説明

合成樹脂粒子の製造方法及び合成樹脂粒子

【課題】 本発明は、残存モノマー量の少ない合成樹脂粒子を効率よく且つ容易に製造することができる合成樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の合成樹脂粒子の製造方法は、合成樹脂粒子のウエットケーキを洗浄する洗浄工程と、乾燥機の容器内にて撹拌羽根をその外周端の周速度が3〜20m/秒となるように回転させながら加熱手段に所定温度T1の加熱媒体を流通させてウエットケーキを乾燥させてウエットケーキの水分量が0.2〜5.0重量%となるまで一次乾燥させる一次乾燥工程と、乾燥機の容器内にて撹拌羽根をその外周端の周速度が3〜20m/秒となるように回転させながら加熱手段に所定温度T2の加熱媒体を流通させてウエットケーキを二次乾燥させ、合成樹脂粒子の温度と、加熱手段に流通させている加熱媒体の温度T2との差が2℃となった時点にて二次乾燥を終了する二次乾燥工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未反応の残存モノマー量及び水分量が少なく且つ凝集した合成樹脂粒子の殆どない合成樹脂粒子の製造方法及びこの合成樹脂粒子の製造方法で製造された合成樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂粒子は多様な用途に用いられており、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、化粧品の滑り性付与剤、トナー、塗料用艶消し剤、プラスチックフィルムのアンチブロッキング剤などに用いられている。
【0003】
この合成樹脂粒子は、モノマーを水系分散媒体中にて懸濁重合することによって製造されているが、得られる合成樹脂粒子には、通常、1重量%程度の未反応の残存モノマーが含有されている。
【0004】
そして、この残存モノマーが原因となって、合成樹脂粒子が着色して物性が低下し、或いは、合成樹脂粒子を化粧品用途や食品包装材料に用いた場合には、化粧品や食品に臭気が移ることがあるといった問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、着色剤含有重合体粒子を容器内に入れ、容器内を減圧し、容器周囲又は容器内に取り付けられた発熱体部分の温度を20〜80℃にし、発生する揮発成分を凝縮除去し、更に、容器内に気体を圧入し、着色剤含有重合体粒子の品温が50℃以下になるように乾燥し、得られた着色剤含有重合体粒子に外添剤を付着又は埋設するトナーの製造方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、合成樹脂粒子の乾燥温度を高くすると、合成樹脂粒子の凝集が発生することから、低い温度にて合成樹脂粒子の乾燥を行っており、合成樹脂粒子の乾燥時間に長時間を要するといった問題点があった。
【0007】
しかも、乾燥時間に長時間を要しているにもかかわらず、得られる合成樹脂粒子中に残存するモノマーの量が100ppmと多量に残っており、時間を要する割には合成樹脂粒子中に残存するモノマー量が多いといった問題点があった。
【0008】
また、特許文献2には、合成樹脂粒子を水系分散媒体中に分散させてなる懸濁液を脱水して得られたウエットケーキを洗浄した上で攪拌しながら、乾燥温度を60〜90℃に設定してウエットケーキを乾燥させて該ウエットケーキの水分量が0.2〜5.0重量%となるまで一次乾燥させた後、乾燥温度を100〜140℃に設定して1〜7kPaの減圧下にて合成樹脂粒子の温度が乾燥温度よりも3℃以上低い温度となるように調整しながら二次乾燥させる合成樹脂粒子の製造方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、二次乾燥時に合成樹脂粒子の温度が乾燥温度よりも3℃以上低い温度となるように調整する必要があり、その調整が面倒であるという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3473667号公報
【特許文献2】特許第4423142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、残存モノマー量の少ない合成樹脂粒子を効率よく且つ容易に製造することができる合成樹脂粒子の製造方法及びこの合成樹脂粒子の製造方法で製造された合成樹脂粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の合成樹脂粒子の製造方法は、合成樹脂粒子を水系分散媒体中に分散させてなる懸濁液を脱水して得られたウエットケーキを洗浄する洗浄工程と、加熱手段が付帯された容器内に撹拌羽根が配設されてなる乾燥機の上記容器内にて上記撹拌羽根をその外周端の周速度が3〜20m/秒となるように回転させながら上記加熱手段に下記式1を満たす温度T1の加熱媒体を流通させて上記ウエットケーキを乾燥させて上記ウエットケーキの水分量が0.2〜5.0重量%となるまで一次乾燥させる一次乾燥工程と、上記乾燥機の容器内にて上記撹拌羽根をその外周端の周速度が3〜20m/秒となるように回転させながら上記加熱手段に下記式2を満たす温度T2の加熱媒体を流通させて上記ウエットケーキを二次乾燥させ、上記合成樹脂粒子の温度と、上記加熱手段に流通させている加熱媒体の温度T2との差が2℃となった時点にて二次乾燥を終了する二次乾燥工程とを含むことを特徴とする合成樹脂粒子の製造方法。
(合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/5)℃≦T
≦(樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/5)+40℃・・・式1
(合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/2)−20℃≦T2
≦(樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/2)℃ ・・・式2
【発明の効果】
【0013】
