として、粉末ふりかけ手袋、オフライン塩素化手袋、オフライン不粘着加工手袋、外部粉末ふりかけ/内部重合体被覆手袋、オフライン塩素化/重合体被覆粉末不含手袋、オフライン加工重合体被覆粉末不含手袋、外部粉末ふりかけ/内部オンライン塩素化手袋、外部粉末不含/内部オンライン塩素化粉末手袋、オフライン塩素化/オンライン塩素化粉末不含手袋、オフライン不粘着/オンライン塩素化粉末不含手袋及び粉末不含重合体被覆手袋がある。
【0034】
粉末ふりかけ手袋用には、製造方法は工程図から経路1, 4 ,5及び7に従い、次いで手袋を乾燥、冷却および包装する。オフライン塩素化手袋用には、該粉末ふりかけ手袋をオフライン塩素化用装置で加工し、乾燥、冷却及び包装する。オフライン不粘着加工手袋用には、該粉末ふりかけ手袋を不粘着添加剤を用いる機械で加工し、乾燥、冷却及び包装する。外部粉末ふりかけ/内部重合体被覆手袋用には、製造方法は工程図から経路1, 3, 5及び8に従い、次いで手袋を乾燥、冷却および包装する。オフライン塩素化/重合体被覆粉末不含手袋用には、該外部粉末ふりかけ/内部重合体被覆手袋をオフライン塩素化用装置で加工し、乾燥、冷却及び包装する。オフライン加工重合体被覆粉末不含手袋用には、該外部粉末ふりかけ/内部重合体被覆手袋を不粘着添加剤を用いる機械で加工し、乾燥、冷却及び包装する。外部粉末ふりかけ/内部オンライン塩素化手袋用には、製造方法は工程図から経路1, 4及び6に従い、次いで手袋を乾燥、冷却および包装する。外部粉末不含/内部オンライン塩素化無粉末手袋用には、製造方法は工程図から経路2, 4及び6に従い、次いで手袋を乾燥、冷却および包装する。オフライン塩素化/オンライン塩素化粉末不含手袋用には、該外部粉末/内部オンライン塩素化手袋を手袋の外表面を塩素化するためにオフラインでの塩素化工程に付し、次いで該手袋を乾燥、冷却および包装する。オフライン不粘着/オンライン塩素化粉末不含手袋用には、該外部粉末ふりかけ/内部オンライン塩素化被覆手袋を不粘着添加剤を用いる機械で加工し、乾燥、冷却及び包装する。粉末不含重合体被覆手袋用には、製造方法は工程図から経路2, 3, 5及び8に従い、次いで手袋を乾燥、冷却および包装する。これらの手袋はまた表面特性を増強するためにオフラインで更に加工することができる。本明細書のために、一種の商業的に入手可能なカルボキシル化ニトリルラテックスを選択し、(表1に示すような) 配合へ配合し、そして加工して、18乃至20 MPaの切断時引張強さ、2.0 MPa未満の300%モジュラス及び750%を超える切断時伸びを有する公知のアレルゲン類及び汚れのない粉末不含ニトリル手袋を製造した。表2のデータに示すように、同フィルムは7日間70℃での熟成後のこれらの引張物性において最小の変化を示している。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
カルボキシル化ニトリルゴム等のフィルムの緩和特性にどのような要因が影響するかを理解するために、緩和特性に注意が向けられた。合衆国特許第5,014,362号は硫黄とジチオカルバミン酸と組み合わせた0.1乃至0.5 phrの濃度の酸化亜鉛を用いるカルボキシル化ニトリルラテックスで製造した手袋が特定の緩和特性を所有するフィルムを与える発明を記載している。この発明はこのような配合が100%の初期延伸後、100%の伸度を保ちながら6分後には応力が元の応力の10%未満に低下する加工フィルムとなることを請求している。
【0038】
本発明者等は2.5 phrまでの濃度の酸化亜鉛を含む配合について異なる供給元からのニトリルラテックスを用いて評価を行ない、そして全ての配合が緩和特性として6分後の100%伸度において元の応力の10%未満を保持していた。これに加えて、凝固剤系の多価金属カルシウムイオンによるいかなる架橋をも避けるために、多価金属化学薬品、硫黄加硫化学薬品等の架橋剤または反応性単量体類の不存在下で、多回数“直接浸漬”により浸漬したいくつかの異なるニトリルラテックスフィルムについて緩和の研究を行った。これらのフィルムを100%延伸に付し緩和特性を測定し、そしてその緩和特性もまた上記のものと同様であるあることを見出した。新規な商業用カルボキシル化ニトリルラテックスは0.5 phrの酸化亜鉛、1.0 phrのジブチルジチオカルバミン酸亜鉛及び1.0 phrの硫黄を有する従来の硬化配合を用いて配合可能であることを見出した。この後者の材料は同様に緩和しないが天然ゴムの緩和特性と他のニトリルゴムラテックスの緩和特性との中間の緩和特性を現した。
【0039】
これらの研究から、カルボキシル化ニトリルラテックスに浸漬したフィルムの緩和特性は該ニトリルラテックス配合物の配合というよりはむしろ任意の個別のラテックス固有の性質であるように見えると結論付けられる。
【0040】
以下は配合例と工程条件の実施例であるが限定的な意図はない。
実施例1
カルボキシル化ニトリルラテックスを下記の表3に記述した種々の添加剤と配合した。
【0041】
【表3】