本発明の合成樹脂粒子の製造方法は、合成樹脂粒子を水系分散媒体中に分散させてなる懸濁液を脱水して得られたウエットケーキを洗浄する洗浄工程と、加熱手段が付帯された容器内に撹拌羽根が配設されてなる乾燥機の上記容器内にて上記撹拌羽根をその外周端の周速度が3〜20m/秒となるように回転させながら上記加熱手段に下記式1を満たす温度T1の加熱媒体を流通させて上記ウエットケーキを一次乾燥させて上記ウエットケーキの水分量が0.2〜5.0重量%となるまで乾燥させる一次乾燥工程と、上記乾燥機の容器内にて上記撹拌羽根をその外周端の周速度が3〜20m/秒となるように回転させながら上記加熱手段に下記式2を満たす温度T2の加熱媒体を流通させて上記ウエットケーキを二次乾燥させ、上記合成樹脂粒子の温度と、上記加熱手段に流通させている加熱媒体の温度T2との差が2℃となった時点にて二次乾燥を終了する二次乾燥工程とを含むことを特徴とし、第一、第二乾燥工程において、撹拌羽根をその外周端が所定の周速度で回転させて容器内のウエットケーキを充分に撹拌しつつ、所定温度を有する加熱媒体によってウエットケーキを加熱、乾燥しており、ウエットケーキ中の合成樹脂粒子が過度に加熱されることはない。
【0014】
従って、合成樹脂粒子が溶融することに起因した合成樹脂粒子の凝集を防止することができると共に、合成樹脂粒子を構成している合成樹脂が分解することによって低分子量化合物が生成し、この低分子量化合物がバインダーとなって合成樹脂粒子の凝集が生じることも防止することができる。
【0015】
そして、合成樹脂粒子を凝集させることなく全体的に均一に加熱、乾燥することができるので、ウエットケーキ中の水分の除去及び合成樹脂粒子中の残存モノマーの除去を効率良く短時間で行うことができる。
【0016】
更に、本発明の合成樹脂粒子の製造方法では、一次乾燥工程において、ウエットケーキの水分量が所定量となるまで所定条件下にて一次乾燥させており、合成樹脂粒子の凝集を防止しながら、合成樹脂粒子に含まれる残存モノマー及び水分のうち主に水分を効率良く除去することができる。
【0017】
そして、一次乾燥の後、水分含有量が0.2〜5.0重量%のウエットケーキを所定条件下にて加熱して二次乾燥させることによって、残存モノマーと残余の水分とを合成樹脂粒子の凝集を防止しながら短時間のうちに合成樹脂粒子から除去することができ、残存モノマー量の極めて少ない合成樹脂粒子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
先ず、本発明の合成樹脂粒子の製造方法に用いられる合成樹脂粒子の製造装置の一例を図面を参照しつつ説明する。合成樹脂粒子の製造装置Aにおける容器1は、図1に示したように、内部が中空な太鼓状に形成されていると共に左右外端面中央部に水平方向に外方に向かって突設した支持軸11、11を左右支持脚2、2に上下反転可能にして所定状態に固定可能に支持させている。
【0019】
そして、上記容器1内には、その上下方向の略中央部に濾過材12が水平方向に張設されている。なお、上記濾過材12としては、合成樹脂粒子が水系分散媒体中に分散してなる懸濁液から水系分散媒体を濾過分離することができれば、特に限定されず、例えば、多孔体、織布、不織布等の濾布、焼結金属からなる金網、合成樹脂からなる網などが挙げられる。
【0020】
更に、上記容器1の上端中央部には、後述するウエットケーキBの乾燥時にウエットケーキBを攪拌するための平板状の撹拌羽根13が二つ配設されている。これらの撹拌羽根13、13は、回転軸13aの外周面に外方における斜め下方に向かって傾斜させた状態にて一体的に設けられており、二つの撹拌羽根13、13は、回転軸13aの外周面における直径方向に対向した位置に一体的に設けられている。
【0021】
一方、上記濾過材12と上記撹拌羽根13との間における容器1の壁部14には、その周方向(水平方向)に所定間隔毎に洗浄ノズル15が容器1の壁部14内面から出没自在に配設されている。
【0022】
そして、上記撹拌羽根13と上記濾過材12との間における上記容器1の壁部14には、その内外方向に貫通する懸濁液供給口16が貫設されており、この懸濁液供給口16は気密的に開閉自在に閉止可能に構成されている。
【0023】
又、上記容器1の壁部14における濾過材12の上方部分、即ち、濾過材12上に堆積させたウエットケーキによって閉止されない部分には、その内外方向に貫通し且つ気密的に開閉自在に閉止可能な圧縮空気供給口17が貫設され、この圧縮空気供給口17には圧縮ポンプ(図示せず)が接続されており、この圧縮空気供給口17を通じて容器1内に圧縮空気を供給して上記容器1内を加圧状態にできるように構成されている。
【0024】
更に、上記容器1の壁部14における上端中央部から容器1の回転方向にずれた部分には、その内外方向に貫通する合成樹脂粒子の取出口18が貫設されており、この取出口18は気密的に開閉自在に閉止可能に形成されている。
【0025】
そして、上記容器1の壁部14における下端部には、その内外方向に貫通する複数の濾液排出口19が貫設されており、これら濾液排出口19は気密的に開閉自在に閉止可能に構成されている。
【0026】
加えて、上記容器1の壁部14下端部には、その内外方向に貫通する二つの給排気口20、20が貫設され、これら給排気口20、20には三方弁201 、201 を介して真空ポンプ202 が接続されており、三方弁201 、201 を操作して、給排気口20、20を真空ポンプ202 側に接続することによって容器1内を減圧状態とすることができる一方、給排気口20、20を外気側に接続することによって容器1内に空気を送り込んで、容器1内を大気圧とすることができるように構成されている。
【0027】
又、上記容器1の壁部14の上下部外面には、容器1内を加熱するための加熱手段として加熱部材21が一体的に付帯されており、上記加熱部材21内に加熱媒体を流通させることによって上記容器1内を加熱可能に構成している。加熱媒体は、温度調整器(図示せず)によって所定温度に調節された上で加熱部材21内に供給され、容器1内を加熱した上で加熱部材21外に排出される。なお、容器1及び加熱部材21を構成している材料は熱電導性に優れており、容器1内のウエットケーキは、加熱媒体の有する温度にて加熱されているとみなすことができる。なお、加熱媒体としては、特に限定されず、例えば、油、水などが挙げられる。
【0028】
加熱手段として加熱部材21の代わりに、撹拌羽根13内に加熱媒体を流通させる流通路を形成し、この流通路内に、温度調整器によって所定温度に調整された加熱媒体を流通させることにより容器1内を加熱するように構成してもよい。なお、撹拌羽根13を構成している材料は熱電導性に優れており、容器1内のウエットケーキは、加熱媒体の有する温度にて加熱されているとみなすことができる。
【0029】
更に、図1の状態において、撹拌羽根13先端の回転軌道のうち、最も低い位置にある回転軌道と同一高さか或いは若干高い位置に、容器1内の温度を測定するための温度計22が配設されている。なお、温度計22は、容器1の壁部14自体が持つ熱の影響は一切受けず、容器1内の温度を正確に測定できるように構成されている。又、上記容器1における濾過材12よりも上方の壁部14には、容器1内の圧力を測定するための圧力計23が配設されている。
【0030】
次に、上記合成樹脂粒子の製造装置Aを用いて合成樹脂粒子を製造する要領を説明する。先ず、上記合成樹脂粒子の製造装置Aの容器1をその撹拌羽根13が濾過材12の上方に位置し且つ濾過材12が水平状態となった位置で固定させる。
【0031】
そして、上記容器1の懸濁液供給口16及び濾液排出口19のみを開放状態とすると共にその他の開口部を全て閉止状態とし、更に、上記洗浄ノズル15を上記容器1の壁部14内面から没入させる。
【0032】
続いて、上記懸濁液供給口16を通じて上記容器1の濾過材12上に、合成樹脂粒子を水系分散媒体中に分散させてなる懸濁液を所定量だけ供給した上で上記懸濁液供給口16を気密的に閉止する。
【0033】
ここで、合成樹脂粒子を水系分散媒体中に分散させてなる懸濁液は、モノマーと重合開始剤とを含有するモノマー組成物をメチルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール、水などの水系分散媒体中で汎用の方法により懸濁重合することによって得ることができ、懸濁液中には未反応のモノマーが残存している。
【0034】
上記モノマーとしては、懸濁重合により重合可能なものであれば、特に限定されず、例えば、スチレン、p−スチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系モノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル系モノマー、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のN−アルキル置換アクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル系モノマー、ジニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー等が挙げられる。なお、モノマーは、単独で用いられても併用されてもよく、又、モノマー中に、物性を損なわない範囲内において、モノマーに分散或いは溶解可能な染料や顔料等の添加剤を添加してもよい。
【0035】
又、上記重合開始剤としては、上記モノマーに可溶なものであって懸濁重合に汎用されているものであれば、特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルペルオキシオクトエート等の過酸化物系重合開始剤、アゾビス−N,N−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤等が挙げられ、単独で用いられても併用されてもよい。
【0036】
そして、上記容器1の圧縮空気供給口17を開放した後、圧縮ポンプを作動させて上記圧縮空気供給口17を通じて容器1内に圧縮空気を供給して容器1の上方空間部内を加圧し、懸濁液を上方から加圧して濾過材12による懸濁液の濾過を促進させ、懸濁液から水系分散媒体を円滑に濾過、分離し、得られたウエットケーキBを濾過材12上に堆積させる一方、懸濁液から分離した水系分散媒体を容器1の濾液排出口19を通じて容器1外に排出する。
【0037】
次に、上記容器1の濾液排出口19からの水系分散媒体の排出が無くなったところで、上記容器1の壁部14内面から没入させていた洗浄ノズル15、15・・・を容器1内に突出させる。なお、この状態においても、容器1の圧縮空気供給口17を通じて圧縮ポンプにより容器1内に圧縮空気を供給している。
【0038】
そして、上記各洗浄ノズル15から洗浄液を容器1内に噴射してウエットケーキBを洗浄、脱水した後、上記洗浄ノズル15を容器1の壁部14内面から没入させる(洗浄工程)。しかる後、上記圧縮空気供給口17及び上記濾液排出口19を閉止し、続いて、図2に示したように、上記容器1をその支持軸11、11を中心にして上下反転させて、上記容器1をその撹拌羽根13が下端部に位置した状態に固定する。
【0039】
ウエットケーキCの洗浄の終点は、容器1から排出された排出液が、容器1内に供給した洗浄液と略同程度のpH、具体的には、pHが6〜7となり、且つ、容器1から排出された排出液と、容器1内に供給した洗浄液との間における導電率の差が100μS以下となった時点が目安である。又、洗浄液の容器1外への排出の終点は、容器1外に洗浄液の排出が停止し、ウエットケーキCの水分量が5〜40重量%となった時点を目安とする。
【0040】
ウエットケーキの水分量は下記の要領で測定される。先ず、ウエットケーキから一部を取り出して試料とする。この試料の重量W1を測定する。次に、試料を150℃にて20分間に亘って加熱して乾燥し、乾燥後の試料の重量W2を測定し、下記式に基づいて算出することができる。
ウエットケーキの水分量(重量%)=100×(W1−W2)/W1
【0041】
なお、洗浄液としては、特に限定されず、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコールなどのアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ミネラルスピリットなどの石油系溶剤などが挙げられ、水が好ましい。洗浄液は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0042】