【0042】
上記配合を一晩緩やかに攪拌し、そして全固形分を30%に調整した。型を妥当な清浄薬品類を用いて生産ライン (オンライン) で清浄にし、水洗槽を通した後、約80℃でオーブン乾燥した。次いで該型を25%の硝酸カルシウムとステアリン酸塩系離型剤を含む凝固剤中に浸漬した。次いで凝固剤被覆型を70℃乃至100℃の範囲の温度で乾燥し、続いて50℃へ冷却した。この凝固剤被覆型を次に該ラテックス配合物中に滞留時間10秒で浸漬した。ラテックス配合物被覆型を次に60℃でゲル化用オーブン中を通し、続いて45℃で2分間水中で浸出し、そしてビードを付けた。次に型上の手袋を120℃までの温度で30分間オーブンで硬化/乾燥させた。出現する手袋を水浴中で冷却し、それからオンライン塩素化工程に入れ、続けて最終乾燥し、冷却し、そして剥ぎ取った。表4はこの方法からの手袋の典型的な物性を示す。
【0043】
【表4】

【0044】
実施例2
カルボキシル化アクリルブタジエン共重合体ラテックスを下記の表5に記述した種々の添加剤と配合した。
【0045】
【表5】

【0046】
上記配合を一晩緩やかに攪拌し、そしてその全固形分を30%に調整した。型を妥当な清浄薬品類を用いてオンラインで清浄にし、水洗槽を通した後、約80℃でオーブン乾燥した。次いで該型を25%の硝酸カルシウムとステアリン酸塩系離型剤を含む凝固剤中に約55℃で浸漬した。冷却後、該凝固剤被覆型を該ラテックス配合物中に滞留時間10秒で浸漬した。ラテックス配合物被覆型を次に60℃でゲル化用オーブン中を通し、続いて45℃で2分間水中で浸出し、そして次にビードを付けた。型上の手袋を次に120℃までの温度で30分間オーブンで硬化/乾燥させた。出現する型上の手袋を水浴中で冷却し、それからオンライン塩素化工程に入れ、続けて最終乾燥し、冷却し、そして剥ぎ取った。表6はこの方法からの手袋の典型的な物性を示す。
【0047】
【表6】

【0048】
実施例3
カルボキシル化ニトリルラテックスと合成クロロプレンラテックスとのブレンドを下記の表7に記述した種々の添加剤と配合した。
【0049】
【表7】

【0050】
上記配合を一晩緩やかに攪拌し、そしてその全固形分を30%に調整した。型を妥当な清浄薬品類を用いてオンラインで清浄にし、水洗槽を通した後、約80℃でオーブン乾燥した。該型を25%の硝酸カルシウムとステアリン酸塩系離型剤を含む凝固剤中に55℃で浸漬した。冷却後、凝固剤被覆型を該ラテックス配合物中に滞留時間10秒で浸漬した。ラテックス配合物被覆型を次に60℃でゲル化用オーブン中を通し、続いて45℃で2分間水中で浸出し、そして次にビードを付けた。型上の手袋を次に120℃までの温度で30分間オーブンで硬化/乾燥させた。出現する型上の手袋を水浴中で冷却し、それからオンライン塩素化工程に入れ、続けて最終乾燥し、冷却し、そして剥ぎ取った。表8はこの方法からの手袋の典型的な物性を示す。
【0051】
【表8】