続いて、容器1内の撹拌羽根13をその外周端13bの周速度が3〜20m/秒となるように回転させてウエットケーキBを攪拌してウエットケーキBを粉砕しながら、上記真空ポンプ202 により上記容器1の給排気口20、20を通じて容器1内を減圧し、加熱部材21内に式1を満たす温度Tを有する加熱媒体を流通させてウエットケーキBを一次乾燥させ、ウエットケーキB中に含有される残存モノマー及び水分を蒸発させて給排気口20、20を通じて容器1外に排出する。なお、加熱手段として撹拌羽根13内に加熱媒体の流通路を形成している場合には、式1を満たす温度Tを有する加熱媒体を撹拌羽根13の流通路内に供給、流通させる。
(合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/5)℃≦T
≦(樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/5)+40℃・・・式1
【0043】
又、加熱部材21或いは撹拌羽根13の流通路内に供給する加熱媒体の温度は、一定温度であっても、式1の範囲内において変動させてもよいが、一定温度に維持することが好ましい。
【0044】
撹拌羽根13の外周端の周速度は、遅いと、ウエットケーキの撹拌が不充分となり、合成樹脂粒子の凝集が発生し、速いと、容器内において合成樹脂粒子の飛散が大きくなり、ウエットケーキの乾燥が不均一となって合成樹脂粒子の凝集が生じるので、3〜20m/秒に限定され、3〜10m/秒が好ましい。
【0045】
加熱媒体の温度Tは、低いと、一次乾燥工程が長くなり、合成樹脂粒子の製造効率が低下する。一方、一次乾燥工程ではウエットケーキの水分量が高いために合成樹脂粒子同士が凝集している状態となっており、この状態でウエットケーキを高温にて乾燥させると合成樹脂粒子が凝集した状態でウエットケーキの水分が除去され、合成樹脂粒子の凝集が生じる。よって、式1を満たすように調整する必要がある。
(合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/5)℃≦T
≦(樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/5)+40℃・・・式1
【0046】
なお、本発明において、合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度は、熱重量測定装置(TGA)を用いて空気雰囲気中、10℃/分の昇温速度条件下にて合成樹脂粒子の重量減少挙動を測定し、合成樹脂粒子の重量が3%減少した時点における温度をいう。熱重量測定装置は、例えば、セイコーインスツル社から商品名「TG/DTA6200」にて市販されている装置を用いることができる。
【0047】
上述の条件下にてウエットケーキを撹拌しながら一次乾燥させることによって、合成樹脂粒子が凝集しないようにしながら、合成樹脂粒子中に含有されている水分及び残存モノマー、主に水分を効率よく除去することができる。
【0048】
又、一次乾燥時における容器1内の圧力は、一次乾燥の初期ではウエットケーキBから発生する水分の影響で真空ポンプ202による減圧にもかかわらず、容器1内を真空ポンプ202の能力に見合った減圧度とすることができないが、一次乾燥が進むにつれて、ウエットケーキBから発生する水分量が減少し、容器1内の減圧度が徐々に高くなる。そして、一次乾燥の終了時における容器1内の圧力が20kPa以下となるように一定の減圧力でもって、容器1内を真空ポンプ202によって減圧し、一次乾燥を終始、行うことが好ましい。
【0049】
そして、ウエットケーキBの一次乾燥は、このウエットケーキBの水分量が0.2〜5.0重量%となった時点で終了する。これは、ウエットケーキBの水分量が5.0重量%を超えた状態で後述する二次乾燥を行うと、合成樹脂粒子が凝集してしまうからであり、又、ウエットケーキBの水分量が0.2重量%を下回るまで一次乾燥を行っても時間を要するばかりか、かえって二次乾燥において合成樹脂粒子中の残存モノマー量を低減させることができないからである。
【0050】
上述のウエットケーキBの一次乾燥を終えた後、二次乾燥を行う(二次乾燥工程)。二次乾燥工程においては引き続き容器1内の撹拌羽根13をその外周端13bの周速度が3〜20m/秒となるように回転させてウエットケーキBを攪拌してウエットケーキBを粉砕しながら、上記真空ポンプ202 により上記容器1の給排気口20、20を通じて容器1内を減圧し、加熱部材21内に式2を満たす温度T2を有する加熱媒体を流通させて二次乾燥させ、ウエットケーキB中に含有される残存モノマー及び水分を蒸発させて給排気口20、20を通じて容器1外に排出する。なお、加熱手段として撹拌羽根13内に加熱媒体の流通路を形成している場合には、式2を満たす温度T2を有する加熱媒体を撹拌羽根13の流通路内に供給、流通させる。
(合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/2)−20℃≦T2
≦(樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/2)℃ ・・・式2
【0051】
撹拌羽根13の外周端の周速度は、遅いと、ウエットケーキの撹拌が不充分となり、合成樹脂粒子の凝集が発生し、速いと、容器内において合成樹脂粒子の飛散が大きくなり、ウエットケーキの乾燥が不均一となって合成樹脂粒子の凝集が生じるので、3〜20m/秒に限定され、3〜10m/秒が好ましい。
【0052】
加熱媒体の温度T2は、低いと、二次乾燥工程が長くなり、合成樹脂粒子の製造効率が低下し、更に、合成樹脂粒子中の残存モノマー量の低減が不充分となり、高いと、合成樹脂粒子の凝集が生じるので、式2を満たすように調整する必要がある。
(合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/2)−20℃≦T2
≦(樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/2)℃ ・・・式2
【0053】
又、加熱部材21或いは撹拌羽根13の流通路内に供給する加熱媒体の温度は、一定温度であっても、式2を満たす温度範囲内において変動させてもよいが、一定温度に維持することが好ましい。
【0054】
二次乾燥工程において、ウエットケーキに加熱媒体によって熱を加えてウエットケーキを乾燥させているが、ウエットケーキには水が含まれており、二次乾燥工程の初期では、水の蒸発潜熱の方がウエットケーキに加えられる熱エネルギーよりも大きいことから、ウエットケーキ(合成樹脂粒子)の温度はそれ程上昇しない。
【0055】
しかしながら、二次乾燥工程が進行してウエットケーキ中の水分が少なくなるにしたがって水の蒸発潜熱が徐々に減少してウエットケーキに加えられる熱エネルギーが相対的に徐々に大きくなり、合成樹脂粒子の温度も徐々に上昇し始める。そして、二次乾燥においては、上述のように、加熱媒体の温度が式2を満たすように設定しているので、合成樹脂粒子に加えられる熱エネルギーが水の蒸発潜熱を上回り、合成樹脂粒子の温度が加熱媒体の温度近くまで上昇する虞れがある。
【0056】
二次乾燥において、合成樹脂粒子の温度が加熱媒体の温度近くまで上昇すると、合成樹脂粒子の凝集が僅かながら発生することから、合成樹脂粒子の温度と加熱媒体の温度T2との差が2℃となった時点にて終了する。ここで、合成樹脂粒子の温度は、容器1の壁部14に配設した温度計22によって測定することができる。
【0057】
又、二次乾燥工程の終了時における容器1内の圧力は、低いと、攪拌羽根によるウエットケーキの攪拌中に合成樹脂粒子の飛散が多くなり、合成樹脂粒子の収率が低下することがあり、高いと、合成樹脂粒子の残存モノマー及び水分量の低減が不十分となることがあるので、1〜7kPaが好ましい。
【0058】
なお、上記では、一次乾燥と二次乾燥とを同一の容器1内において行った場合を説明したが、容器1内において上述の要領でウエットケーキの一次乾燥を行った後、一次乾燥後のウエットケーキを容器1の取出口18から排出して別の容器に供給し、該容器内にて上述の要領でウエットケーキの二次乾燥を行うようにしてもよい。このようにすることによって、別の容器にて二次乾燥を行っている間に、容器1内にて別のウエットケーキの一次乾燥を同時に行うことができるので合成樹脂粒子の製造効率を向上させることができる。
【0059】
次に、上記ウエットケーキBの二次乾燥が終了した後、上記容器1をその支持軸11、11を中心にして所定角度だけ回転させて、合成樹脂粒子の取出口18を容器1の下端に位置させ、しかる後、三方弁201 、201 を操作して、上記容器1の給排気口20、20を外気側に連通させて容器1内を大気圧まで復帰させ、続いて、上記容器1における合成樹脂粒子の取出口18を開放し、この取出口18を通じて容器1内の合成樹脂粒子を取り出し、残存モノマーの含有量が極めて少なく且つ凝集の殆どない合成樹脂粒子を得ることができる。
【0060】
そして、上述のようにして得られた合成樹脂粒子は、汎用の手段を用いて乾燥された後に必要に応じて分級されて種々の用途に用いられる。
【0061】
上記では、合成樹脂粒子の製造装置Aを用いて洗浄工程、一次乾燥工程及び二次乾燥工程を行った場合を説明したが、洗浄工程と、一次乾燥工程及び二次乾燥工程とを別々の装置を用いて行ってもよい。
【0062】
具体的には、遠心分離型濾過装置Dを用いて洗浄工程を行う。遠心分離型濾過装置Dは、図3に示したように、底面部30とこの底面部30の外周縁から上方に向かって一体的に設けられた周壁部31とを備えた容器3と、この容器3の内周面にその全面に亘って配設された濾布4とを備えている。なお、容器3の底面部30には、濾過後の樹脂粒子を容器3外に取り出すための開閉自在な排出口(図示せず)が形成されている。
【0063】
容器3の周壁部31にはその略全面に亘って多数の排水孔31a、31a・・・が内外周面間に亘って貫通されている。そして、容器3の周壁部31の内周面にはその全面に亘って排水孔31a、31a・・・を内側から塞ぐように濾布4が配設されている。なお、濾布4としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、綿などの繊維からなる織布、編布などが用いられる。
【0064】
そして、容器3内には、容器3を回転させることによって懸濁液から合成樹脂粒子を遠心分離することにより形成された合成樹脂粒子のウエットケーキCを掻取るための掻取板5が配設されている。この掻取板5は、上下方向に移動可能に配設されており、容器3を回転させつつ、掻取板5を上下方向に移動させながらウエットケーキCに接触させることによってウエットケーキCを内側から順次、掻取ることができるように構成されている。
【0065】
又、容器3には、水系分散媒体中に合成樹脂粒子を分散させてなる懸濁液を容器3内に供給するための懸濁液供給管6がその先端開口部を容器3内に位置させた状態に配設されている。
【0066】
次に、上記遠心分離型濾過装置Dを用いて懸濁液からウエットケーキを得、このウエットケーキを洗浄する要領について説明する。なお、懸濁液は上述と同様であるのでその説明を省略する。
【0067】
懸濁液を遠心分離型濾過装置Dの容器3内に懸濁液供給管6を通じて所定量供給する。しかる後、容器3を回転させて遠心分離を行い、懸濁液中の水系分散媒体を容器3の排水孔31aを通じて容器3外に排出し、容器3の周壁部31の内周面に配設した濾布4の内面にウエットケーキCを形成する。なお、濾過工程の終点は、容器3からの排水がなくなった時点とする。
【0068】
次に、容器3内に配設された濾布4の内面に形成されたウエットケーキCを洗浄するために、容器3を回転させながら、容器3内に洗浄液を供給してウエットケーキCを洗浄する。ウエットケーキCの洗浄の終点は、容器3から排出された排出液が、容器3内に供給した洗浄液と略同程度のpH、具体的には、pHが6〜7となり、且つ、容器3から排出された排出液と、容器3内に供給した洗浄液との間における導電率の差が100μS以下となった時点が目安である。
【0069】
次に、容器3内への洗浄液の供給を停止した後、容器3を継続して回転させることによってウエットケーキCに含まれている洗浄液を遠心分離して容器3外に排出する。なお、洗浄液の容器3外への排出の終点は、容器3外に洗浄液の排出が停止し、ウエットケーキCの水分量が5〜40重量%となった時点を目安とする。