【0052】
非汚染特性を示すための試験は、手袋を10%の硫酸銅水溶液、10%の硝酸銀水溶液及び10%の硝酸鉛水溶液で各々湿潤剤を含むものに2時間を超えて浸漬させることにより行った。いかなる色の汚れも観察されなかった。また、銅で汚染されていた手に手袋をはめてみても汚れは観察されなかった。
【0053】
上述の明細書において、本発明をそのいくつかの好ましい態様の関係で記載し、そして説明のために多くの詳細を示しているが、本発明は付加的な態様があり得ることと、そして明細書に記載された詳細のいくつかは本発明の基本的原則からはなれないでかなり変更され得ることは当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1図は商業的に入手可能なカルボキシル化ニトリルラテックスを用いた手袋の引張特性に対する酸化亜鉛の濃度の影響を示す。
【図2】第2図は数種の同一基本配合を使用する異なる製造業者から商業的に入手可能なカルボキシル化ニトリルラテックス類を用いたときに得られた異なる物理的特性を示す。
【図3】第3図は工程図であって手袋等の浸漬ゴム物品の製造用の典型的な製造工程を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ラテックス配合物の製造方法であって、(a) 多価金属化学薬品またはその混合物を界面活性剤で安定化された合成カルボキシル化ラテックスまたは他の合成ラテックスとのブレンドへ添加して合成ラテックス配合物を形成する工程;(b) 該合成ラテックス配合物を攪拌する工程;(c) 工程 (b) で得た該合成ラテックス配合物を所定の全固形分に希釈する工程;及び (d) 工程 (c) で得た該合成ラテックス配合物を0乃至80℃の温度に維持する工程を含む方法。
【請求項2】
該多価金属化学薬品が酸化亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、カルシウム、マグネシウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルミン酸塩またはそれらの任意の組み合わせであってもよい、請求項1の方法。
【請求項3】
該合成カルボキシル化ラテックスが合成カルボキシル化ブタジエン共重合体ラテックス、合成カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンラテックス、合成カルボキシル化スチレンブタジエンラテックス、合成カルボキシル化塩素化ブタジエン共重合体ラテックスまたはこれらのラテックス類の任意のブレンドである、請求項1の方法。
【請求項4】
該合成カルボキシル化ラテックス配合物が合成カルボキシル化ニトリルラテックスである、請求項1の方法。
【請求項5】
(a) 多価金属化学薬品またはその混合物を界面活性剤で安定化された合成カルボキシル化ラテックス或いは他の合成カルボキシル化または非カルボキシル化ラテックスまたはラテックス類とのブレンドへ添加して合成ラテックス配合物を形成する工程;(b) 該合成ラテックス配合物を攪拌する工程;(c) 工程 (b) で得た該合成ラテックス配合物を所定の全固形分に希釈する工程;及び (d) 工程 (c) で得た該合成ラテックス配合物を0乃至80℃の温度に維持する工程を含む方法から得た合成ラテックス配合物。
【請求項6】
該多価金属化学薬品が酸化亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、カルシウム、マグネシウムまたはアルミニウムの水酸化物またはアルミン酸塩或いはその任意の組み合わせであってもよい、請求項5の合成ラテックス配合物。
【請求項7】
該合成ラテックス配合物がニトリルラテックスである、請求項5の合成ラテックス配合物。
【請求項8】
有効量の合成カルボキシル化ブタジエン共重合体ラテックス及びその単独の架橋剤として有効量の多価金属化学薬品またはその混合物を含有する組成物から作製された非汚染性手袋、コンドーム、指サックまたは風船等の非汚染性ゴム製品。
【請求項9】
有効量の合成重合体ラテックスまたはラテックス類、有効量の合成カルボキシル化ブタジエン共重合体ラテックス及びその単独の架橋剤として有効量の多価金属化学薬品を含有する組成物から作製された非汚染性手袋、コンドーム、指サックまたは風船等の非汚染性ゴム製品。
【請求項10】
該ゴム製品がいかなる硫黄及び/または硫黄含有化学薬品をも含まない、請求項8または9の非汚染性ゴム製品。
【請求項11】
該合成カルボキシル化ブタジエン共重合体ラテックスがカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンラテックスである、請求項8または9の非汚染性ゴム製品。
【請求項12】
該多価金属化学薬品が亜鉛、マグネシウム、カルシウムまたはアルミニウムの酸化物のいずれかまたは組み合わせから選択される、請求項8または9の非汚染性ゴム製品。
【請求項13】
亜鉛、マグネシウム、カルシウムまたはアルミニウムのカルボン酸塩が該酸化物類と組み合わされる、請求項12の非汚染性ゴム製品。
【請求項14】
該酸化亜鉛の濃度が0.6 phr以上である、請求項8または9の非汚染性ゴム製品。
【請求項15】
該ゴム製品がゴム促進剤を含まない、請求項8または9の非汚染性ゴム製品。
【請求項16】
該ゴム製品がI型及びIV型のラテックスアレルゲン類を含まない、請求項8または9の非汚染性ゴム製品。
【請求項17】
該ゴム製品が銅、銀、鉄、鉛またはこれらの金属の化学薬品類で汚染された皮膚または他の表面類と接触したとき、汚れない、請求項8または9の非汚染性ゴム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−505657(P2006−505657A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550549(P2004−550549)
【出願日】平成15年10月13日(2003.10.13)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001350
【国際公開番号】WO2004/044037
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505171724)ダブリューアールピー・アジア・パシフィック・センディリアン・ブラハッド (1)
【Fターム(参考)】