【0070】
続いて、容器3を回転させながら掻取板5を上下方向に移動させ、掻取板5によって容器3内の濾布4の内面に形成された合成樹脂粒子のウエットケーキCをその内面から順次、掻取り、掻取板5によって掻取ったウエットケーキを容器3の排出口から排出する。
【0071】
得られたウエットケーキを図4に示した乾燥機に供給して一次乾燥工程及び二次乾燥工程を行う。先ず、図4に示した乾燥機Eについて説明する。乾燥機Eは、底面部71、この底面部71の外周縁から上方における斜め外方に向かって一体的に設けられた周壁部72及び上記周壁部72の上端開口部を閉止している天板部73を備えた容器7と、この容器7内に回転自在に配設された撹拌羽根8と、容器7の外周面に付帯された加熱手段9とを備えている。
【0072】
容器7内は下方から上方に向かって徐々に拡径しており、この容器7内に二本の撹拌羽根8が配設されている。各撹拌羽根8は、一本の偏平な一定長さを有する帯状体を下方から上方に向かって徐々に外方に向かって広げながら螺旋状に旋回した状態に屈曲させてなり、各撹拌羽根8の上端が外周端となっている。
【0073】
容器7内には一本の回転自在な駆動軸73がその軸芯を垂直方向に向けて配設され、この駆動軸73には上下方向に所定間隔毎に複数本の支持杆74、74・・・が一体的に設けられており、各支持杆74の両端部に撹拌羽根8、8を一体的に固定させている。
【0074】
そして、駆動軸73を所定方向に回転させることによって撹拌羽根8、8が駆動軸73を中心にして水平方向に回転し、容器7内のウエットケーキを撹拌可能に構成されている。
【0075】
更に、容器7の周壁部72の外周面には加熱手段として加熱部材9が付帯されており、この加熱部材9内に加熱媒体を流通させることによって上記容器7内を加熱可能に構成している。加熱媒体は、温度調整器(図示せず)によって所定温度に調節された上で加熱部材9内に供給され、容器7内を加熱した上で加熱部材9外に排出される。なお、容器7及び加熱部材9を構成している材料は熱電導性に優れており、容器7内のウエットケーキは、加熱媒体の有する温度にて加熱されているとみなすことができる。なお、加熱媒体は、特に限定されず、例えば、水、油などが挙げられる。
【0076】
なお、加熱手段として加熱部材9の代わりに、撹拌羽根8内に加熱媒体を流通させる流通路を形成し、この流通路内に、温度調整器によって所定温度に調整された加熱媒体を流通させることにより容器1内を加熱するように構成してもよい。なお、撹拌羽根8を構成している材料は熱電導性に優れており、容器7内のウエットケーキは、加熱媒体の有する温度にて加熱されているとみなすことができる。
【0077】
得られたウエットケーキを図4に示した乾燥機の容器7内に供給する。しかる後、容器7内の撹拌羽根8をその外周端(上端)8aの周速度が3〜20m/秒となるように回転させてウエットケーキを攪拌してウエットケーキを粉砕しながら、図示しない真空ポンプにより容器7内を減圧し、加熱部材9内に式1を満たす温度Tを有する加熱媒体を流通させてウエットケーキを一次乾燥させ、ウエットケーキ中に含有される残存モノマー及び水分を蒸発させて図示しない給排気口を通じて容器7外に排出する。なお、加熱手段として撹拌羽根8内に加熱媒体の流通路を形成している場合には、式1を満たす温度Tを有する加熱媒体を撹拌羽根8の流通路内に供給、流通させる。
(合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/5)℃≦T
≦(樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/5)+40℃・・・式1
【0078】
又、加熱部材21或いは撹拌羽根13の流通路内に供給する加熱媒体の温度は、一定温度であっても、式1の範囲内において変動させてもよいが、一定温度に維持することが好ましい。
【0079】
撹拌羽根13の外周端の周速度、加熱媒体の温度T及び一次乾燥時における容器7内の圧力については図1、2に示した装置を用いた場合と同様であるのでそれらの説明を省略する。
【0080】
上述の条件下にてウエットケーキを撹拌しながら一次乾燥させることによって、合成樹脂粒子が凝集しないようにしながら、合成樹脂粒子中に含有されている水分を主に効率よく除去することができる。
【0081】
そして、ウエットケーキBの一次乾燥は、上述と同様の理由で、ウエットケーキBの水分量が0.2〜5.0重量%となった時点で終了する。
【0082】
次に、一次乾燥を終えたウエットケーキBの二次乾燥を行う(二次乾燥工程)。二次乾燥工程においては引き続き容器7内の撹拌羽根8をその外周端13bの周速度が3〜20m/秒となるように回転させてウエットケーキBを攪拌して粉砕しながら、図示しない真空ポンプにより容器7内を減圧し、加熱部材9内に式2を満たす温度T2を有する加熱媒体を流通させて二次乾燥させ、ウエットケーキB中に含有される残存モノマー及び水分を蒸発させて容器7外に排出する。なお、加熱手段として撹拌羽根8内に加熱媒体の流通路を形成している場合には、式2を満たす温度T2を有する加熱媒体を撹拌羽根8の流通路内に供給、流通させる。
【0083】
撹拌羽根13の外周端の周速度及び加熱媒体の温度T2については図1、2に示した装置を用いた場合と同様であるのでそれらの説明を省略する。
【0084】
そして、二次乾燥工程を上述と同様の理由で、合成樹脂粒子の温度と加熱媒体の温度T2との差が2℃となった時点にて終了する。なお、容器7の周壁部72に温度計(図示せず)が配設されており、この温度計は、容器7の周壁部72自体が持つ熱の影響は一切受けず、容器7内の温度を正確に測定できるように構成されている。合成樹脂粒子の温度は、容器7の周壁部に配設した温度計によって測定することができる。
【0085】
又、二次乾燥工程の終了時における容器7内の圧力は、低いと、攪拌羽根によるウエットケーキの攪拌中に合成樹脂粒子の飛散が多くなり、合成樹脂粒子の収率が低下することがあり、高いと、合成樹脂粒子の残存モノマー及び水分量の低減が不十分となることがあるので、1〜7kPaが好ましい。
【実施例】
【0086】
(懸濁液の製造)
モノマー組成物としてメチルメタクリレート100重量部及び過酸化ベンゾイル0.4重量部と、脱イオン水200重量部と複分解型ピロリン酸カルシウム60重量部とラウリル硫酸ナトリウム1重量部とを混合機(特殊機化社製 商品名「TKホモミキサー」)に供給して混合し、脱イオン水にモノマー組成物を均一に分散させてモノマー溶液を得た。
【0087】
上記モノマー溶液を重合器に供給して撹拌しながら、メチルメタクリレートを70℃にて3時間に亘って懸濁重合してポリメチルメタクリレート粒子を水中に分散させてなる懸濁液を得た。なお、ポリメチルメタクリレートの3%熱分解温度は251℃であった。
【0088】
(実施例1、2、比較例1〜5)
図3に示した遠心分離型濾過装置Dを用いた。上述のようにして得られた懸濁液を遠心分離型濾過装置Dの容器3内に懸濁液供給管6を通じて供給した。しかる後、容器3を回転させて遠心分離を行い、懸濁液中の水を容器3の排水孔31aを通じて容器3外に排出し、容器3の周壁部31の内周面に配設した濾布4の内面にウエットケーキCを形成した。なお、容器3からの排水がなくなった時点で遠心分離を終了した。
【0089】
次に、容器3内に配設された濾布4の内面に形成されたウエットケーキCを洗浄するために、容器3を回転させながら、容器3内に洗浄水を供給してウエットケーキCを洗浄した。なお、容器3から排出された排出液がpHが6〜7となり、且つ、容器3から排出された排出液と、容器3内に供給した洗浄水との間における導電率の差が100μSとなった時点で、容器3内への洗浄水の供給を終了した。
【0090】
次に、容器3内への洗浄水の供給を停止した後、容器3を継続して回転させることによってウエットケーキCに含まれている洗浄水を遠心分離して容器3外に排出した。なお、洗浄水の容器3外への排出の終点は、容器3外に洗浄液の排出が停止した時点とした。ウエットケーキCの水分量は表1に示した量であった。
【0091】
続いて、容器3を回転させながら掻取板5を上下方向に移動させ、掻取板5によって容器3内の濾布4の内面に形成された合成樹脂粒子のウエットケーキCをその内面から順次、掻取り、掻取板5によって掻取ったウエットケーキを容器3の排出口から排出した。
【0092】
得られたウエットケーキを図4に示した乾燥機の容器7内に供給した。しかる後、容器7内の撹拌羽根8をその外周端(上端)8aの周速度が表1に示した周速度となるように回転させてウエットケーキを攪拌してウエットケーキを粉砕しながら、図示しない真空ポンプにより容器7内を減圧し、加熱部材9内に表1に示した温度Tを有する加熱媒体を流通させてウエットケーキを一次乾燥させ、ウエットケーキ中に含有される残存モノマー及び水分のうち、主として水分を蒸発させて図示しない給排気口を通じて容器7外に排出した。ウエットケーキの水分量が表1に示す量となった時点で一次乾燥を終了した。
【0093】
次に、容器7内の撹拌羽根8をその外周端13bの周速度が表1に示した速度となるように回転させてウエットケーキBを攪拌して粉砕しながら、図示しない真空ポンプにより容器7内を減圧し、加熱部材9内に表1に示した温度T2を有する加熱媒体を流通させて二次乾燥させ、ウエットケーキB中に含有される残存モノマー及び水分を蒸発させて容器7外に排出した。
【0094】
そして、合成樹脂粒子の温度と加熱媒体の温度T2との差が2℃となった時点にて二次乾燥を終了して容器7内から合成樹脂粒子を取り出した。なお、二次乾燥の終了時における容器7内の圧力は表1に示した通りであった。
【0095】
(実施例3、比較例6)
図1に示した合成樹脂粒子の製造装置Aを用いた。先ず、上記合成樹脂粒子の製造装置Aの容器1をその撹拌羽根13が濾過材12の上方に位置し且つ濾過材12が水平状態となった位置で固定させた。
【0096】
そして、容器1の懸濁液供給口16及び濾液排出口19のみを開放状態とすると共にその他の開口部を全て閉止状態とし、更に、上記洗浄ノズル15を上記容器1の壁部14内面から没入させた。
【0097】
続いて、上記懸濁液供給口16を通じて上記容器1の濾過材12上に、上述の要領で得られた懸濁液を供給した上で上記懸濁液供給口16を気密的に閉止した。
【0098】
次に、上記容器1の圧縮空気供給口17を開放した後、圧縮ポンプを作動させて上記圧縮空気供給口17を通じて容器1内に圧縮空気を供給して容器1の上方空間部内を加圧し、懸濁液を上方から加圧して濾過材12による懸濁液の濾過を促進させ、懸濁液から水を円滑に濾過、分離し、得られたウエットケーキBを濾過材12上に堆積させる一方、懸濁液から分離した水を容器1の濾液排出口19を通じて容器1外に排出した。
【0099】
次に、上記容器1の濾液排出口19からの水の排出が無くなったところで、上記容器1の壁部14内面から没入させていた洗浄ノズル15、15・・・を容器1内に突出させた。なお、この状態においても、容器1の圧縮空気供給口17を通じて圧縮ポンプにより容器1内に圧縮空気を供給した。
【0100】
そして、上記各洗浄ノズル15から洗浄水を容器1内に噴射してウエットケーキBを洗浄、脱水した後、上記洗浄ノズル15を容器1の壁部14内面から没入させた。ウエットケーキCの洗浄は、容器1から排出された排出水のpHが6〜7となり、且つ、容器1から排出された排出液と、容器1内に供給した洗浄液との間における導電率の差が100μSとなった時点で終了した。洗浄水の容器1外への排出の終点は、容器1外に洗浄水の排出が停止した時点とした。ウエットケーキCの水分量は表1に示した量であった。
【0101】
しかる後、上記圧縮空気供給口17及び上記濾液排出口19を閉止し、続いて、図2に示したように、上記容器1をその支持軸11、11を中心にして上下反転させて、上記容器1をその撹拌羽根13が下端部に位置した状態に固定した。
【0102】
続いて、容器1内の撹拌羽根13をその外周端13bの周速度が表1に示した通りとなるように回転させてウエットケーキBを攪拌してウエットケーキBを粉砕しながら、上記真空ポンプ202 により上記容器1の給排気口20、20を通じて容器1内を減圧し、加熱部材21内に表1に示す温度Tを有する加熱媒体を流通させてウエットケーキBを一次乾燥させ、ウエットケーキB中に含有される残存モノマー及び水分のうち主として水分を蒸発させて給排気口20、20を通じて容器1外に排出した。そして、ウエットケーキBの一次乾燥をウエットケーキBの水分量が表1に示した量となった時点で終了した。
【0103】
ウエットケーキBの一次乾燥を終えた後、二次乾燥を行った(二次乾燥工程)。二次乾燥工程においては容器1内の撹拌羽根13をその外周端13bの周速度が表1に示した通りとなるように回転させてウエットケーキBを攪拌してウエットケーキBを粉砕しながら、上記真空ポンプ202 により上記容器1の給排気口20、20を通じて容器1内を減圧し、加熱部材21内に表1に示した温度T2を有する加熱媒体を流通させて二次乾燥させ、ウエットケーキB中に含有される残存モノマー及び水分を蒸発させて給排気口20、20を通じて容器1外に排出した。
【0104】
そして、合成樹脂粒子の温度と加熱媒体の温度T2との差が2℃となった時点にて二次乾燥を終了した。なお、二次乾燥の終了時における容器1内の圧力は、表1に示した通りであった。しかる後、上記容器1をその支持軸11、11を中心にして所定角度だけ回転させて、合成樹脂粒子の取出口18を容器1の下端に位置させ、しかる後、三方弁201 、201 を操作して、上記容器1の給排気口20、20を外気側に連通させて容器1内を大気圧まで復帰させ、続いて、上記容器1における合成樹脂粒子の取出口18を開放し、この取出口18を通じて容器1内の合成樹脂粒子を取り出した。
【0105】
得られたポリメチルメタクリレート粒子中に含有される水分量及び残存メチルメタクリレート量、並びに、ポリメチルメタクリレート粒子の凝集の有無を下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0106】
(ポリメチルメタクリレート粒子中の水分量)
ポリメチルメタクリレート粒子を150℃に30分間に亘って加熱してポリメチルメタクリレート粒子から水分を蒸発させ、電量滴定式水分測定装置(三菱化成社製 商品名「VA−06型」)を用いてJIS K0113「電位差・電流・電量 カールフィッシャー滴定方法通則」に準拠してカールフィッシャー法により電量滴定を行い、ポリメチルメタクリレート粒子中の水分量を測定した。
【0107】
(残存メチルメタクリレート量)
ポリメチルメタクリレート粒子1gに二硫化炭素25ミリリットル及び内部標準液1ミリリットルを加えて12時間以上放置し、液相部を測定試料とした。なお、内部標準液は、二硫化炭素75ミリリットルにトルエン0.1ミリリットルを加えることにより作製した。この測定試料を用いて下記条件にてガスクロマトグラフ(島津製作所社製 商品名「CG−7A」)からメチルメタクリレートのチャートを得、予め測定しておいたメチルメタクリレートの検量線に基づいて上記チャートからメチルメタクリレートの重量を算出し、ポリメチルメタクリレート粒子中に含まれる残存メチルメタクリレート量を得た。
【0108】
カラム充填剤:液相 PEG−20M
担体 Chromasorb W
検出器:FID
キャリアーガス:窒素
カラム温度:105℃
【0109】
(ポリメチルメタクリレート粒子の凝集)
ポリメチルメタクリレート粒子0.5gをガラスプレート上に界面活性剤水溶液を用いて分散させ、この分散状態を拡大投影機を用いて100倍に拡大してポリメチルメタクリレート粒子の凝集物の有無を目視にて確認した。
【0110】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の合成樹脂粒子の製造方法で用いられる製造装置の一例を示した模式断面図である。
【図2】本発明の合成樹脂粒子の製造方法で用いられる製造装置の一例を示した模式断面図である。
【図3】本発明の合成樹脂粒子の製造方法で用いられる遠心分離型濾過装置の一例を示した模式断面図である。
【図4】本発明の合成樹脂粒子の製造方法で用いられる乾燥機の一例を示した模式断面図である。
【符号の説明】
【0112】
1 容器
3 容器
4 濾布
5 掻取板
6 懸濁液供給管
7 容器
8 撹拌羽根
9 加熱手段
12 濾過材
13 撹拌羽根
13b 外周端
21 加熱部材
22 温度計
23 圧力計
A 製造装置
B ウエットケーキ
C ウエットケーキ
D 遠心分離型濾過装置
E 乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂粒子を水系分散媒体中に分散させてなる懸濁液を脱水して得られたウエットケーキを洗浄する洗浄工程と、加熱手段が付帯された容器内に撹拌羽根が配設されてなる乾燥機の上記容器内にて上記撹拌羽根をその外周端の周速度が3〜20m/秒となるように回転させながら上記加熱手段に下記式1を満たす温度T1の加熱媒体を流通させて上記ウエットケーキを乾燥させて上記ウエットケーキの水分量が0.2〜5.0重量%となるまで一次乾燥させる一次乾燥工程と、上記乾燥機の容器内にて上記撹拌羽根をその外周端の周速度が3〜20m/秒となるように回転させながら上記加熱手段に下記式2を満たす温度T2の加熱媒体を流通させて上記ウエットケーキを二次乾燥させ、上記合成樹脂粒子の温度と、上記加熱手段に流通させている加熱媒体の温度T2との差が2℃となった時点にて二次乾燥を終了する二次乾燥工程とを含むことを特徴とする合成樹脂粒子の製造方法。
(合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/5)℃≦T
≦(樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/5)+40℃・・・式1
(合成樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/2)−20℃≦T2
≦(樹脂粒子を構成している合成樹脂の3%熱分解温度/2)℃ ・・・式2
【請求項2】
一時乾燥工程及び二時乾燥工程を減圧下にて行うことを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の合成樹脂粒子の製造方法で製造されたことを特徴とする合成樹脂粒子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate